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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62M
管理番号 1088992
審判番号 不服2000-13855  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-08-31 
確定日 2003-12-10 
事件の表示 平成 2年特許願第162242号「電動式車両」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年 5月31日出願公開、特開平 3-128789]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年6月20日(優先権主張平成1年7月13日)の出願であって、本願の請求項1〜5に係る発明は、平成13年7月23日付けの手続補正書により補正された明細書及び平成12年9月28日付けの手続補正書により補正された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1〜3に係る発明は、以下のとおりのもの(請求項1の発明を、以下「本願発明」という。)と認める。
「【請求項1】電動モータの回転をクラッチと変速機を有する伝動機構を介して駆動輪へ伝達することにより走行する電動モータ付き車両において、この伝動機構は前記電動モータが最大効率近傍になる所定回転数の範囲でのみ前記クラッチを介して電動モータ側と駆動輪側とを接続するとともに、前記変速機は前記電動モータの回転数が最大効率となる回転数を変速回転数に含むことを特徴とする電動モータ付き車両。
【請求項2】伝動機構が自動遠心クラッチであることを特徴とする請求項1に記載した電動モータ付き車両。
【請求項3】伝動機構が自動変速機で構成されていることを特徴とする請求項1に記載した電動モータ付き車両。」

2.引用刊行物及びその記載事項
これに対して、当審における平成13年4月25日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願前である昭和58年8月5日に日本国内において頒布された特開昭58-131322号公報(以下「引用例」という。)には、エンジン付きの車両である自動二輪車に関して、以下のような記載がある。
a)「後輪11は後述するエンジンの動力により、Vベルト無段変速機を介して、駆動される。」(第2頁右上欄17〜19行)
b)「可動板44bは、クランク軸35と一体に回転される支持板47との間に遠心ウエイト48を有し、回転速度が上昇された場合に遠心ウエイト48が外径方向に移動されるとこの可動板44bが固定板44aに向って接近され、この際V字溝45の溝幅を減じるのでVベルト46を外径方向へ移動させる」(第3頁左上欄5〜12行)
c)「ボス部材75には遠心クラッチのフライウエイト77が一体に回転するように取り付けられており、このフライウエイト77に対向して従動軸65にはクラッチホイル78が固定されている。したがって、従動側プーリ71の回転速度が所定値以上に達した場合に、フライウエイト77が遠心力にもとづきクラッチホイル78に接触し、これらの摩擦により、従動側プーリ71の回転を従動軸65に伝えるようになっている。」(第3頁右下欄12行〜第4頁左上欄1行)
d)「このような構成のエンジンユニットは、クランク軸35の回転がVベルト自動変速機を介してクラッチに伝えられ、所定回転速度以上の場合に従動軸65を駆動する。」(第4頁左下欄9〜12行)
上記a)の記載から、引用例の自動二輪車は、エンジンの回転を伝動機構であるVベルト無段変速機を介して、駆動輪である後輪へ伝達することにより走行するエンジン付き車両であり、c)の記載から、Vベルト無段変速機には遠心クラッチが設けられ、従動側プーリ71の所定の回転数以上で従動軸65に伝えるようになっており、さらに、b)、d)の記載から、Vベルト無段変速機はエンジンの回転速度に応じて従動側プーリ71の回転を無段変速させるものであると認めれられる。また、Vベルト無段変速機の変速比は、エンジンの回転数から一義的に定まるから、従動側プーリ71の回転数は、エンジンの回転数から一義的に定まるものと認められる。したがって、「従動側プーリ71の所定の回転数以上」とは「エンジンの所定の回転数以上」でもあるから、上記引用例には、
「エンジンの回転をクラッチと変速機を有する伝動機構を介して駆動輪へ伝達することにより走行するエンジン付き車両において、この伝動機構は前記エンジンが所定回転数以上の範囲でのみ前記クラッチを介してエンジン側と駆動輪側とを接続するエンジン付き車両」
の発明が記載されているものと認める。

