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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D |
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管理番号 | 1084678 |
審判番号 | 不服2001-15702 |
総通号数 | 47 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-07-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-09-05 |
確定日 | 2003-10-09 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第325789号「磁気記録体」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 7月 9日出願公開、特開平 8-175059]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明の認定 本願は平成6年12月27日の出願であって、当審において平成15年4月30日付けで最後の拒絶理由を通知したところ、同年7月4日付けで意見書が提出されるとともに、明細書について手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 本件補正は、最後の拒絶理由通知に対応する補正(平成6年改正前特許法17条の2第1項4号の規定に基づく補正)であるため、同条3項の規定に違反するかどうか検討する。 本件補正による補正事項は、補正前請求項1の記載中の「磁気記録体であって、磁気ヘッドと一様な熱印加手段とにより、記録を行う」との部分を削除するものである。 本件補正前後を通じて、請求項1に係る発明は「磁気記録体」の発明である。ところで、上記削除部分は磁気記録体の記録方法について記載したものであって、本来磁気記録体の構成要件とならないものである。仮に、削除部分記載の記録方法により記録可能であるとの機能的意味に解したとすると、補正前後を通じての「磁気印加かつ加熱をした時に画像の書き込み消去が可能である」との記載と重複するものであるから、無用の記載であるばかりか、請求項1の構成を不明りょうとするものである。上記最後の拒絶理由通知では、このような趣旨を指摘したものであり、本件補正はその拒絶理由に応じて、不明りょうの原因となっていた記載を削除するものであるから、平成6年改正前特許法17条の2第3項4号の規定に適合する補正であり、これを却下することはできない。 したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年7月4日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載のとおりの次のものと認める。 「非磁性材料からなる支持体上に、少なくともフレーク状磁性粉と、これを分散してなる常温において固相状態を示し、かつ、加熱により溶融状態となる分散媒とを内包するマイクロカプセルをバインダー中に分散配置してなる磁気記録層を形成した磁気記録体であって、磁気印加かつ加熱をした時に画像の書き込み消去が可能である磁気記録体において、前記分散媒が融点35℃以上80℃以下の有機化合物であり、前記マイクロカプセルの平均粒径が10μmから1000μmの間にあり、前記フレーク状磁性粉の平均粒径が1μmから50μmの間にある ことを特徴とする磁気記録体。」 第2 当審の判断 1.引用刊行物の記載事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用した特開昭52-10148号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア〜オの記載がある。 ア.「本発明の要旨は磁場感応性を有する針状又は薄片状の微粒子が、常温において固体であり加熱時液体となり得る透明な支持体中に分散されてなる記録媒体を、磁場中に置くと共に該媒体に応じた温度分布を生じせしめるべく媒体を加熱して、上記微粒子に磁場による配向を起こさせ、該配向を維持した状態で冷却することを特徴とする画像複写方法に存するものである。」(2頁右上欄7〜15行) イ.「薄片状の微粒子23においては表面積が10〜50μ2で厚さが薄片の直径の1/5以下のものが好ましく用いられる。」(2頁右下欄4〜6行) ウ.「支持体1は常温において固体であり加熱時に液体となり得るものであり且透明な物質である。加熱によって液体となる温度については・・・40℃以上とされるのが良く、・・・具体的には各種ロウ、アクリル酸エステル重合体、ロジン酸エステル、可塑剤含有塩化ビニル樹脂のような低融点の樹脂とか他に40℃近くの融点を有する物質としてベンゼンスルホン酸、ブチルアルコール、エルカ酸、レプリン酸等が使用可能である。」