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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない E04B
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない E04B
管理番号 1086260
審判番号 訂正2001-39190  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-07-02 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2001-10-22 
確定日 2003-11-11 
事件の表示 特許第3004046号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本件訂正審判請求に係る特許第3004046号に係る発明についての出願は、平成2年11月20日に特許出願され、平成11年11月19日にその発明について特許の設定登録がされたところ、その後、平成12年8月9日付けで本件特許を無効にすることについての審判(無効2000-35429)が請求され、平成13年6月5日付けで「特許第3004046号の請求項1〜4に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との無効審決がされ、その後、平成13年7月12日に特許権者により東京高等裁判所に審決の取消しを求める訴え(平成13年(行ケ)306号)が提起される一方、平成13年10月22日付けで本件発明の願書に添付した明細書の訂正を求める本件訂正審判(訂正2001-39190)が請求され、平成13年12月19日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内の平成14年2月25日付けで意見書が提出されたものである。


【2】請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3004046号の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という)を、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正すること求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
〔1〕訂正事項a:特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4を次のとおりに訂正する。
「【請求項1】セメントにガラス繊維を混入して形成したGRCパネルであって、該GRCパネル内に発泡スチロール又はウレタンホーム等の有機質系の発泡体を密閉し、該パネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物に於て、前記GRCパネルは構造体を兼ね、且つ、その厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成され、更に、該GRCパネルにはその四隅に夫々切欠部が設けられ、該切欠部にスリーブナットを、該スリーブナットの雌螺子孔が開放するようにして埋設し、一方、前記プレハブ建造物の基礎と、該基礎上に直線状に立設された壁用のGRCパネルとを接合するための取り付け金物であって、該取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの一側縁部に立設した側面プレートとから成り、且つ、該ベースプレートには、前記隣接する壁用のGRCパネルの接合部位の基礎に設けられているアンカーボルトを挿通するためのボルト孔が開穿されており、更に、前記側面プレートにも、前記隣接する壁用のGRCパネル双方に設けられている前記スリーブナットと対峙する個所にボルト孔が開穿されており、前記基礎に設けられたアンカーボルトをベースプレートに設けたボルト孔に挿通してナットにて緊締し、更に、隣接する双方のGRCパネルに設けた前記スリーブナットが埋設されている前記切欠部に側面プレートを係合し、該スリーブナットに該側面プレートに設けたボルト孔よりボルトを螺入して緊締したことを特徴とするプレハブ建造物。
【請求項2】セメントにガラス繊維を混入して形成したGRCパネルであって、該GRCパネル内に発泡スチロール又はウレタンホーム等の有機質系の発泡体を密閉し、該パネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物に於て、前記GRCパネルは構造体を兼ね、且つ、その厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成され、更に、該GRCパネルにはその四隅に夫々切欠部が設けられ、該切欠部にスリーブナットを、該スリーブナットの雌螺子孔が開放するようにして埋設し、一方、前記プレハブ建造物の角部における基礎と、隣接の壁用のGRCパネルの下端部とを接合するための取り付け金物であって、該取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの外縁部に立設した側面プレートとから成り、且つ、該取り付け金物は中央部で直角に折曲されて平面視L字状に形成されて成り、更に、該ベースプレートには、前記建造物の角部の基礎に設けられているアンカーボルトを挿入するためのボルト孔が設けられており、更に、前記側面プレートにも、建造物の角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルの夫々の下端部に設けられた前記スリーブナットにボルトを挿通するためのボルト孔が開穿されており、前記基礎に設けられたアンカーボルトをベースプレートに設けたボルト孔に挿通してナットにて緊締し、更に、建造物の角部に配設される角部用のGRCパネル及び該GRCパネルに隣接する壁用のGRCパネルの夫々の接合部位に設けた前記スリーブナットが埋設されている前記切欠部に側面プレートを係合し、該スリーブナットに該側面プレートに設けたボルト孔よりボルトを螺入して緊締したことを特徴とするプレハブ建造物。
【請求項3】セメントにガラス繊維を混入して形成したGRCパネルであって、該GRCパネル内に発泡スチロール又はウレタンホーム等の有機質系の発泡体を密閉し、該パネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物に於て、前記GRCパネルは構造体を兼ね、且つ、その厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成され、更に、該GRCパネルにはその四隅に夫々切欠部が設けられ、該切欠部にスリーブナットを、該スリーブナットの雌螺子孔が開放するようにして埋設し、一方、前記プレハブ建造物の屋根用のGRCパネルと直線状に隣接した壁用のGRCパネルとを相互に接合するための取り付け金物であって、該取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの一側縁に立設した側面プレートとから成り、且つ、該ベースプレートには前記隣接する壁用のGRCパネルの接合部位の屋根用のGRCパネルに設けられている前記スリーブナットと対峙する個所にボルト孔が開穿されており、更に、前記側面プレートにも前記隣接する壁用のGRCパネル双方に設けられている前記スリーブナットと対峙する個所にボルト孔が開穿されており、前記屋根用のGRCパネルに設けられている前記切欠部にベースプレートを係合し、前記壁用のGRCパネルに設けられている前記切欠部に側面プレートを係合し、前記屋根用のGRCパネル及び壁用のGRCパネルに夫々設けられている前記スリーブナットに、該スリーブナットに夫々対峙して設けられている前記ボルト孔からボルトを螺入して緊締したことを特徴とするプレハブ建造物。
【請求項4】セメントにガラス繊維を混入して形成したGRCパネルであって、該GRCパネル内に発泡スチロール又はウレタンホーム等の有機質系の発泡体を密閉し、該パネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物に於て、前記GRCパネルは構造体を兼ね、且つ、その厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成され、更に、該GRCパネルにはその四隅に夫々切欠部が設けられ、該切欠部にスリーブナットを、該スリーブナットの雌螺子孔が開放するようにして埋設し、一方、前記プレハブ建造物の角部における屋根用のGRCパネルと、隣接の壁用のGRCパネルの上端部とを接合するための取り付け金物であって、該取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの外縁部に立設した側面プレートとから成り、且つ、該取り付け金物は中央部で直角に折曲されて平面視L字状に形成されて成り、更に、該ベースプレートには前記建造物の角部における屋根用GRCパネルに設けられた前記スリーブナットに対峙する個所にボルト孔が開穿されており、更に、前記側面プレートにも、建造物の角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルの夫々の上端部に設けられた前記スリーブナットにボルトを挿通するためのボルト孔が開穿されており、前記角部における屋根用のGRCパネルに設けられている前記切欠部にベースプレートを係合し、前記角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルの夫々の上端部に設けられている前記切欠部に側面プレートを係合し、前記各スリーブナットに之と対峙する前記各ボルト孔よりボルトを螺入して緊締したことを特徴とするプレハブ建造物。」
〔2〕訂正事項b:特許明細書2頁18行〜3頁6行(平成11年4月26日付け手続補正書による補正あり,本件特許掲載公報4欄30行〜6欄7行)の記載を次のとおりに訂正する。
