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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C04B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C04B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C04B |
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管理番号 | 1084791 |
異議申立番号 | 異議2001-70027 |
総通号数 | 47 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2003-11-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-01-10 |
確定日 | 2003-07-28 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3060539号「セラミックハニカム構造体およびその製造方法」の請求項1ないし17に係る特許に対する特許異議の申立てについてした決定(平成14年7月23日付)に対し、東京高等裁判所において決定取消の判決(平成14年(行ケ)第454号、平成15年4月22日判決言渡)があったので、更に審理の結果、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3060539号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第3060539号に係る発明(請求項の数17)は、平成9年年8月7日(優先権主張平成8年8月7日 日本国)に特許出願され、平成12年4月28日にその特許の設定の登録がなされ、その後、平成13年1月10日に日立金属株式会社(以下「申立人A」という)及び日本碍子株式会社(以下「申立人B」という)より特許異議の申立てがなされ、取消通知がなされ、その指定期間内に訂正請求がなされ、平成14年7月23日付けで、「訂正を認める。請求項1ないし13に係る特許を取り消す。同請求項14ないし17に係る特許を維持する」との決定がされ、東京高等裁判所において上記決定のうち「請求項1ないし13に係る特許を取り消す。」との部分を取り消すとの判決があったものである。 2.訂正の適否についての判断 2?1.訂正事項 平成13年6月25日付けの訂正請求は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、訂正請求書に添附した全文訂正明細書のとおり、すなわち次の訂正事項a乃至訂正事項hのとおり訂正するものである。 (1)訂正事項a:特許請求の範囲の【請求項14】の「金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記周壁と前記隔壁との接合部に相当するスリット部においては、前記周壁より前記中心部に向かって徐々にマスクをずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことによって、前記周壁と前記隔壁との接合部にアール部を形成する押し出し金型の前記スリット部を通過することにより、請求項2または3記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。」を、 「金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記ハニカ ム構造体の前記周壁と前記隔壁との接合部に相当するスリット部に対して、記周壁より前記中心部に向かって徐々にマスクをずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことによって、前記周壁と前記隔壁との境界部分に相当するスリットをアール部とした金型とし、該金型のスリットにスラリーを通すことにより、請求項2または3記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。」と訂正する。 (2)訂正事項b:特許請求の範囲の【請求項15】の「金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記隔壁補強部と前記隔壁との境界領域に相当する前記初期スリット部においては、前記周壁から前記中心部に向かって徐々にマスクをずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことにより、前記隔壁補強部と前記隔壁との間の境界領域にテーパ部を形成可能とする所望幅のスリット部が形成される押し出し金型の前記スリット部を通過することにより、請求項6記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。」を、 「金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の前記隔壁補強部と前記隔壁との境界領域に相当する前記初期スリット部に対して、前記周壁から前記中心部に向かって徐々にマスクをずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことにより、前記隔壁補強部と前記隔壁との間の境界領域に相当するスリットをテーパ部とした金型とし、該金型のスリットにスラリーを通すことにより、請求項6記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。」と訂正する。 (3)訂正事項c:特許請求の範囲の【請求項16】の「金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、少なくとも前記周壁と前記隔壁との接合部に相当する前記初期スリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型の前記スリット部を通過することにより、請求項2記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。」を、 「金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の少なくとも前記周壁と前記隔壁との接合部に相当する前記初期スリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型とし、該金型のスリット部にスラリーを通すことにより、請求項2記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。」と訂正する。 (4)訂正事項d:特許請求の範囲の【請求項17】の「金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、少なくとも前記隔壁と前記隔壁補強部との境界領域に相当する前記初期スリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型の前記スリット部を通過することにより、請求項6記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。」を、 「金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の少なくとも前記隔壁と前記隔壁補強部との境界領域に相当する前記初期スリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型とし、該金型のスリット部にスラリーを通すことにより、請求項6記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。」と訂正する。 (5)訂正事項e:特許明細書第6頁第1行乃至同頁第8行(特許公報第4頁左欄第18行乃至同頁同欄第26行)の「また、請求項14において、金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記周壁と前記隔壁との接合部に相当するスリット部においては、前記周壁より前記中心部に向かって徐々にマスクを小さくずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことによって、前記周壁と前記隔壁との接合部にアール部を形成する押し出し金型の前記スリット部に通過することにより、隔壁と周壁との間の接合部にアール部が形成されたセラミックハニカム構造体を容易に得ることができる。」