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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1077943
異議申立番号 異議2001-70293  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-01-24 
確定日 2003-04-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3069682号「反応室のクリーニング方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3069682号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
特許第3069682号に係る発明についての出願は、昭和56年11月30日に特許出願した特願昭56-192292号の一部を平成9年3月28日に新たな特許出願としたものであって、平成12年5月26日にその特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明について特許の設定登録がされた後、その特許について、特許異議申立人柴崎喜江より特許異議の申立てがされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年6月25日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由通知がされ、その指定期間内である平成13年10月22日に訂正請求書の補正がされたものである。

II.訂正請求に対する補正について
1.補正の内容
平成13年10月22日付の補正は、平成13年6月25日付の訂正請求書に添付された訂正明細書について、次の補正を行うものである。
(1)補正事項a
訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1について、
「被膜形成を行わないときに、前記反応室の低温になる領域を加熱しながらエッチングガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより」との記載を、「被膜形成を行わないときに、エッチングガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより」と補正する。
(2)補正事項b
訂正明細書の第16頁第10行〜第16行の、
「【課題を解決するための手段】本発明は、被膜形成を行う反応室を有する装置において、被膜形成を行わないときに、前記反応室の低温になる領域を加熱しながらエッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法である。」との記載を、「【課題を解決するための手段】本発明は、被膜形成を行う反応室を有する装置において、被膜形成を行わないときに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法である。」と補正する。

2.補正の適否について
補正事項aは、平成13年6月25日付訂正請求書による特許請求の範囲の請求項1に関する訂正事項を削除する補正に相当し、また、補正事項bは、上記特許請求の範囲の請求項1に関する発明の詳細な説明の欄の訂正事項を削除する補正に相当するから、いずれも平成13年6月25日付訂正請求による訂正事項の一部削除に該当する。
したがって、この補正は訂正請求書の要旨を変更するものではないから、特許法第120条の4第3項で準用する第131条第2項の規定に適合するものであって、この補正は認められるものである。

III.訂正請求について
1.訂正の内容
平成13年10月22日付の補正が認められることから、訂正請求は、本件特許に係る願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という)を、平成13年10月22日付手続補正書で補正された平成13年6月25日付訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項2の
「【請求項2】被膜形成を行う複数の反応室と、当該複数の反応室の全てに連結され、減圧手段、及び基板を移動する移動機構とを備えた共通室と、から構成される装置において、前記複数の反応室の一部において被膜形成を行わないときに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法。」を、
「【請求項2】被膜形成を行う複数の反応室と、当該複数の反応室の全てに連結され、減圧手段、及び基板を移動する移動機構とを備えた共通室と、から構成される装置において、被膜の積層形成プロセス時に、前記複数の反応室の一部において被膜形成を行わずに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許明細書第13頁第16行〜23行の
「【0024】また、他の発明は、被膜形成を行う複数の反応室と、当該複数の反応室の全てに連結され、減圧手段、及び基板を移動する移動機構とを備えた共通室と、から構成される装置において、前記複数の反応室の一部において被膜形成を行わないときに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法である。」を、
「【0024】また、他の発明は、被膜形成を行う複数の反応室と、当該複数の反応室の全てに連結され、減圧手段、及び基板を移動する移動機構とを備えた共通室と、から構成される装置において、被膜の積層形成プロセス時に、前記複数の反応室の一部において被膜形成を行わなずに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法である。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、拡張・変更の存否について
(1)訂正事項aについて
訂正事項aは、請求項2に係る反応室のクリーニングが、被膜の積層形成プロセス時に行なわれることを明確にし、かつ、技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
そして、上記訂正事項aは特許明細書【0048】に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または、変更するものではない。