「【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、セメントにガラス繊維を混入して形成したGRCパネルであって、該GRCパネル内に発泡スチロール又はウレタンホーム等の有機質系の発泡体を密閉し、該パネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物に於て、前記GRCパネルは構造体を兼ね、且つ、その厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成され、更に、該GRCパネルにはその四隅に夫々切欠部が設けられ、該切欠部にスリーブナットを、該スリーブナットの雌螺子孔が開放するようにして埋設し、一方、前記プレハブ建造物の基礎と、該基礎上に直線状に立設された壁用のGRCパネルとを接合するための取り付け金物であって、該取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの一側縁部に立設した側面プレートとから成り、且つ、該ベースプレートには、前記隣接する壁用のGRCパネルの接合部位の基礎に設けられているアンカーボルトを挿通するためのボルト孔が開穿されており、更に、前記側面プレートにも、前記隣接する壁用のGRCパネル双方に設けられている前記スリーブナットと対峙する個所にボルト孔が開穿されており、前記基礎に設けられたアンカーボルトをベースプレートに設けたボルト孔に挿通してナットにて緊締し、更に、隣接する双方のGRCパネルに設けた前記スリーブナットが埋設されている前記切欠部に側面プレートを係合し、該スリーブナットに該側面プレートに設けたボルト孔よりボルトを螺入して緊締したプレハブ建造物、及びセメントにガラス繊維を混入して形成したGRCパネルであって、該GRCパネル内に発泡スチロール又はウレタンホーム等の有機質系の発泡体を密閉し、該パネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物に於て、前記GRCパネルは構造体を兼ね、且つ、その厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成され、更に、該GRCパネルにはその四隅に夫々切欠部が設けられ、該切欠部にスリーブナットを、該スリーブナットの雌螺子孔が開放するようにして埋設し、一方、前記プレハブ建造物の角部における基礎と、隣接の壁用のGRCパネルの下端部とを接合するための取り付け金物であって、該取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの外縁部に立設した側面プレートとから成り、且つ、該取り付け金物は中央部で直角に折曲されて平面視L字状に形成されて成り、更に、該ベースプレートには、前記建造物の角部の基礎に設けられているアンカーボルトを挿入するためのボルト孔が設けられており、更に、前記側面プレートにも、建造物の角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルの夫々の下端部に設けられた前記スリーブナットにボルトを挿通するためのボルト孔が開穿されており、前記基礎に設けられたアンカーボルトをベースプレートに設けたボルト孔に挿通してナットにて緊締し、更に、建造物の角部に配設される角部用のGRCパネル及び該GRCパネルに隣接する壁用のGRCパネルの夫々の接合部位に設けた前記スリーブナットが埋設されている前記切欠部に側面プレートを係合し、該スリーブナットに該側面プレートに設けたボルト孔よりボルトを螺入して緊締したプレハブ建造物、並びにセメントにガラス繊維を混入して形成したGRCパネルであって、該GRCパネル内に発泡スチロール又はウレタンホーム等の有機質系の発泡体を密閉し、該パネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物に於て、前記GRCパネルは構造体を兼ね、且つ、その厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成され、更に、該GRCパネルにはその四隅に夫々切欠部が設けられ、該切欠部にスリーブナットを、該スリーブナットの雌螺子孔が開放するようにして埋設し、一方、前記プレハブ建造物の屋根用のGRCパネルと直線状に隣接した壁用のGRCパネルとを相互に接合するための取り付け金物であって、該取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの一側線に立設した側面プレートとから成り、且つ、該ベースプレートには前記隣接する壁用のGRCパネルの接合部位の屋根用のGRCパネルに設けられている前記スリーブナットと対峙する個所にボルト孔が開穿されており、更に、前記側面プレートにも前記隣接する壁用のGRCパネル双方に設けられている前記スリーブナットと対峙する個所にボルト孔が開穿されており、前記屋根用のGRCパネルに設けられている前記切欠部にベースプレートを係合し、前記壁用のGRCパネルに設けられている前記切欠部に側面プレートを係合し、前記屋根用のGRCパネル及び壁用のGRCパネルに夫々設けられている前記スリーブナットに、該スリーブナットに夫々対峙して設けられている前記ボルト孔からボルトを螺入して緊締したプレハブ建造物、及びセメントにガラス繊維を混入して形成したGRCパネルであって、該GRCパネル内に発泡スチロール又はウレタンホーム等の有機質系の発泡体を密閉し、該パネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物に於て、前記GRCパネルは構造体を兼ね、且つ、その厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成され、更に、該GRCパネルにはその四隅に夫々切欠部が設けられ、該切欠部にスリーブナットを、該スリーブナットの雌螺子孔が開放するようにして埋設し、一方、前記プレハブ建造物の角部における屋根用のGRCパネルと、隣接の壁用のGRCパネルの上端部とを接合するための取り付け金物であって、該取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの外縁部に立設した側面プレートとから成り、且つ、該取り付け金物は中央部で直角に折曲されて平面視L字状に形成されて成り、更に、該ベースプレートには前記建造物の角部における屋根用GRCパネルに設けられた前記スリーブナットに対峙する個所にボルト孔が開穿されており、更に、前記側面プレートにも、建造物の角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルの夫々の上端部に設けられた前記スリーブナットにボルトを挿通するためのボルト孔が開穿されており、前記角部における屋根用のGRCパネルに設けられている前記切欠部にベースプレートを係合し、前記角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルの夫々の上端部に設けられている前記切欠部に側面プレートを係合し、前記各スリーブナットに之と対峙する前記各ボルト孔よりボルトを螺入して緊締したプレハブ建造物を提供するものである。」
〔3〕訂正事項c:特許明細書3頁7〜19行(平成11年4月26日付け手続補正書による補正あり,本件特許掲載公報6欄8行〜7欄14行)の記載を次のとおりに訂正する。
「【作用】発泡スチロール、ウレタンホーム或いは軽量コンクリート等の発泡体を密封したGRCパネルによって壁用のGRCパネルと、角部用のGRCパネル及び屋根用のGRCパネルとが形成されているので、之等各パネルは軽量で且つ、強度も大なることは当然であり、従って、構造体を兼ねることができると共に、厚みを大に形成されていることにより断熱性及び遮音性が向上する。而して、之等各パネルを組立ててプレハブ建造物を構築するとき、請求項1記載の発明は、建造物の直線部位の基礎に設けられたアンカーボルトに、取り付け金物のベースプレートに設けたボルト孔を挿通してナットにて緊締し、更に、該取り付け金物の側面プレートを壁用のGRCパネルの下部隅部に設けた切欠部に係合し、そして、該側面プレートに設けたボルト孔を介して隣接の接合せらるべき壁用のGRCパネル双方に設けられ、且つ、前記切欠部に埋設されたスリーブナットにボルトを螺入して緊締することにより、該壁用のGRCパネルは基礎上に相互に緊結された状態で直線状に立設されることができる。次に、請求項2記載の発明は、建造物の角部の基礎に設けられたアンカーボルトに、取り付け金物のベースプレートに設けられたボルト孔を挿通してナットにて緊締し、更に、建造物の角部に配設される角部用のGRCパネル及び該GRCパネルに隣接する壁用のGRCパネルの夫々の接合部位であって、夫々の下部隅部に設けた切欠部に側面プレートを係合し、そして、該切欠部に夫々埋設されているスリーブナットに前記側面プレートに設けたボルト孔よりボルトを螺入して緊締することにより、建造物の角部の基礎上に相互に緊結された状態で平面視L字状に立設されることができる。又、請求項3記載の発明は、前記請求項1記載の発明に於て基礎上に直線状に立設された壁用のGRCパネルの上端部相互並びに該壁用のGRCパネル上に載設せられて結合せらるべき屋根用のGRCパネルに夫々設けられた切欠部に埋設しているスリーブナットに、取り付け金物のベースプレート及び側面プレートに設けられているボルト孔を介して夫々ボルト締めするとき、該取り付け金物のベースプレートを屋根用のGRCパネルに設けた切欠部に係合し、側面プレートを壁用のGRCパネルに設けた切欠部に係合し、そして、夫々対峙するボルト孔よりボルトを挿入して前記スリーブナットに螺着することにより、建造物の角部に於て基礎上に立設された壁用のGRCパネルの上端部及び屋根用のGRCパネル相互を緊結して直線状に隣接する壁用のGRCパネル及び屋根用のGRCパネルを組立てることができる。次に、請求項4記載の発明は、前記請求項2記載の発明に於て、建造物の角部の基礎上に立設された角部用のGRCパネル及び該角部用のGRCパネルに隣接して立設されている壁用のGRCパネルの上端部相互並びに各GRCパネル上に載設せられて結合せらるべき屋根用のGRCパネルに夫々設けられたスリーブナットに、取り付け金物のベースプレート及び側面プレートに設けられているボルト孔を介して夫々ボルト締めするとき、該取り付け金物のベースプレートを屋根用のGRCパネルに設けられ、且つ、前記スリーブナットを埋設した切欠部に係合し、側面プレートの中央部の曲折部を前記角部用のGRCパネルに設けた切欠部に係合し、更に、該側面プレートの余端部を該角部用のGRCパネルに隣接している壁用のGRCパネルに設けられた切欠部に係合し乍ら、夫々のGRCパネルに設けた前記スリーブナットに夫々対応するボルト孔よりボルトを挿入して螺着することにより、建造物の角部に於て基礎上に立設された角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルの上端部、並びに之等のGRCパネル上に載設されて結合される屋根用のGRCパネル相互が緊結されて建造物の角部の上部に於て、各GRCパネルが組立てられる。」

〔4〕訂正事項d:特許明細書5頁17行(本件特許掲載公報7欄47行)の「GRCパネル2」を「GRCパネル」と訂正する。

〔5〕訂正事項e:特許明細書9頁20行〜10頁1行(本件特許掲載公報9欄12行)の「GRCパネル2」を「角部用GRCパネル2a」と訂正する。

〔6〕訂正事項f:特許明細書11頁16行〜12頁14行(平成11年4月26日付け手続補正書による補正あり,本件特許掲載公報9欄43行〜11欄7行)の記載を次のとおりに訂正する。
「【発明の効果】本発明は、発泡スチロール、ウレタンホーム或いは軽量コンクリート等の発泡体を密封したGRCパネルによって壁用のGRCパネルと、角部用のGRCパネル及び屋根用のGRCパネルとが形成されているので、之等各パネルは軽量で且つ、強度も大なることは当然であり、従って、構造体を兼ねることができると共に、厚みを大に形成されていることにより断熱性及び遮音性が向上する。而して、之等各パネルを組立ててプレハブ建造物を構築するとき、請求項1記載の発明は、建造物の直線部位の基礎に設けられたアンカーボルトに、取り付け金物のベースプレートに設けたボルト孔を挿通してナットにて緊締し、更に、該取り付け金物の側面プレートを壁用のGRCパネルの下部隅部に設けた切欠部に係合し、そして、該側面プレートに設けたボルト孔を介して隣接の接合せらるべき壁用のGRCパネル双方に設けられ、且つ、前記切欠部に埋設されたスリーブナットにボルトを螺入して緊締することにより、該壁用のGRCパネルは基礎上に相互に緊結された状態で直線状に立設されることができる。次に、請求項2記載の発明は、建造物の角部の基礎に設けられたアンカーボルトに、取り付け金物のベースプレートに設けられたボルト孔を挿通してナットにて緊締し、更に、建造物の角部に配設される角部用のGRCパネル及び該GRCパネルに隣接する壁用のGRCパネルの夫々の接合部位であって、夫々の下部隅部に設けた切欠部に側面プレートを係合し、そして、該切欠部に夫々埋設されているスリーブナットに前記側面プレートに設けたボルト孔よりボルトを螺入して緊締することにより、建造物の角部の基礎上に相互に緊結された状態で平面視L字状に立設されることができる。又、請求項3記載の発明は、前記請求項1記載の発明に於て基礎上に直線状に立設された壁用のGRCパネルの上端部相互並びに該壁用のGRCパネル上に載設せられて結合せらるべき屋根用のGRCパネルに夫々設けられた切欠部に埋設しているスリーブナットに、取り付け金物のベースプレート及び側面プレートに設けられているボルト孔を介して夫々ボルト締めするとき、該取り付け金物のベースプレートを屋根用のGRCパネルに設けた切欠部に係合し、側面プレートを壁用のGRCパネルに設けた切欠部に係合し、そして、夫々対峙するボルト孔よりボルトを挿入して前記スリーブナットに螺着することにより、建造物の角部に於て基礎上に立設された壁用のGRCパネルの上端部及び屋根用のGRCパネル相互を緊結して直線状に隣接する壁用のGRCパネル及び屋根用のGRCパネルを設けた切欠部に係合し、組立てることができる。次に、請求項4記載の発明は、前記請求項2記載の発明に於て、建造物の角部の基礎上に立設された角部用のGRCパネル及び該角部用のGRCパネルに隣接して立設されている壁用のGRCパネルの上端部相互並びに各GRCパネル上に載設せられて結合せらるべき屋根用のGRCパネルに夫々設けられたスリーブナットに、取り付け金物のベースプレート及び側面プレートに設けられているボルト孔を介して夫々ボルト締めするとき、該取り付け金物のベースプレートを屋根用のGRCパネルに設けられ、且つ、前記スリーブナットを埋設した切欠部に係合し、側面プレートの中央部の曲折部を前記角部用のGRCパネルに設けた切欠部に係合し、更に、該側面プレートの余端部を該角部用のGRCパネルに隣接している壁用のGRCパネルに設けられた切欠部に係合し乍ら、夫々のGRCパネルに設けた前記スリーブナットに夫々対応するボルト孔よりボルトを挿入して螺着することにより、建造物の角部に於て基礎上に立設された角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルの上端部、並びに之等のGRCパネル上に埋設されて結合される屋根用のGRCパネル相互が緊結されて建造物の角部の上部に於て、各GRCパネルが容易迅速、且つ、強固に組立てられる。斯くして、本発明は大型の基礎を要することなくGRCパネルを簡易に組合せることによりプレハブ建造物を構築することができるため、プレハブ化を促進して工程、工期又は建設コストを削減し、品質の安定化を図ることができるのである。」


【3】当審の判断
〔1〕訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
この訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜4における「GRCパネル」の全体構造、及び、その四隅での「スリーブナット」の埋設構造に関して、全請求項において、「前記GRCパネルは構造体を兼ね、且つ、その厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成され、更に、該GRCパネルにはその四隅に夫々切欠部が設けられ、該切欠部にスリーブナットを、該スリーブナットの雌螺子孔が開放するようにして埋設し、」と限定したものであり、また、「GRCパネル」への「取り付け金物」の配設構造に関して、請求項1,2において、「前記スリーブナットが埋設されている前記切欠部に側面プレートを係合し、」と限定し、請求項3において、「前記屋根用のGRCパネルに設けられている前記切欠部にベースプレートを係合し、前記壁用のGRCパネルに設けられている前記切欠部に側面プレートを係合し、」と限定し、請求項4において、「前記角部における屋根用のGRCパネルに設けられている前記切欠部にベースプレートを係合し、前記角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルの夫々の上端部に設けられている前記切欠部に側面プレートを係合し、」と限定したものである。
そして、全請求項における「GRCパネル」の全体構造の点については、特許明細書に「そして、該発泡体4をGRC3内に密閉したことにより、GRCパネル2,2a,2bの厚さを大として断熱性、遮音性を向上する。」(4頁17〜19行(本件特許掲載公報7欄30〜32行))と記載され、「又、該GRCパネル2,2a,2bは内部に発泡体4を充填された状態となると共に、該発泡体4は外衝により損傷することもなく、前記GRC3と該発泡体4との相乗効果により強度及び耐久力が向上する。従って、該GRCパネル2を構造体とすることができる。尚、第2図中3aはGRCパネル2,2a,2bの強度を向上するリブである。」(5頁13〜20行(本件特許掲載公報7欄43〜48行))と記載されており、同、「GRCパネル」の四隅での「スリーブナット」の埋設構造の点については、「又、上記製造中にGRCパネル2,2a,2bの四隅にスリーブナット6,6…が治具を用いて埋設され、該スリーブナット6の雌螺子孔7を該GRCパネル2,2a,2bの内側面(第4図中上面)に開放してある。」(6頁1〜5行(本件特許掲載公報7欄49行〜8欄2行))と記載され、「尚、図中符号20はパネル製造中にスリーブナット6を埋設する治具等により形成される切欠部であり、該切欠部20へ取り付け金物9,9a,9b,9cを係合できるように形成してある。」(11頁3〜6行(本件特許掲載公報9欄31〜34行))と記載されており、また、請求項1,2、及び、請求項3,4における「GRCパネル」への「取り付け金物」の配設構造については、上記「尚、図中符号20はパネル製造中にスリーブナット6を埋設する治具等により形成される切欠部であり、該切欠部20へ取り付け金物9,9a,9b,9cを係合できるように形成してある。」(11頁3〜6行(本件特許掲載公報9欄31〜34行))と記載され、第9〜18図に、GRCパネルの四隅に設けた切欠部にスリーブナットを設け、該切欠部に取り付け金物の側面プレート或いはベースプレートを係合した状態が記載されている。
したがって、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから新規事項の追加に該当せず、しかも、本件各発明の持つ作用効果に何らの変更を及ぼさないものであるから実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(2)訂正事項b〜fについて
これらの訂正は、上記訂正事項aの訂正に伴い、それとの整合を図るために特許明細書の発明の詳細な説明の記載を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから新規事項の追加に該当せず、しかも、本件各発明の持つ作用効果に何らの変更を及ぼさないものであるから実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正審判請求による特許明細書の訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合する。


