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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A47J
審判 全部申し立て 1項1号公知  A47J
管理番号 1077866
異議申立番号 異議2002-71528  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-06-17 
確定日 2003-03-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3239352号「ジャー炊飯器」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3239352号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕本件特許及び本件特許異議事件についての手続の経緯
本件特許及び本件特許異議事件(特許第3239352号(以下「本件特許」という。)異議申立て)に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
1) 本件特許の出願日:平成7年9月13日
2) 特許権の設定の登録:平成13年10月12日
3) 特許掲載公報の発行:平成13年12月17日
4) 特許異議の申立て(全請求項)(異議申立人・タイガー魔法瓶株式会社):平成14年6月17日付け
5) 証人尋問申請書:平成14年6月17日付け
6) 検証申出書:平成14年6月17日付け
7) 検証物指示説明書:平成14年10月11日付け
8) 口頭審理陳述要領書(特許権者):平成14年11月13日付け
9) 証拠調べ(検証、証人尋問):平成14年11月27日
10) 口頭審理:平成14年11月27日
11) 取消理由通知:平成14年11月27日付け(発送日:同年12月6日)
12) 特許異議意見書(特許権者):平成15年1月24日付け
13) 訂正請求:平成15年1月24日付け
〔2〕訂正事項と訂正の適否についての判断
1.本件平成15年1月24日付け訂正請求は、以下の事項について訂正するものである。
(ア)特許請求の範囲の記載を、下記のとおりとする。
「請求項1
本体外殻を形成する外枠と、この外枠にヒンジ装置により取付けられ前記外枠の上部開口部を開閉する蓋体と、前記ヒンジ装置と反対側で前記外枠の上部外側に設けられた凹み部と、この凹み部に設けられた少なくとも2個の穴部と、この穴部に嵌合して備えられ前記外枠の前側にあるクランプボタンと、前記本体内の前側に各々設けられた制御回路を構成する電源基板および表示基板とを備え、前記凹み部の上部に段部が形成され、前記クランプボタンの内側に先端が常に前記段部の上側に位置する突片が形成され、クランプボタンの上部に後退する方向の力を作用させるコイルばねが、前記段部および前記突片よりも下方に位置しているとともに、このクランプボタンに設けられた爪部と前記蓋体に設けられた爪部とを係合して前記外枠の上部開口部を塞ぐ構成とし、前記凹み部の全ての穴部は、前記外枠を外側から内側へ貫通していないことを特徴とするジャー炊飯器。」
(イ)上記訂正後の特許請求の範囲の記載と関連した、明細書の発明の詳細な説明の、段落0005、段落0006、段落0023、段落0046、および「符号の説明」中の記載を訂正する。

2.そこで、訂正事項について検討すると、請求項1の訂正は、凹み部およびクランプボタンの位置を特定し、ジャー炊飯器の本体に制御回路を構成する電源基板および表示基板を具備する構成に特定し、さらに、凹み部の上部に段部が形成され、クランプボタンの内側に先端が常に段部の上側に位置する突片が形成され、クランプボタンの上部に後退する方向の力を作用させるコイルばねが、段部および突片よりも下方に位置しているという構成に特定するものであり、「発明の詳細な説明」および「符号の説明」中の記載の訂正は、この訂正された請求項1の記載と整合するようにしたものであると認められるので、本件訂正は、全体として特許法第120条の4第2項ただし書第1号所定の特許請求の範囲の減縮に該当する。
そのうえ、訂正事項は、願書に添付した明細書および図面に記載されたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないので、同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定にも適合する。
したがって、本件訂正はこれを認める。

〔3〕特許異議申立てについての判断
1.本件発明は、訂正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(上記〔2〕1.(ア))。

2.特許異議申立人の異議申立ての理由は、本件請求項1に係る発明は、その出願の日前に日本国内で製造販売されたシャープ株式会社製KS‐YG18‐C型の電子ジャー炊飯器」と同一、またはこれに基づき当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第1項または第2項の規定に該当し、その特許は取り消されるべきである、というにある。
そこで当審では、平成14年11月27日に、特許庁審判廷において、異議申立人が申し立てた検甲第1号証に係る「シャープ株式会社製KS‐YG18‐C型の電子ジャー炊飯器」(以下「検証物」という。)について検証するとともに、異議申立人が申請した証人大神健治および、在廷証人として山中肇の2名を尋問し、その結果、検証物は、全体形状・構造として、本体外殻を形成する外枠、この外枠にヒンジ装置により取付けられ外枠の上部開口部を開閉する蓋体、ヒンジ装置と反対側で外枠の外側に設けられた凹み部、この凹み部に設けられた少なくとも2個の穴部、この穴部に嵌合して備えられたクランプボタンとを備えており、クランプボタンに設けられた爪部と蓋体に設けられた爪部とを係合して外枠の上部開口部を塞ぐ構成であり、凹み部の全ての穴部が外枠を外側から内側へ貫通していないこと、を確認し、さらに上記各証人に対する尋問の結果をふまえて、平成14年11月27日付けで、「本件請求項1に係る発明は、平成14年11月27日に実施した検証(検甲第1号証)及び証人尋問(証人:大神健治、山中肇)によって、本件特許の出願前に日本国内において公然知られた発明であると認められる。したがって、本件請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許をうけることができないものである。」旨の取消理由を通知した(発送日:平成14年12月6日)

