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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E01D
管理番号 1079544
異議申立番号 異議2001-71908  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-11 
確定日 2003-04-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3124502号「鉛入り積層ゴム支承の構造」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3124502号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3124502号の請求項1に係る発明は、平成8年12月17日に特許出願され、平成12年10月27日にその特許権の設定登録がなされ、その後、糸山昌己より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年12月3日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1において、
「【請求項1】ゴム層(9)と補強板(10,11,12)とが鉛直方向に交互に積層されてなる積層ゴム本体(6)の内部に、鉛プラグ(7)が鉛直方向に封入された鉛入り積層ゴム支承において、
前記積層ゴム本体(6)に前記鉛プラグ(7)を封入するための封入孔(8)よりも大径の孔(14)を形成し、この孔(14)の内周に、前記鉛プラグ(7)の前記封入孔(8)を規定しかつ内部にコイルスプリング(13)からなる拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体(30)を加硫接着したことを特徴とする鉛入り積層ゴム支承の構造。」とあるのを、
「【請求項1】ゴム層(9)と補強板(10,11,12)とが鉛直方向に交互に積層されてなる積層ゴム本体(6)の内部に、鉛プラグ(7)が鉛直方向に封入された鉛入り積層ゴム支承において、
前記積層ゴム本体(6)に前記鉛プラグ(7)を封入するための封入孔(8)よりも大径の孔(14)を形成し、この孔(14)の内周に、前記鉛プラグ(7)の前記封入孔(8)を規定しかつ内部に前記鉛プラグ(7)を取り囲むコイルスプリング(13)からなる拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体(30)を加硫接着したことを特徴とする鉛入り積層ゴム支承の構造。」
と訂正する。

イ.訂正事項b
明細書の段落【0007】において、
「すなわちこの発明は、ゴム層(9)と補強板(10,11,12)とが鉛直方向に交互に積層されてなる積層ゴム本体(6)の内部に、鉛プラグ(7)が鉛直方向に封入された鉛入り積層ゴム支承において、
前記積層ゴム本体(6)に前記鉛プラグ(7)を封入するための封入孔(8)よりも大径の孔(14)を形成し、この孔(14)の内周に、前記鉛プラグ(7)の前記封入孔(8)を規定しかつ内部にコイルスプリング(13)からなる拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体(30)を加硫接着したことを特徴とする鉛入り積層ゴム支承の構造にある。」とあるのを、
「すなわちこの発明は、ゴム層(9)と補強板(10,11,12)とが鉛直方向に交互に積層されてなる積層ゴム本体(6)の内部に、鉛プラグ(7)が鉛直方向に封入された鉛入り積層ゴム支承において、
前記積層ゴム本体(6)に前記鉛プラグ(7)を封入するための封入孔(8)よりも大径の孔(14)を形成し、この孔(14)の内周に、前記鉛プラグ(7)の前記封入孔(8)を規定しかつ内部に前記鉛プラグ(7)を取り囲むコイルスプリング(13)からなる拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体(30)を加硫接着したことを特徴とする鉛入り積層ゴム支承の構造にある。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、発明を特定する事項である「コイルスプリング(13)」をこれに含まれる事項である「前記鉛プラグ(7)を取り囲むコイルスプリング(13)」に変更しようとするものであるが、当該「前記鉛プラグ(7)を取り囲むコイルスプリング(13)」については、願書に添付された明細書の段落【0013】に記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項bは、上記訂正事項aとの整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件の請求項1に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項に特定されるとおりのものである(上記2.(1)ア.訂正事項a参照)。