〔2〕独立特許要件
(1)本件訂正明細書の請求項1〜4に係る発明
本件訂正明細書の請求項1〜4に係る発明(以下、それぞれ、「本件訂正発明1〜4」という)は、訂正明細書及び設定登録時の図面の記載からみて、訂正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものと認める。(上記【2】〔1〕「訂正事項a」参照。)

(2)訂正拒絶理由の概要
一方、平成13年12月19日付けで通知した訂正拒絶理由通知書の訂正拒絶理由の概要は、次のとおりである。
「本件訂正発明1〜4は、何れも、刊行物1,2に記載された発明と従来周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明である。」から、「本件訂正審判請求による訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正前特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正を認めることができない。」

(3)引用刊行物及びそれに記載された技術事項
1.刊行物1:「積算資料」1990年11月号、グラビア広告8〜9頁、1990年11月1日、財団法人経済調査会発行(無効審判請求書における甲第1号証。尚、記載事項の認定に際しては当該甲第1号証を援用する。)
トヨタハウス株式会社の「GRCダブルスキンパネル製F.S.T.ユニパネルシステム」についての広告であって、「F.S.T.ユニパネルシステムは、時代のニーズから生まれた、RC・ブロックに代わる、ニューテクノロジーのコンクリートパネル工法。」(8頁5〜9行)、「日本建築センター評定 No.BCJ-LC-330」(同頁13行)と記載され、また、「断熱材をGRC(耐アルカリガラス繊維強化セメント)でフルカバーしたユニパネルは、抜群の耐久性・耐衝撃性を持ち、しかも軽量、スピーディな施工でメンテナンスも容易です。」(同頁右欄1〜3行)、「スピーディな施工 設置は効率のよいパネル工法ですから、わずか3週間というスピーディな工期で、工費も削減できます。」(同頁右欄14〜16行)と記載され、また、プレハブ建造物を構成するGRCパネルの一部切欠斜視図を示す「構造図」(9頁)には、GRCにより断熱材を密閉した構造が記載されている。
さらに、GRCパネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物の一部展開斜視図(同8頁)には、屋根と隣接するパネルとの取付部分(無効審判請求人が付した符号A,C部分参照)においては、取り付け金物を介して取り付け、その取り付け金物は少なくとも長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの一側縁に立設した側面プレートとから成り、取り付け金物に設けられた孔から接合部材を挿入して屋根と隣接するパネルとを接合して組み立てるものであることが認められ、また、基礎と隣接するパネルとの取付部分(無効審判請求人が付した符号B部分参照)においては、取り付け金物を抜き出して明示していないが、前記屋根と隣接するパネルとの取り付け構造からみて、取り付け金物を介するものであることは明らかであり、その取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの一側縁に立設した側面プレートとから成り、取り付け金物に設けられた孔から接合部材を挿入して基礎と隣接するパネルとを接合して組み立てるものであることが認められる。(以下、無効審判請求人が付した符号A〜C部分は、それぞれ、単に「A〜C部分」という)
そして、取り付け金物の取付態様は次のとおりである。
(A)屋根用のGRCパネルと直線状に隣接した壁用のGRCパネルとの接合(A部分参照)
プレハブ建造物の屋根用のGRCパネルと、直線状に隣接した壁用のGRCパネルとを接合するための取り付け金物であって、取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの一側縁部に立設した側面プレートとから成り、ベースプレートは、屋根用のGRCパネルに設けられている切欠部に係合し、側面プレートは、隣接する壁用のGRCパネル双方の接合部位に設けられている切欠部に係合し、該接合部位に対峙する個所に孔が開穿され、該孔から接合部材を挿入して隣接する壁用のGRCパネル双方を接合すること。
(B)基礎と直線状に立設された壁用のGRCパネルとの接合(B部分参照)
プレハブ建造物の基礎と、基礎上に直線状に立設された壁用のGRCパネルとを接合するための取り付け金物であって、取り付け金物は長方形状のベースプレートと、ベースプレートの一側縁部に立設した側面プレートとから成り、ベースプレートには孔が開穿されており、側面プレートは、隣接する壁用のGRCパネル双方の接合部位に設けられている切欠部に係合し、該接合部位に対峙する個所に孔が開穿され、該孔から接合部材を挿入して隣接する壁用のGRCパネル双方を接合すること。
(C)屋根用のGRCパネルと角部用のGRCパネル及び隣接の壁用のGRCパネルの上端部との接合(C部分参照)
プレハブ建造物の角部における屋根用のGRCパネルと、角部用のGRCパネル及び隣接の壁用のGRCパネルの上端部とを接合するための取り付け金物であって、取り付け金物は長方形のベースプレートと、ベースプレートの外縁部に立設した側面プレートとから成り、該取り付け金物は中央部で直角に折曲されて平面視L字状に形成されて成り、ベースプレートは、屋根用のGRCパネルに設けられている切欠部に係合し、接合部材がベースプレートを挿通して屋根用のGRCパネルを接合し、側面プレートは、隣接する壁用のGRCパネルの接合部位に設けられている切欠部に係合し、該接合部位に対峙する個所に孔が開穿され、該孔から接合部材を挿入して壁用のGRCパネルを接合すること(これらの技術事項は、A部分の取付態様、及び、C部分の角部用及び隣接の壁用のGRCパネル上端から取り付け金物に相当する部材が突出し、且つ、部材に上向き態様の2本の接合部材が付属していることから自明)。

2.刊行物2:「日経アーキテクチユア」1989年8月21日号、第123頁、1989年8月21日、日経BP社発行(無効審判請求書における甲第2号証。尚、記載事項の認定に際しては当該甲第2号証を援用する。)
トヨタハウス株式会社のGRCダブルスキンパネル製F.S.T.ユニパネルシステムについての広告が記載され、123頁には、GRCパネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物の一部展開斜視図として、刊行物1の一部展開斜視図と同一内容の図面が記載されている。

3.刊行物3:特公昭61-32471号公報(無効審判請求書における甲第3号証)
「多孔質系下地材にガラス繊維強化セメント層が積層されてなる複合板をコンクリート壁の少なくとも片面に固着すべく、該複合板のガラス繊維強化セメント層をコンクリート壁の表面材となるように、配筋を介して該複合板を締付金具で固定した後コンクリートを打設して養生硬化する・・・断熱性コンクリート壁の施工方法。」(特許請求の範囲)
「本発明に使用する複合板を構成する多孔質系下地材とは発泡スチロール、ポリウレタンフオーム等の有機系多孔質材、・・・等である。該多孔質系下地材のうち特に発泡スチロール及びポリウレタンフオームは軽量にして優れた断熱性を有しており好適である。」(3欄2〜15行)

