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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:334  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H01L
管理番号 1089772
異議申立番号 異議2001-72761  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-05-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-10-09 
確定日 2003-10-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3154145号「CVD装置及びその装置を使用する成膜方法」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3154145号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3154145号(以下、「本件特許」という。)は、平成4年10月28日に特許出願がなされ、平成13年2月2日に請求項1〜6に係る発明につき特許権の設定の登録がなされ、その後、平成13年10月9日に松原いずみより、また、同日に高橋馨より、それぞれその請求項1〜6に係る特許について特許異議の申立がなされ、平成14年11月6日付けで特許権者に対して特許取消理由の通知、及び、特許異議申立人:松原いずみに対して審尋がなされ、平成15年1月10日付けで同特許異議申立人より回答書が提出され、平成15年1月14日付けで特許権者より訂正請求書及び特許異議意見書が提出され、平成15年7月23日付けで特許取消理由の通知がなされ、これに対して、平成15年9月3日付けで訂正請求書及び特許異議意見書が提出され、併せて、先の平成15年1月14日付けの訂正請求書についての訂正請求取下書が提出されたものである。

II.訂正の適否について
上記平成15年9月3日付け訂正請求書による訂正は、以下のとおりである。
(II-1)訂正の内容
訂正事項a(特許請求の範囲の訂正)
特許請求の範囲の請求項1を、次のとおりに訂正する。
「【請求項1】反応室と、半導体基板載置用の支持台と、半導体基板に薄膜を形成するための原料ガスを供給する原料ガス供給手段とを具備するCVD装置において、
前記支持台に載置された半導体基板を加熱し、当該半導体基板及びその近傍を第1の温度に保持するために前記反応室内に設けられた基板加熱手段と、
内壁及び外壁を有し、かつ、熱絶縁層を前記内壁及び外壁の間に有した反応室側壁と、
前記基板加熱手段とは別に前記反応室側壁の熱絶縁層と前記反応室の内側との間である内壁を加熱して該内壁を第2の温度に保持するために当該内壁に設けられた内壁加熱手段とを備えることを特徴とするCVD装置。」

(II-2)訂正の目的、範囲、及び実質上の拡張又は変更について
訂正事項aは特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、そしてその訂正は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、当該明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正と認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものとは認められない。
以上のとおりであるから、本訂正は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定により、その施行前にした特許出願の明細書の訂正についてはなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、及び同条第2項の規定に適合するので、本訂正を認める。

III.特許異議申立人の主張及び証拠
(III-A)特許異議申立人:松原いずみの証拠及び主張
(1)主張及び証拠
特許異議申立人:松原いずみは、甲第1号証(特開昭61-155291号公報)、甲第2号証(特開平4-147615号公報)、甲第3号証(特開昭59-111997号公報)、甲第4号証(特開平2-185973号公報)、甲第5号証(特開昭63-179076号公報)、甲第6号証(特開平4-296018号公報)、及び甲第7号証(「最新 化合物半導体ハンドブック」(株)サイエンスフォーラム発行(昭和57年7月10日)第109、111、124〜125頁)を提示して、特許権設定登録時の本件特許について、請求項1〜6に係る発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるので特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり(発明の新規性)、また、請求項1〜6に係る特許は、明細書の記載が特許法第36条第4〜6項に規定する要件を満足しない特許出願に対してなされたものであるので(明細書等の記載要件)、これら請求項1〜6に係る特許は取り消すべきものであると主張している。

(2)証拠の記載事実
甲第1号証
(A1-1)「(1)気相成長反応管内に原料ガスを供給して基板上にIII-V族の結晶成長を行わせる気相成長方法において、ガスの流れに関して反応部下流部分を、原料ガス分解温度よりも低くかつ反応部において分解したV族分子あるいは原子の蒸気圧よりも高いV族分圧を保時できる温度に保つことを特徴とする気相成長方法。」(特許請求の範囲)
(A1-2)「第1図は、本発明の実施に用いることのできる、たとえば有機金属を用いたガリウム砒素気相成長装置の断面図である。
この気相成長装置は石英反応管1を備えており、・・・・この石英反応管1の外部であってグラファイト支持台4の位置する箇所には高周波加熱用の高周波コイル8が設けられており、グラファイト支持台4の下流部及びサンプル導入路5が位置する箇所には抵抗加熱炉9が設けられている。
このような構成のガリウム砒素気相成長装置において、石英反応管1内に設置したグラファイと支持台4にガリウム砒素結晶基板(以下単に結晶基板という)10をサンプル導入口3及びサンプル導入路5を通して配置し、高周波コイル8により結晶基板10の近傍を加熟する。V族の原料ガスたとえばアルシンは昇温の段階で反応管入口2より反応管1に送り込まれ結晶基板10を成長時まで保護する。これと同時に抵抗加熱炉9により基板下流部およびサンプル導入路5を加熱し、結晶基板周囲において分解した砒素の蒸気圧よりも高い分圧を保持できる温度に保つ。・・・このとき基板周囲において分解した砒素は抵抗加熱炉9により加熱され、基板近傍よりサンプル導入路5の部分では固相砒素として析出することなしに下流部に移動する。したがって基板近傍よりサンブル導入路5の部分では固相砒素の析出はみられなくなる。
さらに有機金属原料であるトリメチルガリウム(Trimethyle gallium)は反応管入口2より反応管1に送りこまれ加熱された基板近傍で熱分解し結晶基板10の表面でエピタキシャル成長する。このとき結晶表面ばかりでなく加熱されたグラファイト支持台4及びその近傍で折出がみられるが、抵抗加熱炉9の温度はトリメチルガリウムの分解温度(約500℃)以下に保持するため未分解のトリメチルガリウムは分解することなく反応管出口7より排気される。」(第2頁左上欄末行〜右下欄第6行)

