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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F24F
管理番号 1082982
異議申立番号 異議2000-74033  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-11-07 
確定日 2003-06-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3038135号「空気調和機の室内ユニット」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3038135号の請求項1、2、5、6、7に係る特許を取り消す。 同請求項3、4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3038135号(平成7年5月22日出願、平成12年2月25日設定登録、以下、「本件特許」という。)に対する異議申立事件の手続の経緯は、以下のとおりである。
異議申立 平成12年11月 7日
取消理由通知(発送日) 平成13年 7月10日
訂正請求 平成13年 9月10日
意見書 平成13年 9月10日

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正事項
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲請求項1の、
「【請求項1】
前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、この熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、
上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置に配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるファンモータとからなり、
上記補助配管は、上記ファンモータ周面と上記後板の板面との隙間を挿通して配管されることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。」を、
「【請求項1】
前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、この熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、
上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出し上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータとからなり、
上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して、ファンモータ周面と上記後板の板面との隙間を挿通して配管されることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。」と訂正する。

(イ)訂正事項2
特許請求の範囲請求項3の、
「【請求項3】
上記後板は、上記補助配管とファンモータ周面との間に介在して補助配管のファンモータへの接触を規制する規制用突部を備えたことを特徴とする請求項1および請求項2記載の空気調和機の室内ユニット。」を、
「【請求項3】
上記後板は、上記補助配管とファンモータ周面との間に介在して補助配管のファンモータへの接触を規制する規制用突部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の空気調和機の室内ユニット。」と訂正する。

(ウ)訂正事項3
特許請求の範囲請求項4の、
「【請求項4】
上記遮蔽部材には、補助配管とファンモータとの間に介挿され、補助配管のファンモータへの接触を規制するリブが一体に突設されることを特徴とする請求項1および請求項2記載の空気調和機の室内ユニット。」を、
「【請求項4】
上記遮蔽部材には、補助配管とファンモータとの間に介挿され、補助配管のファンモータへの接触を規制するリブが一体に突設されることを特徴とする請求項2記載の空気調和機の室内ユニット。」と訂正する。

(エ)訂正事項4
特許請求の範囲請求項5の、
「【請求項5】
前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、
上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置に配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるファンモータとからなり、
上記後板は、上記ファンモータの背面側に、上記補助配管挿通用の凹溝部が一体に凹陥形成されることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。」を、
「【請求項5】
前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、
上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出し上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータとからなり、
上記後板は、上記ファンモータの背面側に、上記補助配管挿通用の凹溝部が一体に凹陥形成され、上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して上記補助配管挿通用の凹溝部を挿通して配管されることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。」と訂正する。

(オ)訂正事項5
特許請求の範囲請求項6の、
「【請求項6】
上記補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納されることを特徴とする請求項1および請求項5記載の空気調和機の室内ユニット。」を、
「【請求項6】
上記補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納されることを特徴とする請求項1または請求項5記載の空気調和機の室内ユニット。」と訂正する。

(カ)訂正事項6
特許請求の範囲請求項7の、
「【請求項7】
上記少なくとも2本の補助配管は、互いに後板の板面と平行に並べて配置されることを特徴とする請求項1、請求項5および請求項6記載の空気調和機の室内ユニット。」を、
「【請求項7】
上記少なくとも2本の補助配管は、互いに後板の板面と平行に並べて配置されることを特徴とする請求項1または請求項5記載の空気調和機の室内ユニット。」と訂正する。

(キ)訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0009】中の、
「そのため、ファモータンおよび横流ファン周面と後板との間に、補助配管を挿通するスペースがない。」を、
「そのため、ファンモータおよび横流ファン周面と後板との間に、補助配管を挿通するスペースがない。」と訂正する。

(ク)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0016】乃至【0021】の、
「【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を満足するため、第1の発明の空気調和機の室内ユニットは、請求項1として、前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、この熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、上記熱交換器の側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置に配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるファンモータとからなり、上記補助配管は、上記ファンモータ周面と上記後板の板面との隙間を挿通して配管されることを特徴とする。
【0017】
請求項2として、請求項1記載の上記後板は、その角部に熱交換器の組み込み時に補助配管端部を後板表側から裏側へ通す切欠部が設けられ、この切欠部は、熱交換器を組み込んだあと遮蔽部材によって覆われることを特徴とする。
【0018】
請求項3として、請求項1および請求項2記載の上記後板は、上記補助配管とファンモータ周面との間に介在して補助配管のファンモータへの接触を規制する規制用突部を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項4として、請求項1および請求項2記載の上記遮蔽部材には、補助配管とファンモータとの間に介挿され、補助配管のファンモータへの接触を規制するリブが一体に突設されることを特徴とする。
【0020】
上記目的を満足するため、第2の発明の空気調和機の室内ユニットは、請求項5として、前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、上側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、上記熱交換器の側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置に配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるファンモータとからなり、上記後板は、上記ファンモータの背面側に、上記補助配管挿通用の凹溝部が一体に凹陥形成されることを特徴とする。
【0021】
請求項6として、請求項1および請求項5記載の上記補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納されることを特徴とする。請求項7として、請求項1、請求項5および請求項6記載の少なくとも2本の補助配管は、互いに後板の板面と平行に並べて配置されることを特徴とする。」を、
「【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を満足するため、第1の発明の空気調和機の室内ユニットは、請求項1として、前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、この熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、上記熱交換器の側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるファンモータとからなり、上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して、ファンモータ周面と上記後板の板面との隙間を挿通して配管されることを特徴とする。
【0017】
請求項2として、請求項1記載の上記後板は、その角部に熱交換器の組み込み時に補助配管端部を後板表側から裏側へ通す切欠部が設けられ、この切欠部は、熱交換器を組み込んだあと遮蔽部材によって覆われることを特徴とする。
【0018】
請求項3として、請求項1または請求項2記載の上記後板は、上記補助配管とファンモータ周面との間に介在して補助配管のファンモータへの接触を規制する規制用突部を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項4として、請求項2記載の上記遮蔽部材には、補助配管とファンモータとの間に介挿され、補助配管のファンモータへの接触を規制するリブが一体に突設されることを特徴とする。
【0020】
上記目的を満足するため、第2の発明の空気調和機の室内ユニットは、請求項5として、前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、上側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、上記熱交換器の側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出し上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータとからなり、上記後板は、上記ファンモータの背面側に、上記補助配管挿通用の凹溝部が一体に凹陥形成され、上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して上記補助配管挿通用の凹溝部を挿通して配管されることを特徴とする。
【0021】
請求項6として、請求項1または請求項5記載の上記補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納されることを特徴とする。請求項7として、請求項1または請求項5記載の少なくとも2本の補助配管は、互いに後板の板面と平行に並べて配置されることを特徴とする。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項1は、請求項1において、「送風ファン」の配置位置を「熱交換器と相対向して配置される送風ファン」と、「ファンモータ」の配置位置を「上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータ」と、「補助配管」の配管位置を「ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して」と、それぞれ限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2,3,5,6は、請求項3,4,6,7において、引用する請求項を択一的に引用していなかったものを、択一的に引用するように訂正したもので、誤記の訂正を目的とするものである。
訂正事項4は、請求項5において、「送風ファン」の配置位置を「熱交換器と相対向して配置される送風ファン」と、「ファンモータ」の配置位置を「上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータ」と、「補助配管」の配管位置を「上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して上記補助配管挿通用の凹溝部を挿通して配管される」と、それぞれ限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項7は、「ファンモータ」とすべきところを「ファモータン」としたものを訂正するもので、誤記の訂正を目的とするものである。
訂正事項8は、訂正事項1乃至6における特許請求の範囲の訂正にともない、特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載の整合をとるため訂正したものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項1乃至8は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立ての概要
特許異議申立人 株式会社富士通ゼネラルは、下記の甲第1号証乃至甲第5号証により、請求項1乃至7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消すべき旨主張している。
甲第1号証:実願昭56-7112号(実開昭57-120930号) のマイクロフィルム
甲第2号証:株式会社富士通ゼネラル・94年製・ルームエアコン
型式 AS25WPR-W(証拠写真)
甲第2号証の2:株式会社富士通ゼネラル ルームエアコン総合カタログ
平成6年8月発行
甲第2号証の3:仕入伝票(AS25WPR-Wの販売を証明する書面)
甲第3号証:特開平7-42967号公報
甲第4号証:実願昭60-132062号(実開昭62-40420号) のマイクロフィルム
甲第5号証:実願昭60-155839号(実開昭62-63618号) のマイクロフィルム

4.本件発明
本件特許の請求項1乃至7に係る発明(以下、「本件発明1乃至7」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、この熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、
上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出し上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータとからなり、
上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して、ファンモータ周面と上記後板の板面との隙間を挿通して配管されることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。

