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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C30B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C30B
管理番号 1091390
異議申立番号 異議2001-73078  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-03-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-11-14 
確定日 2003-11-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3165685号「炭化珪素単結晶の昇華成長」の請求項1ないし15に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3165685号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 
理由 1.本件の経緯
本件特許第3165685号は、昭和63年10月26日の出願(優先権主張昭和62年10月26日、米国)であって、平成13年3月2日(公報発行平成13年5月14日)に設定登録され、平成13年11月14日に山本直美から特許異議の申立を受けたものであって、その後平成14年4月3日(発送日平成14年4月16日)付で取消理由通知がなされ、延長された指定期間内である平成14年10月16日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の要旨
(1)訂正事項a:本件明細書中発明の詳細な説明の「・・・最初に100センチメートルにすると・・・」(特許公報第6頁右欄25行)を「・・・最初に10センチメートルにすると・・・」と訂正する。
(2)訂正事項b:本件明細書中発明の詳細な説明の「・・・種晶を包んで平坦性を確保し、・・・」(特許公報第8頁右欄26行)を「・・・種晶を粗研磨して平坦性を確保し、・・・」と訂正する。
3.訂正の適否についての検討
(1)上記各訂正事項は、前後の文章からみてそれぞれ誤記であることは明らかであり、誤記の訂正を目的とする訂正に該当する。
そして、これら各訂正事項は、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項までの規定に適合するから、当該訂正は認める。

4.異議申立に対する当審の判断
4-1.特許法第36条違反について
本件請求項1,2,4,8,10〜13,15に係る発明は、本件明細書(特許公報第6頁12欄41行〜13欄13行、21〜36行、14欄末行〜15欄6行、16欄25〜34行)に記載されており、本件請求項1,2,4,8,10〜13,15に係る発明は、かかる本件明細書の記載に基づいて当業者が容易にその実施をすることができるものである。
したがって、本件は特許法第36条第3項の要件を具備する。

4-2.特許法第29条第2項違反について
(1)本件発明
本件特許の請求項1〜15に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明15」という)は、特許請求の範囲の請求項1〜15に記載されたとおりのものであり、そのうち請求項1、請求項9及び請求項14に係る発明は以下のとおりである。
「【請求項1】電気的デバイスの製造に好適に使用できる炭化珪素の単一ポリタイプの大型単結晶を成長させる方法であって;所望ポリタイプの炭化珪素の種単結晶と、炭化珪素粉末源とを閉鎖系内へと導入すること;この炭化珪素粉末源の温度を炭化珪素が粉末源から昇華するのに充分な温度まで上昇させること;一方種晶の温度を、粉末源の温度に近く、しかしこの粉末源の温度よりは低くかつこの昇華系の気圧条件下で炭化珪素が昇華する温度よりも低い温度へと上昇させることによって種晶と粉末源との間に熱勾配を導入すること;及び結晶が成長して粉末源が消費されるのにつれて種晶と粉末源との間の熱勾配を増大させ、これにより一定の温度勾配を保持することで得られるであろう結晶成長を越えて更に結晶成長を連続的に促進することを有する方法。
