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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1078032
異議申立番号 異議2003-70247  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-01-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-01-24 
確定日 2003-05-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第3308657号「成形用ポリカーボネート樹脂組成物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3308657号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続きの経緯
本件特許第3308657号は、平成5年6月18日に出願された特願平5-172639号の出願に係り、平成14年5月17日にその設定登録がなされたものである。

[2]本件発明
本件発明は、設定登録時の明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「ポリカーボネート樹脂(A)85〜95重量%とトリフェニルホスフェート(B)5〜15重量%からなる混合物50〜95重量%および繊維状充填材(C)5〜50重量%からなる成形用ポリカーボネート樹脂組成物。」

[3]特許異議申立人の主張の概要
特許異議申立人千野肇は、下記甲第1号証〜甲第3号証を提示し、本件発明は、甲第1、第2号証に記載された発明と同一であり、或いは甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条の2又は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきである旨、主張している。


甲第1号証:特開平6-299058号公報
甲第2号証:特開平6-299060号公報
甲第3号証:特願平3-55620号の出願明細書

[4]特許異議申立てについての判断
[4-1]特許法第29条の2の規定の適用について
甲第1号証に掲載された、本件に対し他人の先願に当たる特願平5-105948号(出願日:平成5年4月9日、出願人:宇部サイコン株式会社)の出願当初の明細書(以下「先願明細書1」という。)には、
「(A)芳香族ポリカーボネート樹脂40〜97重量%と、(B)ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及び必要に応じて用いられる共重合可能な他の単量体をグラフト重合してなるゴム含有グラフト共重合体3〜60重量%と、
(C)芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及び必要に応じて用いられる共重合可能な他の単量体を共重合してなる硬質共重合体0〜50重量%とからなる基礎樹脂組成物に、該基礎樹脂組成物100重量部当り、
(D)芳香族系リン酸エステル1〜20重量部と、
(E)シリコーン樹脂0.02〜3重量部と、(F)繊維状補強材5〜50重量部とが配合されていることを特徴とする繊維強化難燃性樹脂組成物。」(【請求項1】) の発明が記載され、「本発明の難燃性樹脂組成物においては、芳香族系リン酸エステル(D)、シリコーン樹脂(E)及び繊維状補強材(F)は相乗作用により相乗効果を発揮して優れた難燃化効果が得られ、しかもその繊維状補強材により、成形品の薄肉化においても十分な耐衝撃性と強度特性が得られ、また耐熱性が得られる。このような相乗効果を達成し且つ前記基礎樹脂組成物の物性を損なわないためには、前記の基礎樹脂組成物100重量部当り、芳香族系リン酸エステル(D)成分を1〜20重量部、好ましくは9〜15重量部の量で使用し、シリコーン樹脂(E)成分を0.02〜3重量部、好ましくは0.3〜2重量部の量で使用し、繊維状補強材(F)を5〜50重量部、好ましくは10〜50重量部の量で使用する。」(段落【0025】)と記載されている。
また、甲第2号証に掲載された、本件に対しやはり他人の先願に当たる特願平5-105950号(出願日:平成5年4月9日、出願人:宇部サイコン株式会社)の出願当初の明細書(以下「先願明細書2」という。)には、「 (A)芳香族ポリカーボネート樹脂40〜97重量%と、(B)ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及び必要に応じて用いられる共重合可能な他の単量体をグラフト重合してなるゴム含有グラフト共重合体3〜60重量%と、
(C)芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体及び必要に応じて用いられる共重合可能な他の単量体を共重合してなる硬質共重合体0〜50重量%とからなる基礎樹脂組成物に、該基礎樹脂組成物100重量部当り、
(D)芳香族系リン酸エステル1〜20重量部と、(E)芳香族スルホン酸金属塩0.02〜0.5重量部と、(F)繊維状補強材5〜50重量部とが配合されていることを特徴とする繊維強化難燃性樹脂組成物。」(【請求項1】)の発明が記載され、「本発明の難燃性樹脂組成物においては、芳香族系リン酸エステル(D)、芳香族スルホン酸金属塩(E)及び繊維状補強材(F)は相乗作用により相乗効果を発揮して優れた難燃化効果が得られ、しかもその繊維状補強材により、成形品の薄肉化においても十分な耐衝撃性と強度特性が得られ、また耐熱性が得られる。このような相乗効果を達成し且つ前記基礎樹脂組成物の物性を損なわないためには、前記の基礎樹脂組成物100重量部当り、芳香族系リン酸エステル(D)成分を1〜20重量部、好ましくは9〜15重量部の量で使用し、芳香族スルホン酸金属塩(E)成分を0.02〜0.5重量部、好ましくは0.03〜0.1重量部の量で使用し、繊維状補強材(F)を5〜50重量部、好ましくは10〜50重量部の量で使用する。」(段落【0024】)と記載されている。
先願明細書1、2には、上記のとおり、繊維強化し、耐衝撃性を改善したポリカーボネート系の難燃性樹脂組成物に関する発明が記載され、それぞれで採用する組成とすることにより、成形品の肉厚が薄くても十分な耐衝撃性、強度特性を保持し、耐熱性を有し、ハロゲン化合物を含有せずとも優れた難燃性を有する樹脂組成物とすることができたことが記載されているが、芳香族リン酸エステルに関しては、「本発明の難燃性樹脂組成物においては、芳香族系リン酸エステル(D)、シリコーン樹脂(E)及び繊維状補強材(F)は相乗作用により相乗効果を発揮して優れた難燃化効果が得られ」(先願明細書1の段落【0025】)、「本発明の難燃性樹脂組成物においては、芳香族系リン酸エステル(D)、芳香族スルホン酸金属塩(E)及び繊維状補強材(F)は相乗作用により相乗効果を発揮して優れた難燃化効果が得られ」(先願明細書2の段落【0024】)と記載されているとおり、いずれも難燃剤として記載され、しかも、繊維状補強材に加え、「シリコーン樹脂」(先願明細書1)又は「芳香族スルホン酸金属塩」(先願明細書2)の存在を必須とし、難燃化における相乗効果を奏する成分として記載されているものである。
他方、本件発明は、上記認定したとおり、「ポリカーボネート樹脂85〜95重量%とトリフェニルホスフェート5〜15重量%からなる混合物50〜95重量%および繊維状充填材5〜50重量%からなる組成物。」であり、トリフェニルホスフェートの存在により、繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物の流動性を改善するもので、これ以外の成分、すなわち、先願明細書1に記載された発明における(E)成分としてのシリコーン樹脂、或いは先願明細書2に記載された発明における(E)成分としての芳香族スルホン酸金属塩をその組成物の構成成分とするものではない。
したがって、本件発明は先願明細書1、2のいずれに記載された発明とも同一とすることはできない。

