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審決分類 |
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 H02N 審判 全部申し立て 2項進歩性 H02N 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 H02N 審判 全部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) H02N |
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管理番号 | 1083105 |
異議申立番号 | 異議2001-72509 |
総通号数 | 46 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-08-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-09-11 |
確定日 | 2003-06-30 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3145239号「振動モータ」の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3145239号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許出願 平成 5年12月20日 特許権設定登録 平成13年 1月 5日 特許異議申立て 平成13年 9月11日 (申立人 キャノン株式会社) 取消理由通知 平成13年12月 4日 (平成13年12月14日発送) 取消理由通知 平成14年 9月27日 (平成14年10月 8日発送) 訂正請求 平成15年 4月 4日 手続補正 平成15年 5月23日 2.訂正の適否 2-1 訂正の内容 訂正事項 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 請求項2の削除に伴い請求項3-9を請求項2-8に繰り上げる。 2-2 訂正の適否 上記訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、上記訂正を認める。 3.異議申立てについての判断 3-1-1 本件発明 上記のとおり、訂正は認められるから、本件特許の発明(請求項1〜請求項8)は、平成15年5月23日付け補正書により補正された訂正明細書の請求項1〜8に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】所定の動作周波数の進行波を発生させるステータ(10)と、圧着機構(30)を介して摩擦接触下でステータ(10)に圧着されるロータ(20)とから成る振動モータにおいて、ロータ(20)と圧着機構(30)とから成る振動システムが、運転が非周期的な限界点の近くで行なわれるように、緩衝手段(60,70,80,80a)によって緩衝されることを特徴とする、振動モータ。 (以下、本件発明1という。) 【請求項2】圧着機構(30)として主に、高い緩衝作用を有する硬質プラスチックから成る皿ばねが設けられている、請求項1記載の振動モータ。 【請求項3】硬質プラスチックとして、ペーパー、炭素繊維又はガラスフィラメント織物を有するエポキシ・積層材料、フェノール・積層材料、ポリビスマレインイミド積層材料又はシリコン樹脂・積層材料が設けられている、請求項2記載の振動モータ。 【請求項4】圧着機構(100)と軸方向に配置された基板(1a)との間に、緩衝作用を有する材料から成る層(90)が設けられている、請求項1記載の振動モータ。 【請求項5】圧着機構として、緩衝作用を有する層(110)が被着されているばね(100)が設けられている、請求項1又は2記載の振動モータ。 【請求項6】圧着機構として、弾性材料及び緩衝材料から成るマクロスコビックな層から形成されたばねが設けられている、請求項1記載の振動モータ。 【請求項7】ロータ(20)及び/又は圧着機構(30)に、開口、孔、スリット又は層状組織等が設けられている、請求項1記載の振動モータ。 【請求項8】主に皿ばねから形成された圧着機構(30)に、回転対称的なロータの中心点に対して同心的に配置された円形リング上に等間隔を置いて配置された開口、孔又はスリットが設けられていて、該開口、孔又はスリットの数が、モータの運転を行なう進行波の節度の数に相応している、請求項1記載の振動モータ。 3-1-2 本件明細書 特許第3145239号の請求項1-8に係る特許に添付された明細書(以下、本件明細書という。)は、平成15年5月23日付け補正書により補正された訂正明細書のとおりのものである。 