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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する G11B
管理番号 1075661
審判番号 訂正2003-39005  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-21 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-01-15 
確定日 2003-03-03 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2935418号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2935418号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 [1]手続きの経緯
本件特許第2935418号発明は、昭和62年3月31日に出願された特願昭62-502219号(パリ条約による優先権主張外国庁受理1986年4月11日仏国を国際出願日とする国際出願番号PCT/FR87/00102)の出願の一部を特許法第44条第1項の規定により分割して新たな特許出願として平成8年7月8日に出願された特願平8-178194号であって、拒絶査定を不服とした審判(平成10年第9652号)において平成11年6月4日にその特許の設定登録がなされたが、特許異議申立(異議2000-70639号)がなされ、取消通知に対し特許異議意見書及び訂正請求書が提出された後、平成13年8月6日付けで「訂正を認め、特許を取り消す」旨の異議の決定がなされたところ、当該取消決定に対する訴えが東京高等裁判所(平成14年行(ケ)第533号)へ提出され、更に、本件審判請求がなされたものである。

[2]訂正の適否
1.訂正の内容
訂正の内容は次のとおりである。
イ.特許請求の範囲
【請求項1】の 「前記レーザ源と記録媒体を受容するように構成された読取ゾーンとの間に配置されており、該読取ゾーンに読取ビームを放射し、戻って来る検出ビームを受け取り、該受け取った検出ビームを前記光検出デバイスに向けて送る位相格子ビーム分離器(2)と、」を、
「 前記レーザ源と記録媒体を受容するように構成された読取ゾーンとの間に配置された位相格子ビーム分離器(2)であって、該位相格子ビーム分離器(2)により偏向されないビームを前記読取ゾーンに放射し、戻って来る検出ビームを受け取り、該受け取った検出ビームを前記光検出デバイスに向けて送る、該位相格子ビーム分離器(2)と、」と訂正する。

ロ、発明の詳細な説明【0009】
「 前記レーザ源と記録媒体を受容するように構成された読取ゾーンとの間に配置されており、該読取ゾーンに読取ビームを放射し、戻って来る検出ビームを受け取り、該受け取った検出ビームを前記光検出デバイスに向けて送る位相格子ビーム分離器(2)と、」を
「 前記レーザ源と記録媒体を受容するように構成された読取ゾーンとの間に配置された位相格子ビーム分離器(2)であって、該位相格子ビーム分離器(2)により偏向されないビームを前記読取ゾーンに放射し、戻って来る検出ビームを受け取り、該受け取った検出ビームを前記光検出デバイスに向けて送る、該位相格子ビーム分離器(2)と、」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の実質変更又は拡張の存否
上記イの訂正は、位相格子ビーム分離器(2)から読取ゾーンに放射されるビームを、「読取ビーム」から、「該位相格子ビーム分離器(2)により偏向されないビーム」としたものである。
「該位相格子ビーム分離器(2)により偏向されないビーム」については、【0014】、【0016】〜【0018】及び図2,8に記載された事項である。
したがって、イの訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であって、特許請求の範囲の減縮するものと認められる。上記ロの訂正は、特許性請求の範囲の請求項1を訂正することによって生じた記載を一致させたものであるから、明瞭でない記載の釈明に該当する。そして、上記各訂正事項は本件の訂正前の特許明細書に記載されている事項のみであるから、明細書に記載された事項の範囲内でする訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

3.独立特許要件
(1)訂正発明
訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜18項の発明は、訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜18項に記載された発明(以下、「訂正発明」という。)の要旨は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりと認める。
「【請求項1】 トラック追従操作及び/又は焦点合わせ調整動作を可能にするために平坦な記録媒体を光学的に読取る装置であって、
読取ビーム(F1,F2,F3,F4)を放射するレーザ源(1)と、
少なくとも第1及び第2の光検出デバイス(6,7)と、
前記レーザ源と記録媒体を受容するように構成された読取ゾーンとの間に配置された位相格子ビーム分離器(2)であって、該位相格子ビーム分離器(2)により偏向されないビームを前記読取ゾーンに放射し、戻って来る検出ビームを受け取り、該受け取った検出ビームを前記光検出デバイスに向けて送る、該位相格子ビーム分離器(2)と、
前記位相格子ビーム分離器と前記読取ゾーンとの間に配置された集束デバイス(4)とを備え、
前記光検出デバイス(6,7)は、前記レーザ源から放射される読取ビームの伝搬方向(YY’)に垂直な平面上に該レーザ源の両側に該レーザ源に近接して配置されており、前記第1及び第2の光検出デバイスは、記録媒体の平面に関し共役でない同一の面に配置され、前記位相格子ビーム分離器は、前記検出ビームを受け取って前記光検出デバイスに同じ強度の回折ビームを提供し、各回折ビームは該位相格子の共通のエリアから放射されることを特徴とする記録媒体の光学読取装置。」

(2)特許法第29条2項について
当審において異議の決定に引用した刊行物は以下のとおりである。
刊行物1:特開昭60-129942号公報
刊行物2:特開昭60-171644号公報

