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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1085959 |
審判番号 | 不服2002-25275 |
総通号数 | 48 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-09-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-12-04 |
確定日 | 2003-10-27 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 93259号「玄米食品の炊飯調理方法およびその玄米食品」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 9月12日出願公開、特開2000-245366]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年2月24日の出願であって、その請求項1ないし3に係る発明は、平成14年6月3日付手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】主材とする玄米に、必要に応じて適量の豆類、粟、稗などの穀類を適宜混合して酵素水に浸け、その後、とぎ汁を洗い流して炊飯用混合物とし、そこへ新しく用意した前記の酵素水を、圧力鍋などの炊飯器具の中に入れた前記炊飯用混合物に加え、適量の食用塩10〜15g、糖質20〜50gを徐々に混合しながら3〜5分程、よく攪拌し、前記圧力鍋などの炊飯器具内で炊き上げ、この炊き上がったものを保温器に移して保管し、適量の酸素を補給しながら、一定日数を経て玄米食品を得ることを特徴とする玄米食品の炊飯調理方法。 【請求項2】玄米を酵素水に浸け、とぎ汁を洗い流して炊飯用混合物とし、そこへ新しく用意した前記の酵素水を、圧力鍋などの炊飯器具の中に入れた前記炊飯用混合物に加え、適量の食用塩10〜15g、糖質20〜50gを徐々に混合しながら3〜5分程、よく攪拌し、前記圧力鍋などの炊飯器具内で炊き上げ、この炊き上がったものを保温器に移して保管し、適量の酸素を補給しながら、一定日数を経て得られることを特徴とする玄米食品。 【請求項3】玄米中に適量の豆類、粟、稗などの穀類を適宜混合したことを特徴とする請求項2記載の玄米食品。」 (以下、請求項1ないし3に係る発明を、それぞれ「本願発明1ないし3」という。) 2.引用例の記載内容 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された、特開平10-94368号公報(以下、「引用例1」という。)には、「食感の優れた玄米飯の製造法」に関し、(a)「【請求項1】玄米を洗米後、セルラーゼ酵素単独又はセルラーゼ酵素及びアミラーゼ酵素、プロテアーゼ酵素を配合した水溶液中に浸漬後、炊飯することを特徴とする食感の優れた玄米飯の製造法・・・(略)・・・【請求項3】洗米後、水に浸漬した玄米を炊飯する際、玄米100重量部に対して0.1〜10重量部の糖類、糖アルコール、デキストリン、でんぷん、化工でんぷんの中から選ばれた1種以上を添加することを特徴とする請求項1及び請求項2の範囲記載の食感の優れた玄米飯の製造法」(特許請求の範囲の項)、(b)「従来玄米飯の改良には、・・・(略)・・・炊飯時に圧力を掛けるなどの方法が取られてきた。」(2頁1欄24〜26行)、(c)「水洗後の玄米をセルラーゼ酵素単独又はセルラーゼ酵素とアミラーゼ酵素、プロテアーゼ酵素を含む水溶液に浸漬した後、炊飯することにより、炊飯玄米の食感が著しく向上し、さらに、炊飯時に糖類、糖アルコール、デキストリン、でんぷん、化工でんぷんから選ばれた1種以上を添加して炊飯することにより、炊飯玄米が時間の経過により食感が低下することを抑えることを見いだし、・・・」(2頁1欄38〜45行)、(d)「玄米の炊飯前の処理方法は、酵素を配合した水を40〜60℃に保ち、玄米を30分〜3時間浸漬する。」(2頁2欄22行〜24行)、(e)「本発明におけるセルラーゼの作用は、玄米の浸漬中に玄米表面に作用し、難消化性の繊維を分解するものと考えられる。又、αー及βーアミラーゼを併用することにより玄米のアミロース、アミロペクチンを糖化し、プロテアーゼによりたん白質を分解してペプチドにして、風味、食感の向上を図るものと考えられる。糖類、糖アルコール、デキストリン、でんぷん、化工でんぷんは炊飯米の表面を被覆して風味、食感を改良すると共に、時間の経過により玄米のでんぷん粒が老化してもこれらの糖類は老化せず、玄米飯の食感の低下を防ぐものと考えられる。」(2頁2欄33行〜43行)及び(f)「実施例4〜6 表3の配合で炊飯を行った。炊飯条件は、玄米70gを3回水洗した後水切りを行い、酵素製剤100mlの水に40℃で2時間浸漬した。ついで、5分間水切りを行い、計量し、全吸水量が158mlになるように加水してpHを5.0に調整し、ナショナル製炊飯器で炊飯した。