甲第2号証
(A2-1)「反応管を二重構造とし、反応管の外側に冷却用の外壁を有するMOCVD装置において、当該外壁中に冷却、加圧したHeガスを一定圧流したことを特徴とするMOCVD装置。」(特許請求の範囲)
(A2-2)「第2図は、従来のMOCVD装置の反応管の周辺を示す断面図であり、図において(1)は反応管、(2)はウエハをセットするサセプタ、(3)は反応管(1)を冷却するために設けられた冷却用外壁、(11)はガス入口、(14)はガス排気管、(15)はサセプタ(2)の温度コントロール用のRFコイル、(17)は反応管(1)の冷却用の水、(18)は水入口、(19)は水出口である。」(第1頁左下欄第14〜20行)
(A2-3)「反応管(1)内壁近傍での原料ガスの熱分解を防止するために、反応管(1)を冷却する必要がある。そのため、反応管(1)を二重構造として外側の冷却用外壁(3)内にて水冷を行なう。なお、水入口(18)から水出口(19)へ常に水(17)が循環し水冷する。」(第1頁右下欄第7〜11行)

甲第3号証
(A3-1)「(1)内部に発熱体基板(サセプタ)を有し、発熱体に接して配列されたウエハー上に気相反応によって結晶層を成長させるよう設けた金属製の結晶成長装置に於て、水冷された金属製反応室の内面に接して銀、金、アルミニウム等の反射率の高い材料で造られた反射層を設けたことを特徴とするエピタキシャル成長装置。」(特許請求の範囲)
(A3-2)「第1図に示す従来一般に使用されている金属製縦型エピタキシャル成長装置は、回転支承装置(7)によって支承された高純度カーボンサセプタ(4)の上にシリコン単結晶ウエハー(6)を複数個配列し高周波コイル(5)に高周波電流を通電すると、カーボンサセプタ(4)中に誘導電流が流れカーボンサセプタ(4)が高温(900〜1250℃)となる。
この時に、供給パイプ((8)-1)より原料ガス・・・を流すとシリコンウエハ-(6)の上に反応ガスが熱分解或は還元反応によって必要な比抵抗、厚さを持ったシリコン単結晶層がエピタキシャル成長する。この時カーボンサセプタ(4)は高温のため幅射熱を発生し、金属ベルジャー((1)-1)並に基板台((1)-2)は著しく温度上昇する。そのため冷却用パイプ(2)によって水冷されている。」(第2頁左上欄第17行〜右上欄第14行)

甲第4号証
(A4-1)「(1)処理室内に配置した被処理基板に所定のガスを供給して金属シリサイド膜を形成するにあたり、
前記被処理基板の全表面温度がほぼ一定となるように加熱した状態で、前記金属シリサイド膜を形成することを特徴とする金属シリサイド膜の形成方法。」(特許請求の範囲(1))
(A4-2)「CVD法により金属シリサイド膜を形成する場合、従来次のようにして成膜を行っている。
すなわち、処理室内の設置台に被処理基板例えば半導体ウエハを設け、この半導体ウエハを高温たとえば650℃以上に加熱する。そして、この処理室内に処理ガス例えばWF6(六弗化タングステン)やSiH2Cl2(ジクロロシラン)を供給するとともに、この処理室から真空排気することにより、処理室内を例えば150〜200ミリTorr程度の真空度に保った伏態で半導体ウエハ表面に例えばWSix(タングステンシリサイド)膜を形成する。」(第1頁右下欄第13行〜第2頁左上欄第5行)
(A4-3)実施例において、「CVD装置の処理室(反応チャンバ)1は、例えばAl(アルミニウム)等から円筒状に形成されており、内部を気密に保時するとともに図示しない冷却機構により壁面は冷却可能に構成されている。」(第2頁右下欄第3〜7行)

甲第5号証
(A5-1)「(1)反応気体導入系と排気系を備えた石英製反応管と、この石英製反応管の外側に設置され、前記反応管を加熱および冷却するヒ-タと冷却機構を具備したホットウォ-ルタイプの減圧CVD装置において、前記反応管内に設置された被処理基板が所望の温度に設定された後に、前記反応管を冷却した状態で反応気体を導入し、薄膜形成を行うことを特徴とするCVDによる薄膜形成方法。」(特許請求の範囲(1))(なお、原文の「反映」は、上記のとおり「石英」の誤記と認める。)

甲第6号証
(A6-1)「【請求項1】絶縁膜の接続孔内にメタルプラグを形成する方法において、接続孔内を含む上記絶縁膜上に密着層を形成する工程と、上記接続孔の肩部の密着層を選択的に除去してて上記接続孔内と絶縁膜上との密着層を分離する工程と、金属層を形成した後、エッチバックして上記接続孔内にメタルプラグを形成する工程を有することを特徴とするメタルプラグの形成方法。」(特許請求の範囲)
(A6-2)「図2Dに示すように、高融点金属である例えはブランケットタングステン層16をCVDによって形成する。このCVD条件は、例えば供給ガスWF6:H2=1:6、温度475℃、圧力80Torrに設定して行うことができる。」(段落【0013】)

甲第7号証
(A7-1)「表-5 気相成長で使用するガスの物理的性質」(第124頁)に、「TMGa」(トリメチルガリウム)の沸点が55.8℃であることが記載されている。