A.刊行物に記載された事項
刊行物1(特開昭60-129942号公報)には以下の事項が記載されている。
イ.
「半導体レーザ光源と、該光源の像を記録媒体上に絞り込む結像レンズとを具備し、該光源の両脇に2分割した光検知器をそれぞれ配置し、該光源と結像レンズの間に、該結像レンズを経て来た該記録媒体からの反射光を該反射光の光軸を境に2分割して、該光検知器上に導くビーム分割素子を配置したことを特徴とする光ヘッド装置。」(特許請求の範囲)
ロ.
「〔発明の概要〕
すなわち、本発明による光ヘッドは、半導体レーザ光源のすぐ脇に、自動焦点用、あるいはトラッキング用の光検知器をハイブリッドあるいはモノリシック配置し、光ディスクからの反射信号光を偏向プリズムとλ/4波長板あるいはハーフプリズムのみにより該光検知器に導くものである。
〔発明の実施例〕
以下、本発明の実施例を説明する。
第1図は、本発明による光ヘッドを、デイジタルオーディオディスク、ビデオディスクなどの再生用、あるいは、DRAM(Direct Read
After Write)ディスク用記録、再生ヘッドへの適用例を示すものである。光ディスク再生ヘッドは、ディスク上下ぶれに対し、絞り込みスポットが常にフォーカスしていなければならないこと。
ディスクの偏心によるトラックずれに対し、絞り込みスポットが常にトラックを追随していなければならないこと。が条件となる。以下、本発明による自動焦点検出、およびトラッキングの方法を詳述する。
半導体レーザチップ1からのビームは、ウインドを経て、変形偏光プリズム2を通過する。変形偏光プリズム2は本発明のキーエレメントである。半導体レーザ1からのビームは、このプリズム2に対し、p-偏光として入射し、99%以上の透過率で通過する。その後λ/4板3を経て円偏光となり、微少レンズ4により情報記録媒体である光ディスク10上に回折限界のスポットを形成する。微少レンズ4としては、非球面レンズ、GRINレンズ、ホログラムレンズなどが有効に用いられる。特に、本出願人が特願昭58-134325号で提案した球面ホログラムレンズを用いれば、収差量を格段に少なくすることができ、極めて有効である。ディスク10からの反射光は、微少レンズ4に戻り、波長板3を再び通過し、円偏光はS-偏光となって、変形偏光プリズム2に入射する。この時、第2図に示すように、変形偏光プリズム2の反射面5に、S-偏光で入射したビームは光軸を対称に左右に反射され、半導体レーザチップ1の両脇に配置した左右2対の光検知器6-1,6-2上にそれぞれ集光する。左右2対の光検知器6-1,6-2は、さらに分割されて、それぞれ受光部D1,D2及びD3,D4からなり、光ディスクの上下ぶれ(デイフォーカス)に対し、各2分割デイテクタの両受光部の受光する光量が変動するため、この差信号をもって、フォーカスずれの検出信号とする。すなわち、合焦位置ではもどり光の共役結像位置が、2分割デイテクタ6-1,6-2のそれぞれの分割線上にくるように調整し、各2分割デイテクタの両受光部の光出力の差信号を零とする。ディスクがレンズから遠ざかる方向にずれた場合には、共役点は検知器上からプリズム2側にシフトする。この時、プリズムの中心に入射した光線は不動であるため、共役点はこのビーム上で移動することを考えれば、2分割検知器のそれぞれの外側の受光部D1,D4にくる光量が増加する。・・・・・・・・・・・ディスクのフォーカスずれの方向および量を検知することができる。
一方トラッキングのずれ補正は、ディスク上での絞り込みスポットがトラック位置からずれるともどり光の強度分布にアンバランスが生じることを利用し、プリズム2で2つに分けられたビームの強度比が変わるため、レーザ1の可動の光検知器6〜1,6〜2の出力信号に差が生じる。
従って、トラッキング信号TRは、・・・・・・・・・・・・・・・・より、トラックずれの方向も検知することができる。
ディスク上の信号は、やはり、光検知器6-1,6-2にいたる光量の総和(V(D1)+V(D2)+V(D3)+V(D4)をとることにより検出することができる。
なお、第1図において、9は半導体レーザ1の後方出力光を受光するモニタ用の光検知器であり、この検出器の出力は半導体レーザ1の出力調整等に利用できる。」(第2頁左上欄第13行〜第3頁左上欄第19行)(微少レンズ2の一カ所の誤記については微少レンズ4と認定した。)