【請求項9】電気的デバイスの製造に好適に使用できる炭化珪素の単一ポリタイプの大型単結晶を成長させる方法であって;所望ポリタイプの炭化珪素の種晶と、炭化珪素粉末源とを閉鎖系内へと導入すること;この炭化珪素粉末源の温度を炭化珪素が粉末源から昇華するのに充分な温度まで上昇させること;一方種晶の温度を、粉末源の温度に近く、しかしこの粉末源の温度よりは低くかつこの昇華系の気圧条件下で炭化珪素が昇華する温度よりも低い温度へと上昇させることによって種晶の成長面と粉末源との間に熱勾配を導入すること;及び結晶が成長して粉末源が消費されるのにつれて種晶の成長面と粉末源との間で一定の熱勾配を保持し、これにより種晶の単一の成長面の上で単一の種晶の一定した成長速度と単一のポリタイプの一定した成長とを保持することを有する方法。
【請求項14】電気的デバイスの製造に好適に使用できる炭化珪素の単一ポリタイプの大型単結晶を成長させる方法であって;所望ポリタイプの炭化珪素の種単結晶と、炭化珪素粉末源とを閉鎖系内へと導入すること;この炭化珪素粉末源の温度を炭化珪素が粉末源から昇華するのに充分な温度まで上昇させること;一方種晶の成長面の温度を、粉末源の温度に近く、しかしこの粉末源の温度よりは低くかつこの昇華系の気圧条件下で炭化珪素が昇華する温度よりも低い温度へと上昇させることによって種晶の成長面と粉末源との間に熱勾配を導入すること;及び種晶が成長して粉末源が消費されるのにつれて種晶を回転させ、これによって種晶の成長面に亘って一定の温度プロフィルを保持し、フラックス変化の効果を減らし、かつ閉鎖系の機械的部分に対して成長中の結晶が不所望に付着し始めるのを防止することを有する方法。」
(2)本件発明1について
ア.取消理由通知に引用された刊行物記載の発明
刊行物1(特開昭59-54697号公報:甲第1号証)には、「1)工業用炭化ケイ素の昇華と部分的分解および保護ガス下での反応容器の種の上への成長により炭化ケイ素の6H変態単結晶を製造するための方法において、反応容器中の成長方向の温度勾配が高くとも25℃/cmであり、種を2100〜2300℃の温度に保持し保護ガスの圧力を少なくとも析出物の成分のガス圧の和と同じ大きさであるように調整することを目的とする炭化ケイ素単結晶の製造方法。」(特許請求の範囲)に関する発明が記載され、該製造方法を実施する装置として第4頁に、真空容器28に単結晶10からなる種と、炭化ケイ素24の粉末が導入されている図面が記載されている。
ここで、「6H変態」とは炭化ケイ素のポリタイプの一種であり、得られる単結晶の工業用用途として「発光ダイオードの基板」として用いること(第2頁右上欄13〜16行)が例示され、炭化ケイ素の粉末源として6H変態からなるものが好ましいと記載(第3頁左上欄19行)され、当該方法においても、粉末源を昇華させ種結晶上に単結晶を成長させているのであるから、種晶の温度を、粉末源の温度に近く、しかしこの粉末源の温度よりは低くかつこの昇華系の気圧条件下で炭化珪素が昇華する温度よりも低い温度へと上昇させることによって種晶と粉末源との間に熱勾配を導入していることは明らかである。
したがって、刊行物1に記載される発明を本件発明1の記載に即して表現すると「電気的デバイスの製造に好適に使用できる炭化珪素の単一ポリタイプの大型単結晶を成長させる方法であって;所望ポリタイプの炭化珪素の種単結晶と、炭化珪素粉末源とを閉鎖系内へと導入すること;この炭化珪素粉末源の温度を炭化珪素が粉末源から昇華するのに充分な温度まで上昇させること;一方種晶の温度を、粉末源の温度に近く、しかしこの粉末源の温度よりは低くかつこの昇華系の気圧条件下で炭化珪素が昇華する温度よりも低い温度へと上昇させることによって種晶と粉末源との間に熱勾配を導入することを有する方法。」となる。
イ.対比
本件発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は上記の構成で一致し、以下の点で異なる。