(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、上記訂正事項aにおいて特許請求の範囲を減縮することにより生じた特許明細書の記載の不一致を整合させるためのものであり、明りょうでない記載の釈明に該当するものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、または、変更するものではない。

したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

IV.特許異議の申立てについて
1.本件請求項1、2に係る発明
前述のように、上記訂正は適法なものであるので、本件請求項1、2に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのもの(以下、「本件発明1、2」という)である。
「【請求項1】被膜形成を行う反応室を有する装置において、被膜形成を行わないときに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法。
【請求項2】被膜形成を行う複数の反応室と、当該複数の反応室の全てに連結され、減圧手段、及び基板を移動する移動機構とを備えた共通室と、から構成される装置において、被膜の積層形成プロセス時に、前記複数の反応室の一部において被膜形成を行わずに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法。」

2.取消理由通知の概要
当審が平成13年4月16日で通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件の請求項1、2に係る発明は、その出願前に国内において頒布された下記1〜4の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

刊行物1 特開昭54-86968号公報
刊行物2 特開昭55-145338号公報
刊行物3 特開昭52-131470号公報
刊行物4 特開昭55-21553号公報

3.引用刊行物の記載事項
(1)刊行物1
(1ー1)特許請求の範囲には、「各種の半導体装置を製造するにあたつて使用されるシリコン又はシリコン化合物製の装置ないし器具類(但し、プラズマ・エッチャー又はこれに使用する器具を除く)を洗浄するための洗浄方法において、前記装置ないし器具類を、プラズマで励起されたフッ化物ガス雰囲気に接触させることを特徴とする洗浄方法。」が記載され、
(1ー2)第2頁左下欄第1行〜右下欄第5行には、
「反応管10内には、CF、CF4、C2F8のようなフッ化物ガスが流通されると共に 、・・管内のガスはプラズマで励起されて、エッチング反応をひきおこす。・・この結果、・・きわめてクリーンな状態に洗浄される。・・なお、上記した本発明の方法は、拡散炉やCVD装置に用いられている石英管その他のSi又はSi化合物製の治具の洗浄にも適用でき、同様な作用効果を奏するものである。この場合には、簡単なプラズマ発生機構を洗浄対象となる装置に付加し、所定のフッ化物ガスを流すようにすればよい。」と記載されている。
(2)刊行物2
(2ー1)特許請求の範囲には、「加熱炉によって加熱される反応管と、・・洗浄ガスをプラズマ化する手段を具備し、このプラズマ化された洗浄ガスを上記減圧手段を用いて選択的に反応管内に導き、反応管内部を洗浄するようにしたことを特徴とする減圧CVD装置。」が記載され、
(2ー2)第2頁左上欄第18行〜右上欄17行には、
「しかし、このようなCVD装置で、繰り返しCVD被膜の形成作業を行なつていくと、反応管11の内壁に数μmの窒化シリコンや多結晶シリコン等の生成物が堆積される。そして、この生成物は、石英ボード18の出し入れの際に、塵となって半導体ウエーハ17の表面に付着するようになり・・この発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、反応管11をつけたまま反応管内部の洗浄が効果的に行なわれ、非稼働時間を短宿して効率のよい、半導体ウエ?ハ17表面上に不純物の付着されない効果的な半導体ウェーハ17の絶縁被膜形成作業を行なわせることのできる減圧CVD装置を提供することを目的とする。」と記載され、
(2ー3)第2頁左下欄第14行〜右下欄第16行には、
「すなわち、このように構成される装置においては、半導体ウエーハ17に対する絶縁被膜の形成作業は第1図で示したと同様に行なわれるものであり、さらに洗浄ガスを用いた洗浄作業が行われる。この反応管11の内部の洗浄作業は、・・洗浄ガス導入管24より洗浄ガスとして、例えばフレオンCF4と酸素O2の混合気体を導入する。・・このようにして、反応管11に導入されたフツ素プラズマ化された洗浄ガスは、その内壁に付着した窒化シリコンや多結晶シリコンと反応してこれを除去する。」と記載されている。
(3)刊行物3
(3ー1)第1頁左下欄末行〜第2頁左上欄第5行には、
「プラズマエッチングは酸素や,CF4、CCl4等のガスを・・反応室内でプラズマ化し、・・プラズマ化したガスとの化学反応によってその表面を食刻するものである。・・しかるに上記の CF4やCCl4など炭素を含む化合物を用いると、フッ素や塩素と分離した炭素が半導体基板表面や反応室壁面に付着してその表面が黒変したり、汚染されたりすることが多い。これに対して本発明の方法は・・プラズマエッチングやスパッタエッチングに用いるものである。たとえばBrF3、BrF5 、IF5、IF7、NF3、PF3、PF5などがこの目的に適している。上記の物質を構成する元素は・・半導体基板表面や反応室側壁に付着して、汚染の原因となることはない。」と記載され、
(3ー2)第2頁左上欄第14行〜右上欄第11行には、
「三フッ化窒素(NF3)を用いたプラズマエッチングを行う場合について説明する。・・半導体基板上のSiやSiO2,Si3N4と反応してこれらを食刻する。この食刻の速度はプラズマエッチングの条件によって変化するが、CF4ガスを用いた場合とほぼ同様な食刻速度を得ることができる。・・フッ素と分離した窒素(N)は反応には直接寄与しないが、従来用いられてきたCF4の炭素Cと異なり、半導体基板上や反応室側壁に付着することもなく、反応系の全体を清浄に保つことができる。」と記載されている。
(4)刊行物4
(4ー1)第2頁左上欄第9〜13行には、