を、 「また、請求項14において、金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の前記周壁と前記隔壁との接合部に相当するスリット部に対して、前記周壁より前記中心部に向かって徐々にマスクを小さくずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことによって、前記周壁と前記隔壁との境界部分に相当するスリットをアール部とした金型とし、該金型のスリットにスラリーを通すことにより、隔壁と周壁との間の接合部にアール部が形成されたセラミックハニカム構造体を容易に得ることができる。」と訂正する。 (6)訂正事項f:特許明細書第6頁第9行乃至同頁第17行(特許公報第4頁左欄第27行乃至同頁同欄第36行)の「また、請求項15において、金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記隔壁補強部と前記隔壁との境界領域に相当するスリット部においては、前記隔壁補強部から前記中心部に向かって徐々にマスクを小さくずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことにより、前記隔壁補強部と前記隔壁との間の境界領域にテーパ部を形成可能で、このようにスリット部が形成された押し出し金型の前記スリット部を通過することにより、隔壁補強部を有するセラミックハニカム構造体を容易に得ることができる。」を、 「また、請求項15において、金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の前記隔壁補強部と前記隔壁との境界領域に相当するスリット部に対して、前記隔壁補強部から前記中心部に向かって徐々にマスクを小さくずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことにより、前記隔壁補強部と前記隔壁との間の境界領域に相当するスリットをテーパ部とした金型とし、該金型のスリットにスラリーを通すことにより、隔壁補強部を有するセラミックハニカム構造体を容易に得ることができる。」と訂正する。 (7)訂正事項g:特許明細書第6頁第18行乃至第7頁第1行(特許公報第4頁左欄第37行乃至同頁同欄第49行)の「また、請求項16において、金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、少なくとも前記周壁と前記隔壁との接合部に相当するスリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、メッキ液の循環が制限されることによって、メッキ厚が変化し、それにともなって、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型の前記スリット部を通過することにより、前記周壁と前記隔壁との間の接合部が補強されたセラミックハニカム構造体を容易に得ることができる。」を、 「また、請求項16において、金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の少なくとも前記周壁と前記隔壁との接合部に相当するスリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、メッキ液の循環が制限されることによって、メッキ厚が変化し、それにともなって、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型とし、該金型のスリット部にスラリーを通すことにより、前記周壁と前記隔壁との間の接合部が補強されたセラミックハニカム構造体を容易に得ることができる。」と訂正する。 (8)訂正事項h:特許明細書第7頁第2行乃至同頁第12行(特許公報第4頁左欄第50行乃至同頁右欄第12行)の「また、請求項17において、金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、少なくとも前記隔壁と前記隔壁補強部との境界領域に相当するスリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、メッキ液の循環が制限されることでメッキ厚が変化し、それにともなって、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型の前記スリット部を通過することにより、隔壁補強部が形成されたセラミックハニカム構造体を容易に得ることかできる。」を、 「また、請求項17において、金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の少なくとも前記隔壁と前記隔壁補強部との境界領域に相当するスリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、メッキ液の循環が制限されることでメッキ厚が変化し、それにともなって、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型とし、該金型のスリット部にスラリーを通すことにより、隔壁補強部が形成されたセラミックハニカム構造体を容易に得ることができる。」と訂正する。 2?2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項a乃至dは、請求項14乃至17の記載の不備な点を是正するためのものであり、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明に該当する。また訂正事項e乃至hは、上記請求項の訂正に伴って特許明細書の記載の整合性を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。 そして、いずれの訂正事項も、特許明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるから新規事項の追加に該当せず、また当該訂正によって実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 2?3.むすび したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第3項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.本件特許発明 平成13年6月25日付け訂正請求の訂正事項が認容できることは、上述のとおりである。 したがって、本件特許発明は、平成13年6月25日付け訂正請求書に添付した訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜17に記載された事項(以下「本件発明1」ないし「本件発明17」という)によって特定される下記のとおりのものである。 「【請求項1】互いに隣接する断面多角形の流路を形成する隔壁と、該隔壁の最外周に設けられ該隔壁を一体に保持する周壁とからなるセラミックハニカム構造体であり、前記隔壁の平均厚さTが0.05mm〜0.13mmであり、前記周壁の平均厚さが前記隔壁の平均厚さT(mm)よりも大であり、前記隔壁の平均厚さTと前記隔壁の周壁との平均接触幅w(mm)との関係が、 w>T かつ 0.7≧w≧-(T/4)+0.18の関係を満たすことを特徴とするセラミックハニカム構造体。 【請求項2】前記隔壁と前記周壁との接合部において、前記隔壁にはアール部が形成されることを特徴とする請求項1記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項3】前記アール部の平均半径が0.06〜0.30mmであることを特徴とする請求項2記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項4】前記ハニカム構造体の気孔率は、30%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項5】前記周壁から前記セラミックハニカム構造体の中心までの距離の1.2%〜15%だけ、前記周壁より、前記セラミックハニカム構造体の中心方向に伸びる領域において、平均厚さが0.1〜0.3mmであり、互いに隣接する断面多角形の流路を形成する隔壁補強部を有することを特徴とする請求項1記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項6】前記隔壁と前記隔壁補強部との境界領域には、テーパ部が形成されていることを特徴とする請求項5記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項7】前記テーパ部は、1つの流路幅の長さであることを特徴とする請求項6記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項8】前記テーパ部は、複数の流路幅の長さであることを特徴とする請求項6記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項9】前記周壁と前記隔壁補強部との間には、アール部が形成されていることを特徴とする請求項5記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項10】前記アール部の平均半径が0.06〜0.30mmであることを特徴とする請求項9記載のセラミック構造体。 