4.刊行物4:実願昭56-143018号(実開昭58-61826号)のマイクロフィルム
「中芯に断熱材を内填しこの断熱材の表面をGRC外被層で囲包し」(実用新案登録請求の範囲)
「この考案は壁構造に係り、その目的は工業化組立住宅等の外壁として用いて好適な耐火性.断熱性に優れしかも軽量で強度の大きくかつ外観が美的な壁構造の提供にある。」(1頁11〜14行)
「この考案で断熱材(2)とは、・・・発泡スチロール.発泡ウレタン等の有機質断熱体等を具体例として挙げることができる。」(2頁18行〜3頁3行)

5.刊行物5:特開昭51-49516号公報
「結合すべき各パネル1A,1Bの結合端部に、それぞれパネル面に直角な方向に延長する雌ねじ孔を有する雌ねじ部材2が固定され、各雌ねじ部材2の雌ねじ孔に対向する・・・長孔4を備えている継手板5が、各パネル1A,1Bの結合端部に跨がつて配置され、・・・ボルト10が前記ボルト挿通用偏心孔6に挿通されて前記雌ねじ部材2に螺合されている・・・構造物用パネル結合構造。」(特許請求の範囲)
第2図には、「各パネル1A,1Bの結合端部」に設けた切欠部に「雌ねじ部材2」をその「雌ねじ孔」が開放するようにして埋設固定することが記載され、また、第1〜3,9〜12図には、「各パネル1A,1B」を結合する際に該切欠部に「継手板5」を係合することが記載されている。

6.刊行物6:実願昭51-93845号(実開昭53-13310号)のマイクロフィルム
「ボルト孔を有する主鈑(1)の背面に、同ボルト孔に連通するナツト(2)を固着してなる接合鈑(a)を部材の接合面に碇着する・・・互いに接合すべきプレキヤストコンクリート部材(A)の各接合鈑(a)の主鈑(1)表面に亘つて添鈑(4)を添接し、同添鈑(4)及び前記主鈑(1)に貫通したボルト(5)を前記ナツト(2)に螺着してなる・・・プレキヤストコンクリート部材の接合装置。」(実用新案登録請求の範囲)
「また前記接合鈑(a)はプレキヤストコンクリート部材(A)の接合面に設けられた凹部に配設されている。」(3頁2〜4行)
「また前記接合すべきプレキヤストコンクリート部材(A)の関係位置に対応して、添鈑(4)の形状を選択することによつて、同各プレキヤストコンクリート部材(A)を所要の関係位置を保持するように接合しうるものである。」(3頁15行〜4頁4行)
第1A図,第2A図,第3A図には、「プレキヤストコンクリート部材(A)接合面に設けられた凹部」に「ナツト(2)」をその雌ねじ孔が開放するようにして埋設固定すること、及び、「プレキヤストコンクリート部材(A)」を接合する際に該「凹部」に「添鈑(4)」を係合することが記載されている。

(4)対比・判断
《本件訂正発明1について》
刊行物1,2には、GRCダブルスキンパネル製F.S.T.ユニパネルシステムについて記載され、同一のプレハブ建造物の一部展開斜視図が記載されている。
そして、プレハブ建造物を構成するGRCパネルは、断熱材をGRC(耐アルカリガラス繊維強化セメント)でフルカバーしたパネルであり、プレハブ建造物は、基礎と該基礎上に直線状に立設された壁用のGRCパネルとを取り付け金物によって接合して組み立てたものであることが認められる(B部分参照)。
従って、本件訂正発明1と刊行物1,2の上記記載部分に係る発明(以下「引用発明B」という)とを対比すると、両者は、「セメントにガラス繊維を混入して形成したGRCパネルであって、該GRCパネル内に断熱材を密閉し、該パネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物に於て、前記プレハブ建造物の基礎と、該基礎上に直線状に立設された壁用のGRCパネルとを接合するための取り付け金物であって、該取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの一側縁部に立設した側面プレートとから成り、且つ、該ベースプレートには、孔が開穿されており、更に、前記側面プレートにも、前記隣接する壁用のGRCパネル双方の接合部位と対峙する個所に孔が開穿されており、該側面プレートが隣接する双方のGRCパネルの接合部位に設けられている切欠部に係合し、該側面プレートに設けた孔から接合部材を挿入して隣接する壁用のGRCパネル双方を接合したプレハブ建造物。」である点で一致し、次の4点で相違する。
〈相違点〉
(a)本件訂正発明1が、断熱材として発泡スチロール又はウレタンホーム等の有機質系の発泡体を用いるのに対して、引用発明Bでは、断熱材の材料を開示するものではない点。
(b)本件訂正発明1が、GRCパネルは構造体を兼ね且つその厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成されているのに対し、引用発明Bでは、GRCパネルを用いたパネル工法であるもののその厚みや断熱性及び遮音性について開示するものではない点。
(c)本件訂正発明1が、ベースプレートの孔は隣接する壁用のGRCパネルの接合部位の基礎に設けられているアンカーボルトを挿通するためのものであって、基礎に設けられたアンカーボルトをベースプレートに設けたボルト孔に挿通してナットにて緊締するものであるのに対して、引用発明Bでは、接合部材をベースプレートの孔を介して基礎に挿入して接合している点。
(d)本件訂正発明1が、側面プレートの孔はボルト孔であって、壁用のGRCパネルの接合部位である四隅に夫々設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットにボルト孔からボルトを螺入して緊締するのに対して、引用発明Bでは、側面プレートの孔に挿入される接合部材はボルトであるとまではいえず、従って、壁用のGRCパネルの接合部位に設けられている切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットにボルトを螺入して緊締するものであるかどうか不明である点。
〈相違点についての判断〉
1.相違点(a)については、刊行物3,4に記載されているように、建築材料の断熱材として、発泡スチロールやウレタンホーム等の有機質系の発泡体は周知であるから、引用発明Bの断熱材として発泡スチロール又はウレタンホーム等の有機質系の発泡体を用いることは、当業者であれば容易に採用し得ることである。
2.相違点(b)については、引用発明BにはGRCパネルを用いたパネル工法によるプレハブ建造物が開示されており、しかも、該パネル工法によるプレハブ建造物は柱梁材などの軸組構造を採用せずGRCパネルのみで自立するように構成されていることから、該GRCパネルも構造体を兼ねていることは自明であり、また、本件訂正発明1において「GRCパネルの・・・厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成」との具体的構成については定かでないが、引用発明BのGRCパネルも構造体を兼ね且つ内部に断熱材を密閉している以上、相応の厚みがあり且つ断熱性及び遮音性も向上するように形成されているものと思量されるから、該相違点(b)は実質的な差異ではない。
3.相違点(c)については、構造体として用いる壁用のGRCパネルを基礎に埋設されているアンカーボルトに取り付け金物を用いて直接に結合することは、例えば、実願昭56-97529号(実開昭58-2203号)のマイクロフィルム(以下、「周知例1」という)、実願昭60-139104号(実開昭62-50245号)のマイクロフィルム(以下、「周知例2」という)等に示されているように従来から周知の技術であるから、引用発明Bの接合部材に代えてアンカーボルトを用い、ベースプレートの孔にアンカーボルトを挿通してナットにて緊締するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
4.相違点(d)については、刊行物5,6に記載されているように、コンクリートパネルの接合手段として、パネルの接合部位に設けられている切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットとボルトとによるものは、従来から周知慣用の技術であり、側面プレートを介して壁用のGRCパネルを接合するに際して、該パネルの接合部位に設けられている切欠部にその雌螺子孔が開放するようにしてスリーブナットを埋設し、切欠部に係合した側面プレートのボルト孔からボルトを螺入して緊締するようなことは、当業者であれば容易になし得ることである。

