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審決分類 審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1089830
異議申立番号 異議2001-70153  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-09-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-01-13 
確定日 2003-10-20 
分離された異議申立 有 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3085129号「浴用剤組成物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3085129号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.経緯
特許第3085129号の請求項1に係る発明についての出願は平成7年2月27日に特許出願され、平成12年7月7日にその発明について特許権の設定がなされ、その後、その特許について里中聡、アース製薬株式会社及び日本香料工業会より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年11月13日に特許権者から明細書の訂正が請求され(その後取り下げられた)、再度取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年8月28日に明細書の訂正が請求されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者の求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
a.特許請求の範囲の請求項1に「(A)アニス油、安息香油、イランイラン油、オレガノ油、オレンジ油、カミツレ油、カユプテ油、カラシ油、カルダモン油、クラリセージ油、クローブ油、コリアンダ-油、サイプレス油、サビナ油、サンダルウッド油、シダーウッド油、シトロネラ油、シナモン油、ジャスミン油、ジュニパー油、樟脳油、ショウブ油、ジンジャー油、セイヨウネズ油、セージ油、セーボリー油、ゼラニウム油、タイム油、ターペンタイン油、タラゴン油、チミアン油、丁子油、テレビン油、ナツメグ油、ニクズク油、乳香油、ニンニク油、ネロリ油、パイン油、バジル油、パセリ油、ハッカ油、バラ油、ヒソップ油、フェンネル油、プミリオマツ油、ブラックペッパー油、ベニロイヤル油、ヘノポジ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ヘンルウダ油、没薬油、マージョラム油、メリッサ油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズウッド油、ローズマリー油、カルバクロール、1-カルボン、カンファー、カンフェン、クマリン、ゲラニオール、サフロール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ジャスモン、ジヒドロジャスモン、チモール、α-テレピネオール、ネロール、ヒノキチオール、ピペリトン、メチルヘプテノン、メントール、リナロールから成る群から選択される少なくとも1種の、比重が1.0未満である精油及び/又は精油由来の成分と、(B)比重が1.0以上の油性成分とを、前記(A)成分1に対して前記(B)成分を0.2〜5.0の比で配合し、浴湯に対する前記(A)成分の濃度が2.0ppm以上であることを特徴とする浴用剤組成物。」とあるのを、
「(A)アニス油、安息香油、イランイラン油、オレガノ油、オレンジ油、カミツレ油、カユプテ油、カラシ油、カルダモン油、クラリセージ油、コリアンダー油、サイプレス油、サビナ油、サンダルウッド油、シダーウッド油、シトロネラ油、ジャスミン油、ジュニパー油、樟脳油、ショウブ油、ジンジャー油、セイヨウネズ油、セージ油、セーボリー油、ゼラニウム油、タイム油、ターペンタイン油、タラゴン油、チミアン油、テレビン油、ナツメグ油、ニクズク油、乳香油、ニンニク油、ネロリ油、パイン油、バジル油、パセリ油、ハッカ油、バラ油、ヒソップ油、フェンネル油、プミリオマツ油、ブラックペッパー油、ベニロイヤル油、ヘノポジ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ヘンルウダ油、没薬油、マージョラム油、メリッサ油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズウッド油、ローズマリー油、カルバクロール、1-カルボン、カンファー、カンフェン、クマリン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ジャスモン、ジヒドロジャスモン、チモール、α-テレピネオール、ネロール、ピペリトン、メチルへプテノン、メントール、リナロールから成る群から選択される少なくとも1種の、比重が1.0未満である精油及び/又は精油由来の成分と、(B)安息香酸ベンジル、イソオイゲノール、オイゲノール、クエン酸アセチルトリオクチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリブチル、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