3-2 申立の理由の概要 特許異議申立人キャノン株式会社は、 (I)本件明細書及び図面は、 (1)請求項1中、「ロータ(20)と圧着機構(30)とから成る振動システムが、運転が非周期的な限界点の近くで行なわれるように」の記載は意味不明である。なお、「非周期的な限界点」については明細書の段落【0011】に記載があるが、「非周期的な限界点」が何を示しているかは何ら記載されていない。 (2)また、請求項1中の「ロータ(20)と圧着機構(30)とから成る振動システムが、運転が非周期的な限界点の近くで行なわれるように」の記載は単なる希望条件を記載したに過ぎず「運転が非周期的な限界点の近くで行なわれる」ための構成が不明である。 (3)請求項2、請求項3中、「高い緩衝作用」の記載が不明瞭である。 (4)請求項3、請求項4中、「硬質プラスチック」との記載があるが、明細書中には【0026】に「この緩衝材料110のためにラック又はプラスチックが使用される」とあるだけで、「硬質プラスチック」という記載はない。 よって、請求項3、4は発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (5)請求項8において、「ロータ(20)及び/又は圧着機構(30)に、開口、孔、スリット又は層状組織等が設けられている、請求項1記載の振動モータ」と記載されている。 しかし、明細書の段落【0029】、【0030】にあるように、これらの開口、孔等は、「周方向に亘って等間隔を置いて位置しかつその数はステータ内の所望の振動モードの節度の数に相応」していなければ「固有振動がステータの動作周波数と合致しない振動モードの発生を阻止することができる」という作用効果を有しないと理解できる。よって請求項8は記載不備である。 (6)発明の詳細な説明の段落【0011】中、「ロータ/圧着機構のシステムが非周期的な限界点の近くで運転されることによって」と記載されているが、この記載に用いられている用語は本発明の技術分野において周知でもなく、何を意味しているか全く意味不明であり、発明の詳細な説明中にこれについての説明が何もない。 (7)発明の詳細な説明の段落【0017】中、「第3図では本発明による振動モータを概略的に図示している」との記載があるが、【0025】と【0026】に実施例として記載された第5図及び第6図と、第3図との対応関係が何ら記載されておらず不明である。 との理由で、特許法第36条第4項、第5項第1号、第2号の規定に適合しておらず、本件の請求項1-9に係る発明の特許は特許法第113条第4項に該当するので取り消されるべきものであり、 (II)甲第1〜甲第5号証(下記引用刊行物1〜5)を提示して、本件の請求項1,2,5,6,7,8に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから特許法第113条第2項に該当するので取り消されるべきものである 旨主張している。 (3-2において、請求項の番号は、特許権設定登録時のものである。なお、特許権設定登録時の請求項3-9は、訂正による請求項2の削除に伴い、それぞれ請求項2-8に繰り上げられた。) 3-3 特許法第36条第4項、第5項第1号、第2号の規定に適合しているかどうかについて (1)(6)について 請求項1、段落0011の「運転が非周期的な限界点の近くで行なわれる」における「非周期的な限界点」は、「減衰振動が臨界減衰する点」を意味しており、「運転が非周期的な限界点の近くで行なわれるように」ということは「臨界減衰点の近くで運転が行われ減衰振動がほぼ臨界減衰する状態になるように」ということを意味していることは、本件特許出願時の技術常識(必要なら、例えば、特許異議意見書に添付された「物理学辞典」(編者:物理学辞典編集委員会、発行所:培風館、昭和59年9月30日初版発行)616頁の「減衰振動」の項の「(3)臨界減衰の場合」参照。)に照らせば、明りょうである。 (3)について 「高い緩衝作用」は、「高い減衰作用」を意味し、「高い緩衝作用を有する」は、「高い減衰作用を有する」を意味することは明りょうである。 (2)について 段落番号0011に「圧着機構又はロータのエレメントのために高い緩衝作用を有する材料を選択することによって、ロータ/圧着機構のシステムが非周期的な限界点の近くで運転される」とあり、段落番号0021に「緩衝手段60,70,80,80aは種々の形式で実現される。特に圧着ばね及びロータのために適当な材料を選択することによって実現される。有利な実施例では圧着ばねは緩衝作用を有する材料から制作される。」とある。これらの記載より、ロータ/圧着機構の系の減衰振動がほぼ臨界減衰になる程度に、圧着ばね及びロータのエレメントの材料を適切に選択していくことは、当業者であれば、実験・解析等の研究開発のための通常の手段を用いて、圧着ばね及びロータのエレメントのそれぞれの材料を高い減衰作用を有するものの中から適切に選択していくことによって、実施し得る程度の事項である。 (4)について 請求項3における「硬質プラスチック」は段落0026の「プラスチック」と対応するものである。 (5)について 請求項7の「ロータ(20)及び/又は圧着機構(30)に、開口、孔、スリット又は層状組織等が設けられている」は、段落0028の「選択的に、寄生振動モードを減衰するために付加的に寄生振動モードを構造的な措置によってずらすこともできる。このことは・・・他方では、孔、スリット又は層状組織によって妨げとなる振動モードを破壊することによって得られる。」という記載と対応し、 請求項8の「主に皿ばねから形成された圧着機構(30)に、回転対称的なロータの中心点に対して同心的に配置された円形リング上に等間隔を置いて配置された開口、孔又はスリットが設けられていて、該開口、孔又はスリットの数が、モータの運転を行なう進行波の節度の数に相応している」が、段落0029,0030の「従って例えばロータ内に半径方向のスリット、開口又は孔を設けることができ、このスリット等は周方向に亘って等間隔を置いて位置しかつその数はステータ内の所望の振動モードの節度の数に相応している。例えば9節度で作業する振動モータの場合には(西ドイツ国特許第3927040号明細書参照)、回転対称的なロータの中心点に対して同心的に配置された円形リング上に9個の孔を配置することによって、妨げとなる振動モードの発生が抑制される。これに相応してばね皿内で、固有振動がステータの動作周波数と合致しない振動モードの発生を阻止することができる。」という記載と対応するものである。 (7)について 第5図又は第6図で図示される実施例にあっても、第3図に図示したような緩衝手段、質量体、ばねからなる振動モータの系として概略的に図示し得ることは、当業者であれば理解し得るものである。 3-4 取消理由通知で引用された刊行物に記載された発明 引用刊行物 刊行物1(甲第1号証):実願昭62-85286号(実開昭63-194591号)のマイクロフィルム 刊行物2(甲第2号証):実願昭62-85287号(実開昭63-194592号)のマイクロフィルム 刊行物3(甲第3号証):特開昭62-247775号公報 刊行物4(甲第4号証):振動工学ハンドブック[訂正第2版、発行日:昭和56年6月10日、発行所:株式会社養賢堂、著作者:代表者 谷口修] 刊行物5(甲第5号証):特開平1-181836号公報 引用刊行物に記載された発明 刊行物1:弾性部材5によりロー夕4を進行波が生じる固定子1に圧接する超音波モー夕が記載され(第1図)、この弾性部材は加圧バネとしての機能を有する一方、ゴムや合成樹脂で形成されているので(明細書第5頁15行〜16行)、ロー夕と弾性部材から成る振動システムの緩衝手段としての機能も有する。ロー夕は合成樹脂製(明細書第5頁10〜11行)であり、弾性部材はゴムや合成樹脂で形成された高衝撃作用を有する材料で形成されている。 刊行物2:弾性部材5によりロー夕4を進行波が生じる固定子1に圧接する超音波モー夕が記載され(第1図)、この弾性部材は加圧バネとしての機能を有する一方、ゴムや合成樹脂で形成されているので(明細書第6頁13行〜14行)、ロー夕と弾性部材から成る振動システムの緩衝手段としての機能も有する。ロー夕は合成樹脂製(明細書第6頁8〜9行)であり、弾性部材はゴムや合成樹脂で形成された高衝撃作用を有する材料で形成されている。また、鍔部材9とロー夕4との間に加圧部材を兼ねる弾性部材5が設けられており(第1図)、鍔部材9と加圧部材との間に衝撃作用を有する弾性部材5が設けられている。 刊行物3:超音波モータの回転子支持体の改良に関するものであって、「回転子2は、固定子8と加圧接触状態にあるので、進行波を受けて・・・」(第1頁右下欄6行〜7行)と記載されている。加圧部材3と回転子8との間にゴム状弾性体4を配置した構成が第1図に記載されており、この加圧部材3にゴム状弾性体4が固着されている(第1頁右下欄17行〜18行)。また、加圧部材3と回転子8との間にゴム状弾性体4を配置した構成が第1図に記載されており、この加圧部材3とゴム状弾性体4とはマクロスコビックなばねである。 刊行物4:ばねの減衰特性として防振ゴムの損失係数が0.03(3%)〜0.4(40%)であることが記載されている。 刊行物5:第15図に、振動波モータの圧着機構である加圧ばねに開口,孔を設けたことが開示されている。 3-5 引用刊行物に記載された発明との対比・判断 (3-5-1)一致点・相違点の認定 本件発明1と刊行物1ないし3に記載された発明とを対比すると、両者は「所定の動作周波数の進行波を発生させるステータと、圧着機構を介して摩擦接触下でステータに圧着されるロータとから成る振動モータにおいて、ロータと圧着機構とから成る振動システムが、緩衝手段によって緩衝されることを特徴とする、振動モータ。」において一致するが、先ず次の点で両者は相違する。 