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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01R
管理番号 1080649
審判番号 不服2001-6232  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-20 
確定日 2003-07-30 
事件の表示 平成 9年特許願第 21968号「電波の検出装置」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 7月31日出願公開、特開平10-197581]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯・本願発明
本願は、平成9年1月20日(優先権主張平成8年11月14日)の出願であって、その請求項1〜4に係る発明は、平成13年8月10日付手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1〜4に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。(以下「本願発明1」という。)

「【請求項1】 導体と、この導体の先端部に接続された目的の周波数に同調させるためのLC共振回路と、このLC共振回路の両端部に両端部が接続された電波の検出回路とからなり、該電波の検出回路は前記LC共振回路で励振した高周波交流を直流に変換する整流用ダイオードと、この整流用ダイオードと直列接続された該整流用ダイオードからの直流電流の強弱により指示部が可動する直流表示メータあるいは点灯させることができる発光ダイオードとで構成されていることを特徴とする電波の検出装置。」

2.刊行物
これに対して、当審において平成13年6月7日付で通知した拒絶の理由で引用した本願の優先権主張日前に頒布された下記刊行物1〜2には、下記の記載がある。

刊行物1 CQ ham radio 2月号別冊「エレクトロニクス製作アイデア集1[センサー編]」(1991年2月15日発行)CQ出版 p.213-215
刊行物2 CQ ham radio12月号臨時増刊「エレクトロニクス製作アイデア集3[ハムアクセサリー編]」(1992年12月15日発行)CQ出版 p.180-181

2-1.刊行物1
「二つ目はアンプの付いた電界強度計の紹介です。回路を第4図に示します。アンテナから入った高周波信号は、同調回路を通ってダイオードで検波されます。受信された信号だけではレベルが低いので、この信号をトランジスタでアンプし、メーターを振らせています。」(第214頁左欄第2〜11行)
「完成したら調整を行います。約10cmのホイップ・アンテナを取り付け、ハンディ機などから電波を出してメーターの振れが最大になるようにコイルのコアを回します。」(第214頁中欄第21行〜右欄第4行)

そして、第214頁第4図には、アンテナの一端に接続したコイルと、そのコイルに誘導結合され、その両端に同調コンデンサC1が接続され共振回路として動作するコイルと、共振回路として動作する同調コンデンサC1とコイルの接続点に、コンデンサC3を介してそのカソードが接続され、アノードが接地されるダイオードD1とダイオードD1のカソードにそのアノードが接続されるダイオードD2と、ダイオードD2のカソードに一端が接続され他端が接地されるコンデンサC2と、ダイオードD2のカソード側に抵抗R2を介して、そのベースが接続され、そのエミッタが接地されるトランジスタTr1と、トランジスタTr1のコレクタと、電源の間に直列接続されたメーター、抵抗R1、可変抵抗VR1からなるアンプ付き電界強度計が記載されている。

2-2.刊行物2
「電波の強度を測定する測定器としては、一般に電界強度計が使われます。アンテナでとらえた電波を同調回路で選択し、これをダイオードで整流して直流にし、メーターを振らせます。
今回製作した装置は、できるだけ簡単にするために同調回路をカットして、アンテナから直接ダイオードで整流してメーターを振らせようとするものです。」(第180頁中欄第16行〜右欄第3行)
「ダイオードのリード線をダイポール・アンテナとします。」(第180頁右欄第20〜21行)
「メーターの代わりにLEDを第1図(b)のように付けてみましたが、この回路だと1Wでは点灯しませんでした。」(第181頁右欄第5〜8行)

そして、第180頁第1図(a)には、ダイポール・アンテナとして動作する導体の中央部に、接続される2つのダイオードと、2つのダイオードに接続される並列接続されたメータとコンデンサによって構成される電波目視装置が、また、第2図(b)には、ダイポール・アンテナとして動作する導体の中央部に、接続される2つのダイオードと、2つのダイオードに発光ダイオードによって構成される電波目視装置が、そして、第180頁第1図(c)には、1個のダイオードと発光ダイオードを直列に環状に接続した電波目視装置が記載されている。


3.周知例
当審が発見した周知例(トランジスタ技術編集部編「実用電子回路ハンドブック(1)」第16版(昭和54年3月1日発行)CQ出版 p.215)には下記の記載がある。

「直線検波は図3-81に示す半波整流回路の一種であって、出力電圧波形は入力のAM波eiのピーク値の包落線に相当する出力電圧eoになります。」(第215頁第6〜8行)