3.これに対して、特許権者は、平成15年1月24日付けで訂正請求書を提出するとともに、同日付けで提出した特許異議意見書において、訂正後の請求項1に記載されたジャー炊飯器は、検証物と下記の相違点1および相違点2において相違し、下記の発明の効果を奏する旨主張する。
(相違点1)
検証物は、凹み部45’の内面に設けられた2個の穴部46’の全てが、外枠5’の内側まで貫通していないものの、この大部46’に嵌合するクランプボタン47’と同じ外枠5’の前側に位置して、ジャー炊飯器の本体内がどのような内部構成になっているのか明確でない。本件発明は、外枠の上部外側に凹み部が設けられる一方で、それよりも下方の本体内の前側に位置して、制御回路を構成する電源基板および表示基板が各々設けられており、双方の構成が明確に相違する。
(相違点2)
検証物は、凹み部45’とクランプボタン47’との間には、クランプボタン47’の上部に後退する方向の力を作用させるためのコイルばね51’が介在しているものの、コイルばね51’は凹み部45’の底面に形成された断面U字状の収納部に、その上側を開放した状態で設けられているだけで、凹み部45’の上部やクランプボタン47’の内側には、本件発明でいうような異物の侵入を防止するための段部や突片は形成されておらず、これらの段部や突片およびコイルばね51’との位置関係について、検甲第1号証には何も開示がない点。
(発明の効果)
本件発明は、凹み部の上部に段部を形成する一方で、クランプボタンの内側にある突片の先端を段部の上側に位置させることで、クランプボタンと外枠との間から異物が入り込んだとしても、異物は互いに重なり合う突片や段部の上に留まって、コイルばねのある凹み部の下部にまで達することはなく、前述の穴部を外枠の内側へ貫通させないことと相俟って、本体内部の電源基板や表示基板に対する水の侵入を確実に防止することができる。

4.そこで、これらの点について検討すると、検証物のものは、訂正請求によって特定された「凹み部の上部に段部が形成され、前記クランプボタンの内側に先端が常に前記段部の上側に位置する突片が形成され、クランプボタンの上部に後退する方向の力を作用させるコイルばねが、前記段部および前記突片よりも下方に位置している」という構成を具備している点が明らかでない。そして、かかる構成に基づき上記特許権者の主張する効果が奏せられるものと認められる。
なお、特許異議申立人は、特許権者の平成15年1月24日付け訂正請求書および意見書に対して、平成15年2月12日付け上申書(FAXで提出)において、「特許権者(東芝ホームテクノ株式会社)が提出した平成15年1月24日付け「特許異議意見書」および「訂正請求書」を検討いたしましたが、いぜんとして平成14年11月27日の特許庁異議廷において異議申立人が陳述、立証した理由により、特許第3239352号に係る請求項1記載の発明はその特許を取消されるべきであると考えます。」と言うのみで、検証物が、訂正請求によって付加された発明の構成を具備するか否か、また、両者に相違点がある場合に、その相違点が、当業者において容易になし得る程度のことである根拠についても、何ら主張・立証をしていない。
これらを考慮すれば、本件請求項1に係る発明が、検証物に係る発明であるとすることはできず、さらに検証物に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

〔4〕まとめ
以上によれば、特許異議申立人の主張する申立ての理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許を取り消すことはできない。また、ほかに本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ジャー炊飯器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 本体外殻を形成する外枠と、この外枠にヒンジ装置により取付けられ前記外枠の上部開口部を開閉する蓋体と、前記ヒンジ装置と反対側で前記外枠の上部外側に設けられた凹み部と、この凹み部に設けられた少なくとも2個の穴部と、この穴部に嵌合して備えられ前記外枠の前側にあるクランプボタンと、前記本体内の前側に各々設けられた制御回路を構成する電源基板および表示基板とを備え、前期凹み部の上部に段部が形成され、前期クランプボタンの内側に先端が常に前期段部の上側に位置する突片が形成され、クランプボタンの上部に後退する方向の力を作用させるコイルばねが、前記段部および前記突片よりも下方に位置しているとともに、このクランプボタンに設けられた爪部と前記蓋体に設けられた爪部とを係合して前記外枠の上部開口部を塞ぐ構成とし、前記凹み部の全ての穴部は、前記外枠を外側から内側へ貫通していないことを特徴とするジャー炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジャー炊飯器に係わり、特に、蓋体を閉じた状態に保持するクランプ装置を備えたジャー炊飯器に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
従来、この種のジャー炊飯器において、クランプボタンは、外枠の一部にこの外枠の外側から内側へ貫通する貫通孔を設け、この貫通孔に、クランプボタンに設けた軸部を嵌合させることにより、外枠に回動自在に取り付けていた。しかし、この従来の構造では、貫通孔と軸部との間に生じたわずかな隙間を通って、外枠内に水が侵入するおそれがある。そして、万一水が侵入したときには、例えば外枠内でクランプボタンのすぐ下方に制御回路基板が備えられているような場合、この制御回路基板に水がかかるなどの危険性がある。
【0003】
そこで、このような危険性を回避するために、外枠の貫通孔の内側に、水の侵入を防止するパッキンや水の遮蔽板を設けたりしていたが、この従来の構造では、部品点数が多くなり、また、組立が複雑になる問題があった。
【0004】
