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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1091119
審判番号 不服2002-2829  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-10-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-20 
確定日 2004-01-26 
事件の表示 平成 6年特許願第100761号「印刷装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年10月24日出願公開、特開平 7-276750]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成6年4月14日の出願であって、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年11月10日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】に記載のとおりの次のものと認める。
「印刷前にて印刷用紙が給紙部にセットされた状態のままで該用紙の用紙サイズを検知する機構を具備しない印刷部と、上記印刷部を制御する印刷制御部とを有する印刷装置であって、
上記印刷制御部は、
外部装置から受信したデータを印刷するときに、上記印刷部に印刷開始を指示し上記印刷部から用紙を搬送させて上記受信したデータの第1頁目の印刷を行わせる指示手段と;
上記指示手段が印刷開始を指示してから、上記印刷部から搬送された上記第1頁目の用紙の後端検出の通知を受けるまでの時間を計測する計測手段と;
上記計測手段が計測した時間と、所定の用紙搬送時間とに応じて、上記第1頁目の用紙サイズを算出する用紙サイズ算出手段と;
上記用紙サイズ算出手段が算出した算出用紙サイズと、上記外部装置から指定された指定用紙サイズとを比較するサイズ比較手段と;
両サイズが互いに一致していることを、上記サイズ比較手段が判断すれば、上記印刷部から引き続き用紙を搬送して上記受信したデータの第2頁以降の印刷を行い、一方、上記比較において両サイズが互いに一致していないことを、上記サイズ比較手段が判断すれば、用紙サイズが不一致であることを、外部装置の表示装置および/または操作パネルの表示器に表示させ、オペレータによる用紙交換後、上記第1頁目を再度印刷できるようにする制御手段と;
を有することを特徴とする印刷装置。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-305742号公報(以下「引用例」という。)には、従来技術の説明として以下のア〜オの記載がある。
ア.「従来より、この種の画像形成装置として、記録媒体のサイズをカセットに設けたピンの位置等を認識することにより予め検知する手段を有する装置と、このような検知手段を具備していない装置とが提供されている。」(段落【0002】)
イ.「記録媒体のサイズを予め検知できない画像形成装置においては、記録媒体の搬送方向の長さを測定し、コントローラあるいはホストコンピュータなどから送られた記録媒体サイズの時間長(最大値TMAX、最小値TMIN)と測定値(T)とを比較して、T<TMINあるいはTMAX<Tである場合には、記録媒体のサイズが不一致であると判断して、エラーメッセージを表示していた。従って、この場合には、再び印刷手順を初めから行なわなければならなかった。」(段落【0003】)
ウ.「カウンタ(A)用の設定値t0に、コントローラ部あるいはホストコンピュータからの指定サイズに応じたカウント値A・・・を設定する(S200)。そして、コントローラ部から印刷要求が入ると、1枚目の給紙動作を開始し(S201)、カウンタ(A)の計時を開始する(S202)。」(段落【0005】)
エ.「1枚目の記録媒体の後端が給紙センサで検知されると、上記カウンタ(A)をストップし、その時のカウンタ値CAを設定値t1に格納する(S206)。そして、この設定値t1の値が、上述の最大値TMAXより大きかったり、最小値TMINより小さかった場合には(S207、S208)、エラーとしての処理、例えばエラーメッセージの表示と印刷再送要求を行なう(S209、S210S)。」(段落【0006】)
オ.「設定値t1の値が最大値TMAXと最小値TMINの範囲に入っている場合には、2枚目以降の給紙を続行する(211、S212……)。」(段落【0007】)

