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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1088980 |
審判番号 | 不服2002-24013 |
総通号数 | 50 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-10-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-12-12 |
確定日 | 2003-12-15 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第 48731号「印刷装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年10月 9日出願公開、特開平 7-256973]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件は、平成6年3月18日の出願であって、平成14年11月1日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年12月12日付けで本件審判請求を行うとともに、平成15年1月7日付けで明細書についての手続補正(平成6年改正前特許法17条の2第1項5号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 1.補正の却下の決定の結論 平成15年1月7日付けの手続補正を却下する。 2.理由 (1)補正目的 本件補正前後の【請求項1】の記載を比較すると、「割付手段」につき補正前では「前記論理頁を前記プリンタで印刷する用紙に対する割付を行なう割付手段」とあったものを、「前記論理頁を前記プリンタで印刷する用紙をその縦と横を指定数にて分割して形成した複数の分割頁に対する各論理頁の割付を行なう割付手段」と補正し、同じく「倍率設定手段」につき補正前では「前記論理頁の大きさ、印刷用紙の大きさ、および割付手段での割付に基づいて設定する倍率設定手段」とあったものを、「前記各論理頁の大きさ、印刷用紙の大きさ、および割付手段での各論理頁の割付に基づいて縦および横のそれぞれについて設定する倍率設定手段」と補正することを補正事項に含んでいるから、平成6年改正前特許法(以下「平成5年特許法」という。)17条の2第3項2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものと認める。 なお、補正後請求項1は補正前請求項1に「前記割付手段での印刷用紙への論理頁の割付を、分割頁の長辺と論理頁の長辺とが一致するように割付を行なうようにした」との限定を加えているが、これは請求項3を削除するとともに、補正前請求項3(請求項1を引用)の限定事項を補正後請求項1の限定事項としたものであって、見方を変えれば、請求項1の削除を目的としたものといえる(もっとも、補正前請求項2にはこの限定がなく、補正後請求項2にはこの限定があるから、補正前後の請求項2の比較では、特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえるが、補正前後の請求項1の記載では必ずしも妥当ではない。)。 そこで、本件補正が、平成5年特許法17条の2第4項で準用する同法126条3項の規定に適合するかどうか審理する。 (2)補正発明の認定 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載のとおりの次のものである。 「頁を単位とした印刷データである論理頁データをプリンタで印刷して出力する印刷装置において、 前記プリンタで印刷するためのビットマップデータを記録するビットマップメモリと、 前記論理頁を前記プリンタで印刷する用紙をその縦と横を指定数にて分割して形成した複数の分割頁に対する各論理頁の割付を行なう割付手段と、 前記各論理頁に対する印刷時の倍率を、前記各論理頁の大きさ、印刷用紙の大きさ、および割付手段での各論理頁の割付に基づいて縦および横のそれぞれについて設定する倍率設定手段と、 前記倍率設定手段で設定された倍率で前記論理頁データを拡大縮小して前記割付手段で割付けられた前記ビットマップメモリ上の位置に展開する拡大縮小手段とを備え、 前記割付手段での印刷用紙への論理頁の割付を、分割頁の長辺と論理頁の長辺とが一致するように割付を行なうようにした ことを特徴とする印刷装置。」 (3)引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-47979号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア〜オの記載が図示とともにある。 ア.「同一寸法の第1の用紙のn(n=2K,K:正整数)枚分の入力印刷データを記憶する第1の手段と、前記第1の用紙のm(m=1,2K)倍の寸法の第2の用紙の1枚分の出力印刷データを記憶する第2の手段と、前記n枚分の入力印刷データをm/n倍に縮小する第3の手段と、縮小された前記n枚分の入力印刷データを前記出力印刷データとして割付編集する第4の手段とを備えることを特徴とする印刷データ処理装置。」(【請求項1】) イ.「【産業上の利用分野】本発明は、印刷データ処理装置に関し、特に印刷データの縮小および割付編集を行なう印刷データ処理装置に関する。」(段落【0001】) ウ.「【発明が解決しようとする課題】上述した従来の処理装置は、・・・印刷データを割付編集することができないため、手作業によって割付編集をしなければならない。」(段落【0003】) エ.「【実施例】次に、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。図1を参照すると、この実施例の印刷データ処理装置10においては、上位装置11から命令コード12が命令コード受信部5に入力されると、この命令コード12に従って入力印刷データ記憶部1は上位装置11から送信される同一寸法の第1の用紙n(n=2K,K:正整数)枚分の入力印刷データ6を記憶する。また、出力印刷データ記憶部4は第1の用紙のm(m=1,2K)倍の寸法の第2の用紙1枚分の出力印刷データ8を一時的に記憶して、出力データ9として出力する。縮小処理部2はn枚分の入力印刷データ6をm/n倍に縮小する。割付編集部3は縮小されたn枚分の縮小印刷データ7を出力印刷データ8として割付編集する。」(段落【0005】) オ.「図1,図2,図3および図4を参照して詳述すると、まず、A4用紙(第1の用紙)2枚分の入力印刷データ6をA4用紙(第2の用紙)1枚分に割付編集する命令コード12を上位装置11から命令コード受信部5が受信すると、・・・割付編集部3は1/2に縮小処理された2枚分の縮小印刷データ7を図2に示すように横長のA4用紙1枚分20の左側21および右側22に縦長にそれぞれ入力順に割付編集し、出力印刷データ8として出力する。出力印刷データ記憶部4はこの出力印刷データ8を一時的に記憶したのち出力データ9として出力する。また、A4用紙4枚分の入力印刷データ6をA4用紙1枚分に割付編集する命令コード12を上位装置11から命令コード受信部5が受信すると、縮小処理部2での縮小処理が1/4になり、割付編集部3は1/4に縮小処理された4枚分の縮小印刷データ7を図3に示すように横長のA4用紙1枚分30の左上側31,右上側32,左下側33および右下側34に横長にそれぞれ入力順に割付編集する。」(段落【0006】) (4)引用例1記載の発明の認定 引用例1の記載オによれば、A4用紙2枚分の入力印刷データを同一サイズ用紙1枚分に割付編集する場合には縦長に割付編集し、同じく、A4用紙4枚分の入力印刷データを同一サイズ用紙1枚分に割付編集する場合には横長に割付編集するのであり、【図2】及び【図3】を併せ考慮すれば、入力印刷データを印刷した際の長辺と、実際の印刷用紙(記載アの「第2の用紙」)上で同印刷データの印刷領域として割り当てられた領域の長辺とが一致するように割付を行なっているものと認められる。 引用例1の記載アにある「印刷データ処理装置」は、印刷装置の構成の一部となるものであるから、引用例1には印刷装置の発明も記載されているといえる。 