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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 A61K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 A61K |
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管理番号 | 1084804 |
異議申立番号 | 異議1999-72541 |
総通号数 | 47 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-11-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-07-06 |
確定日 | 2003-08-13 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2842453号「生体内に注入可能な安定な微小泡懸濁液」の請求項1〜18に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2842453号の請求項1〜18に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第2842453号は、平成3年4月2日に特許出願(特願平3-506829号、優先件主張1990年4月2日、EP)され、平成10年10月23日に特許権の設定の登録がされた後、2件の特許異議申立てがされ、当審による2度目の取消理由通知の指定期間内である平成15年5月16日に明細書の訂正請求がされたものである。 2.訂正請求について (1)訂正の内容 訂正事項a 特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の 「生体の血流および体腔の超音波検査のために有用な生理的に許容される水性担体相中の気液界面により囲まれている空気又は気体の微小泡の注射可能な懸濁液であって、約0.01〜約20重量%の溶解した又は分散した界面活性剤を含んで成り、該界面活性剤の少なくとも1種は少なくとも部分的にラメラ形又は積層形において懸濁夜中に存在する皮膜形成性飽和リン脂質であることを特徴とする懸濁液。」 を 「生体の血流および体腔の超音波検査のために有用である、生理学的に許容される水性液体担体中の界面活性剤と液体の分子を含む一時的な膜により囲まれている空気又は気体の微小泡の注射可能な懸濁液であって、該懸濁液は、約0.01〜約20重量%の溶解した又は分散した界面活性剤を含んでおり、該界面活性剤の少なくとも1種は少なくとも部分的にラメラ形または積層形において懸濁液中に存在する皮膜形成性飽和リン脂質であって、その内部に空気または気体の微小胞を含まないリポソ一ムを形成していることを特徴とする懸濁液。」 と訂正する。 訂正事項b 特許明細書の特許請求の範囲の請求項8の 「ポリオールと供に、脂肪酸、脂肪酸のエステルおよびエーテル並びにアルコールから選択された非積層界面活性剤を50重量%まで含んで成る、請求項1〜7のいずれか1項に記載の懸濁液。」 を 「ポリオールと共に、脂肪酸、脂肪酸のエステルおよびエーテル並びにアルコールから選択された非積層界面活性剤を50重量%まで含んで成る、請求項1〜7のいずれか1項に記載の懸濁液。」 と訂正する。 (2)訂正の適否 訂正事項aについて (i)訂正前の請求項1の訂正個所である「生理的」を「生理学的」、「水性担体相」を「水性液体担体」、「気液界面」を「界面活性剤と液体の分子を含む一時的な膜」と訂正し、「該懸濁液は、」を導入する訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、「水溶液体担体」は請求項11の記載を、「界面活性剤と液体の分子を含む一時的な膜」は特許公報第4欄32-33行(出願時の明細書第1頁最下行-第2頁1行)の記載を、それぞれ根拠とするものである。 (ii)「その内部に空気または気体の徴小胞を含まないリポソームを形成している」を導入する訂正は、特許請求の範囲の滅縮を目的とする訂正であって、特許公報第8欄9行-15行(出願時の明細書第8頁11行-17行)の記載を根拠とするものである。 訂正事項bについて 訂正事項bは、請求項8に「供に」を「共に」と訂正するものであり、誤記の訂正を目的とする訂正である。 上記訂正は、特許法第120条の4各号に該当し、願書に添付した明細書に記載鎖入れた事項の範囲内での訂正であり、実質上特許請求の範囲を変更、又は拡張するものではないので、特許法第120条の4第3項て準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、本件訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)異議申立の概要 ア.特許異議申立人シェーリング アクチエンゲゼルシャフトは、本件請求項1〜18に係る発明は、以下のa及びbの理由により、特許を受けることができないものであると主張し、証拠方法として甲第1〜10号証を提出している。 a.本件特許の請求項1〜9、11、12、14〜18に係る発明は、甲第1〜10号証に記載された発明であるか又はそれらから当業者が容易に発明できたものである。 b.請求項10及び13は実施不能であり、本件明細書の記載は特許法第36条第4項の規定を満たさない。 イ.特許異議申立人金子しのは、本件請求項1〜18に係る発明は、以下のa)〜c)の理由により、特許を受けることができないものであると主張し、証拠方法として甲第1〜9号証を提出している。 a)特許請求の範囲の記載は、明細書に裏付けられていないので、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。 b)本件特許は外国語特許出願の原文に記載された範囲を逸脱しているので、特許法第113条第1項第5項に違反している。 c)本件特許の請求項1〜18に係る発明は、甲第1〜9号証に記載された発明である又はそれらから当業者が容易に発明できたものである。 (2)本件発明 上記2.に示したように本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1〜18に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜18に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1、8、10、11及び13には以下のとおり記載されている。 【請求項1】 生体の血流および体腔の超音波検査のために有用である、生理学的に許容される水性液体担体中の界面活性剤と液体の分子を含む一時的な膜により囲まれている空気又は気体の微小泡の注射可能な懸濁液であって、該懸濁液は、約0.01〜約20重量%の溶解した又は分散した界面活性剤を含んでおり、該界面活性剤の少なくとも1種は少なくとも部分的にラメラ形または積層形において懸濁液中に存在する皮膜形成性飽和リン脂質であって、その内部に空気または気体の徴小胞を含まないリポソームを形成していることを特徴とする懸濁液。 【請求項8】 ポリオールと共に、脂肪酸、脂肪酸のエステルおよびエーテル並びにアルコールから選択された非積層界面活性剤を50重量%まで含んで成る、請求項1〜7のいずれか1項に記載の懸濁液。 【請求項10】 107〜108個/mlの微小泡、108〜109個/mlの微小泡、又は1010〜1011個/mlの微小泡を含有する、請求項1に記載の懸濁液。 【請求項11】 請求項1〜10のいずれか1項に記載の懸濁液の調製方法であって、次の段階: (a)少なくとも1つの皮膜形成性飽和リン脂質を選択し、そしてそれをラメラ形に変換する;(b)前記ラメラ形のリン脂質を、空気またはガスが前記リン脂質に境界を接するようになるのに十分な時間、空気または吸着可能なもしくは閉じ込め可能な気体と接触させる;及び (c)ラメラ形のリン脂質を水性液体担体と混合し、それによって前記液体担体中で前記飽和リン脂質によって安定化された空気または気体の微小泡の安定な分散液を生成させる を特徴とする方法。 