、酢酸シンナミル、サリチル酸アミル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸メチル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ベンジル、ジカルボキシパントテン酸エチル、シノキサート、チアントール、パラメチルアセトフェノン、フェニルエチルアルコール、フェニル酢酸エチル、フェノキシエタノール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ブチルベンジル、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ポリプロピレングリコール、マレイン酸ジメチル、メチルフェニルグリシッド酸エチルから成る群から選択される少なくとも1種の、比重が1.0以上の油性成分とを、前記(A)成分1に対して前記(B)成分を0.2〜5.0の比で配合し、浴湯に対する前記(A)成分の濃度が2.0ppm以上であることを特徴とする発抱系弱酸性を除く浴用剤組成物。」と訂正する。
b.明細書の段落番号【0011】の第2〜16行目(公報第2頁第4欄第11〜33行目)において、
「アニス油、安息香油、イランイラン油、オレガノ油、オレンジ油、カミツレ油、カユプテ油、カラシ油、カルダモン油、クラリセージ油、クローブ油、コリアンダー油、サイプレス油、サビナ油、サンダルウッド油、シダーウッド油、シトロネラ油、シナモン油、ジャスミン油、ジュニパー油、樟脳油、ショウブ油、ジンジャー油、セイヨウネズ油、セージ油、セーボリー油、ゼラニウム油、タイム油、ターペンタイン油、タラゴン油、チミアン油、丁子油、テレビン油、ナツメグ油、ニクズク油、乳香油、ニンニク油、ネロリ油、パイン油、バジル油、パセリ油、ハッカ油、バラ油、ヒソップ油、フェンネル油、プミリオマツ油、ブラックペッパー油、ベニロイヤル油、ヘノポジ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ヘンルウダ油、没薬油、マージョラム油、メリッサ油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズウッド油、ローズマリー油、カルバクロール、1-カルボン、カンファー、カンフェン、クマリン、ゲラニオール、サフロール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ジャスモン、ジヒドロジャスモン、チモール、α-テレピネオール、ネロール、ヒノキチオール、ピペリトン、メチルヘプテノン、メントール、リナロール等が挙げられる」とあるのを、
「アニス油、安息香油、イランイラン油、オレガノ油、オレンジ油、カミツレ油、カユプテ油、カラシ油、カルダモン油、クラリセ一ジ油、コリアンダー油、サイプレス油、サビナ油、サンダルウッド油、シダーウッド油、シトロネラ油、ジャスミン油、ジュニパー油、樟脳油、ショウブ油、ジンジャー油、セイヨウネズ油、セージ油、セーボリー油、ゼラニウム油、タイム油、ターペンタイン油、タラゴン油、チミアン油、テレビン油、ナツメグ油、ニクズク油、乳香油、ニンニク油、ネロリ油、パイン油、バジル油、パセリ油、ハッカ油、バラ油、ヒソップ油、フェンネル油、プミリオマツ油、ブラックペッパー油、ベニロイヤル油、へノポジ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ヘンルウダ油、没薬油、マージョラム油、メリッサ油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズウッド油、ローズマリー油、カルバクロール、1-カルボン、カンファー、カンフェン、クマリン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ジャスモン、ジヒドロジャスモン、チモール、α-テレピネオール、ネロール、ピペリトン、メチルヘプテノン、メントール、リナロール等が挙げられる」と訂正する。
c.明細書の段落番号【0013】の第8行目(公報第2頁第4欄第46行〜第47行目)における「ショ糖脂肪酸エステル」を削除する。
d.明細書の段落番号【0017】の第2行目(公報第3頁第5欄第21行〜第6欄第1行目)における「2ppm以下」を「2ppm未満」と訂正する。
e.明細書の段落番号【0022】の表1(公報第4頁第8欄)中における「実施例2」を「参考例」と訂正する。
f.明細書の段落番号【0029】の第1行目(公報第5頁第10欄14行)における「実施例2」を「参考例」と訂正する。
g.明細書の段落番号【0030】の表4(公報第5頁第10欄)中における「実施例2」を「参考例」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
a.訂正事項aについて
訂正事項aは、i)発明の構成に欠くことのできない事項である(B)成分を、明細書の段落番号【0013】に記載されている、人体に対して安全性が高く、水に難溶又は不溶の物質の具体例として挙げられているものに限定し、ii)同様に欠くことのできない事項である「浴用剤組成物」を、明細書の段落番号【0022】の表1中の実施例のものである「発泡系弱酸性を除く裕用剤組成物」に限定し、及びiii)同様に欠くことのできない事項である(A)成分の中から、比重が1.0以上であるクローブ油、シナモン油、丁子油、サフロール、ヒノキチオールを削除するものである。したがって、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮、及び明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