本発明は、このような問題点を解決しようとするもので、クランプボタンの取付け構造を簡素化し、組立性を改善するとともに、本体内部への水の侵入を防止できるジャー炊飯器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のジャー炊飯器は、前記目的を達成するために、本体外殻を形成する外枠と、この外枠にヒンジ装置により取付けられ前記外枠の上部開口部を開閉する蓋体と、前記ヒンジ装置と反対側で前記外枠の上部外側に設けられた凹み部と、この凹み部に設けられた少なくとも2個の穴部と、この穴部に嵌合して備えられ前記外枠の前側にあるクランプボタンと、前記本体内の前側に各々設けられた制御回路を構成する電源基板および表示基板とを備え、前記凹み部の上部に段部が形成され、前記クランプボタンの内側に先端が常に前記段部の上側に位置する突片が形成され、クランプボタンの上部に後退する方向の力を作用させるコイルばねが、前記段部および前記突片よりも下方に位置しているとともに、このクランプボタンに設けられた爪部と前記蓋体に設けられた爪部とを係合して前記外枠の上部開口部を塞ぐ構成とし、前記凹み部の全ての穴部は、前記外枠を外側から内側へ貫通していないものである。
【0006】
この構成により、外枠の上部外側の凹み部において、外枠の前側にあるクランプボタンの組付けなどのために設けられた穴部は、外枠の内側までは貫通していないので、穴部を伝って水が外から前側に制御回路を構成する電源基板や表示基板を各々設けた本体内部に侵入することはない。したがって、穴部の内側において、外枠とは別体のパッキンや遮蔽板などによる防水処理も不要である。また、クランプボタンに形成した突片が凹み部の段部上に常に位置するようにしたので、かりに突片ないし段部の上側に異物が入ったとしても、この異物が、コイルばねのある凹み部の下部まで侵入することは防止できる。
【0007】
【発明の実施形態】
以下、本発明のジャー炊飯器の第1実施例について、図1から図6を参照しながら説明する。全体の断面図である図1において、1は器本体、2はこの器本体1内に着脱自在に収容される有底筒状の容器たるアルミニウム材料からなる鍋、3はこれら器本体1および鍋2の上部開口部たる上面開口を開閉自在に覆う蓋体である。器本体1は、下面を開口した外枠5と、この外枠5の下面開口に取り付けられた底板6と、内枠側部部材たる筒状の第1の内枠7と、この第1の内枠7の下面開口を塞ぐように配置された内枠底部部材たる第2の内枠8などにより構成されている。本体外殻を形成する前記外枠5および底板6は、ポリプロピレンなどからなっている。また、前記第1の内枠7および第2の内枠8は、ともにアルミニウム材料からなり、外枠5内に組み付けられ、器本体1の内周の内枠を形成するものである。ここで、第2の内枠8は、その外周部が第1の内枠7に下からテーパ嵌合している。そして、鍋2の外側面と第1の内枠7の内周面との間には0.5mm以上の隙間が設けられる。また、第1の内枠7の材料厚さは0.5〜1.0mmであり、第1の内枠7の表面には1〜8μmの厚さでアルマイト被膜が形成されている。一方、第2の内枠8の材料厚さは0.5〜1.0mmであり、第2の内枠8の表面には0.5〜5μmの厚さでアルマイト被膜が形成されている。なお、アルマイト被膜はなくてもよい。また、図5にも示すように、第2の内枠8は、上方へ膨出した凸状部9を中心部に有しているとともに、平坦部10を外周側に有しているが、これら凸状部9と平坦部10との間には、上方へ膨出した段部11が形成されている。また、凸状部9の上面部には開口孔12が形成されている。さらに、第1の内枠7の上面外周部には、鍋2の上部に形成されたフランジ状の取手部13が載る弾性体からなるブレーキブッシュ14が設けられている。すなわち、鍋2は、第1の内枠7の上面外周部に吊り下げられて、内枠7,8内に収容される構成になっている。また、前記底板6の下面には凹部からなる取手部15(図6に図示)が設けられている。
【0008】
16は、鍋2を輻射熱により加熱する加熱手段である炊飯ヒータで、この炊飯ヒータ16は、シーズ式のヒータをリング状に加工したものである。そして、この炊飯ヒータ16は、第2の内枠8の外周部の平坦部10上に設けられた磁器部材からなるヒータ台17により、第2の内枠8と離れた状態で取付け固定される。炊飯ヒータ16を第2の内枠8の平坦部10上に設けているのは、炊飯ヒータ16からの輻射熱を効率よく上方の鍋2の底へ反射させるためである。なお、炊飯ヒータは、アルミニウムブロックにシーズヒータを鋳造した熱板式のヒータであってもよい。
【0009】
一方、第2の内枠8の下方には、鋼板製の遮熱板たる支え板18が空間を形成しつつ設けてある。この支え板18は、第2の内枠8に類似した形状を有し、この第2の内枠8の凸状部9、平坦部10、段部11および開口孔12にそれぞれ対応する凸状部9a、平坦部10a、段部11aおよび開口孔12aを有している。そして、この支え板18は、第2の内枠8の下側のほぼ全体を覆うようにして設けられており、炊飯ヒータ16からの熱を遮断する遮熱機能の他に、強度的に比較的弱い第2の内枠8のアルミ材の補強効果も同時に得る構成となっている。なお、前記ヒータ台17は、直接には支え板18に固定してもよい。また、この支え板18の中心部には、鍋2の温度を検出するための温度検出手段たる負特性サーミスタなどからなる温度センサ21が備えてあり、この温度センサ21を強度的に強い感熱板22の内部に設けることにより、安定して鍋2の温度を検出できるようになっている。温度センサ21を内蔵した感熱板22は、鍋2の外底面に近くなるように、前記第2の内枠8の凸状部9内に位置している。また、感熱板22の下方には、鍋スイッチ23の接点を切り換えるスイッチレバー24が設けられており、これら感熱板22およびスイッチレバー24は、コイルばね25を介して上下動自在にかつ上方へ付勢して設けられる。そして、鍋2を器本体1内に収容すると、前記第2の内枠8の開口孔12より上方へ突出した感熱板22に鍋2の底面が載ることにより、この感熱板22およびスイッチレバー24がコイルばね25の付勢に抗して下方に押圧され、鍋スイッチ23の接点が切り換わって、内枠7,8内の鍋2の有無を検出するようになっている。
【0010】
なお、27は底板6の後側下部に設けられるコードリール、28は外枠5と第1の内枠7との間に立設する筒状の金属製の横遮熱板である。
【0011】