【請求項13】 段階(c)が成分の穏やかな混合により行われ、振盪は不要であり、それによって段階(b)においてラメラ形の界面活性剤に結合した空気または気体が安定な微小泡の懸濁液に発達する、請求項11に記載の方法。 (3)証拠として提出された刊行物 ア.特許異議申立人シェーリング アクチエンゲゼルシャフトが提出した証拠 甲第1a号証:特開昭58-79930号公報 甲第1b号証:欧州特許公開007775号明細書 (特開昭58-79930号の対応EP出願の公開明細書) 甲第2号証 :特開昭62-155224号公報 甲第3号証 :特開昭59-205328号公報 甲第4号証 :Roempps Chemie Lexikon, 8.Auflage, Frankh'sche Verlagshandlung Stuttgart Band 2,Cm-G,1981,1422-1423, Band 3,H-L.1983 ,2380,,Band 4, M-Pk,1985, 3159-3160 甲第5号証 :米国特許4235871号明細書 甲第6号証 :Papahadjopoulos et al, Proc. Natl. Acad. Scl. USA. Vo175, No.9, 4194-4198, Sept. 1978, Biochemistry 甲第7号証 :特開昭59-205329号公報 甲第8号証 :欧州特許公開0327490A1号明細書 甲第9号証 :CD Roempp Cbemielexikon Version 1.0:Georg Thieme Verlag 1995, Lecithine 甲第10号証:ドイツ特許公開第2818655号明細書 イ.特許異議申立人金子しのが提出した証拠 甲第1号証 :米国特許第4900540号明細書 甲第2号証 :Bommer et al., Circulation 64, IV-203 (1981) 甲第3号証 :特開昭58一79930号公報 甲第4号証 :特開昭59一205329号公報 甲第5号証 :Ozer, ActaPharmTechnol. 34(3), PP/129-139 (1988) 甲第6号証 :Puisieux et al., Bull. Soc. Pharm. Bordeaux123, p111-126 (1984) 甲第7号証 :Clomelin et al., Pharmaceutical Research (1984), p159-163 甲第8号証 :Henry-Michell et al., Colloids and Surfaces 14, p269-276 (1985) 甲第9号証 :Cromelin et al., Liposomes as Drugs Carriers, Symp. (1986), p88-93 4.対比・判断 (1)特許異議申立人シェーリング アクチエンゲゼルシャフト(異議申立人A)の主張について a.特許法第29条について 異議申立人Aは、請求項1に係る発明は甲第2号証に記載された発明である旨を主張するが、甲第2号証には、「水性液体べヒクルに懸濁した気泡サスペンジョンを主体とする超音波検査用造影剤」(3頁左下欄)が記載されているものの、同号証の発明は、その特許請求の範囲にも明記されているように、「薬学上許容し得る可溶性鉄(III)」を必須の成分とするものであり、一方、リン脂質については任意成分として記載されているに過ぎない。そして、甲第2号証には、本件請求項1に係る発明の必須の構成要件である「界面活性剤と液体の分子を含む一時的な膜により囲まれている空気又は気体の微小泡」である点についても、「内部に空気または気体の徴小胞を含まないリポソームを形成している」点についても、記載も示唆もされていないから、請求項1に係る発明が甲第2号証に記載されているとはいえないし、甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとも認められない。 また、異議申立人Aが提出した他の証拠のいずれにも、請求項1に係る発明を示唆する記載は見出せないから、甲第1〜10号証に記載された発明であるとも又はそれらから当業者が容易に発明できたものであるとも認められない。 請求項2〜9は、請求項1に係る発明をさらに限定したものであり、請求項11、12及び14〜18に係る発明は、請求項1に係る発明の懸濁液の調製方法であるから、同様に甲第1〜10号証に記載された発明であるとも又はそれらから当業者が容易に発明できたものであるとも認められない。 したがって、本件特許の請求項1〜9、11、12、14〜18に係る発明は、甲第1〜10号証に記載された発明であるか又はそれらから当業者が容易に発明できたものである旨の異議申立人Aの主張は採用できない。 b.特許第36条について (b-1)異議申立人Aは、本件発明の微小泡は10〜50μmの直径であるとして、請求項10の粒子範囲1010〜1011個/mlの小泡の場合は適用溶液1ml当たり少なくとも5.24mlを含有することになり、実施不可能である旨を主張するが、本件特許公報15欄34行に記載されているように、上記粒子範囲の気泡の大きさは1〜50μmであり、通常の粒径の分布からみて、異議申立人Aが主張するようなことが生じるとは考えれないので、上記主張は採用できない。 (b-1)また、請求項13については、「穏やかな混合」をおこなう具体的手段が明細書に記載されていないこと等を理由に、請求項13に係る発明の内容が明確かつ簡潔に把握できないと主張するが、混合手段は当業者が適宜に選択できるものであること等を考慮すれば、当業者からみて請求項13に記載された発明であるとは認められない。 (2)特許異議申立人金子しの(異議申立人B)の主張について a)特許法第36条について 異議申立人Bは、明細書の記載が不備である根拠条文として特許第36条第6項第1号及び2号を挙げているが、主張の内容からみて、本件発明に適用される平成2年改正特許法の特許法第36条第5項第1号および2号違反の趣旨と解して以下に検討する。 a-1)異議申立人Bが主張する特許請求の範囲の記載不備は、本件明細書の記載に基づけば、微小泡は「気体液体接点境界にゆるく結合した界面活性剤と液体の分子を含む一時的な膜によってのみ閉ざされ」ているところ、請求項の記載ではこの点が明らかでないことによるものと認められるが、上記訂正により、請求項の記載において「生理学的に許容される水性液体担体中の界面活性剤と液体の分子を含む一時的な膜により囲まれている空気又は気体の微小泡」であることが明記されたので、この点の不備は解消した。 a-2)異議申立人Bは、請求項2及び18に記載されたラメラ形リン脂質が一分子または複数分子膜層の形である微小泡懸濁液及びその懸濁液の調製方法に関し、明細書においてラメラ界面活性剤が単一の一分子層として存在してもよいことを何ら記述していない旨を主張するが、本件特許公報7欄20行〜25行にはこれに対応する記載があるから、請求人の主張は採用できない。 b)特許法第113条第1項第5号違反 異議申立人Bは、リン脂質を飽和リン脂質に補正した点を問題としているが、異議申立人B自身が当初明細書には「飽和および不飽和化合物を両方とも使用してもよいことが明確に示されている」(特許異議申立書14頁)と指摘しているように、当初から記載されている事項であり、この点に何ら不備は見出せない。 なお、平成3年の出願である本件特許については、特許法第113条第1項第5号違反は特許異議申立の理由とはならない。 c)特許法第29条について 異議申立人Bは、「本件明細書の記載に基づけば、微小泡は、「気体液体接点境界にゆるく結合した界面活性材と液体の分子を含む一時的な膜によってのみ閉ざされる」ことで安定化されるものであるので、上記の安定化形態は、発明の詳細な説明の記載と矛盾することになる。してみれば、このような「微小泡」の安定化形態については、本件発明の要旨認定に当たっては、考慮する必要は全くない。」(特許異議申立書15頁5行〜10行)との前提の下に、請求項1に係る発明が甲第1〜4号証により新規性を欠如している或いは進歩性を欠如している旨を主張している。 