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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02K
管理番号 1083084
異議申立番号 異議2002-72188  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-09-05 
確定日 2003-06-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3266448号「ブラシレスモータの回転体装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3266448号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第3266448号の請求項1ないし2に係る特許は、平成7年3月27日に出願され、平成14年1月11日に設定の登録がなされ、同年3月18日にその特許公報が発行された。これに対し、平成14年9月5日に皆川美芳よりその請求項1、2に係る特許に対して、同年9月18日に井本誠二よりその請求項1に係る特許に対して、それぞれ特許異議の申立てがなされ、当審において平成15年1月31日付で取消理由を通知したところ、同年4月14日に訂正請求がなされたものである。

【2】特許異議の申立ての理由の概要
(1)異議申立人皆川美芳は、証拠として特開平4-357319号公報(甲第1号証、公開日平成4年12月10日。)、特開平3-7035号公報(甲第2号証、公開日平成3年1月14日。)、特開平3-161710号公報(甲第3号証、公開日平成3年7月11日。)、実願平4-65589号(実開平6-31375号)のCD-ROM(甲第4号証、公開日平成6年4月22日。)をそれぞれ引用し{なお、他に特許第2966011号公報(参考資料1)、特開平5-316707号公報(参考資料2)、特開平5-318323号公報(参考資料3)を参考資料としてそれぞれ引用している。}、本件特許発明の請求項1及び請求項2は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得た発明であるから特許法第29条第2項の規定に該当するので、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。
(2)異議申立人井本誠二は、証拠として特開平5-316707号公報(甲第1号証)、特開平7-27131号公報(甲第2号証)、特開平6-311698号公報(甲第3号証)、特開平2-124931号公報(甲第4号証)、特開昭61-68376号公報(甲第5号証)、特開平1-284573号公報(甲第6号証)、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞社、昭和62年12月25日、P.299-325(甲第7号証)、「日本接着協会誌」、日本接着協会、昭和49年11月1日、Vol.10、No.6、1974、P.266-272(甲第8号証)をそれぞれ引用し、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明、および、甲第7、8号証に記載された技術情報に基づき、当業者が容易になし得た発明であるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、当該発明に係る特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。

【3】当審で通知した取消理由の概要
当審において、本件特許請求項1に係る発明に対し、上記申立人井本誠二の提出した甲第1号証(刊行物1)、同甲第3号証(刊行物2)、申立人皆川美芳の提出した甲第1号証(刊行物3)、申立人井本誠二の提出した甲第7号証(刊行物4)、及び同甲第8号証(刊行物5)を引用して、本件請求項1に係る発明は、上記刊行物1ないし5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨、また、本件特許請求項2に係る発明に対し、申立人井本誠二の提出した甲第3号証(刊行物6)及び申立人皆川美芳の提出した甲第4号証(刊行物7)を引用して、本件請求項2に係る発明は、上記刊行物6及び7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨、の取消理由を通知した。

【4】訂正の適否についての判断
上記平成15年 4月14日になされた訂正請求による訂正の適否につき、以下に検討する。
(1)訂正の要旨
ア.訂正事項A-1
特許第3266448号の明細書中の特許請求の範囲の請求項1において、同請求項中の「回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨーク、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットを各々固定する」を、「回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々固定する」と、また、同請求項中の「接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率で構成してなることを特徴とする」を、「接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率で構成し、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止したことを特徴とする」と訂正する。
イ.訂正事項A-2
a) これに伴い、同明細書中の段落番号【0007】の
「【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により20000rpm以上で回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨーク、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットを各々固定する接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率で構成してなることを特徴とするものである。」を、
「【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により20000rpm以上で回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々固定する接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率で構成し、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止してなることを特徴とするものである。」と訂正する。
b) また、同明細書中の段落番号【0008】の
「請求項2記載の発明は、動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材を軸方向に対向する面で接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、かつ前記界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設けたことを特徴とするものである。」を、
「請求項2記載の発明は、動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、アルミニウムあるいはアルミ合金製の回転軸の軸方向に対向する面で、アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材とを接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、かつ前記界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設け、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止したことを特徴とするものである。」と訂正する
c) また、同明細書中の段落番号【0009】の
「【作用】
請求項1記載の発明では、動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により20000rpm以上で回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨーク、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットを各々固定する接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率を有するように構成する。」を、
「【作用】
請求項1記載の発明では、動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により20000rpm以上で回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々固定する接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率を有するように構成し、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止する。」と訂正する。
d) また、同明細書中の段落番号【0010】の
「このため、回転体を構成する回転軸、ヨーク及びマグネットの各部品間で熱膨張の違いがあっても、バランス変化を生じ難くすることができる。従って、実用温度で20000rpm以上で高速回転しているモータのバランス変化を抑えて、モータ振動による本体騒音を低減することができる。」を、
「このため、回転体を構成する回転軸、ヨーク及びマグネットの各部品間で熱膨張の違いがあっても、バランス変化を生じ難くすることができる。また、回転軸、ポリゴンミラー、および係止部材であるミラー押さえは、アルミニウムあるいはアルミニウム合金で構成しているため、熱膨張差によるバランス変化を発生しないようにすることができる。従って、実用温度で20000rpm以上で高速回転しているモータのバランス変化を抑えて、モータ振動による本体騒音を低減することができる。」と訂正する。
e) また、同明細書中の段落番号【0011】の
「請求項2記載の発明では、動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材を軸方向に対向する面で接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、かつ前記マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設けるように構成する。」を、
「請求項2記載の発明では、動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、アルミニウムあるいはアルミ合金製の回転軸の軸方向に対向する面で、アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材とを接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、かつ前記界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設け、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止する。」と訂正する。
f) また、同明細書中の段落番号【0012】の
「このため、熱応力を発生させない構造にすることができるので、バランス変化を抑えることができる。また、界磁マグネットをアルミニウム-マンガン系の磁石から構成することにより、切削を行うことができるため、バランス修正用の溝も直接加工で設けることができるとともにバランス変化の抑制と遠心膨張による破壊防止を達成することができる。そして、マグネット自身にバランス修正用の溝を設けたため、特別な部材を設けることがないので、低コスト化を達成することができる。」を、
「このため、熱応力を発生させない構造にすることができるので、バランス変化を抑えることができる。また、界磁マグネットをアルミニウム-マンガン系の磁石から構成することにより、切削を行うことができるため、バランス修正用の溝も直接加工で設けることができるとともにバランス変化の抑制と遠心膨張による破壊防止を達成することができる。そして、マグネット自身にバランス修正用の溝を設けたため、特別な部材を設けることがないので、低コスト化を達成することができる。また、回転軸、ポリゴンミラー、および係止部材であるミラー押さえは、アルミニウムあるいはアルミニウム合金で構成しているため、熱膨張差によるバランス変化を発生しないようにすることができる。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否(特許法第120条の4第2項及び同第3項において準用する特許法第126条第2、3項に規定する要件)についての判断
ア.訂正事項A-1について
訂正後の「・・・の回転軸と鉄系ヨークと、また・・・からなる界磁マグネットとを(各々固定する)」との事項は、単に記載をより明確にしたもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められ、また、訂正後の「前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止した」との事項は、特許請求の範囲の記載をさらに限定するものであって、当該事項は訂正前の特許明細書の段落【0023】に記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、いずれの事項も新規事項の追加ではない。
イ.訂正事項A-2について
訂正事項A-2における上記a)ないしf)の訂正は、いずれも、特許請求の範囲の記載を訂正する上記訂正事項A-1との整合を図るために特許明細書の発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加ではなく、又、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項(及び第3項)の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【5】特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
前述のとおり本件訂正は認められるので、本件の請求項1、2に係る発明は、本件訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】 動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により20000rpm以上で回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々固定する接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率で構成し、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止したことを特徴とするブラシレスモータの回転体装置。」(以下、「本件発明1」という。)
「【請求項2】 動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、アルミニウムあるいはアルミ合金製の回転軸の軸方向に対向する面で、アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材とを接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、かつ前記界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設け、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止したことを特徴とするブラシレスモータの回転体装置。」
(以下、「本件発明2」という。)

