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審決分類 審判 一部無効 発明同一 無効としない B29C
管理番号 1079198
審判番号 無効2000-35208  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-02 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-04-17 
確定日 2003-06-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第2891987号「育苗ポット用樹脂成形体及びその製造装置」の特許無効審判事件についてされた平成14年 5月21日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成14年(行ケ)第319号平成14年12月19日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1-1)本件特許
特許出願日 平成10年3月13日(国内優先権主張日平成9年3月14日)
設定登録日 平成11年2月26日

(1-2)本件手続
無効審判請求日 平成12年4月17日(無効2000ー35208号)
訂正請求日 平成12年7月31日
審決日(第1次) 平成13年1月9日
審決の結論(同) 「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」
審決謄本送達日 平成13年2月2日
審決取消訴訟提起 平成13年2月21日(請求人による)
(第1次)(東京高裁平成13年(行ケ)第75号)
判決言渡日(同) 平成14年1月30日
判決の結論(同) 「特許庁が無効2000ー35208号事件について平成13年1月9日にした審決を取り消す。」
審決日(第2次) 平成14年5月21日
審決の結論(同) 「訂正を認める。特許第2891987号の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。」
審決謄本送達日 平成14年5月31日
審決取消訴訟提起 平成14年6月22日(被請求人による)
(第2次)(東京高裁平成14年(行ケ)第319号)
訂正審判(1)請求日 平成14年9月3日(訂正2002ー39180)
訂正審判(2)請求日 平成14年10月17日(訂正2002ー39222)
訂正審判(1)取下 平成14年10月21日
訂正審判(2)審決の結論 「特許第2891987号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。」
訂正審判(2)審決確定 平成14年12月4日
判決言渡日(同) 平成14年12月19日
判決の結論(同) 「特許庁が無効2000ー35208号事件について平成14年5月21日にした審決を取り消す。」

2.本件発明1
本件の請求項1に係る発明(以下、本件発明1という。)は、上記訂正審判(2)(訂正2002ー39222)が確定した結果、訂正審判(2)の審判請求書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「ほぼ正方形に開口した上端の上端開口部と、底部と、底部の周縁から立ち上がって前記上端開口部の周縁に到る側部とを備え、前記上端開口部の周縁の四隅部にのみ鍔部が形成されたコップ形状かつ、所定の樹脂材料を主成分とした複数個の育苗ポットを縦横方向に整列させて平面配置したもので、相互に隣接する前記育苗ポットの上端開口部の前記四隅部を除く周縁を構成するそれぞれの隣接対向辺に、隣接する育苗ポット同士を微小な幅寸法でのみ連結する連接部を一体的に形成し、各育苗ポットに土壌を収容した状態で所望の育苗ポットを、隣接する他の育苗ポットから引き千切ることにより前記連接部を破断可能としたことを特徴とする育苗ポット用樹脂成形体。」

3.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件発明1は、その出願日前に出願され当該出願後に出願公開されたものの願書(特願平9ー20674号)に最初に添付された明細書又は図面(甲第1号証:特開平10ー215689号公報、以下、先願明細書という。)に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定に違反し特許を受けることができないものであり、本件発明1に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである旨主張している。

4.先願明細書
上記先願明細書には、次のことが記載されている。
「【0007】本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、野菜や花き等の植物苗を育苗するのに使用する育苗用ポットとして、土入れのための土詰め器へのセット作業や置床等の際の取扱いを容易にし、その作業の省力化および能率向上を図ることを目的とする。」、
「【0013】【作用】上記の本発明の育苗用ポットによれば、複数のポットが側壁上端に有する連結耳部同士の連結部で分離可能に連結されているので、必要な個数をワンタッチでアンダートレイや籠トレイ等に収容セットできて、土詰め器に容易に並べることができ、ポット1鉢ずつを並べてセットしていた従来に比して、数十倍の高能率で作業できる。」、
「【0014】またこの育苗用ポットは、各ポットの側壁上端に連結耳部があってこれが一種の補強縁としての役目を果すことと、複数のポット同士が連結耳部で連結されていて側壁の折れ曲りを相互に規制するように作用することとが相まって、形態保持性が高く、従来法のようにアンダートレイや籠トレイ等を用いなくても、土入れ時にポットの腰折れが生じるおそれはない。」、
「【0015】しかも、育苗土充填後あるいは育苗後に、各ポット毎に分離する場合には、前記の連結耳部同士の連結部を引き裂くようにすれば、薄肉に形成されていることもあって、容易に分離できる。」、
「【0019】図に示すように、本発明に係る連結形の育苗用ポット(A)は、全体がポリエチレンや塩化ビニル樹脂等の合成樹脂により比較的薄肉に型形成されてなり、上方ほど径大のテーパ状をなしかつ上端開口縁(2)で終端する筒状の側壁(3)と、該側壁(3)の下端に連接されかつ1もしくは複数の排水孔(4)を有する底壁(5)とにより単一の鉢体形状をなすポット(1)が形成されるとともに、該ポット(1)の複数体が縦横それぞれ複数列をなすように並列して連結されている。」、
「【0020】その連結形態として、各ポット(1)の側壁(3)の上端開口縁(2)に僅かに外方への張出し状をなす連結耳部(6)を有し、隣接するポット(1)(1)同士が前記連結耳部(6)(6)の部分で分離可能に連結成形されている。(7)はその連結部を示す。図の場合、前記の各連結部(7)が同一平面内にあって、全体としてトレイ形をなしている。」、
「【0021】前記各ポット(1)の連結耳部(6)は、テーパ状をなす側壁(3)に対して交差角度(θ)が90°〜105°の角度で外方に延出しており、各ポット毎の単体に分離した状態での保形性および体裁や取扱い易さを考慮して、その幅は通常1〜5mmの範囲に設定される。」、
「【0022】また前記の連結耳部(6)(6)同士の連結部(7)としては、隣接するポット(1)(1)の連結耳部(6)(6)同士を引き裂き分離可能に連結できるものであれば、その位置や数および形状はどのようなものであってもよい。例えば、連結耳部(6)の各辺の1個所で連結するほか、間隔をおいて複数個所で連結することができる。」、
「【0029】例えば、特殊形態の保持トレイや籠トレイ等の土詰め器を用いて各ポット(1)に育苗土を充填する場合に、必要な個数のポット(1)を仕切り目空間を有する土詰め器にワンタッチで収容セットすることができ、土詰め器に容易に並べることができるもので、ポット1個ずつを並べていた従来方式に比して、数十倍の高能率で土詰め作業を行なうことができる。」、
「【0032】そして、育苗土の充填後あるいは育苗後の出荷の際に各ポット(1)毎に分離する場合、前記の連結耳部(6)(6)同士の連結部(7)の個所を引き裂くようにすれば、容易に分離することができる。」。
したがって、先願明細書には、「ほぼ正方形に開口した上端の上端開口縁2と、底壁5と、底壁5の周縁と上端開口縁2の周縁との間の側壁3とを備え、かつ、複数個の各ポット1を縦横方向に整列させて平面配置したもので、各ポット1が上端開口縁2に外方への張出し状をなす連結耳部6を有し、該連結耳部6に連結部7を設けて、隣接する各ポット同士を微小な幅寸法でのみ連結する連結部7を形成し、各ポット1に土壌を収容した状態で所望のポット1を、隣接する他のポット1から引き千切ることにより前記連結部7を破断可能とした育苗用ポットA」の発明が記載されていると認められる。