【請求項2】
上記後板は、その角部に熱交換器の組み込み時に、上記補助配管端部を後板表側から裏側へ通す切欠部が設けられ、この切欠部は、熱交換器を組み込んだあと遮蔽部材によって覆われることを特徴とする請求項1記載の空気調和機の室内ユニット。

【請求項3】
上記後板は、上記補助配管とファンモータ周面との間に介在して補助配管のファンモータへの接触を規制する規制用突部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の空気調和機の室内ユニット。

【請求項4】
上記遮蔽部材には、補助配管とファンモータとの間に介挿され、補助配管のファンモータへの接触を規制するリブが一体に突設されることを特徴とする請求項2記載の空気調和機の室内ユニット。

【請求項5】
前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、
上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出し上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータとからなり、
上記後板は、上記ファンモータの背面側に、上記補助配管挿通用の凹溝部が一体に凹陥形成され、上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して上記補助配管挿通用の凹溝部を挿通して配管されることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。

【請求項6】
上記補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納されることを特徴とする請求項1または請求項5記載の空気調和機の室内ユニット。

【請求項7】
上記少なくとも2本の補助配管は、互いに後板の板面と平行に並べて配置されることを特徴とする請求項1または請求項5記載の空気調和機の室内ユニット。」

5.引用刊行物
(1)刊行物1
当審が通知した取消しの理由に引用された実公昭62-19851号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
「この考案は、空気調和機の室内ユニットに関するものである。」(第1頁第1欄第25〜26行目)
「第1図および第2図に示されているように、この室内ユニットは、壁掛け用として形成されたフレーム本体2と、このフレーム本体2に着脱自在に被せられる前面カバー3とからなる筐体1を備えている。この場合、フレーム本体2は、共通のベースとして用いられる上フレーム4と、この上フレーム4に対して交換可能に組合せられる下フレーム5とから構成されていて、」(第1頁第2欄第22行目〜第2頁第3欄第2行目)
「第3図と第4図とに詳しく示されているように、フレーム本体2は、送風機(クロスフローファン)6の取付部分を境にして分割されており、上フレーム4には、熱交換器7に関連する空気通路室10を形成するための左右1対の側板8,8と、第3図想像線で示す電装品箱9を収納するための制御室11とが設けられており、」(第2頁第3欄第6〜12行目)
「一方、下フレーム5は、上記した空気通路室10に含まれる送風機取付部分15と、その下方に連設された空気吹出口16と、送風機6を駆動する図示しないモータを収納するモータ収納室17とを有している。なお、このモータ収納室17は上記した制御室11の下方に位置している。」(第2頁第3欄第20〜26行目)
「送風機6は、下フレーム5に一体成形されている軸受板20と、別部品として構成されている保持メンバー21とにより、図示しないモータに連結された状態において上記送風機取付部分15に回転可能に装着される。上記保持メンバー21は、図示しないモータの出力軸と送風機6の回転軸の連結部分を下フレーム5との間で軸支するように形成された第1の保持板21aと、モータの後方部分を押えるように形成された第2の保持板21bとを含み」(第2頁第3欄第37行目〜同第4欄第2行目)
「このフレーム本体2は上フレーム4と下フレーム5とから組立てられるが、この考案においては、その組立時に熱交換器7に接続される配管38を金具等を用いることなく筐体1に固定できる構造を備えている。すなわち第9図にその概略が示されているように、下フレーム5側には配管38を筐体1の下方に引出すためのガイド溝39が形成されており、これに対して上フレーム4側には上記ガイド溝39と協働して配管38を挟持するように形成された挟持板40が設けられている。なお、この実施例においては、下フレーム5の送風機取付部分15とモータ収納室17との間に設けられている軸受ハウジングの頸部が上記したガイド溝39として利用されており、一方、挟持板40は上フレーム4側において制御室11を形成する背壁と一体成形されている。」(第3頁第5欄第2〜17行目)

(2)刊行物2
また、当審が通知した取消しの理由に引用された実願平2-110884号(実開平4-68921号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「例えば、第4図に示すような室内機が考案されているが、この室内機の場合、本機21の前面は外観を良くするためにフラットに仕上げられており、吸込口22は本体21の上部に形成されている。
この吸込口22の下部には内面に沿わせて着脱できるエアーフィルタ23が有り、前記吸込口22と本体下部の吹出口24とを結ぶ送風路25の上部には逆V字形に形成された熱交換器26を設け、この熱交換器26の下部にファン27を設置し、本体下部の吹出口24には風向板28を設けて室内への風向を調節するようにしている。」(第2頁第4〜15行目)

(3)刊行物3
また、当審が通知した取消しの理由に引用された実願昭56-7112号(実開昭57-120930号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「本案は空気調和機の室内ユニットに関し、熱交換器の側方空間におけるモータ、熱交換器用補助パイプ及び電装部品配設部の位置関係を考慮してユニット全体の横幅を減縮し、小型化及び軽量化を計れるようにしたものである。
以下第1図及び第2図に示した本案の実施例について詳細に説明する。1は熱交換器、2は熱交換器用補助パイプ、3は例えば合成樹脂の成型品よりなり、周縁部に熱交換器保持部4を形設したケース主体、5は室内空気を吸込口より吸込み熱交換器1部を通過させた後再び吐出口より送出する室内空気循環用ファン(図示せず)を回転させる為のモータ、6は熱交換器1の下方に配設した露受皿である。而して、上記ケース主体3は熱交換器1の側方空間Sにおいて下部位置にモー夕5を配設すると共に熱交換器用補助パイプ2を上記モータ5の下方を通して背面側に導出し、さらに側方空間Sにおけるモータ5の上方部に電装組品等を埋設或いは収納する為の電装部品配設部7を形成している。
本案は上記のような構成であるところ.従来では第3図及び第4図に示すように熱交換器1の側方において熱交換器用補助パイプ2をモータ5(第3図及び第4図では図示せず)の上方部を通してケース主体3の背面側に導出し、さらにケース主体3の背面に沿わせていた為、モータ5の上方部及びケース主体3の背面において補助パイプ3の配管用空間が必要となり、その結果モータ5の上方部に電装組品8を配設できず、専らモータ5のさらに外側に電装組品8を配設しており、これがユニット全体の横幅の拡大を招き、小型化及び軽量化等の妨げになっているものであった。」(第1頁第14行目〜第3頁第5行目)

(4)刊行物4
また、当審が通知した取消しの理由に引用された特開平1-118038号公報(以下、「刊行物4」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「本発明は、室外ユニットと室内ユニットに分割された空気調和器において、前記室外ユニットを家屋の背面等へ略密着に近い状態で据付ける壁面据付形空気調和器に関するものである。」(第1頁右下欄第13〜16行目)
「次に、第1図および第3図〜第5図により室外ユニット2の要部構成について説明する。
同図において、室外ユニット2は、基板11と外箱12ならびに基板11上に周知の如く配設された冷凍サイクル構成部品、送風回路等によって構成されている。13は前記室外ユニット2の背面12a、側面12bおよび底面11aの三面にまたがって開口された開口部で、その開口部13には、前記三面を閉塞する閉塞面14a、14b、14cを具備したカバー14が着脱可能に設けられている、」(第2頁右下欄第12行目〜第3頁左上欄第2行目)

(5)刊行物5
また、当審が通知した取消しの理由に引用された実願平3-98674号(実開平5-47721号)のCD-ROM(以下、「刊行物5」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「本考案は空気調和機の室内機ユニットに係わり、さらに詳しくは、同室内機ユニットの空気通路内に配置されている熱交換器の補助配管を筐体の背面側で保持するための手段に関する。」(段落【0001】)
「以下、本考案の一実施例を図1〜図4に基づいて説明する。図1は室内機ユニットの前方を、図2は同室内機ユニットの後方を表す外観斜視図である。図において、1は本体2と、この本体2に着脱自在に被せられる前面カバー3とから成る筐体で、前面カバー3の前方には上部を開閉自在に軸支した正面パネル4がある。この正面パネル4には室内空気の吸込口5があり、前面カバー3の下部には吹出口6が形成されている。吸込口5と吹出口6との間には図示はされてないが空気通路が形成されており、この空気通路内には着脱自在なエアーフィルタと、熱交換器と、送風機(クロスフローファン)とが配置され、熱交換器により熱交換された空気は送風機により吹出口6に送られ、室内への風向は吹出口6に設けられている風向板で調節されるようになっている。
また、図2に示す本体2の背面(ベース)7には熱交換器よりの補助配管8を背後に突出させるための開口部9が形成されている。補助配管8は予めその一側が熱交換器側に結合されていて、熱交換器が空気通路内の所定位置に配置されると開口部9の内側上部で一旦下向きになり、背面7の下部から外部に突出したあと本体2の側面に向かうよう形成されている。ところで、本考案では、この補助配管8に別途形成された配管押さえ10を前もって装着している。一方、開口部9にはその内側に前記配管押さえ10を保持するための保持溝11を設けている。以下、これらの詳細を図3および図4に基づいて説明する。
配管押さえ10は樹脂成形品で、熱交換器12よりの冷媒配管13,14に被せた断熱チューブ15を挟持するために本体部分10aは概略U字溝形になっており、その左右両側面には概略耳状のフランジ部10b,10cが形成されている。一方、保持溝11は本体2の背面7に設けた開口部9の内側を囲むように形成した壁11aと、開口部9の間口を狭める形で、同開口部9の両側から突出させた門扉状の突出壁7a,7bとから成り、この突出壁7a,7bの間口寸法は配管押さえ10の本体部分10aの横幅よりもやや広くなっている。このような構成であれば、補助配管8を矢印の方向に移動させたとき配管押さえ10と保持溝11とが対応し、配管押さえ10は図4に示すように保持溝11に収まる。このときフランジ部10b,10cは背面7側の突出壁7a,7bと対向するため開口面側に配管押さえ10が飛び出すようなことはなく、補助配管8は確実に保持溝11に保持される。」
(段落【0006】〜段落【0008】)