刊行物2(特開昭60-171644号公報)には以下の事項が記載されている。
イ.
「従来、この種の装置として第1図に示すものがあった。図において、半導体レーザなどの発光源1より出射された出射光束2を平行光束4にするコリメートレンズ3、四分の一波長板5、平行光束4を集光し、情報記録媒体である光ディスク7の面上に集光スポット8を形成させる対物レンズ6、光ディスク面上の集光スポット8から対物レンズ6、四分の一波長板、コリメートレンズ3を経た主反射光束9と出射光束2を分離するビームスプリッタ10、主反射光束9を第1,第2の反射光束12と13に分ける光束分離器であるハーフミラー11、ハーフミラー11で分離された第1の反射光束12の集光点P1より近い光軸位置におかれた第1の光検知器14とハーフミラー11で分離された第2の反射光束13の集光点P2よりも遠い位置に配設され第1の光検知器14と同一の第2の光検知器15で構成されていた。」(第2頁左上欄第1行〜第17行)
ロ.
「しかし、以上の構成になる従来の装置では、第1,第2の光検知器14,15の位置をそれぞれ独立して3軸調整しなければならず、調整が複雑で調整コストが高くなるという欠点を有していた。
〔発明の概要〕
この発明は、上記のような従来のものの欠点を除去することを目的とするもので、主反射光束を2分割する光束分離器としてグレーティング手段を用い、2つの光検知器を同一平面上に配設することにより、特性のよいフォーカス誤差信号を簡単な調整によって得られる光ディスクヘッドのフォーカスずれ検出装置を提供するものである。
〔発明の実施例〕
以下、この発明の第一の実施例を第10図〜第15図について説明する。
第10図において第1図と同一符号は同一または相当部分を示し、ビームスプリッタ10からの主反射光束9を振幅の等しい第1,第2の反射光束12,13に2分割する光束分離器としてグレーティングレンズ17を配置し、2分割された一方の第1の反射光束12を点Q1に、他方の第2の反射光束13を点Q1とは異なる点Q2に集光させる。また、第1の反射光束12の集光点Q1よりは近く、第2の反射光束13の集光点Q2よりは遠い位置の面上に光検知装置18を配置し、第1図の第1,第2の検知器14,15と同様の第1,第2の光検知器14,15を光検知装置18の同一平面上に配設し、第11図に示すように有感領域I,II,III,IVの4分割に構成したものである。
次に、グレーティングレンズ17について詳しく述べる。第12図において、点Pはグレーティングレンズ17がないときの主反射光束9の集光点を示し、Z0をグレーティングレンズ17の位置Aから点Pまでの距離とする。第1の反射光束12の中心光線19を主反射光束9の光軸20に対して角度θだけ上向きに偏向し、点Pから光軸20の正方向(+Z’方向)に△Zずれた点Q1に第1の反射光束12を集光するのに必要なグレーティングレンズ17の位相シフト関数Φは
Φ=Φ1+Φ2 Φ1=2π/λ(sinθ)y
Φ2=-(2π △Z)/(λ 2Z0(Z0-△Z)・(x2+y2)
λ:入射角度
で与えられる。・・・・・・・・・・・・・・・。また、第2の反射光束13の中心光線21を光軸20に対して角度θだけ下方に偏向し、点Pから光軸20の方向手前に△Zずれた点Q2に第2の反射光束13を集光するのに必要な位相シフト関数Φ’は Φ’=-Φ で与えられる。なお、第10図,第12図中で、グレーティングレンズ17の位置はビームスプリッタ10と光検知装置18の間であるが、第13図に示すようにビームスプリッタ10上にあってもよく、また、光検知器の窓上にあってもよい。
次に位相シフト関数Φ,Φ’の実現方法について述べる。グレーティングレンズ17に
Φ(xm,ym)=mx(m:正数)
を満たす曲線をフリジンとするバイナリ・グレーティングで構成することができる。特に、位相型のバイナリ構造で、主反射光束9に与える位相シフト量が、0°,180°の2つの値である場合、主反射光束9の80%が第1,第2の反射光束12と13に等しく分配され、かつ、P点に集光する光量は0となり、最も感度がよい。」(第2頁右下欄第12行〜第3頁右下欄第3行)
ハ.
「第14図,第15図は、表面の凹凸で位相型バイナリ・グレーティングレンズ17を構成した例であり、前述の位相シフト量0°,180°を実現するために必要な溝17aの深さtは t=λ/2(n-1) で与えられる。ここで、nはグレーティングレンズ部の屈折率である。グレーティングレンズ17は、ガラス基板上に塗布した透明レジストにレンズパターンを露光・現像することにより、または、上記のレジストをマスクにガラス基板をエッチングすることにより作製できる。なお、位相型のグレーティングレンズの動作、その一作製法については、藤田,西原,小山著「電子ビーム描画作製マイクロフレネルレンズ」電子通信学会論文誌、volJ-64c.No.10,P.P.652-657(1981)を参照されたい。
次に動作を詳しく説明する。第12図に示されているように、第1の反射光束12の集光点Q1と第2の反射光束13の集光点Q2は光軸20の方向に2ΔZずれた位置にある。従って、光ディスクが合焦点位置にあるときのQ1とQ2の間のある位置(点P付近)において、それぞれの反射光束12,13の断面光束が等しくなる所がある。その位置で、光軸20の点で垂直に2分割された第1,第2の光検知器14,15からなる光検知装置18を配置し、光検知装置18の出力、すなわち、フォーカス誤差信号Efが、
Ef=(II-I)+(III-IV)=0となるように設定すれば、光ディスクが合焦点位置より遠ざかる方向に動くとEfは負、また逆に近づく方向に動くとEfは正となる。・・・・・・・・この発明の装置では同一平面上に配設された・・・・1つの光検知装置18を3軸調整するだけで足りることになる。」(第3頁右下欄第3行〜第4頁左上欄第20行)
ニ.
「第17図はかかる第三の実施例で、第18図,第19図に示す透過型グレーティング30を用い、光検知装置18は集光点Q1,Q2間に傾けて配置する。」(第4頁左下欄第3行〜第6行)
ホ.
「すなわち、第四の実施例とし第20図に示すように、・・・・・・・・・・。光検知装置24の受光面は、グレーティングレンズ31がないときの主反射光束9の焦点面上に置かれる。そうして、第21図は合焦点時の検知器上の光スポット形状を示し、・・・・・・・・フォーカスサーボのオフセットを軽減できる利点を有している。
また、上記実施例においては主反射光束9の波面を分離して第1、第2の反射光束12,13を得ているが、第五の実施例として第22図に示すように、主反射光束をその断面で分割することにより同様の効果が得られる。図中34は主反射光束9の上半分Q1に集光し、下半分をQ2に集光するグレーティングレンズであり、レンズ効果を高く維持するためには、鋸歯状の位相構造もしくは体積的同期構造が望ましい。さらに、第六の実施例として第23に示すように、分離された第1の反射光束12についてyz’面内の焦点位置が第1の光検知器22上に、xz’面内の焦点位置が検知装置後方のS点になるように、第2の反射光束13についてはyz’面内の焦点位置が第2の光検知器23上に、xz’面内の焦点位置が検知器手前のS2点になるようにグレーティングレンズ35を設計することも可能である。」(第4頁左下欄第10行〜第5頁左上欄第5行)
グレーティングレンズの表面の凹凸の形状については、第14,15,18,19図に図示されている。

B.刊行物1の発明
以上Aの刊行物1の記載及び図面から、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「トラッキング用及び自動焦点用の光検知器を有する光ディスク用記録、再生ヘッドであって、
ビームを放射する半導体レーザチップと、
2つの光検知器と、
半導体レーザチップと光ディスクの間に配置されており、半導体レーザチップのビームが通過し、光ディスクにスポットを形成した光ディスクからの反射光を2つの光検知器に集光する変形偏光プリズムと、
変形偏光プリズムと光ディスクとの間に配置された微少レンズとを備え、
2つの光検知器は、半導体レーザから放射されるビームの方向に光ディスクの平面と共役である同一の面に配置され、変形偏光プリズムは、ディスクからの反射光を光軸を対称に左右に2つの光検知器に集光させ、ビームは変形偏光プリズムの反射面で反射される光ディスクの光ヘッド装置。」

