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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1085695 |
審判番号 | 不服2002-1046 |
総通号数 | 48 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-01-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-01-18 |
確定日 | 2003-10-16 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第145160号「有料暗号化放送の視聴装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 1月24日出願公開、特開平 7- 23364]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願発明 本願は、平成5年6月16日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成13年8月17日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 放送局からの有料暗号化放送を受信するデコーダと、少なくとも有料暗号化放送の復号化キーが記憶された可搬型の情報記憶媒体を装着することによって有料暗号化放送の前記デコーダによる復号化を可能にする書込み/読出し装置と、前記情報記憶媒体と前記放送局との間で通信手段を介して通信を行う通信装置とを備え、前記書込み/読出し装置を用いて前記有料暗号化放送の復号化キーが予め記憶された情報記憶媒体に前記放送局に対する料金の支払いに必要な情報を併せて記憶し、前記通信装置を用いて前記情報記憶媒体に記憶された前記料金の支払いに必要な情報を前記放送局に送信することを特徴とする有料暗号化放送の視聴装置。」 2 刊行物発明 (1)これに対して、原審拒絶理由で引用された、本願の出願日前である平成4年6月23日に頒布された「特開平4-175025号公報」(以下、「刊行物1」という)には次の事項が記載されている。 ア 「本方式はテレビジョン、ハイビジョン(高精細度テレビジョン)、各種データ方法等のいずれの有料方式にも適用可能なものであり」(2頁右上欄19行ないし左下欄1行) イ 「各放送事業者が有料放送を行う場合には、種々の料金設定方式のうちから特定の方式を採用し、それに基づいて受信者との契約を行う。この契約内容(例えば料金設定方式としてフラットフィー方式を用いる場合は契約期限など、ティア方式を用いる場合では契約期限と契約ティアなど、ペイパービュー方式を用いる場合では前払い金など)と前記ワーク鍵Kwを受信機の有料デコーダに送る。」(3頁右下欄11行ないし19行) ウ 「電波アドレッシング(放送波で個別情報を各有料デコーダに配付する)を用いる有料デコーダに埋め込まれた処理プログラムをICカードに内蔵すれば、ICカードを用いる方式で電波アドレッシングを併用することができる。・・・(中略)・・・このようなICカードの発行あるいはICカードの記録内容の書き替えで個別情報を配付する方式では、複数の放送事業者の有料放送を単一の有料放送受信機(有料デコーダ)で受信するときに、事業者毎に別カードとすると、CPU内蔵のICカードが増えたり予約録画等の待受受信がしにくくなるなどの・・・(中略)・・・問題が考えられ、これらを解決する必要があった。・・・(中略)・・・いま、ある放送事業者とあるサービスの受信の契約を行うと、当該放送事業者、当該サービスの個別情報(契約内容とワーク鍵Kw)を含んだCPU内蔵のICカード53が渡される。このICカードを有料デコーダ本体54のリーダ部に挿入すると、ICカードインタフェース回路22を介して関連情報の処理が行われる。すなわち、番組情報がICカード53に渡され、ICカード53内で処理された後復元されたKwがPN信号発生器17に出力される。次に、契約を更新するときには新たな個別情報(契約内容とKw)を含んだ個別情報配付手段52を受け取る。この個別情報配付手段52はICカードあるいは磁気カードあるいは電話線で送られる情報などいずれでも良い。この個別情報配付手段52に含まれる個別情報は、個別情報入力インターフェース51を介して個別情報の中間記憶手段50へ一旦記憶される。ここで、個別情報入力インターフェース51は個別情報配付手段52がICカードの場合はICカードリーダ、磁気カードの場合は磁気カードリーダ、電話線で送られる情報の場合には電話線用モデムとなる。個別情報の中間記憶手段50へ一旦記憶された個別情報は、適当な時にICカードインターフェース22を介してICカード53へ転送される。