(2)特許法第29条第2項の適用について
A.請求項1に係る発明(本件発明1)に対して
ア.引用刊行物
1.特開平5-316707号公報(申立人井本誠二提出の甲第1号証)
当審で通知した取消理由に引用した、本件出願前に頒布された上記刊行物1(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、
a.「しかしながら、このような従来の面対向型モータ30にあっては、イナーシャ低減のためフランジ36にアルミニウム合金を使用していたため、フランジ36の熱膨張率が大きく、またロータマグネット32の熱膨張率はアルミニウム合金よりさらに大きくなっていた。このため、ポリゴンスキャナの連続運転時の温度上昇や遠心力により、ロータマグネット32が径方向に膨張してしまい、回転体20の不釣合いが増し、回転精度が低下する問題があった。」(【0004】【発明が解決しようとする課題】)
b.「そこで本発明は、ロータマグネットの保持方式を工夫して連続運転時に発生するロータマグネットの膨張を抑制することにより、その熱膨張に伴う回転精度の低下を防止して、信頼性の高い面対向型モータを提供することを目的とし、また回転体に対する固定軸の振動の影響を小さくし、低コストにすることを目的とする。」(【0006】)
c.「上記目的を達成するため、請求項1の発明は、固定軸と該固定軸が挿入される中空回転軸とを有する非接触軸受装置の該中空回転軸に固定されたロータヨークと、該ロータヨークに保持されたロータマグネットと、該ロータマグネットと面対向する駆動コイル基板と、を備えた面対向型モータにおいて、前記ロータヨークが前記ロータマグネットの外周面に嵌合するロータマグネット嵌合部を有し、該嵌合部によってロータマグネットを保持することを特徴とするものであり」(【0007】【課題を解決するための手段】)
d.「請求項1記載の発明では、ロータヨークのロータマグネット嵌合部が、ロータマグネットの外周面に嵌合することにより、連続運転時の温度上昇や遠心力によるロータマグネットの径方向の膨張が抑制される。したがって、面対向型モータの回転精度が向上する。また、ロータマグネットをロータヨークで固定することにより、従来ロータマグネットを固定していたフランジを削減することが可能となり、部品点数が削減される。したがって、面対向型モータの製造コストが低減できる。」(【0010】【作用】)
e.「また、動圧空気ラジアル軸受65を構成する固定軸61と中空回転軸64の材質は、アルミニウム、アルミニウム合金またはステンレス鋼の同材質同士とすることが好ましい。」(【0015】)
f.「前記中空回転軸64には、これと一体回転する被回転体としての蓋72、ポリゴンミラー73、ミラー押え74、永久磁石75b、取り付けねじ76、ロータヨーク81およびロータマグネット82が取り付けられており、これらが一体となって回転体70を構成している。図2に示すように、前記回転体70の重心位置70gは前記固定軸61の軸方向において、動圧空気ラジアル軸受65の一対のヘリングボーン状溝62、63の略中心位置65aから固定軸61の固定端61aまでの間に位置している。」(【0016】)
g.「固定軸61の自由端に取り付けられた永久磁石75aとハウジング51に取り付けられた永久磁石75cは、永久磁石75bに反発するようになっており、これら永久磁石75a、永久磁石75bおよび永久磁石75cは回転体70がアキシャル方向に完全非接触状態にする反発型サンドイッチ構造の磁気スラスト軸受75を構成している。一方、回転体70の一部として中空回転軸64に取り付けられたロ-タヨーク81とロータマグネット82は、ハウジング51に取り付けられた駆動コイル基板83、ステータヨーク84およびホール素子85と共に面対向型モータ80を構成しており、この面対向型モータ80は、駆動コイル基板83に設けられた図示しないドライバー部によってロータマグネット82を回転させ、回転体70を回転させることができる。また、ロータヨーク81は鉄材または磁性材のステンレス鋼で形成され、ロータマグネット82はプラスチックマグネットで形成されており、これらロータヨーク81、ロータマグネット82および上述従来例のフランジ36のようなアルミニウム合金フランジの熱膨張率は、ロータマグネット82の膨張率>アルミニウム合金フランジの膨張率>ロータヨーク81の膨張率、の関係になる。」(【0017】)
h.「 回転体70の高速回転下において、温度上昇や遠心力によってロータマグネット82が径方向に膨張しようとする。しかし、本実施例では、ロータマグネット82より熱膨張率の小さいロータヨーク81の嵌合部86が、ロータマグネット82の外周面に嵌合し密着しているから、ロータマグネット82の熱膨張が抑制される。したがって、回転体70の不釣合いの増加が防止され、面対向型モータ80の回転精度が向上する。」(【0020】)
との記載がある。

以上の記載において、その面対向型モータは、ステータヨーク84およびホール素子85と共に構成されるものであるからブラシレスモータであると解され、また、特に記載c、d(【0007】、【0010】)によれば、その中空回転軸64とロータヨーク81と、また、そのロータヨーク81とロータマグネット82とは各々少なくとも「固定」したものといえるから、結局、上記引用例1には、例えばポリゴンスキャナに利用されるブラシレスモータにおいて、連続運転時に発生するロータマグネットの膨張を抑制することにより、その熱膨張に伴う回転精度の低下を防止して、信頼性の高いブラシレスモータを提供することを目的とする、以下の発明が記載されているものと認められる。
「動圧空気ラジアル軸受65によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により高速回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の中空回転軸64と鉄材または磁性材のステンレス鋼で形成されたロータヨーク81と、また鉄材または磁性材のステンレス鋼製のロータヨーク81とプラスチックマグネットで形成されたロータマグネット82とを各々少なくとも固定するものであって、前記ロータヨーク81の嵌合部86が、前記ロータマグネット82の外周面に嵌合して密着し(て固定し)、前記中空回転軸64に形成した段部に載置したポリゴンミラー73をミラー押え74により係止したことを特徴とするブラシレスモータの回転体装置。」

2.特開平6-311698号公報(申立人井本誠二提出の甲第3号証)
同じく当審で通知した取消理由に引用した、本件出願前に頒布された上記刊行物2(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に、
a.「本発明は、ポリゴンミラー駆動用スキャナモータなどに利用される、アキシャルギャップタイプモータの磁気浮上型気体動圧軸受に関するものである。」(【0001】【産業上の利用分野】)
b.「回転軸10の他端側(図中上側)には、焼きバメされたフランジ11が接着固定されており、このフランジ11には円盤状のロータヨーク12が接着により固定されている。このようにロータヨーク12をフランジ11に固定して、回転軸10と機械的な一体構造とすることにより、ロータヨーク12を回転軸10と一体的に回転するように構成している。このロータヨーク12の下面には、複数極に等間隔着磁されたリング状のロータマグネット13が接着固定されており、このロータマグネット13は、上記プリント配線基板4上に接続固定されている複数個のステータコイル5と、若干の空隙を介して両者の間に所定の磁気ギャップを形成するように対向配置している。この磁気ギャップは、フランジ11の位置を変動させることにより調整可能である。」(【0024】)
との記載がある。

以上の記載において、記載b(【0024】)の「回転軸10の他端側(図中上側)には、焼きバメされたフランジ11が接着固定されており、このフランジ11には円盤状のロータヨーク12が接着により固定されている。・・・このロータヨーク12の下面には、複数極に等間隔着磁されたリング状のロータマグネット13が接着固定されており、」との記載における「接着により固定されている」(「接着固定」)とは、接着剤により固定されていることを意味することは自明のことというべきであるから、結局、上記引用例2には、ポリゴンミラー駆動用スキャナモータなどに利用される、アキシャルギャップタイプモータの磁気浮上型気体動圧軸受(モータの回転体装置)に関する、以下の発明が記載されているものと認められる。
「気体動圧軸受部によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により高速回転する装置において、回転体を構成する回転軸10と焼きバメされたフランジ11を接着剤により固定し、このフランジ11にはロータヨーク12を接着剤により固定し、またこのロータヨーク12の下面には、ロータマグネット13を接着剤により固定したモータの回転体装置。」