相違点1:「結晶が成長して粉末源が消費されるのにつれて種晶と粉末源との間の熱勾配を増大させ、これにより一定の温度勾配を保持することで得られるであろう結晶成長を越えて更に結晶成長を連続的に促進すること」
ロ.判断
上記相違点に付き、以下検討する。
刊行物2(「Growth of Crystals from the Vapour 」M.M.Faktor and I.Garrett,Chapman and Hall Ltd,1974:甲第2号証)には、結晶と原料を収納したカプセルを炉内に配置した結晶成長装置において、炉内の温度プロファイルを考慮し、結晶成長速度に合わせてカプセルを炉内で連続的に動かすことにより、結晶表面と原料とがいつも炉内の同じ場所にあるようにすることによって、結晶と原料双方を一定温度に保ち、結晶の成長速度と組成を制御することが記載されている。
そして、結晶と原料双方を一定温度に保つことが結果的に結晶と原料間の熱勾配を一定とすることになるとしても、上記刊行物2には、種晶と粉末源との間の熱勾配についての記載はなく、さらに、刊行物2記載の発明は、第237頁の「Fig.6.8」に示される特定の温度プロファイルを有する炉と特定形状のカプセルからなる結晶成長装置を前提とするものであるから、刊行物2記載の発明とは、炉内の温度プロファイルが異なり、反応容器の位置を移動させても結晶表面と原料とを一定温度に保つことができない刊行物1記載の発明と、刊行物2記載の発明とを組み合わせることには無理がある。
したがって、本件発明1は、刊行物1および刊行物2に記載される発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8は、いずれも本件発明1を引用する発明であるから、本件発明1と同様な理由で、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)本件発明9について
ア.本件発明9と刊行物1記載の発明との対比
本件発明1における検討結果を踏まえれば、両者は「電気的デバイスの製造に好適に使用できる炭化珪素の単一ポリタイプの大型単結晶を成長させる方法であって;所望ポリタイプの炭化珪素の種単結晶と、炭化珪素粉末源とを閉鎖系内へと導入すること;この炭化珪素粉末源の温度を炭化珪素が粉末源から昇華するのに充分な温度まで上昇させること;一方種晶の温度を、粉末源の温度に近く、しかしこの粉末源の温度よりは低くかつこの昇華系の気圧条件下で炭化珪素が昇華する温度よりも低い温度へと上昇させることによって種晶と粉末源との間に熱勾配を導入することを有する方法。」の構成で一致し、以下の点で異なる。
相違点1’:「結晶が成長して粉末源が消費されるのにつれて種晶の成長面と粉末源との間で一定の熱勾配を保持し、これにより種晶の単一の成長面の上で単一の種晶の一定した成長速度と単一のポリタイプの一定した成長とを保持すること」
イ.判断
本件発明1おける刊行物2記載の発明についての検討結果を踏まえれば、上記刊行物2には、種晶の成長面と粉末源との間の熱勾配についての記載はなく、本件発明9は、刊行物1および刊行物2に記載される発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)本件発明10ないし13について
本件発明10ないし13は、いずれも本件発明9を引用する発明であるから、本件発明9と同様な理由で、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(5)本件発明14について
ア.本件発明14と刊行物1記載の発明との対比
本件発明1での検討結果を踏まえれば、両者は「電気的デバイスの製造に好適に使用できる炭化珪素の単一ポリタイプの大型単結晶を成長させる方法であって;所望ポリタイプの炭化珪素の種単結晶と、炭化珪素粉末源とを閉鎖系内へと導入すること;この炭化珪素粉末源の温度を炭化珪素が粉末源から昇華するのに充分な温度まで上昇させること;一方種晶の温度を、粉末源の温度に近く、しかしこの粉末源の温度よりは低くかつこの昇華系の気圧条件下で炭化珪素が昇華する温度よりも低い温度へと上昇させることによって種晶と粉末源との間に熱勾配を導入することを有する方法。」の構成で一致し、以下の点で異なる。