[4-2]特許法第29条第2項の規定の適用について
特許異議申立人が提示した甲第3号証は、特願平3-95009号の優先権主張の基礎出願とされた出願の明細書であって、その出願は、出願公開されることなく取下げされたものとみなされるものである(特許法第42条)。
特許異議申立人は、本件発明は甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るから、本件特許は特許法第29条第2項に違反すると主張するが、甲第3号証自体は単なる出願明細書であって、刊行物と呼べるものではなく、また、その記載事項が本件の出願前公然知られたもしくは公然実施をされたと認めるに足りる根拠を見出すこともできない以上、同人の主張はその前提において既に失当という他はない。
なお、甲第3号証の出願を基礎とする特願平3-95009号の公開公報である特開平4-323249号公報を精査するも、本件発明の進歩性を否定する根拠を見出すことはできない。

[5]むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の提示した証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-05-02 
出願番号 特願平5-172639
審決分類 P 1 651・ 161- Y (C08L)
P 1 651・ 121- Y (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森川 聡  
特許庁審判長 柿 崎 良 男
特許庁審判官 佐 藤 健 史
中 島 次 一
登録日 2002-05-17 
登録番号 特許第3308657号(P3308657)
権利者 住友ダウ株式会社
発明の名称 成形用ポリカーボネート樹脂組成物  

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