3.特開平4-357319号公報(申立人皆川美芳提出の甲第1号証)
同じく当審で通知した取消理由に引用した、本件出願前に頒布された上記刊行物3(以下、「引用例3」という。)には、図面と共に、
a.「本発明は、温度変化があっても、搭載物及びロータマグネットのケースのいずれか一方、或いは両方の重心が移動することがなく、したがって振動の発生がなく、高速回転の可能な軸受装置を提供して、上記従来の問題点を解決することを目的とする。」(【0009】)
b.「本発明の軸受装置は、支持部材に回転部材が動圧みぞ付き軸受を介して支持され、前記回転部材に、搭載物と、ロータマグネットが取付けられたケースとが取付けられていて、その搭載物とケースとの少なくとも一方が、回転部材の外径面に圧入又は焼きばめされている。」(【0010】【課題を解決するための手段】
c.「前記回転部材の外径面と搭載物との間のすきまと、前記回転部材の外径面とケースとの間のすきまとの少なくとも一方に、接着剤を充填してもよい。また、回転部材のフランジ部と搭載物のフランジ部への取付部とケースとのうちの少なくとも二つは、線膨張係数がほぼ等しいものとしてもよい。本発明の軸受装置は、支持部材に回転部材が動圧みぞ付き軸受を介して支持され、前記回転部材に搭載物が取付けられていて、その搭載物が回転部材の外径面に圧入又は焼きばめされている。」(【0011】)
d.「回転部材に取付けられた搭載物とロータマグネットのケースとの少なくとも一方が、回転部材の外径面に圧入又は焼きばめされているから、その嵌めあい面にすきまがない。また、回転部材の外径面と搭載物との間のすきまと、回転部材の外径面とロータマグネットのケースとの間のすきまとの少なくとも一方に接着剤を充填して接着するから、その嵌めあい面のすきまはなくなる。」(【0013】【作用】)
e.「したがって、回転部材が高速回転して発熱しても、搭載物とロータマグネットのケースとのいずれか一方又は両方の重心が回転部材の回転中心に対して移動して、その結果、釣り合いが崩れるというおそれは少ない。また、回転部材のフランジ部,搭載物,ロータマグネットのケースのうちの少なくとも二つの線膨張係数をほぼ等しくした場合は、回転部材が高速回転して発熱しても、その発熱による温度上昇に伴って発生する軸の回転中心に対する搭載物等の重心移動が緩和される。したがって、回転中の釣り合いが崩れるというおそれは少ない。」(【0014】)
f.「(図1は第1の実施例の縦断面図である。・・・)上記ハウジング10の円筒状孔11には、回転部材である軸部材20が配設されている。この軸部材20は炭素繊維入りのアルミ合金製である。」(【0017】)
g.「・・軸部材20の上端部にはフランジ部25が設けてある。そして、軸部材20の外径面に、搭載物としてアルミ合金製の多面鏡50が嵌合により取付けられている。その多面鏡50は、軸部材20と共に駆動モータ60で回転駆動される。この駆動モータ60のロータマグネット61は、鉄合金製のケース63に取付けられている。・・」(【0019】)
h.「また、ロータマグネット61は、鉄合金製のヨーク62を介してアルミ合金製ケース63に取付けられており、ヨーク62はケース63に焼きばめまたは圧入されている。この実施例の場合、最良の効果を得るべく、軸部材20のフランジ部25,多面鏡50,ロータマグネット61のケース63と、嵌合部材の全てを同一材料で構成し、線膨張係数を等しくして、温度変化による嵌合部材同士の回転中の釣り合いの崩れを極力少なくしている。しかし、それらの嵌合部材のうちの少なくとも二つの部材の線膨張係数を等しくすれば、一定の効果を得ることができる。なお、軸部26を合成樹脂として軸部材20を軽量にすることができる。(【0028】)
i.「図3に第3の実施例示す。この実施例は、回転部材20が軸体20aとスリーブ20bとを備えている。軸体20aはステンレス鋼製であり、これにアルミ合金製のスリーブ20bが焼きばめ又は圧入されている。軸体20aは、支持部材であるハウジング10の下側部材10bの中心に設けられている円筒状孔11内に遊嵌されている。円筒状孔11の下部は一方のスラスト軸受面13を有するスラスト板66で塞がれており、その一方のスラスト軸受面13が軸体20aの下面の他方のスラスト軸受面23と対向して動圧みぞ付きスラスト軸受Sを構成している。」(【0029】)
j.「多面鏡50は、スリーブ20bと同一の線膨張係数とするべくアルミ合金製とされて、スリーブ20bの上部にすきまばめで嵌合され、スリーブに一体的に形成されているフランジ部25に支持されている。そして、同じくアルミ合金製のバランスリング67で押さえて、バランスリング67と多面鏡50とが前記フランジ部25にボルト止めされている。」(【0030】)
k.「ロータマグネット61は、スリーブ20bの下部に、好ましくは焼きばめで、あるいは冷しばめ,圧入または接着で固定されている。そのロータマグネット61に対向するステータコイル64は、ハウジングの側面部材10cの内周面に取付けられている。この実施例の場合、回転部材20を構成する軸体20aとスリーブ20bとは線膨張係数が異なっているが、スリーブ20bを軸体20aに焼きばめ又は圧入することで、軸体20aの温度変化によるスリーブ20bの重心移動を防止している。また、スリーブ20bと多面鏡50とバランスリング67とは、同一線膨張係数として、温度変化による重心移動を減少せしめている。もっとも、多面鏡50を回転部材のスリーブ20bの外径面に圧入または焼きばめしても良く、または、スリーブ20bの外径面と多面鏡50との間のすきまに接着剤を充填してもよい。」(【0031】)
との記載がある。

以上の引用例3の記載によれば、駆動モータで高速回転される回転部材に多面鏡等を搭載した光偏向装置の軸受装置において、温度変化があっても、搭載物及びロータマグネットのケースのいずれか一方、或いは両方の重心が移動することがなく、したがって、振動の発生がなく、高速回転の可能な軸受装置を提供して、従来の問題点を解決することを目的とする(【0009】参照。)ものであって、その軸受装置は、その課題を解決する手段として、支持部材に回転部材が動圧みぞ付き軸受を介して支持され、前記回転部材に、搭載物と、ロータマグネットが取付けられたケースとが取付けられていて、その搭載物とケースとの少なくとも一方が、回転部材の外径面に圧入又は焼きばめされている という構成を採るものである。
そして、記載i、j(【0029】、【0030】)に、例えば図3に示す第3の実施例として、軸体20aはステンレス鋼製であり、これにアルミ合金製のスリーブ20bが焼きばめ又は圧入され、このスリーブ20bに形成した段部に載置した同じくアルミ合金製の多面鏡50を、同じくアルミ合金製のバランスリング67で押さえることが記載されている。また、記載e、h(【0014】、【0028】)によれば、基本的に、回転体を構成するできる限り多く若しくは全ての部材を同一材料で構成し、線膨張係数を等しくすれば、温度変化による部材同士の回転中の釣り合いの崩れを極力少なくできることが記載されているといえる。

・周知事項A(技術常識):
4.新保正樹編、「エポキシ樹脂ハンドブック」、初版第1刷、日刊工業新聞社、昭和62年12月25日、P.299-325(申立人井本誠二提出の甲第7号証)
5.越智光一、外2名、“硬化エポキシ樹脂の性質(その2)”、日本接着協会誌、日本接着協会、Vol. 10、No.6、1974、P.266-272(申立人井本誠二提出の甲第8号証)