(6)刊行物6
また、当審が通知した取消しの理由に引用された実願昭60-155839号(実開昭62-63618号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物6」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「(ヘ) 実施例
第1図は分離型空気調和機の室内側熱交換ユニット(1)の背面を示す斜視図である。この熱交換ユニット(1)の外装箱は、ケース(2)と、このケースに装着される前面パネル(3)とから構成されている。このケースには熱交換器(図示せず)と、クロスフローファン(4)と、このファンを駆動するモータ(5)(第2図参照)とが装着されている。(6)はケース(2)の背面を湾曲させたスクロール、(7)は電装部品の収納部、(8)はモータ(5)の冷却孔で、スクロール(6)と収納部(7)との間の窪み面(9)に形成されている。そして第2図に示すようにスクロール(6)の内面に向い合うようにクロスフローファン(4)が、窪み面(9)の内面に向い合うようにモータ(5)が夫々ケース(2)内に収納されている。(10)はモータ(5)に装着された環状の防振ゴムである。
(11)は熱交換器から延びた冷媒配管(12)の挿通孔である。(13)はスクロール(6)の下方に形成したドレン受けで一端(14)はケース(2)の右端に、他端(15)は冷却孔(8)の側方にまで延びている。
冷媒配管(12)は断熱材(16)でつつまれている。
この冷媒配管(12)は挿通孔(11)から下方へ延び、その後ケース(1)の下部で右側へ曲げられて、ドレン受け(13)の下方の空間(17)に収納されている。」(第3頁第5行目〜第4頁第8行目)
また、第2図から、2本の冷媒配管12をケースと平行に並べて配置したことが窺える。

6.対比・判断
(1)本件発明1について
上記5.(1)の記載及び図面からみて、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「前面カバー(3)とフレーム本体(2)とを組合わせた筐体(1)と、この筐体(1)内部に収容配置される熱交換器(7)と、この熱交換器(7)に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器(7)から配管(38)が突出され、
上記室内送風機は、熱交換器と相対向して配置される送風機(6)およびこれら熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるモータとからなり、
上記配管(38)は、上記モータの出力軸と送風機(6)の回転軸の連結部分と上記フレーム本体の板面との隙間を挿通して配管されることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。」

刊行物1の「前面カバー(3)」、「フレーム本体(2)」、「筐体(1)」、「熱交換器(7)」、「配管(38)」、「送風機(6)」、「モータ」は、それぞれ、本件発明1における「前面パネル」、「後板」、「ユニット本体」、「熱交換器」、「補助配管」、「送風ファン」、「ファンモータ」に相当すると認められる。
本件発明1と、刊行物1に記載された発明を対比すると、両者は、
「前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置される熱交換器と、この熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器から補助配管が突出され、
上記室内送風機は、熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよび熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるファンモータとからなる空気調和機の室内ユニット」で一致し、下記の点で相違する。

相違点(1-1)
本件発明1は、熱交換器が「側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体」であり、送風ファンが「前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置に配置される」のに対し、刊行物1のものにはそのような記載がない点。

相違点(1-2)
本件発明1は、補助配管が熱交換器側面部から少なくとも2本、突出されているのに対し、刊行物1のものには、明確にそのように記載されていない点。

相違点(1-3)
本件発明1は、「補助配管は、ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して、ファンモータ周面と後板の板面との隙間を挿通して配管」して、送風ファンとファンモータとの隙間を短縮したのに対し、刊行物1のものは、モータの出力軸と送風機(6)の回転軸の連結部分とフレーム本体の板面との隙間を挿通して配管されている点。

以下、上記相違点(1-1)乃至(1-3)について検討する。
・相違点(1-1)について
上記5.(2)に示されているように、刊行物2には熱交換器を逆V字形に形成し、この熱交換器の下部にファンを配置した構造が記載されている。
刊行物1及び2は、ともに空気調和器の室内ユニットの熱交換器に関するものであるから、刊行物1の熱交換器と送風ファンにおいて、熱交換器を側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体とし、送風ファンが前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置に配置されるように構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。

・相違点(1-2)について
刊行物3において、特に第3図には、熱交換器側面部から、室内ユニットの補助配管を2本突出させる点が示されており、刊行物1の熱交換器の補助配管を、熱交換器側面部から少なくとも2本突出させるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

・相違点(1-3)について
上記5.(1)に示すように、刊行物1には、「すなわち第9図にその概略が示されているように、下フレーム5側には配管38を筐体1の下方に引出すためのガイド溝39が形成されており、これに対して上フレーム4側には上記ガイド溝39と協働して配管38を挟持するように形成された挟持板40が設けられている。なお、この実施例においては、下フレーム5の送風機取付部分15とモータ収納室17との間に設けられている軸受ハウジングの頸部が上記したガイド溝39として利用されており、一方、挟持板40は上フレーム4側において制御室11を形成する背壁と一体成形されている。」(第3頁第5欄第6〜17行目)と記載され、配管38を、筐体1内から外部に引き出すために、下フレーム5の送風機取付部分15とモータ収納室17との間に設けられている軸受ハウジングの頸部に設けたガイド溝39と、室内ユニットの後面の上フレーム4の挟持板40とで支持することが示されていることからみて、刊行物1の熱交換器7に接続された配管38は、ファンモータと同軸上にある軸受ハウジングの上部側に形成されるスペースを介して、軸受ハウジングと上フレーム4の板面との隙間を挿通して配管されていると認められる。
さらに、上記5.(3)に示すように、刊行物3には、ユニット全体の横幅を減縮するために、熱交換器用パイプ(2)をモータ(5)周面に面して、モータ(5)の下部に配管した構造が記載されている。また、ユニットの小型化は、空調機器の設計者にとって常に要求されている課題であるから、通風ファンとファンモータの間の隙間を、障害物がなければ、可能な限り短縮しようとすることは、当業者が容易になし得ることである。
よって、熱交換器の補助配管の挿通位置を、ユニット全体の横幅を減縮するために、刊行物1のモータと送風機の連結部分の上部側を介して、その連結部分とフレーム本体の板面の間としたものから、モータ周面に面する位置に換え、ファンモータの上部側のスペースを介してファンモータ周面と後板の板面との隙間に挿通して配管し、送風ファンとファンモータとの隙間を短縮することは、当業者が容易に想到し得たものである。

なお、特許権者は、意見書において「C)すなわち、本件発明は、熱交換器の構成、送風ファンとファンモータの配置と連結構成、補助配管の取り回し構成を、後板構成との組み合わせ、などによりはじめて得られるものであって、後述するように、単に、個々の構成に関する設計思想が開示された引用例を組み合わせたとしても、容易に推考することは不可能と考えます。」と主張しているが、ユニットの小型化が常に求められる空調機器において、熱交換器から取り出した補助配管を、ユニット外に引き出す際、空いているスペースがあれば、そこを有効に利用することは、当業者であれば通常行うことであり、熱交換器を逆V字型として、ファンモータの上部のスペースが空いていれば、そこを活用しようとすることは、容易に成し得るものであると認められる。

さらに、本件発明1が奏する作用、効果は、刊行物1乃至3の記載から容易に予測できたものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(2)本件発明2について
本件発明2と、刊行物1に記載された発明を対比すると、上記相違点(1-1)乃至(1-3)で相違するとともに、下記の相違点(2)で相違する。

相違点(2)
本件発明2は、「後板は、その角部に熱交換器の組み込み時に、上記補助配管端部を後板表側から裏側へ通す切欠部が設けられ、この切欠部は、熱交換器を組み込んだあと遮蔽部材によって覆われる」のに対し、刊行物1にはそのような記載がない点。