「本発明装置は薄膜作製室10と、該薄膜作製室10に連設された真空室20と、該真空室20内に収容する基板23の収納用治具22と、両室10、20間に基板23を搬送する移送手機構30とからなるものである。」と記載され、
(4ー2)第2頁右上欄第6〜18行には、
「前記移送手機構30は移送手31とその駆動機構33とからなり、前記薄 膜作製室10と対向側の真空室20に取付けられ、移送手31を、チャンバー21より通路を通つて薄膜作製室10内に、矢印32に示す方向に往復移動させるものである。第2図において、40は真空室排気系で41は主弁、・・46はあらびき用油回転ポンプである。又50は薄膜作製室排気系で・・58はあらびきポンプである。」と記載され、
(4ー3)第3頁左下欄第1〜7行には、
「勿論これに限らず、例えば、・・多層膜をつけるために薄膜作製室や薄膜源を複数個設けて・・使用することができる。」と記載されている。

4.対比・判断
4-1.本件発明1について
刊行物2の記載事項(2-1)〜(2-3)によれば、刊行物2には、「CVD被膜を形成するCVD装置において、CVD被膜の形成作業後、CVD被膜の形成作業を行なつていくことにより堆積された反応管内壁の生成物である窒化シリコンや多結晶シリコン等を、反応管に導入されたフツ素プラズマ化された洗浄ガス、例えばフレオンCF4と酸素O2の混合気体、により、その内壁に付着した窒化シリコンや多結晶シリコン等の生成物と反応させてこれを除去し、反応管内部を洗浄にすること」が記載されていると認められる。
そこで、本件発明1と刊行物2に記載された発明を対比するに、刊行物2に記載された「CVD被膜を形成するCVD装置」、「CVD被膜の形成作業後」、「反応管」及び「反応管内部を洗浄にする」は、それぞれ、本件発明1の「被膜形成を行う反応室を有する装置」、「被膜形成を行わないときに」、「反応室」及び「反応室をクリーニングする」に相当するから、両者は、「被膜形成を行う反応室を有する装置において、被膜形成を行わないときに、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法。」で一致し、本件発明1では、「エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより」クリーニングするとしているのに対して、刊行物2では、「フツ素プラズマ化された洗浄ガス、例えばフレオンCF4と酸素O2の混合気体、により、その内壁に付着した窒化シリコンや多結晶シリコン等の生成物と反応させてこれを除去し」クリーニングするとしている点(以下、「相違点1」という。)で、両者は相違する。
次に、上記相違点1について検討する。
刊行物1の「反応管10内には、CF、CF4、C2F8のようなフッ化物ガスが流通されると共に 、・・管内のガスはプラズマで励起されて、エッチング反応をひきおこす。」(記載事項(1-2))及び刊行物3の「プラズマエッチングは酸素や,CF4、CCl4等のガスを・・反応室内でプラズマ化し、・・プラズマ化したガスとの化学反応によってその表面を食刻するものである。」(記載事項(3-1))との記載によれば、プラズマ化されたCF4と酸素の混合気体は、反応管・反応室でエッチング反応を起こすガスであるから、刊行物2に記載された「フツ素プラズマ化された洗浄ガス、例えばフレオンCF4と酸素O2の混合気体」とは、本件発明1でいう「エッチング用ガス」に相当するガスである。
してみれば、刊行物2に記載された「フツ素プラズマ化された洗浄ガス、例えばフレオンCF4と酸素O2の混合気体、により、その内壁に付着した窒化シリコンや多結晶シリコン等の生成物と反応させてこれを除去し」とは、換言すれば、「エッチング用ガスを用いてプラズマエッチングを行うことにより、反応室(の内壁に付着した生成物)をクリーニングする」ということに他ならず、そうすると、本件発明1と刊行物2記載のクリーニング方法の相違は、結局、本件発明1ではエッチング用ガスとしてNF3を用いているのに対して、刊行物2に記載されたものでは、エッチング用ガスとしてNF3を用いていない点であるといえる。
しかるに、刊行物3の記載事項(3-1)、(3-2)によれば、NF3を用いたプラズマエッチングにおいては、従来用いられてきたCF4と異なり、分離した炭素が反応室側壁に付着して、表面が黒変したり、汚染されたりすることがなく、反応系の全体を清浄に保つことができる旨記載されているから、刊行物3には、NF3がエッチング用ガスであること、さらに、NF3をエッチング用ガスとしてプラズマエッチングを行った場合には、反応室の汚染が生じないことが開示されているといえる。
そうであれば、刊行物2に記載される反応室のクリーニング方法、即ち、エッチング用ガスを用いてプラズマエッチングを行うことにより、反応室をクリーニングする反応室のクリーニング方法において、そのエッチング用ガスとしてNF3を用いることは、刊行物3の記載から当業者が容易に想到し得ることと認められ、そして、これによる効果も、当業者が当然予想し得る程度のものであって、格別顕著であるとはいえない。
なお、特許権者は、平成13年10月22日付の意見書第9〜10頁において、「本件発明は、『エッチング用ガスとしてNF3を用い』ることにより、刊行物1〜3に記載される発明にない特有な効果、別言すれば、『反応室内全体をフレーク等は勿論、クリーニングガス成分の付着もない清浄状態に保つことができ、成膜時における被膜中への不純物の混入を防ぐことができる。』との特有な効果を有するものである」旨主張している。
そこで、上記主張の当否を検討するに、特許権者が主張する上記効果については、本件明細書あるいは図面に具体的に記載されているわけではないから、如何なる根拠に基づいて特許権者が上記の如き主張をするのか明らかでないが、仮に、特許権者が主張するように、本件発明1において、「反応室内全体をフレーク等は勿論、クリーニングガス成分の付着もない清浄状態に保つことができ、成膜時における被膜中への不純物の混入を防ぐことができる。」という効果が奏されるとしても、かかる効果は、刊行物2、刊行物3の記載から当業者が当然に予想し得る範囲内の効果に過ぎない。
即ち、CF4等の炭素を含むエッチング用ガスを用いると、炭素が半導体基板表面や反応室壁面に付着しその表面を汚染することから、これを防止し、反応室を清浄に保つために刊行物3記載のものにおいてはエッチング用ガスとしてNF3を用いているのであるから、刊行物2記載の方法において、エッチング用ガスとしてNF3を用いれば、炭素等による汚染、不純物の生成はなく、反応室内が清浄に保たれるのは明らかであって、そして、その必然的な結果として、成膜時における被膜中への不純物の混入は、当然に防がれるものといえる。