【請求項11】前記ハニカム構造体の気孔率は、30%以上であることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項12】前記セラミック構造体の周壁の厚さが1.1mm以下であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項13】前記セラミックハニカム構造体は、流路方向に対して直角方向の断面形状が略円形形状をなし、前記隔壁補強部の前記周壁からの領域幅が全周にわたって、略均一であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項14】金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の前記周壁と前記隔壁との接合部に相当するスリット部に対して、前記周壁より前記中心部に向かって徐々にマスクをずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことによって、前記周壁と前記隔壁との境界部分に相当するスリットをアール部とした金型とし、該金型のスリットにスラリーを通すことにより、請求項2または3記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。 【請求項15】金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の前記隔壁補強部と前記隔壁との境界領域に相当する前記初期スリット部に対して、前記周壁から前記中心部に向かって徐々にマスクをずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことにより、前記隔壁補強部と前記隔壁との間の境界領域に相当するスリットをテーパ部とした金型とし、該金型のスリットにスラリーを通すことにより、請求項6記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。 【請求項16】金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の少なくとも前記周壁と前記隔壁との接合部に相当する前記初期スリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型とし、該金型のスリット部にスラリーを通すことにより、請求項2記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。 【請求項17】金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の少なくとも前記隔壁と前記隔壁補強部との境界領域に相当する前記初期スリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型とし、該金型のスリット部にスラリーを通すことにより、請求項6記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。」 4.本件発明1ないし13に対する取消理由 4-1.取消理由の概要 当審が通知した平成13年4月12日付け取消理由のうち、請求項1ないし13に関するものは 、次のとおりである。 (i)請求項1乃至4、12に係る発明について 引用例1の図示されたセラミックハニカム構造体も、これら発明の構成要件を満足するものと云えるから、これら発明は、引用例1に記載された発明であるか、引用例1に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができない。 (ii)請求項5乃至11、13に係る発明について 引用例2乃至7には、「セラミックハニカム構造体」の強度に係る設計的な事項に関する記載があるから、これら発明は、引用例1に記載の発明と引用例2乃至7に記載の設計上の周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4-2.引用例1とその記載内容 (1)引用例1:「SAE TECHNICAL PAPER SERIES 960557」Feb.26-29、1996年、第147〜156頁(訳文) (a)「材料と工程の開発 薄壁化により、逆に機械的強度は低下する。機械的強度向上のため工程改良はもちろん材料強度の向上のため種々試験を行った。構造体強度向上のためのコージェライトセラミックス材料の強度向上は、緻密化や気孔率の低下で達成された。図8は、A軸圧縮強度、壁厚、気孔率の関係を示したものである。A軸圧縮強度は、構造体の縦方向における試料の圧縮強度である。材料の緻密化は機械的強度を改善するが、重量増加による速熱性の低下や、気孔率の減少による触媒のコーティング性が低下する。従って、これらの特性のバランスをとり気孔率28%が適用されている。壁厚0.10mm(4mil)の構造体と従来の壁厚0.15mm(6mil)の特性の比較を表2に示す。図9は気孔率28%と35%のものの断面拡大写真を示す。機械的強度は本質的にはセル構造と材料強度で決まる。断面の周縁にセル変形が生じればアイソスタティック強度は急激に低下する。図10は、周縁でセル変形の有る構造体と無い構造体の写真を示したものである。周縁でのセル変形は、主として、成形工程で生じる。ハニカム構造は粘土を高精度な金型を押出して成形される。押出された薄い壁が静荷重と外壁から作用する圧力を支持出来なくなった時、セル変形が周縁に生じる。たとえ材料が緻密化されて強度向上しても、粘土体の強度に影響を及ぼさない緻密化は、セル変形の防止には寄与しない。一旦セル変形が生じると材料強度が向上したにもかかわらず、アイソスタティック強度は急減する。セル変形の防止は、開発上最も困難なものであった。周縁部のセル変形を効果的に防ぐ成形工程を確立した。これは、粘土体の強度向上のためその剛性を最適化するとともに外壁にかかる圧力を最小になるよう制御することにより達成することができた。図11は、工程変更前後のアイソスタティック強度の比較である。本開発工程は、壁厚0.15mm(6mil)と同等のアイソスタティック強度をもつ壁厚0.10mm(4mil)の構造体を可能にする。」(第150頁右欄乃至第152頁左欄) (b)図8には、6milと4milの400cpsi2構造体の「A軸圧縮強度と気孔率との関係図」が開示され、そこには4milの気孔率35%のデータが示されている。 (c)表2には、6mil/400cpi2と4mil/400cpi2の「セラミックハニカム構造体の特性」について、次のような具体的な特性が開示されている。 「 単位 6mil 4mil 壁厚 mm 0.15 0.10 セルピッチ mm 1.27 1.27 気孔率 % 35 28 嵩密度 g/cm3 0.43 0.32 開口率 % 75.0 83.4 幾何表面積 cm2/cm3 27.3 28.8」 (d)図10には、セラミックハニカム構造体の工程変更前と工程変更後の「周縁部のセル写真」が開示。 4-3.取消理由についての判断 (1)本件発明1について 引用例1は、「4mil/400cpi2のセラミックハニカム構造体」に関するものであり、その表2によれば、この4mil/400cpi2のセラミックハニカム構造体の隔壁厚さは「隔厚さ0.10mm」、「セルピッチ1.27mm」と記載されている。 一方、図10のセル写真が、4mil/400cpi2のセラミックハニカム構造体であることは明記がなく、仮に、4mil/400cpi2のセラミックハニカム構造体であるとして、隔壁の厚さを0.1mmとすると、写真のセルピッチはその約5倍であるから約0.5mmとなるはずであり、上記「表2」の「セルピッチ1.27mm」と大きく異なる。 したがって、引用例1の図10の写真は、セラミックハニカム構造体について、単に工程変更前と工程変更後の、周辺のセル変形の状況を撮影したものであるにすぎず、その被写体であるセラミックハニカム構造体は、そのセルピッチが、引用例1の「表2」に記載された4mil/400cpi2のセラミックハニカム構造体のセルピッチが明らかに異なる以上、これを4mil/400cpi2のセラミックハニカム構造体であると認定することができない。 