前記蓋体3は、蓋体上面を形成する外蓋31と、この外蓋31の下方に空間を形成しつつ設けられた外蓋カバー32と、この外蓋カバー32の下方に設けられた蓋体下面を形成する放熱板33とにより構成され、さらに、放熱板33の下方には、鍋2の上面開口を塞ぐ内蓋34が着脱自在に設けられる。外蓋31および外蓋カバー32は、いずれもポリプロピレンなどの合成樹脂にて成形されるとともに、放熱板33はアルミニウム板の表面をアルマイト処理して成形される。また、放熱板33の下方にはスタッド35が加締めにより取付けられており、このスタッド35に内蓋34の中心部に設けた弾性を有するシリコーンゴムからなる内蓋押え36が装着される。37は、内蓋34の適所に形成された複数の蒸気通路である。また、38は外蓋カバー32と放熱板33との間に挾んで保持された円環状の蓋パッキンであり、蓋体3の閉塞時に、蓋パッキン38の下端が鍋2の取手部13に密着する。
【0012】
蓋体3は、ヒンジ装置41により外枠5の上側に回動自在に軸支されている。このヒンジ装置41は、外枠5の上部後側および外蓋カバー32の後部を連結する左右方向のヒンジシャフト42からなる。このヒンジシャフト42には、ねじりコイルばねからなるヒンジばね43が設けられており、このヒンジばね43は、蓋体3を開く方向の力を常時作用させるものである。
【0013】
一方、ヒンジ装置41と反対側すなわち前側には、蓋体3を閉じた状態に保持するクランプ装置44が設けられている。このクランプ装置44の組付けのために、図2および図3にも示すように、外枠5の上部外側には凹み部45が形成されており、この凹み部45の左右両側の内壁面には穴部46が相対向させてそれぞれ形成されているが、これら穴部46は、外枠5をその外側から内側までは貫通していない。他にも、凹み部45には、外枠5を外側から内側まで貫通する貫通孔はない。そして、凹み部45内にはクランプボタン47が嵌合させて組付けられている。このクランプボタン47は、その左右両側の外壁面に凸状の軸部48がそれぞれ形成されており、これら軸部48が前記凹み部45の両穴部46にそれぞれ嵌合されていることにより、外枠5に回動自在に軸支されている。なお、両穴部46への両軸部48部の嵌め込みは、クランプボタン47を弾性変形させることによる無理嵌めであり、その弾性変形を可能とするために、クランプボタン47の材料としては合成樹脂のポリプロピレンが選定されている。また、クランプボタン47の上部には凸状の係止爪部49が形成されている。一方、蓋体3の外蓋カバー32にも、クランプボタン47の係止爪部49に対応する位置に凸状の受け爪部50が形成されている。さらに、クランプボタン47の内部には、外枠5の凹み部45において、クランプボタン47に対してその上部が後退する方向の力を作用させるコイルばね51が備えてある。そして、蓋体3を閉じると、その受け爪部50の上側にクランプボタン47の係止爪部49が前から係合し、かつ、この係合状態がコイルばね51により保持されることにより、ヒンジばね43の作用に抗して蓋体3が外枠5の上面開口を塞いだ状態に保持されるようになっている。一方、クランプボタン47の下部を後方へ押すと、コイルばね51の作用に抗して、クランプボタン47の係止爪部49が蓋体3の受け爪部50から外れ、ヒンジばね43の作用により蓋体3が開くものである。
【0014】
なお、凹み部45の上部には段部52が形成されており、一方、クランプボタン47の内側には、先端が常に前記段部52の上側に位置する突片53が形成されている。特に、係止爪部49が後退した状態で、突片53の先端は段部52上に接するようになっている。前記コイルばね51は、突片53および段部52よりも下方に位置している。
【0015】
蓋体3の後部には、この蓋体3の上下を連通し、鍋2内で発生する蒸気を外部に放出させるための蒸気口56が設けられている。この蒸気口56は、そのほぼ水平な上面を形成する合成樹脂製の蒸気口カバー57と、前記外蓋カバー32に一体に形成された開口筒部58と、放熱板33に嵌着されたパッキンを兼ねるゴム製の蒸気口下部体59とにより構成されている。なお、蒸気口カバー57と開口筒部58との間および開口筒部58と蒸気口下部体59との間にはそれぞれパッキン60,61が設けられている。
【0016】
蒸気口カバー57の外周部寄りには、図4にも示すように、一ないし複数の蒸気放出部たる蒸気通路孔62が形成されている。この蒸気通路孔62は、上から見たときに少ない開口面積になるように、水平面に対して傾斜した状態で上向きに開口しているが、その傾斜を形成するために、蒸気口カバー57には、蒸気通路孔62の下側から蒸気口カバー57の上面に至る傾斜面63が形成されている。さらに、蒸気口カバー57における傾斜面63の最下部すなわち蒸気通路孔62に隣接する部分には、傾斜面63にほぼ垂直に立ち上がった縦壁部64が形成されている。なお、前記蒸気口カバー57は、耐熱性、耐スチーム性に優れた合成樹脂材料であるポリプロピレンからなるが、本実施例のように、外蓋31および外蓋カバー32と別体にする他、外蓋31または外蓋カバー32と一体に形成してもよい。
【0017】
また、前記蒸気口下部体59には、蒸気通路孔66を形成する蒸気筒67が、垂直に上へ立てて一体に形成されているとともに、蒸気筒67よりも外周側に、蒸気口56に溜まったおねばや水を排出するおねば戻し孔68が形成されている。
【0018】
71は、放熱板33の裏側つまり上面側に備えた保温用の蓋ヒータで、この蓋ヒータ71は、両面粘着テープ(図示せず)で接着されるアルミ箔72と放熱板33との間にコード状の発熱体を介在させて構成される。また、蓋ヒータ71の上方で外蓋31および外蓋カバー32間には、前記蒸気口56の近傍に配置したグラスウール製の断熱材73が設けられている。76は、保温用のコードヒータなどからなる胴ヒータであり、この胴ヒータ76は、電気的には前記蓋ヒータ71と並列回路を構成している。胴ヒータ76は、接着されたアルミ箔77により、第1の内枠7の外側面に取付け固定されている。なお、78は、第1の内枠7の上部に設けられた一対の温度ヒューズである。
【0019】