同じく当審で通知した取消理由に引用した、本件出願前に頒布された上記刊行物4(図V.1)及び刊行物5(Fig.1)には、接着剤に用いるエポキシ樹脂硬化物の動力学的性質として、その測定した温度と引張弾性率Eとの関係が示されている。この関係によれば、例えばオリゴマー度(くりかえし数)の異なる種々の前記硬化物について、ほぼ90℃付近を境に性質が大きく変化し、その引張弾性率Eは温度90℃以上で急激に低下する一方、90℃以下では10の10乗dyne/平方cm以上のほぼ一定値を採ることが明らかである。{審決注;10の10乗dyne/平方cm=1000MPa}

・周知事項B(技術常識):
6.特開平7- 27131号公報(申立人井本誠二提出の甲第2号証)
本件出願前に頒布された上記刊行物6には、図面と共に、
・「近年、レーザプリンタ、デジタル複写機、デジタルファクシミリ等の記録装置は、高速・高密度化に伴って、レーザビームを走査し光書込みするポリゴンミラーが搭載されたポリゴンスキャナの高速回転化および高回転精度化の要求が高くなっている。そのため、従来の玉軸受に代り、20,000rpm以上の超高速回転するポリゴンスキャナには動圧空気を発生させることにより非接触支持する動圧空気軸受装置が採用されている。」(【0002】【従来の技術】)
との記載がある。
7.特開平3-161710号公報(申立人皆川美芳提出の甲第3号証)
同じく本件出願前に頒布された上記刊行物7には、図面と共に、
・「ところで、空気軸受型のポリゴンスキャナでは、モータの回転体は、2万〜3万rpmの高速回転をしている。」(2頁上段右欄8-10行)
との記載がある。
これら刊行物6、7の記載によれば、動圧流体軸受型のポリゴンスキャナ(モータ)が20000rpm以上の高速で回転することが本件出願前に当業者に周知の事項であったものと認められる。

イ.対比・判断
本件発明1(前者)と引用例1に記載された発明(以下、「引用発明1」という。後者)とを対比すると、後者の「動圧空気ラジアル軸受65」、「中空回転軸64」、「鉄材または磁性材のステンレス鋼で形成されたロータヨーク81」、「プラスチックマグネットで形成されたロータマグネット82」、及び「ミラー押え74」が、それぞれその順に、前者の「動圧流体軸受」、「回転軸」、「鉄系ヨーク」、「プラスチック磁石からなる界磁マグネット」、及び「係止部材」に相当し、また、引用発明1のポリゴンスキャナに使用されるブラシレスモータ(面対向型モータ)が20000rpm以上の高速で回転することは上記刊行物6、7の記載からも明らかである。そして、前者も後者も、共に回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々少なくとも固定する点で共通するといえる。
したがって、両者は、以下の一致点及び相違点を有することとなる。
(一致点)
「動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により20000rpm以上で回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々少なくとも固定し、前記回転軸に形成した段部に載置したポリゴンミラーを、係止部材により係止してなることを特徴とするブラシレスモータの回転体装置。」
(相違点1)
本件発明1は、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々固定する接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率で構成するのに対し、引用発明1は、アルミ合金製の回転軸(中空回転軸84)と鉄系ヨーク(ロータヨーク81)とを少なくとも(何らかの手段で)固定し、また前記鉄系ヨークの嵌合部86が、プラスチック磁石からなる界磁マグネット(ロータマグネット82)の外周面に嵌合して密着するものであって、前記本件発明1のような(接着剤を用いる)構成を備えるか否か不明である点。
(相違点2)
本件発明1は、ポリゴンミラー及びその係止部材の材質(材料)が、共にアルミニウムあるいはアルミニウム合金製であるに対し、引用発明1は、ポリゴンミラー及びその係止部材(ミラー押え)の材質は不明である点。

そこで、上記各相違点につき以下に検討する。
(相違点1について):
上記引用例2には、前記のとおり「気体動圧軸受部によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により高速回転する装置において、少なくとも回転体を構成する回転軸10と焼きバメされたフランジ11を接着剤により固定し、このフランジ11にはロータヨーク12を接着剤により固定し、またこのロータヨーク12の下面には、ロータマグネット13を接着剤により固定した」発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。
そして、この引用発明2は回転軸10とは別体のフランジ11に鉄系ヨーク(ロータヨーク12)を(接着剤により)固定する点で回転軸(中空回転軸64)に直接鉄系ヨーク(ロータヨーク84)を固定する引用発明1とは異なるものの、引用発明2の前記フランジ11が引用発明1の前記回転軸の鉄系ヨークが固定される部分(段部)に対応すべきことは当業者が容易に理解できるところであって、引用発明1に上記引用発明2を適用することにより、前記引用発明1のアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークとを接着剤により固定し、また、その鉄系ヨークの嵌合部86が界磁マグネット(ロータマグネット82)の外周面に嵌合して密着しているとしても、当該鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる前記界磁マグネットとを接着剤により固定することを着想すること自体は、その適用を妨げる特段の事情も見出せない以上、当業者が容易になし得るところと認められる。
そうすると、前記の適用に当たり、熱膨張差に起因するバランスの変化をできる限り小さくするために、前記引用発明1のアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また、鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々固定する接着剤として、モータの通常の運転条件下(常用温度)において熱応力による歪みの少ない、即ちヤング率の大きいものを選択すべきことは当業者が容易に理解できるところであって、しかも、通常ポリゴンスキャナ(モータ)が常用温度90℃程度で(20000rpm以上で)高速回転することは当業者に周知の事実であると認められ、また、例えば上記刊行物4、5に示したように、接着剤としてのエポキシ樹脂硬化物の動力学的性質が90℃を境に大きく変化し、90℃以下でヤング率(引張弾性率)が10の10乗dyne/平方cm(1000MPa)以上の値を有することも当業者に周知の技術常識であることを考慮すると、接着剤に対する本件発明1の「90℃で400MPa以上のヤング率で構成し」との限定はそのための1つの望ましい目安に設定したにすぎず、結局、本件発明1の前記相違点1は、上記引用発明1に引用発明2を適用することにより当業者が容易に想到し得た事項というべきである。
(相違点2について)
前記A.ア.3.に示したように、温度変化による釣り合いの崩れ(重心移動)を極力少なくするために、ステンレス鋼製の軸体20aに焼きばめ又は圧入されたアルミ合金製のスリーブ20bに形成した段部に載置したアルミ合金製のポリゴンミラー(多面鏡)を、同じくアルミ合金製の係止部材(バランスリング67)により係止した点は上記引用例3に記載されている。
尤も、この引用例3はポリゴンミラーを載置した段部を前記のように軸体20aとは別体のスリーブ20bに形成した点で引用発明1(引用例1)や本件発明1の前記段部を回転軸自体に形成したものとは異なるものの、引用例3のスリーブ20bも引用発明1の回転軸64も共にアルミ合金製でかつ回転体を構成する部材であって、引用例3のスリーブ20bに形成した段部が引用発明1の中空回転軸64に形成した段部に対応すべきことは当業者が容易に理解できるところであるから、引用例3のポリゴンミラーと係止部材及びスリーブ20bの材質と同じく引用発明1のポリゴンミラー73とミラー押え74の材質を共に中空回転軸64と同じアルミ合金製とすること、即ち、本件発明1の前記相違点2の構成とすることは、上記引用例3の記載に基づく設計的事項として当業者が適宜容易に想到し得た程度のものである。

