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審決分類 |
審判 一部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件 B66B 審判 一部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) B66B 審判 一部申し立て 2項進歩性 B66B |
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管理番号 | 1083167 |
異議申立番号 | 異議2001-73142 |
総通号数 | 46 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-11-21 |
確定日 | 2003-08-29 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3168161号「トラクションシーブエレベータ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3168161号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
【1】手続きの経緯 本件特許第3168161号の発明についての出願は、平成8年6月24日[パリ条約による優先権主張、1995年6月22日、フィンランド国]に特許出願されたものであって、その請求項1〜6に係る発明に対して、平成13年3月9日に特許権の設定登録がなされたものである。 その後、本件の請求項1に係る特許に対して、志村昭典より特許異議の申立てがなされ、そして、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年7月26日に訂正請求がなされたが、訂正拒絶理由通知がなされ、平成15年2月27日に手続補正書が提出されたものである。 【2】訂正請求に対する補正の適否についての判断 ア.補正の内容 (特許請求の範囲の補正の内容) 特許権者が求めている特許請求の範囲の補正の内容は、次のとおりである。 全文訂正明細書中の特許請求の範囲の請求項1の、 「前記駆動機械装置は前記トラクションシーブの回転軸の方向において平坦な構造であり、前記カウンタウエートまたはエレベータカーの通路の上下端を超えない高さに配設され、巻上ロープは前記トラクションシーブから上方へ進んで前記エレベータシャフトの上部に配設された各方向転換プーリを通り、」を、 「前記駆動機械装置は前記トラクションシーブの回転軸の方向において平坦な構造であり、前記エレベータシャフトの上部に配設された各方向転換プーリより低いほとんどどのような高さにも配設でき、巻上ロープは前記トラクションシーブから上方へ進んで前記各方向転換プーリを通り、」と補正する。 イ.補正の適否 上記訂正請求に対する補正により、請求項1に係る発明の駆動機械装置が、「カウンタウエートまたはエレベータカーの通路の上下端を超えない高さに配設され」ることから、「エレベータシャフトの上部に配設された各方向転換プーリより低いほとんどどのような高さにも配設でき」ることに補正された。 しかし、このような「カウンタウエートまたはエレベータカーの通路の上下端を超えない高さに配設され」ることを削除し、「エレベータシャフトの上部に配設された各方向転換プーリより低いほとんどどのような高さにも配設でき」ることを付け加える補正事項は、訂正明細書の特許請求の範囲を変更するものであって、訂正請求書の訂正事項を明らかに変更するものである。 それゆえ、このような補正は、訂正請求に係る訂正の範囲を実質的に変更するものであるから、本件訂正請求書の要旨を変更するものに該当する。 ウ.まとめ したがって、訂正請求に対する当該補正は、その余の補正事項の検討をするまでもなく、特許法第120条の4第3項で準用する同法第131条第2項の規定に適合しないので、上記補正を採用することはできない。 【3】訂正の適否についての判断 ア.訂正の内容 平成14年7月26日付けでなされた訂正請求は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、 請求項1の記載を、 「【請求項1】 トラクションシーブが駆動機械装置の回転子に取り付けられたトラクションシーブ付きの駆動機械装置がエレベータシャフト内に配設され、該エレベータシャフトの断面では、前記エレベータカー、カウンタウエートおよび前記駆動機械装置のトラクションシーブの各垂直投影が互いに離れているトラクションシーブエレベータにおいて、前記駆動機械装置は前記トラクションシーブの回転軸の方向において平坦な構造であり、前記カウンタウエートまたはエレベータカーの通路の上下端を超えない高さに配設され、巻上ロープは前記トラクションシーブから上方へ進んで前記エレベータシャフトの上部に配設された各方向転換プーリを通り、該方向転換プーリから下降してそれぞれ前記カウンタウエートおよびエレベータカーへ達し、該方向転換プーリは相互に平行に配置され、隣接する1つのシャフト壁に対して平行に配置されることを特徴とするトラクションシーブエレベータ。」、 と訂正するものである。 [記載中の下線部分(以下、「訂正事項A」という。)が、訂正請求により新たに付加された事項である。] イ.訂正明細書の請求項1に係る発明 訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明1」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される上記記載のとおりのものである。 ウ.新規事項の有無の検討 そこで、上記下線部で示された事項(訂正事項A)を検討するに、この訂正事項は、願書に添付した明細書又は図面には記載されていない。 