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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C09D 審判 全部申し立て 2項進歩性 C09D 審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 C09D |
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管理番号 | 1086430 |
異議申立番号 | 異議2001-72155 |
総通号数 | 48 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-04-09 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-08-01 |
確定日 | 2003-08-25 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3134297号「シリカ系被膜形成用塗布液およびシリカ系被膜の製造法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3134297号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第3134297号の請求項1および2に係る発明は、平成2年8月29日に特許出願され、平成12年12月1日に特許権の設定登録がなされ,信越化学工業株式会社及びジェイエスアール株式会社(以下,「申立人1」及び「申立人2」という。)より特許異議の申立てがなされ、取消理由の通知に対して、その指定期間内である平成14年2月5日に訂正請求(その後、取り下げられた。)がなされ、再度の取消理由の通知に対して、その指定期間内である平成14年6月19日に訂正請求がなされたものである。 II.訂正の適否についての判断 (II-1)訂正事項 (い)特許請求の範囲の「【請求項1】(A)一般式(I)Si(OR’)4で表されるテトラアルコキシシラン化合物、(B)一般式(II)RSi(OR”)3で表されるトリアルコキシシラン化合物および/または(C)一般式(III)R2Si(OR”)2で表されるジアルコキシシラン化合物(ただし、上記式中のRは炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基、R’は炭素数2〜6の一価のアルキル基またはアリール基、R”は炭素数1〜5の一価のアルキル基またはアリール基を意味し、一般式(I)中のR’の炭素数は、一般式(II)および/または一般式(III)中のR”の炭素数より多い)の混合物を、溶剤の存在下で水と触媒により加水分解縮合させて得られるシラノールオリゴマーを含有してなるシリカ系被膜形成用塗布液。【請求項2】請求項1記載のシリカ系被膜形成用塗布液を基体上に塗布して乾燥した後、窒素雰囲気中で硬化させることを特徴とするシリカ系被膜の製造法。」という記載を、「【請求項1】(A)一般式(I)Si(OR’)4で表されるテトラアルコキシシラン化合物、(B)一般式(II)RSi(OR”)3で表されるトリアルコキシシラン化合物および(C)一般式(III)R2Si(OR”)2で表されるジアルコキシシラン化合物(ただし、上記式中のRは炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基、R’は炭素数2〜6の一価のアルキル基、R”は炭素数1〜5の一価のアルキル基を意味し、一般式(I)中のR’の炭素数は、一般式(II)および一般式(III)中のR”の炭素数より多い)の混合物を、溶剤の存在下で水と触媒により加水分解縮合させて得られるシラノールオリゴマーを含有してなる半導体デバイス絶縁膜用シリカ系被膜形成用塗布液。【請求項2】請求項1記載のシリカ系被膜形成用塗布液を基体上に塗布して乾燥した後、窒素雰囲気中で硬化させることを特徴とするシリカ系被膜の製造法。」と訂正する。 (ろ)明細書5頁7〜20行(公報3欄43行〜4欄10行)の記載を、「すなわち、本発明は、1.(A)一般式(I)Si(OR’)4で表されるテトラアルコキシシラン化合物、(B)一般式(II)RSi(OR”)3で表されるトリアルコキシシラン化合物および(C)一般式(III)R2Si(OR”)2で表されるジアルコキシシラン化合物(ただし、上記式中のRは炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基、R’は炭素数2〜6の一価のアルキル基、R”は炭素数1〜5の一価のアルキル基を意味し、一般式(I)中のR’の炭素数は、一般式(II)および一般式(III)中のR”の炭素数より多い)の混合物を、溶剤の存在下で水と触媒により加水分解縮合させて得られるシラノールオリゴマーを含有してなる半導体デバイス絶縁膜用シリカ系被膜形成用塗布液並びに前記シリカ系被膜形成用塗布液を基体上に塗布して乾燥した後、窒素雰囲気中で硬化させることを特徴とするシリカ系被膜の製造法に関する。」と訂正する。 (II-2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項(い)は、特許請求の範囲の「(B)一般式(II)・・・で表されるトリアルコキシシラン化合物および/または(C)一般式(III)」、「一般式(II)および/または(III)」および「R’は炭素数2〜6の一価のアルキル基またはアリール基、R”は炭素数1〜5の一価のアルキル基またはアリール基を意味し」を、それぞれ、「(B)一般式(II)・・・で表されるトリアルコキシシラン化合物および(C)一般式(III)」、「一般式(II)および(III)」および「R’は炭素数2〜6の一価のアルキル基、R”は炭素数1〜5の一価のアルキル基を意味し」と訂正し、「シリカ系被膜形成用塗布液」を「半導体デバイス絶縁膜用シリカ系被膜形成用塗布液」と訂正するものであるが、前者は、いずれも、訂正前の特許請求の範囲に記載されていた内容であり、後者は、特許明細書の発明の詳細な説明中の「本発明は・・・半導体デバイスなどの絶縁膜として好適に用いられる・・・シリカ系被膜形成用塗布液およびこれを用いたシリカ系被膜の製造法に関する。」(本件特許公報1頁2欄6〜9行)との記載に基づくものであるから、ともに、特許請求の範囲の減縮に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項(ろ)は、訂正事項(い)に係る訂正に伴い発生した明りょうでない記載の釈明に該当し、訂正事項(い)について記載したと同様の理由により、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (II-3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.特許異議の申立てについて (III-1)本件発明 本件請求項1および2に係る発明(以下、「本発明1」および「本発明2」という。)は、前記平成14年6月19日の訂正により訂正された願書に添付の明細書の請求項1および2に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】(A)一般式(I)Si(OR’)4で表されるテトラアルコキシシラン化合物、(B)一般式(II)RSi(OR”)3で表されるトリアルコキシシラン化合物および(C)一般式(III)R2Si(OR”)2で表されるジアルコキシシラン化合物(ただし、上記式中のRは炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基、R’は炭素数2〜6の一価のアルキル基、R”は炭素数1〜5の一価のアルキル基を意味し、一般式(I)中のR’の炭素数は、一般式(II)および一般式(III)中のR”の炭素数より多い)の混合物を、溶剤の存在下で水と触媒により加水分解縮合させて得られるシラノールオリゴマーを含有してなる半導体デバイス絶縁膜用シリカ系被膜形成用塗布液。 【請求項2】請求項1記載のシリカ系被膜形成用塗布液を基体上に塗布して乾燥した後、窒素雰囲気中で硬化させることを特徴とするシリカ系被膜の製造法。 (III-2)異議申立ての理由の概要 (1)申立人1は、甲第1、2号証を提出して、(ア)訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1又は2号証に記載された発明である、(イ)訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、(ウ)本件特許明細書には記載不備がある、との理由で、訂正前の請求項1および2に係る発明の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、また、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきである旨主張している。 (2)申立人2は、甲第1ないし14号証を提出し、(エ)訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である、(オ)訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1ないし6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、(カ)訂正前の請求項2に係る発明は、甲第1ないし14号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、との理由で、訂正前の請求項1および2に係る発明の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきである旨主張している。 証拠方法1:特開昭54-139940号公報(申立人1の甲第1号証) 証拠方法2:特開昭53-25655号公報(申立人1の甲第2号証) 証拠方法3:特開昭63-268772号公報(申立人2の甲第1号証) 証拠方法4:特開昭63-232395号公報(申立人2の甲第2号証) 証拠方法5:C.Brinker,G.Scherer著「Sol-GeI Science The Physics and Chemistry of Sol-GeI Processing」,ACADEMIC PRESS,INC.,April 1990,p119‐123(申立人2の甲第3号証の1) 証拠方法6:Academic Press Book Catalog(申立人2の甲第3号証の2) 証拠方法7:特開昭61-55164号公報(申立人2の甲第4号証) 証拠方法8:特開平1-194980号公報(申立人2の甲第5号証) 証拠方法9:特開昭60-118715号公報(申立人2の甲第6号証) 証拠方法10:特公平2-26778号公報(申立人2の甲第7号証) 