よって、本件発明1は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

B.請求項2に係る発明(本件発明2)に対して
ア.引用刊行物
2.上記刊行物2(特開平6-311698号公報)
上記刊行物2(引用例2)には、前記A.ア.2.に示した事項とともに、それに加えて、
a.「以下にロータ組立について説明する。円筒状の軸受ブッシュ2の内部には、例えばステンレスはバネの焼き入れ品により形成された回転軸10が、軸受ブッシュ2の内周面と数μmの軸受隙間(図2中、X1,Y1及び図3中X2,Y2)を存するように、回転自在に嵌合支持されている。」(【0021】)
b.「回転軸10の他端側(図中上側)には、焼きバメされたフランジ11が接着固定されており、このフランジ11には円盤状のロータヨーク12が接着により固定されている。このようにロータヨーク12をフランジ11に固定して、回転軸10と機械的な一体構造とすることにより、ロータヨーク12を回転軸10と一体的に回転するように構成している。このロータヨーク12の下面には、複数極に等間隔着磁されたリング状のロータマグネット13が接着固定されており、このロータマグネット13は、上記プリント配線基板4上に接続固定されている複数個のステータコイル5と、若干の空隙を介して両者の間に所定の磁気ギャップを形成するように対向配置している。この磁気ギャップは、フランジ11の位置を変動させることにより調整可能である。」(【0024】)
c.「フランジ11の上側には、レーザビームなどを反射するためのポリゴンミラー18がマウントされており、このポリゴンミラー18は下側をフランジ11により規制され、上側は板バネ19により規制されることにより固定されている。板バネ19は、回転軸10に形成された溝(図示しない)に嵌め込まれたEストップリング20により、上側を規制されている。」(【0026】)
との記載がある。

以上の、特に段落【0024】の「このロータヨーク12の下面には、複数極に等間隔着磁されたリング状のロータマグネット13が接着固定されており」との記載は、図1、4〜6をも参酌すると、回転軸10の軸方向に対向する面で、ロータマグネット13とロータヨーク12とを接着固定することを意味するものであり、また、そのロータマグネット13の外径面は露出開放したものであることは明らかである。したがって、上記引用例2には、引用発明2に加え、以下の発明も記載されているものと認められる。
「動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、(ステンレス製の)回転軸10の軸方向に対向する面で、界磁マグネット(ロータマグネット13)と回転部材(ロータヨーク12)とを接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、、前記回転軸に固定されたフランジ11に載置したポリゴンミラー18を、係止部材(板バネ19)により係止したことを特徴とするブラシレスモータの回転体装置。」(以下、「引用発明2a」という。)

8.実願平4-65589号(実開平6-31375号)のCD-ROM(申立人皆川美芳提出の甲第4号証)
同じく当審で通知した取消理由に引用した、本件出願前に頒布された上記刊行物8(以下、「引用例4」という。)には、図面と共に、
a.「なお、ブラシレスモータの磁石として大きな磁力が得られる希土類磁石を使用することも考えられるが、希土類磁石ではコストがかかり、しかも機械的強度はフェライト磁石よりも小さいため、やはり高い強度が要求される回転駆動系の動力源として利用することができない。ここで、このような不具合を解決し得る磁石としてマンガンアルミマグネット(Mn,Al,Cを主原料とする非コバルト系の磁石)がある。即ち、マンガンアルミマグネットは、フェライト磁石とほぼ同等な磁気的強度(マンガンアルミマグネット,フェライト磁石とも、径方向異方性の残留磁束密度は約3700ガウス)であるが、その引張強度が、図5にも示すように、フェライト磁石の1〜3kgf/mm2 、希土類磁石の0.5〜1kgf/mm2 に対して、30kgf/mm2 もあるという特徴を有する。」(【0005】)
b.「このため、磁石自身の割れや欠けの危険性がほとんどないから、ブラシレスモータに適用した場合には磁石の外周部を図4に示したようなカバー6で覆う必要がなくなり、ロータ2とステータ3との間の空隙を小さくすることができ、その出力性能の向上が図られる。」(【0006】)
との記載がある。

・周知技術A:
1.上記刊行物1(特開平5-316707号公報)
上記刊行物1(引用例1)には、前記A.ア.1.に示したとおりの事項が記載されている。
6.上記刊行物6(特開平7- 27131号公報)
上記刊行物6には、前記A.ア.6.に示した事項に加え、
a.「回転軸21の上部には、ミラー受けフランジ22が形成され、ミラー押え23によりポリゴンミラー25が取り付けられている。ポリゴンミラー25は回転軸21の上部外周面21bに嵌合しており、回転軸21の上部に螺合するボルト24がミラー押え23を介してこのポリゴンミラー25をフランジ22に押し付けている。」(【0027】)
b.「また、回転軸21は、図2(a)に示すように、回転体20が回転したときの耐振性の向上、加工・組立性の改善、及び回転体のバランスの安定化を図るため軽量かつ非磁性のアルミニウムあるいはアルミニウム合金により母材を構成している。」(【0030】)
との記載がある。

以上の刊行物1、6の記載によれば、動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、少なくとも「アルミニウムあるいはアルミ合金製の回転軸を備え、前記回転軸に形成した段部に載置したポリゴンミラーを、係止部材により係止する」技術が本件出願前に周知であったものと認められる。

・周知技術B:
6.上記刊行物6(特開平7- 27131号公報)
上記刊行物6には、前記事項に加え更に、
a.「本発明は、高速回転機器に適用される動圧空気軸受装置およびその動圧発生用溝の作製方法に関し、例えば、複写機に搭載され高速回転するポリゴンスキャナ等に適用される動圧空気軸受装置およびその動圧発生用溝の作製方法に関する。」(【0001】【産業上の利用分野】)
b.「36は、ポリゴンミラー25を駆動する面対向型のモータである。このモータ36は、回転軸21に固定されたロータマグネット組立体37と、その下面に対向するステータコイル部38と、ホール素子(図示していない)とを有しており、ロータマグネット組立体37はロータマグネット37aをヨークを兼ねたロータフランジ37bによって回転軸21に一体的に実装したモータ構成部となっている。このモータ組立体37はミラー押え23およびポリゴンミラー25とともに回転軸21に取り付けられることによって回転体20を構成している。また、ロータマグネット37aには不釣合修正用のバランス修正溝37cが形成されており、回転体20が回転したときミラー押え23に形成されたバランス修正溝23aとともに不釣合いによる振動を小さくして数mg以下の不釣合い量にするようになっている。」(【0029】)
c.「また、回転軸21は、図2(a)に示すように、回転体20が回転したときの耐振性の向上、加工・組立性の改善、および回転体のバランスの安定化を図るため軽量かつ非磁性のアルミニウムあるいはアルミニウム合金により母材43を構成している。」(【0030】)
との記載がある。
7.上記刊行物7(特開平3-161710号公報)
上記刊行物7には、前記A.ア.7.に示した事項に加え、
a.「本発明は記録装置などに用いられて光ビームの走査を行うためのポリゴンスキャナに係り、特に、空気動圧ラジアル軸受とモータの回転軸が一体化された空気軸受型ポリゴンスキャナに関するものである。」(1頁下段右欄4-8行。〔産業上の利用分野〕)
b.「ところで、空気軸受型ポリゴンスキャナでは、モータの回転体は、2万〜3万rpmの高速回転をしている。このため、回転振動を小さくするため、回転体のバランス修正は必ず実施する必要がある。」(2頁上段右欄8-12行。)
c.「バランス修正手段は、マグネットホルダ7bにバランス修正溝7hを設けると共に、ロータマグネット9にバランス修正溝9hを設けることによって、2面バランス修正を行っている。・・・ さらに、ロータマグネット9は、機械的強度が大きく、かつ切削や研削が容易な材料、例えば、マンガンアルミマグネットが適している。」(3頁下段左欄7行-同右欄2行。)
との記載がある。

以上の刊行物6、7の記載によれば、動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、少なくとも「界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設ける」技術が本件出願前に周知であったものと認められる。

イ.対比・判断
本件発明2と上記引用発明2aとを対比すると、両者は以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、回転軸の軸方向に対向する面で、界磁マグネットと回転部材とを接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、回転部材に載置したポリゴンミラーを、係止部材により係止したことを特徴とするブラシレスモータの回転体装置。」
(相違点1)
本件発明2は、アルミニウムあるいはアルミ合金製の回転軸と、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止した構成を備えるのに対し、引用発明2aは、ステンレス鋼製の回転軸10と、前記回転軸に焼きバメされたフランジ11に載置したポリゴンミラー8を、係止部材(板バネ19)により係止した構成を備え、前記フランジ並びにポリゴンミラーとその係止部材の材質はいずれも不明である点。
(相違点2)
本件発明2は、アルミニュウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと、前記界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設ける構成を備えるのに対し、引用発明2aは、単に界磁マグネット(ロータマグネット13)を備えるだけで、その界磁マグネットの材質は不明であり、また、当該界磁マグネットに切削加工によるバランス修正用の円周溝を設ける構成は備えない点。