器本体1内の前側には、外枠5と横遮熱板28との間に、電源基板支え81に支持された電源基板82と、表示基板支え83に支持された表示基板84とが各々設けられている。両基板支え81,82は互いに固定してあって、両基板82,84は、基板組立としてユニット化されているが、この基板組立は、縦形すなわちほぼ鉛直に器本体1内に収容してある。炊飯および保温などの各種動作を制御する制御回路を構成する両基板82,84のうち、電源基板82の部品面には、コンデンサ、ブザー、直流定電圧回路を形成するためのトランス、ヒータ16,71,76の通断電を制御するリレーや双方向性サイリスタなどの複数の電気部品85,86が実装されている。また、表示基板84には、炊飯や保温の開始や行程の切換えやタイマーの時間設定などを行うためのスイッチ87、時刻表示用のLCD表示部88、LEDからなる行程表示ランプ89および図示していないマイクロコンピュータなどが実装されている。そして、この表示基板84の一側を覆うようにして、外枠5の前面に操作パネル91が装着されており、この操作パネル91には、前記スイッチ87を操作するための押しボタン92が設けられているとともに、表示の説明用の各種文字などを印刷した表面シート93が貼り付けられている。本体外殻を形成する外枠5は、表面にほとんど出っ張りのない形状になっており、操作パネル91の出っ張りも、外観性の向上のために、5mm以内の極力小さいものにしてある。なお、操作パネル91は、外枠5と一体に形成してもよい。
【0020】
ところで、図6に示すように、前述のように内枠7,8の内底部に備えられた炊飯ヒータ16は、1本のシーズヒータをリング状に成形してなるものであるが、この炊飯ヒータ16への給電用の2か所の端子部96は、互いに近接して位置しているとともに、前記基板82,84側に極力近い位置に配置されている。また、第1の内枠7の外周面に設けられた前記胴ヒータ76の両端子部97も、互いに近接して位置しているとともに、前記基板82,84側に極力近い位置に配置されている。炊飯ヒータ16および胴ヒータ76の端子部96,97付近は非発熱部である。
【0021】
つぎに、前記の構成について、その作用を説明する。鍋2内に米および水を収容して炊飯を開始すると、炊飯ヒータ16が通電されて鍋2を加熱する。また、蓋ヒータ71および胴ヒータ76も通電されて、蓋ヒータ71が蓋体3の放熱板33を加熱するとともに、胴ヒータ76が第1の内枠7を加熱する。ヒータ16,71,76の通断電は、温度センサ21により検出される鍋2の温度などに応じて制御される。炊飯加熱行程は、ひたし炊き行程、沸騰加熱行程、沸騰継続加熱行程の順でなされる。所定時間行われるひたし炊き行程は、予備的な加熱で、沸騰加熱行程は、その後の沸騰検出までの強い連続的な加熱である。その際の沸騰検出は、例えば、鍋2の温度上昇の勾配が所定の勾配まで低下したことを検出することによる。また、沸騰継続加熱行程は、沸騰を必要な時間継続させるもので、炊き上がりの検出により終了する。炊き上がりの検出は、例えば、鍋2の温度が所定温度まで上昇したことを検出することによる。さらに、炊き上がりの検出後、所定時間のむらし炊き行程が行われて、炊飯加熱行程が終了する。その後は、保温加熱工程に移行し、蓋ヒータ71および胴ヒータ76の加熱により鍋2の温度が所定温度に保持される。
【0022】
特に、むらしを含めた炊飯時、鍋2内に発生した蒸気は、内蓋34の蒸気通路37から蒸気口下部体59の蒸気筒67内に侵入し、蒸気口56内の空間部69を通って、蒸気口カバー57の蒸気通路孔62から外部に排出される。
【0023】
前記実施例の構成によれば、外枠5の上部外側にある凹み部45内に形成した外枠5の前側にあるクランプボタン47の取付け用の穴部46は、外枠5を外側から内側までは貫通しないものとし、クランプボタン47の材料を弾性変形可能な合成樹脂にして、このクランプボタン47の軸部48を前記凹み部45内の穴部46に無理嵌めしたので、クランプボタン47の弾性力により、その軸部48が穴部46から容易に外れることはなく、また、従来のようにクランプボタンの軸部の取付け用の貫通孔から、前側に制御回路を構成する電源基板82や表示基板84を各々設けた本体内部に水が侵入することがない。したがって、穴部46の内側において、外枠5とは別体のパッキンや遮蔽板などによる防水処理を施すことが不要になり、部品点数を減らすことができ、クランプボタン47の取付け構造を簡素化でき、組立性を改善できる。また、クランプボタン47の内部面は、外枠5の凹み部45内に収納されるので、外観性の体裁もよくなる。さらに、穴部46を貫通しない形状にしたことは、外枠5を合成樹脂により成形する際に、穴部46の形成を容易にできるとともに、バリの発生を防止できる点でも利点がある。
【0024】
また、クランプボタン47に形成した突片53が凹み部45の段部52上に常に位置するようにしたので、かりに突片53ないし段部52の上側にご飯粒などの異物が入ったとしても、この異物が、コイルばね51のある凹み部45の下部まで侵入することは防止できる。
【0025】
さらに、ヒンジ装置41がクランプ装置44とともに外枠5に一体的に構成されているので、ヒンジ装置41およびクランプ装置44の寸法を精度よく確保できる。
【0026】
ところで、炊きむらを低減するために、沸騰初期における鍋2の加熱を連続的に強加熱で行うジャー炊飯器では、沸騰初期および沸騰の後に、蒸気口から重湯が吹きこぼれる危険性が高くなる。これに対して、本実施例のジャー炊飯器では、蒸気口56の上面の開口面積すなわち蒸気通路孔62の開口面積を大きくして、吹きこぼれを抑制している。吹きこぼれを抑制するには、蒸気通路孔の開口面積をかなり大きくしなければならないが、かりに蒸気通路孔が水平のままその開口面積を極端に大きくしたとすると、蒸気口内に上方から塵埃が入りやすくなるなどの問題が生じる。これに対して、前記実施例では、蒸気通路孔62を傾斜状態にし、上から見たときの蒸気通路孔62の平面面積が小さくなるようにしたので、塵埃の侵入を防止できる。
【0027】
ところが、蒸気通路孔62を傾斜状態にするために、蒸気口カバー57には、蒸気通路孔62の下側から蒸気口カバー57の上面に至る傾斜面63が形成されることになるため、もしかりにこの傾斜面63がそのまま蒸気通路孔62まで通じていたとすると、炊飯中またはむらし中に発生した蒸気が蒸気通路孔62から出た後、傾斜面63に沿って流れることになるので、この傾斜面63に蒸気が多量に結露しやすく、蒸気口56付近が汚れやすくなる。また、露が付着した状態で蓋体3を開けると、器本体1の後側へ露が流れ落ちて、この器本体1の後部を汚したり、最悪の場合、床を汚してしまうようなおそれがある。
【0028】