したがって、記載ア〜オを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には印刷装置の発明として次の発明(以下「引用例発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「同一寸法の第1の用紙のn(n=2K,K:正整数)枚分の入力印刷データを記憶する入力印刷データ記憶部と、前記第1の用紙のm(m=1,2K)倍の寸法の第2の用紙の1枚分の出力印刷データを記憶する出力印刷データ記憶部と、前記n枚分の入力印刷データをm/n倍に縮小する縮小処理部と、縮小された前記n枚分の入力印刷データを、入力印刷データを印刷した際の長辺と、実際の印刷用紙上で同印刷データの印刷領域として割り当てられた領域の長辺とが一致するように割付を行ない、前記出力印刷データとして割付編集する割付編集部とを備える印刷装置。」 (5)補正発明と引用例発明1との一致点及び相違点の認定 引用例発明1の個々の「入力印刷データ」は、第1の用紙の1枚分の入力印刷データであるから、「頁を単位とした印刷データ」ということができ、これは補正発明の「論理頁データ」に相当し、引用例発明1は「論理頁データをプリンタで印刷して出力する印刷装置」であるということができる。 引用例発明1では、第2の用紙(補正発明の「プリンタで印刷する用紙」に相当する。)にn枚の入力印刷データに対応した印刷がされ、各入力印刷データは第2の用紙の1/nの領域に印刷されるのであり、該領域は補正発明の「分割頁」に相当する。そして、引用例発明1では、第2の用紙が縦と横に分割されていることは明らかである(【図2】、【図3】及び【図4】参照。)。したがって、引用例発明1の「割付編集部」は、補正発明の「割付手段」に相当し、その割付態様が「印刷用紙への論理頁の割付を、分割頁の長辺と論理頁の長辺とが一致するように割付を行なう」点でも一致する。 引用例発明1では、入力印刷データの個数(n)、及び第2の用紙と第1の用紙のサイズ比(m)に基づいて縮小率(m>nであれば拡大であるから、補正発明の「印刷時の倍率」と同義と認める。)が定まっており、入力印刷データの個数に基づくことと補正発明でいう「割付手段での各論理頁の割付に基づいて」には相違がなく、引用例発明1の「縮小処理部」はその限度で補正発明の「倍率設定手段」に相当する。 引用例発明1の「出力印刷データ記憶部」と補正発明の「ビットマップメモリ」とは、プリンタで印刷するためのデータの記憶部である点で一致する。 したがって、補正発明と引用例発明1とは、 「頁を単位とした印刷データである論理頁データをプリンタで印刷して出力する印刷装置において、 前記プリンタで印刷するための印刷データを記録する記憶部と、 前記論理頁を前記プリンタで印刷する用紙をその縦と横に分割して形成した複数の分割頁に対する各論理頁の割付を行なう割付手段と、 前記各論理頁に対する印刷時の倍率を、割付手段での各論理頁の割付に基づいて設定する倍率設定手段と、 前記倍率設定手段で設定された倍率で前記論理頁データを拡大縮小する拡大縮小手段とを備え、 前記割付手段での印刷用紙への論理頁の割付を、分割頁の長辺と論理頁の長辺とが一致するように割付を行なうようにした印刷装置。」である点で一致し、次の各点で相違する。 〈相違点1〉記憶部及び拡大縮小手段につき、補正発明が「ビットマップデータを記録するビットマップメモリ」及び「割付手段で割付けられた前記ビットマップメモリ上の位置に展開する」としているのに対し、引用例発明1ではそれらのことが明らかでない点。 〈相違点2〉割付手段につき、補正発明では「縦と横を指定数にて分割」するのに対し、引用例発明1では、結果として縦と横に分割されるけれども、縦の分割数と横の分割数を指定するものではない点。 〈相違点3〉倍率設定につき、補正発明が「各論理頁の大きさ、印刷用紙の大きさ、および割付手段での各論理頁の割付に基づいて縦および横のそれぞれについて設定」しているのに対し、引用例発明1では入力印刷データの個数(n)及び第2の用紙と第1の用紙のサイズ比(m)に基づいて設定しており、縦横個別に設定するのではない点。 (6)相違点についての判断 (6-1)相違点1について 相違点1として認定したとおり、引用例1には「出力印刷データ記憶部」に記憶されるものが「ビットマップデータ」であることの直接記載はない。しかし、印刷装置において、最終的に印刷処理に供されるデータがビットマップデータであることは、極めてありふれたことがらである。