したがって、特許権者の上記主張は採用できない。
よって、本件発明1は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4-2.本件発明2について
本件発明2と刊行物2に記載された発明とを対比すると、両者は、「被膜形成を行う反応室を備えた装置において、被膜形成を行わずに、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法。」で一致するが、前記「4-1.本件発明1について」であげた相違点1に加え、本件発明2は、「複数の反応室と、当該複数の反応室の全てに連結され、減圧手段、及び基板を移動する移動機構とを備えた共通室と、から構成される装置」における反応室のクリーニング方法であるのに対して、刊行物2には、これが記載されていない点(以下、「相違点2」という。)、また、本件発明2は、「被膜の積層形成プロセス時に、前記複数の反応室の一部において被膜形成を行わずに」クリーニングするのに対して、刊行物2には、これが記載されていない点(以下、「相違点3」という。)で、両者はさらに相違する。
そこで、上記相違点1〜3について検討するに、相違点1については、「4-1.本件発明1について」で既に述べたとおりである。
(1)相違点2について
刊行物4には、薄膜作製室10と、薄膜作製室10に連設された真空室20と、両室10、20間に基板23を搬送する移送手機構30と、真空排気系40、50とを備えた薄膜作製装置が記載され、さらに、刊行物4には、薄膜作製室を複数個設けても良い旨記載されているから、刊行物4に記載される薄膜作製装置において、複数の薄膜作製室を設けた場合には、「複数の薄膜作製室10」、「真空排気系40、50」及び「基板23を搬送する移送手機構30」は、それぞれ、本件発明2の「複数の反応室」、「減圧手段」及び「基板を移動する移動機構」に相当する。
そうであれば、刊行物4には、「複数の反応室と、当該複数の反応室に連結され、減圧手段、及び基板を移動する移動機構とを備えた真空室と、から構成される装置」が記載されているといえる。
ただ、刊行物4には、複数の反応室の全てに連結して共通室を設けるとの記載はないが、複数の反応室と真空室とを連結するに際し、複数の反応室に夫々対応させて複数の真空室を設けるか、或いは、複数の真空室を一体化して共通室となし、複数の反応室の全てに対応するように一体化させた真空室、即ち、共通室、を設けるかは、単なる設計的事項と認められ、しかも、真空室を一体化して共通室としたことによる効果も格別顕著であるとはいえない。
よって、相違点2は、刊行物4の記載から当業者が容易に想到し得ることと認められる。
(2)相違点3について
刊行物2には、被膜形成を行わないときに反応室をクリーニングすることが開示されているのみであって、複数の反応室を設けた場合に、どのようにクリーニングするかについての具体的な開示はない。
しかしながら、複数の反応室を設けた場合に、例えば、被膜の積層形成プロセスを全て停止して反応室をクリーニングするか、それとも、被膜の積層形成プロセス時(即ち、被膜の積層形成プロセスの全てを停止することがない状況)に、一部の反応室についてクリーニングを行なうかは、当業者が任意に定め得る事項であって、しかも、クリーニングは、被膜形成を行わない反応室に対してなされることは当然である。
そうであれば、被膜の積層形成プロセス時に反応室のクリーニングを行なおうとすれば、少なくとも、被膜形成を行なっていない反応室を対象とすべきことは明らかであるから、相違点3は、複数の反応室を設けた装置における被膜の積層形成プロセス時のクリーニングに際し、当業者が当然に採用すべき手順にすぎず、当業者にとって格別の困難性を要するものではない。
以上のとおり、上記相違点1〜3は、当業者が容易に想到しうるものと認められ、しかも、相違点1〜3をその構成として備えた本件発明2により奏される効果も、当業者が当然に予想し得る範囲内のものと認められる。
したがって、本件発明2は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1、2についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
反応室のクリーニング方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被膜形成を行う反応室を有する装置において、
被膜形成を行わないときに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法。
【請求項2】
被膜形成を行う複数の反応室と、
当該複数の反応室の全てに連結され、減圧手段、及び基板を移動する移動機構とを備えた共通室と、
から構成される装置において、被膜の積層形成プロセス時に、前記複数の反応室の一部において被膜形成を行わずに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、グローまたはアーク放電を利用したプラズマ気相法(PCVDと以下いう)により、安定して再現性のよい積層被膜を多量に作製するための製造装置に関する。
【0002】
本発明は、PCVD装置に対し、反応系に関してはプラズマ気相法における反応性気体が導入される反応筒内には電極その他のジグを設けず、被形成面を有する基板とその基板ホルダ(例えば石英製のボート)のみを導入し、反応性気体をラミナフロー(層流)とせしめることにより被膜厚を均一とし、さらに膜質もパッチ内、パッチ間でバラツキの少ない半導体膜を形成させるための製造装置に関する。
【0003】
【従来の技術】
一般にPCVD装置において、特に反応力の強い珪素を主成分とする反応性気体であるシランまたは珪素のハロゲン化物気体を用いる場合、反応筒例えば石英ガラス管の内壁およびホルダに吸着した酸素(空気)および水分が珪化物気体と反応して、酸化珪素(低級酸化珪素)を作り、半導体としての導電性を悪くしていた。
【0004】
本発明は、かかる酸素、水分の反応炉への導入を防止するため、この反応筒に連結して基板および基板ホルダを保持または移動する機構を有する室を設け、その生産性および特性の再現性の向上に務めた製造装置に関する。
【0005】
さらに、本発明は、プラズマ放電電界が基板表面に平行に(沿って)印加されるように電極を具備せしめ、活性の反応性生成物が被形成表面に垂直方向に衝突して形成された半導体膜の特性を劣化させてしまうことを防いでいることを他の目的としている。