3.本願発明と引用例に記載された発明との対比
本願発明と上記引用例に記載された発明とを対比すれば、エンジンも電動モータも共に回転動力発生部材であるから、両者は「回転動力発生部材の回転をクラッチと変速機を有する伝動機構を介して駆動輪へ伝達することにより走行する回転動力発生部材付き車両において、この伝動機構は前記クラッチを介して回転動力発生部材側と駆動輪側とを接続する回転動力発生部材付き車両」である点で一致し、以下の相違点で相違している。
[相違点]
本願発明では、回転動力発生部材を電動モータとし、伝動機構は電動モータが最大効率近傍になる所定回転数の範囲でのみ電動モータ側と駆動輪側とを接続し、変速機は電動モータの回転数が最大効率となる回転数を変速回転数に含むようにしているのに対し、上記引用例に記載された発明の回転動力発生部材はエンジンであって、伝動機構はエンジンが所定回転数以上の範囲でのみエンジン側と駆動輪側とを接続するものであるものの、それが特定の回転数以下の範囲、すなわち所定回転数の範囲でのみ接続されるのかどうか、また、その範囲が最大効率近傍になる所定回転数の範囲のみであるのかどうかが明らかでなく、変速機が電動モータの回転数が最大効率となる回転数を変速回転数に含むかどうかも明らかでない点。

4.相違点の検討
スクーター等の車両には一般に最大の速度が設定されており、回転動力発生部材の回転数を最大速度以下の回転数になるように制御することは技術常識(例えば、特開昭58-155422号公報参照。)である。してみれば、上記引用例に記載された発明において、伝動機構によるエンジン側と駆動輪側との接続を、エンジンが最大速度以下の回転数となる所定回転数の範囲でのみ行うことは、当業者が適宜行い得たものである。
また、車両を電動モータによって駆動することは引用例を挙げるまでもなく従来周知の技術であり、電動機を効率の良い範囲で使用することも周知技術(例えば、特開昭51-143215号公報参照。)である。そして、効率の良い範囲として、最大効率となる部分を含む、最大効率近傍になる範囲を選定することは、当業者が容易に想到しうるところであり、さらに、一般に電動モータを用いた駆動機構において、始動時の電力消費を押さえるため、始動時に動力の伝達を遮断することも周知技術(例えば、特開昭64-66467号公報、特開昭56-152700号公報、特開昭63-19192号公報参照。)である。してみれば、上記引用例に記載された発明の回転動力発生部材付き車両の回転動力発生部材として、エンジンに代えて電動モータを用い、伝動機構が、始動時の電力消費を押さえられしかも効率の優れている、電動モータが最大効率近傍になる所定回転数の範囲でのみ電動モータ側と駆動輪側とを接続し、さらに、変速機が電動モータの回転数が最大効率となる回転数を変速回転数に含むようにすることは、これらの周知技術に基づいて当業者が容易に行うことができたものというべきである。

5.請求項2の発明に関して
伝動機構を自動遠心クラッチとすることは、上記引用例に記載された発明でも行われている。
してみれば、請求項1に記載された構成に加えて、伝動機構を自動遠心クラッチとすることは、上記引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に行うことができたものである。

6.請求項3の発明に関して
伝動機構を自動変速機で構成することは、上記引用例に記載された発明でも行われている。
してみれば、請求項1に記載された構成に加えて、伝動機構を自動変速機で構成することは、上記引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に行うことができたものである。

そして、本願請求項1〜3の発明による作用効果は、上記引用例に記載された発明に上記各周知技術を適用することにより得られる作用効果を越えるものでもない。

7.むすび
以上、詳述したとおり、この出願の請求項1〜3に係る発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、特許請求の範囲の請求項4及び5に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-08-17 
結審通知日 2001-08-23 
審決日 2001-09-17 
出願番号 特願平2-162242
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B62M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 卓志  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 ぬで島 慎二
刈間 宏信
発明の名称 電動式車両  
代理人 小松 清光  

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