そして、引用例1に「出力印刷データ記憶部」から出力される出力データをビットマップデータに変換する旨の記載がないことからみて、「出力印刷データ記憶部」にはビットマップデータが記憶されると解するのが最も自然であり、少なくとも当業者にとって、「出力印刷データ記憶部」に記憶されるものをビットマップデータとすることには、何の困難性もない。 そして、「出力印刷データ記憶部」にビットマップデータを記憶するのであれば、引用例発明1の「縮小処理部」及び「割付編集部」は、補正発明でいう「論理頁データを拡大縮小して前記割付手段で割付けられた前記ビットマップメモリ上の位置に展開する」との構成を備えなければならないことは当然の帰結である。この場合、「展開」が補正発明では「拡大縮小手段」の機能とされており、引用例発明1では同機能が「縮小処理部」ではなく「割付編集部」に備わると解する方が自然であるけれども、「割付編集部」の同機能を奏するための構成を、「割付編集部」の一部と見るか、それとも「縮小処理部」の一部と見るかは、単に見方の問題であって、構成上は同一である。 以上のとおりであるから、相違点1は実質的相違といえないか、又は設計事項程度の軽微な相違でしかない。 (6-2)相違点2について 本願出願前に頒布された特開平1-221981号公報(以下「引用例2」という。)には、 「1枚の転写紙に複数原稿の縮小画像を形成できる画像形成装置に関する。」(1頁左下欄16〜18行)、 「複写機にも・・・デジタル記録を行うものが最近出現している。このデジタル記録では、アナログ記録とは異なり、一旦読み取った画像データを電気信号に変換するための種々の操作が可能になる。一方、例えば、A4原稿4枚をそれぞれ縮小し、1枚のA4サイズの紙面に割り付けてA4の複製画像を作成するようなことは、ワープロなどの原稿ではよく行う作業である。しかし、従来までのアナログ記録およびデジタル記録のいずれの複写機でもワープロのようにコード化された情報を処理するわけではない」(1頁左下欄末行〜右下欄12行)、 「合成したときのページの分割形状、原稿サイズ、分割エリアの原稿ページの割り付け、縦横変倍率などのページデータもメインコントローラ35からLCC53およびレーザカードドライバ55を介してレーザカードに書き込まれる。」(2頁右下欄11〜16行)、及び 「記録される内容は具体的には、原稿の縦横寸法、原稿枚数、縦・横それぞれの分割数、エリアに対する原稿ページの割り付け、縦横変倍率、画像データの縦横サイズ・・・である。」(3頁左上欄2〜6行) との各記載があり、これら記載によると、引用例2には、複数の原稿を読み取った後これらを1枚の用紙に印刷するに当たり、1枚の用紙を「縦・横それぞれの分割数」を指定することで分割することが記載されているといえる。そして、そのことは相違点2に係る補正発明の構成にほかならない。しかも、引用例発明1と引用例2記載の発明とは、補正発明の「論理ページ」に相当するものが、同一サイズの用紙1枚分の画像データであるから、引用例発明1において、「第2の用紙」の分割を、引用例2記載のように「縦・横それぞれの分割数」を指定して行うこと、すなわち、相違点2に係る補正発明の構成をなすことは当業者にとって想到容易といわざるを得ない。 (6-3)相違点3について 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-46756号公報(以下「引用例3」という。)には、以下のカ〜サの記載が図示とともにある。 カ.「本発明は単数または複数の入力画像を補間処理して、1つの出力媒体へ所定の出力フォーマットにしたがって出力する画像処理装置に関するものであり」(段落【0001】) キ.「本発明の画像処理装置は、X線CTスキャナ、MRIなどの異なる画像診断装置から出力される画像データを、同一の出力媒体上に出力するために、画素数の異なる入力画像を、それぞれ異なる倍率で補間処理して同一の出力媒体上に指定の出力フォーマットで出力するようにしたものである。」(段落【0010】) ク.「図2では出力される画像の大きさは2種類であるが、出力フォーマットによっては1種類の場合もある。・・・X線CTスキャナおよびMRIからの画像を入力する場合には、入力画素数は一般に異なっている。」(段落【0014】) ケ.「入力画像の画素数、入力画像数および出力媒体であるフィルム9上での配置、フィルムの大きさなどの情報を入力し、これらのパラメータから倍率を計算する。」