したがって、図10のセル写真の隔壁の厚さを0.1mmとした場合に、周壁の平均厚さ及び平均接触幅が、本件発明1で規定する範囲内であったとしても、これをもって、本件発明1が引用例1に記載された発明とすることはできない。 (2)本件発明2ないし13について 本件発明2ないし13は、いずれも本件発明1を引用する発明であり、本件発明1が引用例1に記載された発明とすることはできない以上、本件発明2ないし13も引用例1に記載された発明とすることはできず、引用例1に引用例2ないし7を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものとも云えない。 5.異議申立てについて 5-1.申立人Aの異議申立て (1)申立理由の概要 申立人Aは甲第1号証を提出し、本件請求項1ないし4、12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、同号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1ないし4、12に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号ないし同条第2項に違反してなされたものであると主張している。 (2)当審の判断 申立人Aが提出した甲第1号証は、上記取消理由として通知した引用例1であるから、3-3.で検討したのと同じ理由により、請求項1ないし4、12に係る発明は、申立人Aが提出した甲第1号証に記載された発明とすることはできず、同号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも云えない。 5-2.申立人Bの異議申立て (1)申立理由の概要 申立人Bは甲第1ないし12を提出し、本件請求項1に係る発明は、甲第4号証の内容を参照すれば、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明であり、本件請求項2ないし17に係る発明は、甲第1ないし12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1ないし17に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号ないし同条第2項に違反してなされたものであると主張している。 (2)甲第1ないし3号証の記載内容 ア.甲第1号証:「SAE TECHNICAL PAPER SERIES 900614」1990年、第1〜9頁 ア-1.「薄壁担体を用いた触媒の暖機性能を評価するために、Table2に示されている4、5、6、8milの隔壁厚さを有する400cpi2の試験サンプルにより試験が実施された。」(第6頁左欄13〜17行) ア-2.Table2において、4milのセラミックハ二力ム構造体のサイズがD93mmであることが記載されている。 ア-3.「Fig.10は、5mil/400cpi2の部材を押し出し成形したときに変形した外周セル群を示す。」(第5頁右欄17〜19行) イ.甲第2号証:「SAE TECHNICAL PAPER SERIES 930943」1993年、第211〜220頁 イ-1.「自動車用途の5milの隔壁厚さを有する400cpi2のセラミックハ二力ム構造体」(第211頁右欄第4〜8行) イ-2.Table3において、5milのセラミックハ二力ム構造体のサイズがφ105.7mmであることが記載されている。 ウ.甲第3号証:「SAE TECHNICAL PAPER SERIES 940784」1994年、第123〜135頁 ウ-1.「隔壁厚さが0.11mm(4mil)でセル密度が930kcpsm(600cpsi)」(第124頁左欄第2〜5行) ウ-2.Table3にはセラミックハニカム構造体のサイズが直径102mmであることが記載されている。 (3)当審の判断 上記摘示した記載事項によれば、申立人Bが提出した甲第1ないし3号証には、4ないし5milの隔壁厚さを有し、93、105.7、102mmの直径を有する円筒状セラミックハニカム構造体が記載されていると云えるが、外周壁の厚さについての記載はない。 申立人Bが提出した甲第4号証には、甲第1ないし3号証に記載される各円筒状セラミックハニカム構造体の周壁の厚さを、隔壁厚さと同じ場合(ケース1)、隔壁厚さの2倍の場合(ケース2)、当該特許の実施例と同じ0.65mmの場合(ケース3)について、CAD作図によるw値算出結果を示しているが、甲第1ないし3号証に記載される各円筒状セラミックハニカム構造体の周壁の厚さが、ケース2ないしケース3に該当すると認めるに足る証拠が見当たらない以上、本件発明1が甲第1ないし3号証に記載された発明と云うことはできない。 さらに、本件発明2ないし13は、いずれも本件発明1を引用する発明であり、本件発明1が甲第1ないし3号証に記載された発明とすることはできない以上、本件発明2ないし13も甲第1ないし3号証に記載された発明とすることはできず、甲第1ないし3号証記載の発明に申立人Bが提出した甲各号証の記載を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものとも云えない。 6.本件発明14ないし17について 本件発明14ないし17に係る特許を取り消すことができないことは、平成14年7月23日付け異議の決定における理由で述べられているとおりである。 7.まとめ 以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した理由及び証拠によっては請求項1ないし17に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 セラミックハニカム構造体およびその製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 互いに隣接する断面多角形の流路を形成する隔壁と、 該隔壁の最外周に設けられ該隔壁を一体に保持する周壁とからなるセラミックハニカム構造体であり、 前記隔壁の平均厚さTが0.05mm〜0.13mmであり、 前記周壁の平均厚さが前記隔壁の平均厚さT(mm)よりも大であり、 前記隔壁の平均厚さTと前記隔壁の周壁との平均接触幅w(mm)との関係が、 w>T かつ 0.7≧w≧-(T/4)+0.18 の関係を満たすことを特徴とするセラミックハニカム構造体。 【請求項2】 前記隔壁と前記周壁との接合部において、前記隔壁にはアール部が形成されることを特徴とする請求項1記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項3】 前記アール部の平均半径が0.06〜0.30mmであることを特徴とする請求項2記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項4】 前記ハニカム構造体の気孔率は、30%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項5】 前記周壁から前記セラミックハニカム構造体の中心までの距離の1.2%〜15%だけ、前記周壁より、前記セラミックハニカム構造体の中心方向に伸びる領域において、平均厚さが0.1〜0.3mmであり、互いに隣接する断面多角形の流路を形成する隔壁補強部を有することを特徴とする請求項1記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項6】 前記隔壁と前記隔壁補強部との境界領域には、テーパ部が形成されていることを特徴とする請求項5記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項7】 前記テーパ部は、1つの流路幅の長さであることを特徴とする請求項6記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項8】 前記テーパ部は、複数の流路幅の長さであることを特徴とする請求項6記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項9】 前記周壁と前記隔壁補強部との間には、アール部が形成されていることを特徴とする請求項5記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項10】 前記アール部の平均半径が0.06〜0.30mmであることを特徴とする請求項9記載のセラミック構造体。 