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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B |
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管理番号 | 1090949 |
審判番号 | 不服2002-8653 |
総通号数 | 51 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-05-16 |
確定日 | 2004-01-21 |
事件の表示 | 平成10年特許願第301757号「地図表示装置」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 7月30日出願公開、特開平11-202760]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明の認定 本願は、平成2年4月17日に出願した特願平2-100621号に包含される発明を特許法44条1項の規定により平成10年10月9日に新たな特許出願としたものであって、出願後の平成14年6月14日付けで明細書についての手続補正がされたが、同手続補正は当審において却下され、この補正の却下の決定は確定した。 したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載のとおりの次のものと認める。 「地図を表示する地図表示装置において、 表示地図上の地点を指示する地点指示手段と、 指示された地点の位置と地点名を記憶する記憶手段と、 前記記憶手段に記憶された地点をリスト表示するリスト表示手段と、 リスト表示された地点の中から所望の地点を選択する選択手段と、 選択された地点が存在する地域の地図を表示する表示制御手段と、 を備えたことを特徴とする地図表示装置。」 第2 当審の判断 1.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用した特開平1-284889号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア〜クの記載が図示とともにある。 ア.「[産業上の利用分野] 本発明は、例えば、車載用ナビゲーション装置等で表示される地図上の目的地や施設等に関する詳細な関連情報の表示に有効な車載用情報表示装置に関する。」(2頁左上欄1〜5行) イ.「本発明は、車載表示器に表示された地図上の施設に関し、車両の乗員が選択した種類や階層に合致した情報を好適に表示可能な車載用情報表示装置の提供を目的とする。」(2頁左下欄3〜6行) ウ.「上記目的を達成するためになされた本発明は、第1図に例示するように、 地図情報を記憶する地図情報記憶手段M1と、 外部から伝達される表示情報を表示する表示手段M2と、 少なくとも、上記表示手段M2に表示される表示対象群の限定条件を示す限定指令、該限定条件に該当する表示対象群から選択した目標対象を示す目標指令および特定表示対象が最終目標対象に該当することを示す該当指令を出力する操作手段M3と、 上記地図情報記憶手段M1から入力した地図情報に、上記操作手段M3の出力した限定指令に応じた表示対象群の上記地図情報における地理的位置を表示する位置情報を重畳すると共に、該表示対象群のうち、外部から指令されないときは予め定められた所定条件に、一方、外部から指令されたときは該指令に、各々従って上記表示対象群から選択した特定表示対象をその他の表示対象と相互区別可能に表示する表示情報を上記表示手段M2に伝達する表示制御手段M4と、 上記表示手段M2により地図情報に重畳して表示された表示対象群から、上記操作手段M3の出力した目標指令に応じた目標対象の地理的位置に該当する表示対象を検索し、上記特定表示対象を上記目標対象に変更する指令を上記表示制御手段M4に出力する検索手段M5と、 上記地図情報記憶手段M1の記憶している地図情報に含まれる表示対象群に関連する詳細な関連情報を記憶する関連情報記憶手段M6と、 上記操作手段M3が該当指令を出力したときは、上記検索手段M5の検索した目標対象の地理的位置に基づいて決定された最終目標対象の関連情報を、上記関連情報記憶手段M6の記憶している関連情報から選択入力し、該関連情報を表示する表示情報を上記表示手段M2に伝達する選択表示手段M7と、 を備えたことを特徴とする車載用情報表示装置を要旨とするものである。」(2頁左下欄9行〜3頁左上欄7行) エ.