そこで、上記各相違点につき以下に検討する。
(相違点1について)
ポリゴンミラー(多面鏡50)を載置するスリーブ20b、及び当該ポリゴンミラーとその係止部材(バランスリング67)の材質を全てアルミニウムあるいはアルミニウム合金製とした点が上記引用例3に第3実施例として記載されている。この第3実施例は、ステンレス鋼製の軸体20aとは別体のスリーブ20bに形成した段部にポリゴンミラーを載置した点で、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の回転軸に形成した段部にポリゴンミラーを載置した本件発明2とは異なるものの、動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、少なくともアルミニウムあるいはアルミ合金製の回転軸を備え、前記回転軸に形成した段部に載置したポリゴンミラーを、係止部材により係止すること自体は本件出願前周知の技術(周知技術A)であると認められ、また、上記引用例3には前記のとおり基本的に回転体を構成するできる限り多くの或いは全ての部材を同一材料(同一線膨張係数)で構成することにより、温度変化による釣り合いの崩れを極力少なくできることも記載されているから、引用発明2aにおいて、その回転軸10とは別体のフランジ11を前記回転軸10に(一体に)形成した段部の構成に置き替え、かつ、その回転軸10並びにポリゴンミラー8及び板バネ19(係止部材)の材料を全てアルミニウムまたはアルミニウム合金製とすること、即ち、本件発明2の前記相違点1の構成とすることは、上記引用例3の記載及び周知技術に基づく設計的事項として当業者であれば適宜容易に想到し得た程度のものというべきである。
(相違点2について)
前記のとおり、上記引用例4にはブラシレスモータの磁石として機械的強度(引張強度)の大きいマンガンアルミマグネットを用いることが記載され、また、動圧流体軸受によって支持されるブラシレスモータの回転体装置において、界磁マグネットに切削加工によるバランス修正用の円周溝を設けることも本件出願前周知の技術(周知技術B)であると認められるから、本件発明2の前記相違点2も、上記引用例4の記載及び周知技術に基づいて当業者が適宜容易に想到し得た事項にすぎない。