【請求項11】 前記ハニカム構造体の気孔率は、30%以上であることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項12】 前記セラミック構造体の周壁の厚さが1.1mm以下であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項13】 前記セラミックハニカム構造体は、流路方向に対して直角方向の断面形状が略円形形状をなし、前記隔壁補強部の前記周壁からの領域幅が全周にわたって、略均一であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項記載のセラミックハニカム構造体。 【請求項14】 金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の前記周壁と前記隔壁との接合部に相当するスリット部に対して、前記周壁より前記中心部に向かって徐々にマスクをずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことによって、前記周壁と前記隔壁との境界部分に相当するスリットをアール部とした金型とし、該金型のスリットにスラリーを通すことにより、請求項2または3記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。 【請求項15】 金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の前記隔壁補強部と前記隔壁との境界領域に相当する前記初期スリット部に対して、前記周壁から前記中心部に向かって徐々にマスクをずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことにより、前記隔壁補強部と前記隔壁との間の境界領域に相当するスリットをテーパ部とした金型とし、該金型のスリットにスラリーを通すことにより、請求項6記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。 【請求項16】 金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の少なくとも前記周壁と前記隔壁との接合部に相当する前記初期スリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型とし、該金型のスリット部にスラリーを通すことにより、請求項2記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。 【請求項17】 金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の少なくとも前記隔壁と前記隔壁補強部との境界領域に相当する前記初期スリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型とし、該金型のスリット部にスラリーを通すことにより、請求項6記載のセラミックハニカム構造体を得ることを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。 【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、セラミックハニカム構造体(以下単にハニカム構造体と称す)およびその製造方法に関するものであって、特に、内燃機関用触媒担体や濾過器等に用いるセラミックハニカム構造体およびその製造方法に関するものである。 背景技術 例えば、内燃機関用触媒担体としてのハニカム構造体としては、近年、その内燃機関の性能向上に伴い、低い圧力損失が要求されるとともに、環境問題等から高い浄化性能が要求されるようになってきている。 従来では、特開平7-39761号公報にみられるように、開口率および嵩密度等を所定の値とすることによって、ハニカム構造体を構成する隔壁厚さを薄く維持しつつ、圧縮強度を維持させることが試みられてきている。 しかしながら、従来の構成においてもまた、欠けのないハニカム構造体を得ることが困難であった。 そこで、本願発明は、上記課題を鑑みることによって得られたものであり、隔壁厚さが薄いハニカム構造体であっても、欠けの発生が抑制されたハニカム構造体を得ることを特徴とするものである。 発明の開示 はじめに、我々発明者らは、隔壁厚さが0.13mm以下の場合におけるハニカム構造体においての欠けのメカニズムを鋭意究明した。 その結果、以下の事項を見いだした。 即ち、従来のハニカム構造体においては、例えば、押し出し金型より押し出されたハニカム担体を乾燥時において、ハンドリング(乾燥機からの取出作業時における乾燥機の出口でのハニカム構造体のひっかけ,乾燥機ベルト上よりひきずりながらのハニカム構造体の取出し等)や移送中の引きずり、また、端面の切断時の保持状態、および焼成してハニカム構造体とする時におけるハニカム担体の焼成炉への出し入れの際に、外部より力が加わる。 そして、この時、ハニカム構造体内部では、隔壁及び周壁に対して内壁に対して内側から外側にかかる力が生じ、ハニカム構造体の周壁に対して点接触的に力が加わる場合がある。このような場合には、従来のハニカム構造体では、周壁まわりがミクロ的に欠けることで力を分散し、外部からの衝撃に耐える構造をなしていた。 しかしながら、図1に示されるような壁厚が非常に薄いハニカム構造体80においては、隔壁及び周壁に対して内側から外側にかかる力が生じた場合、形成された周壁のミクロ的な欠けが原因で、大きな縁欠け82を誘因させてしまうことを見いだしたのである。 これは、従来のような隔壁が厚い場合には、外周壁を引き剥がすような力に対して、周壁と隔壁との接触幅が大きく十分な接合強度によって、縁欠けの発生を抑制している。それに対して、隔壁が非常に薄い場合、特に隔壁が0.13mm以下の場合には、周壁と隔壁との接触幅が小さいために、ハニカム構造体の内部から外部に加わる力に対して非常に弱くなってしまっているために、縁欠けが発生するのであることを見いだしたのである。 ここで、隔壁の厚さと縁欠けの発生状態との関係を図2に示した。 図2からも明らかなように、隔壁厚さが0.13mm以下となると、縁欠けの発生が急激に増加することがわかる。 そこで本願発明の請求項1においては、隔壁の平均厚さが0.05mm〜0.13mmを有するハニカム構造体においては、 周壁の平均厚さが前記隔壁の平均厚さT(mm)よりも大であり、 隔壁の平均厚さTと隔壁の周壁との平均接触幅w(mm)との関係が、 w>T かつ 0.7≧w≧-(T/4)+0.18 の関係を満たす平均接触幅mとするセラミックハニカム構造体とする。 このような構成により、周壁と隔壁との接触幅を十分大きくし、ハニカム構造体の内側から外側に向かう力に対して非常に強くでき、ひいては縁欠けの発生を抑制することができる。 また、請求項2によれば、前記隔壁の前記周壁との接合部において、前記隔壁にはアール部(rounded corner)を形成することが好ましい。 このように、アール部を形成することによって、圧力損失を低下させることなく接触面積を大きくすることができ、さらに欠けの中でも特に、縁欠けの発生を抑制させることができる。 これは、従来のハニカム構造体においては、このハニカム構造体の流路に対して垂直な方向に沿って、内側から外側に力がかかる場合では、周壁と隔壁に引っ張り力が発生し、周壁と隔壁との接合部において、応力集中し、破損しやすい。しかしながら、アール部を形成することによって、応力の集中を抑制させることができ、縁欠けを抑制することができる。 また、アール部を形成することによって、縁欠けを単に抑制することができるだけでなく、隔壁、周壁を全体に広くすることができるようなセラミックハニカム構造体の全体の重量を増加させることなく、周壁と隔壁との欠けを抑制させることができる。 さらにまた、外側から内側方向に力が働くことによって、欠けが発生する場合にも、上述と同様に周壁を支える隔壁に折曲力が発生し隔壁を発生しやすい。しかしながら、アール部を形成した場合には、接触部分のアール部形状と合わせて擬似的なドーム形状を作るため外力を支えやすくなって欠けの発生を抑制することができる。 また、請求項3において、このアール部の平均半径は、0.06〜0.30mmであることがより欠けの抑制を行うことができる。 また、請求項4において、このハニカム構造体の気孔率は、30%より大であることが好ましい。 従来においては、特公平4-70053号のように、薄壁のハニカム構造体を得ようとした場合には、隔壁自身の強度を向上させるため、気孔率が小となる。 しかしながら、気孔率が30%より小さい場合には、セラミックハニカム構造体に対する触媒の担持量を十分に確保することができない。 