願書に添付した明細書の段落[0010]には、駆動機械装置6が方向転換プーリ4,5より低い位置に配設できる旨の記載があるものの、当該記載は、駆動機械装置6とカウンターウエートまたはエレベータカーの通路の上下端との間の、配設高さの位置の関係を示すものではない。 このことは、駆動機械装置6を、例えば、カウンターウエートまたはエレベータカーの通路の下端より下の「必要な安全距離」の高さの位置に配設することを除外せず、駆動機械装置6は、「カウンターウエートまたはエレベータカーの通路の上下端を超えない高さ」以外の位置に配設されてもよいことを意味する。 してみると、訂正事項Aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項そのものではなく、しかも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項から当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項でもない。 したがって、訂正事項Aを含む明細書の訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとすることはできない。 エ.独立特許要件の検討 (1)訂正明細書の請求項2〜6に係る発明 訂正明細書の請求項2〜6に係る発明(以下、それぞれ、「本件訂正発明2〜6」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項2〜6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本件訂正発明2は、次のとおりのものである。 「【請求項2】 請求項1に記載のトラクションシーブエレベータにおいて、前記トラクションシーブは前記駆動機械装置の構成部分であることを特徴とするトラクションシーブエレベータ。」 そして、本件訂正発明1は、上記「訂正事項A」が付加されることにより、特許請求の範囲の減縮がなされたものであるから、その結果、請求項1を引用する本件訂正発明2〜6も、上記「訂正事項A」が新たに付加されることによって、特許請求の範囲の減縮がなされたものと認められる。 したがって、本件訂正発明2〜6は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条4項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができなければならないので、以下、この独立特許要件について検討する。 (2)引用刊行物及びその記載事項 訂正拒絶理由において引用した、特開平2-225280号公報(以下、「刊行物1」という。)、及び、特開平7-10434号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次のような技術的事項が記載されている。 ・刊行物1; 「エレベータの昇降路下部に機械室を有するエレベータ」(第1頁左下欄第6〜7行)、 「第5図及び第6図に示すように、これら構成部材は、かご1、カウンターウェイト3、2本のかごガイドレール5、2本のカウンターウェイトガイドレール7、ガイドプーリ11を支持し且つ伸縮式アーム21を有する梁9、及び巻上ロープ13から構成される。」(第4頁左下欄第6〜11行)、 「また、第3図に示すように、ロープガード39を各プーリに設けて、各ロープがガイドプーリ11や巻上機用プーリ31やかご1の下面に近接してかごに付設した2個の下部プーリ41から外れるのを防止している。」(第5頁左下欄第12〜16行) また、図面の図3〜6の記載から、 (a)「ロープ13は巻上機用プーリ31から上方へ進んで各ガイドプーリ11を通り、各ガイドプーリ11から下降してそれぞれカウンターウェイト3およびエレベータかご1へ達している」こと、(b)「各ガイドプーリ11は相互に平行に配置されている」こと、及び、(c)「エレベータの昇降路の断面では、かご1、カウンタウエート3および巻上機用プーリ31の各垂直投影が互いに離れている」ことは、当業者が看取できるものと認められる。 そして、これらの記載事項からみて、 刊行物1には、 「機械室がエレベータの昇降路の外に、巻上機用プーリ31がエレベータの昇降路内にそれぞれ配設され、該エレベータの昇降路の断面では、かご1、カウンタウエート3および巻上機用プーリ31の各垂直投影が互いに離れているエレベータにおいて、巻上ロープ13は前記巻上機用プーリ31から上方へ進んで前記エレベータ昇降路の上部に配設された2つのガイドプーリ11を通り、該2つのガイドプーリ11から下降してそれぞれ前記カウンタウェート3および前記かご1へ達し、該2つのガイドプーリ11は相互に平行に配置されるエレベータ」という発明が、記載されていると認められる。 ・刊行物2; 「本発明によるトラクションシーブエレベータを概略的に図1に示す。エレベータカー1およびカウンタウエイト2はエレベータの巻上げロープ3に懸架されている。巻上げロープ3は好ましくは、エレベータカー1の重心を通る垂直線に対して実質的に中心に、あるいは対称にエレベータカー1を支持している。同様に、カウンタウエイト2の懸架は、好ましくはカウンタウエイトの重心を通る垂直線に対して実質的に中心にあるか、あるいは対称である。図1では、エレベータカ一1は巻上げロープ3により、ロープ溝の設けられた転向プーリ4、5を使って支持され、カウンタウエイト2は溝付き転向プーリ9により支持されている。転向プーリ4および5は好ましくは、実質的に同一面内で回転する。巻上げロープ3は通常、並んで配置された数本のロープ、通常は少なくとも3本のロープからなる。