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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B06B
管理番号 1089191
審判番号 不服2002-1761  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-06 
確定日 2003-12-19 
事件の表示 特願2000-321239「摺動ロスの少ない軸固定型扁平振動モータ」拒絶査定に対する審判事件[平成13年 6月26日出願公開、特開2001-170563]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年1月27日に出願した特願平09-027267号の一部を平成12年10月20日に新たな特許出願としたものであって、平成13年5月7日付けで拒絶理由通知がなされ、それに対して平成13年6月4日付け手続補正書により明細書の補正がなされ、平成13年8月31日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、それに対する平成13年11月16日付け手続補正書による明細書及び図面の補正について、補正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に違反するとして、同法第53条第1項の規定に基づいて、平成13年12月3日付けで同補正却下の決定がされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされたのに対して、平成14年2月6日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。


2.平成14年2月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年2月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成14年2月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の明細書における特許請求の範囲の請求項1は、
「ケース(8)とブラケット(1)からなるハウジング(H)に、複数個の電機子コイル(3a‥‥)と平板型コミュテータ(5)及びこれらを支持する樹脂(4)からなる偏心ロータ(3)を軸(2)に支承させて格納し、前記ブラケット(1)に、前記偏心ロータ(3)に軸方向空隙を介して臨ませるようにマグネット(6)とこのマグネットの内側で前記平板型コミュテータ(5)に軸方向から摺接させるようにしたブラシ(7)を配し、前記偏心ロータを支承する軸(2)を前記ハウジングより外方に突き出さないようにした出力軸のない軸固定型扁平振動モータにおいて、前記偏心ロータは中心にこの偏心ロータの一構成部材であってほぼこの偏心ロータの厚み程度の1個の軸受部(4)が設けられ、前記軸(2)の一端を前記ブラケット(1)に固定させ、この軸(2)の他端から前記偏心ロータを、前記軸受部(4)を介して組み込むことにより回転自在に装着させると共に、ケース(8)に配したものであって、このケースの厚み内で前記軸の他端が突き出ないように少なくとも前記軸の他端の少なくとも一部を係止する凹所(8a、T)に前記軸の他端をはめ込むことにより、この軸の他端が前記ケース(8)の板厚内に収まるようにして径方向に動くのを防止させ、ブラシの摺接圧を利用して前記偏心ロータを凹所側に付勢させ、前記摺動性のよいポリエステルフィルム(P、P1)に前記偏心ロータに配した軸受部(4)の上面周囲を摺接させた摺動ロスの少ない軸固定型扁平振動モータ。」
と補正された。

(なお、特許請求の範囲において、「前記摺動性のよいポリエステルフィルム(P、P1)」という記載の以前に「ポリエステルフィルム」は記載されていないことから、「前記摺動性のよいポリエステルフィルム(P、P1)」という記載は、「摺動性のよいポリエステルフィルム(P、P1)」の明らかな誤記である。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明特定事項を更に特定するために必要な事項について限定をするものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許請求の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。


(2)刊行物等

(2)-1.引用文献1
ア.原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物特開平9-23611号公報(平成9年1月21日公開、以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「軸固定式の構成を図1に示す要部断面図で説明する。すなわち、ハウジングHの一部を構成する皿状のブラケット1の中央に軸2の基端2aを固定し、この軸2に複数個の電機子コイル3を摺動性樹脂Jで一体成形したロータRを回転自在に遊嵌させる。このロータRは、一面にコミュテータ4aを印刷配線したガラスクロスエポキシ製の薄板4の他面に前記電機子コイル3を載置し、その端末3aを前記コミュテータ4aとスルホール導通させた所定のパターン(図示せず)に半田結線したあと前記の樹脂Jで一体してなるものである。」(段落【0011】)