しかし、上述したとおり、訂正によって請求項1に係る発明には、「生理学的に許容される水性液体担体中の界面活性剤と液体の分子を含む一時的な膜により囲まれている空気又は気体の微小泡」であることが明記され、さらに「ラメラ形または積層形において懸濁液中に存在する皮膜形成性飽和リン脂質であって、その内部に空気または気体の徴小胞を含まないリポソームを形成している」ことも明記され、これらの要件が必須の構成要件であることが明確になってた。そして、甲第1〜4号証のいずれにもこの様な構成を有する超音波検査のための懸濁液については、記載も示唆もされていない。 また、異議申立人Bが提出した他の証拠にも、このような構成を示唆する記載は見出せないから、請求項1に係る発明は、甲第1〜9号証に記載された発明であるとも又はそれらから当業者が容易に発明できたものであるとも認められない。 請求項2〜10に係る発明は、請求項1に係る発明をさらに限定したもの又はであり、請求項11〜18に係る発明は、請求項1に係る発明の懸濁液の調製方法であるから、同様に甲第1〜9号証に記載された発明であるとも又はそれらから当業者が容易に発明できたものであるとも認められない。 したがって、本件特許の請求項1〜18に係る発明は、甲第1〜9号証に記載された発明であるか又はそれらから当業者が容易に発明できたものである旨の異議申立人Aの主張は採用できない。 4.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1〜18に係る発明についての特許を取り消すことができない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 生体内に注入可能な安定な微小泡懸濁液 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 生体の血流および体腔の超音波検査のために有用である、生理学的に許容される水性液体担体中の界面活性剤と液体の分子を含む一時的な膜により囲まれている空気又は気体の微小泡の注射可能な懸濁液であって、該懸濁液は、約0.01〜約20重量%の溶解した又は分散した界面活性剤を含んでおり、該界面活性剤の少なくとも1種は少なくとも部分的にラメラ形または積層形において懸濁液中に存在する皮膜形成性飽和リン脂質であって、その内部に空気または気体の微小胞を含まないリポソームを形成していることを特徴とする懸濁液。 【請求項2】 前記ラメラ形リン脂質が一分子または複数分子膜層の形である、請求項1に記載の懸濁液。 【請求項3】 前記微小泡の大部分のサイズが50μm未満である、請求項1に記載の懸濁液。 【請求項4】 前記微小泡の大部分のサイズが10μm未満である、請求項3に記載の懸濁液。 【請求項5】 前記リン脂質が、ホスファチジル酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピンおよびスフィンゴミエリンから選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の懸濁液。 【請求項6】 ジセチルホスフェート、コレステロール、エルゴステロール、フィトステロール、シトステロール、ラノステロール、トコフェロール、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビンおよびブチル化ヒドロキシトルエンから選択された物質を更に含有する、請求項1の懸濁液。 【請求項7】 直鎖状および架橋した多糖およびオリゴ糖、糖、親水性ポリマー並びにヨウ素化化合物から選択された、増粘剤または安定剤を、溶解された形で、含まれる界面活性剤に対して約1:5〜約100:1の重量比で更に含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の懸濁液。 【請求項8】 ポリオールと共に、脂肪酸、脂肪酸のエステルおよびエーテル並びにアルコールから選択された非積層界面活性剤を50重量%まで含んで成る、請求項1〜7のいずれか1項に記載の懸濁液。 【請求項9】 前記ポリオールがポリアルキレングリコール、ポリアルキレン化糖及びその他の炭水化物、並びにポリアルキレン化グリセロールである、請求項8に記載の懸濁液。 【請求項10】 107〜108個/mlの微小泡、108〜109個/mlの微小泡、又は1010〜1011個/mlの微小泡を含有する、請求項1に記載の懸濁液。 【請求項11】 請求項1〜10のいずれか1項に記載の懸濁液の調製方法であって、次の段階: (a)少なくとも1つの皮膜形成性飽和リン脂質を選択し、そしてそれをラメラ形に変換する;(b)前記ラメラ形のリン脂質を、空気またはガスが前記リン脂質に境界を接するようになるのに十分な時間、空気または吸着可能なもしくは閉じ込め可能な気体と接触させる;及び (c)ラメラ形のリン脂質を水性液体担体と混合し、それによって前記液体担体中で前記飽和リン脂質によって安定化された空気または気体の微小泡の安定な分散液を生成させる を特徴とする方法。 【請求項12】 段階(c)が段階(b)の前に行われ、段階(b)が液体担体中に空気または気体を加圧導入し次いでその圧力を解放することにより行われる、請求項11に記載の方法。 【請求項13】 段階(c)が成分の穏やかな混合により行われ、振盪は不要であり、それによって段階(b)においてラメラ形の界面活性剤に結合した空気または気体が安定な微小泡の懸濁液に発達する、請求項11に記載の方法。 【請求項14】 前記液体担体が、水溶性タンパク質、ポリペプチド、糖、多糖およびオリゴ糖並びに親水性ポリマーから選択された安定剤化合物を溶解された形態で含有する、請求項11または12に記載の方法。 【請求項15】 段階(a)の変換が、可溶性または不溶性材料の粒子上にリン脂質をコーティングすることにより行われ;段階(b)が、コーティングされた粒子を空気または気体中にしばらくの間置いておくことにより行われ;そして段階(c)が、コーティングされた粒子を水性液体担体と混合することより行われる、請求項11の方法。 【請求項16】 段階(a)の変換が、フィルム形成脂質の水溶液を高圧下で超音波処理するかまたはホモジナイズすることにより行われ、この操作が少なくとも部分的にリポソームの形成をもたらす、請求項11の方法。 【請求項17】 段階(b)が、リポソーム含有溶液を凍結乾燥し、ここで前記溶液は場合により親水性安定剤を含むことがあり、そして得られた凍結乾燥生成物を一定期間空気または気体と接触させることにより行われる、請求項16の方法。 【請求項18】 飽和リン脂質が一分子または複数分子膜層の形である、請求項11に記載の方法。 【発明の詳細な説明】 本発明は、例えば超音波検査の目的で、生体内への注入に適した媒体、より詳しくは、水性液体担体中の安定な分散液または懸濁液として空気または生理学的に許容される気体の微小泡を含んで成る注入可能な組成物に関する。それらの組成物は、生物体、例えばヒト患者および動物の血管および他の体腔の内側の画像診断するための超音波検査における造影剤として主に用いることができる。しかしながら、後で開示されるようなその他の用途も期待される。 本発明は、水性担体液体と混合すると、後で超音波検査や他の目的の造影剤として用いることができる前記の微小泡の無菌懸濁液を生成するであろう乾燥組成物にも関する。 空気または気体の微小球または微小滴のような微小体、例えば液体中に懸濁された微小泡または微小中空球が、非常に有効な超音波検査用の超音波反射体であることは周知である。本開示では、「微小泡」なる用語は、液体中に分散された形態での空気または気体の導入から生じるであろう、液体中の懸濁状態の空気また気体小球を意味する。前記液体は、好ましくはそれの表面特性および気泡の安定性を調節するために界面活性剤も含有する。更に詳しくは、微小泡の内容積が気体/液体界面により限定され、言い換えれば、微小泡が、気体液体接点境界にゆるく結合した界面活性剤と液体の分子を含む一時的な膜によってのみ閉ざされている。 対比して、「マイクロカプセル」または「微小中空球」なる用語は、好ましくは懸濁液の液体分子以外の分子により形成される物質境界または被膜、例えばポリマー膜壁、を有する空気または気体を指す。