《本件訂正発明3について》
刊行物1,2の斜視図(A部分参照)には、プレハブ建造物の屋根用のGRCパネルと直線状に隣接した壁用のGRCパネルとを取り付け金物によって接合して組み立てたプレハブ建造物が記載され、該取り付け金物は、長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの一側縁に立設した側面プレートとから成り、側面プレートには隣接する壁用のGRCパネル双方の接合部位に対峙する個所に孔が開穿され、該孔から接合部材を挿入して接合するものであることが認められる。
従って、本件訂正発明3と刊行物1,2の上記記載部分に係る発明(以下「引用発明A」という)とを対比すると、両者は、「セメントにガラス繊維を混入して形成したGRCパネルであって、該GRCパネル内に断熱材を密閉し、該パネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物に於て、前記プレハブ建造物の屋根用のGRCパネルと直線状に隣接した壁用のGRCパネルとを相互に接合するための取り付け金物であって、該取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの一側縁に立設した側面プレートとから成り、且つ、前記側面プレートに前記隣接する壁用のGRCパネル双方の接合部位と対峙する個所に孔が開穿されており、該ベースプレートを屋根用のGRCパネルに設けられている切欠部に係合し、該側面プレートを隣接する双方のGRCパネルの接合部位に設けられている切欠部に係合し、該側面プレートの隣接する双方の壁用のGRCパネルの接合部位に夫々対峙して設けられている前記孔から接合部材を挿入して接合したプレハブ建造物。」である点で一致し、次の4点で相違する。
〈相違点〉
(e)本件訂正発明3が、断熱材として発泡スチロール又はウレタンホーム等の有機質系の発泡体を用いるのに対して、引用発明Aでは、断熱材の材料を開示するものではない点。
(f)本件訂正発明3が、GRCパネルは構造体を兼ね且つその厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成されているのに対し、引用発明Aでは、GRCパネルを用いたパネル工法であるもののその厚みや断熱性及び遮音性について開示するものではない点。
(g)本件訂正発明3が、ベースプレートには、屋根用のGRCパネルの接合部位である四隅に夫々設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットと対峙する個所にボルト孔が開穿され、ボルト孔からボルトを螺入して緊締するのに対して、引用発明Aでは、ベースプレートには孔が示されておらず、接合部材も明示されていない点。
(h)本件訂正発明3が、側面プレートの孔はボルト孔であって、壁用のGRCパネルの接合部位である四隅に夫々設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットにボルト孔からボルトを螺入して緊締するのに対して、引用発明Aでは、側面プレートの孔に挿入される接合部材がボルトであるとまではいえず、従って、壁用のGRCパネルの接合部位に設けられている切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットにボルトを螺入して緊締するものであるかどうか不明である点。
〈相違点についての判断〉
1.相違点(e)については、上記《本件訂正発明1について》1.の「相違点(a)」についての判断で述べたと同じ理由で、当業者が容易に採用し得ることである。
2.相違点(f)については、上記《本件訂正発明1について》2.の「相違点(b)」についての判断で述べたと同じ理由で、実質的な差異ではない。
3.相違点(g)については、刊行物1,2に記載された斜視図のC部分を参照すると、ベースプレートに孔が記載されていないものの屋根用のGRCパネルに対応する個所に設けた部材に上向き態様の2本の接合部材が付属していることからみて、ベースプレートを介して接合部材を挿通して接合することは明かであり、しかも、上記《本件訂正発明1について》4.の「相違点(d)」についての判断で述べたように、コンクリートパネルの接合手段としてパネルの接合部位に設けられている切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットとボルトとによるものは、従来から周知慣用の技術であるから、引用発明Aにおいても、屋根用のGRCパネルの接合部位に設けられている切欠部にその雌螺子孔が開放するようにしてスリーブナットを埋設し、ベースプレートのスリーブナットと対峙する個所にボルト孔を開穿し、切欠部に係合したベースプレートのボルト孔からボルトを螺入して緊締するようなことは、当業者が容易になし得ることである。
4.相違点(h)については、上記したように、コンクリートパネルの接合手段としてパネルの接合部位に設けられている切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットとボルトとによるものは従来から周知慣用の技術であるから、側面プレートを介して壁用のGRCパネルを接合するに際して、該パネルの接合部位に設けられている切欠部にその雌螺子孔が開放するようにしてスリーブナットを埋設し、切欠部に係合した側面プレートのボルト孔からボルトを螺入して緊締するようなことは、当業者であれば容易になし得ることである。

《本件訂正発明4について》
刊行物1,2の斜視図(C部分参照)には、プレハブ建造物の角部における屋根用のGRCパネルと、隣接の壁用のGRCパネルの上端部とを取り付け金物によって接合して組み立てたプレハブ建造物であって、プレハブ建造物の角部における屋根用のGRCパネルと、隣接の壁用のGRCパネルの上端部とを相互に接合するための取り付け金物は、長方形のベースプレートと、該ベースプレートの外縁部に立設した側面プレートとから成り、且つ、該取り付け金物は中央部で直角に折曲されて平面視L字状に形成され、この取り付け金物は側面プレートに孔を開穿し、該孔に接合部材を挿入して接合するものであることが認められる。
本件訂正発明4と刊行物1,2の上記記載部分に係る発明(以下「引用発明C」という)とを対比すると、両者は、「セメントにガラス繊維を混入して形成したGRCパネルであって、該GRCパネル内に断熱材を密閉し、該パネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物に於て、前記プレハブ建造物の角部における屋根用のGRCパネルと、隣接の壁用のGRCパネルの上端部とを接合するための取り付け金物であって、該取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの外縁部に立設した側面プレートとから成り、且つ、該取り付け金物は中央部で直角に折曲されて平面視L字状に形成されて成り、前記側面プレートには孔が開穿され、該ベースプレートを屋根用のGRCパネルに設けられている切欠部に係合し、ベースプレートを介して屋根用のGRCパネルに接合部材を挿入して接合し、該側面プレートを隣接する双方のGRCパネルの接合部位に設けられている切欠部に係合し、該孔より接合部材を挿入して接合したプレハブ建造物。」である点で一致し、次の4点で相違する。
〈相違点〉
(i)本件訂正発明4が、断熱材として発泡スチロール又はウレタンホーム等の有機質系の発泡体を用いるのに対して、引用発明Cでは、断熱材の材料を開示するものではない点。
(j)本件訂正発明4が、GRCパネルは構造体を兼ね且つその厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成されているのに対し、引用発明Cでは、GRCパネルを用いたパネル工法であるもののその厚みや断熱性及び遮音性について開示するものではない点。
(k)本件訂正発明4が、ベースプレートに建造物の角部における屋根用のGRCパネルの接合部位である四隅に夫々設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットに対峙する個所にボルト孔が開穿され、ボルト孔からボルトを螺入して緊締するのに対して、引用発明Cでは、ベースプレートには孔が開示されておらず、接合部材も明示されていない点。
(l)本件訂正発明4が、側面プレートの孔はボルト孔であって、建造物の角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルの接合部位である四隅に夫々設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットにボルト孔からボルトを螺入して緊締するのに対して、引用発明Cでは、側面プレートの孔に挿入される接合部材がボルトであるとまではいえず、従って、GRCパネルの接合部位に設けられている切欠部に埋設されたスリーブナットにボルトを螺入して緊締するものであるかどうか不明である点。
〈相違点についての判断〉
1.相違点(i)については、上記《本件訂正発明1について》1.の「相違点(a)」についての判断で述べたと同じ理由で、当業者が容易に採用し得ることである。
2.相違点(j)については、上記《本件訂正発明1について》2.の「相違点(b)」についての判断で述べたと同じ理由で、実質的な差異ではない。
3.相違点(k)については、上記《本件訂正発明1について》4.の「相違点(d)」についての判断で述べたように、コンクリートパネルの接合手段としてパネルの接合部位に設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットとボルトとによるものは、従来から周知慣用の技術であるから、引用発明Cにおいても、屋根用のGRCパネルと壁用のGRCパネルとを接合するために、ベースプレートに隣接する屋根用のGRCパネルの接合部位に設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにしてスリーブナットを埋設し、ベースプレートのスリーブナットと対峙する個所にボルト孔を開穿し、切欠部に係合したベースプレートのボルト孔からボルトを螺入して緊締するようなことは、当業者が容易になし得ることである。
4.相違点(l)については、上記したように、コンクリートパネルの接合手段としてパネルの接合部位に設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットとボルトとによるものは、従来から周知慣用の技術であるから、側面プレートを介して壁用のGRCパネルを接合するために、壁用パネルの接合部位に設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにしてスリーブナットを埋設し、切欠部に係合した側面プレートのボルト孔からボルトを螺入して緊締するようなことは、当業者であれば容易になし得ることであり、建造物の角部であっても、角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルを接合するためには、それぞれのパネルを接合部材を用いて接合する必要があることは当然のことであるから、引用発明Cについても、側面プレートに角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルの接合部位に設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにしてスリーブナットを埋設し、側面プレートのスリーブナットと対峙する個所にボルト孔を開穿し、切欠部に係合した側面プレートのボルト孔からボルトを螺入して緊締することは、当業者が容易になし得ることと認められる。