相違点:本件発明1の「ロータと圧着機構とから成る振動システムが、運転が非周期的な限界点の近くで行なわれるように、緩衝手段によって緩衝される」のに対して、刊行物1ないし3に記載された発明は、「緩衝手段による緩衝」の程度として「運転が非周期的な限界点の近くで行われるように緩衝される」という構成を有しない点。 (3-5-2)相違点の判断 相違点について検討するに、刊行物1、2は、ロータに合成樹脂を、圧着機構にゴムや合成樹脂等からなる弾性部材を用いており、また、刊行物3は、ロータ/圧着機構の系にゴム状弾性体を用いており、さらに、刊行物4には、弾性部材であるゴムや合成樹脂が高い緩衝作用を有している点は記載されているものの、刊行物1ないし5のいずれのものにも、ロータ/圧着機構の系の減衰振動がほぼ臨界減衰になる程度に、圧着ばね及びロータのエレメントの材料を適切に選択していくことは記載されておらず、刊行物1ないし5の記載から「ロータと圧着機構とから成る振動システムが、運転が非周期的な限界点の近くで行なわれるように、緩衝手段によって緩衝される」ように構成する点が容易に想到し得た程度の事項であるとはいえない。 したがって、本件発明1は、刊行物1ないし5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 本件の請求項4ないし7に係る発明は、上記で検討した本件発明1を引用するものであるから、上記と同じ理由により、刊行物1ないし5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 4.結論 したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし8に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 振動モータ (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 所定の動作周波数の進行波を発生させるステータ(10)と、圧着機構(30)を介して摩擦接触下でステータ(10)に圧着されるロータ(20)とから成る振動モータにおいて、ロータ(20)と圧着機構(30)とから成る振動システムが、運転が非周期的な限界点の近くで行なわれるように、緩衝手段(60,70,80,80a)によって緩衝されることを特徴とする、振動モータ。 【請求項2】 圧着機構(30)として主に、高い緩衝作用を有する硬質プラスチックから成る皿ばねが設けられている、請求項1記載の振動モータ。 【請求項3】 硬質プラスチックとして、ペーパー、炭素繊維又はガラスフィラメント織物を有するエポキシ・積層材料、フェノール・積層材料、ポリビスマレインイミド積層材料又はシリコン樹脂・積層材料が設けられている、請求項2記載の振動モータ。 【請求項4】 圧着機構(100)と軸方向に配置された基板(1a)との間に、緩衝作用を有する材料から成る層(90)が設けられている、請求項1記載の振動モータ。 【請求項5】 圧着機構として、緩衝作用を有する層(110)が被着されているばね(100)が設けられている、請求項1又は2記載の振動モータ。 【請求項6】 圧着機構として、弾性材料及び緩衝材料から成るマクロスコピックな層から形成されたばねが設けられている、請求項1記載の振動モータ。 【請求項7】 ロータ(20)及び/又は圧着機構(30)に、開口、孔、スリット又は層状組織等が設けられている、請求項1記載の振動モータ。 【請求項8】 主に皿ばねから形成された圧着機構(30)に、回転対称的なロータの中心点に対して同心的に配置された円形リング上に等間隔を置いて配置された開口、孔又はスリットが設けられていて、該開口、孔又はスリットの数が、モータの運転を行なう進行波の節度の数に相応している、請求項1記載の振動モータ。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、特許請求の範囲第1項の上位概念に記載の形式の振動モータに関する。 【0002】 【従来の技術】 適当な振動体の表面で発生する進行波によって動力駆動される振動モータは一連の有利な特性、例えば高い停止モーメント及び回転モーメント、低速度、コンパクトで扁平な構造を有している(例えば1989年10月26日及び27日、ア・エー・ゲー(AEG)社、第24回技術的なプレスコロキュウムによって公知である)。 【0003】 このような振動モータの一例は第1図で図示されている。このような振動モータの場合ロータは圧着機構を介して振動ステータに圧着され、この振動ステータ内では超音波振動体によって、例えば圧電素子によって進行波が励起される。 【0004】 公知の振動モータの欠点は特に、回転モーメントがコンスタントな場合の回転数と温度との関連性にある。第2図から明らかなように、20℃乃至30℃の温度範囲では回転数特性曲線に落ち込みが生ずる。この範囲では別の範囲に比して高い騒音も発生する。 【0005】 同様に第2図から明らかなように、回転数の落ち込みによって、高い回転モーメントの場合値0まで回転数が低下する。