C.対比・判断
訂正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、
刊行物1の発明の「半導体レーザチップ」「光ディスク」「光検知器」「微少レンズ」は、訂正発明の「レーザ源」「平坦な記録媒体」「光検出デバイス」「集束デバイス」に相当し、
刊行物1の発明の「半導体レーザチップ」と「光ディスク」で形成される領域は、訂正発明の「レーザ源と記録媒体を受容するように構成された読取ゾーン」であり、
刊行物1の発明のビームと訂正発明の記載によるビームを比較すると、
刊行物1の発明のビームの「半導体レーザチップ」から「光ディスク」へのビーム、「光ディスク」からの反射光のビーム、「光検知器」に集光されるビームは、それぞれ本願発明の「読取ビーム」、「検出ビーム」、「回折ビーム」と対応し、刊行物1の発明の「光検知器」に集光される「ビーム」は、光軸を対称に左右に反射されていることから、同じ強度で「光検知器」に集光されており、
両者は訂正発明の記述に従うと、以下の発明で一致する。
「トラック追従操作及び/又は焦点合わせ調整動作を可能にするために平坦な記録媒体を光学的に読取る装置であって、
読取ビームを放射するレーザ源と、
少なくとも第1及び第2の光検出デバイスと、
前記レーザ源と記録媒体を受容するように構成された読取ゾーンとの間に配置され、偏向されないビームを前記読取ゾーンに放射し、戻って来る検出ビームを受け取り、該受け取った検出ビームを前記光検出デバイスに向けて送る部材と、
検出ビームを光検出デバイスに向けて送る部材と前記読取ゾーンとの間に配置された集束デバイスとを備え、
前記光検出デバイスは、前記レーザ源から放射される読取ビームの伝搬方向に垂直な平面上に該レーザ源の両側に該レーザ源に近接して配置されており、前記第1及び第2の光検出デバイスは、記録媒体の平面に関し平行な同一の面に配置され、検出ビームを受け取って光検出デバイスに向けて送る部材は、前記検出ビームを受け取って前記光検出デバイスに同じ強度のビームを提供することを特徴とする記録媒体の光学読取装置。」

以下の点で相違する。
〈相違点〉
1.偏向されないビームを読取ゾーンに放射し戻って来る検出ビームを受け取り、受け取った検出ビームを光検出デバイスに向けて送る部材が、訂正発明では回折ビームが位相格子の共通のエリアから放射される位相格子ビーム分離器であるのに対して、刊行物1の発明ではビームが反射面で反射され共通のエリアから放射されない変形偏光プリズムである点で相違する。
2.光検出デバイスの配置が記録媒体の共役な平面に対し、訂正発明では共役でないのに対して、刊行物1の発明では共役である点で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。

相違点2について検討する。
刊行物2には、2つの光検知器(光検出デバイス)が同一平面上の共役でない位置に配置されている。したがって、刊行物1の発明においても、半導体レーザチップ(レーザ源)に近傍の共役でない同一平面上に配置することは当業者が容易に想到できた事項であるといえる。
次に、相違点1について検討する。刊行物2には、主反射光束(検出ビーム)を2つの光検知器に2分割するグレーティング手段が記載されているとしても、訂正発明の「偏向されないビーム」を読取ゾーンに放射し、検出ビームを「光検出デバイスに同じ強度」で提供し、「共通のエリアから」放射する構成を、刊行物2に記載されたグレーティング手段は備えておらず、刊行物1の発明において、変形偏光プリズムを「位相格子ビーム分離器」とすることは、容易とは認められない。
してみると、請求項1〜18の発明は本件原出願前に頒布された刊行物1〜2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないから、特許を受けることができるものである。

(2)特許法第29条の2について
次に、異議2000-70639号において、特許異議申立人が提出した刊行物の特願昭61-243281号(特開昭62-97141号公報)[1985年10月15日出願(パリ条約による優先権主張 1985年10月17日 オランダ) 昭和62年5月6日公開](以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。