ICカード53には以前の個別情報が記憶されているので、これが不要の場合には書き替え、まだ使用可能な場合に転送された個別情報を追加する。」(4頁右下欄17行ないし5頁左下欄10行) エ 「個別情報配付手段73で配付された個別情報の内容、例えばペイパービュー方式における前払金の情報などが、CPU内蔵のICカード72に転送され」(8頁右上欄6行ないし9行) オ これらの記載事項からして、刊行物1には、「テレビジョン、ハイビジョン(高精細度テレビジョン)、各種データ方法等のいずれの有料方式にも適用可能なものであり、電波アドレッシング(放送波で個別情報を各有料デコーダに配付する)を用いる有料デコーダに埋め込まれた処理プログラムをICカードに内蔵し、ICカードを用いる方式で電波アドレッシングを併用することができる有料放送受信機(有料デコーダ)であって、 各放送事業者が有料放送を行う場合に、種々の料金設定方式のうちから特定の方式を採用し、それに基づいて受信者との契約を行い、この契約内容(例えば料金設定方式としてフラットフィー方式を用いる場合は契約期限など、ティア方式を用いる場合では契約期限と契約ティアなど、ペイパービュー方式を用いる場合では前払い金など)と前記ワーク鍵Kwを送られるものであり、 ある放送事業者とあるサービスの受信の契約を行って渡された、当該放送事業者、当該サービスの個別情報(契約内容とワーク鍵Kw)を含んだCPU内蔵のICカードを有料デコーダ本体54のリーダ部に挿入すると、ICカードインタフェース回路22を介して関連情報の処理が行われ、番組情報がICカード53に渡され、ICカード53内で処理された後復元されたKwがPN信号発生器17に出力され、 契約を更新するときに受け取る新たな個別情報(契約内容とKw)を含んだ個別情報配付手段52はICカードあるいは磁気カードあるいは電話線で送られる情報などいずれでも良く、この個別情報配付手段52に含まれる個別情報は、個別情報入力インターフェース51を介して個別情報の中間記憶手段50へ一旦記憶され、ここで、個別情報入力インターフェース51は個別情報配付手段52がICカードの場合はICカードリーダ、磁気カードの場合は磁気カードリーダ、電話線で送られる情報の場合には電話線用モデムであり、 個別情報の中間記憶手段50へ一旦記憶された個別情報は、適当な時にICカードインターフェース22を介してICカード53へ転送され、ICカード53には以前の個別情報が記憶されているので、これが不要の場合には書き替え、まだ使用可能な場合に転送された個別情報を追加し、個別情報配付手段73で配付された個別情報の内容、例えばペイパービュー方式における前払金の情報などが、CPU内蔵のICカード72に転送される 有料放送受信機。」(以下、「刊行物発明」という)が記載されていると認められる。 3 本願発明と刊行物発明との対比 本願発明と刊行物発明を対比すると、 (1)刊行物発明の「有料デコーダ」は、本願発明の「放送局からの有料暗号化放送を受信するデコーダ」に相当し、また、刊行物発明の「有料放送受信機」は、テレビジョン、ハイビジョン(高精細度テレビジョン)の有料方式に適用するものであり、テレビジョン受像機等の視聴機器が接続されていることは自明であるから、刊行物発明は、本願発明の「有料暗号化放送の視聴装置」に相当する構成を実質的に有している。 また、刊行物発明は「ある放送事業者とあるサービスの受信の契約を行って渡された、当該放送事業者、当該サービスの個別情報(契約内容とワーク鍵Kw)を含んだCPU内蔵のICカードを有料デコーダ本体54のリーダ部に挿入すると、ICカードインタフェース回路22を介して関連情報の処理が行われ、番組情報がICカード53に渡され、ICカード53内で処理された後復元されたKwがPN信号発生器17に出力され」るものであり、「個別情報の中間記憶手段50へ一旦記憶された個別情報は、適当な時にICカードインターフェース22を介してICカード53へ転送され、ICカード53には以前の個別情報が記憶されているので、これが不要の場合には書き替え、まだ使用可能な場合に転送された個別情報を追加」するものであることから、「リーダ部」「ICカードインターフェース」によりICカードへの書込みもするものでもある。してみると、刊行物発明は、本願発明の「少なくとも有料暗号化放送の復号化キーが記憶された可搬型の情報記憶媒体を装着することによって有料暗号化放送の前記デコーダによる復号化を可能にする書込み/読出し装置」に相当する構成を有している。 さらに、刊行物発明は「契約を更新するときに受け取る新たな個別情報(契約内容とKw)を含んだ個別情報配付手段52はICカードあるいは磁気カードあるいは電話線で送られる情報などいずれでも良」いものであるから、刊行物発明と本願発明とは「前記情報記憶媒体と前記放送局との間で通信手段を介して通信を行う通信装置とを備え」ている点で一致している。 