相違点(1-1)乃至(1-3)については、上記「6.(1)本件発明1について」で検討したとおりである。
以下、上記相違点(2)について検討する。
上記5.(1)に示すように、刊行物1には、ユニットの筐体を構成するフレーム本体(2)の下フレーム(5)にガイド溝(39)を形成し、このガイド溝から配管(38)を筐体(1)内から筐体外に引き出すようにした構造が記載されている。また、配管の設置作業を容易にするために、その作業の妨げとなる部位を必要に応じて切り欠いて除去することは、当業者が容易に想到し得る事項である。
さらに、上記5.(4)に示すように、刊行物4には、室外ユニットと室内ユニットを結ぶ配管の接続作業のために、室外ユニットの背面下部に設けた開口部(13)を設け、作業終了後、この開口部をカバー(14)により遮蔽したことが記載されている。
刊行物1及び4は、ともに空気調和器のユニットに関するものであるから、補助配管の筐体内から筐体外への引き出し部を、配管作業の妨げにならないようにするために、後板の角部を切り欠き、配管作業後、その切り欠きを遮蔽するようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

さらに、本件発明2が奏する作用、効果は、刊行物1乃至4の記載から容易に予測できたものである。
したがって、本件発明2は、刊行物1乃至4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(3)本件発明3について
本件発明3と、刊行物1に記載された発明を対比すると、上記相違点(1-1)乃至(2)で相違するとともに、下記の相違点(3)で相違する。

相違点(3)
本件発明3が、「後板は、上記補助配管とファンモータ周面との間に介在して補助配管のファンモータへの接触を規制する規制用突部を備えた」のに対し、刊行物1にはそのような記載がない点。

相違点(1-1)乃至(2)については、上記「6.(1)本件発明1について」及び「6.(2)本件発明2について」で検討したとおりである。
以下、上記相違点(3)について検討する。
上記5.(5)に示すように、刊行物5には、補助配管(8)の保持のために、背面(7)に突出壁(7a)(7b)を設けた構造が記載されているが、この突出壁(7a)(7b)は、ファンモータ周面と補助配管の間に設けられたものではなく、ファンモータと補助配管の接触を規制するものではない。
また、特許異議申立人は、甲第2号証に「J´.上記後板3は、上記送風ファン11Bとファンモータ11Aとの間の背面側に、上記補助配管挿通用の凹溝部26が一体に凹陥形成された空気調和器の室内ユニット」が開示され、補助配管のファンモータへの接触を規制する手段として、凹溝部のような壁面とするか、突起とするかは単なる設計事項である旨主張している。
しかし、甲第2号証に示された、株式会社富士通ゼネラル・94年製・ルームエアコン(型式 AS25WPR-W)の証拠写真の、特に「前面パネル、電装品箱及び熱交換器を取り外した室内ユニットの上面拡大図」からは、「26」と特許異議申立人が表記した凹陥部26が、同じく「11A」と表記されたファン11Aと、「11B」と表記されたファンモータ11Bの出力軸の連結部に面して形成されているように窺え、ファンモータ周面に凹陥部が設けられたものとは認められない。
よって、甲第2号証に示されたルームエアコンは、補助配管とファンモータ周面との接触を規制する部材を、補助配管とファンモータ周面の間に介在させる構造を有しておらず、また、補助配管とファンモータ周面との接触を規制する部材の形状を、凹溝部のような壁面とするか、突起とするかが単なる設計事項であるとも認められない。
さらに、上記相違点(3)に係る構成が、他の甲第3号証乃至甲5号証にも記載されているとは認められない。

したがって、本件発明3は、刊行物1乃至5並びに甲第2号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとは認められない。

(4)本件発明4について
本件発明4と、刊行物1に記載された発明を対比すると、上記相違点(1-1)乃至(2)で相違するとともに、下記の相違点(4)で相違する。

相違点(4)
本件発明4は、「上記遮蔽部材には、補助配管とファンモータとの間に介挿され、補助配管のファンモータへの接触を規制するリブが一体に突設される」のに対し、刊行物1のものには、そのような記載がない点。

相違点(1-1)乃至(2)については、上記「6.(1)本件発明1について」及び「6.(2)本件発明2について」で検討したとおりである。
以下、上記相違点(4)について検討する。
特許異議申立人は、甲第3号証に「後板は、その角部に切欠部が設けられ、この切欠部は、遮蔽部材によって覆われる」ことが、甲第2号証に「補助配管のファンモータへの接触を規制するリブ」を設けることが開示されている旨主張している。
しかし、甲第2、3号証には、後板の角部に設けた切欠部を覆う遮蔽部材と、補助配管とファンモータの接触を規制するリブを、一体に設けることについては示されておらず、また、他の甲第1,4,5号証にも記載されているとは認められない。

したがって、本件発明4は、刊行物1並びに甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとは認められない。

(5)本件発明5について
上記5.(1)の記載及び図面からみて、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「前面カバー(3)とフレーム本体(2)とを組合わせた筐体(1)と、この筐体(1)内部に収容配置される熱交換器(7)と、この熱交換器(7)に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器(7)から配管(38)が突出され、
上記室内送風機は、熱交換器と相対向して配置される送風機(6)およびこれら熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるモータとからなる空気調和機の室内ユニット。」

刊行物1の「前面カバー(3)」、「フレーム本体(2)」、「筐体(1)」、「熱交換器(7)」、「配管(38)」、「送風機(6)」、「モータ」は、それぞれ、本件発明5における「前面パネル」、「後板」、「ユニット本体」、「熱交換器」、「補助配管」、「送風ファン」、「ファンモータ」に相当すると認められる。
本件発明5と、刊行物1に記載された発明を対比すると、両者は、
「前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置される熱交換器と、この熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器から補助配管が突出され、
上記室内送風機は、熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよび熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるファンモータとからなる空気調和機の室内ユニット」で一致し、下記の点で相違する。

相違点(5-1)
本件発明5は、熱交換器が「側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体」であり、送風ファンが「前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置に配置される」のに対し、刊行物1のものにはそのような記載がない点。

相違点(5-2)について
本件発明5は、補助配管が熱交換器側面部から少なくとも2本、突出されているのに対し、刊行物1のものには、明確にそのように記載されていない点。

相違点(5-3)
本件発明5は、「後板は、ファンモータの背面側に、補助配管挿通用の凹溝部が一体に凹陥形成され、補助配管は、ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して上記補助配管挿通用の凹溝部を挿通して配管」して、送風ファンとファンモータとの隙間を短縮したのに対し、刊行物1のものにはそのような記載がない点。

以下、上記相違点(5-1)乃至(5-3)について検討する。
・相違点(5-1)について
上記5.(2)に示されているように、刊行物2には熱交換器を逆V字形に形成し、この熱交換器の下部にファンを配置した構造が記載されている。
刊行物1及び2は、ともに空気調和器の室内ユニットの熱交換器に関するものであるから、刊行物1の熱交換器と送風ファンにおいて、熱交換器が側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体とし、送風ファンが前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置に配置されるように構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。

・相違点(5-2)について
刊行物3において、特に第3図には、熱交換器側面部から、室内ユニットの補助配管を2本突出させる点が示されており、刊行物1の熱交換器の補助配管を、熱交換器側面部から少なくとも2本突出させるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

・相違点(5-3)について
上記「相違点(1-3)について」で検討したように、刊行物1の配管は、ファンモータと同軸上にある軸受ハウジングの上部側に形成されるスペースを介して、室内ユニット外に引き出されているものと認められ、また、上記5.(3)に示されているように、刊行物3には、ユニット全体の横幅を減縮するために、熱交換器用パイプ(2)をモータ(5)周面に面して、モータ(5)の下部に配管した構造が記載されている。
さらに、上記5.(5)に記載されているように、刊行物5には、補助配管(8)を配置する保持溝(11)を背面(7)に一体形成し、その保持溝内に補助配管を挿通させ補助配管を室内ユニット内から引き出す構造が記載されている。
室内ユニットの設計をする際、ユニットの小型化は、空調機器の設計者にとって常に要求されている課題であり、通風ファンとファンモータの間の隙間を、障害物がなければ、可能な限り短縮しようと試みること、及び、補助配管のユニット内の配置で、室内ユニット内の空きスペースを見つけて利用しようとすることは、当業者が容易になし得ることであるから、ユニット全体の横幅を減縮するために、凹溝部を後板のファンモータ周面に面する位置に設け、補助配管をファンモータの上部側に形成されるスペースを介して凹溝部を挿通することは、当業者が容易に想到し得たものである。

さらに、本件発明5が奏する作用、効果は、刊行物1乃至3、5の記載から容易に予測できたものである。
したがって、本件発明5は、刊行物1乃至3、5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(6)本件発明6について
本件発明6と、刊行物1に記載された発明を対比すると、上記相違点(1-1)乃至(1-3)、相違点(5-1)乃至(5-3)で相違するとともに、下記の相違点(6)で相違する。

相違点(6)
本件発明6は、「補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納される」のに対し、刊行物1には明確にそのような記載がない点。