(2)引用刊行物に記載された発明
当審で通知した取消理由通知書の取消理由で引用した刊行物1(特開昭61-176776号公報)には、周期的せん断エネルギー吸収装置に関して、「エネルギー吸収装置は中央の円筒形エネルギー吸収心材2、心材2を囲む可とう性拘束手段3、弾性支持体4および頂部および底部の連結板7、8を有する。・・・弾性支持パッド4が好ましくは天然または合成ゴムのような弾性材料の弾性材料5と、好ましくは鋼、アルミニウム、ファイバグラスまたは他の適当なスチフナ材料から作ったスチフナ板6とを交互に積層したサンドイッチ構造を有する。」(第4頁右下欄第18行〜第5頁左上欄第8行)、「エネルギー吸収心材2は・・・円筒形に形成した高純度鉛から作ることが好ましい。」(第5頁左上欄第20行〜右上欄第1行)、「第7,8図に示す・・・構造は・・・鉛心材2の周りに、垂直方向にある程度圧縮性を有する閉込め材を有する。・・・らせんコイル3をウレタンまたはシリコーンゴムのような弾性体17が囲んでいる。・・・らせんの個別の巻き3の間を弾性材料17で充たす・・・。第8図に示す・・・鉛心材2は両端を除いて弾性材料5で包まれている。・・・接触らせん材3が、・・・スチフナ板6とともに、鉛心材2の囲りを巻く。弾性材5の層はらせん材3の巻線および個別のスチフナ板6の間に層となっており、らせん材3はこの実施態様では個別の巻線に分離している。・・・可とう性壁にいくらかの弾性が垂直方向にあるときは、らせん材3を相互に接触しないように分離してもよい。」(第7頁右上欄第7行〜左下欄第13行)、と記載されている。ここで、「弾性支持体4」および「弾性支持パッド4」が、また、「エネルギー吸収心材2」および「鉛心材2」が、それぞれ、同じ部材を意味していることは明らかであるから、これらの記載からみて、刊行物1の第7図には、弾性材料とスチフナ板とが鉛直方向に交互に積層されてなる弾性支持体の内部に、鉛心材が鉛直方向に封入された周期的せん断エネルギー吸収装置において、前記弾性支持体に前記鉛心材を封入するための孔よりも大径の開口を形成し、この開口の内周に、前記鉛心材の前記孔を規定しかつ内部に前記鉛心材を取り囲むらせんコイルからなる可とう性拘束手段を埋設した中空円筒形の弾性部分を有する周期的せん断エネルギー吸収装置の発明、及び、同第8図には、鉛心材が弾性材料に包まれていることが、それぞれ、記載されていると認められる。

(3)対比・判断
本件発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明の「弾性材料」、「スチフナ板」、「弾性支持体」、「鉛心材」、「周期的せん断エネルギー吸収装置」、「孔」、「開口」、「らせんコイル」および「可とう性拘束手段」は、それぞれ、本件発明の「ゴム層」、「補強板」、「積層ゴム本体」、「鉛プラグ」、「鉛入り積層ゴム支承」、「封入孔」、「孔」、「コイルスプリング」および「拘束部材」に相当するので、両者は、ゴム層と補強板とが鉛直方向に交互に積層されてなる積層ゴム本体の内部に、鉛プラグが鉛直方向に封入された鉛入り積層ゴム支承において、前記積層ゴム本体に前記鉛プラグを封入するための封入孔よりも大径の孔を形成し、この孔の内周に、前記鉛プラグの前記封入孔を規定しかつ内部に前記鉛プラグを取り囲むコイルスプリングからなる拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム状の部分を有する鉛入り積層ゴム支承の構造の点で一致し、本件発明は、ゴム状の部分が、拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体であり、当該ゴム体を、孔の内周に、加硫接着しているのに対し、刊行物1に記載された発明では、ゴム状の部分は、コイルの間に充たされ、かつ、コイルを囲んでいる弾性材料により構成され、当該ゴム状の部分を、孔の内周に、どのように装着するのか定かでない点で相違する。
しかしながら、刊行物1の第7図の記載からみて、刊行物1に記載された発明の「ゴム状の部分」も、「拘束部材を埋設した中空円筒形のゴム体」を構成するものであるから、刊行物1に記載された発明も、孔の内周に、拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体を設けたものと云うことが出来る。また、刊行物1には、第8図に記載された実施例のように、鉛心材(本件発明の「鉛プラグ」に相当する。)が弾性材料(本件発明の「ゴム層」に相当する。)に包まれたものが記載されていることから、刊行物1には、中空円筒形のゴム体を孔の内周に一体化することも示唆されていると云える。そして、ゴム体を他の部材に一体化する際に加硫接着をすることは周知技術であるから(たとえば実願平2-88421号(実開平4-46247号)のマイクロフィルム、特開平4-221142号公報参照)、刊行物1に記載された発明において、孔の内周に、拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体を加硫接着して、本件発明の相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到しうるものと認められる。