微小泡も微小中空球も両方とも超音波造影剤として有用である。例えば生体の血流中に注入すると、担体液体中の気体微小泡または微小中空球(0.5〜10μmの範囲)の懸濁液は、超音波検査画像を強力に強化し、かくして内部器官の可視化に役立つであろう。血管および内部器官の画像診断は、例えば心血管や他の病気の検出のための医療診断において非常に役立つことができる。 超音波検査に適当な注入可能な液体担体中の微小泡の懸濁液の形成は、様々な経路をたどることができる。例えばDE-A-3529195(Max-Planck Gesell.)において、水溶性ポリマー、油脂および無機塩を含む水性乳化混合物を、少量の空気と共に、小穴を通して一方のシリンジから他方のシリンジ中へ押込みおよび引戻しすることによる、0.5〜50μmの気泡の生成方法が開示されている。 M.W.Kellerら、[J.Ultrasound Med.5(1986),439-8]は、デキストロース、レノグラフィン-76、イオパミドール(X線造影剤)等といった高濃度の溶質を含む溶液を大気圧下で超音波キャビテーションにかけることを報告している。キャビテーションのエネルギーにより溶液中に空気が吹き込まれる。 他の方法は、空気含有微粒子が混和されている担体液体の振盪を当てにしている。前記担体液体は、通常、安定剤または増粘剤として、例えば水溶性ポリペプチドもしくは炭水化物および/または界面活性剤を含有する。崩壊または大気中への離脱に対する微小泡の安定性が担体液体の粘度と表面特性により制御されることが事実上認められる。微小球中の空気または気体は、粒子間もしくは結晶内に閉じ込められた気体、表面に吸着した気体、または通常水性の担体液体との反応により生成する気体から成ることができる。これは全て、例えばEP-A-52.575(Ultra Med.Inc.)において十分に記載されており、この場合、グリコールもしくはポリグリコールまたは他の水溶性ポリマーの水溶液中の炭水化物(例えばガラクトース、マルトース、ソルビトール、グルコン酸、シュクロース、グルコース等)の1〜50μmの粒子の凝集塊が使用される。 また、EP-A-123.235および122.624(Schering,EP-A-320.433も参照のこと)では、固体中に閉じ込められた空気が使用されている。例えば、122.624は、固体界面活性剤の微粒子を含む超音波検査用液体担体造影剤組成物を開示しており、前記固体界面活性剤は、所望により非界面活性剤の微粒子と組み合わされる。この文書に説明されるように、溶液中の気泡の形成は、前記粒子の表面上に吸着された、または粒子格子内に閉じ込められた、または個々の粒子間に捕獲された空気の放出に由来する。これは粒子が液体担体と共に撹拌された時に起こる。 EP-A-131.540(Schering)も微小泡懸濁液の調製を開示しており、該方法では、安定化された注入可能な担体液体、例えば塩の生理的水溶液、またはマルトース、デキストロース、ラクトースもしくはガラクトースといった糖の水溶液を、増粘剤を伴わずに、閉じ込められた空気を含む同じ糖の微粒子(0.1〜1μmの範囲)と混合する。液体担体中に気泡の懸濁液が形成できるために、前記文献は無菌条件下で液体と固体の成分を一緒に激しく撹拌することを勧めている。両成分の一緒の撹拌は数秒間行われ、そして一度製造されたらすぐに該懸濁液を使用しなければならず、即ち5〜10分以内に超音波検査のために注入すべきである。このことは、懸濁液中の気泡が短命であり、そして注入用微小泡懸濁液の用途に伴う1つの実際問題が時間とともに安定性が低下することであることを示す。本発明は、この欠点を十分に改善する。 US-A-4,466-442(Schering)において、(a)担体液体(水性)中の界面活性剤の溶液および(b)安定剤として増粘剤の溶液を使った、液体担体中の気体微小泡の懸濁液を製造するための一連の別法が開示されている。気泡を形成するために、そこで使用される技術は、(a)、(b)および小穴からの空気の混合物を高速で押し出すこと;または使用直前に生理学的に許容される気体と共に(a)を(b)の中に注入すること;または(a)に酸を添加し(b)に炭酸塩を添加し、両成分を使用直前に一緒に混合し、そして酸が炭酸塩と反応してCO2気泡を生じること;または貯蔵下で(a)と(b)の混合物に加圧気体を添加し、前記混合物を注入に使用する時点で、前記気体が微小泡に解放されることを含んで成る。 US-A-4,466-442の成分(a)において使われる界面活性剤は、レシチン;ポリオキシエチレンおよびポリオキシエチル化ポリオール、例えばソルビトール、グリコールおよびグリセロール、並びにコレステロールと、脂肪酸および脂肪アルコールとのエステルおよびエーテル;並びにポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリマーを包含する。増粘性および安定性化合物としては、例えば単糖および多糖(グルコース、ラクトース、シュクロース、デキストラン、ソルビトール);ポリオール、例えばグリセロール、ポリグリコール;およびポリペプチド、例えばタンパク質、ゼラチン、オキシポリゼラチン、血漿タンパク質等が挙げられる。 この文献の典型的な好ましい例では、同容量の(a)PluronicRF-68(ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリマー)の0.5重量%水溶液および(b)10%ラクトース溶液を、無菌条件下(密閉したバイアル)で一緒に激しく振盪し、超音波検査用造影剤としてすぐ使用できそして少なくとも2分間もつ微小泡の懸濁液を提供する。約50%の気泡が50μm未満のサイズを有した。 従来技術の業績は利点を有するけれども、それらは医者や病院での実際的利用を強力に制限する幾つかの欠点、即ちそれらの比較的短い予想寿命(試験再現性を困難にする)、比較的低い初期気泡濃度(気泡の数はおよそ104〜105泡/mlであり、そしてその数は時間とともに迅速に減少する)、および試験ごとの初期気泡数の再現性が乏しいこと(これも比較を困難にする)を有する。更に、或る種の器官、例えば左心を効果的に画像化するためには、50μmより小さい気泡、好ましくは0.5〜10μmの範囲の気泡が要求されることが認められる。気泡が大きくなると、血栓や塞栓の危険が生じる。 更に、担体液体中の固体微粒子または高濃度の電解質および他の比較的不活性な溶質の強制的存在は、ある場合に生理学的に望ましくないことがある。最後に、該懸濁液は貯蔵下で全体的に不安定であり、そしてそのままでは市場に出せない。よって、使用直前に微小泡を調製するのに多大な技術が要求される。 もちろん、この欠点を克服するために開発されたマイクロカプセル、即ち懸濁液中での長期貯蔵に完全に耐えるエアシールされた固体の硬質高分子膜を有する微小中空球、の安定な懸濁液は現存する(例えばK.J.Widder,EP-A-324.938を参照のこと);しかしながら、固体膜小胞の中に気体が閉じ込められているマイクロカプセルの性質は、本発明の微小泡のものとは本質的に異なり、異なる種類の技術に属する。例えば、本明細書中で論じられる気体微小泡は、担体液体中の安定剤が排泄または代謝される時に、血流中に単純に放出または溶解するだろうし、上述の微小中空球の壁を形成する固体ポリマー材料は、試験しようとする生体により処分されなければならず、一連の後始末をそれに強いるであろう。固体の非弾性膜を有するカプセルも、様々な圧力の変動下で不可逆的に破損し得る。 請求項1に定義されるような本発明の組成物は、上述の難点を完全に克服する。 本発明の組成物の1または複数の界面活性剤の少なくとも部分の状態を定義する「ラメラ形」なる用語は、界面活性剤が従来技術(例えばEP-A-123.235)の微粒子と著しく異なり、1または複数の分子層を含む薄膜の形態(積層形)であることを示す。薄膜を形成している界面活性剤をラメラ構造に変換することは、例えば高圧均質化によりまたは音波もしくは超音波振動数下での超音波処理により、容易に行うことができる。この点について、リポソームの存在が周知であり、そして界面活性剤、より特定的には脂質がラメラ形である場合の有用な実例であることを指摘すべきである。 リポソーム溶液は、中に封入された物質を収容する、通常は球形に造形された微視的小胞の水性懸濁液である。それらの小胞は、一般に、両親媒性化合物、即ち疎油性親水性成分と親油性疎水性成分を有する化合物の、同心円に配列された1または複数の分子層(ラメラ)から構成される。例えば、Liposome Methodology”,L.D.Lesermanら編,Inserm 136,2-8,1982年5月を参照のこと。この種の構造に該当するように、脂質特にリン脂質を含む多数の界面活性剤を積層することができる。本発明では、好ましくは、リポソームを製造するのに一般に使用される脂質、例えばレシチンおよび後で詳細に開示される他の界面活性剤を使用するが、層または薄膜に成形し得るならば、これは決して他の界面活性剤の使用を排除するものではない。 超音波検査のための空気または気体充填リポソームの使用を報告しているRyan(US-A-4,900,540)の開示と本発明の開示との間に全く混乱が生じないだろうことに注目することが重要である。この方法ではRyanはリポソーム小胞の内部に空気または気体を封入し;本発明の態様では、リポソームの懸濁液中空気または気体の微小泡が形成され、そしてリポソームが明白に微小泡を安定化する。Ryanでは、空気はリポソームの内側にあり、これは現在使用されている用語法の範囲内では、Ryanの気体充填リポソームは微中空球の分類に属し、本発明の微小泡の分類には属さないことを意味する。 実際上、本発明の微小泡の懸濁液を達成するために、従来技術において報告された任意の技術により調製したリポソーム溶液または懸濁液を使って出発することができるが、本件ではリポソーム小胞は好ましくは「未充填」であり、即ちそれらは、通常典型的なリポソームの目的であるように懸濁液の液体以外の任意の異種物質をそのなかに封入したままにしておく必要がないという明らかな相違を有する。よって、好ましくは、本発明のリポソームは溶液自体の水相と同一かまたは同様な水相を含むであろう。空気または気体は、微小泡の懸濁液が形成するようにリポソーム中に導入され、前記懸濁液はラメラ形の界面活性剤の存在により安定化される。それにもかかわらず、リポソーム壁を作る材料は、例えば後で説明されるように特定の目的で設計した外来分子を共有結合的にその上にグラフトさせることにより、本発明の範囲内で変更することができる。 リポソーム溶液の調製は、多数の刊行物、例えばUS-A-4,224,179およびWO-A-88/09165並びにその中に言及された全ての引用文献において豊富に記載されている。この従来技術は、皮膜形成界面活性剤をラメラ形に変換するのに適切な種々の方法を例示するための参考として本発明において使用される。他のM.C.WoodleおよびD.Papahadjopoulosによる基本的参考文献が“Method in Enzymology”171(1989),193において見つかる。 例えば、D.A.Tyrrellら,Biochimica & Biophysica Acta457(1976),259-302に開示された方法では、脂質と水性液体担体との混合物を激しい撹拌にかけ、その後音波または超音波振動数で室温または高められた温度において超音波処理する。本発明では、撹拌を伴わない超音波処理が便利であることがわかった。また、リポソームを調製する装置、高圧ホモジナイザー、例えばMicrofluidics Corp.,Newton,MA 02164 USAから購入できるMicrofluidizerRを有利に使用することができる。この装置を使って600〜1200バールに達し得る圧力下で大量のリポソーム溶液を調製することができる。 GB-A-2,134,869(Squibb)の教示に従った別の方法では、水溶性担体固体(NaCl、シュクロース、ラクトースおよび他の炭水化物)の微粒子(10μm以下)を両親媒性物質でコーティングする;コーティングされた担体の水相への溶解がリポソーム小胞を生成するだろう。GB-A-2,135,647では、有機溶媒中の脂質の溶液中に含浸し、次いで蒸発により溶媒を除去することにより、不溶性粒子、例えばガラスまたは樹脂をコーティングする。その後、脂質被覆ミクロビーズを水性担体相と接触させ、それによってリポソーム小胞が該担体相中に形成するだろう。 中に微小泡の懸濁液を形成せしめるためのリポソーム溶液中への空気または気体の導入は、常法により、特に注入、即ち前記空気または気体を非常に小さいオリフィスから押し出すことにより、あるいは圧力を適用しその後すぐに該圧力を解放することによって溶液中に気体を単に溶解させることにより、行うことができる。別のやり方は、空気または閉じ込め可能な気体の存在下でリポソーム溶液を撹拌または超音波処理することである。また、例えば気体放出化学反応、例えば溶解した炭酸塩または炭酸水素塩を酸により分解させることにより、リポソームの溶液自体の中での気体の形成を行うことができる。同様な作用は、低沸点液体、例えばブタンを圧力下で水相中に溶解させ、その後圧力を急に解放することによって前記液体を沸騰させることにより得ることもできる。 それにもかかわらず、有利な方法は、ラメラまたは薄膜形の乾燥界面活性剤を空気または吸着可能なもしくは閉じ込め可能な気体と接触せしめた後、前記界面活性剤を液体担体相中に導入することである。この点では、該方法はGB-A-2,135,647に開示された技術から誘導することができ、即ち、前記微粒子またはビーズを揮発性溶媒中の皮膜形成界面活性剤(または界面活性剤の混合物)の溶液に浸漬し、その後溶媒を蒸発せしめ、そして空気が界面活性剤層の表面に結合するようになるのに十分な時間、ビーズを空気(または吸着可能な気体)と接触させておく。その後、空気が充填された界面活性剤でコーティングされたビーズを担体液体、通常は添加剤を含むかまたは含まない水の中に入れ、穏やかに撹拌することによって液体中に空気泡が発生するだろう。激しい撹拌は全く不要である。次いで、例えば濾過によって、微小泡懸濁液から固体ビーズを分離することができ、微小泡懸濁液は時間に対して著しく安定である。 言うまでもなく、不溶性ビーズまたは球体の代わりに、例えばGB-A-2,134,869に開示されたような水溶性材料(炭水化物または親水性ポリマー)を支持粒子として使用することができ、それによって前記支持粒子はやがて溶解するので固体の最終分離が不要になるだろう。更にこの場合には、所望される場合には常に、粒子の材料はやがては安定剤または増粘剤として作用するように選択することができる。 該方法の変形では、脱水したリポソーム、即ち従来技術を用いて水溶液の形で調製した後に常法例えばUS-A-4,229,360に開示されたもの(参考として本明細書に組み込まれる)によって脱水されたリポソームを使って出発してもよい。この参考文献において推奨されたリポソームを脱水する方法の1つは、凍結乾燥、即ちリポソーム溶液を凍結しそして減圧下での蒸発(昇華)により乾燥することである。凍結乾燥を行う前に、親水性安定剤化合物、例えば炭水化物、例えばラクトースもしくはシュクロース、または親水性ポリマー、例えばデキストラン、デンプン、PVA、PVA等を前記溶液に溶解する。これは、そういった親水性化合物が微小泡のサイズ分布を均一化するのを助けそして貯蔵安定性を増加させるので、本発明において有用である。実際に、例えば5:1〜10:1の重量比のラクトースで安定化された凍結乾燥リポソームの非常に希薄な水溶液(0.1〜10重量%)を作製することは、観察可能な有意な変化なしに少なくとも1か月間(好ましくはもっと長期間)安定である108〜109微小泡/mlを含む水性微小泡懸濁液を製造することを可能にする。そしてこれは、空気が充填された乾燥リポソームの、振盪または任意の激しい撹拌を伴わない単純な溶解により得られる。更に、減圧下での凍結乾燥技術は、乾燥後に、任意の閉じ込め可能な気体、即ち窒素、CO2、アルゴン、メタン、フロン等を用いて乾燥リポソームの上に圧力を回復でき、それによってそのような条件下で処理されたリポソームの溶解後、上記気体を含む微小泡の懸濁液が得られるため、非常に有用である。 