しかしながら、請求項4を採用することによって、十分な触媒の担持量を維持しながら、欠けの発生を抑制されたセラミックハニカム構造体を得ることができる。 請求項5においては、前記周壁より、前記周壁から前記セラミックハニカム構造体の中心までの距離の1.2%〜15%だけ前記セラミックハニカム構造体の中心方向に伸びる領域において、平均厚さが0.1〜0.3mmである隔壁補強部を設けることが好ましい。このような構成とすることによって、さらに縁欠けの発生を抑制できるばかりでなく、乾燥前の成形体の保形性を高めることができる。 また、請求項6において、前記隔壁と前記隔壁補強部との境界領域には、テーパ部を形成することが好ましい。このような構成とすることによって、厚さの異なる隔壁と隔壁補強部とであっても、冷熱サイクルに対する熱膨張の差を緩和させることができ、クラックの発生を抑制することができる。 また、請求項9において、隔壁補強部の形成だけでなく、前記周壁と前記隔壁補強部との間に、アール部を形成してもよい。このような構成とすることによって、さらなる縁欠けの発生の抑制を行うことができる。 この理由は、上述した通りである。 また、請求項10において、このアール部の平均半径は、0.06mm〜0.30mmであることが好ましい。 また、請求項11において、このハニカム構造体の気孔率は、30%より大であることが好ましい。 この理由は、上述した通りである。 また、請求項12において、セラミック構造体の周壁の厚さは、1.1mm以下であることが好ましい。 周壁の厚さが1.1mmよりも厚くなると、良好な耐熱衝撃性を有するハニカム構造体を得ることができないからである。 また、請求項13において、前記隔壁補強部の前記周壁からの領域幅を略均一とすることが好ましい。 このような構成とすることによって、圧力損失の全体に対するバランスを均等とすることができる。 また、請求項14において、金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の前記周壁と前記隔壁との接合部に相当するスリット部に対して、前記周壁より前記中心部に向かって徐々にマスクを小さくずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことによって、前記周壁と前記隔壁との境界部分に相当するスリットをアール部とした金型とし、該金型のスリットにスラリーを通すことにより、隔壁と周壁との間の接合部にアール部が形成されたセラミックハニカム構造体を容易に得ることができる。 また、請求項15において、金型に所定幅よりも幅の小さい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の前記隔壁補強部と前記隔壁との境界領域に相当するスリット部に対して、前記隔壁補強部から前記中心部に向かって徐々にマスクを小さくずらしながら、研磨材を前記初期スリット部に通すことにより、前記隔壁補強部と前記隔壁との間の境界領域に相当するスリットをテーパ部とした金型とし、該金型のスリットにスラリーを通すことにより、隔壁補強部を有するセラミックハニカム構造体を容易に得ることができる。 また、請求項16において、金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の少なくとも前記周壁と前記隔壁との接合部に相当するスリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、メッキ液の循環が制限されることによって、メッキ厚が変化し、それにともなって、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型とし、該金型のスリット部にスラリーを通すことにより、前記周壁と前記隔壁との間の接合部が補強されたセラミックハニカム構造体を容易に得ることができる。 また、請求項17において、金型に所定幅よりも幅の大きい初期スリット部を形成した後、前記ハニカム構造体の少なくとも前記隔壁と前記隔壁補強部との境界領域に相当するスリット部とマスクとの間に空間部を設けた状態で前記金型の前記初期スリット部に対してメッキ液を通すことによって、前記初期スリット部表面にメッキ層を形成させ、所望の幅を有する前記スリット部を形成させるとともに、マスクとの間に空間部が設けられたスリット部分においては、メッキ液の循環が制限されることでメッキ厚が変化し、それにともなって、スリット幅が徐々に変化した押し出し金型とし、該金型のスリット部にスラリーを通すことにより、隔壁補強部が形成されたセラミックハニカム構造体を容易に得ることができる。 【図面の簡単な説明】 図1は、従来のハニカム構造体の縁欠けを説明する説明図。 図2は、隔壁厚さに対する縁欠け発生率の関係を示す関係図。 図3Aは第1の形態のハニカム構造体の全体図を示し、図3Bは第1の形態のハニカム構造体の端面一部拡大図。 図4は、隔壁厚さと平均接触幅とを変化させた時の縁欠け発生の分布を示す関係図。 図5は、アール部の平均半径と縁欠け発生率との関係を示す関係図。 図6は、アール部を形成した場合の効果を示す説明図。 図7は、気孔率と触媒担持量との関係を示す関係図。 図8は、周壁厚さと耐熱衝撃性との関係を示す関係図。 図9は、第2の形態のハニカム構造体の端面一部拡大図。 図10は、隔壁補強部の幅に対する縁欠け発生率の関係を示す関係図。 図11は、隔壁補強部の幅を説明する説明図。 図12は、隔壁補強部の幅に対する圧力損失の関係を示す関係図。 図13〜15は、本願発明の他の実施の形態を示す説明図。 図16は、本願発明の金型の作成方法を説明する説明図。 図17は、本願発明の金型の模式図。 図18は、本願発明の金型の作成方法を説明する説明図。 【発明を実施する最良の形態】 〔第1の形態〕 本願発明のハニカム構造体の構成を図3A,3Bに示す。図3Aは、本願発明のハニカム構造体1の全体図であり、図3Bは、本願発明のハニカム構造体1の端面一部拡大図である。 本願発明のハニカム構造体1は、円筒形状をなすとともに、カオリン,タルク,アルミナ等を焼成することによって得られるコージェライト材料よりなる。 また、後述するように、隔壁3および周壁5とが押し出し成形により一体に形成された、気孔率が35%のハニカム構造体である。 このハニカム構造体は、隔壁3と、この隔壁3の周囲を覆う周壁5から構成されている。 この隔壁3は、互いに隣接する断面四角形状の流路7を形成するとともに、平均厚さ0.104mmよりなる。 また周壁5は、隔壁3と一体に形成され、外周より隔壁3を一体保持するものであり、平均厚さは0.65mmである。 特に、本形態においては、隔壁3と周壁5との接合部9において、平均半径が0.1mmのアール部を形成することによって、隔壁3の接合部9における接触幅wを隔壁3の平均厚さよりも大きい0.3mm以上としている点を特徴としている。 このように、隔壁3の接合部9の接触幅wを隔壁3の平均厚さよりも大きくすることによって、隔壁3と周壁5との接触面積を大きくしているのである。 そのため、ハニカム構造体の内部から外部方向に加わる力に対して強くすることができるので、縁欠けの発生を抑制されたハニカム構造体を得ることができるのである。 さらに、第1の形態のハニカム構造体1では、単に隔壁3と周壁5との接触幅wを大きくしたのみの構成であるために、ハニカム構造体自身の圧力損失を小さく抑えることができるとともに、熱容量もほとんど増加させることがないので、触媒を担持した場合においても、良好な早期活性を得ることができる。 さらにまた、本形態のハニカム構造体1においては、気孔率が35%であり、ハニカム構造体1の触媒担持性を確保しながら、欠けの発生を抑制することができる。 次に、上述に述べたハニカム構造体1の製造方法について述べる。 はじめに、まずカオリン,タルクおよびアルミナ等をそれぞれ分級することによって、適当な粒度分布とする。 そして、平均粒径が5μmのカオリンと0.5μmのカオリンを計44〜50%,平均粒径が8μmのタルク35〜41%,平均粒径が1.2μmの水酸化アルミニウム13〜19%および残部アルミナを配合して、焼成後、コーディェライトの化学組成となるようにする。これら原料は、天然産出物を使用することがほとんどであり、当然、産地によってカオリン,タルク,アルミナの組成物にずれが生じるため、原料組成はその都度分析してコーディェライト化学組成となるように配合比を変化させる。 そして、これらを十分に混ぜ合わせ、均一にした後、水、バインダー等を加えて混練し粘土を作成する。 この粘土をスクリュー成形機により、あるいは他の成形機を用いて棒状に成形した後、プランジャー成形機により押し出し型を通して焼成前のハニカム構造体であるハニカム担体を成形する。 