(イ)「このロータRの下方には、空隙を介してネオジム系マグネット5が前記ブラケット1に載置されており、このマグネット5の内側には、給電手段の一部である一対の正負のブラシ6(図は片方のみ表示)がフレキシブル基板からなるブラシベース6aを介してブラケット1に植設されている。このブラシベース6aはマグネット5の下方を通り、給電端子6bとして外方へ導出されている。前記ロータRの反コミュテータ側には、さらに樹脂Jで一体に2つのリングからなる立ち上げ部7,8が設けられており、この立ち上げ部7には、図2にも示すようなタングステン粉末を焼結してなる半月形の偏心ウエイト9が接着されている。この偏心ウエイト9の取り付け孔9aの囲りは前記立ち上げ部7,8より低くなるように段差9bが配慮されていて、偏心ウエイト9を取り付け後外側の立ち上げ部8の頭部をつぶすことにより、一層強固に固着される。」(段落【0012】)

(ウ)「前記ブラケット1の外周には、ハウジングの一部となる浅い円筒型のケース10がかしめなどによって取り付けられ、このケース10の内側の途中に配した段部10aには、この発明の特徴であるヨーク板11が、ちょうど前記のロータRと偏心ウエイト9の間に所定の空隙が保られるように係止されている。このヨーク板11は、さらに上方からはめ込まれた逆カップ状のカバー12によって挟みこまれ、ケース10の端縁10bを内側にかしめることによってカバー12共々強固に固定させている。このカバー12の中央には、前記軸の2の一端2bが嵌着され、前記ブラケット1と共に軸2を支承させている。」(段落【0013】)

(エ)「この固定した軸2にロータRを回転自在に支承するには、ロータRの傾きを押さえるため上下に2ヶ所の軸受部を備えている。すなわち、下方の軸受Jaはロータ成形用高摺動樹脂で成形時同時に一体に成形し、上方の軸受Jbはワッシャ型で後入れされている。この上方の軸受Jbはロータと同材質でも、金属製の含油軸受でもよい。なお、Jcはブレーキ損をさらに防ぐ目的から挿入されたスラストワッシャで、前記ブラシ6の押し上げ付勢力をもって常時カバー12の天井部に摺接されている。したがって、ロータは落ち込んでマグネット側の当接してしまうおそれがない。」(段落【0014】)

(オ)「給電端子6bに正負の電力を給電することによってブラシ6,コミュテータ4aを介して電機子コイル3に通電され、マグネット5の磁力を受けてロータRを回転するが、偏心ウエイト9によって遠心力が生じ、大きな振動が得られることになる。」(段落【0015】)

イ.ここで、
(ア)コミュテータ4aは、図1より平板型コミュテータであり、

(イ)図1,図2及び段落0012の「ロータRの・・・立ち上げ部7には、図2にも示すような・・・半月形の偏心ウエイト9が接着されている。」との記載からみて、ロータRは偏心ウエイト9を備えており、重心の偏心により振動を発生する偏心ロータであり、

(ウ)軸2は、図1からみて、ハウジングより外方に突き出さないようになっているものであり、

(エ)図1及び段落0014の「ロータRの傾きを押さえるため上下に2ヶ所の軸受部を備えている。」という記載からみて、ほぼ偏心ロータの厚み程度の幅に下方の軸受Jaと上方の軸受Jbの上下2箇所の軸受部が設けられており、

(オ)図1及び段落0013の「このカバー12の中央には、前記軸の2の一端2bが嵌着され」という記載からみて、カバーの厚み内で軸の他端が突き出ないように少なくとも前記軸の他端の少なくとも一部を係止する凹所に前記軸の他端をはめ込むことにより、この軸の他端が前記カバー(12)の板厚内に収まるようにして径方向に動くのを防止させており、

(カ)図1及び段落0014の「Jcはブレーキ損をさらに防ぐ目的から挿入されたスラストワッシャで」という記載からみて、スラストワッシャ(Jc)を偏心ロータに配した上方の軸受部(Jb)の上面周囲とカバー12の間に挿入したものである。