イ.
「1.放射線源と、情報平面に走査スポットを形成するため放射線源により放射された放射線ビームを集束する対物系と、前記情報平面により反射されたビーム通路に、前記放射線ビームを2個のサブビームに分割するため配設された回折格子とを具え、該回折格子は2個の格子部分並びに2個の検出器対を具える放射線感知検出系とを具え、各検出器対は、1個のサブビームと関連するようにした情報平面を光学的に走査する光学走査装置において、前記格子部分は同一の格子間隔を有し、第1格子部分の格子線は2個の格子部分の境界線に対し第1の角度で延在し、第2格子部分の格子線は第1の角度と等しいが前記境界線の反対側に第2の角度で延在し、各検出器対における検出器の間の境界線は、関連する格子部分の格子線を横切って延在するようにしたことを特徴とする光学走査装置。
2.前記検出器がフォトダイオードである光学走査装置において、フォトダイオードを単一の基板に集積するようにしたことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の光学走査装置。
3.前記放射線源がダイオードレーザである光学走査装置において、前記ダイオードレーザである光学走査装置において、前記ダイオードレーザおよび前記フォトダイオードを単一の基板に集積するようにしたことを特徴とする特許請求の範囲第2項記載の光学走査装置。」(特許請求の範囲)
ロ.
「第1図は、放射線(光線)を反射する情報平面2を有する光学的記録担体1の半径方向の縦断面図である。この情報平面に配置されたトラック3は第1図の図面平面を横切って延在する。情報平面は、放射線源4、例えばダイオードレーザにより放出されたビーム5により走査される。このビームは、単一レンズにより図式的に表現される対物(レンズ)系6により集束され、情報平面に小さな放射線スポット7を形成する。記録担体1は回転軸8につき回転するため、トラック3は走査され、読取ビームは、このトラックに含まれる情報により変調される。
この記録担体1と、放射線源4および対物系6を具える読取り装置とを、放射方向に相互に移動させることにより、情報平面全体を走査している。」(第3頁左上欄第2行〜第16行)
ハ.
「これがため、本発明の装置では反射ビームを2個のサブビームに分割するビームスプリッタを設け、さらに、例えば一直線上に配設された、例えば4個の検出器を設ける。第1に一対の検出器は第1のサブビームと共働し、第2の一対の検出器は第2のサブビームと共働する。これらの検出器の出力信号は処理されて、特にフォーカスサーボ信号を形成する。
「ノイエス アウス デア テクニク」第6号・・・・・・・・・ように、ビーム分離およびビーム分割を単一素子、即ち透過形回折格子により行うことができる。この回折格子は入射ビームを回折されていない零次ビームと、複数の回折された1次ビームおよび高次ビームに分割する。この格子パラメータ、特に格子間隔、格子の溝の深さおよび格子の溝の形状を、入射光の大部分が回折されて1次ビームの1つになるように、選択することができる。格子パラメータの1つが各々異なる2個の格子部分に回折格子が分割されるため、格子部分により形成された1次ビームは異なる配向を有し、換言すれば、ビームを分割することができる。
本発明により、回折格子9は、2個の格子部分(Sub-grantings)10および11を具え、これら格子部分は、同一の格子間隔を有するが、格子細条(即ち格子線)13および14が格子部分10および11の間の境界線26に対し夫々β1およびβ2の角度で延在する。」(第3頁右上欄第8行〜左下欄第17行)
ニ.
「サブビーム5aおよび5bの通路において、放射線感知検出器16,17および18,19を適宜配設して、情報平面2にビーム5が正確に集束される場合に、サブビーム5aおよび5bにより形成された放射線スポット20および21が、検出器16,17および18,19夫々に対し対称に配置されるようにする。」(第3頁右下欄第2行〜第7行)
ホ.
「検出器16,17,18および19の出力信号はS16,S17,S18およびS19で夫々現される場合に、フォーカス・サーポ信号Srは、
Sr=(S16+S19)-(S17+S18)で与えられる。
読取る情報に比例する信号または情報S1は、
S1=S16+S17+S18+S19で与えられる。
第1図に示されるように、2個の格子部分10および11の境界線は、読取るべきトラック3の方向に対し平行に延在するならば、同一の検出器によりトラッキングエラー信号Srを発生することができる。この信号は
Sr=(S16+S19)-(S17+S18)
で与えられる。」(第4頁左上欄第1行〜第15行)
ヘ.
「最後に、検出器対16,17および18,19を互いに近接させて配置して、4個の検出器を1個の基板に集積し得るようにすることができる。放射線源がダイオードレーザである場合には、このダイオードレーザを第1図にしめすように、同一の基板25に形成することができる。」(第4頁右上欄第10行〜第16行)

訂正発明と先願明細書に記載された発明を対比すると、訂正発明の位相格子ビーム分離器(2)が、「各回折ビームは該位相格子の共通のエリアから放射される」とする点で、先願明細書に記載された「回析格子」は、2個の格子部分を備え格子細条の配向を異なる方向にし、サブビームを共通のエリアから放射しない点で相違する。
したがって、請求項1〜18の発明は、先願明細書に記載された発明と同一といえないから、特許を受けることができるものである。