(2頁右下欄12行〜3頁左上欄4行) エ.「第2図に示される記録媒体10においては、・・・保護フィルム4,4’によって挟持された構造となされている。・・・支持体1は透明な物質で形成される室6によって包まれている。該室6は2枚の保護フィルム4,4’の間にあって多数が隣接されている。室6同士は結合材3によって相互に合着されて層をなしている。」(3頁左上欄末行〜右上欄9行) オ.「記録媒体が加熱されると、支持体1は液状となり該液体中に分散している微粒子2は磁束・・・の方向に配向する。・・・該配向はそのまま画像の形状となる。」(4頁左上欄4〜13行) (2)同じく引用した特開平4-369597号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のカ〜クの記載がある。 カ.「磁性フレークをオイルとともに収容しており配向方向に応じて可視入射光の反射方向が変化せしめられる複数のマイクロカプセルを透明基材の表面に対して配置されたバインダ中に分散せしめてマイクロカプセル層を形成することにより可視表示領域としてなる磁気カード・・・」(【請求項1】) キ.「マイクロカプセル32は、磁性シート40に含まれた磁気記録領域の記録内容を視認可能に表示するに際して明瞭に表示できるよう、その大きさが30μm〜100μm程度であることが好ましい。」(段落【0022】) ク.「磁性フレーク34の大きさは、可視入射光を好適に反射する必要があるので、少なくとも1μm程度以上の径をもつことが好ましい。更に、磁性フレーク34の大きさは、マイクロカプセル32の大きさなどに応じて適宜に決定する必要があるが、たとえばマイクロカプセル32の大きさが100μm程度である場合、磁界による配向特性を確保するために、5μm〜15μm程度の大きさとされていることが、好ましい。」(段落【0025】) 2.引用例1記載の発明の認定 引用例1の記載ウによれば、同記載中の支持体材料は有機化合物である。 引用例1の記載ア,オによれば、記録媒体は磁気印加かつ加熱をした時に、微粒子の配向が変更されるのであって、その配向状態が画像を表現するのであるから、「磁気印加かつ加熱をした時に画像の書き込み消去が可能である」ということができる。 そうすると、上記ア〜オを含む引用例1の全記載及び図示からみて、引用例1の第2図に示された記録媒体は次のようなものと認定できる。 「2枚の保護フィルム間に、多数の室が隣接配置されており、該室同士は結合材によって相互に合着されて層をなしており、各室はその内部に、40℃以上で40℃に近い融点を有する有機化合物からなる支持体と、磁場感応性を有する薄片状微粒子を含むものであり、前記薄片状微粒子は、表面積が10〜50μ2で厚さが直径の1/5以下であって、磁気印加かつ加熱をした時に画像の書き込み消去が可能である記録媒体。」(以下「引用例発明1」という。) 3.本願発明と引用例発明1との一致点及び相違点の認定 引用例発明1の「保護フィルム」の一方、「結合材」、「磁場感応性を有する薄片状微粒子」及び「記録媒体」は、本願発明の「支持体」、「バインダー」、「フレーク状磁性粉」及び「磁気記録体」にそれぞれ相当する。なお、引用例発明1の「保護フィルム」の他方については、本願発明にはこれに相当する構成がない(請求項3記載の「保護層」又は実施例の「保護膜」がこれに相当する。)。引用例発明1の「室」が層状になったものは、本願発明の「磁気記録層」と異ならない。 引用例発明1の「室」と本願発明の「マイクロカプセル」は、カプセルである点で一致する(この点は請求人も認めている。)。 引用例発明1の「支持体」は本願発明の「分散媒」に相当するものであり、有機化合物である点や融点においても相違しない(融点が40℃以上であるということは、「常温において固相状態を示し、かつ、加熱により溶融状態となる」ということである。)。なお、引用例1と本願明細書では、「支持体」との用語が共に用いられているが、両者においてこの共通する用語が、全く異なる構成を表す用語として用いられていることは明らかであり、共通の用語である「支持体」同士に相当関係はない。 引用例発明1では、磁気印加かつ加熱をした時に画像の書き込み消去が可能であるから、保護フィルムが磁性材料であっては不適当であることが明らかであり、これは非磁性材料と認定できる。仮にそのように認定できないとしても、磁気記録を行う以上非磁性材料とすることに何ら困難性がないことはいうまでもない。 そうすると、本願発明と引用例発明1とは、 「非磁性材料からなる支持体上に、少なくともフレーク状磁性粉と、これを分散してなる常温において固相状態を示し、かつ、加熱により溶融状態となる分散媒とを内包するカプセルをバインダー中に配置してなる磁気記録層を形成した磁気記録体であって、磁気印加かつ加熱をした時に画像の書き込み消去が可能である磁気記録体において、前記分散媒が融点35℃以上80℃以下の有機化合物である磁気記録体。」である点で一致し、以下の各点で相違する。 〈相違点1〉バインダー中でのカプセルの配置形態につき、本願発明では「分散配置」としているのに対し、引用例発明1では「室同士は結合材によって相互に合着されて層をなしており」とされている点。 〈相違点2〉カプセルの大きさにつき、本願発明では「平均粒径が10μmから1000μmの間」の「マイクロカプセル」と限定しているのに対し、引用例発明1ではかかる限定をしていない点。 〈相違点3〉フレーク状磁性粉につき、本願発明では「平均粒径が1μmから50μmの間にある」としているのに対し、引用例発明1では、「表面積が10〜50μ2で厚さが直径の1/5以下」としている点。 4.相違点についての判断 (1)相違点1について 引用例2には、マイクロカプセル内の磁性フレーク(本願発明の「フレーク状磁性粉」に相当する。)の配向変化を利用した磁気カード(「磁気記録体」の1つである。)において、カプセルをバインダ中に分散すること、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成が記載されているのであるから、引用例2記載の発明(以下「引用例発明2」という。)の配置構成を引用例発明1に適用して、相違点1に係る本願発明の構成をなすことは当業者にとって容易である。 (2)相違点2について 本願発明の「マイクロカプセル」との用語における「マイクロ」とは小さいことを意味する接頭辞であるから、「平均粒径が10μmから1000μmの間」との数値限定の容易性について検討すれば十分であり、この接頭辞の有無の容易性については検討する必要がない。 カプセルの大きさは、内包する磁性粉が自由に配向を変えることができるような大きさであることが必要であり、したがって、磁性粉よりは相当程度大きくしなければならない。また、これが大きすぎると、カプセル自体を視認できるようになるから、自ずと上限があることも明らかである。 そうであれば、「平均粒径が10μmから1000μmの間」との数値限定は、その範囲が通常使用される粒径範囲と大きく異ならない限り、設計事項というべきである。 そして、引用例2に「30μm〜100μm程度であることが好ましい」(記載キ)と記載されていることからすれば、本願発明の上記数値範囲が通常使用される粒径範囲と大きく異なるということはできないから、相違点2に係る本願発明の構成は設計事項程度ということになり、ここに困難性など全く存在しない。 (3)相違点3について 引用例発明1の薄片状微粒子では「厚さが直径の1/5以下」であるから、その表面積の大部分は、側面を除く面積で決定される。そして、引用例発明1では「表面積が10〜50μ2」であるのだが、その形状を円盤状として(「直径」とあることから、円盤状を想定しているものと認める。)側面積を無視すると、直径はおよそ2.5μm〜5.6μmとなる。側面積を考慮すれば、これよりも若干小さい数値範囲となるが、いずれにせよ1μmから50μmの間である。そうであれば、平均粒径としても1μmから50μmの間になると推測される。引用例発明1の薄片が円盤状でなく、細長いものであるとすると、長い方向の長さは、上記計算値よりも大きくなるが、本願発明における上限値は上記計算値の上限値よりも相当程度大きい(約1桁異なる)から、依然として本願発明の数値範囲に収まるものと推測される。 しかも、引用例2の記載クにおいて、「5μm〜15μm程度」が推奨されていること、及びこの数値範囲を選択することの理由が「磁界による配向特性を確保するため」とされていることを考慮すれば、引用例発明1の薄片状微粒子と引用例発明2の磁性フレークの大きさが極端に異なると解することは困難である。 以上によれば、相違点3は実質的相違点に当たらないとみるべきであり、仮に実質的相違点であるとしても、引用例発明2の大きさを採用することで当業者が容易になしえた相違点にすぎない。 (4)本願発明の進歩性の判断 相違点1〜3は、実質的相違点でないか、又は当業者が容易に想到できたものであり、これら相違点に係る構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は引用例発明1及び引用例発明2に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第3 むすび 本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する |
審理終結日 | 2003-08-06 |
結審通知日 | 2003-08-12 |
審決日 | 2003-08-25 |
出願番号 | 特願平6-325789 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B42D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 植田 高盛、平井 聡子、田部 元史、瀬川 勝久 |
特許庁審判長 |
砂川 克 |
特許庁審判官 |
藤井 靖子 津田 俊明 |
発明の名称 | 磁気記録体 |