添加剤は炊飯の際に加えた。」(3頁3欄下から6行〜3頁4欄下から9行)と記載されている。 上記(a)ないし(f)の記載からみて、引用例1には、玄米を水洗し水切りした後、そこへ酵素水を加え30分〜3時間浸漬し、水切りした後、該玄米に加水し糖質を加えて炊飯器具内で炊き上げることが記載されているものと認める。 同特開昭52-57349号公報(以下、「引用例2」という。)には、(g)「洗滌した玄米と米酵素を添加した水または煮出し汁の所定量をプラスチック製袋に入れ真空パックし、該袋を高圧釜に入れ玄米を炊き上げた後、該釜の内圧を保持しながら蒸気を抜きつつ冷風を吹き込み該釜内の温度を常温とししかる後内圧を常圧とすることを特徴とする真空パック内の玄米を炊飯する方法。」(特許請求の範囲の項)、(h)「実施例 玄米300g、ハト麦20g、ゴマ30gを混合し、・・・」(2頁左上欄17〜19行)及び(i)「煮出し汁原料(調味料) 出し昆布…25g、鰹節…20g、椎茸…30g、酵素…5g、梅エキス…4g、蜂蜜…30g、リンゴ酢…10g、醤油…20g、塩…10g、野菜…少量」(2頁右上欄7〜17行)と記載されている。 3.対比・判断 (本願発明1について) 本願発明1と引用例1に記載の発明とを対比すると、両者は、玄米を酵素水に漬ける処理を行った後、該玄米を炊飯器具内で炊き上げる玄米食品の炊飯調理方法の点で一致し、(1)前者は、洗米時玄米を酵素水に浸け、その後、とぎ汁を洗い流しているのに対し、後者では、玄米を水洗し、水切りしている点、(2)前者は、炊飯器具の中に入れた洗米後の玄米に酵素水を加え、適量の食用塩10〜15g、糖質20〜50gを徐々に混合しながら3〜5分程、よく撹拌し、次いで前記炊飯器具内で炊き上げるのに対し、後者では、洗米後の玄米に酵素水を加えて所定時間浸漬した後、水切りし、次いで該玄米を炊飯器具の中に入れ、加水しさらに糖質を加えた後、炊飯器具内で炊き上げる点、(3)前者は、炊飯器具として圧力鍋を使用するのに対して、後者には、圧力鍋を使用することについて記載されていない点、及び(4)前者では、炊き上がったものを保温器に移して保管し、適量の酸素を補給しながら、一定日数を経ているのに対して、後者には、この点について記載されていない点で相違する。 上記相違点(1)について検討するに、玄米に酵素水を加えて酵素処理を行うとき、その酵素処理には一定の時間を要するという特性に鑑み、その後の工程で使用する酵素水を洗米用水として用いて、洗米時においても玄米に酵素作用を働かせるようにすること、即ち、玄米を酵素水に浸け、その後、とぎ汁を洗い流すようにすることは、当業者が容易に実施し得ることである。 相違点(2)について検討すると、酵素水を用いて玄米を炊き上げることが引用例2に記載されていることから、引用例1の玄米の浸漬処理に用いた酵素水をそのまま炊飯用水として用いて玄米を炊き上げるようにすることは、当業者が容易に実施し得ることである。 また、玄米を炊飯するときに、予め玄米を適量の食塩を加えた水に浸漬すると、玄米を炊飯し易くなることは、本件出願時当業者において周知であった(必要なら、例えば特開昭51-151354号、特開昭54ー147944号、特開昭54ー17147号公報参照)ことから、炊飯の際に糖質だけでなく食用塩をも加えることは、当業者において容易に想到し得ることであり、また、本願の請求項1の記載では食用塩と糖質の添加量が炊飯用混合物のどれだけの量に対するものか不明であり、したがって、添加量についての数値限定に格別の意義を見出すことができないこと、及び先に記載したとおり、玄米に酵素水を加えて酵素処理を行うとき、その酵素処理には一定の時間を要することは当業者の技術常識であることを併せ考慮すると、食用塩と糖質の添加量をそれぞれ「10〜15g」、「20〜50g」とすること、及び混合撹拌時間を「3〜5分程」に限定することは、当業者において適宜なし得ることである。 相違点(3)について検討すると、引用例1の(b)及び引用例2の(g)の記載のように、玄米を炊飯するのに圧力式の炊飯器具を使用することは普通のことであるから、本願発明1において、圧力鍋などの炊飯器具を用いることに格別の困難性は見出せない。 相違点(4)について検討すると、炊き上がったものを保温器に移して保管することは、日常的に実施していることであり、当業者が適宜なし得ることである。 また、炊飯前に添加した酵素は、特別な耐熱性酵素である場合を除いて、炊飯時の熱(温度)により失活することは当業者の技術常識であるから、炊き上がった玄米を保温器に移して保管したとき、該保管中の玄米に炊飯前に加えた酵素の活性がそのまま残っているとは考えられず、これに適量の酸素を補給したとしても、該玄米中で前もって添加した酵素が活性な状態を維持していることなどあり得ず、生物でない酵素が増殖することなど更にあり得ないことを考慮すると、適量の酸素を補給しながら、一定日数を経るようにする点に格別の技術的意義を見出すことはできず、この点に格別の創意の存在を認めることはできない。 