(III-B)特許異議申立人:高柳馨の主張及び証拠
(1)主張及び証拠
特許異議申立人:高柳馨は、甲第1号証(特開昭62-286233号公報)、甲第2号証(特開昭59-179775号公報)、甲第3号証(特開昭58-208119号公報)、及び甲第4号証(特開平4-125923号公報)を提示して、特許権設定登録時の本件特許について、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるので特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであり(発明の新規性)、請求項1〜6に係る発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるので特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり(発明の進歩性)、したがって、これら請求項1〜6に係る特許は取り消すべきものであると主張している。

(2)証拠の記載事実
甲第1号証
(B1-1)「(1)処理すべき半導体基板が載置される基板載置手段と、この基板載置手段の下部に設けられ、前記半導体基板を加熱する第1の加熱手段と、前記載置手段と第1加熱手段を包囲する蓋体と、前記蓋体に設けられた反応ガス供給部と、前記蓋体の外部表面に設けられた第2の加熱手段とを備えたことを特徴とする半導体基板処理装置。」(特許請求の範囲(1))
(B1-2)実施例において、「図において、(9)は反応室天井(1)の内壁に付着する膜を防止するための外部ヒーター、(10)は外部ヒーター(9)を下部ヒーター(8)よりも低い温度に保たつための加熱プログラム」(第2頁右上欄第17行〜末行)
(B1-3)「本発明によれば、外部ヒーター(9)の温度を膜厚に比例させて次第に高くして半導体製造用ガス・・・の反応温度が一定となるように外部ヒーター(9)を膜の伝導率と成長速度から決められる加熱プログラム(10)をシーケンサー(11)に付加して制御することにより反応室天井(1)の内壁に付着する膜を緻密な薄膜・・・に形成する。この結果、反応室天井(1)の内壁に付着する粉末状の膜が解消され、反応室(4)内部の熱伝導率が良くなり、反応室天井(1)の内壁の膜中へボロン・リンが吸収されることなく、サセプタ(6)上のシリコンウエハ(2)上に到達するボロン・リン濃度が多くなる。」(第2頁左下欄第15行〜右下欄第7行)

甲第2号証
(B2-1)「(1)反応ガスと基板を有するハウジングと、上記反応ガスより得られる材料の基板にデポジションを行なわせるに十分な第1の温度に上記基板を加熱するための、上記基板に近接した加熱手段と、さらに、上記反応ガスより得られる上記材料で形成される上記ハウジングにデポジションすることを実質的に避けるに十分な低い第2の温度で上記ハウジングを能動的に維持するための第1の冷却手段であって、該冷却手段は上記材料が上記基板にデポジションされているときに、上記ハウジングより熱エネルギーを引出す上記第1の冷却手段とを備えることを特徴とするCVD装置。」(特許請求の範囲(1))
(B2-2)「ハウジング11は代表的には冷却コイル14で冷却され、ハウジング内壁に顕著なデポジションが発生しないような温度まで下げられる。一般に、ハウジングの温度はデポジションの行なわれる特定の材料に依存して変化するが、タングステン シリサイドについては、約100℃のハウジング温度で、内壁での不必要なデポジションが大巾に減少される。」(第5頁左下欄第16行〜右下欄第3行)

甲第3号証
(B3-1)「1)反応室内に配置された電極間にグロー放電を発生させ、反応ガスを分解して基板上にシリコン薄膜を生成する方法において、グロー放電発生時には反応室の壁を冷却して壁の内面に反応生成物を付着させ、放電停止後前記壁を加熱して付着した反応生成物を剥離することを特徴とする薄膜シリコン生成方法。
2)特許請求の範囲第1項記載の方法において、壁に水冷管およびヒータを備えた反応室を用いることを特徴とする薄膜シリコン生成方法。」(特許請求の範囲1,2)
(B3-2)「第2図において・・・反応室1の壁11には水冷用の管6とヒータ7とが埋め込まれている。・・・放電終了後水冷管6の水を止め、ヒータ7に通電して反応室の壁11の温度を上げると、壁11に弱い付着強度で付着した反応生成物は剥離する。」(第2頁左上欄第18行〜右上欄第14行)

甲第4号証
(B4-1)「CVD装置を用いて・・・W膜をシリコン基坂上に成膜するにあたり、反応ガスとしてWF6とH2あるいは、SiH4、及びキャリアガスArを用いた反応系にN2ガスを導入することを特徴とするCVDタングステン膜の形成方法。」(特許請求の範囲)
(B4-2)実施例において、「ここではCVD-W膜中特にブランケットCVD-W膜の形成方法を例にとって説明する。」(第2頁左下欄第17〜19行)

IV.明細書等の記載不備に係る主張についての判断
特許異議申立人:松原いずみは、(A):基板加熱手段について、特許請求の範囲には「反応室内」と記載されているのに対して、発明の詳細な説明には当該事項の記載がないとして、明細書の記載不備を主張している。
しかし、本件明細書の発明の詳細な説明の欄には、「反応室内に設けられた基板加熱手段」(段落【0008】参照。)との記載がなされているので、上記(A)の点につき、特許異議申立人が主張する不備があるとすることはできない。

V.本件発明
本件明細書等の記載不備に係る、特許異議申立人:松原いずみの主張は、上記のとおり採用できず、そして、当該訂正後の本件請求項1〜6に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明6」という。)は、訂正後の明細書及び図面(以下単に「明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載されたとおりの次のものと認める。

「【請求項1】反応室と、半導体基板載置用の支持台と、半導体基板に薄膜を形成するための原料ガスを供給する原料ガス供給手段とを具備するCVD装置において、
前記支持台に載置された半導体基板を加熱し、当該半導体基板及びその近傍を第1の温度に保持するために前記反応室内に設けられた基板加熱手段と、
内壁及び外壁を有し、かつ、熱絶縁層を前記内壁及び外壁の間に有した反応室側壁と、
前記基板加熱手段とは別に前記反応室側壁の熱絶縁層と前記反応室の内側との間である内壁を加熱して該内壁を第2の温度に保持するために当該内壁に設けられた内壁加熱手段とを備えることを特徴とするCVD装置。
【請求項2】前記内壁加熱手段によって、前記反応室の内壁近傍の温度を前記原料ガスの沸点以上、且つ該原料ガスの分解温度以下にすることを特徴とする請求項1に記載のCVD装置。
【請求項3】前記反応室側壁の内壁、あるいは外壁に冷却手段を設けることを特徴とする請求項1記載のCVD装置。
【請求項4】請求項1に記載のCVD装置を用いて成膜する際に、前記原料ガスとして六弗化タングステンを用い、且つ前記反応室内壁温度を45℃以上に保持することを特徴とするCVD装置を使用する成膜方法。
【請求項5】請求項1に記載のCVD装置を用いて成膜する際に、ブランケットタングステン膜を形成することを特徴とするCVD装置を使用する成膜方法。
【請求項6】請求項1に記載のCVD装置を用いて成膜する際に、タングステンシリサイド膜を形成することを特徴とするCVD装置を使用する成膜方法。」

VI.対比・判断(発明の新規性進歩性に係る主張について)
(VII-1)松原いずみによる特許異議申立について
(1)本件発明1について
本件発明1と、甲第1号証に記載されたものとを対比すると、甲第1号証には、気相成長反応管内に原料ガスを供給して基板上にIII-V族の結晶成長を行わせる気相成長方法において、ガスの流れに関して反応部下流部分を、原料ガス分解温度よりも低くかつ反応部において分解したV族分子あるいは原子の蒸気圧よりも高いV族分圧を保時できる温度に保つ気相成長方法(摘記A1-1)の発明が記載され、併せて、気相成長装置は石英反応管1を備えており、この石英反応管1の外部であってグラファイト支持台4の位置する箇所には高周波加熱用の高周波コイル8が設けられており、グラファイト支持台4の下流部及びサンプル導入路5が位置する箇所には抵抗加熱炉9が設けられていること、グラファイト支持台4にガリウム砒素結晶基板10を配置し、高周波コイル8により結晶基板10の近傍を加熟し、V族の原料ガスたとえばアルシンは昇温の段階で反応管1に送り込まれ結晶基板10を成長時まで保護し、これと同時に抵抗加熱炉9により基板下流部およびサンプル導入路5を加熱し、結晶基板周囲において分解した砒素の蒸気圧よりも高い分圧を保持できる温度に保つこと、このとき基板周囲において分解した砒素は抵抗加熱炉9により加熱され、基板近傍よりサンプル導入路5の部分では固相砒素として析出することなしに下流部に移動し、基板近傍よりサンブル導入路5の部分では固相砒素の析出はみられなくなること、有機金属原料であるトリメチルガリウムは反応管入口2より反応管1に送りこまれ加熱された基板近傍で熱分解し結晶基板10の表面でエピタキシャル成長し、このとき結晶表面ばかりでなく加熱されたグラファイト支持台4及びその近傍で折出がみられるが、抵抗加熱炉9の温度はトリメチルガリウムの分解温度(約500℃)以下に保持するため未分解のトリメチルガリウムは分解することなく反応管出口7より排気されること(摘記A1-2)が記載されており、そして、甲第1号証に記載の気相成長は、上記の記載からみて、一種のCVDであると認めることができる。
してみれば、本件発明1は、甲第1号証に記載されたものと、
反応室と、半導体基板載置用の支持台と、半導体基板に薄膜を形成するための原料ガスを供給する原料ガス供給手段とを具備するCVD装置において、
前記支持台に載置された半導体基板を加熱し、当該半導体基板及びその近傍を第1の温度に保持するために前記反応室内に設けられた基板加熱手段とを備えることを特徴とするCVD装置の点で一致し、そして、
(A1)本件発明1は、内壁及び外壁を有し、かつ熱絶縁層を前記内壁及び外壁の間に有した反応室側壁を有するものであるのに対して、甲第1号証にはそのような反応室側壁の記載が見当たらない点、及び、
(A2)本件発明1は、基板加熱手段とは別に、前記反応室側壁の熱絶縁層と前記反応室の内側との間である内壁を加熱して該内壁を第2の温度に保持するために当該内壁に設けられた内壁加熱手段を有するものであるのに対して、甲第1号証にはそのような内壁加熱手段の記載が見当たらない点で、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明と相違している。

