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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 無効としない C12M
管理番号 1077474
審判番号 無効2002-35205  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-10-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-05-23 
確定日 2003-04-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第3002732号発明「麹基質の自動盛込方法及び自動盛込装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯及び本件発明
1-1 手続の経緯
本件特許第3002732号に係る発明についての出願は、平成2年2月16日に特許出願され、平成11年11月19日にその特許の設定登録がなされ、その後、平成14年5月23日付けで請求人 永田醸造機械株式会社より特許無効審判が請求され、平成14年10月31日に口頭審理を行って本件事件の争点整理をし、その後請求人及び被請求人より上申書が提出されたものである。

1-2 本件特許に係る発明
本件の請求項1に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】円形培養床を回転させながら、培養床に麹基質を全面に薄層として盛込む操作を複数回繰返して目的とする層厚まで多層状に盛り込むことを特徴とする麹基質の自動盛込方法。」

2.当事者の主張
2ー1 請求人 永田醸造機械株式会社の主張
請求人は、甲第1号証(特開昭59-59186号公報)及び甲第2号証(実公昭53-42640号公報)を提出して、「甲第1号証に抜け掛け方式として記載されている構成と、甲第2号証に搬送機として記載されている構成との組み合わせによって、本件発明の請求項1に記載の方法は明らかに公知の技術の単なる寄せ集めにすぎない」(審判請求書3頁末行〜4頁2行)から、本件の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、当然無効とされるべきものである旨主張している。

2-2 被請求人 株式会社フジワラテクノアートの主張
被請求人は、答弁書において、「請求項1の方法とは対象物も目的も異なる甲第1号証と、本件方法の記載も示唆もない甲第2号証の組み合わせによって、本件特許の請求項1記載の方法が『公知の技術の単なる寄せ集めにすぎない』という請求人の主張は明らかに失当である」と反論している。