(キ)また、段落0013の記載からみて、ケース(10)とカバー(12)は、「強固に固定」されるものである。

ウ.以上から、引用文献1には、次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「ケース(10)とカバー(12)とブラケット(1)からなるハウジング(H)に、複数個の電機子コイル(3)と偏心ウエイト(9)と平板型コミュテータ(4a)及びこれらを支持する樹脂(J)からなる偏心ロータ(R)を軸(2)に支承させて格納し、前記ブラケット(1)に、前記偏心ロータ(R)に軸方向空隙を介して臨ませるようにマグネット(5)とこのマグネットの内側で前記平板型コミュテータ(4a)に軸方向から摺接させるようにしたブラシ(6)を配し、前記偏心ロータを支承する軸(2)を前記ハウジングより外方に突き出さないようにした出力軸のない軸固定型扁平振動モータにおいて、
前記偏心ロータは中心に、ほぼこの偏心ロータの厚み程度の幅に下方の軸受Jaと上方の軸受Jbの上下2箇所の軸受部が設けられ、
前記軸(2)の一端を前記ブラケット(1)に固定させ、この軸(2)の他端から前記偏心ロータを、前記軸受部(Ja,Jb)を介して組み込むことにより回転自在に装着させると共に、カバー(12)に配したものであって、このカバーの厚み内で前記軸の他端が突き出ないように少なくとも前記軸の他端の少なくとも一部を係止する凹所に前記軸の他端をはめ込むことにより、この軸の他端が前記カバー(12)の板厚内に収まるようにして径方向に動くのを防止させ、ブラシの摺接圧を利用して前記偏心ロータを凹所側に付勢させ、
スラストワッシャ(Jc)を前記偏心ロータに配した上方の軸受部(Jb)の上面周囲とカバー12の間に挿入した
摺動ロスの少ない軸固定型扁平振動モータ。」


(2)-2.引用文献2
ア.同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-308169号公報(平成8年11月22日公開、以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「上記欠点を克服するために偏心ウエイトを削除し、ロータ自体を偏心させた偏平コアレス振動モータとして実願昭63-111868号(USP5036239)及び出願変更した特願平4-295503号を先に本出願人は提案している。すなわち、図4に示すように、3個の電機子コイル9a、9bおよび9cを互いに重畳しないように、且つ、平面が略扇型になるように片側に偏奇して配置し、樹脂11で一体成形したロータRを用いるもので、この偏心したロータを図5に示すように偏平コアレスモータとして構成させることにより回転時に振動を発生させるようにしたものである。すなわち、1は浅いケース、2はこのケースの開口部にかしめられたブラケット、3はこのブラケットに配され、前記ロータRに磁界を与えるマグネット、このマグネットの内側にはブラシベース4を介してターミナル5に植設されたブラシ6を有している。又、図中7はシャフト、8はロータホルダ、9は電機子、10は平板コミュテータ、11はロータRを構成する樹脂、12a、12bは前記シャフトを回転自在に支承する軸受けそして、13a、13bはスラストワッシャである。」(段落【0004】)

イ.ここで、シャフト7は、図5からみて、ハウジングより外方に突き出さないようになっているものである。(なお、引用文献2の前記段落0004で引用する実願昭63-111868号(実開平2-33573号)のマイクロフィルムには、「シャフト7は外方に突出しないようにし」(明細書3頁17-18行)と明記されている。)

ウ.以上から、引用文献2には、「ケース(1)とブラケット(2)からなるハウジングに、複数個の電機子コイル(9a,9b,9c)と平板型コミュテータ(平板コミュテータ10)及びこれらを支持する樹脂(11)からなる偏心ロータ(R)を軸(シャフト7)に支承させて格納し、前記ブラケット(1)に、前記偏心ロータ(R)に軸方向空隙を介して臨ませるようにマグネット(6)とこのマグネットの内側で前記平板型コミュテータ(10)に軸方向から摺接させるようにしたブラシ(6)を配し、前記偏心ロータを支承する軸(シャフト7)を前記ハウジングより外方に突き出さないようにした出力軸のない扁平振動モータ」
が記載されている。

(2)-3.周知技術
摺動性のよいポリエステルフィルムにスラスト方向において回転体を摺接させることで回転体と固定体のスラスト方向の良好な摺動性を確保する技術は周知技術である(例えば、実願昭58-40696号(実開昭59-149474号)のマイクロフィルム(平成13年11月16日付け手続補正書でした明細書の補正を却下する平成13年12月3日付けの決定の理由において周知技術を示す文献として既提示)、特開昭62-171515号公報参照)。