引用例には、さらに、従来技術の課題を解決した発明として以下のカ及びキの記載もある。
カ.「MPU201は、レーザビームプリンタの制御を行なうためのCPU制御プログラムを収納してあるROMと、制御のための各制御データを書き込み、読み出すRAM202等を有して構成されている。ここで、RAM202には、記録媒体のサイズを測定するための値t0、t1が設定される。」(段落【0015】)
キ.「コントローラ部208は、レーザビームプリンタ内でエンジンを制御するためのものであり、インタフェース信号ライン209を通じてエンジンを制御し、画像信号を出力することにより印字動作を行なわせる。また、コントローラ部208は、インタフェース211を介して表示部に各種表示を行うとともに、ホストインタフェース213を介してホストコンピュータ212との間で各種情報をやりとりする。」(段落【0017】)

2.引用例記載の発明の認定
引用例の記載カ,キは従来技術についての記載ではないけれども、エンジン,MPU及びコントローラ部を有することは、従来技術の画像形成装置にも共通することは自明であり、記載ウ、エの「カウンタ(A)」はMPUに存し、記載ウの「設定値t0」(最大値TMAX及び最小値TMIN)及び記載エの「設定値t1」はMPU内に格納されるものと認められる。
したがって、引用例の記載ア〜キを含む引用例の全記載及び図示によれば、引用例に従来技術として記載されている画像形成装置は次のような発明(以下「引用例発明」という。)である。
「記録媒体のサイズをカセットに設けたピンの位置等を認識することにより予め検知する手段を具備しない画像形成装置であり、給紙センサ,エンジン,MPU及びコントローラ部を有するものであって、
前記MPUはカウンタを有し、
ホストコンピュータから送られた記録媒体サイズの時間長を、最大値TMAX及び最小値TMINとして前記MPU内に格納し、
前記コントローラ部から印刷要求が入ると、1枚目の給紙動作を開始し前記カウンタの計時を開始し、1枚目の記録媒体の後端が前記給紙センサで検知されると、前記カウンタをストップし、その時のカウンタ値を設定値t1として前記MPU内に格納し、
設定値t1が最大値TMAXと最小値TMINの範囲に入っているかどうかを判断し、入っている場合には、2枚目以降の給紙を続行し、入っていない場合には、エラーメッセージの表示と印刷再送要求を行なうような画像形成装置。」