これに対して、前記実施例においては、蒸気口カバー57における傾斜面63の最下部すなわち蒸気通路孔62に隣接する部分に、傾斜面63にほぼ垂直に立ち上がった縦壁部64を形成したので、蒸気通路孔62から放出された蒸気は、縦壁部64により遮られて傾斜面63から離れて流れることになる。したがって、この傾斜面63に結露して付着する露の量が少なくなり、蒸気口56付近が汚れにくくなる。これとともに、蓋体3を開けたときに、蒸気口56から器本体1の後側へ露が流れ落ちることも防止でき、この器本体1の後部や床を汚してしまう不具合も防止できる。こうして、清掃性が改善される。
【0029】
ところで、炊飯や保温の動作を制御する制御回路の信頼性を高めるには、炊飯時の制御回路の基板の温度を低く抑えることが有効であり、従来より、基板に対して遮熱板などを設けて温度上昇を抑制する構造が採られている。しかし、温度上昇の抑制のために専用の部品を設けるのでは、部品点数が多くなり、そのために組立性の悪化もきたす。特に、外観性の向上のために、本体外面からほとんど出っ張ることなく操作パネルを設けたジャー炊飯器にあっては、操作パネルに対応する基板を本体の内部に収納する必要があるため、この基板がヒータにより近く位置することになり、さらに温度上昇が大きくなる不具合がある。
【0030】
これに対して、前記実施例の構成によれば、炊飯ヒータ16および胴ヒータ76をその端子部96,97が基板82,84側に極力近くなるように配置したことにより、炊飯時における基板82,84の温度上昇を効率よく低減でき、制御回路の信頼性を向上できる。すなわち、炊飯ヒータ16をなすシーズヒータの表面温度は、端子部96側では非発熱部があることにより低くなる。逆に、端子部96の反対側は表面温度が高くなり、輻射熱量も多くなる。この傾向は、コード状のヒータである胴ヒータ76でも同じである。したがって、ヒータ16,76の端子部96,97側を基板82,84側に配置することにより、ヒータ16,76の輻射熱による基板82,84の温度上昇を抑制できる。そして、このように基板82,84の温度上昇を抑制しながら、操作パネル91の出っ張りを極力少なくできるので、外観性を向上できる。
【0031】
また、端子部96,97とこれらが接続される電源基板82とが互いに近くなるので、配線用のリード線も短くでき、配線処理を簡素化できる。これとともに、遮熱板などを減らせることとあいまって、組立性を向上できる。
【0032】
さらに、前記実施例の構成によれば、内枠7,8は、その側面部を構成する第1の内枠7と底面部を構成する第2の内枠8とに分割し、これら両者を組合わせて一体化することにより有底筒状の内枠7,8全体を構成するので、第2の内枠8に炊飯ヒータ16などを予め組込んでおき、その後で、第2の内枠8を第1の内枠7に組込むことができ、組立性が向上する。また、鍋2を第1の内枠7の上部に吊り下げて収容することにより、第2の内枠8には鍋2の荷重が加わらなくなることから、第2の内枠8の強度はあまり必要でなくなり、したがって、材料厚さを薄くできる利点もある。
【0033】
しかし、もしかりに第2の内枠が従来のように段部11のない平板的なものであったとすると、第1の内枠7に組込んだ後は問題ないが、組込み前に予め炊飯ヒータ16を第2の内枠に組込む際や、部品の運搬時に第2の内枠が変形するおそれがある。そのため、第2の内枠は、完成後の製品においては、強度があまり要らないにもかかわらず、単に組立上の対応として材料厚さを比較的厚くしなければならないことになる。
【0034】
しかしながら、前記実施例の構成によれば、第2の内枠8において、炊飯ヒータ16を取付ける外周側の平坦部10と、温度センサ21が入る中心部の凸状部9との間に段部11を形成したことにより、第2の内枠8の強度が向上する。すなわち、アルミニウム材料からなる第2の内枠8をプレス加工により成形する際、アルミニウム材料は、加工硬化により強度が上がる。そのため、段部11がない場合には、第2の内枠8の材料厚さを0.7〜1.5mm前後にしなければならなかったのを、0.5〜1.0mm程度に薄くしても、また、表面のアルマイト被膜を従来の1〜8μmから0.5〜5μm程度に薄くして表面強度を弱くしても、さらには、アルマイト被膜がなくても、第2の内枠8を器本体1に組込む前に、第2の内枠8に炊飯ヒータ16や温度センサ21を組込むに際して、十分な強度を得られ、組立性もよい。なお、前記数値範囲の幅は、製品の型の違いなどによるもので、他の条件が同じならば、例えば、従来0.7mmであったのを0.5mmに薄くできるとの意味である。もちろん、第2の内枠8の材料厚さを薄くできることは、軽量化をもたらし、部品運搬時の取扱いも容易になるとともに、炊飯器全体の重量を低減できる。
【0035】
さらに、段部11の分、温度センサ21用の凸状部9の成形高さが低くなるので、アルミニウム材料をプレス加工する際の絞り率が小さくなり、加工性が改善される。しかも、段部11は、炊飯時の鍋2の加熱に影響のない部分にあり、第2の内枠8による反射によっても鍋2を加熱できるので、この鍋2の加熱に支障をきたすことがなく、良好な炊飯性能を確保できる。
【0036】
なお、支え板18についても、段部11aがあることから、同様の作用効果が得られる。
【0037】
図7は、本発明のジャー炊飯器の第2実施例を示すもので、前記第1実施例と対応する部分には、同一符号を付してその説明を省略する。本第2実施例は、アルミニウム材料からなる遮熱部材たる内枠遮熱板101を第2の内枠8上に嵌合して設けたものである。この内枠遮熱板101は、ほぼリング状になっているが、炊飯ヒータ16の外径よりも外径が大きくなっているとともに、炊飯ヒータ16の内径よりも内径が小さくなっており、炊飯ヒータ16と第2の内枠8との間に介在している。なお、本実施例では、碍石からなるヒータ台17の部分を回避するようにして内枠遮熱板101を設けているが、第2の内枠上に内枠遮熱板を介してヒータ台を設け、内枠遮熱板を全周に渡って設けてもよい。また、内枠遮熱板は局部的に設けてもよい。
【0038】