《本件訂正発明2について》
本件訂正発明2と引用発明Cとを対比すると、両者は、「セメントにガラス繊維を混入して形成したGRCパネルであって、該GRCパネル内に断熱材を密閉し、該パネルを相互に接合して組み立てたプレハブ建造物に於て、前記プレハブ建造物の角部における構造部材と、隣接する壁用のGRCパネルの上端部とを接合するための取り付け金物であって、該取り付け金物は長方形状のベースプレートと、該ベースプレートの外縁部に立設した側面プレートとから成り、且つ、該取り付け金物は中央部で直角に折曲されて平面視L字状に形成されて成り、更に、前記側面プレートには孔が開穿され、該側面プレートを壁用のGRCパネルの接合部位に設けられている切欠部に係合し、該側面プレートに設けた孔から接合部材を挿入して接合したプレハブ建造物。」である点で一致し、次の5点で相違する。
〈相違点〉
(m)本件訂正発明2が、断熱材として発泡スチロール又はウレタンホーム等の有機質系の発泡体を用いるのに対して、引用発明Cでは、断熱材の材料を開示するものではない点。
(n)本件訂正発明2が、GRCパネルは構造体を兼ね且つその厚みを大きくして断熱性及び遮音性が向上するように形成されているのに対し、引用発明Cでは、GRCパネルを用いたパネル工法であるもののその厚みや断熱性及び遮音性について開示するものではない点。
(o)本件訂正発明2が、角部における構造部材は基礎であり、取り付け金物は基礎と隣接するパネルの下端部とを接合するのに対して、引用発明Cの構造部材は屋根(屋根用のGRCパネル)であり、取り付け金物は屋根と隣接する壁用のGRCパネルの上端部とを接合している点。
(p)本件訂正発明2が、ベースプレートの孔は隣接する壁用のGRCパネルの接合部位の角部の基礎に設けられたアンカーボルトをベースプレートに設けたボルト孔に挿通してナットにて緊締するものであるのに対して、引用発明Cでは、接合部材が取り付け金物のベースプレートを介して接合している点。
(q)本件訂正発明2が、側面プレートの孔はボルト孔であって、建造物の角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルの接合部位である四隅に夫々設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットにボルト孔からボルトを螺入して緊締するのに対して、引用発明Cでは、側面プレートに孔が開穿され、対応するパネルに接合部材を挿通して接合していることが認められるが、具体的な接合手段については不明である点。
〈相違点についての判断〉
1.相違点(m)については、上記《本件訂正発明1について》1.の「相違点(a)」についての判断で述べたと同じ理由で、当業者が容易に採用し得ることである。
2.相違点(n)については、上記《本件訂正発明1について》2.の「相違点(b)」についての判断で述べたと同じ理由で、実質的な差異ではない。
3.相違点(o)については、刊行物1,2は、(B)基礎と直線状に立設された壁用パネルとの接合(B部分参照)、(C)屋根用パネルと角部用パネル及び隣接した壁用パネルの上端部との接合(C部分参照)の各々に使用される取り付け金物を開示するから、基礎と角部用パネル及び隣接した壁用パネルの下端部との接合についても、刊行物1,2に接する当業者に対して、同様の取り付け金具により接合し組み立てることを示唆するものと認められ、引用発明Cの取り付け金具を基礎に対して使用するようなことは、当業者が容易に想到し得ることにすぎない。
4.相違点(p)については、上記《本件訂正発明1について》3.の「相違点(c)」についての判断で述べたと同じ理由で、引用発明Cの接合部材に代えてアンカーボルトを用い、ベースプレートの孔にアンカーボルトを挿通してナットにて緊締するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
5.相違点(q)については、上記《本件訂正発明1について》4.の「相違点(d)」についての判断で述べたように、コンクリートパネルの接合手段としてパネルの接合部位である四隅に夫々設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにして埋設されたスリーブナットとボルトとによるものは、従来から周知慣用の技術であるから、取り付け金物を介してパネルを接合するに際して、パネルの接合部位である四隅に夫々設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにしてスリーブナットを埋設し、これにボルトを螺入して緊締するようなことは、当業者であれば容易になし得ることであり、建造物の角部において角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルを接合するためには、それぞれのパネルを接合部材を用いて接合する必要があることは当然のことであるから、引用発明Cについても、角部用のGRCパネル及び之に隣接する壁用のGRCパネルの接合部位である四隅に夫々設けられた切欠部にその雌螺子孔が開放するようにしてスリーブナットを埋設し、側面プレートにボルトを挿通するためのボルト孔を開穿し、切欠部に係合した側面プレートのボルト孔からボルトを螺入して緊締することは、当業者が容易になし得ることと認められる。

(5)意見書の主張(当審の認定・判断についての特許権者の主張)について
1.刊行物1,2に記載されたプレハブ建造物の接合構造に関して
特許権者は意見書において、屋根と隣接するパネルとの取付部分(A,C部分)及び基礎と隣接するパネルとの取付部分(B部分)に介在する部材は、特に、屋根と隣接するパネルとの取付部分に介在する部材の(本件各訂正発明の取り付け金物の)ベースプレート相当部分に孔が開穿されていないこともあって、「単に仮止め用の治具」であるかも知れないのであるから、該部材が取り付け金物であるとはいえず、ましてや、取り付け金物が長方形状のベースプレートと側面プレートとから成るということも、また、取り付け金物の孔から接合部材を挿入して屋根用パネルと壁用パネルとを接合して組み立て、或いは、取り付け金物の孔から接合部材を挿入して基礎と壁用パネルとを接合して組み立てるということも、さらには、取り付け金物のベースプレートと側面プレートを屋根用パネルと壁用パネルの切欠部に夫々係合し、或いは、取り付け金物をベースプレートの孔を介して基礎に固定し且つ取り付け金物の側面プレートを壁用パネルの切欠部に係合するということもできないのであるから、刊行物1,2に記載された技術事項についての当審の認定は誤りであり、このような認定に基づく本件訂正発明1〜4についての容易想到性の判断も結果として誤りである旨主張している(意見書5.(1)〜(6)参照)。
しかし、刊行物1,2の「アイソメ図」が、一部の屋根用パネルを除く全パネルが組み上がったほぼ完成状態のプレハブ建造物を示す一部展開斜視図であること、また、同図においては、完成部分が図の右半分に示され、屋根用パネルと壁用パネルとの接合部分及び基礎と壁用パネルとの接合部分の詳細がその一部を分解した状態で図の左半分に示されていることが明かであり、そして、屋根と隣接するパネルとの取付部分に介在する部材のベースプレート相当部分の孔については、例えば、C部分の部材には上向き態様の接合部材が付属しているということを考慮すれば、図面表現上単に省略されたものということができ、また、C部分における被接合部材の一方が角部用のGRCパネルであり、それの切欠部については、例えば、同、「アイソメ図」において接合部分の詳細が記載されていないパネルでは切欠部が省略されていることを考慮すれば、これも図面表現上単に省略されたものということができるから、上記取付部分に介在する部材が各部分の接合の用に供されるものであって、しかも、屋根用パネル及び壁用パネルの接合構造に関しては、プレートをパネルの切欠部に係合し該プレートの孔から接合部材を挿入して接合するものであると推認でき、該部材が「単に仮止め用の治具」であるということはできない。
また、上記「アイソメ図」において、各部分の接合箇所は上記取付部分に介在する部材の設置箇所をおいて外にないから、たとえ、該部材が「単に仮止め用の治具」であるとしても、各部分の接合を該部材と同様の形状構造を持つ取り付け金物を使用して行うということは容易に想到できる。
したがって、刊行物1,2に記載された「アイソメ図」から、取り付け金物及び各部分の接合構造についての当審の認定に誤りはなく、このような認定に基づく本件各訂正発明についての容易想到性の判断にも誤りはないから、特許権者の上記主張は採用できない。