この成形されたハニカム担体を乾燥機に入れ均一に加熱して水分を蒸発させたのち所定の大きさに切りそろえて連続炉に入れ1350℃〜1450℃で5時間焼成することで本願発明のハニカム構造体1を得ることができる。 このハニカム構造体1は、直径103mm,長さ150mmで400メッシュの流路7を形成する気孔率35%である隔壁3が形成されている。 次に、ハニカム構造体1の接触幅の最適な範囲を測定した結果を示す。 図4には、それぞれの隔壁3の厚さTと平均接触幅wとの関係を示した。 そして、縁欠けの発生率として、各々70個の焼成前のハニカム担体を焼成して得られたものの中から縁欠けが発生率が5%以下の条件の時を○とし、5%より大となった場合を×として示した。 尚、この縁欠け発生率の測定方法としては、担体に周方向あるいは、長さ方向に10mm以上の欠損が発生したものを縁欠け発生として判別カウントした。 この図より明らかなように、図4の○と×との境界を直線状に結ぶことによって、図4に示すような直線を得ることができた。 そして、図4より、最適な隔壁3と周壁5との平均接触幅は、図4に示す直線より上であることが望ましいことが理解された。 そして、図4より、 w≧-(T/4)+0.18 の条件を得ることができた。 ただし、図2において、常に隔壁厚さは、平均接触幅よりも大であるので、 w>T の条件も満たさなければならない。 また、隔壁に対して、平均接触幅Wを大きくすれば、確かに縁欠け発生率を低減することはできるが、0.7mm以上の平均接触幅の増加は、縁欠け発生率の低減効果がほとんどなく、それに対して、ハニカム構造体の重量増という問題のみが残ってしまう。そのため、接触幅wとしては、0.7mm以下が好ましい。 次に、図5に、平均半径と縁欠け率の発生率との関係を示した。 この時の縁欠け発生率は、図4の縁欠け発生率と同様の方法にて求めた。 尚、この時の隔壁の厚さは0.104mm,周壁の厚さは0.65mm,気孔率35%を有するハニカム構造体において、それぞれアール部の半径のみを変化させた場合の縁欠け発生率を求めた。 この図より明らかなように、アール部の平均半径を0.06mm以上とすることにより、縁欠け発生率を十分に低減させることができる。そのため、アール部の平均半径は、0.06mm以上が好ましい。 しかしながら、図5からは、アール部の平均半径を大きくすれば、確かに縁欠け発生率を低減することはできるが、0.30mmより大きいアール部の平均半径の場合には、縁欠け発生率の低減効果がほとんどなく、それに対して、ハニカム構造体の重量増という問題のみが残ってしまう。そのため、アール部の平均半径としては、0.06〜0.30mmが好ましい。 そして、このようなアール部を形成することによって、本願発明の課題であるハニカム構造体の縁欠けを防止することができる。 また、ハニカム構造体は、一般的に、外側から内側方向に力が働くことによって、欠けが発生する場合にも、上述と同様に周壁を支える隔壁に折曲力が発生し隔壁を発生しやすい。しかしながら、図6にも示したように、アール部を形成することによって、接触部分のアール部形状と合わせて、疑似的なドーム形状Dを作るため外力を支えやすくなって欠けの発生を抑制することができる。 次に図7に、ハニカム構造体の気孔率と触媒担持量との関係を示す。 この時のハニカム構造体としては、隔壁厚さ0.104mm,周壁厚さ0.65mmとした。 図7に示すように、ハニカム構造体の気孔率を大きくすると、触媒の担持量もまた、多くすることができ、特に、気孔率30%以上とすることによって、所望の触媒担持量である14wt%を得ることができた。 次に、図8において、周壁の厚さと耐熱衝撃性との関係を示す。 ここで、耐衝撃性としては、設定温度にて1時間加熱後、1分以内に室温にさらす。そして、そのまま室温大気中で冷却し、割れの発生の有無を確認した。 このような条件により測定し、その温度差が650℃以上のものを耐衝撃性を有するものと判断した。 また、ハニカム構造体としては、隔壁厚さを0.104mm、気孔率35%とした。 650℃以上の耐熱衝撃性を有することによって、エンジンさらの排気ガス及び生ガスによる急加熱,急冷に対する熱応力破損を防止することができる。 図8より、耐衝撃性を有するものは、周壁が1.1mm以下のものであることが理解できる。 これは、周壁が1.1mmよりも大であると、冷熱サイクルを受けることによって、周壁の中と表面との温度差が生じる。そのため、周壁の応力歪みが大きくなり、耐衝撃性を有することができなくなるためである。 〔第2の実施の形態〕 次に、本願発明の第2の形態について説明する。 第2の形態においては、第1の形態のように、単に隔壁3と周壁5との接合部9の接触幅wのみにおいて、隔壁3の厚さより大とするのではなく、隔壁3の厚さを一定領域において、大きくすることによって、隔壁3と周壁5との接触面積を大きくすることを特徴とする。 以下第2の実施の形態について説明する。ここで、同一構造のものには同一符号を付し、第1の形態と異なる構成の部分のみを以下説明する。 第2の形態のハニカム構造体10の端面一部拡大図を図9に示す。 第2の形態のハニカム構造体10は、流路方向に対して直角方向の断面形状が略円形形状をなしている。 そして、特にこの第2の形態においては、周壁3より、ハニカム構造体の中心方向に2セル分だけハニカム構造体の中心方向に伸びる領域において、隔壁3の平均厚さよりも大である厚さ0.2mmの隔壁補強部12が形成されている。さらに、この隔壁補強部12と隔壁3との間の領域幅である境界領域Aが全周にわたって、略均一となっている。 また、この隔壁3と隔壁補強部12との境界領域Aには、1セル内において形成されたテーパ部14により、連続的に一体に形成されている。 また、周壁5と隔壁補強部12との接合部分においては、第1の形態のハニカム構造体のように、平均半径が0.1mmのアール部が形成されている。 以上のような第2の形態のハニカム構造体とすることによって、以下のような作用効果を得ることができる。 即ち、隔壁補強部12によって、隔壁3と周壁5との接触面積を大きく確保することができ、ハニカム構造体の内部から外部に加わる力に対して強くすることができるので、縁欠けの発生を抑制されたハニカム構造体を得ることができる。 また、隔壁補強部12を新たに形成したので、第1の形態のハニカム構造体と比して、さらに縁欠けの発生を抑制することができる。 さらに、乾燥前の成形したハニカム構造体の保形性を向上させ、寸法精度の保持性を向上させることができる。 さらにまた、隔壁3と隔壁補強部12との境界領域にはテーパ部14を設けたので、例えば、ハニカム構造体を内燃機関用の触媒担体等に用いた場合、ハニカム構造体が内燃機関の排気ガス等により高熱を受け、その際に、双方の厚さの相違に起因する熱膨張によるクラック発生が生じるが、このテーパ部24で熱膨張によるクラックの発生を抑制させることができる。 さらにまた、厚さが非常に薄い隔壁3と、この隔壁3よりも厚さを大きくした隔壁補強部12とを連続一体的に成形する際に生ずる粘土の流速の変化に起因する隔壁のヨレや歪みの発生もまた、テーパ部14を介して隔壁3と隔壁補強部12とを連続させることによって、テーパ部14が流速の変化を緩和させ、隔壁3のヨレや歪みの発生もまた抑制させることができる。 また、テーパ部14は1つの流路程度の範囲に設けておけば成形時の粘土の流速が緩和されて隔壁の歪みの発生を抑制させることができる。 この第2の実施の形態においては、隔壁補強部の幅を周壁5からハニカム構造体の中心部までの距離の2〜3%にしてテーパ部14を設けてもよい。 さらには、複数の流路の範囲にわたってテーパが形成されていてもよい。複数の流路の範囲にわたってテーパを形成することにより、さらに流速を均一化することができる。 また、周壁5と隔壁補強部12との接合部分に、アール部を形成することにより、さらに外周壁とセル板の接触面積を増やし、縁欠けを起こしにくくしている。 ここで、隔壁補強部12と周壁との接触幅wの大きさは、開口部一辺の長さ以上にするとそのセルの有効断面積を大きく損なうことになるため好ましくない。 次に、隔壁補強部12の長さと縁欠けの発生率との関係を図10に示す。 図10においては、隔壁補強部12の厚さを0.15mmに固定するとともに、隔壁の厚さ0.104mm,アール部の半径を0.1mmとし、さらに気孔率35%のハニカム構造体を用いた。 また、隔壁補強部12の幅としては、図11に示す如く、周壁5からハニカム構造体10の中心までの距離(L)における隔壁補強部12の幅(1)の占める割合で示した。 その結果、図10より明らかなように、隔壁補強部12の幅(1)が周壁5からハニカム構造体10の中心までの距離(L)の1.2%以上とすることにより、急激に縁欠けの発生率を抑制することができることが分かる。 