よって、本件発明2は、上記引用例2ないし4に記載された発明と周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1ないし2に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1ないし2に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ブラシレスモータの回転体装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により20000rpm以上で回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々固定する接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率で構成し、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止したことを特徴とするブラシレスモータの回転体装置。
【請求項2】
動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、アルミニウムあるいはアルミ合金製の回転軸の軸方向に対向する面で、アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材とを接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、かつ前記界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設け、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止したことを特徴とするブラシレスモータの回転体装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ブラシレスモータの回転体装置に係り、詳しくは、高速ブラシレスモータに適用することができる他、ポリゴンスキャナに応用することができ、特に、実用温度で高速回転しているモータのバランス変化を抑えることができ、モータ振動による本体騒音を低減することができるブラシレスモータの回転体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来は、回転体多面鏡走査装置については、例えば特公平4-25522号公報で報告されたものがある。
【0003】
この従来の回転体多面鏡走査装置では、回転多面鏡体の一方の面に2P(Pは1以上の整数)個の磁極を有するマグネットでアキシャルギャップ型のブラシレスモータを構成し、磁極とコイルの開角が等しく、かつホール素子を備えている。支持する軸受は、動圧空気型であり、高速回転を可能にするポリゴンスキャナである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の回転体多面鏡走査装置では、回転軸に磁性体(鉄系)を用いているため、アルミニウム製のポリゴンミラーとの熱膨張の差によりポリゴンミラーが移動してしまい、実用温度で高速回転しているモータのバランス変化を発生させてしまい、モータ振動による本体騒音が増加するという問題があった。
【0005】
さて、従来、高速/高画質のデジタル複写機には、20,000rpmを超えるポリゴンスキャナが使われている。この種のモータは、高速回転に伴う発熱と複写機内部の温度上昇によりスキャナは、90℃以上の温度に達する。このような環境下では、当初修正したバランスがモータ部品の熱膨張率の違いにより変化してしまう。このため、バランスの変化によりモータの振動は大きくなり、複写機本体として騒音が大きくなるという問題が発生していた。
【0006】
そこで、本発明は、実用温度で高速回転しているモータのバランス変化を抑えることができ、モータ振動による本体騒音を低減することができるブラシレスモータの回転体装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により20000rpm以上で回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々固定する接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率で構成し、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止してなることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、アルミニウムあるいはアルミ合金製の回転軸の軸方向に対向する面で、アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材とを接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、かつ前記界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設け、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止したことを特徴とするものである。
【0009】
【作用】
請求項1記載の発明では、動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により20000rpm以上で回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々固定する接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率を有するように構成し、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止する。
【0010】
このため、回転体を構成する回転軸、ヨーク及びマグネットの各部品間で熱膨張の違いがあっても、バランス変化を生じ難くすることができる。また、回転軸、ポリゴンミラー、および係止部材であるミラー押さえは、アルミニウムあるいはアルミニウム合金で構成しているため、熱膨張差によるバランス変化を発生しないようにすることができる。従って、実用温度で20000rpm以上で高速回転しているモータのバランス変化を抑えて、モータ振動による本体騒音を低減することができる。
【0011】
請求項2記載の発明では、動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、アルミニウムあるいはアルミ合金製の回転軸の軸方向に対向する面で、アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材とを接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、かつ前記界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設け、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止する。
【0012】
このため、熱応力を発生させない構造にすることができるので、バランス変化を抑えることができる。また、界磁マグネットをアルミニウム-マンガン系の磁石から構成することにより、切削を行うことができるため、バランス修正用の溝も直接加工で設けることができるとともにバランス変化の抑制と遠心膨張による破壊防止を達成することができる。そして、マグネット自身にバランス修正用の溝を設けたため、特別な部材を設けることがないので、低コスト化を達成することができる。また、回転軸、ポリゴンミラー、および係止部材であるミラー押さえは、アルミニウムあるいはアルミニウム合金で構成しているため、熱膨張差によるバランス変化を発生しないようにすることができる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明に係る一実施例の動圧空気軸受型ポリゴンスキャナの構成を示す図である。
【0015】
本実施例では、中空回転軸1に形成した段部1aの上面にポリゴンミラー2を載置し、ミラー押さえ3によりポリゴンミラー2を上方より押さえて係止している。
【0016】
このミラー押さえ3は、磁石4を保持しており、マグネットホルダとしての機能も有している。また、ミラー押さえ3には、上下振動減衰用連通穴3aが形成されており、スラスト軸受にダンピング特性を持たせるように構成している。更に、ミラー押さえ3には、回転体不釣合修正用のバランス修正溝3bが形成されている。
【0017】
ロータマグネット組立体5は、ヨークを兼用しているロータフランジ6とロータマグネット7で構成されており、このマグネット7には、回転体不釣合修正用のバランス修正溝7aが形成されている。
【0018】
従って、ポリゴンミラー2、ミラー押さえ3,ロータマグネット組立体5等が取り付けられた中空回転軸1が動圧空気軸受型ポリゴンスキャナの回転体8を構成している。回転体8は、不釣合による回転時の振動を小さくするため、上下のバランス修正溝3b,7aで数mg以下の不釣合量にバランス修正されている。
【0019】
中空回転軸1が嵌合されている固定軸9は、上端部に磁気軸受磁石10が固定され、下端部には、ハウジング11と圧入固着あるいは焼きばめ等の方法で堅固に固定されている。更に、固定軸9の表面には、動圧空気軸受を構成するためのヘリングボーン溝12a,12bを上下2対有している。
【0020】
回転体8が回転を開始すると、中空回転軸1と固定軸9の隙間の圧力が高まり動圧軸受を形成して、非接触でラジアル方向に回転体を支持する。
【0021】
一方、アキシャル軸受は、上ケース13、回転体8の上端部、及び固定軸9の上端部に固定された磁石4,10,14と上下振動減衰用連通穴3aで構成されている。磁石4,10,14の磁極は、互いに向かいあう面を同極とし、回転体8の磁石4は、上下から反発させられ浮上し非接触で支持している。
【0022】
モータ部の方式は、アキシャルギャップ(面対向)型といわれる。モータ部は、ロータマグネット組立体5、コイル部15、コイル部15が搭載されたプリント基板16、ホール素子17等で構成され、回路基板18の制御回路により励磁切換えを行い、ポリゴンスキャナの回転体8を回転するようになっている。
【0023】
次に、図2は図1に示す回転体の接着方法を示す図である。回転軸1は、ポリゴンミラー2、ミラー押さえ3と同様にアルミニウムあるいはアルミニウム合金で構成しているため、熱膨張差によるバランス変化を発生しないようにすることができる。
【0024】
しかしながら、この種のモータは、発熱や複写機内部の周囲温度により90℃以上の温度にまで達するので、熱膨張の違うヨーク6、マグネット7のバランス変化による振動が問題となる。回転軸1がアルミニウム系でその熱膨張率が2.3×10-5となり、ヨーク6が鉄系でその熱膨張率が1.1×10-5となり、マグネット7がプラスチック系でその熱膨張率が4.5×10-5となっている。ヨーク6は、その内径部6aと回転軸1の外径部1bが嵌合するように接着されている。マグネット7は、ヨーク6の内径部6bと外径部7bで嵌合して接着されている。
【0025】
常温時に組み立てられた回転軸1、ヨーク6及びマグネット7の各部品は、それぞれの嵌合部(外径部1b-内径部6a,内径部6b-外径部7b)に数十μmの隙間を持っている。この数十μmの隙間は、組立やコストを考慮すると、最も都合の良い隙間である。この状態では、接着剤が部品を固定しているが、温度上昇とともに熱応力が発生して、ヤング率の低い接着剤では固定し切れなくなり、部品の微小移動とともに、バランス変化を起こしてしまう。
【0026】
本実施例は、回転体8に使用する接着剤を回転軸1、ヨーク6及びマグネット7の各部品で熱膨張の違いがあってもバランス変化が起きないように接着剤のヤング率を実使用温度の90℃で400MPa以上になるように設定して構成している。その結果、熱膨張差による応力が発生しても、安定した固定を維持することができる。
【0027】
このように、本発明の一実施例では、動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により回転する装置において、回転体8に使用される接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率を有するように構成している。
【0028】
このため、回転体8を構成する回転軸1、ヨーク6及びマグネット7の各部品間で熱膨張の違いがあっても、バランス変化を生じ難くすることができる。従って、実用温度で高速回転しているモータのバランス変化を抑えて、モータ振動による本体騒音を低減することができる。
【0029】
本発明の一実施例では、接着剤を回転軸1と熱膨張の異なるマグネット7とヨーク6の固定に使用するように構成している。
【0030】
このため、マグネット7とヨーク6を安定した状態で固定することができるので、実用温度で高速回転しているモータのバランス変化を効率良く抑えることができるため、モータ振動による本体騒音を効率良く低減することができる。
【0031】
次に、図3は温度による接着剤のヤング率の変化を示す図である。
【0032】
アクリル系とエポキシ系の接着剤についてのデータであり、この値とバランス変化の値には相関がある。25℃では、全ての接着剤では、バランス変化はないが、温度上昇とともにバランス変化を生じてくる接着剤がある。アクリル系Cの接着剤では、70℃でバランス変化が発生し、アクリル系Aの接着剤では、90℃でバランス変化が発生、エポキシ系Aの接着剤では、95℃でバランス変化が発生する。要するに、実用温度の90℃でバランス変化が発生しなければ問題ないので、その温度でヤング率がバランス変化の発生する値400MPa以上であれば良いのである。更に、可撓性を有する接着剤にすると、モータの落下による衝撃等による接着剥がれを防止することができる。
【0033】
また、接着剤の熱膨張率をプラスチックマグネット7と略一致させることにより、回転軸1、ヨーク6及びマグネット7の各部品間の熱応力の低下を図ることができるため、バランス変化を更に押さえることができる。具体的には、熱膨張率が4.0×10-5の一液性エポキシ接着剤と熱膨張率が4.5×10-5のフェライトプラスチック磁石が適している。
【0034】
このように、本発明の一実施例では、マグネット7と接着剤の熱膨張を略一致させてなるように構成している。
【0035】
このため、回転体8を構成する回転軸1、ヨーク6及びマグネット7の各部品間に発生する熱応力の低下を図ることができるので、バランス変化を更に抑えることができる。
【0036】
一方、回転軸1、ヨーク6及びマグネット7の各部品間の径方向に接着剤が存在すると、その熱膨張により、ヨーク6及びマグネット7が変形する等してバランス変化が発生する。これを防ぐために、図4に示すように、回転軸1と嵌合するヨーク6の内径嵌合部に面取り6cを施し、食み出し接着剤の溜り部を設けて、応力を緩和させることもバランス変化低減には有効である。
【0037】
このように、本発明の一実施例では、回転軸1と嵌合するヨーク6の内径部に面取り加工を施してなるように構成している。
【0038】
このため、食み出し接着剤を面取り部に溜めて、応力の緩和によってバランス変化を抑えることができる。
【0039】
次に、図5はマグネット7とヨーク6の嵌合部21を削除して熱応力を発生させない構造を示す図である。この場合、マグネット7の外径部に遠心膨張による破壊を防止するための機能がないので、マグネット7には、遠心耐力を有する金属系マグネットが適している。マグネット7を、例えばアルミニウム-マンガン系磁石で構成すると、その熱膨張1.8×10-5は、アルミニウムと鉄の中間程度で接着剤にかかる熱応力の負荷をないようにすることができる。更に、マグネット7をアルミニウム-マンガン磁石で構成すると、切削を行うことができるため、バランス修正用の溝も直接加工で設けることができる。
【0040】
このように、本発明の一実施例では、動圧流体軸受によって支持され、アキシャルギャップ型のブラシレスモータにより回転する装置において、マグネット7とヨーク6を軸方向に対向する面でのみ接着固定し、マグネット外径部を開放してなるように構成している。
【0041】
このため、熱応力を発生させない構造にすることができるので、バランス変化を抑えることができる。
【0042】
本発明の一実施例では、マグネット7をアルミニウム-マンガン系の磁石からなるように構成している。
【0043】
このため、マグネット7をアルミニウム-マンガン系の磁石から構成することにより、バランス変化の抑制と遠心膨張による破壊防止を達成することができる。そして、マグネット7自身にバランス修正用の溝7aを設けたため、特別な部材を設けることがないので、低コスト化を達成することができる。
【0044】
なお、図5の実施例では、面対向型のロータ形状を示しているが、要は外径部を開放できるので、モータ方式にかかわらずインナーロータ、アウタロータ方式でも効果は高い。
【0045】
次に、図6は本発明と従来例(比較例)におけるバランス修正用接着剤31の塗布状況を示す図であり、図6(a)は従来例、図6(b),(c)は本発明の実施例である。図6(a)に示すように、従来、接着剤31は、同心円周上の溝7aの底部にヨーク6とマグネット7の両部品にまたがって塗布していた。この状態で回転による温度上昇と停止による常温戻りの熱ストレスがかかると、ヨーク6とマグネット7の熱膨張の違いによる膨張-収縮が接着剤31にストレスがかかって最終的には接着剤の脱落に至る。
【0046】
接着剤の脱落は、バランス変化はもちろん、一部が動圧軸受内に入り込み軸ロックの可能性がある。従って、図6(b),(c)に示すように、バランス修正用の接着剤31は、熱膨張の異なる2つの部品、ヨーク6とマグネット7にまたがって塗布されることがないように固定する。図6(b)では、ヨーク6側のみに接着剤31を塗布し、図6(c)では、マグネット7側のみに接着剤31を塗布している。
【0047】
このように、本発明の一実施例では、バランスを修正するための接着剤31を、ヨーク6やマグネット7の単一の部材(あるいは後述の如く、ヨーク6及びマグネット7の熱膨張の略一致している複数の部材)にのみ塗布させてなるように構成する。
【0048】
このため、バランス修正用の接着剤31の脱落によるバランス変化を抑えることができるとともに、あわせて脱落粉による軸ロックも防止することができる。
【0049】
なお、上記実施例では、熱膨張の異なったヨーク6とマグネット7の場合について説明を加えたが、ヨーク6とマグネット7の両方の熱膨張を略一致させた場合には、両部品にまたがって接着しても問題はない。略一致させる場合には、鉄系のヨーク(ステンレスの場合:1.1×10-5)と希土類系(ネオジ-鉄-ボロンの場合:1.4×10-5)あるいはフェライト焼結系(ストロンチウムの場合:1.0×10-5)のマグネットを用いることが望ましい。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、実用温度で高速回転しているモータのバランス変化を抑えることができ、モータ振動による本体騒音を低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る一実施例の動圧空気軸受型ポリゴンスキャナの構成を示す図である。
【図2】
回転体の接着方法を示す図である。
【図3】
温度による接着剤のヤング率の変化を示す図である。
【図4】
回転軸と嵌合するヨークの内径嵌合部に面取りを施した構造を示す図である。
【図5】
マグネットとヨークの嵌合部を削除して熱応力を発生させない構造を示す図である。
【図6】
本発明と従来例におけるバランス修正用接着剤の塗布状況を示す図である。
【符号の説明】
1 回転軸
1a 段部
1b,7b 外径部
2 ポリゴンミラー
3 ミラー押え
3a 上下振動減衰用連通穴
3b,7a バランス修正溝
4,10,14 磁石
5 ロータマグネット組立体
6 ヨーク
6a,6b 内径部
6c 面取り
7 マグネット
8 回転体
9 固定軸
11 ハウジング
12a,12b ヘリングボーン溝
13 上ケース
15 コイル部
16 プリント基板
17 ホール素子
18 回路基板
21 嵌合部
31 接着剤
 