3.甲第1号証及び甲第2号証記載の発明
甲第1号証には、下記の(a)〜(c)の事項が記載されている。
(a)「この発明は一般酵素工業並びに醸造工業の自動蒸きょう製麹装置において、資料の蒸きょう作業から製麹作業までを一貫して連続的におこなわせ、設備の低減と繁雑な作業の省力化を計ると同時に、処理工程中に汚染を招く雑菌の繁殖を防止して製品の品質向上を計る多目的連動蒸きょう冷却製麹装置に係るものである。」(公報2頁左上欄5〜11行)
(b)「この発明においては従来法のかかる欠陥を是正し、蒸きょう作用において資料の完全均一蒸しを達成させるために、培養床の裏面に縦型に放射状に区画された蒸気室を構成するための仕切板を設けこの仕切板の底面としての円盤を昇降自在に配設し、資料の蒸きょうに当つてはこの円盤を仕切板の底面に密着させ、数室に区画した蒸気発生室を構成させ、蒸きょうに供給する蒸気の温度低下を防止すると共に、資料の蒸気の供給を均一にして外硬内軟蒸しを完成させる。」(公報2頁左下欄10行〜右下欄4行)
(c)「次に上記装置の作用、効果を説明する。資料の蒸きょう作業において蒸気発生室仕切板の底板としての円盤10を上昇させ、仕切板底面に密着させて蒸気発生区画室を構成する。次に多孔板からなる培養床7を回転駆動させる。培養床7の上方に昇降自在に設けた盛込手段5を資料の堆積層厚に合わせ、内周側に向つて資料の搬送が働くように駆動回転させ、投入口24から資料を投入し、蒸気バルブ13を開き、蒸気噴射孔11から蒸気を供給する。 ……………蒸きょう作業は資料を一定の層厚に堆積し、蒸気を供給して行うこともあるが、資料を薄層に堆積し、その層を蒸気が通過した後、更にその上に資料を張り込む抜け掛方式が蒸きょうの均一化を計る理想的手段である。抜け掛蒸きょうに当つては、資料の盛込手段5を資料の層厚が例えば10〜20cmとなるように設定し内周側に搬送が働くように駆動する。蒸きょう培養床が一周し資料の堆積層を蒸気が通過した後、盛込手段5を上昇させ、更に10cm〜20cm厚を張込む。培養床7の回転2周において更に張込んだ層を蒸気が通過したならば前記した要領によつて、10〜20cmずつ堆積層が増すように逐次資料を張込み、蒸気の抜け掛による蒸きょう作業を進行する。蒸きょう作業の完了後、……………、蒸気発生区画室の底面を開放し、蒸きょう資料の冷却に移行する。……………崩壊される資料に対し手入機6の上方に設けた麹菌種切り機8によつて麹菌を撒布し、種切りをおこなわせる。種切りを完了した資料は自動的に製麹工程に移行する。」(公報3頁左下欄2行〜4頁右上欄2行)
また、甲第2号証には、「麹基質の培養床を回転円盤とし、麹基質の盛込、出麹及び手入の各作業を該回転円盤の回転と搬送機及び手入機の回転作動とを一緒に行なわせて麹基質の盛込作業と出麹作業並びに手入作業を自動的に行なうように形成された回転式自動製麹装置において、適宜駆動部4を介して搬送速度を一定に設定した搬送機2を前記回転円盤1の半径方向上方に該回転円盤1の中心部と外周部の範囲内を移動可能に配設し、且又可変移動装置9を介して該搬送機2の吐出側に位置する回転円盤1の周速度に逆比例させて該搬送機2の移動を行なうように形成して麹基質の盛込みを均一に行なうようにした回転式自動製麹装置における麹基質自動盛込装置。」(実用新案登録請求の範囲)、及び「従来回転式製麹装置の盛込作業は培養床の回転円盤を回転させ乍ら麹基質は空気輸送又は固作搬送機を介してシュートで盛込み、円盤上方に昇降自在に設けた搬送用スクリューを正、逆転させることによつて麹基質を均一に盛込ませている。しかし、麹基質の性格によつては搬送用スクリューを使用することは麹基質の表面を切削することにより不合理性が生じる場合がある。…………………本案は上記欠点を除去する為に考案されたものであつて、搬送機自体の円盤上の中心部及び外周部への移動時間を円盤の周速度に逆比例して制御し麹基質の盛込みを均一にならしめるものである。」(公報1頁2欄1〜17行)と記載されている。