b.訂正事項bについて
訂正事項bについては、上記訂正事項aのiii)と整合性を図るものであるから、明細書の明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
c.訂正事項cについて
訂正事項cについては、本件発明は界面活性剤を使用する際の問題点を解決することを目的とするものであるとの趣旨に鑑み、界面活性剤である「ショ糖脂肪酸エステル」を削除するものであり、これは明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
d.訂正事項dについて
訂正事項d.については、段落【0017】に「2ppm以下だと精油類の期待される効果が得られず好ましくない。」とある「2ppm以下」を「2ppm未満」とするものであるが、請求項1に「(A)成分の濃度が2.0ppm以上」と記載され、また、明細書の段落番号【0017】に「また、効果の点から、精油類の浴湯中濃度が2ppm以上になるように配合するのが好ましい。」と記載されていることからして、「2ppm以下」は本来「2ppm未満」であることは明らかである。したがって、この訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
e.訂正事項e、f及びgについて
訂正事項e、f及びgについては、上記訂正c.において「ショ糖脂肪酸エステル」を.削除したことに伴い、それと整合性を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
特許異議申立人アース製薬株式会社(以下、「申立人A」という。)は、特許第3085129号の請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、又、本件明細書の発明の詳細な説明には当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分な記載がなされていないから特許法第36条第3項及び第4項の規定により、特許を受けることができないものであり、本件発明に係る特許は取り消すべきと主張している。
また、特許異議申立人日本香料工業会(以下、「申立人B」という。)は、特許第3085129号の請求項1に係る発明は、甲第1号証の実施例1と同一の発明であるから特許法第29条第1項第3号の規定により、又、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本件発明に係る特許は取り消すべきと主張している。
さらに、特許異議申立人 里中聡は、特許第3085129号の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるか、又は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により、又、本件明細書の特許請求の範囲に記載された発明は不明瞭で実施不可能であるから特許法第36条第6項第2号の規定により、特許を受けることができないものであり、本件発明に係る特許は取り消すべきと主張したが、同人の特許異議の申立書については不備があったので、期間を指定して補正を命じたが、指定期間内に応答がないため、平成13年11月20日付けで同特許異議申立書は却下された。

(2)本件発明
上記2.で示したように訂正が認められるから、本件の請求項1の発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された下記のとおりのものである。
「(A)アニス油、安息香油、イランイラン油、オレガノ油、オレンジ油、カミツレ油、カユプテ油、カラシ油、カルダモン油、クラリセージ油、コリアンダー油、サイプレス油、サビナ油、サンダルウッド油、シダーウッド油、シトロネラ油、ジャスミン油、ジュニパ-油、樟脳油、ショウブ油、ジンジャー油、セイヨウネズ油、セージ油、セーボリー油、ゼラニウム油、タイム油、ターペンタイン油、タラゴン油、チミアン油、テレビン油、ナツメグ油、ニクズク油、乳香油、ニンニク油、ネロリ油、パイン油、バジル油、パセリ油、ハッカ油、バラ油、ヒソップ油、フェンネル油、プミリオマツ油、ブラックペッパー油、ベニロイヤル油、ヘノポジ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ヘンルウダ油、没薬油、マージョラム油、メリッサ油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズウッド油、ローズマリー油、カルバクロール、1-カルボン、カンファー、カンフェン、クマリン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ジャスモン、ジヒドロジャスモン、チモール、α-テレピネオール、ネロール、ピペリトン、メチルへプテノン、メントール、リナロールから成る群から選択される少なくとも1種の、比重が1.0未満である精油及び/又は精油由来の成分と、(B)安息香酸ベンジル、イソオイゲノール、オイゲノール、クエン酸アセチルトリオクチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリブチル、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、酢酸シンナミル、サリチル酸アミル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸メチル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ベンジル、ジカルボキシパントテン酸エチル、シノキサート、チアントール、パラメチルアセトフェノン、フェニルエチルアルコール、フェニル酢酸エチル、フェノキシエタノール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ブチルベンジル、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ポリプロピレングリコール、マレイン酸ジメチル、メチルフェニルグリシッド酸エチルから成る群から選択される少なくとも1種の、比重が1.0以上の油性成分とを、前記(A)成分1に対して前記(B)成分を0.2〜5.0の比で配合し、浴湯に対する前記(A)成分の濃度が2.0ppm以上であることを特徴とする発抱系弱酸性を除く浴用剤組成物。」

(3)申立人Aの申立てについて
1)申立人A提示の甲号証と記載内容
甲第1号証:特開平2-273614号公報(引用刊行物4に相当)
甲第2号証:特公昭55-16623号公報
甲第3号証:特開平4-77418号公報(引用刊行物5に相当)
甲第4号証:日本公定書協会編「化粧品原料基準 第二版注解 I」薬事日報社、第559〜561頁、1984
上記甲第1号証には、「シリコン樹脂の粉末を配合することを特徴とする浴剤組成物」(特許請求の範囲)、「シリコン樹脂の粉末は、シロキサン構造を持つものであり、・・・通常の液状シリコンを配合した入浴剤では、入浴中の皮膚感触を良好にすることができる・・」(第2頁左上欄7〜12行)及び「香料類 ラベンダー油、ジャスミン油、レモン油、・・等の天然香料及びゲラニオール、シトロネロール、・・等の合成香料。」(第2頁左下欄13〜17行)との記載があり、実施例1として、シリコン樹脂粉末2重量部と香料1重量部を含む浴剤組成物50gを200Lの浴湯中に添加して入浴を行ったところ、入浴感触に優れ、心地よい入浴ができたことが記載されている(第4頁右上欄8〜16行)。
上記甲第2号証には、水よりも軽い香料油分を水に溶解させる際に、安定化のために比重が1より大きい比重調整剤(植物性油のブロム化物)を用いて、水の比重と等しくすることが記載されている(第1頁第2欄2〜9行)。
上記甲第3号証には、油性成分を含む入浴剤において、精油類等の油性成分濃度が浴湯中で好ましくは2〜500ppm、特に好ましくは10〜100ppmとなるように入浴剤組成物の1回使用量(投入量)との関係で配合量を決めるのが好ましい事が記載されている(第3頁左上欄9行〜右上欄9行)
上記甲第4号証には、シリコン樹脂の比重等の物性が記載されている。
2)判断
a.特許法第29条について
本件発明は、比重が1.0未満の特定の精油「(A)成分」と比重が1.0以上の特定の油性成分「(B)成分」とを特定割合で配合するものであり、そのことにより精油成分を浴湯中に油の状態で分散・存在させて、精油類の皮膚への付着量を増大させ、精油類が有する皮膚表面への効果を増大させるものである(明細書の段落【0020】を参照)。
これに対して、甲第1号証には、製剤の物性、例えば流動性を改良し、ぼたつき等の欠点を除去するために、シリコン樹脂を必須の成分として配合した入浴剤が記載されているが、シリコン樹脂は本件発明の油性成分「B成分」には含まれておらず、また、甲第1号証には、本件発明の特徴である精油「(A)成分」及び油性成分「(B)成分」をそれぞれ特定の比重を有するものとし、かつ、これらを特定の濃度において使用することについては何も記載されていない。
甲第2号証には、清涼飲料等の製造において使用される乳化香料について、乳化香料の油分の比重を、比重が1より大きい植物性油のブロム化物である比重調節剤を使用して、油分の糖分を溶解した水の比重と等しくすることが記載されているが、本件発明の目的である、精油類の皮膚表面への効果を増大させるために、特定の比重の精油「(A)成分」及び油性成分「(B)成分」を選定することについては何も記載されていない。
甲第3号証には、油性成分及び香料を含む入浴剤において、精油類等の油性成分濃度が浴湯中で好ましくは2〜500ppmとなるように、入浴剤組成物の一回使用量との関係で配合量を決めることが記載されているものの、同甲号証に記載された発明は、「水溶性高分子、界面活性剤等の油性成分の分散剤又は乳化剤を含有させ、入浴剤を浴湯溶解した時、油性成分が水面に浮かないようにする」(第3頁右上欄13〜16行)と記載されていることから明らかなように、界面活性剤等を使用するものであって、界面活性剤を使用することなく油性成分を浴湯中に溶解させるという本件発明を開示するものではない。
甲第4号証は、本件発明では必須の構成ではないシリコン樹脂について、その比重等の物性について記載しているだけである。
以上のとおり、甲第1号証乃至甲第4号証には、本件発明の構成及び効果について記載されていないし、又、それらに断片的に記載された技術的事項を組み合わせる動機もないから、当業者が本件発明を上記甲各号証に記載の発明に基づいて容易に想到し得たということはできない。
b.特許法第36条について
