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審決分類 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1089382
審判番号 審判1998-16714  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-10-26 
確定日 2003-12-24 
事件の表示 平成 1年特許願第503946号「製造工程管理方法並びに装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年 3月21日国際公開、WO91/03793、平成 5年 3月25日国内公表、特表平 5-501624]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本件審判請求に係る出願は、平成1年9月5日を国際出願日とするPCT出願であって、請求項1に係る発明は、平成4年3月5日付けで提出された翻訳文を、平成10年5月14日付及び平成10年11月25付手続補正書により補正した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された「デジタル信号処理装置の動作方法」に関するものと認める(以下「本願発明」という。)。

2.原審における拒絶の理由
原審における拒絶の理由は「この出願は、明細書の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない。」というもので、その理由が解消されていないとして拒絶査定がなされたものであるが、その内容は概略、次のとおりである。
本願の明細書の「発明の背景」及び「発明の概要」の項の記載によれば、本願発明の目的は、従来のMRP等の技術では、製造工程の全範囲をシミュレーションすることができなかったという問題を解決しようとするものであり、本願発明は、この目的を、特に、一対一、一対多、多対一、多対多の基準で生産資源と消費資源の両方を含む要素間の関係で規定したモデルにより達成しようとするものである。
しかるに、明細書には、ビーフシチューやビーフスープの調理、調整の流れに基づいたモデルの説明等、モデルとしては単純かつ自明の説明しかなされておらず、本願発明により一般の生産活動において全製造工程のシミュレーションが可能となることが、具体的に理解できるように記載されておらず、当業者が容易に実施できる程度に発明を開示していない。

3.請求人の主張
この査定に対して、請求人は、平成10年11月25日付手続補正書により特許請求の範囲を補正すると共に、平成11年3月3日付けの審判請求理由補充書において、概略、次のように主張している。
本発明は、製造工程の間に行われる一つ以上の仕事を表すデジタル信号であって、各仕事が、(i)その仕事によって消費される一つ以上の資源要素と、(ii)その仕事によって生産される一つ以上の資源要素と、(iii)その仕事の間に行われる一つ以上の生産操作と、(iv)その仕事と一つ以上の他の仕事の間の製造関係と、を表す信号を含んでいるデジタル信号を入力し、これを記憶する工程を必須としており、本発明の「仕事を基準とする方法」即ち「請求項1の工程C、Dにおける入力及び記憶」が理解されれば、本発明は当業者に容易に実施でき、又、図2〜4は、本発明の実施例で使用されるプログラムの基本を記載しており、これらの要素により行われる工程は詳細に記載されている。