102は炊飯ヒータ16と隔離した状態で、炊飯ヒータ16の上方を覆うようにして設けられたヒータプレートであり、これはアルミニウム板によりほぼ円環状に形成されている。そして、鍋2を器本体1内に収容した状態では、ヒータプレート102の上面に鍋2の底面最下部が載置され、炊飯ヒータ16により加熱されたヒータプレート102の熱が鍋2の底部に伝導される。そして、前記内枠遮熱板101の外径は、ヒータプレート102の外径よりも小さくなっている。また、103は、ヒータプレート102を常に鍋2側の上方へ付勢するコイルばねである。このコイルばね103は、鍋2を器本体1内に収容したときに、ヒータプレート102の上方への弾性力により、常時ヒータプレート102を鍋2に押し当てる構成になっている。ヒータプレート102の組立ては、第2の内枠8の上側から、ヒータプレート102の下方に突出するその支持部材104を、第2の内枠8および支え板18に共通して設けられた抜孔105,106に挿通し、第2の内枠8の下方側から、コイルばね103および金属製のサポート部材107を支持部材104に装着して行なわれる。このサポート部材107は、底板6に固定され、支持部材104を介してヒータプレート102を可動に支持する。
【0039】
炊飯ヒータ16により加熱されて内枠7,8は高温になり、特に炊飯ヒータ16の直下にある第2の内枠8は高温になるが、内枠遮熱板101があるために、炊飯ヒータ16から第2の内枠8への熱伝導速度が鈍化するので、この第2の内枠8の温度上昇を抑制できる。これにより、第2の内枠8の耐熱温度を越えることを防止でき、第2の内枠8の劣化を抑制できる。
【0040】
また、このように第2の内枠8が高温になることを抑制できることにより、この第2の内枠8と嵌合している第1の内枠7が高温になることも抑制できる。したがって、使用者が万一誤って炊飯中や保温中に鍋2を取り出し、内枠7,8を清掃しようとすることがあったとしても、第1の内枠7の温度が高温になっていないことにより、火傷の危険性が少なくなる。
【0041】
また、第2の内枠8の高温化が抑制されることにより、この第2の内枠8からの放熱や、第2の内枠8から支え板18、サポート部材107へと伝導される熱量も減少するので、このサポート部材107と接する部分や炊飯ヒータ16の直下部分における外枠5の温度も低下する。したがって、何らかの事故で異常加熱が生じたような場合、合成樹脂製の外枠5であっても、熱により溶ける危険性がなくなり、安全性が向上する。
【0042】
また、外枠5が金属製の場合、同様にこの外枠5の高温化が抑制されることにより、ジャー炊飯器を移動などさせるときに、外枠5に手などが触れても、あまり熱さを感じずに済み、安全性が向上する。
【0043】
さらに、横遮熱板28と外枠5との間の隙間から、電源基板82や表示基板84へ移動する熱量を低減できるので、半田などで基板82,84に固定してある抵抗やサイリスタやコンデンサなどの電装部品の温度も低下させられ、これら電装部品の寿命の短縮を抑制でき、炊飯器全体としての製品寿命も延ばせる。
【0044】
なお、以上のような内枠遮熱板101を設けたことによる作用効果は、第2実施例のようにヒータプレート102を設けた場合のみならず、前記第1実施例のようにヒータプレートのない場合でも同様である。
【0045】
さらに、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、前記実施例のジャー炊飯器は、鍋の加熱手段が輻射加熱式のシーズヒータであったが、電磁誘導加熱によって鍋を加熱するものであってもよい。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、外枠の前側にあるクランプボタンを組付ける凹み部の全ての穴部は、外枠を外側から内側へ貫通していない構成としたので、前側に制御回路を構成する電源基板や表示基板を各々設けた本体内部への水の侵入を防止できるとともに、穴部の内側での防水処理が不要になることから、クランプボタンの取付け構造を簡素化でき、組立性を改善できる。さらに、コイルばねのある凹み部の下部まで異物が侵入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のジャー炊飯器の第1実施例を示す断面図である。
【図2】
同上クランプ付近の分解斜視図である。
【図3】
同上クランプ付近の断面図である。
【図4】
同上図1の蒸気口付近の拡大図である。
【図5】
同上図1の炊飯ヒータ付近の拡大図である。
【図6】
同上底板部分を除いた概略底面図である。
【図7】
本発明のジャー炊飯器の第2実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
3 蓋体
5 外枠
41 ヒンジ装置
45 凹み部
46 穴部
47 クランプボタン
49 係止爪部(爪部)
50 受け爪部(爪部)
51 コイルばね
52 段部
53 突片
82 電源基板
84 表示基板
 
訂正の要旨 a.特許第3239352号発明の明細書中、特許請求の範囲の請求項1において、「外枠の外側に設けられた凹み部」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として、「外枠の上部外側に設けられた凹み部」と訂正する。
b.特許第3239352号発明の明細書中、特許請求の範囲の請求項1において、「この穴部に嵌合して備えられたクランプボタン」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として、「この穴部に嵌合して備えられ前記外枠の前側にあるクランプボタン」と訂正する。
c.特許第3239352号発明の明細書中、特許請求の範囲の請求項1における「クランプボタンとを備え」の「と」と、「を」との間に、特許請求の範囲の減縮を目的として、「、前記本体内の前側に各々設けられた制御回路を構成する電源基板および表示基板と」を挿入する。
d.特許第3239352号発明の明細書中、特許請求の範囲の請求項1における「備え、このクランプボタンに設けられた爪部」の「え、」と、「この」との間に、特許請求の範囲の減縮を目的として、「前記凹み部の上部に段部が形成され、前記クランプボタンの内側に先端が常に前記段部の上側に位置する突片が形成され、クランプボタンの上部に後退する方向の力を作用させるコイルばねが、前記段部および前記突片よりも下方に位置しているとともに、」を挿入する。