【0006】
この被形成面上へのスパッタ(損傷)の防止は、例えば被形成面上にP型半導体層を設け、その上面にI型(真性または実質的に真性)半導体層を作製しようとする時、P型を構成する不純物が1017〜1018cm-3の濃度にI層に混入してしまい、PI接合を劣化させてしまう。本発明はかかる欠点を防ぐために示されたものである。さらに本発明は前記した反応系よりなる第1の反応系と、これに連結して第1の室を設け、この第1の室に連結して第2の室を設け、さらにこの第2の室に連結した第1の反応系と同様の第2の反応系を設けた製造装置に関する。
【0007】
かかる製造装置においては、まず第1の室にて真空引され、酸素、水分が除去された雰囲気にて第1の反応炉に基板およびホルダが移動機構により挿入され、この反応炉にて一導電型例えばP型の導電型を有する半導体が形成された。さらにこの半導体が形成された基板を再び第1の室に引出し、さらにこれに連結した第2の室へ同様に酸素、水分の全くない真空中にて移動される。さらにこの第2の室より第2の反応炉に基板およびホルダーを導入させ、第1の室とは異なる導電型または異なる添加物またはその異なる濃度(不純物または添加物)にて第2の半導体層を第1の半導体層上に形成させることができる。
【0008】
この際、第1の反応炉の内壁に付着した不純物が第2の半導体層を形成させる際付着することが全くないため、きわめて精度高く、導電率導電性またはEg(エネルギバンド巾)等を制御することができるようになった。
【0009】
さらに、本発明は、さらにこの独立した反応炉を三系統設け、これらを共通した室すなわち第1、第2および第3の室で互いに連結した製造装置において、特に第1の反応炉にてP型半導体層を、第2の反応炉にてI型半導体層を、さらに第3の反応炉にてN型半導体層を形成して、PIN型のダイオード特に光電変換装置を作製せんとする時、特に有効てある。
【0010】
本発明は、積層するその層の数により共通した室を介して反応炉をその積層する膜の順序に従って設けることにより、その段数を2段または3段のみではなく、4〜10段にすることができる。
【0011】
かくしてPIN、PINPIN、PINIPIN、NIPIN、PINIP、・・・・等の接合構造に作ることができる。
【0012】
また、この半導体層の作製の際、IV価の元素例えば珪素に炭素またはゲルマニュームを添加し、その添加量を制御することにより、添加量に比例、対応した光学的エネルギバンド巾(Eg)を有せしめることができる。例えばPIN接合をEgp、Egi、Egn(Egp>Egi≦Egn)としたW-N-W(広いEg-せまいEg-広いEg)として設けることを可能とした。
【0013】
また、さらにこのPIN接合を二つ積層して設けたPINPIN構造において、Egp1、Egi1、Egn1、Egp2、Egi2、Egn2(Egp1>Egn1≧Egi1≧Egp2≧Egi2≧Egn2)として設け、Egp1(2.0〜2.4eV)、(Egn1(1.7〜2.1eV)をSixC1-x(0<x<1)、Egi1、Egp1(1.6〜1.8eV)をSiにより、Egi2、Egn2(1.0〜1.5eV)をSiXGe1-x(0<x<1)として設けることが可能である。かかるタンデム構造とするには反応系を6系統設ければよい。
【0014】
また、NIPまたはPIN接合としたMIS・FET、バイポーラトランジスタにおいては反応系を2系統とし、第1の反応系により基板上にNまたはP層を、第2の反応系により次のI層を、さらに第1の反応系に基板ホルダをもどして、第3番目のNまたはP層を作製する三層構造を2系統にて作ることが可能である。
【0015】
これら本発明は、反応炉を互いに連結するのではなく、それぞれ独立した反応系を共通する室に連結せしめ、この室を介して基板上に独立した半導体層を形成させることを目的としている。
【0016】
従来、PCVD装置に関しては、上下に平行平板上に容量結合の電極を設け、その一方の電極例えば下側のカソード電極上に基板を配置し、下方向より加熱する方法が知られている。しかし、この方法においては、反応炉は一室であるためP型、I型およびN型半導体層を積層せんとすると、その一回目の製造の後のN型半導体層の不純物が2回目の次の工程のP型半導体層中に混入してしまい、再結合中心となってダイオード特性を劣化させ、さらにその特性が全くばらついてしまった。このため光電変換装置を作ろうとしても、その開放電圧Voc0.2〜0.6Vしか得られず、短絡電流を数mA/cm2しか流すことができなかった。
【0017】
加えてこの平行平板型の装置においては、電界は基板表面に垂直方向であるため、P型層の後I層を作らんととしても、このI層中にP型の不純物が混入しやすく、ダイオード特性が出ない場合がしばしば見られた。
【0018】
さらに、この反応装置は特に予備室を有していないため、1回製造するごとに反応炉の内壁を大気(空気)にふれさせるため、酸素、水分が吸着し、その吸着酸化物が反応中バックグラウンドレベルに存在するため、電気伝導度が暗伝導度で10-11〜10-8(Ωcm)-1、AM1での光伝導度も10-6〜10-4(Ωcm)-1でしかなかった。しかしこの吸着物が全く存在しない装置を使った本発明においては、暗伝導度10-6〜10-4、AM1での光伝導度は、1×10-3〜9×10-2(Ωcm)-1と約100倍も高く、半導体的性質を有せしめることができた。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かくの如く従来多数用いられている平行平板型の一室反応炉のPCVD装置のあらゆる欠点を除去せんとしたものである。
【0020】
さらに、この従来の方式をさらに改良したものに、本発明人の出願になる独立分離型の反応装置が知られている。この装置は、「半導体装置作製方法」昭和53年12月10日(特願昭53-152887)およびその分割出願「半導体装置作製方法」(特願昭56-055608)に詳しく述べられている。さらに、「被膜作製方法」昭和54年8月16日(特願昭54-104452)にもその詳細が述べられている。
【0021】
これらの発明は、例えばPIN接合を有するダイオードを作製せんとする場合、P型半導体層用の第1の反応系、I型半導体層の第2の反応系、さらにN型半導体層用の第3の反応系をそれぞれの反応炉(ベルジャー)をゲイトバルブにて連結したものである。かくすることによりP層の不純物がI層に混入することがなく、またN層の不純物がI層、P層に混入することがない。いわゆる各半導体層での不純物制御を完全に精度よく行なうことができるという特徴を有する。さらにこのP層用の反応炉の前またはN層用反応炉のあとに連結して予備室を設け、いわゆる外部よりの酸素、水蒸気の混入を防止しようとしたものである。