4.対比
4-1.本願発明1
本願発明1と上記刊行物1記載の発明を比較する。
第一に、上記刊行物1記載の発明の「アンテナ」が本願発明1の「導体」に相当することは明らかである。
第二に、上記刊行物1の「回路を第4図に示します。アンテナから入った高周波信号は、同調回路を通ってダイオードで検波されます。」という記載、および、図4の記載からみて、上記刊行物1記載の発明の「その両端に同調コンデンサC1が接続され共振回路として動作するコイル」が、本願発明1の「目的の周波数に同調させるためのLC共振回路」に相当する。
第三に、上記刊行物1の「回路を第4図に示します。アンテナから入った高周波信号は、同調回路を通ってダイオードで検波されます。」という記載、および、図4の記載からみて、上記刊行物1記載の発明の「ダイオードD1D2」は、本願発明1の「前記LC共振回路で励振した高周波交流を直流に変換するダイオード」に相当する。
第四に、上記刊行物1の「メーター」が、本願発明1の「指示部が可動する直流表示メータ」に相当することは明らかである。
したがって、本願発明1と上記刊行物1記載の発明は「導体と、この導体に接続された目的の周波数に同調させるためのLC共振回路と、このLC共振回路の両端部に両端部が接続された電波の検出回路とからなり、該電波の検出回路は前記LC共振回路で励振した高周波交流を直流に変換するダイオードと、直流電流の強弱により指示部が可動する直流表示メータで構成されていることを特徴とする電波の検出装置。」という点で一致し、下記の点で相違する。

(あ) LC共振回路が、本願発明1では「導体の先端部」に接続されるのに対し、上記刊行物1記載の発明では「アンテナの一端」に接続されている点。
(い) 本願発明1の「導体」は「LC共振回路」に直接接続されているのに対し、上記刊行物1記載の発明ではコイルを介した誘導結合で「その両端に同調コンデンサC1が接続され共振回路として動作するコイル」と接続されている点。
(う) 本願発明1のダイオードは「整流用ダイオード」であるのに対し、上記刊行物1には、「ダイオードで検波」と記載されている点。
(え) 本願発明1はダイオード1個で半波整流回路を構成しているのに対し、上記刊行物1記載の発明はダイオード2個で半波倍電圧整流回路を構成している点。
(お) 本願発明1は、「整流用ダイオード」の出力が直接「指示部が可動する直流表示メータあるいは点灯させることができる発光ダイオード」に接続されているのに対し、上記刊行物1記載の発明は「トランジスタTr1」による増幅回路を介している点。

なお、請求項1には「直流電流の強弱により指示部が可動する直流表示メータあるいは点灯させることができる発光ダイオード」と記載されているのに対し、上記刊行物1には「メーター」によって表示する構成のみ記載されているが、上記記載は択一的記載であるので、請求項1の「点灯させることができる発光ダイオード」は相違点ではない。

5.当審の判断
上記相違点について判断する。

5-1.相違点(あ)
上記刊行物1の「約10cmのホイップ・アンテナを取り付け」という記載、および、通常「ホイップ・アンテナ」とは直線上の導体の一端から給電される形態のアンテナを指すものであるところからみて、上記刊行物1記載の発明のLC共振回路は「アンテナの一端」に接続されるものであるが、ホイップアンテナの動作を勘案すると、本願発明1のようにその「先端部」に接続しても、また、上記引用例1記載の発明のように「先端部」とは限定されないその「一端」に接続しても、その電気的な動作はなんら異なることがないから、上記相違点(あ)は当業者が容易になし得たことにすぎない。

5-2.相違点(い)
アンテナをLC共振回路に接続するときに、本願発明1のように直接LC共振回路に接続するか、上記刊行物1記載の発明のようにLC共振回路に誘導結合したコイルを介して接続するかは、アンテナのインピーダンス等を考慮して、当業者が適宜選択する設計的事項にすぎない。

5-3.相違点(う)
上記周知例にも示されるように、検波とは整流の一種であるから、上記相違点(う)は単なる表現上の相違にすぎない。

5-4.相違点(え)
高周波信号を整流する回路として半波整流回路を用いることは、上記刊行物2第180頁第1図(c)や上記周知例にも示されるように周知の事項にすぎず、上記刊行物1記載の発明の半波倍電圧整流回路の代わりに半波整流回路を用いたことに格別の技術的困難性は認められない。

5-5.相違点(お)
上記刊行物1には、上記刊行物1記載の発明で増幅回路を用いた理由として、「受信された信号だけではレベルが低いので、この信号をトランジスタでアンプし」と記載されていること、また、上記刊行物2には「電波の強度を測定する測定器としては、一般に電界強度計が使われます。アンテナでとらえた電波を同調回路で選択し、これをダイオードで整流して直流にし、メーターを振らせます。」との記載があることからみて、上記相違点(お)は、本願発明1が必要とする「感度」に応じて当業者が適宜選択したことにすぎない。

なお、仮に、本願発明1において、「指示部が可動する直流表示メータ」の代わりに「点灯させることができる発光ダイオード」を構成としたとしても、上記刊行物2の第1図(b)ないし(c)にも記載されるように、発光ダイオードを用いて電波の検出の有無を表示することは周知であるから、この点は当業者が容易になしえたことである。

最後に、本願発明1の作用効果は、上記刊行物1,2記載の発明、および、上記周知技術から予測しうる程度の作用効果にすぎない。

6.むすび
したがって、本願発明1は、上記刊行物1,2記載の発明、および、周知技術に基づいて当業者が容易に発明することが出来たものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-08-28 
結審通知日 2001-09-04 
審決日 2001-09-21 
出願番号 特願平9-21968
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 高橋 泰史
松尾 淳一
発明の名称 電波の検出装置  
代理人 三浦 光康  

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