証拠方法11:特開昭63-66237号公報(申立人2の甲第8号証) 証拠方法12:特開昭56-93766号公報(申立人2の甲第9号証) 証拠方法13:特開昭57-59672号公報(申立人2の甲第10号証) 証拠方法14:特開昭57-131250号公報(申立人2の甲第11号証) 証拠方法15:特開昭58-67081号公報(申立人2の甲第12号証) 証拠方法16:特開昭49-96673号公報(申立人2の甲第13号証) 証拠方法17:特開昭58-65774号公報(申立人2の甲第14号証) (III-3)証拠方法に記載された事項 証拠方法1(特開昭54-139940号公報、申立人1の甲第1号証): 「光化学的に透明な耐摩耗性被覆が得られる硬化性被覆用組成物で、オルトケイ酸テトラエチル約35ないし75重量%、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン及びこれらの混合物からなる群から選択されたシラン60ないし20重量%、及び反応性極性を有するシロキサン20重量%以下の加水分解生成物からなる被覆用組成物。」(特許請求の範囲第1項)、 「本発明者はシロキサン共重合体をベースとする耐摩耗性被覆の改良型を開発した。これらの被覆は特に眼鏡レンズ、サングラス、保護眼鏡、および建築用材料の製造に使用されるプラスチック製品の耐摩耗性を増加するのに有用である。」(2頁右上欄20行〜同頁左下欄4行)。 証拠方法2(特開昭53-25655号公報、申立人1の甲第2号証): 「(A)一般式Si(OR)4(但しRは炭素数1〜4のアルキル基である)の四アルコキシ珪素の加水分解物と(B)R1Si(OR2)3(但しR1は炭素数1〜3の炭化水素基、R2は炭素数1〜3のアルキル基、アシル基である)の珪素化合物の加水分解物であって(A)と(B)の重量比が0〜40対100〜60であり、更に(C)1,8ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7又は/及びその塩とからなる被膜形成用組成物。」(特許請求の範囲第1項)、 「本発明は主としてプラスチック成型品の表面に優れた表面硬度、耐擦傷性、光沢及び耐溶剤性を付与しうる被膜形成用組成物、その使用方法に関する。」(1頁右下欄8〜11行)。 証拠方法3(特開昭63-268772号公報、申立人2の甲第1号証) 「ケイ素アルコキシド系コーティング材の製法において、ケイ素アルコキシドを主体とする材料を水と触媒の、存在下に反応させて、末端を少なくとも80%以上アルコキシドの形にしたブレポリマーを合成すると共に、そのプレポリマーの重量平均分子量(Mw)を200〜800の範囲となし、かつ重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.0〜1.5となるように調整することを特徴とする無機コーティング材の製法。」(特許請求の範囲第1項)、 「本発明は、ケイ素アルコキシド系コーティング材において、基本組成が下記の(A)、(B)および(C)からなるケイ素アルコキシド系組成物を使用するものである。(A)・・・として、Si(OR’)4・・・を使用し、・・・、(B)・・・として、RSi(OR’)3を使用し、・・・、(C)・・・として、R2Si(OR’)2を使用し、・・・、なお、ここでRはメチル基、エチル基を示し、R’は炭素数1〜4のアルキル基を示す。」(2頁左上欄7行〜同頁右上欄1行参照) 「無機コーティング材は、耐候性が非常によく、高硬度で不燃性である。しかしながら焼き付け温度を100℃以上にする必要があり、適用範囲および使用範囲が限定されていた。たとえば、耐熱性の低い熱可塑性プラスチックや木材に使用できず、現場の施工ができないという問題点があった。」(1頁右欄13〜最下行)、 「実施例1 メチルトリメトキシシラン100重量部、テトラエトキシシラン20重量部、イソプロパノール分散シリカゾル・・・105重量部、ジメチルジメトキシシラン30重量部、イソプロパノール100重量部からなる基本配合物に対して、固形分に対し100ppmの塩酸とケイ素アルコキシドに対して3重量%の水を加え、25℃に保ちながら、500rpmの回転数の撹拌器を使用して30分間混合してコーティング材を調整し、1箇月間密栓して保存した。」(3頁左下欄6〜17行)、 「この発明は、・・・常温近傍ないしそれ以下の温度で硬化するという効果がある。」(4頁右下欄2〜12行)。 証拠方法4(特開昭63-232395号公報、申立人2の甲第2号証) 「メチルトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランとを混合し、これを加水分解および軍縮合に付して得られる、5%以下の残存アルコキシ基を有するシリコーン樹脂からなる、多層配線形成用耐熱性樹脂組成物。」(特許請求の範囲)、 「本発明は、半導体集積回路の多層配線の形成において、基板表面を平坦化しつつ上下配線層間を絶縁する目的で使用する、縮合硬化型シリコーン樹脂に見られる耐クラック性の向上を目的として、反応残基のアルコキシ基を5%以下とし、膜の歪を低減することにより、クラック性の改善を行ったものである。」(1頁左下欄下より7〜末行)、 「本発明に係るシリコーン樹脂は、加水分解後に重合されているので、その後の分子量変化が少なく、また十分に加水分解されている(残存アルコキシ基5%以下)ので、200〜300℃におけるアルコキシ基の酸化もしくは分解による急激な重量減少がない。従って、半導体装置の絶縁層として用いた場合に、膜の歪が少なく、クラックを生じにくい。」(3頁左上欄下より7行〜右上欄1行)、 「合成したポリマーのエチレングリコールモノブチルエーテル溶液を・・・Si基板上に・・・塗布した。・・・スピンコートされた基板を170℃、30minの乾燥を施した後、空気中、450℃で1時間加熱して硬化させ、絶縁層を形成した。・・・この絶縁膜には、ピンホールやクラックは全く認められなかった。」(3頁右下欄2〜15行)。 証拠方法5[C.Brinker,G.Scherer著「Sol-GeI Science The Physics and Chemistry of Sol-GeI Processing」,申立人2の甲第3号証の1] テトラアルコキシランの酸加水分解に対するアルキル鎖長及び分岐度の影響に関して記載されている。 証拠方法6(Academic Press Book Catalog、申立人2の甲第3号証の2) 上記甲第3号証の1が、1990年4月に発行された刊行物あることが記載されている。 証拠方法7(特開昭61-55164号公報、申立人2の甲第4号証) 「一般式[A](式略)・・・で表わされる化合物からなるアルキルシリケート縮合体に、炭素数1〜18のカルボン酸を、アルキルシリケート縮合体中のケイ素1グラム原子に対して、0.2モル以上2-[<l+m>-1/<l+m>]モル未満(<l+m>は平均縮合度を表わす。)の割合で触媒の存在又は不存在下で反応させる事を特徴とするシリカ被膜形成用塗布液の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)、 「本発明の目的は、・・・平坦化効果があり、かつ5000Å以上の膜厚でもひび割れないシリカ被膜形成用塗布液の製造方法を提供することである。」(2頁右下欄5〜8行)、「塗布法としては、・・・これら方法を用いて塗布後、基板ごと乾燥し、次いで350℃〜1000℃の範囲で加熱する事により、塗布されたアルキルシリケートはシリカに変わり、緻密で平滑な膜となる。以上のようにして、本発明によると、非常に容易に0.5〜2μのシリカ膜が、350℃以上くらいの比較的低温で得ることができるために、高温のプロセスが使えないような半導体の製造や・・・にも好適に用いうる。」(5頁右下欄4〜16行)、 「上記諸特性を考慮すると、特に電子部品の多層配線の層間絶縁膜、表面保護膜等の用途に好適である。」(6頁左上欄5〜7行)、 「実施例6 メチルトリエトキシシラン0.2モル(・・・)とテトライソプロポキシシラン0.8モル(・・・)を混合し、・・・反応させた(縮合度10〜12)。この反応液中にプロピオン酸0.6モル(・・・)を加えて更に20時間還流下反応させ、・・・塗布液とした。この液をガラス板に・・・塗布し、100℃×15分間、次いで450℃×80分間焼成したところ、膜厚10500Åのシリカ膜を得た。この膜は透明かつ均一で光学顕微鏡観察では、クラックはなかった。」(6頁左下欄9行〜右下欄6行)。 証拠方法8(特開平1-194980号公報、申立人2の甲第5号証) 「(1)オルガノポリシロキサンを主成分とする塗布液を基板に塗布した後、・・・紫外線を含む活性光線を照射して塗布膜の表面を改質させ、次いで400℃以上の温度で焼成することを特徴とするシリカ系被膜形成方法。(2)オルガノポリシロキサンが一般式・・・で示されるテトラアルコキシシラン、一般式・・・で示されるアルキルトリアルコキシシラン又はアリールトリアルコキシシランおよび一般式・・・で示されるアルキルジアルコキシシラン又はジアリールジアルコキシシラン(・・・)で表されるアルキルアルコキシシランの一種又は二種以上を加水分解縮重合して得られる重合体である請求項1記載の被膜形成方法。」(特許請求の範囲請求項1及び2)、 「本発明は、・・・シリカ系被膜形成方法、及びかかる方法によって得られる耐薬品性の良好なシリカ系被膜に係るものである。」(2頁右上欄18行〜同頁左下欄4行参照) 「実施例1〜6,比較例1 ジメチルジエトキシシラン・・・、メチルトリエトキシシラン・・・、テトラエトキシシラン・・・を・・・フラスコに入れ、・・・部分加水分解縮重合を行った。」(4頁右下欄10〜16行) 「実施例9〜12,比較例2 ジメチルジエトキシシラン・・・、メチルトリエトキシシラン・・・、テトラエトキシシラン・・・滴下し、・・・重量平均分子量が約10、000になった時点で・・・稀釈し塗布液とした。」(5頁右下欄9行〜6頁左上欄3行参照)。 証拠方法9(特開昭60-118715号公報、申立人2の甲第6号証) 「実施例1 反応容器に、テトラエトキシシラシ・・・、ジメチルジエトキシシラン・・・及びエチルアルコール・・・を加え、・・・0.2N-塩酸・・・を添加し・・・反応させた。・・・かくして得られた反応生成物(ワニス)は透明で、・・・すぐれた貯蔵安定性を示した。ついで、上記ワニスをみがき軟鋼板に膜厚100μに塗装し、温度20℃、湿度75%お部屋に7日間セッティングした。かくして形成した塗膜にはワレ等の異常は全く見られず、耐ソルトスプレー試験・・・後も点サビは全く観察されなかった。」(4頁左下欄2〜6行)。 証拠方法10〜17には、基体にシリコーン系成分を塗布した後、窒素ないし不活性ガス雰囲気下で焼成することが記載されている。 (III-4)対比・判断 (III-4-1)特許法第29条第1項第3号について: 本発明1、2は、前記構成を有するものであり、特に、前記した(A)で示されるテトラアルコキシシラン化合物、(B)で示されるトリアルコキシシラン化合物および(C)で示されるジアルコキシシラン化合物の混合物から得られるシラノールオリゴマーを含有し、テトラアルコキシシラン化合物のアルコキシ基を構成する炭素数がトリアルコキシシラン化合物及びジアルコキシシラン化合物のアルコキシ基を構成する炭素数よりも多いことを特徴とする半導体デバイス絶縁膜用シリカ系被膜形成用塗布液であること(以下、「本件構成A」という。)を構成とするものであり、本件構成Aにより、明細書中に、比較例を用いて説明されているとおりの、クラックや剥がれを生ずることがなく、厚い被膜を形成することができるという効果(以下、「本件効果」という。)を奏するものである。 これに対して、証拠方法1には、オルトケイ酸テトラエチルと、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン及びこれらの混合物からなる群から選択されたシランとを加水分解した組成物を、眼鏡レンズ、サングラス、保護眼鏡、および建築用材料の製造に使用されるプラスチック製品等の耐摩耗性被覆に用いることが記載されているものの、半導体デバイス絶縁膜用シリカ系被膜形成用塗布液に係る記載も、テトラアルコキシシラン化合物とトリアルコキシシラン化合物とジアルコキシシラン化合物との混合物を加水分解することの具体的記載もないから、本件構成Aが示唆されているとすることはできない。 証拠方法2には、テトラアルコキシシラン化合物とトリアルコキシシラン化合物の加水分解物を、プラスチック成型品に優れた表面硬度、耐擦傷性、光沢及び耐溶剤性の付与する被膜形成用組成物とすることが記載されているものの、加水分解に際してジアルコキシシラン化合物を併用することの記載も、半導体デバイス絶縁膜用シリカ系被膜形成用塗布液とするとの記載もないから、本件構成Aが示唆されているとすることはできない。 証拠方法3には、メチルトリメトキシシランとテトラエトキシシランとジメチルジメトキシシランとを加水分解して無機コーティングに用いることが記載されているものの、当該無機コーティングは、従来の無機コーティング材が、「耐候性が非常によく、高硬度で不燃性である。しかしながら焼き付け温度を100℃以上にする必要があり、適用範囲および使用範囲が限定されていた。たとえば、耐熱性の低い熱可塑性プラスチックや木材に使用できず、現場の施工ができないという問題点があった。」との認識のもとに発明されたものであると記載され、半導体デバイス絶縁膜用シリカ系被膜形成用塗布液とすることについて記載も示唆もないから、本件構成Aが示唆されているとすることはできない。 してみると、本件発明1および本件発明1を引用する本件発明2が証拠方法1、2、3に記載された発明であるとすることはできない。 (III-4-2)特許法第29条第2項について: 証拠方法4には、テトラアルコキシシラン化合物とトリアルコキシシラン化合物とから得られるシリコーン樹脂の膜が、半導体装置の絶縁層とした場合に、歪が少なく、クラックを生じにくいことが記載され、証拠方法7には、メチルトリエトキシシランとテトライソプロポキシシランを反応させて、電子部品の多層配線の層間絶縁膜、表面保護膜等の用途に好適でありひび割れないシリカ被膜形成用塗布液を製造すること記載されているものの、いずれの証拠方法にも、ジアルコキシシラン化合物を併用するとの記載も、テトラアルコキシシランのアルコキシ基を構成する炭素数をトリアルコキシシラン及びジアルコキシシランのアルコキシ基を構成する炭素数よりも多くするとの記載もない。 証拠方法8には、ジメチルジエトキシシランとメチルトリエトキシシランとテトラエトキシシランを加水分解して、シリカ系被膜を形成することが記載され、ジアルコキシシラン化合物を併用することまで記載されているといえるものの、前記証拠方法4、7と同様に、前記加水分解物を半導体デバイス絶縁膜用シリカ系被膜形成用塗布液とするとの記載も、テトラアルコキシシランのアルコキシ基を構成する炭素数をトリアルコキシシラン及びジアルコキシシランのアルコキシ基を構成する炭素数よりも多くするとの記載もない。 証拠方法5には、テトラアルコキシランの酸加水分解に対するアルキル鎖長及び分岐度の影響について記載され、証拠方法6には、証拠方法5が公知であるとされているにすぎず、証拠方法9には、テトラエトキシシラシとジメチルジエトキシシランとの反応生成物をみがき軟鋼板に塗装したとき、塗膜にワレ等の異常は全く見られないことが記載されているにすぎない。 したがって、証拠方法4〜9と前記した証拠方法1〜3を総合しても、前記本件構成Aが当業者に容易に想到されえたものであるとすることはできない。 また、証拠方法4、7、9に記載されたクラックやひび割れやワレに関する記載も、被膜形成組成物が異なるから、前記した本件効果を示唆するものであるとすることはできない。 してみると、本件発明1および本件発明1を引用する本件発明2が証拠方法1〜9に記載された発明に基いて当業者に容易に発明されえたものであるとすることはできない。 また、証拠方法10〜17には、基体にシリコーン系成分を塗布した後、窒素ないし不活性ガス雰囲気下で焼成することが記載されているにすぎない。 したがって、証拠方法1〜9に証拠方法10〜17を併せ考えても、本件発明2が当業者に容易に発明されえたものであるとすることはできない。 (III-4-3)特許法第36条第3項及び第4項について: 申立人1の主張は、(1)訂正前の請求項1、2に記載された発明は、成分(A)、(B)、(C)を必須成分とすべきである、(2)R’、R”がアリール基である場合を含むとするのはアルコキシシランの定義として適切でない、というものであるが、明細書の(1)および(2)に該当する部分の記載は、いずれも、前記したように、適正なものに訂正された。 (III-5)むすび 以上のとおりであるから、申立人1、2のいずれの主張も採用することができず、特許異議の申立ての理由および証拠によっては、本件発明1、2に係る特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとすることはできない。 また、他に本件発明1、2に係る特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとする理由を発見しない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 シリカ系被膜形成用塗布液およびシリカ系被膜の製造法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)一般式(I)Si(OR′)4で表されるテトラアルコキシシラン化合物、 (B)一般式(II)RSi(OR″)3で表されるトリアルコキシシラン化合物および (C)一般式(III)R2Si(OR″)2で表されるジアルコキシシラン化合物(ただし、上記式中のRは炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基、R′は炭素数2〜6の一価のアルキル基、R″は炭素数1〜5の一価のアルキル基を意味し、一般式(I)中のR′の炭素数は、一般式(II)および一般式(III)中のR″の炭素数より多い)の混合物を、溶剤の存在下で水と触媒により加水分解縮合させて得られるシラノールオリゴマーを含有してなる半導体デバイス絶縁膜用シリカ系被膜形成用塗布液。 【請求項2】 請求項1記載のシリカ系被膜形成用塗布液を基体上に塗布して乾燥した後、窒素雰囲気中で硬化させることを特徴とするシリカ系被膜の製造法。 【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はシリカ系被膜形成用塗布液、さらに詳しくは半導体デバイスなどの絶縁膜として好適に用いられる、耐クラック性に優れたシリカ系被膜形成用塗布液およびこれを用いたシリカ系被膜の製造法に関する。 〔従来の技術〕 従来、アルコキシシラン化合物等の溶液またはその部分加水分解物の溶液を電子部品等の基板上に塗布し、焼成してシリカ系の被膜を形成することは周知であり、特公昭52-20825号公報、特開昭55-34258号公報等に開示されている。シリカ系被膜の形成には、アルコキシシラン化合物としてテトラエトキシシラン等の4官能シランが最も多く用いられ、これを完全な酸化珪素とする方法が検討されている。この方法で得られるガラス質の被膜は、非常に硬度が高く、脆い性質を有するため、0.3μm以上の厚い被膜を形成するとクラックが入る欠点があった。 この耐クラック性を向上させるため、アルコキシシラン化合物としてアルキル基やアリール基などの有機基を有する化合物を用いて加水分解縮合させ、シロキサンポリマーに有機基を導入する方法が検討されている。このようなシリカ系被膜のポリマー中には有機基が存在するため、膜の応力が緩和され、クラックが入りにくくなる。シロキサンポリマーに有機基を導入する方法として、3官能または2官能シラン化合物を共加水分解する方法(米国特許第4,408,009号明細書、特開昭58-28850号公報、特開昭63-241076号公報等)、4官能シラン化合物の部分加水分解物と2官能または3官能シラン化合物の部分加水分解物とを混合する方法(特開昭63-243174号公報)が提案されている。 しかしながら、上記方法では、シロキサンポリマー中に有機基がランダムに分布し、これを半導体基板上に塗布して被膜を形成し、酸素プラズマ処理または数度にわたる高温の熱処理を行うと、膜表面の有機基が分解して膜が著しく収縮し、そこを基点として膜の内部まで分解が急速に浸透して膜にクラックやはがれが生じるという欠点があった。 〔発明が解決しようとする課題〕 本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、厚い膜を形成しても、また酸素ラズマ処理や高温処理をしてもクラックやはがれの発生しないシリカ系被膜形成用塗布液およびこれを用いたシリカ系被膜の製造法を提供することにある。 〔課題を解決するための手段〕 本発明者等は、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、有機基を含むシリカ系被膜の耐プラズマ性を向上させるためには、シリカ系被膜表面に有機基を配さない構造にすればよいこと、シリカ系被膜の構造は、シリカ系被膜形成用塗布液中に含まれるシロキサンポリマーの構造に大きく起因することおよびシロキサンポリマーの構造は、用いるアルコキシシラン化合物の構造とそれを加水分解、縮重合させる反応条件に大きく起因することを見出し、本発明に到ったものである。 すなわち、本発明は、 1.(A)一般式(I)Si(OR′)4で表されるテトラアルコキシシラン化合物、 (B)一般式(II)RSi(OR″)3で表されるトリアルコキシシラン化合物および (C)一般式(III)R2Si(OR″)2で表されるジアルコキシシラン化合物(ただし、上記式中のRは炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基、R′は炭素数2〜6の一価のアルキル基、R″は炭素数1〜5の一価のアルキル基を意味し、一般式(I)中のR′の炭素数は、一般式(II)および一般式(III)中のR″の炭素数より多い)の混合物を、溶剤の存在下で水と触媒により加水分解縮合させて得られるシラノールオリゴマーを含有してなる半導体デバイス絶縁膜用シリカ系被膜形成用塗布液並びに前記シリカ系被膜形成用塗布液を基体上に塗布して乾燥した後、窒素雰囲気中で硬化させることを特徴とするシリカ系被膜の製造法に関する。 上記のR、R′およびR″は、シラン化合物の反応性の点から、炭素数が上記の範囲に制限される。シリカ系被膜の表面に配される有機基を少なくするために一般式(I)で表されるテトラアルコキシシラン化合物の反応性が、一般式(II)で表されるトリアルコキシシラン化合物および一般式(III)で表されるジアルコキシシラン化合物の反応性より低いことが好ましく、 上記の一般式(I)中のR′の炭素数は、一般式(II)および/または一般式(III)中のR″の炭素数が多い。なお、一般式(II)と一般式(III)のR″の炭素数は同一でも異なっていてもよい。 本発明に用いられる一般式(I)で表されるテトラアルコキシシラン化合物としては、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシラン、テトラアセトキシシラン等が挙げられる。 一般式(II)で表されるトリアルコキシシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリ-i-プロポキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、メチルトリi-ブトキシシラン、メチルトリ-t-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ-n-プロポキシシラン、エチルトリ-i-プロポキシシラン、エチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリ-i-ブトキシシラン、エチルトリ-t-ブトキシシラン等が挙げられる。 一般式(III)で表されるジアルコキシシラン化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n-プロポキシシラン、ジメチルジ-i-プロポキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジメチルジ-i-ブトキシシラン、ジメチルジ-t-ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ-n-プロポキシシラン、ジエチルジ-i-プロポキシシラン、ジエチルジ-n-ブトキシシラン、ジエチルジ-i-ブトキシシラン、ジエチルジ-t-ブトキシシラン等が挙げられる。 上記3成分のアルコキシ化合物の反応割合は、耐酸素プラズマ性および耐高温性の点から、一般式(I)で表されるテトラアルコキシシラン化合物1モルに対し、一般式(II)で表されるトリアルコキシシラン化合物を4モル以下で用いることが好ましく、一般式(III)で表されるジアルコキシシラン化合物は1.5モル以下で用いることが好ましい。 一般式(II)で表されるトリアルコキシシラン化合物および一般式(III)で表されるジアルコキシシラン化合物は、両者を用いてもいずれか一方のみを用いてもよい。 本発明に用いられる溶剤としては、アルコール系、ケトン系、エステル系などの溶剤が挙げられる。これは単独でまたは2種以上を混合して用いられるが、塗布性の点から、表面張力が低く、沸点の異なるアルコール系溶媒を2種以上混合して用いるのが好ましい。 本発明に用いられる加水分解反応の触媒としては、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、シュウ酸、マレイン酸、酢酸等の有機酸、リン酸エステルなどが挙げられるが、これらに特に制限されるものではない。 本発明における加水分解反応は、例えば上記3成分のアルコキシシラン化合物を同時に溶媒中に混合溶解した後、これを撹拌しながら水および触媒を加えることにより行われる。水の添加量は、用いる化合物の加水分解可能な官能基に対してほぼ当モルまたは80〜100モル%とするのが好ましい。加水分解反応温度には特に制限はないが、アルコキシシラン化合物の加水分解性を制御する点から50〜100℃に加熱するのが好ましい。 本発明のシリカ系被膜形成用塗布液は、例えばシリコンウエハー、ガラス板、セラミック基板等の基体上にスピナー、ロールコータ等で塗布した後、80〜200℃、好ましくは100〜150℃の温度で乾燥し、次に窒素雰囲気中300〜500℃、好ましくは400〜450℃の温度で硬化することによりシリカ系被膜とされる。 〔実施例〕 以下、本発明を実施例により詳しく説明する。 実施例1 温度計、分流管付きコンデンサ、滴下ロートおよび撹拌機を備えた4つ口フラスコに、テトラプロポキシシラン158.4g、メチルトリメトキシシラン40.9gおよびジメチルジメトキシシラン13.0gを仕込み、次に溶媒としてイソプロピルアルコール160.0g、ブタノール32.0gおよび酢酸エチル128.8gを加えて室温で撹拌混合した。 次にこの混合液に、リン酸ジエチル3.70gを溶解したイオン交換水63.0gを撹拌しながら添加した。この際、ガスクロマトグラフを用いてアルコキシシランの残存率を測定したところ、イオン交換水滴下後約10分では、テトライソプロポキシシランが50%以上残存していた。その後、50℃に加熱して5時間反応を行い、完全にテトラプロポキシシランが消失したことを確認し、塗布液とした。 得られた塗布液を、スピナーを用いて3000rpmの回転数でシリコンウエハー上に塗布し、150℃で1時間乾燥した後、窒素雰囲気中で450℃で1時間硬化し、シリカ系被膜を形成した。 この被膜の膜厚をタリステップ(ランクテーラホブソン社製)で測定したところ3000Åであった。この被膜をバレル型酸素プラズマ灰化装置PR-501A型(ヤマト科学社製)を用いて400Wで20分間処理したが、膜中にクラックは認められなかった。 実施例2 実施例1と同様の装置に、テトライソブトキシシラン186.5g、メチルトリメトキシシラン45.4gおよびジメチルジエトキシシラン12.4gを仕込み、次に溶媒としてイソプロピルアルコール160.0gおよび酢酸エチル128.8gを加えて室温で撹拌混合した。 次にこの混合液に、リン酸2.35gを溶解したイオン交換水63.0gを撹拌しながら添加した。この際、ガスクロマトグラフを用いてアルコキシシランの残存率を測定したところ、イオン交換水滴下後約10分では、テトライソブトキシシランが50%以上残存していた。その後、50℃に加熱して5時間反応を行い、完全にテトライソブトキシシランが消失したことを確認して塗布液とした。 得られた塗布液を実施例1と同様の条件でシリコンウエハー上に塗布して被膜を形成し、その膜厚を測定したところ3200Åであった。この被膜を実施例1と同様にして酸素プラズマ処理をしたが、膜中にクラックは認められなかった。 実施例3 実施例1と同様の装置に、テトラブトキシシラン160.0g、メチルトリイソプロポキシシシラン73.3gおよびジメチルジイソプロポキシシラン30.0gを仕込み、次に溶媒としてイソプロピルアルコール140.0gおよび酢酸エチル140.0gを加えて室温で撹拌混合した。 次にこの混合液に、マレイン酸2.51gを溶解したイオン交換水60.0gを撹拌しながら添加した。この際、ガスクロマトグラフを用いてアルコキシシランの残存率を測定したところ、イオン交換水滴下後約10分では、テトラブトキシシランが50%以上残存していた。その後、50℃に加熱して5時間反応を行い、完全にテトラブトキシシランが消失したことを確認し、塗布液とした。 得られた塗布液を実施例1と同様の条件でシリコンウエハー上に塗布して被膜を形成し、その膜厚を測定したところ2700Åであった。この被膜を実施例1と同様にして酸素プラズマ処理をしたが、膜中にクラックは認められなかった。 比較例1 実施例1と同様の装置に、テトラメトキシシラン28.5g、メチルトリメトキシシラン63.7gおよびジメチルジメトキシシラン30.0gを仕込み、次に溶媒としてイソプロピルアルコール150.0gおよび酢酸エチル130.0gを加えて室温で撹拌混合した。 次にこの混合液に、リン酸2.35gを溶解したイオン交換水63.0gを撹拌しながら添加した。この際、ガスクロマトグラフを用いてアルコキシシランの残存率を測定したところ、イオン交換水滴下後約10分では、アルコキシシランは全く検出されなかった。その後、室温で5時間反応を行い、塗布液とした。 得られた塗布液を実施例1と同様の条件でシリコンウエハー上に塗布して被膜を形成し、膜厚3500Åのクラックフリーな被膜を得た。この被膜を実施例1と同様にして酸素プラズマ処理をしたところ、膜中に多数のクラックが認められた。 比較例2 実施例1と同様の装置に、テトラメトキシシラン30.5g、メチルトリエトキシシラン73.7gおよびジメチルジイソプロポキシシラン45.1gを仕込み、次に溶解としてイソプロピルアルコール150.0gおよび酢酸メチル130.0gを加えて室温で撹拌混合した。 次にこの混合液に、リン酸2.35gを溶解したイオン交換水61.5gを撹拌しながら添加した。この際、ガスクロマトグラフを用いてアルコキシシランの残存率を測定したところ、イオン交換水滴下後約10分では、アルコキシシランは全く検出されなかった。その後、室温で5時間反応を行い、塗布液とした。 得られた塗布液を実施例1と同様の条件でシリコンウエハー上に塗布して被膜を形成し、膜厚3100Åのクラックフリーな被膜を得た。この被膜を実施例1と同様にして酸素プラズマ処理をしたところ、膜中に多数のクラックが認められた。 〔発明の効果〕 本発明のシリカ系被膜形成用塗布液によれば、酸素プラズマ処理や高温処理などによる膜表面の有機基の分解を防止することができるため、この組成物を用いて得られるシリカ系被膜に、クラックやはがれが生じることがなく、また0.5μm以上の厚い被膜を形成することが可能である。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2003-08-05 |
出願番号 | 特願平2-226966 |
審決分類 |
P
1
651・
532-
YA
(C09D)
P 1 651・ 121- YA (C09D) P 1 651・ 113- YA (C09D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 田中 耕一郎 |
特許庁審判長 |
雨宮 弘治 |
特許庁審判官 |
井上 彌一 佐藤 修 |
登録日 | 2000-12-01 |
登録番号 | 特許第3134297号(P3134297) |
権利者 | 日立化成工業株式会社 |
発明の名称 | シリカ系被膜形成用塗布液およびシリカ系被膜の製造法 |
代理人 | 三好 秀和 |
代理人 | 西川 裕子 |
代理人 | 三好 秀和 |
代理人 | 岩見谷 周志 |
代理人 | 小島 隆司 |