また、確かに隔壁補強部12の幅(1)を広くすればする程、縁欠けの発生率を抑制することはできるが、ハニカム構造体の圧力損失が大きくなってしまい、隔壁補強部12の幅(1)は必要以上に大きくするこはできない。 図12に、隔壁補強部22の幅に対する圧力損失の関係を示した。 この時、使用したハニカム構造体は、隔壁補強部の厚さを0.3mm,隔壁の厚さを0.104mm,アール部の半径を0.1mm,気孔率を35%,さらに、400メッシュで直径が103mmのものを使用した。 また、内燃機関の回転数を4000rpmとした。 また、隔壁補強部の幅は、図11に示されるように、周壁5からハニカム構造体10の中心までの距離(L)における隔壁補強部12の幅(1)の占める割合で示した。 図12より明らかなように、隔壁補強部12の幅(1)が周壁5からハニカム構造体の中心までの距離(L)に対して15%以上とする場合には、圧力損失が7.8kPa以上となってしまう。 ここで、圧力損失が7.8kPa以上であると内燃機関自体の出力が急激に低下するという問題が生じる。 以上より、図10および図12より、隔壁補強部の幅としては、周壁5からハニカム構造体の中心までの距離に対して1.2%から15%とすることが好ましいことが分かる。 ところで、上述の如く、第1および第2の形態に示すハニカム構造体は、押し出し金型に形成されるスリット部をスラリーが通過することによって、形状が決定される。 図13及び図14のようなハニカム構造体20,30の流路形状でもよい。 即ち、流路22,32の断面形状が断面六角形状であっても、本願発明の作用・効果を達成することができる。 また、この時、隔壁厚さ(T)0.15mm,平均接触幅(w)0.25mmであるが、図14のように隔壁補強部31(厚さt)を含めた構造をとることもできる。 さらにまた、本願発明における流路は、図15に示されるような互いに隣接する流路に連通部42や、周壁44の一部が欠けた欠損部46を有するハニカム構造体40であってもよい。 次に、第1および第2の形態に示されるハニカム構造体1,10を得るための金型の製造方法について述べる。 隔壁と周壁とを有し、特に、本願発明の如く、接触部にアール部が形成されていたり、または、隔壁補強部が形成されたハニカム構造体を得るための金型の製造方法としては、以下の2つの方法が好ましい。 即ち、研磨用粘土をスリット部分に通すことによって、所望幅のスリット幅とする方法およびメッキ等の表面処理を行うことによって、所望幅のスリット幅とする方法の2つの方法である。 ここで、第1の方法を図16を用いて詳細に説明する。 第1の方法では、あらかじめ、金型50の隔壁,隔壁補強部等が形成される箇所に相当する金型のスリット領域に、所望の厚さよりも小なる厚さが形成されるだけの初期スリット部52を、例えば、研削砥石,放電加工等により形成する。 その後、図16のように境界部よりも僅かに内側になる部分をマスク54を施した状態で図示しない研磨用粘土をスリット部56に通す。 尚、この研磨用粘土は、高い粘性を持った樹脂の中に研磨粉を混合したものである。 その後、さらにマスクする部分を1つのスリット部の1/2〜1/4づつ図16に記された矢印αの方向に少しずつ小さくずらす毎に、研磨用粘土を初期スリット部52および既にマスクされていない流路56に通し、徐々に初期スリット部52およびスリット部56のスリット幅を大きくしていく。 このような方法によると、当初よりマスクがなされないスリット部程、大きな幅のスリットに形成され、後の工程においてマスクがとり除かれたスリット部程、小さな幅のスリット部が形成される。そして、このスリット幅の変化は、マスクが1つのスリット部の1/2〜1/4ずつわずかにマスクをずらすことによって、図17に示されるような連続して変化するスリット幅を有するスリット部58を有する金型60を得ることができる。 そして、さらに、これを隔壁3と隔壁補強部12の境界領域Aおよび隔壁補強部12と周壁5の接触部分に対応するスリット部に施し、最後にスリット部の全面にわたって、研磨用粘土をスリット部52,56に通すことによって、所望の幅および形状を有するスリット部としていく。 この加工方法では金型の周壁と隔壁補強部との境界部分に相当するスリット部を先に加工し、隔壁3と隔壁補強部12との境界領域Aに相当するスリット部は後で加工した。 このようにして得られた金型によれば、第1および第2の形態のようなアール部やテーパ部14を有するハニカム構造体1,10に対応する金型を容易に得ることができる。 また、ほぼ同一の研磨用粘土によって、スリット部を研磨するので、テーパ形状が形成されたスリット部における内部の表面粗さをほぼ均一の表面粗さとすることができ、隔壁3に相当するスリット部と隔壁補強部12に相当するスリット部との粘土の流速の差も小さくすることができる。 次に、第2の方法であるメッキ等の表面処理を行うことによって所望の形状の金型を得る方法を図18を用いて説明する。 図18のように周壁に相当するスリット部72aから隔壁補強部に相当するスリット部分72bに対してマスクであるテフロンテープ74によりマスキングをした状態で表面処理を施す。 その際、隔壁に相当するスリット部分と隔壁補強部に相当するスリット部分との境界領域に相当する部分76aにおいては、テフロンテープ74との間に空間部78を設ける。 その後、図示しないメッキ液をスリット部76a,76bに通過させる。 このメッキ液の通過によって、メッキ液が通過されたスリット部76bのみに、図示しないメッキ層が形成され、このメッキ層の形成によって、スリット部76bの幅が狭くなる。 そして、テフロンテープ74との間に空間部78を設けられたスリット部76aにおいては、空間部78がメッキ液の流入に対する邪魔板的存在になり、メッキ液が十分に回らない。 そのため、得られるスリット幅としては、テフロンテープ74の空間部78に相当するスリット部76aの幅が、テフロンテープ74によって覆われないスリット部76bの幅に対して、徐々に大とすることができる金型を得ることができる。 また、周壁と隔壁補強部との間の接触部に相当するスリット部においてもテフロンテープ74との間に空間部78を設けることによって、同様にスリット幅が徐々に小となる金型を得ることができる。 尚、この加工方法では外周補強セルと内部セルの境界を含む表面処理は先に行い、外周壁と外周セルの境界を含む表面処理は後から処理する。 また、表面処理層の面荒さと地金の面荒さを均一にするために、表面処理が終わった後で全体に対して均一に研磨用粘土を各スリット部に通すことが望ましい。 また、上記実施の形態においては、マスクとしてテフロンテープを採用したが、上記実施の形態においては、マスクはテフロンテープに限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレン系,塩化ビニル系等でもよい。 なお、これら2つの方法は、前者は型仕上げの時間が長時間必要となるが、型寿命も長いため大量生産向きであり、後者は型製作が短時間である代わりに型寿命は短くなるので少量試作向きである。 以上述べたように本願発明は非常に薄い隔壁であっても、縁欠けの発生を十分に抑制することができるハニカム構造体を得ることができるものである。 上記実施の形態においては、ハニカム構造体の流路が断面四角形状のものを採用したが、本願発明においては、流路の断面形状は、断面四角形状に限定されるものではない。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2002-07-23 |
出願番号 | 特願平10-507820 |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YA
(C04B)
P 1 651・ 121- YA (C04B) P 1 651・ 113- YA (C04B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 米田 健志 |
特許庁審判長 |
石井 良夫 |
特許庁審判官 |
金 公彦 大黒 浩之 西村 和美 野田 直人 |
登録日 | 2000-04-28 |
登録番号 | 特許第3060539号(P3060539) |
権利者 | 株式会社デンソー |
発明の名称 | セラミックハニカム構造体およびその製造方法 |
代理人 | 矢作 和行 |
代理人 | 加藤 大登 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 渡邉 一平 |
代理人 | 矢作 和行 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |
代理人 | 加藤 大登 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |