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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1084869
異議申立番号 異議2002-72045  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-08-12 
確定日 2003-10-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第3310649号「食品組成物」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3310649号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3310649号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成12年3月16日に特願2000-73528号として出願され、平成14年5月24日にその特許の設定登録がなされ、その後、小羽根孝康及び小林製薬株式会社より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、意見書が提出されたものである。

II.本件発明
本件請求項1ないし3に係る発明は、本件明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】分岐鎖アミノ酸とクマリン類又はその誘導体を含む植物を含むことを特徴とする食品組成物。
【請求項2】クマリン類又はその誘導体を含む植物が、セイヨウエビラハギ、セイヨウトチノキ、クルマバソウ及びヘンルーダから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1の食品組成物。
【請求項3】足のむくみの予防又は改善用である請求項1又は2の食品組成物。」
(以下、本件請求項1ないし請求項3に係る発明を「本件発明1ないし3」という。)

III.特許異議申立
1.小林製薬株式会社よりの特許異議申立
特許異議申立人は、甲第1号証ないし甲第4号証を提出し、(1)本件発明1ないし3は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反する、或いは、(2)本件明細書には記載の不備があるから、特許法36条4項の規定に違反する、と主張している。

A.特許法29条2項について
(本件発明1について)
甲第1号証(特開2000-26289号公報)には、「【請求項1】分岐鎖アミノ酸を経口摂取することによる筋肉痛・筋肉のこり、はりの解消剤。」(特許請求の範囲の項)、「本発明の筋肉痛・筋肉のこり、はりの解消剤は、ロイシン、イソロイシン、バリンを有効成分とする分岐鎖アミノ酸を、自体公知の食品あるいは食品成分、医薬担体または賦形剤と自体公知の方法で合して、筋肉のダメージを解消する食品とすることができる。」(3頁右欄7〜12行)、及び「運動中の筋肉疲労は、筋肉で生成される乳酸という物質が原因です。この乳酸の生成を抑えるのがロイシン、イソロイシン、バリンの3種類の必須アミノ酸です。」(3頁右欄末行〜4頁左欄3行)が、甲第2号証(The Complete German Commission E Monographs、Therapeutic Guide to Herbal Medicines,Sweet Cloverの項:1986年3月13日発行、1990年3月13日改訂)には、「医薬の組成」として「スウィートクローバーはセイヨウエビラハギ及び/又は・・・この植物は5,6-ベンゾ-ピロン(クマリン)を含む」、「適用 内服:」として「慢性の静脈の不具合に由来する諸症状、例えば、足の痛み、重み、足の夜間の痙攣、痒み、むくみなど。血栓性静脈炎、血栓後症候群、痔疾及びリンパ管滞留の支持療法。」、「投与様式」として「浸剤用には粉砕草本及び経口用にはその他の生薬製剤」、及び「作用」として「静脈の還流を増加することによって炎症及びうっ血性水種に対して抗水腫作用を及ぼし、リンパ管の動態を改良する」が、甲第3号証(特開昭58-165774号公報)には、「(1)分岐鎖アミノ酸を含有することを特徴とする飲料組成物。 (3)分岐鎖アミノ酸がイソロイシン、ロイシン及びバリンの中の少なくとも1種である特許請求の範囲第1項記載の組成物。」(特許請求の範囲の項)、及び「本発明の飲料組成物を摂取すると、摂取後直ちに血中に分岐鎖アミノ酸が移行し、筋肉運動の機能が向上する。」(2頁左上欄5〜7行)が、甲第4号証(特開昭60-186261号公報)には、「(1)固型物中の分岐鎖アミノ酸の割合が2重量%以上となるように分岐鎖アミノ酸を配合し、更に少なくとも蛋白質を含有せしめた固体状食品組成物。」(特許請求の範囲の項)、及び「本発明の固体状食品組成物を食することにより、筋肉運動の機能が維持増強される。」(3頁右上欄18〜末行)が、それぞれ記載されている。
本件発明1は、「分岐鎖アミノ酸とクマリン類又はその誘導体を含む植物を含むことを特徴とする食品組成物。」であるところ、「分岐鎖アミノ酸」に関し、甲第1号証には、ロイシン、イソロイシン及びバリンの分岐鎖アミノ酸を経口摂取すると、筋肉痛、筋肉のこりやはりが解消されることが、並びに甲第3号証及び甲第4号証には、分岐鎖アミノ酸が筋肉運動の機能を向上させることが記載されており、また、「クマリン類又はその誘導体を含む植物」に関し、甲第2号証には、クマリン類を含む植物を投与するとむくみの改善に有効であることが記載されている。
しかるに、本件明細書の「実施例1,2,比較例1〜2」は、「【表1】配合処方(重量部)」に係る成分を配合した錠剤を被験者(A,B及びC)に投与し、その結果を「足の張りの改善」、「足の重みの改善」、「足のだるさの改善」及び「足の痛みの改善」を指標として「総合評価」したものであるところ、「セイヨウエビラハギエキス10」である「比較例1」では、Aが「-3」、Bが「-2」及びCが「-2」であり、「ロイシン10+イソロイシン15+バリン15」である「実施例1」では、Aが「+2」、Bが「+1」及びCが「+2」である。一方、本件発明1に係る「実施例2」は、「比較例1」と「実施例1」に係る成分を合わせたものに相当する「セイヨウエビラハギエキス10+ロイシン10+イソロイシン15+バリン15」であるから、総合評価は、「比較例1」と「実施例1」のを加算した、Aが「-1」、Bが「-1」及びCが「0」であると予測されるところ、その評価結果は、Aが「+4」、Bが「+3」及びCが「+3」となっており、この結果をみると、「分岐鎖アミノ酸」と「クマリン類を含む植物」をそれぞれ単独で用いた場合(実施例1,比較例1)より併用した場合には、相乗効果が奏されると解することができる。
そうすると、たとえ甲第1号証、甲第3号証及び甲第4号証には「分岐鎖アミノ酸」が、また、甲第2号証には「クマリン類を含む植物」が足のむくみの予防又は改善に有効であることが記載されているとしても、各甲号証にはこれらを併用することについて言及するところがないので、本件発明1のような構成を採用すること及びそれに基づく上記相乗効果は、当業者が容易に想到し得る域を超えているといえる。
してみれば、本件発明1は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(本件発明2及び3について)
本件発明2は、本件発明1の「クマリン類又はその誘導体を含む植物」を「セイヨウエビラハギ、セイヨウトチノキ、クルマバソウ及びヘンルーダから選ばれる1種又は2種以上」に限定したものであり、また、本件発明3は、本件発明1又は2の「食品組成物」を「足のむくみの予防又は改善用である」と特定したものであるから、本件発明1での判断と同じ理由により、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

B.特許法36条4項について
特許異議申立人は、本件明細書中の実施例及び比較例の試験において、(a)投与量、投与回数、投与日数などが記載されてない、(b)被験者が3名と少数である、(c)予防効果が確認できない、(d)セイヨウエビラハギエキスの評価が(-3,-2,-2)と最低であり、結果に疑念がある、及び(e)セイヨウトチノキ、クルマバソウ及びヘンルーダと分岐鎖アミノ酸との相乗効果の記載がない、と主張している。
しかし、(a)に関し、平成15年8月12日付意見書にて「具体的には、被験者に午後2時(足のむくんだ状態)に各錠剤8粒(1粒の重量250mg)を投与し、通常であればむくみがひどくなる夕方5時までそのまま立ち働いてもらい、仕事の終了後効果についてのモニターを行った。モニターの標準基準として、良い+1,普通0,悪い-1とした。」と説明されており、もはや投与量等に関し、不明瞭な点はないというべきである。
次に(b)に関し、3名の被験者においてその評価結果に格別の差異あるわけではないので、被験者が3名であるというだけで当該試験が不適切であるとはいえない。
(c)について、上記のとおり、被験者は、立ち仕事の途中である午後2時に錠剤を摂取し、夕方5時までそのまま立ち働いたのであるから、午後2時から5時までは、予防効果について検討したともいえる。
また、(d)について、「比較例1」におけるセイヨウエビラハギエキスの配合量でも、「足の張りの改善」及び「足の重みの改善」に関し3名全員が「悪い」と判断したわけではないので、この結果に疑念が生じる余地はないというべきである。
そして、(e)について、特許異議申立人は、相乗効果の記載がないと主張しているだけで、これを裏付ける試験結果を提出しているわけではないので、上記主張は採用の限りではないが、本件明細書の段落【0008】には、セイヨウエビラハギと同様に、セイヨウトチノキ、クルマバソウ及びヘンルーダにはクマリン類又はその誘導体が含まれていることが記載されているから、セイヨウエビラハギを分岐鎖アミノ酸と併用した場合に相乗効果が奏されるので、セイヨウトチノキ、クルマバソウ或いはヘンルーダを分岐鎖アミノ酸と併用すれば同様に相乗効果が奏されると推認することができる。
以上のとおりであるから、上記特許異議申立人の主張は失当である。

2.小羽根孝康よりの特許異議申立
特許異議申立人は、甲第1号証乃至甲第8号証を提出し、(1)本件発明1ないし3は、甲第1号証乃至甲第8号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反する、或いは、(2)本件明細書には記載の不備があるから、特許法36条4項の規定に違反する、と主張している。
A.特許法29条2項について
特許異議申立人は、甲第1号証(電気通信回線を通じたロート製薬株式会社の発表を証明する書面)或いは甲第2号証(「ヘルスケア・マーケティングトレードデータ2000」(2000年9月14日富士経済発行))により、メリロート(セイヨウエビラハギ)を含有する食品が、本件特許出願前に上市されたことにより公然知られたものであったことを立証しようとしているところ、甲第1号証には、「「セラシーン」は、従来のダイエット食品の視点とは異なる、「セルライト(脂肪が肥大・凝縮したもの)」に着目したスリミングサプリメント。 1999年3月にアメリカで発売されるやいなや、・・・」、「内容物:セラシーンリポバスコレンブレンド・・・(月見草油、フーカス、魚油、ブドウ種子抽出物、メリロート、レシチン、イチョウ葉抽出物)、グリセリン脂肪酸エステル」及び「「セラシーン」は、イタリア・メディステア社のジャンフランコ・メリッツィ博士が、「セルライト」に着目して開発したスリミング・サプリメントです。1994年の発売以来、世界的な注目を集め、現在、世界25か国以上で販売されています。日本でも2001年度上半期スリミング・ダイエットサプリメント市場で売上No.1の座に輝きました。」と記載され、また、甲第2号証には、「・その他では、近年「メリロートレッギースリム」(・・)に代表される特定部位のひきしめ効果を訴求した健康食品の発売が相次いでおり、今後の動向が注目される。」と記載されており、これらの記載によると、セイヨウエビラハギ(メリロート)は、セルライトに対して有効であるといえる。
しかし、セルライトとは、上記のとおり脂肪が肥大、凝縮したものであって、足のむくみ症状とは異なるものと解されるから、たとえ、セイヨウエビラハギを含有する食品が本件特許出願前に公然知られたものであったとしても、これが足のむくみ症状に有効であることが本件特許出願前に公然知られていたとまではいえない。
甲第3号証(特開2000-26289号公報)には、「分岐鎖アミノ酸を経口摂取することによる筋肉痛・筋肉のこり、はりの解消剤。」(特許請求の範囲の項)が、甲第4号証(「食品開発」34巻10号)には、「(アミノ酸を摂取した)いずれの場合においても、摂取した被験者が体感的に体調の改善・筋疲労の軽減等を感じていることから、アミノ酸摂取は共に意義があったのではないかと考える。」(4頁右欄20〜24行)が、甲第5号証(「アジコレファレンス」No.17)には、「BCAAを摂取することで、・・・運動に伴う疲労感、とくに中枢性疲労の軽減や予防、疲労の回復に効果があることが示唆されている。」(14頁右欄16〜20行)が、甲第6号証(特開昭58-165774号公報)には、「本発明者は分岐鎖アミノ酸を含む飲料の摂取が筋肉運動の機能を向上させることを知った。」(1頁左下欄18〜19行)が、甲第7号証(特公平4-58304号公報)には、「1 下記の(1),(2)及び(3)を有する固体状食品組成物。 (1)L-イソロイシン、L-ロイシン及びL-バリンが2.0〜0.6:1:0.4〜0.8の重量比率で配合されている分岐鎖アミノ酸を固体状食品組成物の固型分あたり2〜30重量含有する (2)分岐鎖アミノ酸に対して重量比で3〜30倍量の蛋白質を含有する (3)甘味物質を含有する。」(特許請求の範囲の項)が、そして、甲第8号証(ワイス著「植物療法の理論と実際」(昭和53年9月15日日本古医学資料センター発行)には、「セイヨウトチノキの種子のエキスは血管の組織壁に対して、浸出、浮腫形成の阻止、脆弱性の減少というような効果を及ぼす。静脈壁の透過性が減少し、これによって浮腫形成は阻止されるのである。」(349頁11〜13行)及び「メリーロートはセイヨウトチノキと同じように毛細血管の抵抗力を増し、血管の透過性を減少することが証明されている。この作用はリンパ管にまで及ぶので、リンパ浮腫に対する効果もある。」(353頁1〜3行)が、それぞれ記載されている。
上記、甲第1号証、甲第2号証及び甲第8号証には、セイヨウエビラハギやセイヨウトチノキ等のクマリン類又はその誘導体を含む植物について記載されているものの、分岐鎖アミノ酸と併用することについて言及されておらず、また、甲第3号証乃至甲第7号証には、分岐鎖アミノ酸について記載されているが、クマリン類又はその誘導体を含む植物と併用することについて開示されているところはない。
しかるに、本件発明1では、上記「1.A.」に説示したように、「分岐鎖アミノ酸」と「クマリン類又はその誘導体を含む植物」とを併用することにより、足のむくみ症状の予防・改善に相乗効果が奏されるものであるから、上記各甲号証に、本件発明1に係る各成分が個別に記載されていても、本件発明1は、甲第1号証乃至甲第8号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本件発明2は、本件発明1の「クマリン類又はその誘導体を含む植物」を「セイヨウエビラハギ、セイヨウトチノキ、クルマバソウ及びヘンルーダから選ばれる1種又は2種以上」に限定したものであり、また、本件発明3は、本件発明1又は2の「食品組成物」を「足のむくみの予防又は改善用である」と特定したものであるから、本件発明1での判断と同じ理由により、甲第1号証乃至甲第8号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