「自動車用情報表示装置1は、乗員により操作されるスイッチ等を備えた操作部2、地図データや関連する詳細情報等を記録した記憶媒体から情報を再生する記憶情報再生機3、情報を画面に表示するディスプレイ4およびこれらを制御する電子制御装置(以下、単にECUと呼ぶ。)5から構成されている。」(3頁左下欄18行〜右下欄4行) オ.「記憶情報再生機3は、地図データおよび関連する詳細情報が記録されたコンパクトディスク(以下、単にCDと呼ぶ。)21を再生するコンパクトディスクプレーヤ22、地図データに関連する詳細情報のうち更新・追加される詳細情報が記録されたディジタルオーディオテープ23を再生するディジタルオーディオテープレコーダ24、同じく更新・追加される詳細情報が記録されたICカード25を再生するICカードリーダライタ26から構成されている。」(3頁右下欄17行〜4頁左上欄6行) カ.「最初のメニュースイッチ12操作時は、ディスプレイ4には、第4図に示すように、高位の表示情報階層である、「情報表示選択」メニュー画面が表示される。操作者が、カーソルキー11U,11Dによりメニューを選択すると、同図に示すように選択された項目の一部が点滅する。ここで、操作者がセットスイッチ14を操作すると、表示情報階層は高位に確定される。一方、操作者がリターンスイッチ15を操作すると、表示情報階層変更処理により、ディスプレイ4には、第5図に示すように、中位の表示情報階層である、「観光」メニュー画面が表示される。以下、操作者のスイッチ操作に応じて、同様に表示情報階層は中位に確定されるか、あるいは、第6図に示すように、表示情報階層変更処理により、下位の表示情報階層である、「公園」メニュー画面に変更される。このような表示情報階層変更処理の繰り返しにより、表示情報階層が確定すると、制御はステップ140からステップ150に進む。ステップ150では、確定した表示情報階層に基づいて、表示対象施設(例えば、公園等)を決定する処理が行われる。続くステップ155では、表示地図を決定する処理が行われる。この表示地図は、操作部2からマニュアル指示、もしくは、ナビゲーションコンピュータ7から送信される車両現在位置情報の何れかに従って決定される。・・・次にステップ165に進み、・・・地図データに従って、地図を画面に表示する制御信号をディスプレイ4に出力する処理が行われる。続くステップ170では、ステップ150で決定された表示対象施設の位置を、予め定められた各種記号等のシンボルを使用して、ステップ165で表示された地図を重畳させて表示する処理が行われる。」(4頁左下欄18行〜5頁左上欄14行) キ.「第7図に示すように、・・・地図区画A(a,b)が、ディスプレイ4に表示される(ステップ165)・・・さらに、対象施設位置{例えば、公園の位置}は、シンボル[○]で示され」(5頁右上欄2行〜左下欄3行) ク.「比較的普遍的な地図情報を読みだし専用のCD21に記録し、比較的頻繁に変化する詳細情報をディジタルオーディオテープ23およびICカード25に記録しているので、特に、詳細情報の更新が容易になる。」(7頁右上欄14〜18行) 2.引用例1記載の発明の認定 記載オ及び記載クによれば、記載ウの「関連情報記憶手段M6」は更新・追加可能である。 記載カ及び第4図〜第6図によれば、記載ウの「検索手段M5」は、表示情報階層変更処理を行えるものであり、各表示情報階層において、記載ウの「表示手段M2」には下位の表示情報階層の一覧表が表示され、最下位階層は特定の地点名称である(第6図には、公園名称が一覧表表示されている。)。 記載キの「シンボル[○]」は、記載ウの「特定表示対象をその他の表示対象と相互区別可能に表示する表示情報」の具体例であり(以下、この表示情報を「シンボル」ということにする。)、記載キ及び第7図からみて、このシンボルは特定表示対象の存在地上に、地図に重畳して表示されるものと認められる。 したがって、記載ア〜記載クを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次の発明(以下「引用例発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「地図情報を記憶する地図情報記憶手段M1と、 外部から伝達される表示情報を表示する表示手段M2と、 少なくとも、上記表示手段M2に表示される表示対象群の限定条件を示す限定指令、該限定条件に該当する表示対象群から選択した目標対象を示す目標指令および特定表示対象が最終目標対象に該当することを示す該当指令を出力する操作手段M3と、 上記地図情報記憶手段M1の記憶している地図情報に含まれる表示対象群に関連する詳細な関連情報を記憶するものであって、更新・追加可能な関連情報記憶手段M6と、 