特許権者は、平成13年12月3日付け特許異議意見書において、「刊行物1に記載された発明には、弾性材料17と弾性支持部材4とを一体化する技術思想は全く存在せず、かえってこれらを別体とする技術思想を示しています。」(同意見書第6頁第7〜9行)と述べているが、上述したように、刊行物1には、第8図に示す実施例として、弾性支持部材4を構成する弾性材料5に直接拘束手段を埋め込んだものも記載されており、この場合、弾性材料17に相当する層は存在しないが、実質的に弾性材料17と弾性支持部材4とを一体化したものと云うことが出来るので、このような主張は採用できない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
鉛入り積層ゴム支承の構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ゴム層(9)と補強板(10,11,12)とが鉛直方向に交互に積層されてなる積層ゴム本体(6)の内部に、鉛プラグ(7)が鉛直方向に封入された鉛入り積層ゴム支承において、
前記積層ゴム本体(6)に前記鉛プラグ(7)を封入するための封入孔(8)よりも大径の孔(14)を形成し、この孔(14)の内周に、前記鉛プラグ(7)の前記封入孔(8)を規定しかつ内部に前記鉛プラグ(7)を取り囲むコイルスプリング(13)からなる拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体(30)を加硫接着したことを特徴とする鉛入り積層ゴム支承の構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉛入り積層ゴム支承の構造に関し、さらに詳細には、積層ゴム本体の内部に鉛プラグを封入し、荷重を支持するとともに、地震等の振動エネルギーを鉛のせん断変形を利用して吸収する免震支承装置の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴム層と補強板とが鉛直方向に交互に積層されてなる積層ゴム本体の内部に、鉛プラグを封入してなる鉛入り積層ゴム支承は、地震時の振動エネルギーを吸収し、減衰させる免震支承装置として広く知られている。この積層ゴム支承に用いられる鉛プラグは、地震時に上部構造物と下部構造物とが相対変位を起こすと、積層ゴム本体の水平変形に伴ってせん断変形することにより、エネルギー吸収特性を発揮するものである。
【0003】
しかしながら、積層ゴム支承が繰り返しせん断変形を受けると、積層ゴム本体内の通常は鋼板からなる補強板が鉛プラグに食い込んだり、鉛プラグ自体がゴム層に食い込んだり、さらに鉛プラグに局部変形等有害な変形が生じることがある。その結果、所期のエネルギー吸収特性が得られないことがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
【0005】
この発明の目的は、上記のような補強板の鉛プラグへの食い込み、鉛プラグのゴム層への食い込みや、鉛プラグの局部変形等有害な変形が発生するのを防止し、長期に亘って所期のエネルギー吸収特性を得ることができる鉛入り積層ゴム支承の構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
【0007】
すなわちこの発明は、ゴム層(9)と補強板(10,11,12)とが鉛直方向に交互に積層されてなる積層ゴム本体(6)の内部に、鉛プラグ(7)が鉛直方向に封入された鉛入り積層ゴム支承において、
前記積層ゴム本体(6)に前記鉛プラグ(7)を封入するための封入孔(8)よりも大径の孔(14)を形成し、この孔(14)の内周に、前記鉛プラグ(7)の前記封入孔(8)を規定しかつ内部に前記鉛プラグ(7)を取り囲むコイルスプリング(13)からなる拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体(30)を加硫接着したことを特徴とする鉛入り積層ゴム支承の構造にある。
【0008】
【0009】
積層ゴム支承は上部構造物と下部構造物との間に設置され、上部構造物の荷重は積層ゴム本体を介して下部構造物に伝達される。地震時において下部構造物に振動力が入力すると、上下部構造物が水平方向に相対変位し、これに伴って積層ゴム本体が弾性せん断変形をするが、積層ゴム本体はその弾性特性により入力周期を長周期化して上部構造物に伝達し、免震作用をなす。一方、積層ゴム本体のせん断変形に伴って鉛プラグも塑性せん断変形を起こし、その塑性変形によって振動エネルギーを吸収し、減衰作用をなす。
【0010】