4.判断
本願明細書の[発明の背景]の欄の記載によれば、従来の資材所要量計画(MRP)システムでは、製造工程の全範囲をシミュレーションすることができないという問題があり、本願発明の目的は、製造工程の正確なモデルを作成し、これをシミュレーションすることができるデジタルデータ処理システムを提供することである。
よって、製造工程の正確なモデル(「生産モデル」)を作成することに関して、明細書及び図面の記載を検討する。
明細書第11頁第24〜26行に「生産モデル作成部は、消費資源要素と生産資源要素との間の製造関係を示すデジタル信号からなる「生産モデル」を作成し、これを記憶する。」と記載されていることからみて、「生産モデル」は生産モデル作成部においてが作成されるものであることは明らかであり、又、同記載によれば「生産モデル」とは「消費資源要素と生産資源要素との間の製造関係を示すデジタル信号からなる」もののことである。
そこで、「消費資源要素と生産資源要素との間の製造関係を示すデジタル信号」について、明細書又は図面の記載をみると、[実施例の詳細な説明]の欄に、「製造工程に係る製造関係、即ち、少なくとも一つの消費資源と一つあるいは複数の生産資源との間の関係を示すデジタル信号を入力するための製造関係入力部24」(第11頁第18〜20行)と記載され、製造関係を示すデジタル信号は、製造関係入力部から入力されるものである。そして、デジタル信号の入力に関し、[実施例の詳細な説明]の欄に、「製造関係入力部24は、更に、ある仕事により生産される資源の量を記録するべきかどうかを指示するデジタル信号を入力するための入力ポートを備える。」(第13頁第20〜21行)、「本発明を好適に実施するように構成された製造関係入力部24は、更に、生産モデルに応じた生産工程の時間的あるいは量的産出高を表すデジタル信号を入力するための入力ポートと、生産モデルに係る仕事に応じた一回分の仕事(仕事バッチ)の時間的あるいは量的産出高を表すデジタル信号を入力するための入力ポートと、牛産工程産出高と仕事バッチの産出高との間の数学的関係を表すデジタル信号を入力するための入力ポートと、を備える。」(同第13頁第25〜30行)、「製造関係入力部24は、更に、好ましくは、ある仕事中に消費される資源要素の量を表すデジタル信号を入力するための入力ポートとその仕事に関係する操作の継続時間を表すデジタル信号を入力する入力ポートと、を備える。」(同第14頁第17〜19行)と記載されているように、本願明細書には、「製造関係入力部」が「ある仕事により生産される資源の量を記録するべきかどうかを指示する指示するデジタル信号」、「生産モデルに応じた生産工程の時間的あるいは量的産出高を表すデジタル信号」、「生産モデルに係る仕事に応じた一回分の仕事(仕事バッチ)の時間的あるいは量的産出高を表すデジタル信号」、「ある仕事中に消費される資源要素の量を表すデジタル信号」、「その仕事に関係する操作の継続時間を表すデジタル信号」を入力する入力ポートを備えていること、が記載されているだけであって、これらの記載からは、具体的に、消費資源と生産資源との間の製造関係を示すデジタル信号が、どのような構成の信号として入力され、その結果、どのようにして、消費資源及び生産資源を表すデジタル信号とそれらの製造関係を表すデジタル信号とが処理されて、生産モデルが作成されるのか、理解できない。
又、[発明の概要]の欄に「本発明のシステムで、製造関係とは、操作、計画、及び財政上のレベルにおける消費並びに生産資源要素の関係を規定するものである。」(同第3頁第23〜24行)と記載され、具体的な例として「ビーフシチューに使うためにじゃが芋を処理する工程を考えた場合、消費資源には、じゃが芋全体、さいの目切り装置、機械オペレータ時間が含まれる。ここで、操作上の関係とは、例えば、さいの目切り装置を用いて、10ポンドのじゃが芋を、1機械オペレータ時間でさいの目に切ることができる、ということを示すものである。」(同第3頁第24〜28行)と記載されている。しかしながら、この例をみても、ビーフシチューに使われるじゃが芋は、さいの目に切る必要があり、切るための装置としてさいの目切り装置が必要であり、10ポンドのじゃが芋を切るには1機械オペレータ時間が必要であるという、当たり前の作業工程と当たり前の条件とが規定されているにすぎない。
さらに、明細書の他の記載をみても、ビーフシチューやビーフスープの調理、調整の流れに基づいたモデルの説明等、モデルとしては単純かつ自明の説明しかなされておらず、製造関係入力部から、製造関係を表すデジタル信号が、どのようなデータとして入力されるのか、明確に記載されていない。
本願発明が目的とする、製造工程の全範囲をシミュレーションすることができるためには、製造工程の正確なモデル(生産モデル)を作成することが必須の要件であり、その生産モデルは、消費資源入力部から消費資源要素が、生産資源入力部から生産資源が、製造関係入力部から(消費資源要素と生産資源要素との間の)製造関係が入力されることにより、生産モデル作成部が作成・記憶するものであるところ、消費資源要素、生産資源要素は、各入力部から入力できても、上記のとおり、製造関係については、具体的にどのようなデータとして入力されるのか不明であり、又、生産モデル作成部においても、入力されたデータの基づいてどのような処理がなされるのか全く記載されておらず、入力された各データをどのように処理して生産モデルを作成するのか不明である。
以上のとおりであるから、本願明細書又は図面には、容易にその実施をすることができる程度に、本願発明の構成が記載されている、とは言えない。
なお、請求人の「本発明の「仕事を基準とする方法」即ち「請求項1の工程C、Dにおける入力及び記憶」が理解されれば、本発明は当業者に容易に実施できる」との主張について、上記のとおり、明細書には、入力及び記憶について理解できるようには記載されておらず、又、「図2〜4は、本発明の実施例で使用されるプログラムの基本を記載しており、これらの要素により行われる工程は詳細に記載されている。」との主張についても、第2〜4図は単なるブロック図であり、例えば、生産モデル作成部におけるアルゴリズムを示すためのフローチャート等が記載されているわけではないので、このブロック図を以て、行われる工程が詳細に記載されているとは到底認められないから、請求人の主張は採用できない。

5.むすび
したがって、本願の発明の詳細な説明には、「消費資源要素と生産資源要素との間の製造関係を表すデジタル信号を入力すること」に関して、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、発明の構成が記載されていないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-04-25 
結審通知日 2002-05-10 
審決日 2002-05-23 
出願番号 特願平1-503946
審決分類 P 1 8・ 531- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 相田 義明  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 岡 千代子
鳥居 稔
発明の名称 製造工程管理方法並びに装置  
代理人 風間 弘志  
代理人 倉内 基弘  

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