(3)対比
本願補正発明と引用文献1に記載の発明を対比すると、
後者における「ケース(10)」と「カバー(12)」は前者における「ケース(8)」に、
後者における「ブラケット(1)」は前者における「ブラケット(1)」に、
後者における「ケース(10)とカバー(12)とブラケット(1)からなるハウジング(H)」は前者における「ケース(8)とブラケットからなるハウジング(H)」に、
後者における「電機子コイル(3)」は前者における「電機子コイル(3a‥‥)」に、
後者における「平板型コミュテータ(4a)」は前者における「平板型コミュテータ(5)」に、
後者における「樹脂(J)」は前者における「樹脂(4)」に、
後者における「軸(2)」は前者における「軸(2)」に、
後者における「マグネット(5)」は前者における「マグネット(6)」に、
後者における「ブラシ(6)」は前者における「ブラシ(7)」に、
にそれぞれ相当する。

したがって、両発明は、
「ケースとブラケットからなるハウジングに、少なくとも、複数個の電機子コイル、平板型コミュテータ及びこれらを支持する樹脂からなる偏心ロータを軸に支承させて格納し、前記ブラケットに、前記偏心ロータに軸方向空隙を介して臨ませるようにマグネットとこのマグネットの内側で前記平板型コミュテータに軸方向から摺接させるようにしたブラシを配し、前記偏心ロータを支承する軸を前記ハウジングより外方に突き出さないようにした出力軸のない軸固定型扁平振動モータにおいて、
前記偏心ロータは中心に軸受部が設けられ、
前記軸の一端を前記ブラケットに固定させ、この軸の他端から前記偏心ロータを、前記軸受部を介して組み込むことにより回転自在に装着させると共に、ケースに配したものであって、このケースの厚み内で前記軸の他端が突き出ないように少なくとも前記軸の他端の少なくとも一部を係止する凹所に前記軸の他端をはめ込むことにより、この軸の他端が前記ケースの板厚内に収まるようにして径方向に動くのを防止させ、ブラシの摺接圧を利用して前記ロータを凹所側に付勢させた、
摺動ロスの少ない軸固定型扁平振動モータ。」である点で一致し、次の点において相違している。

(相違点)
(相違点1)
本願補正発明においては、偏心ロータが複数個の電機子コイルと平板型コミュテータ及びこれらを支持する樹脂からなる偏心ロータであるのに対し、
引用文献1に記載の発明においては、偏心ロータが複数個の電機子コイルと偏心ウエイトと平板型コミュテータ及びこれらを支持する樹脂からなる偏心ロータである点、

(相違点2)
本願補正発明においては、偏心ロータはほぼこの偏心ロータの厚み程度の1個の軸受部が設けられるものであるのに対して、
引用文献1に記載の発明においては、偏心ロータには、ほぼこの偏心ロータの厚み程度の幅に、下方の軸受と上方の軸受の上下2箇所の軸受部が設けられるものである点、

(相違点3)
本願補正発明においては、摺動性のよいポリエステルフィルムに偏心ロータに配した軸受部の上面周囲を摺接させたものであるのに対して、
引用文献1に記載の発明においては、スラストワッシャを偏心ロータに配した軸受部の上面周囲とケースの間に挿入したものである点、

で相違する。


(4)判断
前記各相違点について検討する。

A.相違点1について
引用文献2には前示のとおり、偏心ロータとして複数個の電機子コイルと平板型コミュテータ及びこれらを支持する樹脂からなる偏心ロータを用いることが記載されている。
そして、引用文献2に記載のものは、引用文献1に記載の発明と同じく扁平振動モータに関するものであり、しかも、両者の偏心ロータは重心の偏心により振動を発生する偏心ロータであるという点で共通するするものである。
してみると、重心の偏心により振動を発生する偏心ロータとして、引用文献1に記載の発明の複数個の電機子コイルと偏心ウエイトと平板型コミュテータ及びこれらを支持する樹脂からなる偏心ロータに代えて引用文献2の複数個の電機子コイルと平板型コミュテータ及びこれらを支持する樹脂からなる偏心ロータを採用すること、すなわち、本願補正発明の相違点(1)に係る構成は当業者が容易に想到できたものというべきである。