4.当審の判断
本件の請求項1に係る発明と甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明を対比、検討する。
甲第1号証には、浸漬米等の原料の蒸きょう冷却作業と製麹作業を回転する円形培養床を備えた一つの装置内で逐次行わせることを可能にした自動蒸きょう製麹装置が記載され、そこにはさらに、浸漬米等の原料を円形培養床での層厚が例えば10〜20cmとなるよう薄層に堆積し、その層に蒸気を供給し、上記培養床が一周し原料の堆積層を蒸気が通過した後、更にその上に10〜20cm厚で原料を盛込み、上記培養床を回転させながら新たに盛込んだ層を蒸気が通過したならば前記した要領によって、10〜20cm厚の原料の堆積と蒸気の供給を繰り返すことにより、蒸きょう作業を進めることが記載されている。
しかしながら、甲第1号証に「蒸きょう作業完了後、…………………麹菌を撒布し、種切りをおこなわせる。種切りを完了した資料は自動的に製麹工程に移行する。」と記載されていることからも明らかなように、甲第1号証においては、蒸きょう工程において、浸漬米等の原料の蒸きょうを均一に行うことを目的として上記盛込む操作を行うものであり、しかも、原料を円形培養床に薄層に盛込む操作と蒸気を供給する操作をセットにしてこれら操作を複数回繰返すようにしたものである。
これに対して、本件の請求項1に係る発明においては、製麹工程において、すでに蒸きょう処理がなされている麹基質を円形培養床に薄層として盛込む操作を複数回繰返すようにしたものであり、この点で両者は明らかに相違する。
甲第1号証には、円形培養床上に麹基質を全面に薄層として盛込む操作を複数回繰返して、目的とする層厚まで多層状に盛り込むことを教示する記載はない。
また、甲第2号証には、麹基質の培養床を回転円盤とし、該円盤の半径方向上方に該回転円盤の中心部と外周部の範囲内を移動可能にした搬送機を設け、該搬送機の吐出側に位置する回転円盤の周速度に逆比例させて該搬送機の移動を行ない、該回転円盤上に麹基質の盛込みを均一に行うようにすることが記載されているが、甲第2号証に記載の麹基質の盛込み方法は、本件明細書に「円形培養床の周速度に逆比例させて盛込装置の移動を行なう装置(実公昭53-42640号)」として例示されている従来技術そのものである。
甲第2号証には、円形培養床上に麹基質を全面に薄層として盛込む操作を複数回繰返して、目的とする層厚まで多層状に盛り込むことを教示する記載は何もない。
請求人は、「本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載の原料を薄層に盛込む操作と甲第2号証に記載の搬送機を移動させて麹基質を盛込む方法とを単に寄せ集めたものにすぎない」旨主張している。
しかしながら、先に記載したとおり、甲第1号証において、原料を薄層に張込む操作は、蒸きょう作業の一つとしてなされるのであり、しかも原料を薄層に盛込む操作と蒸気を供給する操作との結合が必須であることを考えると、甲第1号証に記載の発明から「原料を薄層に盛込む操作」のみを取り出して、かかる操作を甲第2号証に記載の麹基質の自動盛込方法に適用することは、当業者といえども容易に想到し得ることではない。
そして、本件の請求項1に係る発明は、円形培養床を回転させながら、培養床に麹基質を全面に薄層として盛込む操作を複数回繰返して目的とする層厚まで多層状に盛り込むことにより、麹基質の均一かつ疎密のない盛込みができる等特許明細書に記載されたとおりの効果を奏するものである。
してみると、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

なお、請求人は、サンジルシ醸造株式会社 取締役工場長 山本勇治氏署名の証明書を添付した上申書を平成14年11月12日付けで提出して、その中で「2)……………サンジルシ醸造株式会社は、昭和52年度において、永田醸造機械株式会社からNFT製麹装置を引渡され、爾後その装置の円形培養床を回転させながら、培養床に麹基質を全面に薄層として盛込む操作を複数回繰返して、目的とする層厚まで多層状に盛込むことを、同業者を含む見学者の立ち入りを認めて実施していた」及び「3)円形培養床を回転させながら、培養床に麹基質を全面に薄層として盛込む操作を複数回繰返して、目的とする層厚まで多層状に盛込むことは、審判請求書 甲第2号証(実公昭53-42640号)に示される装置においても、実際に行われている。……………〔中略〕……………このように、2分間から4分間の短時間に盛込装置が往復しながら、円形培養床が盛込工程中に複数回回転すれば、必然的に、麹基質を全面に薄層として盛込む操作を複数回繰返すこととなる。このような操作は、本件発明が出願される以前から醸造関係の生産工場で使用されている。」と主張している。
請求人の上記主張を要約すると、「本件の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内において公然知られた発明であるか、又は公然実施をされた発明である、あるいは本件の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、当該発明の特許には、特許法29条1項1号ないし3号違反による無効理由が存在する。」ということになるが、審判請求当初の「請求の理由」には、特許法29条2項違反による無効理由しか示されていない。
そうすると、平成14年11月12日付け上申書において、請求人が新たに主張する上記理由は、審判請求書の「請求の理由」の要旨を変更するものであり、したがって、請求人の上記主張は採用しない。

5.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、本件の請求項1に係る発明の特許を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-02-19 
結審通知日 2003-02-24 
審決日 2003-03-13 
出願番号 特願平2-37095
審決分類 P 1 122・ 121- Y (C12M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鵜飼 健  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 種村 慈樹
近 東明
登録日 1999-11-19 
登録番号 特許第3002732号(P3002732)
発明の名称 麹基質の自動盛込方法及び自動盛込装置  
代理人 中務 茂樹  
代理人 森 寿夫  
代理人 石山 博  
代理人 森 廣三郎  
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