そして、本願発明1の効果について検討しても、本願明細書に「・・・前記圧力鍋内で炊き上げ、この炊き上がった玄米食品を保温器に移して保管し、その保温中において、この玄米食品に加えられた酵素成分が適量の酸素の補給と相まってその働きが活発になり、栄養価を高めた玄米食品となる。」と記載されているが、先に記載したとおり、炊き上がった玄米を保温器に移して保管したとき、該保管中の玄米に炊飯前に加えた酵素の活性がそのまま残っているとは考えられず、これに適量の酸素を補給したとしても、該玄米中で酵素が活性な状態で作用するようなことはあり得ず、本願発明1によって本願明細書に記載の上記効果が奏されるとは認められない。 なお、請求人は、審判請求書で「2 拒絶査定に対する反論」として、「平成14年6月3日付意見書に添付の資料Iに示すように[それは、審判請求人(出願人)の経営する有限会社木村商事が、財団法人日本食品分析センターに、先年、分析試験を委嘱した分析試験成績書であり、電気圧力釜によって、2気圧110度Cで炊き上げた本件特許出願の発明の酵素玄米飯の炊飯後、4日目の分析試験結果]各種のアミノ酸の存在が実証されており、したがってこれらのアミノ酸の組み合わせによる酵素の存在は、前記の炊飯温度を加えたことによっても、酵素が失活することがないことを示している。」(6頁21行〜27行)と主張している。 しかしながら、炊飯後の玄米中に存在するアミノ酸には、元々アミノ酸として存在していたもの及び酵素作用以外の作用に起因して生成したアミノ酸も含まれるものと解され、上記分析試験の結果をもって、直ちに炊飯後の玄米中に活性を有する酵素が存在していたと認めることはできない。 また、請求人は、審判請求書で「2 拒絶査定に対する反論」として、「耐熱性の強い酵素は、本件特許出願の発明の出願時に既に市販されているものであり、請求人(出願人)はそれを選択、採用して本件特許出願の発明としているものであり、審査官の云うように格別に特殊な酵素ではない。因みにそのような酵素の一例を挙げれば、商品名「バイオ・ノーマライザー」(カリカパパイヤを主成分とし、酵母と微生物を加えて発酵熟成させた酵素食品であり、100度C、60分の熱処理に優に耐えることができる。)・・・がある。上記のようにこのような商品は、本件特許出願の発明の出願時である平成11年(1999年)2月24日の相当以前である1995年当時において何人でも容易に入手できる商品であり、請求人(出願人)はそれを採用して本件特許出願の発明に使用したものである。」(7頁10〜23行)と主張している。 しかし、本願発明に係る「酵素水」に関して、本願明細書には「酵素水[各種の粘菌を選んで水中に入れ、培養増殖させて作成した液]」(段落【0005】)との記載だけであるところ、上記「バイオ・ノーマライザー」は、「カリカパパイヤを主成分とし、酵母と微生物を加えて発酵熟成させた酵素食品」であって、カリカパパイヤ及び酵母は粘菌の範疇に入るものではないから、本願発明に係る「酵素水」とはその由来において相違する。 そうすると、本願明細書の記載に照らし、本願発明においては、「バイオ・ノーマライザー」を使用しているとはいえないから、これを使用したことを根拠に本願発明において格別の効果が奏されるという請求人の主張は失当である。 してみると、本願発明1は、引用例1及び2に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたといえる。 (本願発明2及び3について) 本願発明2は、本願発明1の「玄米食品の炊飯調理方法」という「物を生産する方法」の発明を、「玄米食品」という「物」の発明で表現したものであるから、本願発明1における判断と同様の理由により、引用例1及び2に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたといえる。 また、本願発明3は、本願発明2に「適量の豆類、粟、稗などの穀類を適宜混合」するという事項を加えたものであるところ、引用例2の(h)のように、玄米に他の穀物を混合することは、よく知られたことであるから、本願発明3は、引用例1及び2に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたといえる。 4.むすび したがって、本願発明1乃至3は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-07-29 |
結審通知日 | 2003-08-05 |
審決日 | 2003-09-01 |
出願番号 | 特願平11-93259 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A23L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内田 俊生、北村 弘樹 |
特許庁審判長 |
田中 久直 |
特許庁審判官 |
柿沢 恵子 河野 直樹 |
発明の名称 | 玄米食品の炊飯調理方法およびその玄米食品 |
代理人 | 松永 善蔵 |