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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1078964
審判番号 不服2000-9903  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-07-03 
確定日 2003-06-21 
事件の表示 平成 3年特許願第510089号「粉末被覆組成物」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年12月12日国際公開、WO91/18951、平成 5年11月25日国内公表、特表平 5-508430]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯及び本願発明
本願は、1991年5月31日(パリ条約による優先権主張1990年6月1日、イギリス)を国際出願日とする出願であって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、願書に添付した明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「着色粉末被覆組成物において、該粉末粒子は個々の粒状成分を溶融又は結合し複合体粒子とした凝集物であって、該複合体粒子は該組成物の基体への適用に関する機械的及び/又は静電気力下で分離せず、且つ該個々の粒状成分は、主たるフィルム形成性成分と、フィルム形成性成分及び非フィルム形成性成分から選択された一種類以上の他の成分とからなり、然も、
- 凝集物が金属又は光沢成分、及び流動化可能なフィルム形成性成分を含む場合には、それは、更なる粒状成分として、少なくとも90体積%が50μmより小さい非相容性フィルム形成性成分、又は非フィルム形成性の性能成分、又はそのような成分の二種類以上をも含み、また
- 凝集物が二種類以上の異なった色の相容性フィルム形成性成分及び任意に非着色相容性フィルム形成性成分を含み、これらのフィルム形成性成分の各各の粒径が、粉末被覆を基体に適用して加熱し、連続的な被覆を形成した時、得られる被覆が均一な色となる位充分小さい場合には、それは、更なる粒状成分として、非相容性フィルム形成性成分、又は非フィルム形成性成分、又は二種類以上のそのような成分をも含んでいる、
上記組成物。」

【2】判断
原審における拒絶の理由で引用された、特開平1-210472号公報(公開日1989年8月24日。以下、「引用例1」という。)の特許請求の範囲には、
「(1)セメント粒子の表面が、該セメント粒子よりも小さい粒径の樹脂粒子で被覆されてなることを特徴とする複合粉体材料。
(2)樹脂粒子が、該樹脂粒子よりも小さい粒径のセメント粒子で被覆されてなることを特徴とする複合粉体材料。」
と記載され、第4頁左下欄第8〜11行には、「核粒子となる原料粉体の表面に、被覆粒子となる原料粉体が、メカノケミカル的に強固に熱融着した複合粉体材料が得られる。」と記載されているから、引用例1の複合粉体材料が、樹脂粒子とセメント粒子が結合して複合体粒子となった凝集物であること、凝集物の結合が、溶融により達成されていることは明らかである。
また、引用例1の第1頁右下欄第9〜13行の「本発明は複合粉体材料・・・に係り、特に、静電粉体塗装法、流動粉体塗装法等の塗装材料等として有用な複合粉体材料・・・に関する。」なる記載からみて、引用例1の複合粉体材料は、粉末被覆組成物として使用されることも明らかである。その際、複合粉体材料を構成する樹脂粒子が、フイルム形成成分となることは明らかであり、また、セメント粒子は有色であるから、該粉末被覆組成物が、着色粉末被覆組成物であること、セメント粒子が、非フイルム形成成分であることもまた明らかである。また、引用例1に記載された凝集物は、金属又は光沢成分を含むことは示されていないし、二種類以上の異なった色の相容性フィルム形成性成分を含むことも示されていない。
以上の点からみて、引用例1には、「着色粉末被覆組成物において、該粉末粒子は個々の粒状成分を溶融又は結合し複合体粒子とした凝集物であって、且つ該個々の粒状成分は、フィルム形成性成分と、非フィルム形成性成分とからなる組成物」の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているといえる。
そこで、本願発明と引用発明を比較すると、引用発明は、凝集物が金属又は光沢成分を含んでおらず、また、二種類以上の異なった色の相容性フィルム形成性成分を含んでもいないから、両者は、「着色粉末被覆組成物において、該粉末粒子は個々の粒状成分を溶融又は結合し複合体粒子とした凝集物であって、且つ該個々の粒状成分は、主たるフィルム形成性成分と、非フィルム形成性成分からなる組成物」である点で一致し、複合体粒子について、前者が、「組成物の基体への適用に関する機械的及び/又は静電気力下で分離しない」としているのに対して、後者ではこのような特定がなされていない点で相違している。
そこで、この相違点について検討する。
引用例1の第4頁左下欄第8〜11行の、「核粒子となる原料粉体の表面に、被覆粒子となる原料粉体が、メカノケミカル的に強固に熱融着した複合粉体材料が得られる。」との記載、第4頁左下欄下から第2行〜第4頁右下欄第1行の、「処理温度が低すぎると樹脂の軟化が不十分となり、核粒子と被覆粒子とを強固に熱融着することができない。」との記載、及び、第2頁左上欄第5〜14行の、「粉体塗料であっても、セメントと樹脂が、各々別個に供給されるものでは、・・・の問題がある。予め、これらを混合して混合物として供給される場合には、・・・振動が加えられた場合などに、各粒子の・・・の相違から、容器内にて偏析が変化する恐れがある。本発明は上記従来の問題点を解決し・・・を目的とする。」との記載からみて、引用発明における複合体粒子を構成する個々の粒状成分は、強固に結合しているといえる。そして、この複合体粒子を基体へ適用する工程で分離しなければならない理由は何もないのであるから、該複合体粒子を、基体への適用に関する機械的及び/又は静電気力下で分離しないものとすることは、ごく当たり前のことであり、当業者にとって格別の創意工夫を要するものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
なお、平成13年12月28日付けで上申書が、平成14年1月4日付けで参考資料1が提出されたが、これらをみても、上記判断を覆すべき根拠は見いだせない。

【3】むすび
以上のとおりであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-02-25 
結審通知日 2002-02-26 
審決日 2002-03-11 
出願番号 特願平3-510089
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 浩子  
特許庁審判長 谷口 浩行
特許庁審判官 石井 あき子
船岡 嘉彦
発明の名称 粉末被覆組成物  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
代理人 歌門 章二  

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