e.特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、特許第3239352号発明の明細書中、明細書の段落番号【0005】第4〜6行目にある「前記ヒンジ装置と反対側で前記外枠の外側に設けられた凹み部と、この凹み部に設けられた少なくとも2個の穴部と、この穴部に嵌合して備えられたクランプボタンとを備え、このクランプボタンに設けられた爪部」という記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「前記ヒンジ装置と反対側で前記外枠の上部外側に設けられた凹み部と、この凹み部に設けられた少なくとも2個の穴部と、この穴部に嵌合して備えられ前記外枠の前側にあるクランプボタンと、前記本体内の前側に各々設けられた制御回路を構成する電源基板および表示基板とを備え、前記凹み部の上部に段部が形成され、前記クランプボタンの内側に先端が常に前記段部の上側に位置する突片が形成され、クランプボタンの上部に後退する方向の力を作用させるコイルばねが、前記段部および前記突片よりも下方に位置しているとともに、このクランプボタンに設けられた爪部」と訂正する。
f.特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、特許第3239352号発明の明細書中、明細書の段落番号【0006】第1〜4行目にある「外枠の外側の凹み部において、クランプボタンの組付けなどのために設けられた穴部は、外枠の内側までは貫通していないので、穴部を伝って水が外から本体内部に侵入することはない。したがって、穴部の内側において、外枠とは別体のパッキンや遮蔽板などによる防水処理も不要である。」という記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「外枠の上部外側の凹み部において、外枠の前側にあるクランプボタンの組付けなどのために設けられた穴部は、外枠の内側までは貫通していないので、穴部を伝って水が外から前側に制御回路を構成する電源基板や表示基板を各々設けた本体内部に侵入することはない。したがって、穴部の内側において、外枠とは別体のパッキンや遮蔽板などによる防水処理も不要である。また、クランプボタンに形成した突片が凹み部の段部上に常に位置するようにしたので、かりに突片ないし段部の上側に異物が入ったとしても、この異物が、コイルばねのある凹み部の下部まで侵入することは防止できる。」と訂正する。
g.特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、特許第3239352号発明の明細書中、明細書の段落番号【0023】第1〜7行目にある「外枠5の凹み部45内に形成したクランプボタン47の取付け用の穴部46は、外枠5を外側から内側までは貫通しないものとし、クランプボタン47の材料を弾性変形可能な合成樹脂にして、このクランプボタン47の軸部48を前記凹み部45内の穴部46に無理嵌めしたので、クランプボタン47の弾性力により、その軸部48が穴部46から容易に外れることはなく、また、従来のようにクランプボタンの軸部の取付け用の貫通孔から本体内部に水が侵入することがない。」という記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「外枠5の上部外側にある凹み部45内に形成した外枠5の前側にあるクランプボタン47の取付け用の穴部46は、外枠5を外側から内側までは貫通しないものとし、クランプボタン47の材料を弾性変形可能な合成樹脂にして、このクランプボタン47の軸部48を前記凹み部45内の穴部46に無理嵌めしたので、クランプボタン47の弾性力により、その軸部48が穴部46から容易に外れることはなく、また、従来のようにクランプボタンの軸部の取付け用の貫通孔から、前側に制御回路を構成する電源基板82や表示基板84を各々設けた本体内部に水が侵入することがない。」と訂正する。
h.特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、特許第3239352号発明の明細書中、明細書の段落番号【0046】第1〜4行目にある「クランプボタンを組付ける凹み部の全ての穴部は、外枠を外側から内側へ貫通していない構成としたので、本体内部への水の侵入を防止できるとともに、穴部の内側での防水処理が不要になることから、クランプボタンの取付け構造を簡素化でき、組立性を改善できる。」という記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「外枠の前側にあるクランプボタンを組付ける凹み部の全ての穴部は、外枠を外側から内側へ貫通していない構成としたので、前側に制御回路を構成する電源基板や表示基板を各々設けた本体内部への水の侵入を防止できるとともに、穴部の内側での防水処理が不要になることから、クランプボタンの取付け構造を簡素化でき、組立性を改善できる。さらに、コイルばねのある凹み部の下部まで異物が侵入することを防止できる。」と訂正する。
i.特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、特許第3239352号発明の明細書中、符号の説明にある「 50 受け爪部 (爪部)」という記載の後に、明りょうでない記載の釈明を目的として、「 51 コイルばね 52 段部 53 突片 82 電源基板 84 表示基板」を加入する。
j.特許第3239352号発明の明細書中、明細書の段落番号【0009】第5〜6行目にある「炊飯ヒータ12」と、明細書の段落番号【0019】第5行目にある「保温のなどの」と、明細書の段落番号【0019】第9行目にある「表示基板68」を、いずれも誤記の訂正を目的として、それぞれ「炊飯ヒータ16」,「保温などの」,「表示基板84」に訂正する。
異議決定日 2003-02-28 
出願番号 特願平7-235535
審決分類 P 1 651・ 111- YA (A47J)
P 1 651・ 121- YA (A47J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新海 岳  
特許庁審判長 青山 紘一
特許庁審判官 岡本 昌直
久保 克彦
登録日 2001-10-12 
登録番号 特許第3239352号(P3239352)
権利者 東芝ホームテクノ株式会社
発明の名称 ジャー炊飯器  
代理人 外山 邦昭  
代理人 外山 邦昭  
代理人 牛木 護  
代理人 牛木 護  
代理人 清水 榮松  
代理人 石原 勝  
代理人 清水 榮松  

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