2.刊行物1,2に記載されたプレハブ建造物のGRCパネルに関して
特許権者は意見書において、刊行物1,2の「アイソメ図」に記載されたプレハブ建造物が、柱や梁がないものであるとも、GRCパネル自体が構造体を兼ねているともいえないものである旨主張している(意見書5.(7)参照)。
しかし、刊行物1,2の「アイソメ図」に記載されたプレハブ建造物をみる限りにおいて、柱や梁を確認することはできず、しかも、GRCパネルを用いたパネル工法によるパネル式コンクリート造小規模建築物の場合、例えば、上記周知例1,2にも示されているように、柱や梁を用いずにGRCパネル自体の構造耐力によってその形状を保持するものが一般的であると考えられることからみて、上記「アイソメ図」に記載されたプレハブ建造物も、柱や梁がないものであってGRCパネル自体が構造体を兼ねているものであると推認できるから、特許権者の上記主張は採用できない。

3.刊行物1,2に記載されたプレハブ建造物の基礎部分の接合に関して
特許権者は意見書において、刊行物1,2の「アイソメ図」のB部分の接合部に代えてアンカーボルトを用いるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることではない旨主張している(意見書5.(8)参照)。
しかし、本件各訂正発明のように、構造体として用いる壁用のGRCパネルを基礎に埋設されているアンカーボルトに取り付け金物を用いて直接に結合することは、例えば、上記周知例1,2にも示されているように従来から周知の技術であり、そして、該周知技術を本件各訂正発明のようなプレハブ建造物に適用することに何らの阻害要因もなく、刊行物1,2の「アイソメ図」のB部分の接合部に代えてアンカーボルトを用いるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることと認められるから、特許権者の上記主張は採用できない。

4.刊行物1,2に記載されたプレハブ建造物への刊行物5,6に記載されたパネル接合手段の適用容易性に関して
特許権者は意見書において、刊行物5,6には、パネル接合手段として、パネルの接合部位に設けた切欠部のその雌螺子孔が開放するように埋設されたスリーブナット(刊行物5では「雌ねじ部材」、刊行物6では「ナット」)とボルトとによる接合手段が示されているが、刊行物1,2の「アイソメ図」には、本件各訂正発明における、側面プレートの孔がボルト孔である点、壁用のGRCパネルの四隅に切欠部が夫々設けられている点、及び、四隅の切欠部にスリーブナットが設けられている点について記載も示唆もされておらず、また、刊行物6には、基礎上に建造されるプレハブ建造物自体について記載も示唆もされていないから、刊行物5,6に記載されたパネル接合手段を、直ちに、刊行物1,2に記載されたプレハブ建造物に適用することは当業者が容易に想到し得るものではない旨主張している(意見書5.(9)参照)。
しかし、屋根用パネル及び壁用パネルの接合箇所である四隅に切欠部を設け、該切欠部にプレートを係合し、該プレートの孔から接合部材を挿入して接合するものであると推認できることは、上記1.で述べたとおりであり、このような接合部材を用いる接合手段においてナットを埋め込むようなことは当業者であれば容易に想到し得ることと思量され、したがって、刊行物1,2に記載されたプレハブ建造物に、刊行物5,6に記載されたパネル接合手段を適用することは当業者が容易に想到し得るものと認められるから、特許権者の上記主張は採用できない。

5.全体として
特許権者は意見書において、刊行物1,2の「アイソメ図」からは、本件各訂正発明を想到することは困難であるから、本件各訂正発明は、その出願時において、独立して特許を受けることができるものである旨主張している(意見書5.(10)(11)参照)。
しかし、上記1.〜4.を総合して考えると、本件各訂正発明は、刊行物1,2に記載されたプレハブ建造物の発明と刊行物3〜6及び周知例1,2に記載された従来周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるを得ないものであるから、特許権者の上記主張は採用できない。
尚、刊行物1における 「日本建築センター評定 No.BCJ-LC-330」の記載における「BCJ-LC-330」と同一の記号及び番号が付されている平成2年9月7日付けの財団法人日本建築センターの「低層建築物の構造耐力性能評価書 GRC造ユニットハウス構造評定」(無効審判請求書における甲第7号証の(8))の「評定報告書」、「5.構造概要」の(1)には、「『GRC造ユニットハウス』は、GRC板組立造の平屋の小規模建築物に適用される。本建築物は、工場生産によるGRC(ガラス繊維強化セメント)製の屋根板(ダブルスキン板)及び耐力壁板(ダブルスキン板)を主要な構造部材として用いている。」と記載され、同、(2)には、「基礎部分では、場所打ち鉄筋コンクリート造のべた基礎に埋込まれたアンカーボルトに、耐力壁板を定着金物(PL-9)及び取付インサートによってボルト接合している。耐力壁板相互及び耐力壁板と屋根板の接合は、接合金物(PL-6)によってボルト接合している。」と記載され、同、(3)には、「地震及び風による水平力は、耐力壁に負担させており、所要の水平面剛性は、屋根板及びべた基礎により確保されている。固定荷重及び積雪荷重による鉛直力は、耐力壁を通じて基礎に伝達されている。」と記載され、また、「4.建築物概要」の表の「14.各部一般構造」の欄には、小屋組,はり,柱の構造がない旨記載されており、これらの記載によれば、定着金物(PL-9)及び接合金物(PL-6)の形状構造は不明であるものの、本件各訂正発明における取り付け金物による各部分の接合構造(上記1,3,4に関して)、及び、GRCパネル自体が構造体を兼ねること(上記2に関して)が把握できる。そして、上記日本建築センターの「低層建築物の構造耐力性能評価書 GRC造ユニットハウス構造評定」の「評定報告書」は、少なくとも、刊行物1の「アイソメ図」に記載されたプレハブ建造物に係るものではないとする格別の理由もないから、本刊行物の公知性の如何にかかわらず、少なくとも刊行物1に記載のプレハブ建造物と本件各訂正発明におけるプレハブ建造物とが、その構成の大部分において一致しているものであることが把握できる。

(6)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1〜4は、何れも、刊行物1,2に記載された発明と従来周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明である。


【4】むすび
したがって、本件訂正審判請求による訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正前特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するものの、同条第3項の規定に適合しないので、当該訂正を認めることができない。
 
審理終結日 2002-04-08 
結審通知日 2002-04-11 
審決日 2002-04-24 
出願番号 特願平2-315156
審決分類 P 1 41・ 856- Z (E04B)
P 1 41・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 住田 秀弘  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 中田 誠
鈴木 憲子
伊波 猛
安藤 勝治
登録日 1999-11-19 
登録番号 特許第3004046号(P3004046)
発明の名称 プレハブ建造物  
代理人 林 孝吉  
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