(段落【0015】) コ.「縦横比の変更も可能であり、水平方向および垂直方向の倍率をそれぞれ変えてフィルム一杯に画像を出力することもできる。」(段落【0018】) サ.「出力画像エリアの水平方向の画素数をH、・・・画像IM1〜IM6全体の垂直方向の画素数をV1、画像IM1〜IM6の各々の水平方向の画素数をx1、垂直方向の画素数をy1、画像IM7,IM8の全体の垂直方向の画素数をV2、画像IM7,IM8の各々の水平方向の画素数をx2、垂直方向の画素数をy2とし、さらに画像IM1〜IM6の水平方向および垂直方向の画像数をnx1およびny1、とし、画像IM7,IM8の水平方向および垂直方向の画像数をそれぞれnx2およびny2とすると、画像IM1〜IM6の水平方向および垂直方向の倍率IPx1およびIPy1、画像IM7,IM8の水平方向および垂直方向の倍率IPx2およびIPy2はそれぞれ次式によって計算することができる。 IPx1=H/(x1×nx1)-----(1) IPy1=V1/(y1×ny1)-----(2) IPx2=H/(x2×nx2)-----(3) IPy2=V2/(y2×ny2)-----(4)」(段落【0019】) 引用例3記載の「入力画像」は補正発明の「論理頁」に相当するものであり、「入力画像の画素数」、「フィルムの大きさ」及び「入力画像数および出力媒体であるフィルム9上での配置」は、は補正発明の「各論理頁の大きさ」、「印刷用紙の大きさ」及び「割付手段での各論理頁の割付」にそれぞれ相当する。そして、引用例3には、縦横それぞれの倍率を設定することも記載されている(記載コ及び記載サ)から、結局相違点3に係る補正発明の構成はすべて引用例3に記載されている(なお、相違点3に係る補正発明の構成は、前掲引用例2にも記載されている。必要なら、3頁右下欄8行及び9行を参照。)。そして、引用例3は「画像診断装置から出力される画像データ」の処理についてのみ記載したものではあるが、1枚のフィルム(補正発明の「印刷用紙」に相当)を分割して、複数の画像を印刷する対象は、何も「画像診断装置から出力される画像データ」に限ったものではなく、分割した各領域にどのような倍率で印刷すべきであるかは、「画像診断装置から出力される画像データ」であるかどうかには関わりのないことである。 加えて、引用例発明1では、倍率は入力印刷データ数及び第2の用紙と第1の用紙のサイズ比のみで定まっているところ、入力印刷データは通常第1の用紙に適宜の余白をもって印刷するよう定まっていることが多いが、その余白は、縮小又は拡大されてそのまま、第2の用紙に残ってしまう。拡大の場合はそれでもよいが、縮小の場合は、余白を小さくした方が縮小率が小さくなり好都合な場合が多いことは自明である。 請求人は、「本願発明(審決注.補正発明)では、各論理頁に対する印刷時の倍率を、各論理頁の大きさ、印刷用紙の大きさ、および割付手段での各論理頁の割付に基づいて縦および横のそれぞれについて設定しているのに対し、両引用例(審決注.引用例1及び引用例3)では、複数の入力印刷データ又は入力画像に対して1回計算しているに過ぎない。」(平成15年1月7日付けの審判請求書の手続補正書(方式)4頁1〜4行)と主張するが、補正発明では「各論理頁に対する印刷時の倍率を、各論理頁の大きさ、印刷用紙の大きさ、および割付手段での各論理頁の割付に基づいて・・・設定」するけれども、各論理頁の大きさが異なるものに限定されているわけではなく、各論理頁が同一サイズであれば、1回の計算のみ行うものを包含すると解すべきである。のみならず、引用例3記載の発明においても、画像IM1〜IM6と画像IM7,IM8では個別に倍率設定が行われている。画像IM1〜IM6には同一倍率が設定されているけれども、論理頁の大きさがこれら画像内では同一であり、各画像に割り当てられた印刷領域も同一サイズであるから、同一倍率としただけのことであり、これらいずれかの大きさが異なる場合に、個別の倍率設定をすることは、引用例3に十分示唆されている。そして、引用例発明1にあっても、各入力印刷データは、同一サイズの用紙に印刷を予定したものではあるけれども、それら入力印刷データのサイズが同一のものに限定されるわけではない。したがって、請求人の上記主張は採用できない。 