訂正前の明細書において、特許請求の範囲に「a)アニス油、・・浴湯に対する前記(a)成分の濃度が2.0ppm以上であることを特徴とする浴用剤組成物」と記載されている一方で、発明の詳細の説明には「2ppm以下だと精油類の期待される効果が得られず好ましくない。」(段落【0017】)と記載されており、このため、2ppmにおける効果が矛盾していた点については、「2ppm以下」は「2ppm未満」に訂正されたので、この点における明細書の記載不備はもはや解消した。

(4)申立人Bの申立てについて
1)申立人B提示の甲号証と記載内容
甲第1号証:特開平5-17338号公報(引用刊行物6に相当)
甲第2号証:奥田治著「香料化学総覧[II]」廣川書店、第1464〜1465頁、昭和47年2月15日(引用刊行物7に相当)
甲第3号証:「季刊香料第149号 香りの本」日本香料協会、第73〜76頁、昭和61年3月30日(引用刊行物8に相当)
甲第4号証:「季刊香料第168号 香りの本」日本香料協会、第91〜97頁、平成2年12月30日(引用刊行物9に相当)
甲第5号証:「季刊香料第180号 香りの本」日本香料協会、第79〜87頁、平成5年12月30日(引用刊行物10に相当)
甲第6号証:印藤元一著「香料の実際知識 第2版」東洋経済新報社、第106、159、163、170、171、178頁、昭和60年7月11日(引用刊行物11に相当)
参考資料:印藤元一著「合成香料 化学と商品知識」化学工業日報社、第292、418、810、811、862、863頁、1996年3月6日
上記甲第1号証には、i)芯物質としての香料は、天然・合成のいずれでもよく、必要に応じて油脂類、生薬類、色素類等を添加することが可能であることが記載され(第2頁第2欄41行〜第3頁第3欄5行)、ii)「浴用剤組成物におけるマイクロカプセル化された香料及びマイクロカプセル化されていない香料の配合量は特に制限されないが、一般的な無機塩からなる粉末・顆粒状の浴用剤においては、マイクロカプセル化された香料を好ましくは0.05〜50重量%、より好ましくは0.1〜20重量量%とし、」との記載があり(第2頁第3欄41〜48行)、iii)「上記香料のマイクロカプセル・・次のような組成をもつ浴用剤を得た。・・この浴用剤組成物を浴湯180lあたり25g添加したとき、」との記載があり(第3頁第4欄41行〜第4頁第5欄3行)、さらに、iv)実施例1において、レモン油、シス-3-ヘキセノール、メントール及びシトラールを(A)成分として、桂皮酸メチル及び安息香酸メチルを(B)成分として計算すると、(A):(B)=1:0.25である香料組成が記載されている。
上記甲第2号証には、ローズ香料処方例 バスソルトについて、(A):(B)=1:0.25のもの(第1464頁、表3.1)、及び、ジャスミン香料処方例 バスソルトについて、(A):(B)=1:0.69のもの(第1465頁、表3.2)が記載されている。
上記甲第3号証には、ジャスミンタイプの香料の処方例について、(A):(B)=1:0.82のもの(第76頁、表VI)が記載されている。
上記甲第4号証には、FLORAL GREEN処方例について、(A):(B)=1:0.28のもの(第94頁)が記載されている。
上記甲第5号証には、ジャスミンタイプの浴用剤香料の処方例について、(A):(B)=1:0.83のもの(第80頁、表1)が記載されている。
上記甲第6号証及び参考資料には各種香料の比重が記載されている。
2)判断
申立人Bは、本件発明は甲第1号証の実施例1に記載された発明であると主張しているので、先ず、この点について検討すると、申立人Bが香料組成の「(B)成分」として挙げている「安息香酸メチル」(異議申立書第6頁9行)は、本件発明の「(B)成分」には含まれないものである。そうすると、同実施例1における「(A)成分」:「(B)成分」の割合は、1:0.125となり、本件発明の割合の範囲外のものとなるから、本件発明が同実施例1に記載された発明であるということはできない。
次に、本件発明の容易想到性について検討する。
甲第1号証には、一定の強さで香りを持続させるためにマイクロカプセル化した香料とマイクロカプセル化されていない香料を併用した浴用組成物が記載されているものの、同号証には、精油成分を浴湯中に油の状態で分散・存在させて精油類の皮膚への付着量を増大させて、精油類が有する皮膚表面への効果を高めるために、精油類の「(A)成分」1に対して油性の「(B)成分」を0.2〜5.0の割合で配合し、しかも、同混合物の比重を1.0に近づけて精油類を浴湯中に安定に留めることについては何も記載されていないから、本件発明が甲第1号証に記載の発明に基づいて容易になし得るということはできない。
さらに、甲第2号証乃至甲第5号証には、ローズ香料処方、ジャスミンタイプ香料の処方、FLORAL GREEN処方、及びジャスミンタイプの浴用剤香料の処方例が記載されているが、本件発明の「(A)成分」と「(B)成分」を0.2〜5.0の割合で含有することや、「(A)成分」の濃度を2.0ppm以上とすることについては記載されていないし、また、それに伴う本件発明の特定の効果についても記載されていない。殊に、本件発明の「(A)成分」の濃度が2.0ppm以上である点については、甲第4号証及び甲第5号証においては、通常の用法用量によれば、0.2ppm及び0.3ppmとなり、これに比較して、本件発明の同濃度は6〜10倍も多いものであり、慣用の使用量の範囲を著しく越えて使用されるといえることから、本件発明は甲第4号証及び甲第5号証に記載の発明からは容易に想到し得ないものである。