訂正の要旨 訂正事項a
特許第3266448号発明の明細書中の特許請求の範囲の請求項1において、同請求項中の
「回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨーク、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットを各々固定する」を、
「回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々固定する」と訂正する。
訂正事項b
特許第3266448号発明の明細書中の特許請求の範囲の請求項1において、同請求項中の
「接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率で構成してなることを特徴とする」を、
「接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率で構成し、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止したことを特徴とする」と訂正する。
訂正事項c
特許第3266448号発明の明細書中の特許請求の範囲の請求項2において、同請求項中の
「アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材を軸方向に対向する面で接着固定し」を、
「アルミニウムあるいはアルミ合金製の回転軸の軸方向に対向する面で、アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材とを接着固定し」と訂正する。
訂正事項d
特許第3266448号発明の明細書中の特許請求の範囲の請求項2において、同請求項中の
「前記界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設けたことを特徴とする」を、
「前記界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設け、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止したことを特徴とする」と訂正する。
訂正事項e
同明細書を本件訂正請求書に添付の訂正明細書の通り、
すなわち、
a) 同明細書中の段落番号【0007】の
「 【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により20000rpm以上で回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨーク、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットを各々固定する接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率で構成してなることを特徴とするものである。」を、
「 【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により20000rpm以上で回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々固定する接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率で構成し、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止してなることを特徴とするものである。」と訂正する。(訂正明細書中の段落番号【0007】)
b) 同明細書中の段落番号【0008】の
「 請求項2記載の発明は、動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材を軸方向に対向する面で接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、かつ前記界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設けたことを特徴とするものである。」を、
「 請求項2記載の発明は、動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、アルミニウムあるいはアルミ合金製の回転軸の軸方向に対向する面で、アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材とを接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、かつ前記界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設け、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止したことを特徴とするものである。」と訂正する。(訂正明細書中の段落番号【0008】)
c) 同明細書中の段落番号【0009】の
「 【作用】
請求項1記載の発明では、動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により20000rpm以上で回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨーク、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットを各々固定する接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率を有するように構成する。」を、
「 【作用】
請求項1記載の発明では、動圧流体軸受によって支持され、一体的に構成されたモータの駆動により20000rpm以上で回転する装置において、回転体を構成するアルミ合金製の回転軸と鉄系ヨークと、また鉄系ヨークとプラスチック磁石からなる界磁マグネットとを各々固定する接着剤を90℃で400MPa以上のヤング率を有するように構成し、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止する。」と訂正する。(訂正明細書中の段落番号【0009】)
d) 同明細書中の段落番号【0010】の
「 このため、回転体を構成する回転軸、ヨーク及びマグネットの各部品間で熱膨張の違いがあっても、バランス変化を生じ難くすることができる。従って、実用温度で20000rpm以上で高速回転しているモータのバランス変化を抑えて、モータ振動による本体騒音を低減することができる。」を、
「 このため、回転体を構成する回転軸、ヨーク及びマグネットの各部品間で熱膨張の違いがあっても、バランス変化を生じ難くすることができる。また、回転軸、ポリゴンミラー、および係止部材であるミラー押さえは、アルミニウムあるいはアルミニウム合金で構成しているため、熱膨張差によるバランス変化を発生しないようにすることができる。従って、実用温度で20000rpm以上で高速回転しているモータのバランス変化を抑えて、モータ振動による本体騒音を低減することができる。」と訂正する。(訂正明細書中の段落番号【0010】)
e) 同明細書中の段落番号【0011】の
「 請求項2記載の発明では、動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材を軸方向に対向する面で接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、かつ前記マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設けるように構成する。」を、
「 請求項2記載の発明では、動圧流体軸受によって支持され、ブラシレスモータにより回転する装置において、アルミニウムあるいはアルミ合金製の回転軸の軸方向に対向する面で、アルミニウム-マンガン系の磁石からなる界磁マグネットと回転部材とを接着固定し、前記界磁マグネットの外径面を露出開放し、かつ前記界磁マグネットには切削加工によるバランス修正用の円周溝を設け、前記回転軸に形成した段部に載置したアルミニウムあるいはアルミニウム合金製のポリゴンミラーを、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製の係止部材により係止する。」と訂正する。(訂正明細書中の段落番号【0011】)
f) 同明細書中の段落番号【0012】の
「 このため、熱応力を発生させない構造にすることができるので、バランス変化を抑えることができる。また、界磁マグネットをアルミニウム-マンガン系の磁石から構成することにより、切削を行うことができるため、バランス修正用の溝も直接加工で設けることができるとともにバランス変化の抑制と遠心膨張による破壊防止を達成することができる。そして、マグネット自身にバランス修正用の溝を設けたため、特別な部材を設けることがないので、低コスト化を達成することができる。」を、
「 このため、熱応力を発生させない構造にすることができるので、バランス変化を抑えることができる。また、界磁マグネットをアルミニウム-マンガン系の磁石から構成することにより、切削を行うことができるため、バランス修正用の溝も直接加工で設けることができるとともにバランス変化の抑制と遠心膨張による破壊防止を達成することができる。そして、マグネット自身にバランス修正用の溝を設けたため、特別な部材を設けることがないので、低コスト化を達成することができる。また、回転軸、ポリゴンミラー、および係止部材であるミラー押さえは、アルミニウムあるいはアルミニウム合金で構成しているため、熱膨張差によるバランス変化を発生しないようにすることができる。」と訂正する。(訂正明細書中の段落番号【0012】)
異議決定日 2003-05-09 
出願番号 特願平7-67202
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H02K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 安池 一貴  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 牧 初
岩本 正義
登録日 2002-01-11 
登録番号 特許第3266448号(P3266448)
権利者 株式会社リコー 東北リコー株式会社
発明の名称 ブラシレスモータの回転体装置  
代理人 有我 軍一郎  
代理人 有我 軍一郎  
代理人 有我 軍一郎  
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