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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06K
管理番号 1091357
審判番号 不服2002-17186  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-05 
確定日 2004-02-05 
事件の表示 平成 8年特許願第338795号「ICカードリーダ及びICカードの停止位置決め方法」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 6月30日出願公開、特開平10-177625]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 (手続の経緯、本件発明)
本願は、平成8年12月18日の出願であって、その請求項1乃至4に係るそれぞれの発明は、平成14年10月2日付け、平成15年9月24日付けの各手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、次のとおりのものである。
「ICカードの走行方向側端面位置を検出するカード位置検出センサからの出力によりカード送り用モータを停止させて前記ICカードの走行を停止させ、前記ICカードに設けた接点端子にIC接点を接触させるようにしたICカードリーダにおいて、前記カード位置検出センサを前記ICカードの走行停止位置よりも手前側に配置すると共に前記カード位置検出センサから前記ICカードの接点端子とIC接点との接触位置間隔を予め前記ICカードリーダ毎に実測して求め、前記接点端子とIC接点との接触位置間隔の中間値をICカードリーダ毎の固有データとして記憶するIC接点位置メモリを備え、前記カード位置検出センサからの出力を検出したときに前記IC接点位置メモリに格納された前記ICカードリーダ毎の固有データに基づいて前記カード送り用モータを停止させることを特徴とするICカードリーダ。」
(刊行物記載の発明)
これに対し、当審が平成15年7月25日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願出願前に頒布された刊行物である特開平1-140469号公報(以下、刊行物1という。)には、磁気ストライプ付媒体の読み取り書き込み装置に関する発明が記載されており、「第5図は、本発明の第2の実施例を示すブロック図である。上記第1の実施例との相違は、第1の実施例では媒体20を固定し、磁気ヘッド30を移動させていたものを、本第2の実施例では磁気ヘッド30を固定して媒体20を移動させるようにしたもので、媒体20が第1の実施例における遮蔽板31と同一の作用をなすようになっている。また、媒体20と磁気ヘッド30の移動方向が逆になっている他は、構成、作用、効果とも第1の実施例と同一である。」(第5頁左下欄第4〜13行)、「第1図は、本発明の第1の実施例を示すブロック図である。・・・磁気ヘッド30は図面に向かって左右に移動させる。5は移動基準位置検出センサ・・・で、・・・磁気ヘッド30が移動基準位置にあることを検出する。・・・11はパルス発生器・・・。12はカウンタで、・・・パルス発生器11の出力パルスをカウントする。13は標準モードとテストモードとを切替えるための切替スイッチ・・・。14は制御部で、切替スイッチ13によりテストモードに設定されている時に、磁気ストライプの予め定められた位置に標準データを書き込んである標準媒体21から磁気ヘッド30により読み取られた標準データを、アンプ7,復調器8を介して検出した時に、磁気ヘッド30の移動基準位置からの移動距離を検出し、この検出値と予め記憶してある標準媒体21の標準データ書き込み標準位置とを比較して書き込み位置の補正値を算出し、補正値を不揮発性のメモリ15・・・格納する。また、標準モード時で書き込み動作時には、メモリ15から書き込み位置の補正値を読み出し、この補正値に基づいて書き込み開始位置の補正を行なう。」(第3頁右上欄第6行〜右下欄第7行。・・・は文章省略箇所を示す。)と説明されている。また、第1の実施例の動作フローチャートが第3図、第4図に示されている。
(対比、検討)
そこで、本件発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、
(1)上記刊行物1記載の発明においては、媒体が移動基準位置検出センサにより検出されるとモータを一旦停止させ、その後、媒体をモータにより逆方向に所定の位置まで移動するようにしているところ、本件発明が、カードの走行方向側端面位置を検出するカード位置検出センサからの出力によりカード送り用モータを停止され、その後、カードを所定位置まで送るとする点と実質的な差異はない。