以上のとおり、本件発明は甲第1号証に記載された発明ではないし、又、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるということもできない。

(5)当審の取消理由について
1)引用刊行物
引用刊行物1:特開平5-331047号公報(里中聡提出の甲第1号証)引用刊行物2:香料化学総覧[I](同甲第2号証)
引用刊行物3:香料化学総覧[II](同甲第3号証)
2)判断
a.特許法第29条について
まず、本件発明が引用刊行物1に記載された発明であるか否かについて検討すると、引用刊行物1の比較例3において、精油成分Aが76重量%、比重が1.0以上の油性成分Bが15重量%である組成物を調製すること(B/A=0.197でほぼ2、公報第6頁)、及び、同例における精油Aの湯中での濃度は2.5ppmとなること(段落番号【0045】)がわかる。しかしながら、本件発明は精油類を湯中に留めておくものであって、そのために、特許請求の範囲の記載から明らかなように、「発泡系弱酸性」の浴用剤組成物を除いているのに対し、引用例に記載の発明は、発泡系弱酸性の入浴剤として使用されるものであることが明らかであるから(公報段落【0043】)、本件発明は同引用例の比較例3に記載された発明であるということはできない。
次に、上記引用刊行物1の比較例1に記載の発明について検討すると、同比較例には、d-リモネン10重量部とジエチルフタレート5重量部を含む浴用剤香料組成物が記載されており、引用刊行物2に記載の事項、則ち、オレンジオイルとd-リモネンが同等であることを考慮すると、同比較例に記載の浴用香料組成物における精油成分と油性成分の割合は0.5となる。しかしながら、同比較例1に記載された香料組成物も比較例3のものと同様に発泡系弱酸性入浴剤として使用されるものであるから(段落番号【0031】)、「発泡系弱酸性」の浴用剤組成物を除く本件発明が同比較例に記載された発明であるということはできない。
次に、本件発明が容易になし得たか否かについて検討すると、上記比較例1に記載された発明において、「(A)成分:(B)成分」の割合、及び「(A)成分」の使用量が本件発明のそれに一致するとしても、それらはたまたまそうなったにすぎないというべきものであって、かかる具体例が本件発明の特定の構成及びその構成に伴う特定の効果を総括的に開示しているということはできないし、又、引用刊行物1及び引用刊行物2に記載の発明に、サフロール及びヒノキチオールの比重について記載するにすぎない引用刊行物3を組み合わせたとしても、本件発明を容易に想到し得たということはできない。
b.特許法第36条について
本件発明の「(A)成分」として記載されているクローブ油、シナモン油、丁子油、サフロール及びヒノキチオールが、いずれも比重が1.0以上であるという点については、これらの精油は削除されたので、この点の記載不備も解消した。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
又、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
浴用剤組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)アニス油、安息香油、イランイラン油、オレガノ油、オレンジ油、カミツレ油、カユプテ油、カラシ油、カルダモン油、クラリセージ油、コリアンダー油、サイプレス油、サビナ油、サンダルウッド油、シダーウッド油、シトロネラ油、ジャスミン油、ジュニパー油、樟脳油、ショウブ油、ジンジャー油、セイヨウネズ油、セージ油、セーボリー油、ゼラニウム油、タイム油、ターペンタイン油、タラゴン油、チミアン油、テレビン油、ナツメグ油、ニクズク油、乳香油、ニンニク油、ネロリ油、パイン油、バジル油、パセリ油、ハッカ油、バラ油、ヒソップ油、フェンネル油、プミリオマツ油、ブラックペッパー油、ベニロイヤル油、ヘノポジ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ヘンルウダ油、没薬油、マージョラム油、メリッサ油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズウッド油、ローズマリー油、カルバクロール、1-カルボン、カンファー、カンフェン、クマリン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ジャスモン、ジヒドロジャスモン、チモール、α-テレピネオール、ネロール、ピペリトン、メチルヘプテノン、メントール、リナロールから成る群から選択される少なくとも1種の、比重が1.0未満である精油及び/又は精油由来の成分と、(B)安息香酸ベンジル、イソオイゲノール、オイゲノール、クエン酸アセチルトリオクチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリブチル、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、酢酸シンナミル、サリチル酸アミル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸メチル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ベンジル、ジカルボキシパントテン酸エチル、シノキサート、チアントール、パラメチルアセトフェノン、フェニルエチルアルコール、フェニル酢酸エチル、フェノキシエタノール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ブチルベンジル、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ポリプロピレングリコール、マレイン酸ジメチル、メチルフェニルグリシッド酸エチルから成る群から選択される少なくとも1種の、比重が1.0以上の油性成分とを、前記(A)成分1に対して前記(B)成分を0.2〜5.0の比で配合し、浴湯に対する前記(A)成分の濃度が2.0ppm以上であることを特徴とする発泡系弱酸性を除く浴用剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は浴用剤組成物に関する。