3.本願発明と引用例発明との一致点及び相違点の認定
引用例発明の「記録媒体」、「画像形成装置」、「エンジン」、「ホストコンピュータ」、「印刷要求」、「給紙動作を開始」及び「1枚目」は、本願発明の「用紙」、「印刷装置」、「印刷部」、「外部装置」、「印刷開始を指示」、「用紙を搬送」及び「第1頁目」にそれぞれ相当する。
引用例発明は、「記録媒体のサイズをカセットに設けたピンの位置等を認識することにより予め検知する手段を具備しない」から、その「エンジン」は「印刷前にて印刷用紙が給紙部にセットされた状態のままで該用紙の用紙サイズを検知する機構を具備しない」といえる。
引用例発明の「設定値t1」は、1枚目の給紙動作を開始してから1枚目の後端が前記検知されるまでの時間に相当するカウント値であるから、本願発明の「上記指示手段が印刷開始を指示してから、上記印刷部から搬送された上記第1頁目の用紙の後端検出の通知を受けるまでの時間」に相当する(当然引用例発明は、本願発明の「指示手段」を具備する。)ものであり、したがって引用例発明の「カウンタ」は本願発明の「計測手段」に相当する。
引用例発明においては、ホストコンピュータから送られた記録媒体サイズの時間長を格納しているところ、これは記録媒体の搬送速度に基づいて、記録媒体サイズを時間に変換していることが明らかである。他方、本願発明の「所定の用紙搬送時間とに応じて」とは、用紙サイズと搬送時間の関係が所定の関係にあることをいうものと解される。すなわち、「上記計測手段が計測した時間と、所定の用紙搬送時間とに応じて、・・・用紙サイズを算出」とは、具体的には「計測した時間」に用紙搬送速度を乗じたものとして、用紙サイズを算出することと解される。そうであれば、引用例発明において「設定値t1が最大値TMAXと最小値TMINの範囲に入っているかどうかを判断」することと、本願発明において「上記用紙サイズ算出手段が算出した算出用紙サイズと、上記外部装置から指定された指定用紙サイズとを比較する」ことは、比較に当たっての物理量が「時間」であるのか「サイズ」であるのかの相違はあるものの、外部装置(ホストコンピュータ)から指定された用紙(記録媒体)サイズと検出した用紙(記録媒体)サイズが一致しているかどうかの比較を行っている点では一致し、当然引用例発明もそのための「サイズ比較手段」を備えていると認定できる。すなわち、引用例発明における「設定値t1が最大値TMAXと最小値TMINの範囲に入っている」及び「入っていない」との判断と、本願発明の「両サイズが互いに一致している」及び「両サイズが互いに一致していない」との判断には相違がない。さらに、引用例発明において「2枚目以降の給紙を続行」することと、本願発明において「上記受信したデータの第2頁以降の印刷を行」うことにも相違がない。
引用例発明の「コントローラ部」は、エンジンに対して印刷要求をする等エンジンを制御するものであり、引用例発明の「MPU」は、ホストコンピュータから指定された記録媒体サイズと検出した記録媒体サイズが一致しているかどうかの比較を行うに必要な構成を備えたものであるから、これら「コントローラ部」と「MPU」を併せたものが本願発明の「印刷制御部」に相当する。
引用例発明が、ホストコンピュータから受信したデータを印刷すること、及びそのときに、ホストコンピュータから指定された記録媒体サイズと検出した記録媒体サイズが一致しているかどうかの比較を行うことはいうまでもない。
さらに、引用例発明において、「設定値t1が最大値TMAXと最小値TMINの範囲に入っているかどうかを判断し、入っている場合には、2枚目以降の給紙を続行し、入っていない場合には、エラーメッセージの表示と印刷再送要求を行なう」以上、引用例発明は、そのような動作を行うための制御手段を有するといえる。
したがって、本願発明と引用例発明とは、
「印刷前にて印刷用紙が給紙部にセットされた状態のままで該用紙の用紙サイズを検知する機構を具備しない印刷部と、上記印刷部を制御する印刷制御部とを有する印刷装置であって、
上記印刷制御部は、
外部装置から受信したデータを印刷するときに、上記印刷部に印刷開始を指示し上記印刷部から用紙を搬送させて上記受信したデータの第1頁目の印刷を行わせる指示手段と;
上記指示手段が印刷開始を指示してから、上記印刷部から搬送された上記第1頁目の用紙の後端検出の通知を受けるまでの時間を計測する計測手段と;
上記計測値による用紙サイズと上記外部装置から指定された指定用紙サイズが一致するかどうかをサイズ比較手段と;
両サイズが互いに一致していることを、上記サイズ比較手段が判断すれば、上記印刷部から引き続き用紙を搬送して上記受信したデータの第2頁以降の印刷を行い、一方、上記比較において両サイズが互いに一致していないことを、上記サイズ比較手段が判断すれば、用紙サイズが不一致であることを、表示させるようにする制御手段と;
を有する印刷装置。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉サイズ比較につき、本願発明が「上記計測手段が計測した時間と、所定の用紙搬送時間とに応じて、上記第1頁目の用紙サイズを算出する用紙サイズ算出手段」を備え、「上記用紙サイズ算出手段が算出した算出用紙サイズと、上記外部装置から指定された指定用紙サイズとを比較する」のに対し、引用例発明では「ホストコンピュータから送られた記録媒体サイズの時間長を、最大値TMAX及び最小値TMINとして前記MPU内に格納し」たものと、1枚目の記録媒体の後端が前記給紙センサで検知された時のカウンタ値、すなわち、計測した時間そのものとを比較しており、そのため「用紙サイズ算出手段」を備えるとはいえない点。
〈相違点2〉両サイズが互いに一致していないことを、上記サイズ比較手段が判断した場合に、本願発明では「用紙サイズが不一致であることを、外部装置の表示装置および/または操作パネルの表示器に表示させ、オペレータによる用紙交換後、上記第1頁目を再度印刷できるようにする」のに対し、引用例発明では、「エラーメッセージの表示と印刷再送要求を行なう」点。