相違点1”:「種晶が成長して粉末源が消費されるのにつれて種晶を回転させ、これによって種晶の成長面に亘って一定の温度プロフィルを保持し、フラックス変化の効果を減らし、かつ閉鎖系の機械的部分に対して成長中の結晶が不所望に付着し始めるのを防止すること」
イ.判断
刊行物2には、円筒型の炉内に配置するカプセル型の結晶成長装置において、径方向の温度勾配を円筒対象にするため、カプセルを炉内で回転させることが記載されているが、刊行物2には、種晶を回転させることについての記載はなく、本件発明14は、刊行物1および刊行物2に記載される発明を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(6)まとめ
したがって、本件発明1ないし14は、刊行物1及び2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないばかりか、刊行物1及び2に、取消理由で通知した他の刊行物(甲第3号証ないし甲第7号証)記載の発明を組み合わせても当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

5.結び
以上のとおりであるから、本件請求項1ないし15に係る特許は、特許異議申立の理由および証拠によっては取り消すことができない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
炭化珪素単結晶の昇華成長
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気的デバイスの製造に好適に使用できる炭化珪素の単一ポリタイプの大型単結晶を成長させる方法であって;
所望ポリタイプの炭化珪素の種単結晶と、炭化珪素粉末源とを閉鎖系内へと導入すること;
この炭化珪素粉末源の温度を炭化珪素が粉末源から昇華するのに充分な温度まで上昇させること;
一方種晶の温度を、粉末源の温度に近く、しかしこの粉末源の温度よりは低くかつこの昇華系の気圧条件下で炭化珪素が昇華する温度よりも低い温度へと上昇させることによって種晶と粉末源との間に熱勾配を導入すること;及び
結晶が成長して粉末源が消費されるのにつれて種晶と粉末源との間の熱勾配を増大させ、これにより一定の温度勾配を保持することで得られるであろう結晶成長を越えて更に結晶成長を連続的に促進すること
を有する方法。
【請求項2】 炭化珪素の種単結晶と炭化珪素粉末源とを閉鎖系内へと導入する工程に先立って、炭化珪素の研摩された種晶を調製する工程を更に有する、請求項1による方法。
【請求項3】 種単結晶と炭化珪素粉末源とを閉鎖系内へと導入する工程において、最初に種晶と炭化珪素粉末源とを互いに分離する、請求項1による方法。
【請求項4】 種晶と粉末源との間の温度勾配を増大させる工程において、粉末の温度を上昇させる一方、種晶の成長面の温度を粉末源よりも低い初期温度に保持する、請求項1による方法。
【請求項5】 熱勾配を導入する工程において、1センチメートル当たり20℃の熱勾配を導入する、請求項1による方法。
【請求項6】 熱勾配を増大させる工程において、1センチメートル当たり約20℃から1センチメートル当たり約50℃へと熱勾配を増大させる、請求項1による方法。
【請求項7】 粉末源の温度を上昇させ、熱勾配を導入しかつこの熱勾配を増大させる工程において、抵抗加熱デバイスを使用して温度を上昇させ、熱勾配を導入しかつこの熱勾配を増大させる、請求項1による方法。
【請求項8】 炭化珪素粉末源を導入する工程において、新しい炭化珪素粉末源を昇華系内へと連続的に導入する、請求項1による方法。
【請求項9】 電気的デバイスの製造に好適に使用できる炭化珪素の単一ポリタイプの大型単結晶を成長させる方法であって;
所望ポリタイプの炭化珪素の種晶と、炭化珪素粉末源とを閉鎖系内へと導入すること;
この炭化珪素粉末源の温度を炭化珪素が粉末源から昇華するのに充分な温度まで上昇させること;
一方種晶の温度を、粉末源の温度に近く、しかしこの粉末源の温度よりは低くかつこの昇華系の気圧条件下で炭化珪素が昇華する温度よりも低い温度へと上昇させることによって種晶の成長面と粉末源との間に熱勾配を導入すること;及び