B.相違点2について
引用文献1記載の発明は、偏心ロータの傾きを押さえるため、ほぼこの偏心ロータの厚み程度の幅に、下方の軸受と上方の軸受の上下2箇所の軸受部を設けるものであるが、偏心ロータの軸受部をほぼこの偏心ロータの厚み程度の幅に上下2箇所に設けることに代えて、ほぼこの偏心ロータの厚み程度の1個の軸受部を設けることとすることは、当業者が適宜になし得た設計変更である。

C.相違点3について
引用文献1に記載の発明においては、スラストワッシャを偏心ロータに配した軸受部の上面周囲とケースの間に挿入しているが、これは、「ブレーキ損をさらに防ぐ目的から」(引用文献1の段落0014参照)である。言い換えると、引用文献1に記載の発明においては、偏心ロータに配した軸受部の上面周囲(回転体)とケース(固定体)の間のスラスト方向の良好な摺動性を確保してブレーキ損を防ぐ手段として、スラストワッシャを挿入する手段を採用したものである。
そして、回転体と固定体のスラスト方向の良好な摺動性を確保するという機能において共通する技術として、(2)-3.で前示したように、摺動性のよいポリエステルフィルムにスラスト方向において回転体を摺接させる技術が、周知技術である。
してみると、偏心ロータに配した軸受部の上面周囲(回転体)とケース(固定体)の間のスラスト方向の良好な摺動性を確保してブレーキ損を防ぐ手段として、スラストワッシャを挿入する手段に代えて、共通する機能を有する上記周知技術を採用して、摺動性のよいポリエステルフィルムに偏心ロータに配した軸受部の上面周囲(回転体)を摺接させるようにすること、すなわち本願補正発明の相違点3に係る構成とすることは当業者が容易に想到することができたものである。また、明細書に記載された「摺動性がよくブレーキ損も少なくできる」という作用効果も当然に予測できたものである。

そして、本願補正発明が奏する作用効果も、引用文献1,2に記載の発明及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、これらに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。


(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
(1)以上のとおり、平成14年2月6日付けの手続補正は却下されたため、(また、平成13年11月16日付けの手続補正は、平成13年12月3日付けで却下されているため、)
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成13年6月4日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。

【請求項1】 ケース(8、88、12)とブラケット(1、11、B)からなるハウジング(H)に複数個の電機子コイルからなる偏心ロータ(3、13)を格納し、このロータの一側にコミュテータ(5、C)を配すると共に、このコミュテータにブラシ(7,7a、7b)を摺接させ、かつ前記偏心させたロータに空隙を介してマグネット(6、14)を臨ませ、前記偏心ロータを支承する軸(2)を前記ハウジングより外方に突き出さないようにした出力軸のない軸固定型扁平振動モータにおいて、軸の一端をハウジングの一部(1)に固定させ、この軸の他端から前記偏心ロータをこの偏心ロータの一構成部材である軸受部(4、J)を介して組み込むことにより回転自在に装着させると共に、ハウジングの他部(8、88、12)に配したものであって前記軸の他端が突き出ないように形成した凹所(8a,88a,T,12a、)に前記軸の他端をはめ込み、このように偏心させたロータをブラシの摺接圧を利用するか、または、コア(K)とマグネット(14)の磁気的中心をずらすことにより凹所側に付勢させた摺動ロスの少ない軸固定型扁平振動モータ。


(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1,2には、上記2(2)のとおりのものが記載されている。


(3)対比、判断
本願発明は、上記2で検討した本願補正発明を包含する関係にあるものである。
したがって、本願補正発明が、上記のとおり、引用文献1,2に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。


(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-09-04 
結審通知日 2003-09-30 
審決日 2003-10-14 
出願番号 特願2000-321239(P2000-321239)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 牧 初小川 恭司  
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 大野 覚美
村上 哲
発明の名称 摺動ロスの少ない軸固定型扁平振動モータ  
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