[4]むすび
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成5年改正特許法第126条第1項第1ないし3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2ないし3項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
記録媒体の光学読取装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 トラック追従操作及び/又は焦点合わせ調整動作を可能にするために平坦な記録媒体を光学的に読取る装置であって、
読取ビーム(F1,F2,F3,F4)を放射するレーザ源(1)と、
少なくとも第1及び第2の光検出デバイス(6,7)と、
前記レーザ源と記録媒体を受容するように構成された読取ゾーンとの間に配置された位相格子ビーム分離器(2)であって、該位相格子ビーム分離器(2)により偏向されないビームを前記読取ゾーンに放射し、戻って来る検出ビームを受け取り、該受け取った検出ビームを前記光検出デバイスに向けて送る、該位相格子ビーム分離器(2)と、
前記位相格子ビーム分離器と前記読取ゾーンとの間に配置された集束デバイス(4)とを備え、
前記光検出デバイス(6,7)は、前記レーザ源から放射される読取ビームの伝搬方向(YY’)に垂直な平面上に該レーザ源の両側に該レーザ源に近接して配置されており、前記第1及び第2の光検出デバイスは、記録媒体の平面に関し共役でない同一の面に配置され、前記位相格子ビーム分離器は、前記検出ビームを受け取って前記光検出デバイスに同じ強度の回折ビームを提供し、各回折ビームは該位相格子の共通のエリアから放射されることを特徴とする記録媒体の光学読取装置。
【請求項2】 前記二つの光検出デバイスは同じチップ(16)に集積されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】 前記第1の光検出デバイス(6)はトラック追従操作を可能にし、前記第2の光検出デバイス(7)は読取ゾーン上での読取ビームの集束を可能にする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】 記録された情報がある方向(XX’)に移動し、前記光検出デバイス(6,7)が、ディスク上の情報の移動の方向に平行に配置される請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】 前記光検出デバイスが記録されたトラックの読取を実行するために使用される請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】 前記レーザ源に向かう前記位相格子のゼロ次の回折を減少させる手段を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】 前記ゼロ次の回折を減少させる手段が1/4波長板を有する請求項6に記載の装置。
【請求項8】 前記1/4波長板が前記位相格子と前記読取ゾーンとの間に配置される請求項7に記載の装置。
【請求項9】 前記透明プレート(23)がガラスまたはポリマー材料から作られる請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】 前記位相格子が、周囲の屈折率とは異なる屈折率(n)を有しており、溝の形の格子を備える透明プレートからなる請求項1から9のいずれか項に記載の装置。
【請求項11】 前記溝の深さ(e)が前記レーザ源(1)の放射波長に比例し、且つ剛性の透明プレートと周囲の屈折率の差に反比例する請求項10に記載の装置。
【請求項12】 前記溝(20)が平行な直線状である請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】 前記溝が同心円の一部である請求項10又は11に記載の装置。
【請求項14】 前記溝が同心楕円の一部である請求項10又は11に記載の装置。
【請求項15】 前記位相格子(20)が平面である請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】 前記位相格子(20)が読取ビーム(F1)の軸(YY’)に垂直である請求項15に記載の装置。
【請求項17】 前記溝が矩形の断面を有する請求項10に記載の装置。
【請求項18】 前記溝が三角形の断面を有する請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンパクトディスク、ビデオディスク又はディジタル光ディスク等の名称で市販されている光ディスク読取のための光学ヘッドに特に使用される光記録媒体の光学読取装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
公知のタイプの光ディスク読取装置は第1図のごとく、
-直線偏光ビームを放出するレーザ源1と、
-偏光分離素子8と、
-四分の一波長板3と、
-集束レンズ4と、
-信号検出及び位置合わせエラー検出用の検出器アセンブリ9とを含む。
【0003】
従来技術において、偏光分離素子は、接線偏光波の反射と球欠偏光波の透過とを確保する誘電体薄膜82の層を正中面に含むガラスキューブから成る。
【0004】
レーザ源1は、偏光分離器によって四分の一波長板3に反射されるような偏光ビームを放出する。ビームはここで円偏光ビームに変換され、レンズ4によってディスク5に集束される。ビームは、ディスク5に存在する情報に従う位相シフトを伴って反射される。次に四分の一波長板3が円偏光ビームを直線偏光ビームに再変換する。得られたビームはセパレータキューブ8を再度透過して検出器アセンブリ9に伝送される。第1図の検出器アセンブリ9は光検出器でもよい。光検出器によって検出される光の量は、ディスク5によって導入される位相シフトの大きさの関数であり、従ってセパレータキューブ8によって再伝達された光の量の関数である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかるシステムは種々の欠点をもつ。第一に、セパレータキューブ8を介して源1とディスク5とに対する検出器アセンブリ9の位置合わせを行なうことが難しい。このような位置合わせの場合、セパレータキューブの位置に関して許容される公差が数ミクロンである。
【0006】
また、かかるセパレータキューブはコストが高い。
【0007】
最後に、このようなアセンブリは比較的大型になる。
【0008】
本発明は、素子の集成及び素子相互の位置合わせに関する制約がないように設計され且つ小型化された安価な光学読取装置を提供することによって上記のごとき欠点を是正する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このために本発明によれば、トラック追従操作及び/又は焦点合わせ調整動作を可能にするために平坦な記録媒体を光学的に読取る装置であって、
読取ビーム(F1,F2,F3,F4)を放射するレーザ源(1)と、
少なくとも第1及び第2の光検出デバイス(6,7)と、
前記レーザ源と記録媒体を受容するように構成された読取ゾーンとの間に配置された位相格子ビーム分離器(2)であって、該位相格子ビーム分離器(2)により偏向されないビームを前記読取ゾーンに放射し、戻って来る検出ビームを受け取り、該受け取った検出ビームを前記光検出デバイスに向けて送る、該位相格子ビーム分離器(2)と、