通常始動段階後モータの運転温度が前記落ち込み範囲の外部で所定の値に高められたとしても、ステータからロータへの力伝達が少なくとも一時的に妨げられ、これによって特に始動段階で負荷を受けてモータの作業能力が制限されるようになる。 【0006】 更に力伝達が妨げられることによってステータとロータとの接触範囲でモータが著しく摩耗するようになる。それというのも、ステータ及びロータ表面において速度成分が互いに著しく異なるからである。 【0007】 公知の振動モータの回転数落ち込み温度範囲における雑音のスペクトル分析によって、ステータ内で進行波を励起する励起周波数foの低調波で共振が生ずることが明らかとなった。しかしこの共振は、ステータとステータ支承部との間に配置される通常の緩衝手段、例えばゴム又はフェルトリングによって効果的に抑制されない。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の課題は、振動モータにおいて寄生振動が阻止されるようにし、かつ、振動モータを、広範囲の運転温度範囲で回転数特性曲線の落ち込みが回避されしかもこの温度範囲でも騒音なく作業できるように、改良することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】 前記課題は本発明によれば、特許請求の範囲第1項の特徴部分に記載の構成によって解決された。 【0010】 有利な構成はその他の請求項に記載されている。 【0011】 【発明の効果】 本発明は、寄生振動を付加的な緩衝手段によって又は共振をずらすことによって回避するという、思想から出発する。詳細にはこのことは本発明によれば特に圧着機構又はロータのエレメントのために高い緩衝作用を有する材料を選択することによって、ロータ/圧着機構のシステムが非周期的な限界点の近くで運転されることによって、並びに、寄生振動モードを破壊する、圧着機構又はロータを構成する際の構造的な措置によって、実現される。 【0012】 【実施例】 第1図で図示された超音波モータにおいては、基板1上に多数のねじ又は別の固定手段を介してステータ2が固定されていて、このステータ2には皿ばね4を介してロータ3が圧着される。超音波モータは駆動軸5を中心として同軸的に配置されている。 【0013】 駆動軸5の上端には締付けリングを介して皿ばね4が定置に配置されていて、この締付けリングはリベット結合部材を介して皿ばね4に不動に結合されていてかつ駆動軸5の付加部に支承されている。駆動軸5は下端でころ軸受けに回転可能に支承されている。ロータとステータとは円筒状のケーシング部分によって取り囲まれている。 【0014】 駆動モーメントを発生させるために第1図で図示の超音波モータの場合公知の形式でステータ2内で進行波が生ぜしめられ、この場合ステータ表面の質点が楕円形のトラジェクトリー上を移動しかつ摩擦接続的に連結されたロータ3を回転させる。 【0015】 第2図では、第1図で図示されているような公知の超音波モータの典型的な回転数特性曲線を図示している。この場合、回転数は縦軸に沿って示されかつ温度℃は横軸に沿って示されている。特性曲線は5Ncm(+)、50Ncm(x)及び100Ncm(y)の回転モーメントを考慮して示されている。ステータとロータとの間の軸方向力はコンスタントである。 【0016】 第2図から明らかなように、回転モーメントが大きい場合ほぼ25℃乃至35℃の温度範囲で回転数特性曲線の落ち込みが生ずる。この温度範囲ではモータの運転時に共鳴音も生ずる。可聴周波数範囲のこのような寄生振動は圧着機構及びロータの構成エレメントの固有振動が励起されることによって生ずる。固有周波数は公知の構成の場合温度に関連していてかつモータ特性の図示の温度関連性を生ぜしめる。 【0017】 第3図では本発明による振動モータを概略的に図示している。この場合寄生振動の減衰は共振の異なる作業振動の周波数によって行なわれる。 【0018】 第3図では符号10で振動ステータを、符号20でロータを、符号30でロータとステータとを互いに圧着する軸方向力を発生させるばね機構をかつ符号40で既に従来技術で公知の緩衝部材、例えばゴムリングを示している。更に符号50で振動ステータ、ロータ及び圧着ばねから成るシステムの共振周波数をシュミレートするための質量体を示している。 【0019】 本発明による振動モータでは、寄生共振周波数が生じた場合にシステムを緩衝するために、付加的に緩衝手段60,70,80,80aが設けられている。 【0020】 このような寄生共振を抑制もしくは阻止するための付加的な緩衝手段60,70,80,80a又は以下に詳述する手段を用いなくても、公知の緩衝部材40によって、システムを作動させる励起周波数foの場合に緩衝作用が得られるけれども、寄生共振の場合、特にロータとばね30とが同位相で振動するような寄生共振の場合には緩衝作用は得られない。 