相違点(1-1)乃至(1-3)、相違点(5-1)乃至(5-3)については、上記「6.(1)本件発明1について」、「6.(5)本件発明5について」で検討したとおりである。
以下、上記相違点(6)について検討する。
刊行物6には、上記5.(6)に示した記載及び第2図からみて、2本の冷媒配管を断熱材で包んだ構造が記載されている。
刊行物1及び6は、ともに空気調和器の室内ユニットに関するものであるから、補助配管を個々に分割してシールドパイプに収納することは、当業者が容易に想到し得たものである。

さらに、本件発明6が奏する作用、効果は、刊行物1乃至3,5,6の記載から容易に予測できたものである。
したがって、本件発明6は、刊行物1乃至3,5,6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(7)本件発明7について
本件発明7と、刊行物1に記載された発明を対比すると、上記相違点(1-1)乃至(1-3)、相違点(5-1)乃至(5-3)で相違するとともに、下記の相違点(7)で相違する。

相違点(7)
本件発明7は、「少なくとも2本の補助配管は、互いに後板の板面と平行に並べて配置される」のに対し、刊行物1にはそのような記載がない点。

相違点(1-1)乃至(1-3)、相違点(5-1)乃至(6)については、上記「6.(1)本件発明1について」、「6.(5)本件発明5について」で検討したとおりである。
以下、上記相違点(7)について検討する。
刊行物6には、上記5.(6)に示した記載及び第2図からみて、2本の冷媒配管をケースと平行に並べて配置した構造が記載されている。
刊行物1及び6は、ともに空気調和器の室内ユニットに関するものであるから、少なくとも2本の補助配管を、後板の板面と平行に並べて配置することは、当業者が容易に想到し得たものである。

さらに、本件発明7が奏する作用、効果は、刊行物1乃至3,5,6の記載から容易に予測できたものである。
したがって、本件発明7は、刊行物1乃至3,5,6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