(2)上記刊行物1記載の発明においては、磁気ヘッドの位置をすぎた位置に移動基準位置検出センサを配置しており、本件発明が、カード位置検出センサを走行停止位置よりも手前側に配置する点と実質的な差異はない。
(3)上記刊行物1記載の発明においては、テストモードにより予め、移動基準位置検出センサと媒体の読み出し/書き込み位置との間隔を媒体の読み取り書き込み装置毎に実測して求め、予め記憶された標準値との差、すなわち補正値をメモリに記憶するようにしているところ、標準値、補正値を記憶するメモリを備えるとする点は、本件発明が、カード位置検出センサからカードの読み取り/書き込み位置(ICカードの接点端子とIC接点との接触位置)間隔をカードリーダ毎に予め実測して求め、カードリーダ毎の固有値として記憶するメモリを備えるとする点と実質的な差異はない。
ただし、括弧内はICカードリーダが通常備えるところの構成要件であるところ、上記刊行物1の発明は磁気ストライプ付媒体の読み取り書き込み装置であるため、そのような構成は備えておらず、したがって、括弧内は、本件発明がICカードリーダであり、上記刊行物1のものが磁気ストライプ付媒体の読み取り書き込み装置であること起因するところの相違点である。
また、上記刊行物1記載の発明においては、標準値と補正値とが記憶されているのに対し、本件発明においては、刊行物1の記載要件で表現すると、標準値と補正値との和が固有値として記憶されるとしており、この点も本件発明と上記刊行物1記載の発明との相違点である。
(4)上記刊行物1記載の発明においては、媒体を、移動検出位置検出センサの位置から逆方向に、メモリに記憶した補正値と標準値との和の分、移動させた位置から書き込み、読み出しを開始するようにしており、本件発明が、カード位置検出センサからの出力を検出したときにメモリに格納されたカードリーダ毎の固有データに基づいてカード送り用モータを所定の位置まで移動させる点と実質的な差異はない。
以上のとおりであるから、本件発明と上記刊行物1記載の発明との第1の相違点は、本件発明が、ICカードに設けた接点端子にIC接点を接触させるようにしたICカードリーダであり、ICカードに設けた接点端子にIC接点を接触させる位置でICカードを停止させるようにしているのに対し、上記刊行物1記載の発明が、磁気ストライプ付媒体の読み取り書き込み装置であり、所定の位置から書き込み、読し出しを開始するようにしている点にある。
しかるに、ICカードに設けた接点端子にIC接点を接触させるようにしたICカードリーダといったものは、本件出願前周知のものであり、また、媒体を所定の位置に位置づける上記刊行物1の搬送技術をICカードリーダにおける搬送技術として適用することに阻害要因はないから、上記相違点は、上記刊行物1および周知技術に基づき当業者が容易になし得ることにすぎない。
本件発明と上記刊行物1記載の発明との第2の相違点は、本件発明が、接点端子とIC接触位置間隔の中間値を固有データとして記憶し、この固有値を接点端子とIC接触位置間隔の中間値の位置までのICカードの移動距離としているのに対し、上記刊行物1記載の発明においては、補正値を記憶し、その補正値と標準値の和を所定の位置までの移動距離としている点にある。
しかるに、ICカードの移動距離として、接点端子とIC接触位置間隔の中間の位置を含む複数の位置があるという場合に、その位置のどの位置までICカードを移動させるようにするかは、当業者が適宜なし得ることにすぎず、本件発明のように、固有値を中間値とする点に格別高度の創作性はない。
また、上記刊行物1記載の発明において、移動距離である補正値と標準値の和を記憶するようにすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
(まとめ)
したがって、本件発明は、上記上記刊行物1記載の発明に基づき、周知技術を参酌して、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-11-21 
結審通知日 2003-11-26 
審決日 2003-12-17 
出願番号 特願平8-338795
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 川名 幹夫
特許庁審判官 橋本 正弘
吉見 信明
発明の名称 ICカードリーダ及びICカードの停止位置決め方法  
代理人 村瀬 一美  

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