水中の積層リポソームの希薄溶液(0.1〜10重量%)にガス圧を適用し、次いで該圧力を急に解放することにより形成された微小泡懸濁液は、非常に高い気泡濃度、例えば1010〜1011微小泡/mlのオーダーの気泡濃度を有する。しかしながら、平均の気泡の大きさは約10μmより幾分大きく、例えば10〜50μmの範囲である。この場合、気泡の大きさの分布は、遠心および層デカンテーションにより狭めることができる。 本発明において好都合である界面活性剤は、水および気体の存在下で安定な薄膜を形成することができる全ての両親媒性化合物から選択ことができる。積層することができる好ましい界面活性剤としては、レシチン(ホスファチジルコリン)および他のリン脂質、特にホスファチジル酸(PE)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)、カルジオリピン(CL)、スフィンゴミエリン、原形質、セレブロシド等が挙げられる。適当な脂質の例は、一般にリン脂質、例えば、天然レシチン、例えば卵レシチンもしくは大豆レシチン、または合成レシチン、例えば飽和合成レシチン、例えばジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンもしくはジステアロイルホスファチジルコリンまたは不飽和合成レシチン、例えばジオレイルホスファチジルコリンもしくはジリノレイルホスファチジルコリンであり、卵レシチンまたは大豆レシチンが好ましい。0〜50重量%の割合で1または複数の上記脂質にコレステロールのような添加剤または他の物質(下記参照)を添加することができる。 そのような添加剤としては、皮膜形成界面活性剤と共に使用することができる他の界面活性剤、および本明細書の導入部において記載した従来技術に列挙されているものの大部分が挙げられる。例えば、遊離脂肪酸、脂肪酸とポリオキシアルキレン化合物、例えばポリオキシプロピレングリコールおよびポリオキシエチレングリコールとのエステル;脂肪アルコールとポリオキシアルキレングリコールとのエーテル;脂肪酸とポリオキシアルキル化ソルビタンとのエステル;石鹸;グリセロール-ポリアルキレンステアレート;グリセロール-ポリオキシエチレンリシノレート:ポリアルキレングリコールのホモーおよびコポリマー;ポリエトキシル化大豆油およびヒマシ油並びに水素化誘導体;シュクロースまたは他の炭水化物と脂肪酸、脂肪アルコールとのエーテルおよびエステル(それらは場合によりポリオキシアルキル化されることがある);飽和もしくは不飽和脂肪酸のモノー、ジ-およびトリグリセリド;大豆油およびシュクロースのトリグリセリドを挙げることができる。非皮膜形成界面活性剤の量は、組成物中の界面活性剤の総量の50重量%までであることができるが、好ましくは0〜30重量%である。 水性担体液体に対する界面活性剤の総量は、0.01〜25重量%の範囲が最良であるが、常に注入溶液中の活性物質の量をできるだけ低く維持しようと試みるので、0.5〜5%の範囲の量が有利であり、これは、それらが無害であり生体適合性であったとしても外来物質の生体中への導入を最小限にするためである。 界面活性剤への更なる任意の添加剤としては次のものが挙げられる: a)リポソーム上に負電荷を提供することが知られている物質、例えばホスファチジル酸、ホスファチジルグリセロールまたはジセチルホスフェート; b)正電荷を提供することが知られている物質、例えばステアリルアミン、または酢酸ステアリルアミン; c)より望ましい方法で脂質膜の物性に影響を及ぼすことが知られている物質、例えばカプロラクタムおよび/またはステロール、例えばコレステロール、エルゴステロール、フィトステロール、シトステロール、ピログルタミン酸シトステロール、7-デヒドロコレステロールまたはラノステロールが脂質膜の剛性に影響を及ぼし得る; d)酸化防止性質を有し、懸濁液中の成分の化学的安定性を向上させることが知られている物質、例えばトコフェロール、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビルまたはブチル化ヒドロキシトルエン。 本発明の水性担体は大部分は水であり、おそらく少量の生理学的に適合性の液体、例えばイソプロパノール、グリセロール、ヘキサノール等(例えばEP-A-52.575を参照のこと)を含む。一般に有機水溶性液体の量は5〜10重量%を越えないだろう。 本発明の組成物は、一般に増粘剤または安定剤の名のもとに定義される、親水性化合物およびポリマーをその中に溶解または懸濁された状態で含んでもよい。そのような化合物の存在は本分散液において時間に対する空気または気体の気泡の安定性を保証するのに強制的ではないけれども、それらは或る種の「粘り」を該溶液に与えるのに有利である。所望される時、そのような添加剤の上限濃度は非常に高く、例えばイオパミドールおよび他のヨウ素化X線造影剤では溶液の80〜90重量%までであることができる。しかしながら、他の増粘剤、例えば糖、例えばラクトース、シュクロース、マルトース、ガラクトース、グルコース等、または親水性ポリマー、例えばデンプン、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キサンチンまたは部分的に加水分解されたセルロースオリゴマー、並びにタンパク質およびポリペプチドでは、濃度は約1〜40重量%が最良であり、約5〜20重量%が好ましい。 従来技術と同様に、本発明の注入可能組成物は生理学的に許容される電解質も含むことができる;一例は塩の等張溶液である。 本発明は、水または水性担体相と単純に混合すると本発明の微小泡含有分散液を生じることができる乾燥貯蔵可能な微粉状ブレンドも包含する。好ましくは、そのような乾燥ブレンドまたは配合物は、水の単純な添加により所望の微小泡懸濁液を提供するのに必要な全ての固体成分、即ち、理論上は、微小泡を生成せしめるのに必要な中に閉じ込められたまたは吸着された空気または気体を含むラメラ形の界面活性剤、および補助的に他の非皮膜形成界面活性剤、増粘剤および安定剤並びに場合により他の任意の添加剤を含むだろう。上述したように、積層された界面活性剤による空気または気体の閉じ込めは、空気または気体を界面活性剤の内部に閉じ込めるのに十分な時間、前記界面活性剤を大気圧または過圧にて空気(または気体)に単純に暴露することによって起こる。この時間は非常に短く、例えば数秒から数分のオーダーであるが、過剰暴露、即ち大気下または気体雰囲気下での貯蔵は少しも有害ではない。何が重要かといえば、空気が積層界面活性剤の利用可能な表面のできるだけ多くと十分に接触することであり、即ち乾燥材料が好ましくは「ふわふわした」軽い浮遊状態であるべきである。これは正に、US-A-4,229,360において開示されたようなリポソームと親水性物質の水溶液の凍結乾燥から生じる状態である。 一般に、乾燥配合物中の界面活性剤対親水性増粘剤の重量比は、0.1:10〜10:1のオーダーであろう。もしあれば、更なる任意の成分は界面活性剤と増粘剤の合計量に関して50重量%を越えない割合で存在するだろう。 本発明の乾燥ブレンド配合物は非常に単純な方法により調製することができる。上述したように、1つの好ましい方法は、例えば超音波処理によりまたはリポソームの技術分野において常用される任意の従来技術を使って、フィルム形成脂質が積層される水溶液をまず調製し、ここでこの溶液は他の所望の添加剤、即ち増粘剤、非皮膜形成界面活性剤、電解質等も含有し、そしてその後、自由に浮遊可能な粉末に凍結乾燥し、これを次いで空気または閉じ込め可能な気体の存在下で貯蔵することである。 乾燥ブレンドは、乾燥状態で任意の期間維持し、そのまま販売することができる。それを使用に向けるために、即ち超音波画像診断用の空気または気体微小泡懸濁液を調製するためには、既知重量の乾燥微粉状配合物を無菌の水相、例えば水または生理学的に許容される媒体中に単に溶解する。粉末の量は、注射可能製品中の所望の気泡濃度に依存し、水中の粉末の5〜20重量%溶液を作製する通常約108〜109泡/mlのカウントであろう。