【0021】 緩衝手段60,70,80,80aは種々の形式で実現できる、特に圧着ばね及びロータのために適当な材料を選択することによって実現される。有利な実施例では圧着ばねは緩衝作用を有する材料から製作される。 【0022】 第4図では共振減衰手段を有する本発明による振動モータの回転数特性曲線を図示している。第1図の公知のモータにおいて使用される圧着機構の青銅ばねの代りに、本発明の振動モータでは多層材料から成るばねが使用される。この措置によって、危険な温度範囲で回転数落ち込みのない特性曲線がほぼ維持されかつ共鳴音が消滅させられる。 【0023】 本発明による緩衝作用を考慮してばね材料として少なくとも0.005の緩衝係数を有する材料が適しており、この場合ばね材料は十分高い耐熱性を有する必要がある。 【0024】 この場合特に、充填材としてペーパー又はガラスフィラメント織物を有するエポキシ・積層材料、フェノール・積層材料、ポリビスマレインイミド・積層材料又はシリコン樹脂・積層材料が使用される。更に金属層、炭素繊維、アラミド繊維を有する多層材料も使用される。 【0025】 第5図では本発明による振動モータの有利な別の実施例が図示されている。ステータ10及びロータ20は圧着機構100を介して互いに圧着され、この場合圧着機構100及びロータ20のユニットは強力な緩衝作用を有する緩衝材料90を介して質量体1a、例えば高い剛性を有する基板に連結されている。 【0026】 第6図で図示の実施例では、緩衝材料90に付加的にばね100上に緩衝材料110が設けられていて、この緩衝材料110のためにラック又はプラスチックが使用される。 【0027】 本発明の別の実施例では圧着機構のばねは、弾性材料から成る層と緩衝材料から成る層とが互い違いに配置されているマクロスコピックな多層材料から形成される。 【0028】 選択的に、寄生振動モードを減衰するために付加的に寄生振動モードを構造的な措置によってずらすこともできる。このことは一方では、運転温度範囲で十分互いに異なりしかもステータとも異なる固有周波数を有する、ロータもしくは圧着機構の材料を選択することによって得られ、かつ、他方では、孔、スリット又は層状組織によって妨げとなる振動モードを破壊することによって得られる。 【0029】 従って例えばロータ内に半径方向のスリット、開口又は孔を設けることができ、このスリット等は周方向に亘って等間隔を置いて位置しかつその数はステータ内の所望の振動モードの節度の数に相応している。 【0030】 例えば9節度で作業する振動モータの場合には(西ドイツ国特許第3927040号明細書参照)、回転対称的なロータの中心点に対して同心的に配置された円形リング上に9個の孔を配置することによって、妨げとなる振動モードの発生が抑制される。これに相応してばね皿内で、固有振動がステータの動作周波数と合致しない振動モードの発生を阻止することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 ステータ、ロータ及び圧着機構を有する振動モータのケーシングの断面図。 【図2】 公知の振動モータの回転数特性曲線を示した図。 【図3】 本発明による振動モータの主要構成部分を概略的に示した図。 【図4】 共振減衰手段を備えた本発明による振動モータの回転数特性曲線を示した図。 【図5】 本発明による振動モータの別の実施例図。 【図6】 本発明による振動モータの別の実施例図。 【符号の説明】 1 基板 2 ステータ 3,30 ロータ 4 皿ばね 5 駆動軸 20 振動ステータ 40,60,70,80,80a 緩衝手段 50 質量体 90,110 緩衝材料 100 ばね |
訂正の要旨 |
特許請求の範囲の請求項2を削除する。 |
異議決定日 | 2003-06-11 |
出願番号 | 特願平5-320000 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(H02N)
P 1 651・ 531- YA (H02N) P 1 651・ 832- YA (H02N) P 1 651・ 534- YA (H02N) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 下原 浩嗣 |
特許庁審判長 |
城戸 博兒 |
特許庁審判官 |
岩本 正義 村上 哲 |
登録日 | 2001-01-05 |
登録番号 | 特許第3145239号(P3145239) |
権利者 | ダイムラークライスラー アクチエンゲゼルシャフト |
発明の名称 | 振動モータ |
代理人 | 水本 敦也 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 小花 弘路 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 岸田 正行 |