詳しくは精油及び/又は精油由来の成分(以下、単に「精油類」と示す)を浴湯中に油の状態で分散して存在させることにより、精油類の皮膚への付着量が増大することで精油類の有する皮膚表面への効果を高めることができ、経皮吸収による生体内への効果が期待できる浴用剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の浴用剤には、精油類を浴湯にとどめておくため、多量の界面活性剤を使用して精油類を浴湯中に乳化させたもの、または少量の界面活性剤を用いて浴湯表面に分散させたものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、界面活性剤を使用して乳化させた場合、精油類の皮膚への付着量が低下し、また、精油類を親水化させているため、水で容易に流れ落ちてしまい、精油類の有する鎮痛、肩こり、血行促進、抗炎症、抗菌等の皮膚表面への効果及び経皮吸収による生体内への効果が期待できなかった。
【0004】
また、浴湯表面で分散させた場合には、精油類は揮発性成分であるため、容易に空気中に揮散してしまい、精油類の有する皮膚表面への効果及び経皮吸収による生体内への効果が期待できないでいた。
【0005】
更に多量の界面活性剤を使用することは、人体への安全性の面及び排水による水質汚濁の面であまり好ましくない。
【0006】
そこで、精油類の皮膚への付着量が増大し、精油の有する皮膚表面への効果を高めることができ、経皮吸収による生体内への効果が期待できる浴用剤組成物の開発が望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる実状に鑑み本発明者らは鋭意研究を行った結果、精油類と比重が1.0以上の油性成分を配合することにより、精油類の有する皮膚表面への効果及び経皮吸収による生体内への効果が高まることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)精油及び/又は精油由来の成分と比重が1.0以上の油性成分を配合し、精油及び/又は精油由来の成分の比重が1.0未満であることを特徴とする浴用剤組成物。
(2)浴湯に対する精油及び/又は精油由来の成分の濃度が2.0ppm以上であることを特徴とする(1)記載の浴用剤組成物。
【0009】
以下(1)及び(2)記載の浴用剤組成物を本発明の浴用剤組成物という。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の浴用剤組成物に用いられる精油類のうち、精油とは、植物の枝葉、根茎、果実、つぼみ、樹脂などから水蒸気蒸留法、圧搾法、抽出法などにより分離・精製される水に難溶の揮発性油状物の総称であり、炭化水素類、アルコール類、酸類、カルボニル類、フェノール類、ラクトン類、エステル類などから構成されている。また、精油由来の成分とは、精油の構成成分であって、抽出や精留、晶析や簡単な化学処理によって得られる分離精製成分と、天然化合物や石油化学製品を原料として有機合成反応により得られる純合成成分とを示す。
【0011】
比重が1.0未満の精油類は、例えば、次のようなものが挙げられる。アニス油、安息香油、イランイラン油、オレガノ油、オレンジ油、カミツレ油、カユプテ油、カラシ油、カルダモン油、クラリセージ油、コリアンダー油、サイプレス油、サビナ油、サンダルウッド油、シダーウッド油、シトロネラ油、ジャスミン油、ジュニパー油、樟脳油、ショウブ油、ジンジャー油、セイヨウネズ油、セージ油、セーボリー油、ゼラニウム油、タイム油、ターペンタイン油、タラゴン油、チミアン油、テレビン油、ナツメグ油、ニクズク油、乳香油、ニンニク油、ネロリ油、パイン油、バジル油、パセリ油、ハッカ油、バラ油、ヒソップ油、フェンネル油、プミリオマツ油、ブラックペッパー油、ベニロイヤル油、ヘノポジ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ヘンルウダ油、没薬油、マージョラム油、メリッサ油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズウッド油、ローズマリー油、カルバクロール、1-カルボン、カンファー、カンフェン、クマリン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ジャスモン、ジヒドロジャスモン、チモール、α-テレピネオール、ネロール、ピペリトン、メチルヘプテノン、メントール、リナロール等が挙げられる。
【0012】
これらの精油類は1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0013】