したがって、引用例発明1の倍率設定として引用例3記載のものを採用して相違点3に係る補正発明の構成をなすことは、当業者にとって想到容易といわざるを得ない。 (7)補正発明の独立特許要件の判断 以上のとおり、相違点1〜相違点3は、実質的相違といえないか若しくは設計事項程度の相違、又は当業者にとって想到容易な相違点でしかなく、これら相違点に係る補正発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、補正発明は、引用例1〜引用例3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。すなわち、本件補正は、平成6年改正前特許法17条の2第4項で準用する同法126条3項の規定に適合しない。 3.補正の却下の決定のむすび よって、平成6年改正前特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により、結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての当審の判断 1.本願発明の認定 平成15年1月7日付けの手続補正は却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年5月27日付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載のとおりの次のものと認める。 「論理頁データをプリンタで印刷して出力する印刷装置において、 前記プリンタで印刷するためのビットマップデータを記録するビットマップメモリと、 前記論理頁を前記プリンタで印刷する用紙に対する割付を行なう割付手段と、 前記論理頁に対する印刷時の倍率を、前記論理頁の大きさ、印刷用紙の大きさ、および割付手段での割付に基づいて設定する倍率設定手段と、 前記倍率設定手段で設定された倍率で前記論理頁データを拡大縮小して前記割付手段で割付けられた前記ビットマップメモリ上の位置に展開する拡大縮小手段と、 を備えたことを特徴とする印刷装置。」 2.本願発明と引用例発明1との一致点及び相違点の認定 本願発明と引用例発明1とは、 「論理頁データをプリンタで印刷して出力する印刷装置において、 前記プリンタで印刷するための印刷データを記録する記憶部と、 前記論理頁を前記プリンタで印刷する用紙に対する割付を行なう割付手段と、 前記各論理頁に対する印刷時の倍率を、割付手段での各論理頁の割付に基づいて設定する倍率設定手段と、 前記倍率設定手段で設定された倍率で前記論理頁データを拡大縮小する拡大縮小手段とを備えた印刷装置。」である点で一致し、「第2 2.(5)」で述べた〈相違点1〉及び次の〈相違点3’〉で相違する(〈相違点1〉については、「補正発明」を「本願発明」と読み替える。)。 〈相違点3’〉倍率設定につき、本願発明が「各論理頁の大きさ、印刷用紙の大きさ、および割付手段での各論理頁の割付に基づいて設定」しているのに対し、引用例発明1では入力印刷データの個数(n)及び第2の用紙と第1の用紙のサイズ比(m)に基づいて設定している点。 3.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断 〈相違点1〉及び〈相違点3’〉が、実質的相違といえないか若しくは設計事項程度の相違、又は当業者にとって想到容易な相違でしかなく、これら相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできないことは、「第2 2.(6)〜(7)」で述べたと同様である(「補正発明」を「本願発明」と読み替える。)。 したがって、本願発明は、引用例1及び引用例3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-10-23 |
結審通知日 | 2003-10-23 |
審決日 | 2003-11-05 |
出願番号 | 特願平6-48731 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 名取 乾治 |
特許庁審判長 |
佐田 洋一郎 |
特許庁審判官 |
津田 俊明 清水 康司 |
発明の名称 | 印刷装置 |
代理人 | 特許業務法人アイ・ピー・エス |