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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1091314 |
審判番号 | 不服2001-2832 |
総通号数 | 51 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-10-05 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-02-26 |
確定日 | 2004-02-04 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 33493号「少なくとも一つの天然のまたは組換えクモの糸タンパク質または類似体を含む化粧用または皮膚科用組成物」拒絶査定に対する審判事件[平成11年10月 5日出願公開、特開平11-269061]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、1999年2月10日(優先権主張1998年2月11日、フランス)を出願日とする出願であって、本願請求項1〜12に係る発明は、平成12年3月17日付け手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その請求項1〜12に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明は以下のとおりである。 【請求項1】以下の(a)〜(c)から選択される天然または組換えのクモの糸タンパク質: (a)配列番号1〜3の配列の群から選択されたいずれか一つのペプチド配列に相当する天然のクモの糸タンパク質; (b)以下の配列(I)〜(IV): [(XGG)w(XGA)(GXG)x(AGA)y(G)zAG]p (I) Xはチロシンまたはグルタミンに相当する Gはグリシンに相当する Aはアラニンに相当する wは2または3に等しい整数である xは1から3の整数である yは5から7の整数である zは1または2に等しい整数である pは該タンパク質の分子量が10から400kDaの間であるよう な整数である; [(GPG2YGPGQ2)a(X')2S(A)b]p (II) X'はアミノ酸配列GPSまたはGPGに相当する Gはグリシンに相当する Aはアラニンに相当する Pはプロリンに相当する Yはチロシンに相当する Qはグルタミンに相当する Sはセリンに相当する aは2または3に等しい bは7から10の整数である pは該タンパク質の分子量が10から400kDaの間であるよう な整数である; [(GR)(GA)l(A)m(GGX")n(GA)l(A)m]p (III) [(GGX")n(GA)m(A)l]p (IV) X"はチロシン、グルタミンまたはアラニンに相当する Gはグリシンに相当する Aはアラニンに相当する Rはアルギニンに相当する lは1から6の整数である mは0から4の整数である nは1から4の範囲の整数である pは該タンパク質の分子量が10から400kDaの間であるよう な整数である; の群から選択された少なくとも一つのアミノ酸繰り返し単位を含む組換えクモの糸タンパク質; (c)配列番号4〜11の配列の群から選択された少なくとも一つのペプチド配列に相当する天然のクモの糸タンパク質の類似体; の少なくとも一つを含むことを特徴とする化粧用または皮膚科用組成物。 2.原審の拒絶理由の概要 原審の拒絶の理由は、請求項1〜12に記載の「組換えクモの糸タンパク質」について、具体的にどのような配列のタンパク質を使用し、それによりどのような効果が得られたのかは、本願明細書の発明の詳細な説明の記載から明らかではなく、本願の明細書には、請求項1〜12に係る発明について、当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分な記載がなされていないから、特許法第36条4項に規定する要件を満たしていないというものである。 3.当審の判断 本願発明は、明細書段落【0005】に「・・クモの糸タンパク質が、特に保湿効果または可塑効果の増大において、化粧用または皮膚科用組成物に予期せぬ性質を与えることが発見された。クモの糸タンパク質はさらに、優れた耐水性皮膜形成剤として機能し、特に低表面密度を有する。」との記載に見られるとおり、クモの糸タンパク質の新たな属性の発見に基づきこれを化粧用または皮膚科用の組成物とする用途発明に関するものである。 しかしながら、本願明細書には、クモの糸タンパク質が上記の予期せぬ性質を有することを客観的に確認するに足りる具体的資料も、また、それが化粧用、皮膚科用の用途に適していることの具体的裏付けもなされていない。 すなわち、段落【0089】〜【0093】の実施例1〜5には、クモの糸タンパク質を含むシャンプー、コンデイショナー組成物、ヘアケアローション、ネールマニキュア、ファンデーションの配合例の記載はあるものの、具体的に請求項1の(a)〜(c)のどの配列のタンパク質を使用したのかの記載がない上、単に化粧用組成物の配合割合を示すのみで、実際に使用したときにこれらの組成物が明細書に記載の「保湿効果又は可塑効果の増大、耐水性被膜形成」という性質を発揮することを実証するものでもない。また、皮膚科用の用途の組成物については配合例の記載も欠いている。 明細書の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載しなければならない(特許法施行規則第24条の2参照)ところ、本願明細書には特許請求の範囲に記載の(a)〜(c)のクモの糸タンパク質自体の性質やこれを化粧用、皮膚科用として使用することの技術的意義が上記のとおり、明確に記載されていないのであるから、本願発明についてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載がなされているということはできない。 4.結論 以上のとおりであるから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する |
審理終結日 | 2003-09-04 |
結審通知日 | 2003-09-09 |
審決日 | 2003-09-24 |
出願番号 | 特願平11-33493 |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 胡田 尚則、井上 典之 |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
横尾 俊一 小柳 正之 |
発明の名称 | 少なくとも一つの天然のまたは組換えクモの糸タンパク質または類似体を含む化粧用または皮膚科用組成物 |
代理人 | 志賀 正武 |