また、本発明の浴用剤組成物に用いられる比重が1.0以上の油性成分としては、人体に対する安全性が高く、水に難溶又は不溶の物質であれば良い。例えば、安息香酸ベンジル、イソオイゲノール、オイゲノール、クエン酸アセチルトリオクチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリブチル、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、酢酸シンナミル、サリチル酸アミル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸メチル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ベンジル、ジカルボキシパントテン酸エチル、シノキサート、チアントール、パラメチルアセトフェノン、フェニルエチルアルコール、フェニル酢酸エチル、フェノキシエタノール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ブチルベンジル、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ポリプロピレングリコール、マレイン酸ジメチル、メチルフェニルグリシッド酸エチル、メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシクロシロキサン等が挙げられる。
【0014】
これらの比重が1.0以上の油性成分は1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0015】
なお、本発明の浴用剤組成物は、入浴時浴湯に投入して使用し、その際、比重が1.0以上の油性成分は精油類の種類によって選定され、精油類との相溶性が高く、その混合物の比重が1.0に近付くように、適宜配合比を設定すればよい。目安としては、精油類1に対して、比重が1.0以上の油性成分を0.1〜10.0の比で配合するのが好ましく、特に0.2〜5.0の比で配合するのが好ましい。
【0016】
精油類と比重が1.0以上の油性成分の混合物の、浴用剤全量に対する配合比は、精油類の種類によって異なるが、べたつき感の点から、浴湯中の濃度で100ppm以下、特に80ppm以下になるように配合するのが好ましい。
【0017】
また、効果の点から、精油類の浴湯中濃度が2ppm以上になるように配合するのが好ましい。2ppm未満だと精油類の期待される効果が得られず好ましくない。
【0018】
更に、本発明の浴用剤組成物には、上記必須成分の他に、必要に応じて、無機塩類、有機酸類、ビタミン類、蛋白分解酵素、生薬及びそのエキス、その他の成分を添加することができる。
【0019】
この他、本発明の浴用剤組成物に関する剤型については特に限定されるものではなく、精油類及び比重が1.0以上の油性成分が配合されていれば液剤だけではなく、粉剤、顆粒剤、錠剤等種々の剤型でも同様の効果が得られる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の浴用剤組成物は、精油類の皮膚への付着に優れ、精油類の有する皮膚表面への効果を高めることができ、経皮吸収による生体内への効果が期待できる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】

【0023】
表1に示す浴用剤組成物を製造し、下記方法により精油類の皮膚への付着量を測定した。また、比較例には乳濁タイプの浴用剤を用いた。
【0024】
▲1▼実施例1、比較例1の浴用剤を用いて被験者10名に前腕部分浴(41℃、5分間)を行ってもらった。浴後の残り湯中のメントール残存率を測定することによりメントールの減少率を算出し、その値を皮膚への付着量と仮定した(表2)。また、その時の清涼感についても評価した(表3)。
【0025】
尚、部分浴は0.1W/V%濃度にて実施し、液体クロマトグラフ法(示差屈折検出器)によりメントールの残存率測定を行った。
【0026】

【0027】

【0028】
5段階評価 5:清涼感をかなり強く感じた。
4: 〃 (やや)強く感じた。
3: 〃 感じた。
2: 〃 あまり感じなかった。
1: 〃 全く感じなかった。
【0029】
▲2▼参考例、比較例2の浴用剤30g(/200l)を用いて被験者15名に全身浴(41℃、5分間)を行ってもらい、しっとり感について比較評価した。
【0030】

【0031】
表2、表3および表4から、本発明の浴用剤組成物による精油類の有する皮膚表面への効果が高まることが確認された。また、そのことから経皮吸収による生体内への効果が期待できる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-09-29 
出願番号 特願平7-61612
審決分類 P 1 651・ 532- YA (A61K)
P 1 651・ 534- YA (A61K)
P 1 651・ 113- YA (A61K)
P 1 651・ 121- YA (A61K)
最終処分 決定却下  
前審関与審査官 竹林 則幸塚中 直子  
特許庁審判長 眞壽田 順啓
特許庁審判官 横尾 俊一
深津 弘
登録日 2000-07-07 
登録番号 特許第3085129号(P3085129)
権利者 株式会社ツムラ
発明の名称 浴用剤組成物  
代理人 本多 一郎  
代理人 本多 一郎  

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