【0022】
しかし、かかる本発明人の発明になる縦型のベルジャー式またはその変形の反応炉を互いに連結した方式においては、基板の温度制御が十分に行えない。すなわち300±20℃程度の温度範囲を有してしまっていた。このため形成される被膜のバラツキが大きく、好ましくなかった。加えてひとつの反応炉に充填できる基板の数量が例えば10×10cm正方形で1〜10枚であった。このため生産性がきわめて低く、いわゆる低価格、多量生産とはいえなかった。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
被膜形成を行う反応室を有する装置において、
被膜形成を行わないときに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法である。
【0024】
また、他の発明は、
被膜形成を行う複数の反応室と、当該複数の反応室の全てに連結され、減圧手段、及び基板を移動する移動機構とを備えた共通室と、から構成される装置において、被膜の積層形成プロセス時に、前記複数の反応室の一部において被膜形成を行わずに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に図面に従ってその実施例を示す。
【0026】
図1は本実施例の横型、独立分離式のプラズマCVD装置すなわに半導体装置製造装置の概要を示す。
【0027】
本実施例はかかる本発明人の独立分離型の半導体装置製造装置をさらに改良し、温度精度も300±1℃以下におさえ、加えて1回のローディング数量を50〜500枚にすることを可能とした低価格、高品質の半導体装置を多量に製造せんとするものである。
【0028】
本実施例に係る半導体装置製造装置は、減圧可能な共通室と、複数の異なった種類の被膜の積層形成に対応して該共通室に対し各々ゲート弁手段を介して気密連結された複数の被膜形成反応炉と、前記複数の反応炉のそれぞれに対し前記共通室内より基板を前記ゲート弁手段を開として搬入搬出する手段と、前記複数の反応炉のそれぞれにて前記ゲート弁手段を閉として被膜を形成する手段を有する被膜製造装置において、前記共通室内より基板を前記複数の反応室に搬入して前記基板上に複数の被膜を積層形成する求めに応じて搬入、被膜形成、搬出を行う機構を有することを特徴とする。
また、別の態様として、減圧可能な共通室と、複数の異なった種類の被膜の積層形成に対応して該共通室に対し各々ゲート弁手段を介して気密連結された複数の被膜形成反応炉と、前記複数の反応炉のそれぞれに対し前記共通室内より基板のみを前記ゲート弁手段を開として搬入搬出する手段と、前記複数の反応炉のそれぞれにて前記ゲート弁手段を閉として被膜を形成する手段を有する被膜製造装置において、前記共通室内より基板を前記複数の反応室に搬入して前記基板上に複数の被膜を積層形成する求めに応じて搬入、被膜形成、搬出を行う機構を有することを特徴とする。
【0029】
図面において第1の反応系(1)は円筒状の反応管(5)例えば透明石英(アルミナその他のセラミックでもよい)であり、その直径は100〜300mmφとした。さらにこの反応炉(5)の外側に一対のプラズマ放電を行なわしめる電極(2)、(2’)を配置した。この電極は例えばステンレス網よりなり、この電極をおおって抵抗加熱ヒータ(3)を設け、指示温度50〜350℃例えば300℃に対し±1℃の精度にて制御されている。
【0030】
基板および基板ホルダは(4)で略記しており、反応性気体は(6)よりホモジナイザ(26)を経て供給される。一対の電極は供給用電源(13)により高周波(10KHz〜100MHz代表的には13.56MHz)が5〜200Wの強さにて供給される。反応後の不要の生成物およびヘリューム、水素等のキャリアガスは、排気口(63)より反応管内の圧力調整用バルブ(14)を経て真空引ポンプ(15)にて排出される。
【0031】
反応筒(5)は反応中は反応圧力は0.05〜0.6torr代表的には0.3torrに保持され、反応性気体の実効流速を数十m/秒にまで速めた。
【0032】
この第1の反応炉に加え、図面では入口側に基板およびホルダ(4)を反応炉内に挿入または内より炉外に引出す移動機構(12)を有する第1の室(7)が設けられている。
【0033】
この室は大気圧にする場合は(14)より高純度空気が供給され、通気はバルブ(39)を経てロータリーポンプ(37)にて0.01torr以下、好ましくは0.001〜0.01torrに真空引がされている。
また、この基板およびホルダ(11)は予備室(8)より移動され、この第1の予備室(8)は(13)より空気が導入され大気圧となり、真空引がバルブ(40)、ポンプ(38)によりなされ、室1(7)と概略等圧の十分な低真空とさせた。そして、基板およびホルダ(10)がホルダ(11)に移される。さらに、このホルダ(11)は第1の反応炉(4)に移され、所定の半導体膜を基板上に形成させた。
【0034】
さらに、この被膜を形成させた後、基板およびホルダ(4)は共通室(7)に到り、外部に取り出すものは予備室(35)より外部に取り出すことができる。
【0035】
また、さらにこの上に半導体層を作ろうとする場合、共通室(7)におけるシャッタ(32)を開け、第2の室(30)に移動させる。このシャッタ(32)および次段のシャッタ(33)は必ずしも必要ではなく、その場合は共通の室を反応炉に連続して複数ケ設けることになる。またさらに基板およひホルダは第2の反応系(42)に移され、第2の半導体層(例えばI層)を第1の半導体層(例えばP層)を形成する履歴に無関係に独立して積層して作ることができた。
【0036】
この第2の反応炉も反応性気体の導入口(27)より反応性気体が入り、キャリアガス、不純物は排気口、バルブ(19)、真空引ポンプ(20)を経て外部に放出される。
【0037】
さらに、この第2の半導体膜が形成された後、第2の予備室(35)を経て外部に取り出されてもよいが、この図面では、さらに第3の反応系(43)を経て、第3の半導体層例えばN型半導体層を形成し、さらにこの三層が形成された基板およびホルダ(34)は真空引をされた第2の予備室(35)を経て、空気管(13)より空気の導入によって大気圧にさせた後、ゲートバルブ(36)をあけて外部に取り出される。