前記ビーム分離器と前記読取ゾーンとの間に配置された集束デバイス(4)とを備え、
前記光検出デバイス(6,7)は、前記レーザ源から放射される読取ビームの伝搬方向(YY’)に垂直な平面上に該レーザ源の両側に該レーザ源に近接して配置されており、前記第1及び第2の光検出デバイスは、記録媒体の平面に関し共役でない同一の面、即ち同一の非焦点面に配置され、前記ビーム分離器は、前記検出ビームを受け取って前記光検出デバイスに同じ強度の回折ビームを提供する位相格子からなり、各回折ビームは該位相格子上の共通のエリアから放射されることを特徴とする記録媒体の光学読取装置が提供される。
【0010】
本発明の種々の目的及び刷点は添付図面に示す以下の記載より明らかにされるであろう。
【0011】
【発明の実施の形態】
第1図は前記に説明した従来技術の光学読取ヘッドを示す。セパレータキューブの形態で示されるビーム分離器8に対するレーザ源1の位置と配向との調整が難しいことは明らかである。また、ディスク5によって反射されたビームに対する光検出器9の位置、従ってレーザ源1とセパレータキューブ8とディスク5とによって形成されたアセンブリに対する光検出器9の位置が正確に調整される必要がある。このため、位置調整後に例えば熱膨張等による変化が生じてはならない。従って、第1図の種々の素子を内蔵する図示しないケースは、高精度の加工が可能であり温度変化の作用下で膨張又は変形を実質的に全く生じない材料から製造される必要がある。このような理由から、図示のデバイスを使用した光ディスク読取ヘッドは比較的コストが高い。
【0012】
本発明によれば、第2図に示す光学読取装置の種々の素子は、記録媒体即ち光ディスク5の平面に垂直な軸線YY′に沿って軸合わせされている。
【0013】
第2図は光学読取デバイスとディスク5とを断面図で示す。ディスク上の情報は軸線XX′に沿って移動する。光学読取装置の軸線YY′は軸線XX′に垂直である。
【0014】
読取装置は、
-軸線YY′に軸合わせされて配置され軸線YY′に沿って直線偏光ビームF1を放出するレーザ源1のごとき光源と、
-一方が複屈折性でなく他方が複屈折性である2種類の媒質の界面に配置された位相格子を含む偏光ビーム分離器2とを含む。このビーム分離器はビームF1に垂直に配置されている。該分離器はビームF2を再伝達し、偏光の型及び方向に応じた透過に影響を与えない。逆に、後述するごとく、光ディスクによって反射された後のビームは屈折の対象となるであろう。読取装置は更に、
-直線偏光ビームF2を受容し円偏光ビームF3を再伝達する四分の一波長板3と、
-光ディスク5に読取ビームを投射すべくビームF3をビームF4の形態に集束するレンズ4と、
-軸線XX′に沿って移動し読取ビームF4の下方を順次通過する情報50を担持する光ディスク5と、
-レーザ源の近傍で軸線YY′の両側でディスクの平面に共役でない平面に配置され、軸線XX′に平行な方向即ちディスク5の上の情報の移動方向に平行な方向に軸合わせされた検出デバイス6,7とを含む。
【0015】
ビーム分離器2は例えば第3図のごとく形成される。
【0016】
該ビーム分離器は例えばガラスから成る透明プレート23を含み、溝21及び22のごとき溝の格子20が設けられている。同じく透明で例えばガラスから成るプレート25がプレート23に平行に配置され、プレート23とプレート25との間にスペースが形成され、該スペースに液晶のごとき複屈折材料24が充填されている。シール26が液晶を2つのプレート間に維持する。
【0017】
プレート23を構成する媒質の屈折率をn0とすると、複屈折材料24は、受容ビームF2の偏光に対する屈折率が同じくn0になるように選択される。
【0018】
また、光ディスク5によって反射されるビームF7の偏光に関しては、プレート23を形成する媒質の屈折率をn0とすると、複屈折媒質の屈折率neは、異なる値である。
【0019】
格子のエッチングの深さは好ましくは、ビームF7の0次の回折が0になるように選択される。即ち、
e=エッチングの深さ、
Δn=屈折率n0とneとの差、
λ=レーザ源によって放出される光ビームの波長
とすると、
e×Δn=λ/2
となるように選択される。
【0020】
ビーム分離器2の別の具体例では、典型的屈折率n0=1.5をもつガラス又はポリマーをプレス又はホトエッチングすることによって格子を形成する。このガラスは、格子の溝筋に平行な分子配向軸をもつ液晶セルを閉鎖するために使用される。
【0021】
液晶としては、例えば商標E7で知られておりBDH Chemi-cals Ltd(英国)によって製造されているような共晶混合物が使用され得る。この液晶の標準屈折率は実質的にn0=1.5に等しい。その複屈折率neは約1.725である。即ち2つの媒質23と24との屈折率差は0.225である。
【0022】
従って、動作波長を0.8μmとすると、格子の溝21,22の深さeを1.77μmに等しい値に選択する必要がある。溝の間隔は典型的には10μmに等しい。
【0023】
ガラスプレートに平行な分子配向は、摩擦ポリマータイプの従来の処理によって得られる。
【0024】
液晶の代わりに別の任意の複屈折材料を使用してもよい(例えば配向ポリマー、又は高温で液晶相をもつポリマー)。後者の場合、エッチングに平行なポリマー鎖の配向は高温でネマチック相に移行することによって得られる。この配向はポリマー相に冷却されたときにも保存される。
【0025】
光検出器6,7は好ましくはシリコンから成る1つのアセンブリ又はチップ16に集積される。このシリコンチップ16は、レーザ源によって放出されるパワーを調整するための(図示しない)中央光検出デバイスを含んでもよい。光デテクタ6,7の機能は、径方向及び鉛直方向の位置合わせエラーを検出し、ディスクによって担持された信号を読み取ることである。
【0026】
チップ16と源1とは同一ケースに組み込まれ互いに予め位置合わせされてもよい。径方向及び鉛直方向のエラーを追跡するために、レンズ4はアセンブリの他の部分と別々に移動してもよく又は一体的に移動してもよい。
【0027】
レーザ源1と光検出器6,7のごときチップ16の素子とは電気結線11,12,13,14によって図示しない外部回路に接続されている。
【0028】
前記のごとく記載された光学読取装置の動作を以下に説明する。読取ビームF4はディスク5によってビームF5の形態で反射される。ディスク5に情報が存在しないとき、ビームF5はレンズ4、四分の一波長板3及び分離器2によって透過された後に軸線YY′に関して対称な等しい強さの2つの回折ビームF8及びF8′を生じる。これらのビームはチップ16の検出器6,7に到達し、これらの検出器は所定量の光を検出する。
【0029】
ビームF4がディスク5の上の情報信号の場所に衝突するとき、該ビームの偏光の位相シフトが生じる。このため偏光分離器2によって異なる回折が生じる。ビームF8及びF8′の光の一部が光検出器6,7に到達しない。従ってこれらの検出器によって検出される光の量が減少する。
【0030】
第1具体例において、格子の溝21及び22は直線状溝であり互いに平行に設けられている。
【0031】
しかしながら、非点収差を導入するためにこれらの溝を楕円形にすることも可能である。この場合格子は第4図のごとく軸UU′を1つの軸とする同心楕円の部分から成る形状をもつ。
【0032】
楕円格子をもつ場合、光検出器の1つ、例えば光検出器7が、第5図のごとく平面P′に十字形に配置された4つの光検出器70,71,72,73を含む。