そこで、上記相違点について、以下検討する。
相違点(A1)及び(A2)について
本件発明1は、従前のコールドウォール型のCVD装置では、タングステン等の薄膜を形成するために六弗化タングステン等沸点が低い原料ガスを用いる場合、WF6ガスは容易にチャンバー側壁に吸着し、その吸着によりチェンバー内に供給された原料ガスのそれぞれの分圧が変化してシリコン基板上でWを形成するための反応速度が変化し、その結果、形成W薄膜の均一性を損ねることになり、また、チャンバーの側壁に吸着されるガスの吸着量は、ガス結合状態等によって変化するため、ウェハロット間の均一性が悪くなり、また、上記吸着の問題を解決すべくチャンバー側壁を加熱する場合、装置全体を加熱することになり、チャンバー内を真空に保持するために必要な部品であるOリングや装置をコントロールするための配線等に障害を与える可能性があり、そのため、チャンバー側壁を100℃程度以上に加熱することは好ましくなく、また装置が、設置されているクリーンルームの空調に大きな負荷をかけることになり、実際には50℃前後の温度が限界となり、50℃以上の温度に側壁を保持しておきたい場合のCVD装置において問題となっている、という課題の下に、チャンバー側壁に吸着し易い原料ガスを用いて膜厚が均一なCVD膜を形成することができる側壁加熱型CVD装置及びその装置を使用する成膜方法を提供することを目的とするものである(段落【0005】〜【0007】参照。)。
一方、甲第2〜7号証の記載をみると、甲第2号証には、反応管を二重構造として、反応管の外側に冷却用の外壁を有するMOCVD装置において、当該外壁中に冷却、加圧したHeガスを一定圧流すMOCVD装置(摘記A2-1)と併せて、従前、外側の冷却用外壁内にて水冷を行なったこと(摘記A2-3)が記載され、甲第3号証には、水冷された金属製反応室の内面に接して反射率の高い材料で造られた反射層を設けたエピタキシャル成長装置(摘記A3-1)と併せて、従来のエピタキシャル成長装置は、カーボンサセプタが高温(900〜1250℃)となり、幅射熱のため金属ベルジャー、基板台は著しく温度上昇し、そのため冷却用パイプによって水冷されていること(摘記A3-2)が記載され、甲第4号証には、被処理基板の全表面温度がほぼ一定となるように加熱した状態で、前記金属シリサイド膜を形成する金属シリサイド膜の形成方法(摘記A4-1)と併せて、CVD装置の処理室(反応チャンバ)は、冷却機構により壁面は冷却可能に構成されること(摘記A4-3)が記載され、甲第5号証には、反応管の外側に設置され、前記反応管を加熱および冷却するヒ-タと冷却機構を具備したホットウォ-ルタイプの減圧CVD装置において、前記反応管内に設置された被処理基板が所望の温度に設定された後に、前記反応管を冷却した状態で反応気体を導入し、薄膜形成を行うCVD薄膜形成方法(摘記A5-1)が記載され、甲第6号証には、ブランケットタングステン層をCVDによって形成すること(摘記A6-2)が記載され、また、甲第7号証には、トリメチルガリウムの沸点が55.8℃であること(摘記A7-1)が記載されている。
しかし、これら甲第2〜7号証のいずれにも、内壁及び外壁を有し、かつ熱絶縁層を前記内壁及び外壁の間に有した反応室側壁とすること(相違点(A1))、及び、基板加熱手段とは別に前記反応室側壁の熱絶縁層と前記反応室の内側との間である内壁を加熱して該内壁を第2の温度に保持するために当該内壁に設けられた内壁加熱手段を設けること(相違点(A2))を開示する記載はない。
そして、本件発明1は、当該相違点(A1)及び(A2)に係る構成を含む、前記認定のとおりの構成を有することにより、半導体基板及びその近傍の温度雰囲気と反応室内壁の温度雰囲気とを別個独立に制御できるので、反応室の内壁近傍の温度を原料ガスの沸点以上、且つその原料ガスの分解温度以下に調整することができ、したがって、所定量の原料ガスを反応室内壁に吸着することなく、それぞれの分圧が安定な状態で、有効に半導体基板の成膜面へ導入することができ、これにより、該半導体基板の面内及び各ロット間で均質で、膜厚分布の良いCVD膜を半導体基板に堆積形成することができ、原料ガスの反応室側壁への吸着防止がなされるため、原料ガスを有効に成膜反応に使用することができ、また、CVD装置の外部の配線や空調等の設備に悪影響を及ぼすことなく、反応室の内壁を高温に保持することができる(段落【0025】〜【0027】)という、明細書に記載された効果を奏したものと認めることができる。
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1〜7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明とすることはできない。

(2)本件発明2〜6について
本件発明2〜3は、請求項1を引用して本件発明1をさらに特定したCVD装置の発明であり、また、本件発明4〜6は、請求項1を引用して、同請求項1に係る特定のCVD装置を使用する成膜方法の発明であるから、上記「(1)本件発明1について」の欄に記載したと同様、本件発明2〜6は、甲第1〜7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということはできない。

(VII-2)高柳馨による特許異議申立について
本件発明1と、甲第1号証に記載されたものとを対比すると、甲第1号証には、基板載置手段と、この基板載置手段の下部に設けられ、前記半導体基板を加熱する第1の加熱手段と、前記載置手段と第1加熱手段を包囲する蓋体と、前記蓋体に設けられた反応ガス供給部と、前記蓋体の外部表面に設けられた第2の加熱手段とを備えた半導体基板処理装置(摘記B1-1)と併せて、反応室天井の内壁に付着する膜を防止するための外部ヒーター(摘記B1-2)、及び、外部ヒーターの温度を膜厚に比例させて次第に高くして半導体製造用ガスの反応温度がー定となるように外部ヒ-ターを膜の伝導率と成長速度から決められる加熱プログラムを付加して制御することにより反応室天井の内壁に付着する膜を緻密な薄膜に形成し、この結果、反応室天井の内壁に付着する粉末状の膜が解消され、反応室天井の内壁の膜中へボロン・リンが吸収されることなく、サセプタ上のシリコンウエハ上に到達するボロン・リン濃度が多くなること(摘記B1-3)が記載されている。
してみれば、本件発明1は、甲第1号証に記載されたものと、
反応室と、半導体基板載置用の支持台と、半導体基板に薄膜を形成するための原料ガスを供給する原料ガス供給手段とを具備するCVD装置において、
前記支持台に載置された半導体基板を加熱し、当該半導体基板及びその近傍を第1の温度に保持するために前記反応室内に設けられた基板加熱手段とを備えることを特徴とするCVD装置の点で一致し、そして、
(B1)本件発明1は、内壁及び外壁を有し、かつ熱絶縁層を前記内壁及び外壁の間に有した反応室側壁を有するものであるのに対して、甲第1号証にはそのような反応室側壁の記載が見当たらない点、及び、
(B2)本件発明1は、基板加熱手段とは別に前記反応室側壁の熱絶縁層と前記反応室の内側との間である内壁を加熱して該内壁を第2の温度に保持するために当該内壁に設けられた内壁加熱手段を有するものであるのに対して、甲第1号証にはそのような内壁加熱手段の記載が見当たらない点で、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明と相違している。