4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
用紙サイズと「計測手段が計測した時間」が比例関係にあること、及びその比例係数が用紙搬送速度であることは自明である。そして、用紙サイズ及び「計測手段が計測した時間」といった異なる次元の2つの物理量を比較するの当たり、それら物理量が比例関係にある場合に、比例係数を用いてどちらか一方の物理量に揃えることは常套手段である。
ここで、本願発明では用紙サイズに揃え、引用例発明では時間に揃えているのであるが、どちらに揃えようと自由であり、任意設計的事項というよりない。そして、用紙サイズに揃える場合には、「上記計測手段が計測した時間と、所定の用紙搬送時間とに応じて、上記第1頁目の用紙サイズを算出する用紙サイズ算出手段」を備える必要があることもいうまでもない。ちなみに、引用例に明示的記載はないけれども、引用例発明では、時間に揃える関係上「ホストコンピュータから送られた記録媒体サイズ」を「所定の用紙搬送時間とに応じて」「時間長」に変換していると認められ(ただし、その変換が画像形成装置によって行われているのか、それともホストコンピュータによって行われているのかまでは明らかではない。)るから、結局「所定の用紙搬送時間とに応じて」いずれかの物理量に揃える手段を備える点で、本質的相違はなく、相違点1に係る本願発明の構成は、用紙サイズに揃えるという選択をした結果必然的に必要となった構成にすぎない。
以上のとおり、相違点1に係る本願発明の構成は設計的事項にすぎない。

(2)相違点2について
引用例発明において、エラーメッセージの表示箇所がどこであるか明らかないけれども、記載キの「表示部」は通常操作パネルに設けられるものであるから、「用紙サイズが不一致であることを、外部装置の表示装置および/または操作パネルの表示器に表示させ」る点では、本願発明と実質的に異ならない。なお、「外部装置の表示装置および/または操作パネルの表示器に表示させ」との構成は、外部装置の表示装置に表示させることを要件とするものではないが、仮にそのことを要件とするとしても、本願出願当時には、印刷装置で発生したエラーを外部装置(ホストコンピュータ)に送信し、外部装置(ホストコンピュータ)の表示装置に表示することは周知であるから、進歩性を左右するほどのものではない。
次に、「オペレータによる用紙交換後、上記第1頁目を再度印刷できるようにする」との構成について検討するに、引用例発明において両サイズが互いに一致していない場合には、ホストコンピュータによって指定された用紙(記録媒体)は印刷装置(画像形成装置)にセットされていないのであるから、オペレータによる用紙交換が行われない限り、ホストコンピュータによって指定された用紙に印刷できないことは明らかであり、用紙交換がされない状態で印刷再送要求を行なったのでは、再び両サイズが互いに一致していない旨のエラーメッセージが表示されることは明らかである。また、引用例発明では、指定の用紙には、第1頁目の印刷がされていないのであるから、印刷再送要求に当たっては、第1頁目から印刷を行うよう要求することは必然である。そうであれば、引用例発明において、両サイズが互いに一致していない旨のエラーメッセージを表示した場合に、「オペレータによる用紙交換後、上記第1頁目を再度印刷できるようにする」との相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、引用例発明を実施するに当たっての軽微な設計的事項というよりない。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成全体もみても、軽微な設計的事項といえる。

(3)本願発明の進歩性の判断
相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、いずれも設計的事項であり、これら相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果をみとめることもできない。
したがって、本願発明は引用例発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-12-03 
結審通知日 2003-12-05 
審決日 2003-12-16 
出願番号 特願平6-100761
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 正樹  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 津田 俊明
清水 康司
発明の名称 印刷装置  
代理人 川久保 新一  

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