しかし本来この数字は単に表示のみであり、気泡の量は本質的に乾燥粉末の製造中に閉じ込められる空気または気体の量に依存する。製造段階は制御下にあるので、乾燥配合物の溶解は十分に再現性のあるカウントを有する微小泡懸濁液を提供するだろう。 生成する微小泡懸濁液(0.5〜10μmの範囲の泡)は時間に対して非常に安定であり、出発時に最初に測定されたカウントは数週間および数カ月間でさえも変わらないかまたはごく少ししか変わらないままである;唯一の観察される変化は一種の分離(凝離)であり、大きい気泡(10μmあたり)は小さい気泡よりもより速く上昇する傾向がある。 本発明の微小泡懸濁液は、希釈から予想される微小泡の数の損失を殆ど伴わずに希釈することができ、即ち高希釈率、例えば1/102〜1/104の場合でさえ、微小泡の数の減少は希釈率に正確に一致する。このことは、泡の安定性が従来技術のような安定剤または増粘剤の存在よりもむしろラメラ形の界面活性剤に依存することを示す。この性質は、患者への注入時に血液での希釈によって気泡が影響されないので、画像診断試験の再現性に関して有利である。 圧力下で不可逆的に破壊しうる硬質であるが破れやすい膜により囲まれている従来技術のマイクロカプセルに対する本発明の気泡の別の利点は、本発明の懸濁液が急激な圧力変化を受けると、本発明の気泡が瞬間的に弾力的に収縮し、次いで圧力が解放されると元の形状に戻ることである。これは、微小泡が心臓から送り出され、従って変化する圧力パルスにさらされるような臨床業務において特に重要である。 本発明の微小泡が何故それほどに安定であるかは明確に判っていない。気泡が逃げないようにするためには摩擦による保持力と浮力が釣り合うべきであるので、気泡はおそらく積層された界面活性剤により取り囲まれていると理論上想定される。この積層界面活性剤が連続膜もしくは不連続膜の形態であるか、または球体として微小泡に付着している、のいずれであるかは今のところ未知であるが研究中である。しかしながら、現在関連する現象の詳細な知識がなくても、本発明の産業上の実施可能性は排除されない。 本発明の気泡懸濁液は、安定な微小泡を、それらの注入に従って体内の特定部位、例えば血管中に存在する血栓、動脈中のアテローム硬化病巣(プラーク)、腫瘍細胞、並びに体腔の変化した表面の診断のために、例えば胃の潰瘍部位または膀胱の腫瘍に標的することが望ましい他の医学/診断用途においても有用である。このために、遺伝子工学により操作されたモノクローナル抗体、抗体断片または抗体を模倣して設計されたポリペプチド、生体接着性ポリマー、レクチンおよび他の部位認識分子を、微小泡を安定化する界面活性剤層に結合させることができる。L.D.Leserman,P.MachyおよびJ.Barbet(“Liposome Technology 第III巻,第29頁,G.Gregoriadis編,CRC Press 1984)により記載された方法により、モノクローナル抗体をリン脂質二重層に結合させることができる。別のアプローチでは、まずパルミトイル抗体を合成し、次いでL.Huang,A.HuangおよびS.J.Kennel(“Liposome Technology第III巻,第51頁,G.Gregoriadis編,CRC Press 1984)に従ってリン脂質二重層に組み込む。あるいは、器官もしくは組織中への優先的取り込みまたは血液中での長い半減期を獲得するために、本発明で使用される幾つかのリン脂質を注意深く選択することができる。好ましくはコレステロールに加えて、GM1ガングリオシドーまたはホスファチジルイノシトール-含有リポソームが、A.Gabizon,D.Papahadjopoulos,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(1988)6949と同様な静内投与後に血液中での半減期の増加をもたらすであろう。 本発明の微小泡中のガスは、現在生理学的に許容される無害のガス、例えばCO2、窒素、N2O、メタン、ブタン、フロンおよびそれらの混合物に加えて、放射性ガス、例えば133Xeまたは81Krが血液循環測定、肺シンチグラフィー等のための核医学において特に着目される。 次の実施例は実際的観点において本発明を説明する。 反響測定 反響性の測定は、プレキシグラス試料ホルダー(直径30mm)と恒温槽中に浸漬した変換器、ホルダー受信部として40dBの固定増量の外部プレ増幅器と-40〜+40dBの固定増量の内部増幅器を有するパルス受信器(Accutron M3010S)から成るパルス-エコー系において実施した。ノイズ比に対する信号を改善するために受信部に10MHzの低域フィルターを挿入した。IBM PC中のA/DボードはSonotek STR832であった。測定は2.25,3.5および7.5MHzで行った。 実施例1 水素化大豆レシチン(NC95H, Nattermann Chemie,Koln,W.Germany)とジセチルホスフェートを9/1のモル比で使って、REV法[F.Szoka Jr.およびD.Papahadjopoulos, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75(1978)4194を参照のこと]により、蒸留水中にリポソーム溶液(50mg脂質/ml)を調製した。このリポソーム溶液を1μmのポリカーボネートフィルター(Nucleopore)を通して65℃で押し出した(小胞のサイズを検量するため)。この溶液2mlを5mlの75%イオパミドール水溶液および0.4mlの空気と混合し、そして軽い過圧を連続して維持しながら、DE-A-3529195に開示されたようにして2シリンジ系において該混合物を押込みおよび引戻しした。これは、結果として液体中の空気の微小泡の懸濁液(1mlあたり105〜106の気泡、光学顕微鏡により評価すると気泡の大きさ1〜20μm)の形成をもたらし、この懸濁液は室温で数時間安定であった。この懸濁液は7.5,5,3.5および2.25MHzでの超音波検査法により試験すると強いエコーシグナルを与えた。 実施例2 9/1のモル比で水素化大豆レシチンとジセチルホスフェートとを2重量%含む蒸留水溶液(100ml)を、Bransonプローブ発音機(250型)を用いて60〜65℃で15分間超音波処理した。 冷却後、溶液を10,000gで15分間遠心し、上清を回収し、ラクトースを添加して7.5重量%溶液を作製した。この溶液を容器に丁度いっぱい入れ、容器を振盪しながらそこに4barの窒素圧力を数分間適用した。その後、圧力を急に解放し、それによって高度に濃縮された気泡懸濁液を得た(1010〜1011気泡/ml)。しかし気泡の大きさの分布は実施例1のものより広く、即ち約1〜50μmであった。この懸濁液は非常に安定であるが静止状態において数日後に凝離が起こり、大きい気泡は懸濁液の上層に集中しがちであった。 実施例3 20gのガラスビーズ(直径約1mm)を10mlのクロロホルム中の100mgのジパルミトイルホスファチジルコリン(Fluka A.G.Buchs)の溶液に浸した。全てのCHCl3が蒸発するまで回転式エバポレーター中で減圧下でビーズを回転させた。次いで大気圧下で数分間ビーズを回転させ、そして10mlの蒸留水を添加した。ビーズを除去し、空気の微小泡の懸濁液を得た。この懸濁液は顕微鏡検査後約106気泡/mlを含んでいることがわかった。気泡の平均の大きさは約3〜5μmであった。この懸濁液は少なくとも数日間安定であった。 実施例4 水中の水素化大豆レシチン/ジセチルホスフェート懸濁液を、実施例1に記載したREV法を使って積層化した。2mlのリポソーム調製物を蒸留水中の15%マルトース溶液8mlに添加した。生じた溶液を-30℃で凍結させ、次いで0.1Torr下で凍結乾燥した。氷の完全な昇華は数時間で得られた。その後凍結乾燥粉末が2〜3分で空気で飽和されるようにして排気容器中の空気圧を元に戻した。 次に穏やかに混合しながら乾燥粉末を10mlの無菌蒸留水に溶解することによって微小泡懸濁液(108〜109気泡/ml、動的粘度<20mPa.s)を得た。ほとんど1〜5μmの範囲の気泡を含むこの懸濁液は、2カ月間静置後にまだ多数の気泡が検出できたので、非常に長期間安定であった。