5.対比・判断
本件発明1と、先願明細書記載の発明(以下、先願発明という。)とを対比すると、先願発明の「各ポット1」、「上端開口縁2」、「底壁5」、「側壁3」、「育苗用ポットA」が、本件発明1の「複数個の育苗ポット」、「上端開口部」、「底部」、「側部」、「育苗ポット用樹脂成形体」に、それぞれ相当し、先願発明の「連結部7」と本件発明1の「連設部」とは、隣接する育苗ポット同士を微小な幅寸法でのみ連結し、隣接する他の育苗ポットから引き千切ることにより破断可能とした「連設部分」で共通し、先願発明は「全体がポリエチレンや塩化ビニル樹脂等の合成樹脂により比較的薄肉に型形成されて」(【0019】)いることから、本件発明1と同様に「所定の樹脂材料を主成分とした」ということができ、
両者は、ほぼ正方形に開口した上端の上端開口部と、底部と、底部の周縁から立ち上がって前記上端開口部の周縁に到る側部とを備えたコップ形状を有し、かつ、所定の樹脂材料を主成分とした複数個の育苗ポットを縦横方向に整列させて平面配置したもので、隣接する育苗ポット同士を微小な幅寸法でのみ連結する「連接部分」を一体的に形成し、各育苗ポットに土壌を収容した状態で所望の育苗ポットを、隣接する他の育苗ポットから引き千切ることにより前記「連接部分」を破断可能とした育苗ポット用樹脂成形体である点で一致し、
育苗ポット用樹脂成形体が、本件発明1は、前記上端開口部の周縁の四隅部にのみ鍔部が形成されたコップ形状を有すると共に、相互に隣接する前記育苗ポットの上端開口部の前記四隅部を除く周縁を構成するそれぞれの隣接対向辺に、隣接する育苗ポット同士を微小な幅寸法でのみ連結する連接部を一体的に形成したのに対し、先願発明は、複数個の育苗ポット(各ポット1)が上端開口部(上端開口縁2)の全周縁に外方への張出し状をなす連結耳部6を有し、複数個の育苗ポット(各ポット1)の側部(側壁3)の上端開口部(上端開口縁2)に外方への張出し状をなす連結耳部6を連結する連結部7を一体的に形成したものである点で相違する。
すなわち、本件発明1の「連設部分」は、上端開口部の鍔部を有しない周縁を構成する隣接対向辺同士を一体的に形成した連設部からなるのに対し、先願発明の「連設部分」は、上端開口部(上端開口縁2)の全周縁に外方への張出し状をなす鍔部(連結耳部6)同士を連結する連結部7からなる点で相違する。
そして、この相違点の本件発明1に係る構成は、本件出願前に頒布された特開平4-173024号公報、特開平7-203776号公報、実願昭53-98637号(実開昭55-14482号)のマイクロフィルム等にも記載されておらず、本件特許の出願前に周知又は慣用のものではない。
したがって、本件発明1は、先願明細書に記載された発明と同一ではない。

6.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2000-11-08 
結審通知日 2000-11-17 
審決日 2001-01-09 
出願番号 特願平10-63177
審決分類 P 1 122・ 161- Y (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早野 公惠  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 白樫 泰子
佐藤 昭喜
登録日 1999-02-26 
登録番号 特許第2891987号(P2891987)
発明の名称 育苗ポット用樹脂成形体及びその製造装置  
代理人 田中 秀佳  
代理人 廣江 武典  
代理人 廣江 武典  
代理人 廣江 武典  
代理人 白石 吉之  
代理人 城村 邦彦  
代理人 江原 省吾  

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