【0033】
ディスク5がレンズ4に対して正確な間隔で配置されているとき、回折ビームF8′は円の形態で光検出器70,71,72,73に到達し各検出器が均等に照射される。
【0034】
ディスク5がレンズ4に対して正確な間隔で配置されていないとき、又はレンズ4が軸線YY′に沿って移動するとき、ビームF8′は、軸UU′に平行な軸を1つの軸とする楕円形の像を光検出器70〜73に投射する。例えばレンズ4がディスク5に近すぎると、光検出器70〜73における楕円像の長軸は軸UU′に平行であり、2つの光検出器、例えば光検出器70,72は別の2つの光検出器71,73よりも光を多く受容する。逆に、レンズがディスク5から遠すぎると、光検出器の像の長軸が軸UU′に垂直になり、2つの光検出器71,73が光検出器70,72よりも光を多く受容する。
【0035】
分離器2を軸線YY′に対して傾斜させることによって格子20の非点収差を増加させてもよい。
【0036】
また、同心円形の溝をもつ格子20を使用してもよい。この場合、円形格子20に非点収差効果を与えるために分離器2を軸線YY′に対して傾斜させる。
【0037】
第6図はこのような分離器2の傾斜を示す。
【0038】
また、非点収差を導入するために、光検出器を担持するチップ16を軸線YY′に対して傾斜させてもよい。かかる構造は図示されていないが第6図と同様である。
【0039】
また、光検出器6が複数の光検出器を含んでいてもよい。特にディスク上の情報の移動方向(軸線XX′)に対して垂直な方向に軸合わせされた2つの光検出器60,61を含んでいてもよい。
【0040】
これらの光検出器60,61は、ビームF4がディスク5のトラックに位置合わせされたときに2つの光検出器が同量の光を受容するように配置される。
【0041】
この場合、光検出器6,7はプッシュ-プルモードで動作し、読取装置の軸線YY′が径方向でディスク5の情報トラックによって自動制御されるように機能する。
【0042】
ディスク5における読取ビームの集束を調整し得る光検出器70〜73とディスク上の読取ビームの径方向調整を行ない得る光検出器60,61とを組み合わせると、第7図の底面図で示すアセンブリが得られる。第7図によれば、十字形に配置された4つの光検出器70〜73と、側面で互いに接合された2つの光検出器60,61とがレーザ源1の両側に配置されている。
【0043】
上記の調節機能以外にも、これらの異なる光検出器によって与えられた光度読取りの統合によってディスクに書き込まれた情報の検出を行なうことが可能である。
【0044】
以上の記載では、ビーム分離器が、偏光ビーム分離器、特に複屈折媒質を含む分離器である具体例に関して説明した。
【0045】
記載のシステムにおいて複屈折媒質を含まない分離器2を使用することも可能である。
【0046】
このような本発明の装置の具体例を第8図に示す。この具体例は第2図と同様の構造を有するが、ビーム分離器2が、分離器2の両側の媒質とは異なる屈折率(n)をもつ透明プレートから形成されている。また分離器2は溝の形の格子を有している。
【0047】
第8図の装置は四分の一波長板を含まない。しかしながら図示しないが、例えば分離器2とレンズ4との間に四分の一波長板を配置することも可能である。このような四分の一波長板は、同じ偏光がレーザに逆反射されることを阻止することによってレーザ内のノイズを必要に応じて低減し得る。
【0048】
この具体例において、分離器2の格子の溝は平行な直線状溝である。
【0049】
格子が同心円形の溝を有していてもよい。
【0050】
第5図の十字形に配置された4つの光検出器70,71,72,73に関して前記に説明したような非点収差を導入するために、分離器2を第6図のごとくデバイスの軸線YY′に対して傾斜させる。
【0051】
この場合、分離器2は直線状溝をもち、非点収差を増すために回折の反対方向に傾斜している。また、既に非点収差を導入している同心円形の溝を使用してもよい。この場合にも分離器を傾斜させると非点収差が強調される。
【0052】
また、溝が楕円形でもよく、この場合格子は、円形溝をもつ傾斜格子と同様の非点収差を導入する。
【0053】
また、溝が三角形断面を有していてもよい。より詳細には、溝が第2図に示すごとき鋸歯形(blazed grating)でもよい。この場合、各歯の深さeは、e.Δn〜λ[Δnは分離器2とその両側の媒質との屈折率の差でありλは光波の長さである]で示される。
【0054】
第10図の変形具体例において、分離器2の格子の溝は反射性でもよく、例えば金属化されていてもよい。
【0055】
同様に、複屈折媒質を含む分離器の場合、反射面を配備してもよい(第11図に斜線部分で示す)。
【0056】
第12図は検出デバイスにおける分離器2の、一方でレーザ源1及び検出器6,7に対する位置、他方で記録媒体5に対する位置を示す。図示のごとく分離器2は反射及び屈折によって前記同様に動作することが理解されよう。
【0057】
このような本発明の光学読取装置は公知デバイスに比較して寸法の小さい小型デバイスとして構成され得る。
【0058】
例えば本発明のデバイスの構造によって、
-対物レンズ(即ちレンズ4)の口径5mm
-レンズ4からディスク5までの間隔5mm
-レンズ4からレーザ源1までの間隔20mm
-レーザ源1からチップ16の平面までの間隔1mm
-光検出器(6又は7)から軸線YY′までの間隔2mm
-レーザ源1とチップ16とのアセンブリを内蔵するケースの直径9mm
の光学読取装置が製造され得る。
【0059】
これらの数値は本発明で得られた読取装置がどのように小型化できるかを示すための非限定例にすぎない。別の構造によって別の寸法を使用し得ることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】
従来技術の光学読取装置を示す。
【図2】
本発明の光学読取装置の1つの具体例を示す。
【図3】
本発明に係る偏光ビーム分離器の1つの具体例を示す。
【図4】
本発明に係るビーム分離器の具体例の平面図を示す。
【図5】
本発明の読取装置に適応する光検出器の1つの具体例を示す。
【図6】
本発明の読取装置の1つの具体例を示す。
【図7】
本発明の読取装置に適応する光検出器及びレーザダイオードの1つの具体例を示す。
【図8】
本発明の光学読取装置の別の具体例を示す。
【図9】
複屈折媒質を含まないビーム分離器の具体例を示す。
【図10】
複屈折媒質を含まないビーム分離器の具体例を示す。
【図11】
複屈折媒質と反射面とを含むビーム分離器の別の具体例を示す。
【図12】
本発明に係る光検出器の変形具体例を示す。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2003-02-19 
出願番号 特願平8-178194
審決分類 P 1 41・ 851- Y (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川嵜 健山田 洋一  
特許庁審判長 麻野 耕一
特許庁審判官 相馬 多美子
田良島 潔
登録日 1999-06-04 
登録番号 特許第2935418号(P2935418)
発明の名称 記録媒体の光学読取装置  
代理人 川口 義雄  
代理人 川口 義雄  

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