【0038】
以上の概要より明らかな如く、本発明は第1の反応系には第1の室があり、この室に設けられた移動機構(12)により基板およびホルダ(4)は反応炉(1)と第1の室(7)との間を往復する。
【0039】
また同様に、第2の反応炉(42)、第3の反応炉(43)、基板およびホルダの保持および移動機構(29)、(41)を有している。
【0040】
この第1、第2、第3の室は共通させて共通室(7)として設けており、この共通室の前後の入口側および出口側に第1、第2の予備室を空気中の酸素、水分が反応系に混入しないように設けてある。
【0041】
この製造装置においては、各反応ごとに反応炉より一度真空引された共通室(7)に引出されるため、各反応系の反応性気体が全くそれぞれの反応炉に混入されることがない。
【0042】
特に、基板の出入れの際は、各反応炉と共通室との間のしきりゲイトバルブ(52)、(53)、(54)を開として、基板およびホルダ(11)が(11’)(11”)の位置へ移動の際以外は、このしきりバルブが完全に閉の状態であるため、従来の説明にて本発明人により示された各反応系が互いに1つのゲイトバルブで連結されている場合に比べて、さらに不純物のオートドーピングが少なくなった。
【0043】
さらに加えて、以上の説明においては、基板のホルダは各反応室を基板と共に移動させた。しかしこの移動は基板のみとし、ホルダは第1の反応炉用のホルダ(11)、第2の反応炉用のホルダ(11’)、第3の反応炉用ホルダ(11”)をそれぞれ専用に配置せしめることが本発明の製造装置においては可能である。かくすることにより、各反応室間の不純物の混入特にホルダ表面に付着しているPN型またはEg可変用不純物、添加物の混入を完全に除去することができ、多量生産用として全く画期的なものである。
【0044】
図2は図1の製造装置を補かんするものである。すなわち第1、第2、第3の反応炉に対して供給される反応性気体は供給系(6)、(27)、(28)よりそれぞれ供給される。その反応性気体は図2(A)、(B)および(C)に対応して示されている。
【0045】
図2(A)においては水素で希釈したジボラン(43)、シラン(44)、反応炉内壁のエッチング用ガス例えばCF4(O2=0〜5%)またはNF3、炭化物の添加物である珪素と炭素とが化合した反応性気体例えばTMS(テトラメチルシランSi(CH3)4)(46)およびキャリアガスである水素またはヘリューム(47)が配置されている。
【0046】
これらは流量計(マスフロメータ)(50)、電磁バルブ(51)を経て供給系(6)より第1の反応炉に供給される。この場合はSiXC1-X(0.2≦x1)で作られ、導電型はP型としている。かくすることにより1.7〜2.5eVのEgを有するP型のアモルファスまたはセミアモルファス構造を含む非単結晶半導体を基板上に100〜300Åの厚さに形成させた。
【0047】
被膜の作製は、本発明人の出願になる特許願(「プラズマ気相法」昭和56年10月14日、特願昭56-103627)に詳しく述べられているが、例えば250〜330℃特に300℃、0.1〜0.3torrプラズマ発生用電流13.56MHz、5〜100W、被膜形成時間10秒〜10分とした。
【0048】
反応炉内壁は5〜30回作製するとフレイク(薄片)が発生するので、かかる場合にはCF4またはNF3によりプラズマエッチングして除去すればよい。このクリーニングは、被膜の積層形成プロセスにおいても、複数の反応炉の一部において、被膜形成を行わずに、反応炉内壁のエッチングを行うことにより達成できる。
【0049】
図2(B)はI層のアモルファスまたは5〜100Åの大きさの微結晶性を含有するセミアモルファスまたはマイクロポリクリスタルよりなる非単結晶半導体膜を作製する場合を示している。
【0050】
すなわち、シラン(45)CF4(O2=0〜5%)、キャリアガスであるヘリューム(49)よりなり5〜20%にヘリュームにて希釈されたシランにより光伝導度1×10-3〜9×10-2(Ωcm)-1、特に5〜20×10-3(Ωcm)-1の値を有する珪素の非単結晶半導体を0.4〜1μmの厚さに作製した。
【0051】
また、図2(C)は(A)とは逆にN型不純物であるフォスフィン(48)、シラン(43)、エッチング用ガス(45)、TMS(46)、キャアガス(40)を提供し、100〜500ÅのN型半導体層を作製した。
【0052】
かくして、図3に示す如き基板上にPIN型のダイオードまたは光電変換装置を作り、その特性を調べた。
【0053】
図3(A)においては、ステンレスの如き金属基板またはカプトンの如きフレキシブルフィルム上にステンレス膜が形成された基板(70)上にP型半導体層(71)、I型半導体層(72)、N型半導体層(74)よりなる半導体層(73)を作製し、この上面にITOの如き透光性透明導電膜を600〜800Å、ρs=10〜25Ω/□を作製した。従来の一室式の平行平板型ではAM1(100mW/cm2)にて6〜7.5%/3×3mm正方形しか得られなかったが、本発明人の出願になるたて型の独立分離式においては、7.5〜9.5%/3×3mm正方形が得られた。しかし本発明では、ホルダを各反応炉独立式にした場合、最高16%/3×3正方形、一般に12〜15%の高い変換効率の太陽電池を作ることができた。
【0054】
また、ホルダを各反応炉共通にした場合、9.0〜12.5%の高い効率であった。
【0055】
これは酸素、水分等の酸化物気体の外部からの混入防止、各半導体表面等への不純物混入を防止したことにある。
【0056】
さらに重要なことは、1回のパッチにおいて10×10cm正方形の基板を50〜500枚もローディング可能であり、10×10cm正方形1枚に対する設備償却費は従来の50〜500円であったものが、0.2〜2円と約1/100に下げることが可能となった点で光電変換装置の流布のためきわめて重要であった。
【0057】
図3(B)はガラスの如き透光性基板(76)上にITO(500〜800Å)(78)および酸化スズまたは酸化アンチモン(79)(100〜300Å)よりなる低シート抵抗(ρs=5〜20Ω/□高耐熱性)の透明導電膜(77)上にP型半導体層(71)、I型層(72)、N型層(74)およびアルミニームまたはITOよりなる裏面電極(75)を設けたものである。かかる構造においても変換効率10〜13%を得ることができた。
【0058】