表示対象群から、上記操作手段M3の出力した目標指令に応じた目標対象の地理的位置に該当する表示対象を検索し、上記特定表示対象を上記目標対象に変更する指令を上記表示制御手段M4に出力する手段であって、表示情報階層変更処理を行える検索手段M5と、 上記地図情報記憶手段M1から入力した地図情報に、上記操作手段M3の出力した限定指令に応じた表示対象群の上記地図情報における地理的位置を表示する位置情報を重畳すると共に、上記表示対象群から選択した特定表示対象をその他の表示対象と相互区別可能に表示するシンボルを上記表示手段M2に伝達する表示制御手段M4とを備え、 前記操作手段M3、前記検索手段M5、前記表示制御手段M4及び前記表示手段M2により、表示情報階層変更処理の際、最下位層として地点名称の一覧表が表示され、そのうちの1つを選択できるよう構成されている車載用情報表示装置。」 3.本願発明と引用例発明1との一致点及び相違点の認定 引用例発明1の「車載用情報表示装置」は、「地図情報記憶手段M1から入力した地図情報に、上記操作手段M3の出力した限定指令に応じた表示対象群の上記地図情報における地理的位置を表示する位置情報を重畳する」のであるから、当然「地図を表示する地図表示装置」である。 引用例発明1の「表示対象群に関連する詳細な関連情報」には「地図情報における地理的位置を表示する位置情報」が含まれ、最下位層としては地点名称が記憶されているから、「関連情報記憶手段」は、本願発明の「地点の名称と地点名を記憶している記憶手段」に相当する。 引用例発明1においては、「表示情報階層変更処理の際、最下位層として地点名称の一覧表が表示され、そのうちの1つを選択でき」、一覧表表示は「リスト表示」ともいえるから、引用例発明1は本願発明の「前記記憶手段に記憶された地点をリスト表示するリスト表示手段」及び「リスト表示された地点の中から所望の地点を選択する選択手段」を有するといえる。 したがって、本願発明と引用例発明1とは、 「地図を表示する地図表示装置において、 地点の位置と地点名を記憶する記憶手段と、 前記記憶手段に記憶された地点をリスト表示するリスト表示手段と、 リスト表示された地点の中から所望の地点を選択する選択手段と、 を備えた地図表示装置。」 である点で一致し、以下の各点で相違する。 〈相違点1〉本願発明が「表示地図上の地点を指示する地点指示手段」を備え、「記憶手段」には「指示された地点の位置と地点名を記憶する」のに対し、引用例発明1の「記憶手段」は更新・追加可能であるけれども、引用例発明1は「地点指示手段」を備えるとはいえないため、「記憶手段」に「指示された地点の位置と地点名を記憶する」ともいえない点。 〈相違点2〉本願発明が「選択された地点が存在する地域の地図を表示する表示制御手段」を備えているのに対し、引用例発明1が同手段を備えているとはいえない点。 4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断 (1)相違点1について 原査定の拒絶の理由に引用した特開昭62-293117号公報(以下「引用例2」という。)には、「この発明は、車載用ナビゲーション装置において、任意の場所と名称をユーザが記憶させて表示できるようにした走行情報表示装置に関する。」(1頁右下欄8〜11行)、「車両の車庫、ガレージなどよく駐車あるいは通過する場所を記憶させておけば、出発時の現在地点の設定や目的地の設定が容易に行える走行情報表示装置を得ることを目的とする。」(2頁左上欄15〜19行)、「この発明に係る走行情報表示装置は、ユーザが任意の地点と名称などの情報を入力するためのスイッチと、特定の地点情報を記憶する地点メモリと、この地点情報を読み取って表示手段に表示させる制御回路とを設けたものである。」(2頁右上欄1〜5行)、及び「表示器4に地図を表示した時点で現在位置マーカMは表示器4の画面のほぼ中央にあらわれる。・・・第4図において、道路b上の点B2(αB2,βB2)を出発点とする場合、スイッチ62を操作して現在位置マーカMをM’まで移動させ、次にスイッチ64を操作して現在位置マーカをB2に一致させることにより、現在位置P(α,β)の座標をα=αB2,β=βB2と設定できる。・・・スイッチ10を使用してその地点の名称(「自宅」「車庫」「山本家」「会社」など)と、・・・地点メモリ11に記憶させる。」(3頁左下欄11行〜右下欄13行)との各記載があり、これらの記載によれば、引用例2記載の「走行情報表示装置」は「地図表示装置」であり、本願発明にいう「表示地図上の地点を指示する地点指示手段」及び「指示された地点の位置と地点名を記憶する記憶手段」、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成を備えたものと認めることができる。 