7.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1,2,5乃至7は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件発明1,2,5乃至7についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
また、本件発明3,4についての特許は、特許異議の申立ての理由によっては取り消すことはできない。
さらに、他に本件発明3,4についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明3,4についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願にされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
空気調和機の室内ユニット
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、この熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、
上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出し上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータとからなり、
上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して、ファンモータ周面と上記後板の板面との隙間に挿通して配管されることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。
【請求項2】上記後板は、その角部に熱交換器の組み込み時に、上記補助配管端部を後板表側から裏側へ通す切欠部が設けられ、この切欠部は、熱交換器を組み込んだあと遮蔽部材によって覆われることを特徴とする請求項1記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項3】上記後板は、上記補助配管とファンモータ周面との間に介在して補助配管のファンモータへの接触を規制する規制用突部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項4】上記遮蔽部材には、補助配管とファンモータとの間に介挿され、補助配管のファンモータへの接触を規制するリブが一体に突設されることを特徴とする請求項2記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項5】前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、
上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出し上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータとからなり、
上記後板は、上記ファンモータの背面側に、上記補助配管挿通用の凹溝部が一体に凹陥形成され、
上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して上記補助配管挿通用の凹溝部を挿通して配管されることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。
【請求項6】上記補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納されることを特徴とする請求項1または請求項5記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項7】上記少なくとも2本の補助配管は、互いに後板の板面と平行に並べて配置されることを特徴とする請求項1または請求項5記載の空気調和機の室内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、空気調和機を構成する室内ユニットに係り、特に、逆V字状熱交換器から延出される補助配管の配管構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に用いられる空気調和機は、被空調室に配置される室内ユニットと、屋外に配置される室外ユニットからなり、これらユニット相互を冷媒管および電気配線で接続してなる。
【0003】ユーザ側からは、これらユニットに対する小形化と、据付スペース低減の要望が大であり、各メーカにおいては、このような条件を満足しつつ、熱交換能力の増大を図らなければならない。
【0004】特に室内ユニットにおいては、従来、平板状の熱交換器をある角度傾斜して配置したり、側面視で、くの字状に折り曲げた熱交換器を備えて、ユニット本体の高さ寸法の低減化に努めてきた。
【0005】いずれタイプの熱交換器においても、多数枚のフィンが互いに狭小の間隙を存して並設され、これらフィンに熱交換パイプが貫通されるフィンドチューブタイプである。
【0006】そして、熱交換器の側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、ユニット本体外部の位置で、室外ユニットから延出される冷媒配管に接続するようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】問題は、ユニット本体内における熱交換器から突出される補助配管の配置構造にある。上記ユニット本体は、前面パネルと後板との組合わせによる筐体である。このユニット本体内には、上記熱交換器のほかに、被空調室内の空気を吸込んで熱交換器と熱交換させ、再び被空調室へ送風する室内送風機が配置されている。
【0008】この室内送風機は、ファンモータと、このファンモータの回転軸に連結される断面円形の送風ファンである、横流ファンとからなる。横流ファンは、熱交換器の長手方向(左右幅方向)寸法と同一の長手方向(軸方向)寸法を有し、かつ熱交換器の背面側に相対向して配置される。したがって、ファンモータは、熱交換器側面から突出した位置に配置される。
【0009】いずれにしろ、室内送風機であるファンモータと横流ファンのごく近接した位置にユニット本体を構成する後板があって、ユニット本体の薄形化が図られている。そのため、ファンモータおよび横流ファン周面と後板との間に、補助配管を挿通するスペースがない。
【0010】そこで、熱交換器側面部から突出する補助配管をユニット本体外部へ取り出すため、ファンモータと横流ファンとの間の距離を充分にとり、この間のスペースに補助配管を挿通することで解決が図られている。
【0011】このようにして、ユニット本体内における補助配管の挿通スペースが確保されているが、反面、ファンモータと横流ファンとで構成される室内送風機の長手方向寸法が長くなってしまい、ユニット本体の横幅寸法低減化が得られない。
【0012】あくまでユニット本体の横幅寸法の抑制を図るとすると、熱交換器および横流ファンの横幅寸法を削減して、補助配管の挿通スペースを確保しなければならなくなり、熱交換能力の低減につながる。
【0013】また、近時、側面視で逆V字状に形成される熱交換器を備え、熱交換器容量を増大して熱交換能力の増大化を図り、風速分布の均一化による送風騒音の低減を図る空気調和機の室内ユニットが開発されている。
【0014】この種の熱交換器においても、側面部から少なくとも2本の補助配管が突設されており、ユニット本体内における配置スペースに新たな配慮を払わなければならない。
【0015】本発明は、上記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、側面視で逆V字状に形成される熱交換器を備え、ここから突出される補助配管のユニット本体内における引き回し処理を容易なものにするとともに、ユニット本体の横幅寸法を低減して小型化を得る空気調和機の室内ユニットを提供しようとするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記目的を満足するため、第1の発明の空気調和機の室内ユニットは、請求項1として、前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、この熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、上記熱交換器の側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出し上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータとからなり、上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して、ファンモータ周面と上記後板の板面との隙間を挿通して配管されることを特徴とする。
【0017】請求項2として、請求項1記載の上記後板は、その角部に熱交換器の組み込み時に補助配管端部を後板表側から裏側へ通す切欠部が設けられ、この切欠部は、熱交換器を組み込んだあと遮蔽部材によって覆われることを特徴とする。
【0018】請求項3として、請求項1または請求項2記載の上記後板は、上記補助配管とファンモータ周面との間に介在して補助配管のファンモータへの接触を規制する規制用突部を備えたことを特徴とする。
【0019】請求項4として、請求項2記載の上記遮蔽部材には、補助配管とファンモータとの間に介挿され、補助配管のファンモータへの接触を規制するリブが一体に突設されることを特徴とする。
【0020】上記目的を満足するため、第2の発明の空気調和機の室内ユニットは、請求項5として、前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、上記熱交換器側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出し上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータとからなり、上記後板は、上記ファンモータの背面側に、上記補助配管挿通用の凹溝部が一体に凹陥形成され、上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して上記補助配管挿通用の凹溝部を挿通して配管されることを特徴とする。
【0021】請求項6として、請求項1または請求項5記載の上記補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納されることを特徴とする。請求項7として、請求項1または請求項5記載の少なくとも2本の補助配管は、互いに後板の板面と平行に並べて配置されることを特徴とする。
【0022】
【作用】請求項1の発明では、前側熱交換器と後側熱交換器のほぼ中間部に室内送風機が配置され、ファンモータと後板との間にある程度の空間スペースが発生するので、ここに補助配管を挿通する。ファンモータと横流ファンとの間が短縮され、その分、送風機の長手方向およびユニット本体の横幅寸法が短縮される。
【0023】請求項2の発明では、ユニットの組立て作業として、後板をベルトコンベアに載せて寝かした状態のまま補助配管を切欠部に挿入しながら、補助配管を後板の裏側へ通し、熱交換器を後板に組み付けられる。
【0024】請求項3の発明では、補助配管が後板とファンモータとの間に通されるので、今度は補助配管がファンモータに接触する恐れがある。そこで、この補助配管とファンモータとの間に、後板に一体に設けられる規制用突部を介在させ、補助配管のファンモータへの接触を規制する。
【0025】請求項4の発明では、補助配管とファンモータとの間に、切欠部を遮蔽する遮蔽部材に一体に設けられるリブが介在することにより、補助配管のファンモータへの接触を規制する。
【0026】請求項5の発明では、ファンモータと後板との間の空間スペースに突出する凹溝部を後板に一体に備え、この凹溝部内に補助配管を通すので、室内送風機の長手方向およびユニット本体の横幅寸法が短縮される。補助配管は後板の背面側を通り、ファンモータに接触することがない。
【0027】請求項6の発明では、少なくとも2本ある補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納されるので、まとめてシールドパイプに収納されている場合よりもスペースをとらない。
【0028】請求項7の発明では、少なくとも2本ある補助配管は後板の板面に平行に並べたから、従来のようにファンモータと横流ファンとの間のスペースに前後に並べて通すため無理してひねる必要がなくなる。
【0029】
【実施例】以下、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。図1ないし図3は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項6および請求項7を説明するのに都合がよい。
【0030】図1に示すように、空気調和機本体であるユニット本体1は、前面パネル2と後板3とから構成される。前面パネル2の前面側にはグリル4が嵌め込まれた前部吸込み口5aが開口され、上面側にはグリル6が嵌め込まれた上部吸込み口5bが開口される。
【0031】ユニット本体1内には、前部吸込み口5aと上部吸込み口5bの両側部に沿ってフィルタ支持具7が設けられ、このフィルタ支持具にエアーフイルタ8が着脱自在に装着される。
【0032】エアーフィルタ8を介して前部,上部吸込み口5a,5bと対向し、後述する熱交換器10が配置される。この熱交換器10に覆われるようにして、同じく後述する室内送風機11が配置される。
【0033】上記熱交換器10の前面側下部は前部ドレンパン12に、後面側下部は後板3に一体成形された後部ドレンパン13に挿入される。これら前部ドレンパン12と後部ドレンパン13は、図示しない連通路を介して連通する。
【0034】前部ドレンパン12の下方には、ユニット本体1の前面側下部に開口する吹出し口14が設けられる。上記後板3の熱交換器10と対向する部分は、その上端部が上部吸込み口5bの背面側端部に連結され、後部ドレンパン13から横流ファン11側部を介して、最下部は吹出し口14に亘るように延設される。
【0035】そして、前部ドレンパン12下面と、横流フアン11側部から吹出し口14に亘る後板3一部とで、吹出し案内路15が形成される。この吹出し案内路15に位置するよう、前部ドレンパン12の下面に左右方向ルーバ16が設けられる。また、吹出し口14部位には上下方向ルーバー17が設けられる。
【0036】つぎに、上記熱交換器10および室内送風機について詳述する。すなわち、この熱交換器10は、逆V字状に形成される主熱交換器10Aと、直状で主熱交換器一部に沿って設けられる補助熱交換器10Bとの組合わせ体からなる。
【0037】主熱交換器10Aは、はじめ、円弧状部と、直状部とが互いの端部を境に連結された連結体として成形される。これら円弧状部と直状部との連結部にはミシン目状の切込みが形成されていて、実際の連結部分はわずかでしかない。この連結部から直状部を所定角度に折り曲げることによって、逆V字状に形成される。
【0038】そして、ユニット本体1に主熱交換器10Aが組み込まれた状態で、円弧状部が前面側に位置するところから、この部分を前側熱交換器9Aと呼び、これよりも後部に位置する直状部を後側熱交換器9Bと呼ぶ。