この発明によれば、上記のような積層ゴム本体のせん断変形時において、これに追従して拘束部材も水平方向に変形し、鉛プラグはこれを取り囲む拘束部材によって常時拘束されているので、積層ゴム支承が繰り返しせん断変形を受けても、補強板の鉛プラグへの食い込みや、鉛プラグ自体のゴム層への食い込みが防止される。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図面を用いて以下に説明する。図1はこの発明による鉛入り積層ゴム支承の構造を示す縦断面図、図2は図1のA-A線断面図である。積層ゴム支承1は、上部取付板2及び下部取付板3を介して上部構造物4及び下部構造物5間に設置される。ここに、下部構造物5は例えば地盤に構築されるコンクリート基礎であり、上部構造物4は中高層の建築物である。
【0012】
積層ゴム支承1は全体に円柱状となっている積層ゴム本体6を有し、その中心部には鉛プラグ7を封入するための円形の封入孔8が形成されている。積層ゴム本体6は、いずれも環状のゴム層9と補強板すなわち厚肉の上下部補強板10、11及び薄肉の中間補強板12とを交互に積層してなり、これらのゴム層9と補強板10、11、12とは加硫接着により一体化される。補強板10、11、12は上部構造物4の荷重を受けたとき積層ゴムの膨出を拘束して、積層ゴム支承1が圧縮変形するのを防止するための部材である。
【0013】
封入孔8の周囲のゴム層部分には、鉛プラグ7を取り囲むように拘束部材であるコイルスプリング13が埋め込まれている。このコイルスプリング13は、引張及び圧縮方向に無荷重状態で設置される。コイルスプリング13は、耐久性のあるバネ鋼で形成されるが、強化繊維で形成してもよい。
【0014】
コイルスプリング13を備えた積層ゴム本体6は、概ね次のようにして製造される。すなわち、成形型内において内径を封入孔8よりも大径とした環状のゴム層9及び補強板10、11、12を積層する。その結果、積層体の中心に封入孔8よりも大径の孔14が形成される。他方、コイルスプリング13を埋め込んだ中空円筒形のゴム体30を別途成形し、これを積層ゴム本体6の成形時に孔14に挿入し、加硫接着する。
【0015】
鉛プラグ7は円柱状のものであり、積層ゴム本体6の封入孔8に圧入される。この時、封入孔8の周囲のゴム層部分がコイルスプリング13により拘束されているので、封入孔8が膨らむことがない。
【0016】
上下部取付板2、3は円盤状の鋼板からなり、中心に有底のボス孔15が形成されている。積層ゴム本体6の上下部補強板10、11の中心にも有底のボス孔16が形成され、これらのボス孔15、16にはせん断キー17が嵌合される。上下部補強板10、11には複数のボルト孔18が設けられ、これらのボルト孔18に螺着される取付ボルト19により積層ゴム本体6と上下部取付板2、3とが一体的に結合される。上下部取付板2、3には複数のボルト孔20が形成され、これらのボルト孔20に螺着されるアンカーボルト21を介して、上下部取付板2が上下部構造物4、5に取付けられる。
【0017】
次に、上述の鉛入り積層ゴム支承1の作用を図3を参照して説明する。上部構造物4の荷重は積層ゴム本体6を介して下部構造物5に伝達される。地震時において下部構造物5に振動力Fが入力すると、上下部構造物4、5が水平方向に相対変位し、これに伴って積層ゴム本体6が弾性せん断変形をするが、積層ゴム本体6はその弾性特性により入力周期を長周期化して上部構造物4に伝達し、免震作用をなす。一方、積層ゴム本体6のせん断変形に伴って鉛プラグ7も塑性せん断変形し、その塑性変形によって振動エネルギーを吸収し、減衰作用をなす。
【0018】
上記のような積層ゴム本体6のせん断変形時において、これに追従してコイルスプリング13も水平方向に変形する。この時、コイルスプリング13は、積層ゴム本体6の水平方向への伸びに同調して伸長し、その結果コイルスプリング13は常に鉛プラグ7をその長さ方向全体に亘って取り囲んでいることになる。すなわち、鉛プラグ7はコイルスプリング13によって常時拘束されることになり、したがって積層ゴム支承1が繰り返しせん断変形を受けても、補強板10、11、12の鉛プラグ7への食い込みや、鉛プラグ7自体のゴム層への食い込みが防止される。
【0019】
さらに、積層ゴム本体6のせん断変形時においては、コイルスプリング13は中間補強板12の水平移動による水平力を鉛プラグ7にその長さ方向に関し均等に伝達する。このため、鉛プラグ7に局部変形等の有害な変形が生じるのを防止できる。以上のようなことから、積層ゴム支承1は長期に亘って、繰り返しせん断作用を受けても、所期のエネルギー特性を発揮する。
【0020】
図4は別の実施の形態を示す縦断面図、図5は図4のB-B線断面図である。この実施の形態は積層ゴム本体6を全体に四角柱状とし、複数の鉛プラグ7を設けたものである。各鉛プラグ7の周囲のゴム層にはコイルスプリング13が埋め込まれている。その他、前記実施の形態と同様の部材には同一符号を付して説明を省略する。この実施の形態の鉛入り積層ゴム支承1は、例えば上部構造物が橋桁、下部構造物が橋脚、橋台である橋梁の支承に用いられる。
【0021】
【発明の効果】