B.特許法36条4項について
特許異議申立人は、(a)本件明細書の実施例で使用されるセイヨウエビラハギエキスに実際クマリン類又はその誘導体が含まれているか不明である、(b)セイヨウトチノキ、クルマバソウ及びヘンルーダについて、分岐鎖アミノ酸と組み合わせたときの効果が不明である、及び(c)セイヨウエビラハギエキスがどのような抽出方法で得られたエキスであるか不明である、と主張している。
しかし、(a)に関し、本件明細書の段落【0008】に、セイヨウエビラハギがクマリン類を含むことが記載されているから、そのエキスにもクマリン類が含まれることは明らかであり、また、(c)に関し、同段落【0009】に、抽出方法が明示されている。
そして、(b)に関しては、「1.B.(e)」での判断と同じである。
したがって、上記特許異議申立人の主張は失当というほかない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし3についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-09-24 
出願番号 特願2000-73528(P2000-73528)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 536- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 恵理子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 田村 聖子
種村 慈樹
登録日 2002-05-24 
登録番号 特許第3310649号(P3310649)
権利者 株式会社ファンケル
発明の名称 食品組成物  
代理人 大島 泰甫  
代理人 下田 憲雅  
代理人 後藤 誠司  
代理人 佐々 紘造  
代理人 阪本 英男  
代理人 社本 一夫  
代理人 鈴木 修  
代理人 稗苗 秀三  
代理人 江尻 ひろ子  
代理人 矢部 耕三  

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