結晶が成長して粉末源が消費されるのにつれて種晶の成長面と粉末源との間で一定の熱勾配を保持し、これにより種晶の単一の成長面の上で単一の種晶の一定した成長速度と単一のポリタイプの一定した成長とを保持する
ことを有する方法。
【請求項10】 種晶の成長面と粉末源との間で固定した熱勾配を保持する工程において、種晶が成長するにつれて種晶の成長面と粉末源との間に相対運動を与え、一方粉末源を炭化珪素が昇華するのに充分な温度に保持し、また粉末源の温度に近いがしかしこの粉末源の温度よりは低くかつ炭化珪素が昇華する温度よりも低い温度に種晶を保持する、請求項9による方法。
【請求項11】 種晶の成長面と粉末源との間で固定した熱勾配を保持する工程において、結晶が成長するにつれて種晶の成長面と粉末源との間で固定した距離を保持する、請求項9による方法。
【請求項12】 種晶の成長面と粉末源との間で一定の熱勾配を保持する工程において、粉末源の温度と種晶の温度とを別個にモニターし、粉末源の温度と種晶の温度とを別個に調整することによって、粉末源と種晶との温度を独立に制御する、請求項9による方法。
【請求項13】 炭化珪素粉末源を導入する工程において、新しい炭化珪素粉末源を昇華系内へと連続的に導入する、請求項9による方法。
【請求項14】 電気的デバイスの製造に好適に使用できる炭化珪素の単一ポリタイプの大型単結晶を成長させる方法であって;
所望ポリタイプの炭化珪素の種単結晶と、炭化珪素粉末源とを閉鎖系内へと導入すること;
この炭化珪素粉末源の温度を炭化珪素が粉末源から昇華するのに充分な温度まで上昇させること;
一方種晶の成長面の温度を、粉末源の温度に近く、しかしこの粉末源の温度よりは低くかつこの昇華系の気圧条件下で炭化珪素が昇華する温度よりも低い温度へと上昇させることによって種晶の成長面と粉末源との間に熱勾配を導入すること;及び
種晶が成長して粉末源が消費されるのにつれて種晶を回転させ、これによって種晶の成長面に亘って一定の温度プロフィルを保持し、フラックス変化の効果を減らし、かつ閉鎖系の機械的部分に対して成長中の結晶が不所望に付着し始めるのを防止すること
を有する方法。
【請求項15】 炭化珪素粉末源を導入する工程において、新しい炭化珪素粉末源を昇華系内へと連続的に導入する、請求項14による方法。
【発明の詳細な説明】
(技術分野)
本発明は、炭化珪素の昇華成長を制御して高品質単結晶を製造する方法である。
(発明の背景)
炭化珪素は常に半導体材料用の候補である。炭化珪素は、広いバンドギャップ(ベータポリタイプで2.2エレクトロンボルト、6Hアルファで2.8)、高い熱係数、低い誘電率を有し、しかも珪素のような他の半導体材料が安定である温度よりも遙かに高い温度で安定を保つ。これらの特徴が炭化珪素に優れた半導体特性を付与し、炭化珪素から製造した電気的デバイスは、珪素のような現在最も普通に使用されている半導体材料から製造したデバイスよりも、高い温度でかつ高い放射線密度で作動すると予期できる。また、炭化珪素は高い飽和電子ドリフト速度を有することから高速、高出力レベルで作動するデバイスをもたらす可能性があり、また高い熱伝導により高密度デバイス集積を可能とする。
固体物理と半導体挙動とに精通した者であれば知っている通り、有用な電気的デバイスを製造できる材料として有用であるためには、この基礎的な半導体材料は特定の性質を有していなければならない。多くの応用分野において、結晶格子欠陥のレベルが非常に低く、更に不所望の不純物レベルが非常に低い単結晶が必要とされている。純粋な材料においてさえも、欠陥格子構造を有する材料は電気的デバイス用として有用ではなく、またこうした結晶中の不純物は注意深く制御して電気的特性に合うようにするのが好ましい。もしこの不純物を制御できないと、この材料は電気的デバイス用として一般に不充分となる。
従って、炭化珪素の好適な結晶試料を入手することが、上記したような所望の特性を有するデバイスを炭化珪素から成功裡に製造するために基本的に必要である。こうした試料は単一の所望の結晶ポリタイプを有していなければならず(炭化珪素は少なくとも150の結晶格子タイプをとりうる)、所望のポリタイプの充分に規則的な結晶構造を有していなければならず、しかも、実質的に不純物を有していないか、又はこの炭化珪素に所望のn特性又はp特性を付与するために選択的に添加された不純物のみを含んでいるものでなければならない。