巻上げロープ3が係合されたトラクションシーブ7を有するエレベータの駆動機装置6は、エレベータシャフトの頂上部に配置されている。」(第3頁第4欄第17〜34行)、 「カウンタウエイト2の通路の上方に配置されている機械装置6は、その幅に比べると平たい構造のものであり、トラクションシーブ7を駆動するモータおよび必要なエレベータ制御機器への給電に必要な機器も含む。」(第4頁第5欄第22〜26行)、 「回転子117は軸113に軸受け116により取り付けられている。回転子117の外面上にあるトラクションシーブ7には、5本のロープ溝119が設けられている。」(第6頁第9欄第18〜21行)、 「また、当業者に明らかなように、エレベータカー、カウンタウエイトおよび機械装置は、エレベータシャフトの断面内について上述の例とは異なる方法で配置することができる。」(第7頁第11欄第17〜20行)、 「本発明のトラクションシーブエレベータは、別個の機械室を必要としないため、顕著に建物空間を節約することができる。」(第7頁第11欄第39〜41行) 以上の記載、及び、図1〜6の記載からみて、 刊行物2には、 「トラクションシーブ7が、駆動機械装置6の構成部分として、駆動機械装置6の回転子117に取り付けられたトラクションシーブエレベータにおいて、前記駆動機械装置6を前記トラクションシーブ7の回転軸の方向において平坦な構造として、トラクションシーブ7付きの駆動機械装置6をエレベータシャフトの断面内に配設することで、別個の機械室を必要としない」発明が、記載されていると認められる。 (3)対比・判断 (対比) そこで、本件訂正発明2と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「エレベータの昇降路」、「巻上機用プーリ31」、「かご1」、「カウンタウエート3」、「巻上ロープ13」、「ガイドプーリ11」は、それぞれ、本件訂正発明2の「エレベータシャフト」、「トラクションシーブ」、「エレベータカー」、「カウンタウエート」、「巻上ロープ」、「方向転換プーリ」に相当し、また、刊行物1に記載された発明の「機械室」に駆動機械装置が配設されていることは、当業者にとって自明の事項であるから、 両者は、 「トラクションシーブがエレベータシャフト内に配設され、該エレベータシャフトの断面では、前記エレベータカー、カウンタウエートおよび前記トラクションシーブの各垂直投影が互いに離れているトラクションシーブエレベータにおいて、巻上ロープは前記トラクションシーブから上方へ進んで前記エレベータシャフトの上部に配設された各方向転換プーリを通り、該方向転換プーリから下降してそれぞれ前記カウンタウエートおよびエレベータカーへ達し、該方向転換プーリは相互に平行に配置されるトラクションシーブエレベータ」の点で一致し、以下の相違点(a)〜(c)で相違する。 (相違点) (a)本件訂正発明2の(相互に平行に配置される)方向転換プーリは、隣接する1つのシャフト壁に対して平行に配置されるものであるのに対し、刊行物1に記載された発明は、その点が明らかでない点。 (b)本件訂正発明2は、トラクションシーブが、駆動機械装置の構成部分として、駆動機械装置の回転子に取り付けられ、このトラクションシーブ付きの駆動機械装置がエレベータシャフト内に配設されたトラクションシーブエレベータにおいて、前記駆動機械装置は前記トラクションシーブの回転軸の方向において平坦な構造であるのに対し、刊行物1に記載された発明は、トラクションシーブだけがエレベータシャフト内に配設され、駆動機械装置はエレベータシャフト内に配設されていない点。 (c)本件訂正発明2は、駆動機械装置が、カウンターウエートまたはエレベータカーの通路の上下端を超えない高さに配設されるものであるのに対し、刊行物1に記載された発明は、その点が明らかでない点。 以下、これらの各相違点(a)〜(c)について検討する。 (相違点の検討) ・相違点(a)について; 刊行物1に記載された発明の(相互に平行に配置される2つの)方向転換プーリを、隣接する1つのシャフト壁に対して平行に配置することは、刊行物1の図面の記載からみて、このように配置することを妨げる特段の技術的事情が存在するものとも認められないことから、当業者が容易に想到し得る程度のものにすぎないと認められる。 ・相違点(b)について; 「トラクションシーブを、駆動機械装置の構成部分として、駆動機械装置の回転子に取り付け、このトラクションシーブ付きの駆動機械装置をエレベータシャフトの断面内に配設することで、別個の機械室を必要としない」こと、及び、「駆動機械装置をトラクションシーブの回転軸の方向において平坦な構造とする」ことは、刊行物2に記載されている。 そして、刊行物1及び刊行物2に記載された発明は、共に、トラクションシーブエレベータという同一の技術分野に属する発明であるから、刊行物1に記載された発明のトラクションシーブ付きの駆動機械装置に、刊行物2に記載された発明を適用し、もって、相違点(b)に係る本件訂正発明2の特定事項のように構成することは、当該適用を妨げる特段の技術的事情が存在するものとは認められない以上、当業者が容易になし得るものというべきである。 ・相違点(c)について; 刊行物1に記載される発明の駆動機械装置は、図面の記載からみて、カウンターウエートまたはエレベータカーの通路の(上端を超えない高さでもある)「下端近辺」の高さに配設されていることは明らかであり、しかも、当該駆動機械装置は、カウンターウエートまたはエレベータカーの通路の下端を超えた「必要な安全距離」の高さの箇所にも配設可能なことは、当業者が容易に想到し得ることであるから、駆動機械装置をカウンターウエートまたはエレベータカーの通路の下端を超えない高さに配設することは、格別の技術的意味をもつものではない。 したがって、駆動機械装置をカウンターウエートまたはエレベータカーの通路の上下端を超えない高さに配設することは、当業者が必要に応じて容易になし得る程度の事項にすぎないものと認められる。 (効果について) そして、本件訂正発明2の特定事項によってもたらされる効果も、刊行物1及び2に記載された発明から当業者であれば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (4)むすび したがって、本件訂正発明2は、上記刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものと認められるから、本件訂正発明2は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 オ.まとめ 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2項及び第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 【4】特許異議の申立てについての判断 ア.本件特許の請求項1係る発明 前記【3】オ.で述べたように、訂正請求による訂正が認められないので、本件特許の請求項1に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 トラクションシーブが駆動機械装置の回転子に取り付けられたトラクションシーブ付きの駆動機械装置がエレベータシャフト内に配設され、該エレベータシャフトの断面では、前記エレベータカー、カウンタウエートおよび前記駆動機械装置のトラクションシーブの各垂直投影が互いに離れているトラクションシーブエレベータにおいて、前記駆動機械装置は前記トラクションシーブの回転軸の方向において平坦な構造であり、巻上ロープは前記トラクションシーブから上方へ進んで前記エレベータシャフトの上部に配設された各方向転換プーリを通り、該方向転換プーリから下降してそれぞれ前記カウンタウエートおよびエレベータカーへ達し、該方向転換プーリは相互に平行に配置され、隣接する1つのシャフト壁に対して平行に配置されることを特徴とするトラクションシーブエレベータ。」 イ.取消理由に引用した発明 当審が通知した取消理由で引用した特開平2-225280号公報(上記「刊行物1」と同じ)、及び、特開平7-10434号公報(上記「刊行物2」と同じ)には、すでに上記【3】エ.(2)で示したような技術的事項及び発明が、記載されているものと認められる。 ウ.対比・判断 (対比) そこで、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と刊行物1に記載された発明とを対比すると、上記【3】エ.(3)「対比・判断」の箇所で示した「対比」の内容と同様のことが成り立つから、 両者は、 「トラクションシーブがエレベータシャフト内に配設され、該エレベータシャフトの断面では、前記エレベータカー、カウンタウエートおよび前記トラクションシーブの各垂直投影が互いに離れているトラクションシーブエレベータにおいて、巻上ロープは前記トラクションシーブから上方へ進んで前記エレベータシャフトの上部に配設された各方向転換プーリを通り、該方向転換プーリから下降してそれぞれ前記カウンタウエートおよびエレベータカーへ達し、該方向転換プーリは相互に平行に配置されるトラクションシーブエレベータ」の点で一致し、以下の相違点(a)、(b)で相違する。 (相違点) (a)本件発明1は、方向転換プーリが、隣接する1つのシャフト壁に対して平行に配置されるものであるのに対し、刊行物1に記載された発明の(2つの)方向転換プーリは、その点が明らかでない点。 (b)本件発明1は、トラクションシーブが駆動機械装置の回転子に取り付けられ、このトラクションシーブ付きの駆動機械装置がエレベータシャフト内に配設され、前記駆動機械装置は前記トラクションシーブの回転軸の方向において平坦な構造であるのに対し、刊行物1に記載された発明は、トラクションシーブだけがエレベータシャフト内に配設され、駆動機械装置はエレベータシャフト内に配設されていない点。 (相違点の検討) そこで、上記相違点について検討すると、前記【3】エ.(3)「対比・判断」の、相違点(a)、(b)について検討する箇所で述べた理由と同様の理由により、これらの相違点(a)、(b)は、共に、当業者が容易になし得る程度の事項にすぎないものである。 (効果について) そして、本件発明1の構成によってもたらされる効果も、刊行物1及び2に記載された発明から当業者であれば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本件発明1は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【5】むすび 以上のとおりであるから、本件の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。 したがって、本件の請求項1に係る発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2003-04-14 |
出願番号 | 特願平8-181694 |
審決分類 |
P
1
652・
856-
ZB
(B66B)
P 1 652・ 121- ZB (B66B) P 1 652・ 841- ZB (B66B) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 小峰 利道、鳥居 稔 |
特許庁審判長 |
舟木 進 |
特許庁審判官 |
松下 聡 清田 栄章 |
登録日 | 2001-03-09 |
登録番号 | 特許第3168161号(P3168161) |
権利者 | コネ コーポレイション |
発明の名称 | トラクションシーブエレベータ |
代理人 | 香取 孝雄 |