以上のようにこの発明によれば、積層ゴム支承が繰り返しせん断変形を受けても、補強板の鉛プラグへの食い込み、鉛プラグのゴム層への食い込みや、鉛プラグの局部変形等有害な変形が発生するのを防止することができ、長期に亘って所期のエネルギー吸収特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、この発明の実施の形態を示す縦断面図である。
【図2】
図2は、図1のA-A線断面図である。
【図3】
図3は、作用説明図である。
【図4】
図4は、別の実施の形態を示す縦断面図である。
【図5】
図5は、図4のB-B線断面図である。
【符号の説明】
1…鉛入り積層ゴム支承
4…上部構造物
5…下部構造物
6…積層ゴム本体
7…鉛プラグ
8…封入孔
9…ゴム層
10…上部補強板
11…下部補強板
12…中間補強板
13…コイルスプリング
17…せん断キー
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(訂正事項a)
特許第3124502号の明細書中の特許請求の範囲の請求項1において、
「【請求項1】ゴム層(9)と補強板(10,11,12)とが鉛直方向に交互に積層されてなる積層ゴム本体(6)の内部に、鉛プラグ(7)が鉛直方向に封入された鉛入り積層ゴム支承において、
前記積層ゴム本体(6)に前記鉛プラグ(7)を封入するための封入孔(8)よりも大径の孔(14)を形成し、この孔(14)の内周に、前記鉛プラグ(7)の前記封入孔(8)を規定しかつ内部にコイルスプリング(13)からなる拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体(30)を加硫接着したことを特徴とする鉛入り積層ゴム支承の構造。」とあるのを、
特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】ゴム層(9)と補強板(10,11,12)とが鉛直方向に交互に積層されてなる積層ゴム本体(6)の内部に、鉛プラグ(7)が鉛直方向に封入された鉛入り積層ゴム支承において、
前記積層ゴム本体(6)に前記鉛プラグ(7)を封入するための封入孔(8)よりも大径の孔(14)を形成し、この孔(14)の内周に、前記鉛プラグ(7)の前記封入孔(8)を規定しかつ内部に前記鉛プラグ(7)を取り囲むコイルスプリング(13)からなる拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体(30)を加硫接着したことを特徴とする鉛入り積層ゴム支承の構造。」
と訂正する。
(訂正事項b)
同明細書中の段落0007(特許第3124502号公報第2頁第3欄の段落0007)において、
「すなわちこの発明は、ゴム層(9)と補強板(10,11,12)とが鉛直方向に交互に積層されてなる積層ゴム本体(6)の内部に、鉛プラグ(7)が鉛直方向に封入された鉛入り積層ゴム支承において、
前記積層ゴム本体(6)に前記鉛プラグ(7)を封入するための封入孔(8)よりも大径の孔(14)を形成し、この孔(14)の内周に、前記鉛プラグ(7)の前記封入孔(8)を規定しかつ内部にコイルスプリング(13)からなる拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体(30)を加硫接着したことを特徴とする鉛入り積層ゴム支承の構造にある。」とあるのを、
明りょうでない記載の釈明を目的として、
「すなわちこの発明は、ゴム層(9)と補強板(10,11,12)とが鉛直方向に交互に積層されてなる積層ゴム本体(6)の内部に、鉛プラグ(7)が鉛直方向に封入された鉛入り積層ゴム支承において、
前記積層ゴム本体(6)に前記鉛プラグ(7)を封入するための封入孔(8)よりも大径の孔(14)を形成し、この孔(14)の内周に、前記鉛プラグ(7)の前記封入孔(8)を規定しかつ内部に前記鉛プラグ(7)を取り囲むコイルスプリング(13)からなる拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体(30)を加硫接着したことを特徴とする鉛入り積層ゴム支承の構造にある。」と訂正する。
異議決定日 2002-01-10 
出願番号 特願平8-353306
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (E01D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 川島 陵司  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 伊波 猛
蔵野 いづみ
登録日 2000-10-27 
登録番号 特許第3124502号(P3124502)
権利者 川口金属工業株式会社
発明の名称 鉛入り積層ゴム支承の構造  
代理人 飯田 秀郷  
代理人 飯田 秀郷  
代理人 端山 博孝  
代理人 端山 博孝  

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