【0039】円弧状に形成される前側熱交換器9Aは、前部吸込口5aに対向する位置にある。前部から後部に亘って斜め下方に傾斜する後側熱交換器9Bは、補助熱交換器10Bを介して上部吸込み口5bに対向する位置にある。
【0040】上記補助熱交換器10Bは、後側熱交換器9Bの上部側に、これと狭小の間隙を存して平行に設けられていて、したがって上部吸込み口5bと直接対向し、かつ斜め後方に傾斜することになる。
【0041】主熱交換器10Aおよび補助熱交換器10Bともに、互いに狭小の間隙を存して並設される多数枚の放熱フィンFと、これら放熱フィンを貫通し、かつ拡管手段によって嵌着される熱交換パイプPを備える、いわゆるフィンドチューブタイプである。
【0042】特に、補助熱交換器10Bの下部および前側熱交換器9Aの中間部の側面部からは後述する補助配管Pa,Pbが突設される。この補助配管Pa,Pbは、後述するようにしてユニット本体1内を挿通して、配管引き回しがなされ、図示しない室外ユニットから延出する冷媒管に接続される。
【0043】上記室内送風機11は、図2(A)を見ると理解し易い。なお同図は、上記熱交換器10を省略して示してある。室内送風機11は、ファンモータ11Aと、このファンモータ11Aの回転軸aに嵌着される不等ピッチ形の横流ファン11Bとから構成される。ファンモータ11Aと横流ファン11Bは、互いにほとんど同一の直径の円形状をなす。
【0044】このような室内送風機11のユニット本体1内の位置および熱交換器10に対する位置は、図3および再び図1に示すようになる。すなわち、上記ファンモータ11Aは前側熱交換器9Aおよび補助熱交換器10Bに接続する補助配管側Pa,Pbの側方部位に配置される。上記横流ファン11Bは、ファンモータ11Aとの隙間を可能な限り短縮した位置で、かつ熱交換器10に相対向して配置される。
【0045】換言すれば、横流ファン11Bを正確に熱交換器10に対向するよう位置設定をし、ここを基準としてファンモータ11Aを配置することとなる。そして、横流ファン11Bは円弧状に形成される前側熱交換器9Aの背面側に近接して配置される。主熱交換器10Aが前側熱交換器9Aと後側熱交換器9Bとで逆V字状に形成されているところから、横流ファン11Bは前後側熱交換器9Aのほぼ中間部に位置し、かつこれら熱交換器9A,9Bによってあたかも傘状に覆われることになる。
【0046】そして、このような構成から、後側熱交換器9Bの後端と後板3とは近接して、これらの間のスペースはほとんどないのに比較して、熱交換器10から突出するファンモータ11Aと後板3との間には、ある程度のスペースが確保されることになる。
【0047】一方、図2(A)にも示すように、後板の所定位置には複数の規制用突部20…が一体的に設けられている。これら規制用突部20は、ファンモータ11Aの背面側に対向する位置で、後板3の上下方向に沿って互いに所定間隔を存している。
【0048】そして、後板3の板面に対して垂直に、かつ前方へ突出する片部20aと、この先端から後板板面と平行に折曲される片部20bとからなり、平面視でL字状に形成される。
【0049】突出片部20aの突出高さは、上記補助配管Pa,Pbの直径よりもわずかに大であり、平行片部20bの幅方向長さは補助配管を2本並列に並べた長さよりもある程度大である。
【0050】再び図1および図3に示すように、前側熱交換器9Aの側部から突出する各補助配管Pa,Pbは、この熱交換器9Aの上端部方向に斜めに傾斜して延出される。
【0051】補助配管Pa,Pbは2本とも平行に揃えられ、後板3に近接する方向に水平に延出され、2本並んだ状態のまま、シールドパイプ21内に収納される。そして、後板の直前位置において垂直方向に垂下するよう曲成され、後板3の板面に近接し、後板に沿って下方に延出される部分は、上記規制用突部20…に挿通される。
【0052】すなわち、逆V字状の熱交換器10を備えることにより、前側熱交換器9Aと後側熱交換器9Bとによって横流ファン11Bが覆われるように配置される。熱交換器10に近接して後板3を配置しても、ファンモータ11Aは熱交換器の側部に突出した位置に配置されているから、このファンモータ11Aと後板3との間にある程度のスペースが確保される。
【0053】このスペースを利用して、2本の補助配管Pa,Pbが挿通される。そして、上記スペースに対応して複数の規制用突部20…を備え、補助配管を後板3との間に位置規制する。
【0054】後板3の、図において右側下角部には、切欠部22が設けられている。上記シールドパイプ21に収納された補助配管Pa,Pbは、この切欠部22を介して後板3の前面側から後面側に引き回される。そして、この切欠部には別途備えられる遮蔽部材23が嵌め込まれていて、切欠部空間22を塞ぐとともに、シールドパイプ21に収納された補助配管Pa,Pbを遮蔽する。
【0055】上記遮蔽部材23は、図2(B)に示すようになっている。しかして、冷凍サイクル運転にともなって室内送風機11が駆動される。ファンモータ11Aによって横流フアン11Bが回転駆動され、前,上部吸込み口5a,5bから被空調室空気がユニット本体1内に吸込まれる。
【0056】熱交換空気は、前部吸込み口5aと対向して配置される前側熱交換器9Aを流通し熱交換をなす。同時に熱交換空気は、上部吸込み口5bと対向して配置される補助熱交換器10Bを介して後側熱交換器9Bを流通し、熱交換をなす。
【0057】これら熱交換器9A,9B,10Bと熱交換した熱交換空気は、横流フアン11から吹出し案内路15を介して吹出し口14から吹出され、被空調室の空気調和をなす。
【0058】前側熱交換器9Aが円弧状に形成され、その曲成方向が前部から後部に亘るところから、この前側熱交換器は横流フアン11Bの周面一部を囲むように曲成した状態となっている。
【0059】前側熱交換器9Aの背面側側縁と横流ファン11B面との距離が、漸次近接し、かつ漸次離間しており、その変化の差が、従来のもの(たとえば実開平4-57073号公報の技術)と比較して極めて小さい。したがって、熱交換器10における風速分布の均一化が得られ、熱交換器を通過する熱交換空気の送風騒音が低下する。
【0060】そして、熱交換器10が逆V字状に形成され、かつ室内送風機11は送風特性を考慮して前後側熱交換器9Aのほぼ中間部に配置されることによって、ファンモータ11Aと後板3との間にある程度の間隙が生じる。
【0061】この間隙に補助配管Pa,Pbが収容されたシールドパイプ21を挿通したことにより、従来のようなファンモータ11Aと横流ファン11Bとの間に補助配管挿通用のスペースをとる必要がなくなり、その分これらモータとファンとの間を短縮できる。これはユニット本体1の幅方向の短縮となり、小型化を得られる。
【0062】なお、ユニット本体1の横幅寸法を従来通りに保持するならば、熱交換器10の横幅寸法を拡大して熱容量を増大できるとともに、これに合わせて横流ファン11Bの軸方向長さを長くして送風量の増大を得る。
【0063】上記後板3に設けられる規制用突部20…は、補助配管Pa,Pbが収容されたシールドパイプ21とファンモータ11Aとの間に介在する。換言すれば、ファンモータ11Aおよび横流ファン11Bが回転駆動による振動があっても、これらと補助配管Pa,Pbが収容されたシールドパイプ21との間に規制用突部20が介在しているので、補助配管がファンモータに接触することがなく、したがって騒音発生がない。
【0064】補助配管Pa,Pbは後板3の内側を通るので、熱交換器10を後板3に組付け配置する作業で、従来のように熱交換器と補助配管で後板を挟み込まずにすみ、作業性がよいとともに、最も強度を必要とする後板上部に切欠部を設けないところから後板3の剛性保持を得る。
【0065】この室内ユニットの製造工程において、後板3に室内送風機11を取付け固定したあと、熱交換器10を組付けるのであるが、この組付け時には後板3をベルトコンベアに載せたまま(寝かせたまま)でその作業が行える。
【0066】すなわち、補助配管Pa,Pbを切欠部22に挿入しながら、補助配管を後板3の裏側に通すことができ、後板3を持ち上げることなく熱交換器10を所定位置に置くことができる。
【0067】図4(A),(B)は、請求項4を説明するのに都合がよい。ここでは、先に説明した規制用突部20に代って、後板3の切欠部22を遮蔽する遮蔽部材23Aにリブ25を一体に備えている。他の構成部品は全て先のものと同一であるので、同番号を付して新たな説明は省略する。
【0068】上記リブ25は、補助配管Pa,Pbとファンモータ11Aとの間に介在する。遮蔽部材23Aが後板3下部の切欠部22に取付けられるため、ここから突設されるリブ25は下部側から補助配管とファンモータと間に介挿される。
【0069】補助配管Pa,Pbを後板3とファンモータ11Aとの隙間に通すところから、補助配管がファンモータに接触し易くなるが、これらの間にリブ20を介挿することにより、補助配管のファンモータへの接触は確実に規制される。
【0070】図5ないし図7(A),(B)は、請求項5を説明するのに都合がよい。ただし、ここでは補助配管が後板3Aの上部から後板3Aの裏側に引き回されるので、切欠部に対する遮蔽部材は不要であり、かつ後述する後板3Aを除いて、他の室内ユニットの構成部品は、先に図1ないし図3において説明したものと同一であるので、ここでは同番号を付して新たな説明は省略する。
【0071】上記後板3Aは、上記ファンモータ11Aに対向する部位に、この上下方向に沿って凹溝部26が一体に設けられる。この凹溝部26は、上端部が後板3A上端部よりも手前側に突出した形状であって、したがって開口している。
【0072】凹溝部26の突出面は、ファンモータ11A周面と接触しない程度に近接した位置にある。この幅寸法はシールドパイプ21内で2本の補助配管Pa,Pbを横に並べて収容してもなお余裕のあるよう設定される。
【0073】しかして、前側熱交換器9A側面部から突出する2本の補助配管Pa,Pbは、ファンモータ11Aの上方部位において水平方向に折曲されシールドパイプ21内に収容されてから、凹溝部26の上端開口部からこの内部に挿通される。そして、補助配管Pa,Pbが収容されたシールドパイプ21は凹溝部26の外面に沿って、凹溝部内に収容された状態で延出される。
【0074】すなわち、従来のようにファンモータ11Aと横流ファン11Bとの間に補助配管挿通用のスペースをとる必要がなく、その分、モータとファンとの間を短縮できる。これはユニット本体1の幅方向の短縮となり、小型化を得られる。
【0075】そして、ユニット本体1の横幅寸法を従来通りに保持するならば、熱交換器10の横幅寸法を拡大して熱容量を増大でき、これに合わせて横流ファン11Bの軸方向長さを長くして送風量の増大を得る。
【0076】補助配管Pa,Pbとファンモータ11Bとの間に凹溝部26が介在するので、ファンモータ11Bの駆動にともなう振動があっても、補助配管Pa,Pbへの接触は確実に規制され、騒音発生には至らない。
【0077】なお上記実施例では、補助配管Pa,Pbをまとめてシールドパイプ21内に収容したが、請求項6に記載のように、補助配管Pa,Pbをそれぞれ個々に分割してシールドパイプに収容するようにしてもよい。このように構成することによって、まとめてシールドパイプに収容するよりもスペースをとらずにすむ。
【0078】請求項7である補助配管Pa,Pbをユニット本体1の後板3,3Aの板面に沿って平行に並べて配置した点は、図3および図7に示してある。このように構成することによって、従来のようにファンモータと横流ファンとの隙間に補助配管を挿通すべく、前後に並べる必要がなくなる。すなわち、前後に並べるには配管を無理にひねらなくてはならないが、平行に並べるには、このような無理な作業は不要となる。この他、本発明の要旨を越えない範囲内で種々の変形実施が可能なことは、勿論である。
【0079】
【発明の効果】以上説明したように請求項1の発明では、逆V字状熱交換器を構成する前側熱交換器と後側熱交換器の間に室内送風機を配置し、ファンモータと後板との空間スペースに補助配管を挿通する。したがって、ファンモータと横流ファンとの間が短縮され、その分、送風機の長手方向およびユニット本体の横幅寸法が短縮され、ユニット本体の小型化を図れるとともに、最も強度を必要とする後板上部には加工が不要となって後板の剛性増大を得る。
【0080】ユニット本体の横幅寸法を従来通りとすると、熱交換器の熱容量を増大することができて熱交換能力の向上が得られ、併せて送風ファンの軸方向長さを長くして送風量の増大を図れる。
【0081】請求項2の発明では、後板に補助配管が挿通する切欠部を設け、この切欠部は補助配管挿通後に遮蔽部材で遮蔽するようにしたから、ユニットの組立て作業として、後板をベルトコンベアに載せて寝かした状態のまま熱交換器の後板への取付け作業が可能となり、作業性の向上を図れる。
【0082】請求項3の発明では、補助配管とファンモータとの間に、後板に一体に設けられる規制用突部を介在させたから、補助配管のファンモータへの接触を確実に規制でき、送風機の振動を補助配管が拾うことがなく、騒音発生に至らない。
【0083】請求項4の発明では、切欠部を遮蔽する遮蔽部材にリブを設けて、補助配管とファンモータとの間に介挿することにより、補助配管のファンモータへの接触を確実に規制でき、送風機の振動を補助配管が拾うことがなく、騒音発生に至らない。
【0084】請求項5の発明では、後板のファンモータ背面側部位に凹溝部を一体に備え、この凹溝部内に補助配管を挿通するようにしたから、ファンモータと横流ファンとの間が短縮して、送風機の長手方向およびユニット本体の横幅寸法の短縮によるユニット本体の小型化を図れるとともに、凹溝部自体で補助配管のファンモータへの接触を規制する。
【0085】請求項6の発明では、少なくとも2本ある補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納するようにしたから、まとめてシールドパイプに収納されている場合よりもスペースをとらずにすむ。
【0086】請求項7の発明では、少なくとも2本ある補助配管は後板の板面に平行に並べたから、従来のようにファンモータと横流ファンとの間のスペースに前後に並べて通すため無理してひねる必要がなくなり、作業性の向上を得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明の一実施例を示す、空気調和機室内ユニットの縦断面図。
【図2】(A)は、同実施例の、熱交換器が組み付けられる以前の形態の室内ユニット内部の一部正面図。(B)は、遮蔽部材の斜視図。
【図3】同実施例の、室内ユニット内部の一部正面図。
【図4】(A)は、他の実施例の、室内ユニット内部の一部正面図。(B)は、遮蔽部材の斜視図。
【図5】第2の発明の一実施例を示す、空気調和機室内ユニットの縦断面図。
【図6】同実施例の、熱交換器が組み付けられる以前の形態の室内ユニット内部の一部正面図。
【図7】(A)は、同実施例の、室内ユニット内部の一部正面図。(B)は、一部の斜視図。
【符号の説明】2…前面パネル、3…後板、1…ユニット本体、9A…前側熱交換器、9B…後側熱交換器、10…熱交換器、11…室内送風機、F…フィン、P…熱交換パイプ、Pa,Pb…補助配管、11B…送風ファン(横流ファン)、11A…ファンモータ、22…切欠部、23…遮蔽部材、20…規制用突部、25…リブ、26…凹溝部、21…シールドパイプ。
 