そこで、上記相違点について、以下検討する。
相違点(B1)及び(B2)について
甲第2〜4号証の記載をみると、甲第2号証には、デポジションを行なわせるに十分な第1の温度に上記基板を加熱するための基板に近接した加熱手段と、ハウジングにデポジションすることを避けるに十分に低い第2の温度に上記ハウジングを能動的に維持するための第1の冷却手段であって、該冷却手段は、上記基板にデポジションされているときに、上記ハウジングより熱エネルギーを引出す冷却手段を備えるCVD装置(摘記B2-1)が記載され、甲第3号証には、反応室内に配置された電極間にグロー放電を発生させ、反応ガスを分解して基板上にシリコン薄膜を生成する方法において、グロー放電発生時には反応室の壁を冷却して壁の内面に反応生成物を付着させ、放電停止後前記壁を加熱して付着した反応生成物を剥離する薄膜シリコン生成方法とともに、壁に水冷管およびヒータを備えた反応室を用いること(摘記B3-1)が記載され、そして、甲第4号証には、ブランケットCVD-W膜の形成方法(摘記B4-1〜2)が記載されている。
しかし、これら甲第2〜4号証のいずれにも、内壁及び外壁を有し、かつ熱絶縁層を前記内壁及び外壁の間に有した反応室側壁とすること(相違点(B1))、及び、基板加熱手段とは別に前記反応室側壁の熱絶縁層と前記反応室の内側との間である内壁を加熱して該内壁を第2の温度に保持するために当該内壁に設けられた内壁加熱手段を設けること(相違点(B2))を開示する記載はない。
そして、本件発明1は、当該相違点(B1)及び(B2)に係る構成を含む、前記認定のとおりの構成を有することにより、上記(VII-1)項(松原いずみによる特許異議申立について)の「(1)本件発明1について」の欄に記載したとおりの効果を奏したものと認めることができる。
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とも、また、甲第1〜4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ともいうことはできない。
また、本件発明2〜6については、上記(VII-1)項の「(2)本件発明2〜6について」の欄に記載したと同様、甲第1〜4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができた発明ということはできない。