そして、刊行物発明は「契約内容(例えば・・・、ペイパービュー方式を用いる場合では前払い金など)と前記ワーク鍵Kwを受信機の有料デコーダに送る」ものであり、「個別情報配付手段73で配付された個別情報の内容、例えばペイパービュー方式における前払金の情報などが、CPU内蔵のICカード72に転送される」ものであるから、本願発明の「前記書込み/読出し装置を用いて前記有料暗号化放送の復号化キーが予め記憶された情報記憶媒体に前記放送局に対する料金の支払いに必要な情報を併せて記憶する」に相当する構成を有している。 (2)したがって、両者は「放送局からの有料暗号化放送を受信するデコーダと、少なくとも有料暗号化放送の復号化キーが記憶された可搬型の情報記憶媒体を装着することによって有料暗号化放送の前記デコーダによる復号化を可能にする書込み/読出し装置と、前記情報記憶媒体と前記放送局との間で通信手段を介して通信を行う通信装置とを備え、前記書込み/読出し装置を用いて前記有料暗号化放送の復号化キーが予め記憶された情報記憶媒体に前記放送局に対する料金の支払いに必要な情報を併せて記憶することを特徴とする有料暗号化放送の視聴装置。」である点で一致し、本願発明が、「通信装置を用いて情報記憶媒体に記憶された前記料金の支払いに必要な情報を前記放送局に送信する」ものであるのに対し、刊行物発明はそのようなものではない点で相違しているものと認められる。 4 相違点についての検討 上記相違点のごとく、端末側装置(受信側装置)から放送する側(放送局)に対して料金の支払いに必要な情報を通信装置を用いて送信することは周知技術(必要ならば、特開昭63-128886号公報、特開昭63-67988号公報、特開昭50-24001号公報参照)であり、サービス等を使用後にその料金を支払ういわゆる「後払い」は普通におこなわれている商習慣にすぎないのであって、後払い可能とするという作用効果も予測の範囲内であり格別のものではないから、上記周知技術を採用して「後払い」を可能とすることは当業者にとって容易に推考できたものである。 5 請求人の主張 請求人は補正された審判請求書において、 (A)「引用例1には、本願発明の構成に欠くことができない事項のうちの「放送局からの有料暗号化放送を受信するデコーダと、少なくとも有料暗号化放送の復号化キーが記憶された可搬型の情報記憶媒体を装着することによって有料暗号化放送の前記デコーダによる復号化を可能にする書込み/読出し装置と、前記情報記憶媒体と前記放送局との間で通信手段を介して通信を行う通信装置とを備え、前記書込み/読出し装置を用いて前記有料暗号化放送の復号化キーが予め記憶された情報記憶媒体に前記放送局に対する料金の支払いに必要な情報を併せて記憶し、」に相当する技術が実質的に記載されているということができます。」 (B)「しかしながら、引用例1に記載の電話線は、放送局側から視聴装置側への個別情報の配付手段に過ぎず、引用例1には、「通信手段を介して情報記憶媒体に記憶された料金の支払いに必要な情報を放送局側に送信する技術」のみならず、「通信手段を介して視聴装置側から放送局側に料金の支払いに必要な情報又はその他の情報を送信する技術」が一切記載されていないので、引用例1,2を総合しても、本願請求項1に記載の発明の構成に欠くことができない事項のうちの「前記通信装置を用いて前記情報記憶媒体に記憶された前記料金の支払いに必要な情報を前記放送局に送信する技術」に容易に想到することができたとは到底考えられません。」 と主張している。 これら主張につき検討すると、上記主張における「引用例1」は本審決における「刊行物1」であるところ、上記主張(A)については当審の上記一致点の認定と実質的に変わりがなく、上記主張(B)についても当審の上記相違点の認定と実質的に変わりない。そして、上記相違点は周知技術であることは上記4で言及したとおりである。 また、請求人は、本願発明の作用効果として「契約者に料金の後払いを求めることが可能になります。」と主張しているが、「後払い」は普通におこなわれている商習慣にすぎず、そのように運用することは刊行物発明に周知技術を採用したものにおいても適宜なし得るものでしかないから、格別の作用効果とはいえないものである。 従って、請求人の上記主張を採用することができない。 6 むすび したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、請求項2ないし13に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-08-13 |
結審通知日 | 2003-08-19 |
審決日 | 2003-09-02 |
出願番号 | 特願平5-145160 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 達也 |
特許庁審判長 |
原 光明 |
特許庁審判官 |
小林 秀美 酒井 朋広 |
発明の名称 | 有料暗号化放送の視聴装置 |
代理人 | 武 顕次郎 |