訂正の要旨 (ア)訂正事項1
特許請求の範囲請求項1の、
「【請求項1】
前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、この熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、
上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置に配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるファンモータとからなり、
上記補助配管は、上記ファンモータ周面と上記後板の板面との隙間を挿通して配管されることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。」を、
「【請求項1】
前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、この熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、
上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出し上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータとからなり、
上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して、ファンモータ周面と上記後板の板面との隙間を挿通して配管されることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。」と訂正する。
(イ)訂正事項2
特許請求の範囲請求項3の、
「【請求項3】
上記後板は、上記補助配管とファンモータ周面との間に介在して補助配管のファンモータへの接触を規制する規制用突部を備えたことを特徴とする請求項1および請求項2記載の空気調和機の室内ユニット。」を、
「【請求項3】
上記後板は、上記補助配管とファンモータ周面との間に介在して補助配管のファンモータへの接触を規制する規制用突部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の空気調和機の室内ユニット。」と訂正する。
(ウ)訂正事項3
特許請求の範囲請求項4の、
「【請求項4】
上記遮蔽部材には、補助配管とファンモータとの間に介挿され、補助配管のファンモータへの接触を規制するリブが一体に突設されることを特徴とする請求項1および請求項2記載の空気調和機の室内ユニット。」を、
「【請求項4】
上記遮蔽部材には、補助配管とファンモータとの間に介挿され、補助配管のファンモータへの接触を規制するリブが一体に突設されることを特徴とする請求項2記載の空気調和機の室内ユニット。」と訂正する。
(エ)訂正事項4
特許請求の範囲請求項5の、
「【請求項5】
前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、
上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置に配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるファンモータとからなり、
上記後板は、上記ファンモータの背面側に、上記補助配管挿通用の凹溝部が一体に凹陥形成されることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。」を、
「【請求項5】
前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、
上記熱交換器側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、
上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出し上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータとからなり、
上記後板は、上記ファンモータの背面側に、上記補助配管挿通用の凹溝部が一体に凹陥形成され、上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して上記補助配管挿通用の凹溝部を挿通して配管されることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。」と訂正する。
(オ)訂正事項5
特許請求の範囲請求項6の、
「【請求項6】
上記補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納されることを特徴とする請求項1および請求項5記載の空気調和機の室内ユニット。」を、
「【請求項6】
上記補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納されることを特徴とする請求項1または請求項5記載の空気調和機の室内ユニット。」と訂正する。
(カ)訂正事項6
特許請求の範囲請求項7の、
「【請求項7】
上記少なくとも2本の補助配管は、互いに後板の板面と平行に並べて配置されることを特徴とする請求項1、請求項5および請求項6記載の空気調和機の室内ユニット。」を、
「【請求項7】
上記少なくとも2本の補助配管は、互いに後板の板面と平行に並べて配置されることを特徴とする請求項1または請求項5記載の空気調和機の室内ユニット。」と訂正する。
(キ)訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0009】中の、
「そのため、ファモータンおよび横流ファン周面と後板との間に、補助配管を挿通するスペースがない。」を、
「そのため、ファンモータおよび横流ファン周面と後板との間に、補助配管を挿通するスペースがない。」と訂正する。
(ク)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0016】乃至【0021】の、
「【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を満足するため、第1の発明の空気調和機の室内ユニットは、請求項1として、前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、この熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、上記熱交換器の側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置に配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるファンモータとからなり、上記補助配管は、上記ファンモータ周面と上記後板の板面との隙間を挿通して配管されることを特徴とする。
【0017】
請求項2として、請求項1記載の上記後板は、その角部に熱交換器の組み込み時に補助配管端部を後板表側から裏側へ通す切欠部が設けられ、この切欠部は、熱交換器を組み込んだあと遮蔽部材によって覆われることを特徴とする。
【0018】
請求項3として、請求項1および請求項2記載の上記後板は、上記補助配管とファンモータ周面との間に介在して補助配管のファンモータへの接触を規制する規制用突部を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項4として、請求項1および請求項2記載の上記遮蔽部材には、補助配管とファンモータとの間に介挿され、補助配管のファンモータへの接触を規制するリブが一体に突設されることを特徴とする。
【0020】
上記目的を満足するため、第2の発明の空気調和機の室内ユニットは、請求項5として、前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、上側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、上記熱交換器の側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置に配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるファンモータとからなり、上記後板は、上記ファンモータの背面側に、上記補助配管挿通用の凹溝部が一体に凹陥形成されることを特徴とする。
【0021】
請求項6として、請求項1および請求項5記載の上記補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納されることを特徴とする。請求項7として、請求項1、請求項5および請求項6記載の少なくとも2本の補助配管は、互いに後板の板面と平行に並べて配置されることを特徴とする。」を、
「【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を満足するため、第1の発明の空気調和機の室内ユニットは、請求項1として、前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、前側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、この熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き、熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、上記熱交換器の側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出した位置に配置されるファンモータとからなり、上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して、ファンモータ周面と上記後板の板面との隙間を挿通して配管されることを特徴とする。
【0017】
請求項2として、請求項1記載の上記後板は、その角部に熱交換器の組み込み時に補助配管端部を後板表側から裏側へ通す切欠部が設けられ、この切欠部は、熱交換器を組み込んだあと遮蔽部材によって覆われることを特徴とする。
【0018】
請求項3として、請求項1または請求項2記載の上記後板は、上記補助配管とファンモータ周面との間に介在して補助配管のファンモータへの接触を規制する規制用突部を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項4として、請求項2記載の上記遮蔽部材には、補助配管とファンモータとの間に介挿され、補助配管のファンモータへの接触を規制するリブが一体に突設されることを特徴とする。
【0020】
上記目的を満足するため、第2の発明の空気調和機の室内ユニットは、請求項5として、前面パネルと後板とを組合わせた筐体であるユニット本体と、このユニット本体内部に収容配置され、側面視で逆V字状に折り曲げられる、上側熱交換器と後側熱交換器との連設体である熱交換器と、熱交換器に被空調室の熱交換空気を導き熱交換させて再び被空調室へ送風する室内送風機とを具備した空気調和機の室内ユニットにおいて、上記熱交換器の側面部から少なくとも2本の補助配管が突出され、上記室内送風機は、上記前側熱交換器および後側熱交換器が傘状となって覆う位置で、これら熱交換器と相対向して配置される送風ファンおよびこれら熱交換器の一側部から突出し上記送風ファンとの隙間を短縮した位置に配置されるファンモータとからなり、上記後板は、上記ファンモータの背面側に、上記補助配管挿通用の凹溝部が一体に凹陥形成され、上記補助配管は、上記ファンモータの上部側に形成されるスペースを介して上記補助配管挿通用の凹溝部を挿通して配管されることを特徴とする。
【0021】
請求項6として、請求項1または請求項5記載の上記補助配管は、個々に分割されてシールドパイプに収納されることを特徴とする。請求項7として、請求項1または請求項5記載の少なくとも2本の補助配管は、互いに後板の板面と平行に並べて配置されることを特徴とする。」と訂正する。
異議決定日 2001-12-03 
出願番号 特願平7-122211
審決分類 P 1 651・ 121- ZD (F24F)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 水谷 万司  
特許庁審判長 滝本 静雄
特許庁審判官 井上 茂夫
長浜 義憲
登録日 2000-02-25 
登録番号 特許第3038135号(P3038135)
権利者 東芝キヤリア株式会社
発明の名称 空気調和機の室内ユニット  
代理人 橋本 良郎  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 橋本 良郎  
代理人 坪井 淳  
代理人 坪井 淳  
代理人 村松 貞男  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 村松 貞男  

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