VII.むすび
以上のとおりであるから、各特許異議申立人の主張する理由及び提示した証拠によっては、訂正後の請求項1〜6に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めることができない。
また、訂正後の請求項1〜6に係る特許については、他に拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めることはできない。
したがって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基く、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
CVD装置及びその装置を使用する成膜方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 反応室と、半導体基板載置用の支持台と、半導体基板に薄膜を形成するための原料ガスを供給する原料ガス供給手段とを具備するCVD装置において、
前記支持台に載置された半導体基板を加熱し、前記半導体基板及びその近傍を第1の温度に保持するために前記反応室内に設けられた基板加熱手段と、
内壁及び外壁を有し、かつ、熱絶縁層を前記内壁及び外壁の間に有した反応室側壁と、
前記基板加熱手段とは別に前記反応室側壁の熱絶縁層と前記反応室の内側との間である内壁を加熱して該内壁を第2の温度に保持するために当該内壁に設けられた内壁加熱手段とを備えることを特徴とするCVD装置。
【請求項2】 前記内壁加熱手段によって、前記反応室の内壁近傍の温度を前記原料ガスの沸点以上、且つ該原料ガスの分解温度以下にすることを特徴とする請求項1に記載のCVD装置。
【請求項3】 前記反応室の内壁、あるいは外壁に冷却手段を設けることを特徴とする請求項1記載のCVD装置。
【請求項4】 請求項1に記載のCVD装置を用いて成膜する際に、前記原料ガスとして六弗化タングステンを用い、且つ前記反応室内壁温度を45℃以上に保持することを特徴とするCVD装置を使用する成膜方法。
【請求項5】 請求項1に記載のCVD装置を用いて成膜する際に、ブランケットタングステン膜を形成することを特徴とするCVD装置を使用する成膜方法。
【請求項6】 請求項1に記載のCVD装置を用いて成膜する際に、タングステンシリサイド膜を形成することを特徴とするCVD装置を使用する成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、側壁加熱型CVD装置及びその装置を使用する成膜方法に係り、特に半導体装置製造においてタングステン等の金属薄膜の形成に用いる側壁加熱型減圧CVD装置及びその装置を使用する成膜方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の製造の際に用いられる金属薄膜等の成膜装置の役割は、半導体装置の高集積に伴い、近年特に重要になってきている。原料をガスで供給し、気相反応あるいは基板表面における化学反応によって薄膜を堆積形成するCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)装置は、ULSI等の半導体装置を製造する場合、不可欠な装置となっている。そのCVD装置では、基板表面上の原料ガス濃度が均一であることが重要であり、その均一性の良否が堆積形成されるCVD膜の材質の均一性あるいは膜厚の均一性等の分布に大きな影響を与える。従って、CVD装置では反応時の原料ガス濃度の均一性を向上させることが重要となっている。
【0003】
図5は、通常用いられている枚葉式のコールドウォール型LPCVDの模式図を示す。図に示すように、ヒーター6を下側に配するサセプター1上に載置されたシリコン基板(ウェハ)2をチャンバー3内に配し、チャンバー3の側壁には水冷管4が配置され、側壁を冷却してコールドウォール3aとしている。
【0004】
この側壁の冷却は、反応室としてのチャンバー3内にガス導入口を介して導入される原料ガス5が側壁近傍付近で反応しないようになされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなコールドウォール型のCVD装置では、タングステン(W)等の薄膜を形成するために六弗化タングステン(WF6)等沸点が低い原料ガスを用いる場合、WF6ガスは容易にチャンバー側壁に吸着する。従って、その吸着によりチェンバー内に供給された原料ガスのそれぞれの分圧が変化してシリコン基板2上でWを形成するための反応速度が変化し、その結果、形成W薄膜の均一性を損ねることになる。また、チャンバー3の側壁に吸着されるガスの吸着量は、ガス結合状態等によって変化するため、ウェハロット間の均一性が悪くなる。
【0006】
また上記吸着の問題を解決すべくチャンバー側壁を加熱する場合、装置全体を加熱することになり、チャンバー3内を真空に保持するために必要な部品であるOリングや装置をコントロールするための配線等に障害を与える可能性がある。そのため、チャンバー側壁を100℃程度以上に加熱することは好ましくない。また装置が、設置されているクリーンルームの空調に大きな負荷をかけることになり、実際には50℃前後の温度が限界となる。従って、50℃以上の温度に側壁を保持しておきたい場合のCVD装置において問題となっている。
【0007】
そこで本発明は、チャンバー側壁に吸着し易い原料ガスを用いて膜厚が均一なCVD膜を形成することができる側壁加熱型CVD装置及びその装置を使用する成膜方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は本発明によれば、反応室と、半導体基板載置用の支持台と、半導体基板に薄膜を形成するための原料ガスを供給する原料ガス供給手段とを具備するCVD装置において、支持台に載置された半導体基板を加熱し、この半導体基板及びその近傍を第1の温度に保持するために反応室内に設けられた基板加熱手段と、内壁及び外壁を有し、かつ、熱絶縁層を内壁及び外壁の間に有した反応室側壁と、基板加熱手段とは別に反応室側壁の熱絶縁層と反応室の内側との間である内壁を加熱して該内壁を第2の温度に保持するために当該内壁に設けられた内壁加熱手段とを備えることを特徴とするCVD装置によって解決される。
【0009】
また上記課題は本発明によれば、上記CVD装置を用いて成膜する際に、前記原料ガスとして六弗化タングステンを用い、且つ前記反応室内壁温度を45℃以上に保持することを特徴とするCVD装置を使用する成膜方法によって解決される。
【0010】
更に、上記課題は本発明によれば、上記CVD装置を用いて成膜する際に、ブランケットタングステン膜を形成することを特徴とするCVD装置を使用する成膜方法によって解決される。
【0011】
更に、上記課題は本発明によれば、上記CVD装置を用いて成膜する際に、タングステンシリサイド膜を形成することを特徴とするCVD装置を使用する成膜方法によって解決される。
【0012】
【作用】
本発明によれば、図1に示す反応室(以下でチャンバーという)13内の支持台(以下でサセプタという)1に半導体基板を載置して原料ガス供給手段により反応室内に原料ガス5を供給し、この半導体基板に薄膜を形成する場合に、一方で、サセプタ1に載置された半導体基板が基板加熱手段(以下でIRランプ)7によって加熱され、この半導体基板及びその近傍が第1の温度に保持される。他方でチャンバー13の壁内に設けられた図2に示す内壁加熱手段(以下でヒーターという)16により、IRランプ7とは別にチャンバー13の内壁が加熱されてその内壁が第2の温度に保持される。
従って、CVD装置のチャンバー内壁14において、その内壁近傍の温度を原料ガスの沸点以上で且つその原料ガスの分解温度以下の温度に保持することができる。これにより、チャンバー内壁14に原料ガス5が吸着するのを防止することができる。そのため、所定量の原料ガスを有効にしかも安定して成膜反応に使用することができ、成膜の均一性を向上させることができる。
【0013】
本発明のCVD装置は、特に吸着しやすい原料ガス、例えば六弗化タングステンを使用するブランケットタングステン,タングステンシリサイド等の成膜に有効に用いられる。
【0014】
更に、本発明によれば反応室外壁15を冷却することによって装置外部に対して温度上昇による不具合を抑制することができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る側壁加熱型CVD装置を示す模式断面図である。図1に示すように、本発明に係る側壁加熱型CVD装置は、後に図2で詳細に示す内壁加熱、外壁冷却の機能を有するチャンバー側壁10を有する。このチャンバー側壁10を有する反応室としてのチャンバー13内には、従来装置と同様のサセプター1上にシリコン基板(ウェハ)2を載置し、そのサセプター1をIRランプ(赤外線ランプ)7により所定温度に加熱し、シリコン基板2及びその近傍を反応温度に保持するように構成されている。なお、シリコン基板2はクランプ機構8でクランプされている。
【0017】
チャンバー13室内には、原料ガス供給リング11を介して原料ガス混合室12内で混合された原料ガス5が真空排気ポンプ(図示せず)により送り込まれ、シリコン基板2上に反応生成物を堆積させる。
【0018】
図2は、本発明に係るチャンバー側壁の一実施例を示す模式図である。図2(a)に示すように、チャンバー側壁10はAlからなり、チャンバーの内壁14にニクロム線からなるヒーター16、外壁15に水冷管17を設ける。水冷管17には、15〜20℃程度の冷却水を流し、チャンバーの外側に対して内部の加熱の影響を与えないように構成されている。また、チャンバー側壁10のヒーター16と水冷管17の間には、ヒーターの熱を外側へ逃がさぬようにアルミナ等の熱絶縁層18を設けている。なお、本実施例のヒーター16の間に図2(b)に示すように、水冷管20を設けて冷却機能を内壁14に持たせ、内壁14の温度をより制御することもできる。
【0019】
上記CVD装置を用いてブランケットタングステン(以下BLK-W)を形成する一つの方法を説明する。BLK-WのCVD膜の堆積形成条件を以下の通りとした。
【0020】
反 応 温 度(第1の温度):450℃
チャンバー内圧力 :10KPa
原料ガス組成:WF6/H2=25/500sccm
本実施例では、チャンバー内側のヒーター16を45℃の温度(第2の温度)まで加熱させ、一方、チャンバー外側の水冷管17には、20℃程度に保持された冷却水を流した。
【0021】
図3及び図4は本実施例の如く、チャンバー内壁温度を45℃とした場合、及び比較例として20℃とした場合のBLK-WCVD膜の特性結果を示す。図3及び図4の横軸には、Run Numberとしてウェハの処理番号を示し、一方、縦軸はシート抵抗(最小値Min,平均Ave,最大値Max)を示した。シート抵抗は抵抗率を一定と仮定した場合、W薄膜の膜厚に反比例するものであり、図示されたシート抵抗値の分布の傾向はそのまま膜厚分布の傾向を示している。
【0022】
チャンバー内壁温度を20℃にした場合は、図4に示すように、10Sで15%もシート抵抗が上昇しているのに対して、チャンバー内壁温度を45℃にした場合は、図3に示すように、わずか3%の上昇だけであった。また、20℃の場合はウェハ面内の膜厚分布も悪化しているのがわかる。従って、本発明装置を用いれば、ウェハロット間の膜厚分布の低下を抑えることができる。
【0023】
次に、上記図1,2に示したCVD装置を用いてWSi-CVD膜形成を行った実施例を示す。本実施例は、下記条件で行った。
【0024】
反 応 温 度 :400℃
チャンバー内圧力 :100Pa
原料ガス組成:WF6/SiH4/Ar=3/350/500sccmチャンバー内壁温度は、50℃に一定に保持させる。この方法により、得られたWSi膜の膜厚分布は、上記45℃の場合と同様、3%以内に抑えることができた。WSi-CVD膜の成膜工程では、上記形成条件にも示したように、吸着性の高いWF6ガスを少流量で使用するため、本装置の利用効果は大である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るCVD装置によれば、支持台に載置された半導体基板を加熱し、この半導体基板及びその近傍を第1の温度に保持する基板加熱手段とは別に反応室内壁に内壁加熱手段が備えられ、この内壁加熱手段は、反応室の内壁を加熱して該内壁を第2の温度に保持するものである。
この構成によって、半導体基板及びその近傍の温度雰囲気と反応室内壁の温度雰囲気とを別個独立に制御できるので、例えば、反応室の内壁近傍の温度を原料ガスの沸点以上、且つその原料ガスの分解温度以下に調整することができる。
従って、所定量の原料ガスを反応室内壁に吸着することなく、それぞれの分圧が安定な状態で、有効に半導体基板の成膜面へ導入することができる。これにより、該半導体基板の面内は勿論、各ロット間でも均質で、膜厚分布の良いCVD膜を半導体基板に堆積形成することができる。
【0026】
また、原料ガスの反応室側壁への吸着防止がなされるため、原料ガスを有効に成膜反応に使用することができる。
【0027】
更にまた、本発明のCVD装置では、反応室の外壁を10〜20℃程度に冷却しているため、CVD装置の外部の配線や空調等の設備に悪影響を及ぼすことなく、反応室の内壁を高温に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る側壁加熱型減圧CVD装置を示す模式断面図である。
【図2】
本発明に係るチャンバー側壁の構造を示す模式断面図である。
【図3】
チャンバー内壁温度を45℃にした場合の本発明に係るブランケットタングステンCVD膜の特性結果を示す図である。
【図4】
チャンバー内壁温度を20℃にした場合の本発明に係るブランケットタングステンCVD膜の特性結果を示す図である。
【図5】
従来のコールドウォール(側壁冷却)型減圧CVD装置である。
【符号の説明】
1 サセプタ
2 シリコン基板(ウェハ)
3 チャンバー(反応室)
4 水冷管
5 原料ガス
6,7 ヒーター
8 クランプ機構
10 チャンバー側壁
11 原料ガス供給リング
12 原料ガス混合室
13 チャンバー(反応室)
16 ヒーター
17,20 水冷管
18 熱絶縁層
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-10-08 
出願番号 特願平4-290080
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
P 1 651・ 334- YA (H01L)
P 1 651・ 113- YA (H01L)
P 1 651・ 531- YA (H01L)
最終処分 維持  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 三崎 仁
池田 正人
登録日 2001-02-02 
登録番号 特許第3154145号(P3154145)
権利者 ソニー株式会社
発明の名称 CVD装置及びその装置を使用する成膜方法  
代理人 佐々木 榮二  
代理人 佐々木 榮二  
代理人 山口 邦夫  
代理人 山口 邦夫  

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