このため、この構造をガラス基板上に集積化しまた同時にPIN型の逆流防止ダイオードを設けることにより民生用の太陽電池を従来と同一出力を得る場合、従来より1/2の面積でかつ価格は200〜250円を20〜30円にまで下げ、10cm2の面積にて100〜130円で作ることが可能になった。
【0059】
図4は本発明のプラズマCVD法で特にグロー放電法を用いる反応炉に配置される基板、電極および基板のローディングの関係を示す。
【0060】
図面において図4(A)は電極(2)、(2’)を水平方向に平行に、また基板(61)の裏面を互いに密接して、表面は基板間を20〜40mmの間隔で設けた。また、その配置はやはり水平に設けたものである。
【0061】
反応炉(1)の反応筒(5)は直径100〜300mmφ代表的には180mmφを有し、その長さは200〜400cmを有するため、10×10cm正方形の基板に図面の如き8枚ではなく各段20枚を10〜30列配置させることができた。このため1回の製造バッチで50〜600枚を作ることができ、従来の平行平板式では全く考えられない量の半導体装置を一度に作ることができた。
【0062】
図4(B)は電極(2)、(2’)を垂直方向に、また基板(61)の表面(被形成面)を垂直方向に、裏面を互いに密接させて設けたものである。その他は(A)と同様である。ホルダへの基板のローディングは(A)、(B)を互いに交互に行ってもよい。
【0063】
図4(C)はアーク放電法またはグロー放電法を用いたプラズマCVD法である。
【0064】
図面では図1(A)の1つの反応炉を示したものである。すなわち放電電極(2)、(2’)を反応筒方向に有し、基板(61)はホルダ(60)にローディングされ、反応管(5)の外側には加熱用ヒータ(3)が設けられている。アーク放電とするには一方の電極より熱電子を放出させた。。反応性気体は供給系(6)より導入され、不要の反応生成物およびキャリアガスは排出系(63)より外部に放出される。この不要の反応生成物は低温になる領域では粉末状になるため、反応炉(5)の中(内壁)にこれらが発生することを防ぐため、ヒータ(3)は(65)に示す如く反応管のすべてをおおうようにした。
【0065】
かくすることにより、粉末状の反応生成物を反応筒に残留させることはなくなり、歩留の向上になった。図1また図4(A)、(B)においても同様にすると、さらに生産性の向上に役立った。
【0066】
【発明の効果】
以上の説明より明らかな如く、本発明はプラズマ気相法に対し多量生産を可能にする横型反応方式を採用し、さらにそれらに共通室を設け連続的に製造する構造とすることによりバッチ方式と連続方式とを結合させることが可能となった。このためこの思想を基礎とし、2つの反応系、4〜8の反応系等を作ることができ、初めてPCVD装置で大量生産可能な方式を開発することができた。
【0067】
さらに、この半導体製造装置において、単にPINの光電変換装置のみではなく、N(N型半導体)(0.1〜1μ)-I(真性半導体)(0.2〜2μ)-I(絶縁体)(0.5〜1μ)のIGFET(縦チャネル型の絶縁ゲイト型電界効果半導体装置)を、またはそれを集積化した構造を作ることが可能である。さらに、この反応炉に横方向に幅2〜20cmの50〜100cmの長い半導体基板を配置し、その上面全面にフォトセンサーアレーその他の半導体装置を作ることも可能である。以上本発明の半導体製造装置の工学的効果はきわめて著しいものであると信じる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の半導体装置製造装置の実施例を示す。
【図2】 図1を補かんする反応性気体のガス系の実施例を示す。
【図3】 本発明により作られた光電変換装置の縦断面図を示す。
【図4】 図1の反応炉の部分を示す実施例である。
【符号の説明】
3 ヒータ
4 基板ホルダ
5 反応炉
12 移動機構
13 電源
33 シャッタ
37 ロータリーポンプ
 
訂正の要旨 訂正の要旨
1.特許請求の範囲の請求項2の
「【請求項2】被膜形成を行う複数の反応室と、当該複数の反応室の全てに連結され、減圧手段、及び基板を移動する移動機構とを備えた共通室と、から構成される装置において、前記複数の反応室の一部において被膜形成を行わないときに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法。」を特許請求の範囲の減縮を目的として「【請求項2】被膜形成を行う複数の反応室と、当該複数の反応室の全てに連結され、減圧手段、及び基板を移動する移動機構とを備えた共通室と、から構成される装置において、被膜の積層形成プロセス時に、前記複数の反応室の一部において被膜形成を行わずに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法。」と訂正する。
2.特許明細書第13頁第16行〜23行の
「【0024】また、他の発明は、被膜形成を行う複数の反応室と、当該複数の反応室の全てに連結され、減圧手段、及び基板を移動する移動機構とを備えた共通室と、から構成される装置において、前記複数の反応室の一部において被膜形成を行わないときに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法である。」を明りょうでない記載の釈明を目的として
「【0024】また、他の発明は、被膜形成を行う複数の反応室と、当該複数の反応室の全てに連結され、減圧手段、及び基板を移動する移動機構とを備えた共通室と、から構成される装置において、被膜の積層形成プロセス時に、前記複数の反応室の一部において被膜形成を行わなずに、エッチング用ガスとしてNF3を用いてプラズマエッチングを行うことにより、前記反応室をクリーニングすることを特徴とする反応室のクリーニング方法である。」と訂正する。
異議決定日 2001-11-19 
出願番号 特願平9-95070
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 長谷山 健守安 太郎  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 中村 朝幸
中西 一友
登録日 2000-05-26 
登録番号 特許第3069682号(P3069682)
権利者 株式会社半導体エネルギー研究所
発明の名称 反応室のクリーニング方法  
代理人 玉城 信一  
代理人 加茂 裕邦  
代理人 玉城 信一  
代理人 加茂 裕邦  

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