また、相違点1に係る本願発明の構成を備えた地図表示装置は、引用例2以外にも、原査定で引用した特開平2-115717号公報(2頁左上欄7〜15行の記載を参照。)にも記載されているから、本願出願当時の周知技術と認められる。 他方、引用例発明1が「地点指示手段」に相当する構成を備えるとはいえないことは前示のとおりであるが、引用例発明1の「関連情報記憶手段」は更新・追加可能であり、それも頻繁に更新・追加されることを前提としたものである(引用例1の記載ク参照。)。そして、記憶内容を更新・追加するに当たっては、引用例2に「よく駐車あるいは通過する場所を記憶させておけば、出発時の現在地点の設定や目的地の設定が容易に行える」とあるように、ユーザ毎に異なる地点を追加することが有用であることは、引用例2の同記載から、あるいは同記載によるまでもなく、当業者には自明なことである。 そうであれば、引用例発明1の「関連情報記憶手段」の記憶内容を更新・追加するために、引用例2記載の構成(又は周知技術)を採用して、相違点1に係る本願発明の構成をなすことに困難性がないことは明らかである。 なお請求人は、「本願の請求項1記載の地図装置にあっては、使用者が表示されている地図上で指定した地点についてのみ、その地点の地点情報を一覧表として表示するため、不必要な地点や重要度の低い地点の情報が一覧表に含まれることがないのである。」(平成14年8月8日付け審判請求書の手続補正書4頁10〜13行)と主張するが、本願発明の「記憶手段」には使用者自らが入力した地点情報が記憶されていることは認められるものの、それ以外の地点情報が記憶されていないことや、「地点情報の一覧表」に「不必要な地点や重要度の低い地点の情報」が含まれないことは、本願発明の要件とされていないことは、請求項1の記載から明らかである。したがって、請求人の上記主張は採用できない。 (2)相違点2について 引用例1の記載カによれば、引用例発明1の実施例では、表示対象施設決定処理(ステップ150)の後に表示地図決定処理(ステップ155)が行われており、表示地図は、操作部2からマニュアル指示、もしくは、ナビゲーションコンピュータ7から送信される車両現在位置情報の何れかに従って決定されている。 ところで、「表示対象施設の位置を、予め定められた各種記号等のシンボルを使用して、ステップ165で表示された地図を重畳させて表示する」(記載カ)ためには、表示対象施設が「表示された地図」内になければならないことは自明である。 そして、表示対象施設決定処理において、最下位階層、すなわち特定地点が選択決定された場合には、車両現在位置情報に従って決定された地図内に同特定地点が含まれないことが当然あり得る。 そうであれば、表示対象施設の位置を必ず地図上に表示するために、その地図として表示対象施設に対応する地図を選択決定すること、すなわち、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって想到容易といわざるを得ない。 そのことは、原査定で引用した実開平1-122642号公報(以下「周知例」という。)に、「地図データが格納されているデータファイルと、電話番号を入力するための入力部と、・・・前記データファイルを検索して前記電話番号に対応した地図データを読出して、これを表示装置に表示させる検索部とを備えたことを特徴とする情報提供装置。」(実用新案登録請求の範囲)と記載があり、ここに記載の電話番号は、地点の特定という意味で、本願発明の地点情報(引用例発明1の「関連情報」)に相当するから、結局周知例には相違点2に係る本願発明の構成が記載されていることからも肯けることである。 (3)本願発明の進歩性の判断 相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成をなすことは、いずれも当業者にとって想到容易であり、これら相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は、引用例発明1及び引用例2記載の技術(若しくは周知技術)に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第3 むすび 以上のとおり、本願発明が特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-11-11 |
結審通知日 | 2003-11-18 |
審決日 | 2003-12-01 |
出願番号 | 特願平10-301757 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 榎本 吉孝 |
特許庁審判長 |
砂川 克 |
特許庁審判官 |
藤井 靖子 津田 俊明 |
発明の名称 | 地図表示装置 |