この微小泡懸濁液は、超音波検査において強い応答を与えた。この実施例において、-30〜-70℃の空気中に噴霧することにより溶液を凍結させて、一体式ブロックの代わりに凍結した雪を得、次いでこの雪を真空下で蒸発させたならば、優れた結果が得られる。 実施例5 実施例4に記載のようにして得られたリポソーム溶液の2ml試料を、ゼラチン(試料5A)、ヒトアルブミン(試料5B)、デキストラン(試料5C)およびイオパミドール(試料5D)の5%水溶液10mlと混合した。全試料を凍結乾燥した。凍結乾燥および空気の導入後、種々の試料を20mlの無菌水と穏やかに混合した。どの場合でも、気泡濃度は108/ml以上であり、ほとんど全ての気泡の大きさが10μm未満であった。9mlのリポソーム調製物(450mgの脂質)と1mlの5%ヒトアルブミン溶液のみを使って前記実施例の操作を繰り返した。凍結乾燥、空気への暴露および無菌水(20ml)の添加後、生じた溶液は1mlあたりほとんど10μm未満の2×108気泡を含んだ。 実施例6 1〜3μmの粒径に細粉されたラクトース(500mg)を4:1:1のモル比の100mgのジミリストイルホスファチジルコリン/コレステロール/ジパルミトイルホスファチジル酸(Flukaから)のクロロホルム(5ml)溶液で湿らせ、次いで回転式エバポレーター中で真空下で蒸発させた。得られた浮遊性白色粉末を窒素下で常圧にて2〜3分間回転させた後、20mlの無菌水に溶かした。顕微鏡下での観察により確かめると1〜10μmの大きさの範囲の約105〜106微小泡/mlを有する微小泡懸濁液が得られた。この実施例では、被覆界面活性剤対水溶性担体の重量比は1:5であった。この比をより低い値、すなわち1:20に減少すると、優れた結果(107〜108微小泡/ml)が得られる。これは、実際に界面活性剤の空気の取り込み力を増加させ、すなわち同じ気泡数を生じるのに必要な界面活性剤の重量を減少させるだろう。 実施例7 2%の水素化大豆レシチンと0.4%のPluronicRF-68(非イオン性ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー界面活性剤)を含む水溶液を、実施例2に記載のようにして超音波処理した。冷却および遠心後、この溶液5mlを15%マルトース水溶液5mlに添加した。生じた溶液を-30℃で凍結させ、0.1Torr下で蒸発させた。次いで乾燥粉末を含む容器中の空気圧を元に戻した。これを空気中に数秒間放置し、その後これを使って10重量%水溶液を作製した。該溶液は顕微鏡下で非常に小さい気泡(10μm未満)の懸濁液であることを示し、気泡濃度は107気泡/mlの範囲であった。この調製物は2.25,3.5,5および7.5MHzでの超音波検査において非常に強い応答を与えた。 実施例8 実施例4で得られた調製物0.1〜2mlの末梢静注後の実験イヌにおいて二次元超音波心臓検査を行った。心内膜の明確な輪郭描写を伴う左心の不透明化が観察され、従って微小泡(または少なくともそれらの大部分)が肺毛細管循環を横切ることができたことを確証する。 実施例9 実施例4に記載したようにしてリン脂質/マルトース凍結乾燥粉末を調製した。ただし、凍結乾燥段階の終わりに、133Xe含有ガス混合物を空気の代わりに排気容器に導入した。数分後、無菌水を導入し、そして穏やかに混合した後、気相に133Xeを含む微小泡懸濁液を調製した。この微小泡懸濁液を生体内に注入し、トレーサーとして133Xeの使用を必要とする研究を行った。優れた結果が得られた。 実施例10(比較用) US-A-4,900,540において、Ryanらは超音波研究用の気体充填リポソームを開示している。引用文によれば、リポソームは常用手段により形成されるが、リポソームコアを形成する水性組成物中への気体または気体前駆体の添加を伴う(第2段落、15〜27行目)。 気体前駆体(炭酸水素塩)を使うことは、この参考文献の実施例1または2において詳述されている。リポソーム中に気体を封入するために気体を有する水性担体を使用することは(Ryanらにより例示されていない)、気体が非常に小さい気泡、すなわちリポソーム小胞の大きさと同様なまたはそれよりも小さい大きさの形であることを要求するだろう。 空気を極小さい気泡(2.5〜5μm)の形で閉じ込めることができる水性媒質は、M.W.Kellerら,J.Ultrasound Med.5(1986),413-498に開示されている。 126mgの卵レシチンと27mgのコレステロールの量を200mlの丸底フラスコ中で9mlのクロロホルムに溶解させた。脂質溶液をRotavaporで蒸発乾固せしめることによって、フラスコの壁面に脂質の薄膜を形成させた。50重量%の水性デキストロース溶液10mlをM.W.Kellerら(同文献)に従って5分間超音波処理してその中に空気微小泡を生成せしめ、そして超音波処理溶液を脂質の薄膜を含むフラスコに添加し、容器の手動撹拌がリン脂質の水和を生じ、そして気泡を含む担体液体の中に多重層のリポソームを形成した。 しばらく放置した後、得られたリポーム懸濁液を5000gでの15分間の遠心にかけ、小胞中に閉じ込められなかった空気を担体から除去した。遠心中、空気充填リポソームは浮力によって表面から凝離するだろうことも予想された。 遠心後、試験管を調べると、凝集したデキストロースが詰まったリポソームから成る底部残渣と、実質的に全く気泡が残っていない透明な上清を示した。浮力により上昇した空気充填リポソームの量はごく少量であり、確かめることができなかった。 実施例11(比較用) Ryan(US-A-4,900,540,カラム3,実施例1)に従って、注射可能な造影剤組成物を調製した。卵レシチン(126mg)とコレステロール(27mg)を9mlのジエチルエーテルに溶解させた。この溶液に、3mlの0.2モル水性炭酸水素塩を添加し、生じた二相系を均質になるまで超音波処理した。混合物をRotavapor装置中で蒸発させ、次いで3mlの0.2モル水性炭酸水素塩を添加した。 リポソーム懸濁液の1ml部分を実験用ウサギの頸静脈に注入し、該動物をAcuson 128-XP5超音波画像診断装置(心臓の画像化用 7.5変換器プローブ)を使って心臓の超音波画像診断の条件下に置いた。該プローブは、左右の心室(中央乳頭筋)の横断面画像を提供した。注入後、右心室の輪郭の明るさおよび透明度の増加(数秒間)が観察された。しかしながら、この効果は実施例4の調製物を使って観察された効果よりずっと劣っていた。左心室の画像の改善は全く認められず、これはおそらくCO2を負荷したリポームが肺毛細管遮断層を通過しなかったことを示す。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2003-07-25 |
出願番号 | 特願平3-506829 |
審決分類 |
P
1
651・
534-
YA
(A61K)
P 1 651・ 121- YA (A61K) P 1 651・ 531- YA (A61K) P 1 651・ 113- YA (A61K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 塚中 直子、上條 のぶよ |
特許庁審判長 |
竹林 則幸 |
特許庁審判官 |
横尾 俊一 深津 弘 |
登録日 | 1998-10-23 |
登録番号 | 特許第2842453号(P2842453) |
権利者 | ブラッコ インターナショナル ベスローテン フェンノートシャップ |
発明の名称 | 生体内に注入可能な安定な微小泡懸濁液 |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 大屋 憲一 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 大屋 憲一 |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 石井 貞次 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 石井 貞次 |
代理人 | 鈴木 俊一郎 |