従って、こうした炭化珪素の物理的特性と使用可能性とは相当の長きに亘って認識されてきたので、多数の研究者が多数の結晶質炭化珪素の形成技術を提案した。
これらの技術は一般に二つの広範なカテゴリーに入るが、幾つかの技術はこのように容易に分類できるとは限らないことが理解できる。このうち第一の技術は化学蒸着(CVD)として知られ、反応性ガスをある種の系内へと導入し、この内部で反応性ガスが適当な基板上で炭化珪素結晶を形成するものである。
こうしたCVD技術における新規で商業的に重要な改良が、近年の米国同時係属出願で議論されている。これらは本発明の譲受人に譲渡されたもので、「ベータSiC薄膜の成長及びこの上に製造された半導体デバイス」(出願番号113,921号、1987年10月26日提出)及び「アルファSiC薄膜のホモエピタキシャル成長及びこの上に製造された半導体デバイス」(出願番号113,573、1987年10月26日提出)である。
炭化珪素結晶を成長させる他の主要技術は、一般に昇華技術として言及されるものである。この昇華という名称が意味し、記述するところでは、昇華技術は一般に、出発物質として、特定ポリタイプの所望の単結晶よりもあるタイプの固体炭化珪素材料を使用し、次いで固体炭化珪素が昇華するまでこの出発材料を加熱する。次いでこの気化した材料を濃縮させ、この濃縮により所望の結晶を製造させる。
固体、液体及び気体の物理化学に精通した者が知っているように、結晶が形成される種々な表面が、濃縮すべき分子又は原子を運ぶ気体または液体からなる流体よりも幾分か低い温度であるとき、結晶成長が促進される。
結晶型不純物をほとんど考慮にいれない場合に固体炭化珪素を製造する技術の一つはアチソン炉法であり、典型的には耐摩耗目的のために炭化珪素を製造するのに使用される。しかし、より良い結晶を製造するのに実際に有用である最初の昇華技術の一つは、ジェイ・エイ・レリー(Lelly)により1950年代に開発され、これらの技術のうち一つは米国特許第2,854,364号に記載されている。一般的見地からは、レリーの技術は、カーボン容器の内側を炭化珪素材料源でライニングするものである。炭化珪素が昇華する温度へとこの容器を加熱し、次いでこれを濃縮することにより、再結晶した炭化珪素が容器のライニングに沿って再堆積するのが促進される。このレリー法は一般に源である材料の品質を高め得たけれども、現在まで電気的デバイスに好適な炭化珪素単結晶を一貫して再現可能に製造できていない。
米国特許第3,228,756号において、ハーゲンローザー(Hergenrother)は、炭化珪素種晶を使用してこの上に他の炭化珪素を濃縮して結晶成長を形成させる、他の昇華成長技術について議論している。ハーゲンローザーの提案によれば、適切に成長を促進するため、種晶を適当な温度、一般に2000℃を越える温度へとこの種晶が1800℃〜2000℃の間の温度にある時間を最小化するように加熱しなければならない。
米国特許第3,236,780号においてオザロウ(Ozarow)が議論する種を使用しない他の昇華技術では、カーボン容器内部の炭化珪素ライニングを使用し、この容器の炭化珪素ライニングされた内側部分とこの容器の外側部分との間に放射温度勾配を設定しようとする。
米国特許第3,615,930号及び第3,962,406号において、ニッペンバーグ(Knippenberg)は、所望形態の炭化珪素を成長させる他の試みについて述べる。第3,615,930号特許では、昇華によって結晶が成長するにつれて炭化珪素中にp-n接合を成長させる方法について述べる。この特許中の議論によれば、ドナー型ドーパント原子を含む不活性気体の存在下に閉鎖空間内で炭化珪素を加熱し、これに続いてドーパント材料を容器から排気し、アクセプタードーパントの存在下に容器を再加熱する。この技術は、反対の伝導形式を有し、p-n接合を成形する隣接結晶部分を生じさせようとするものである。
第3,962,406号特許において、ニッペンバーグは、粒状炭化珪素又は加熱時に炭化珪素を生成する材料のいずれかからなる塊で二酸化珪素コアーを取り囲んで完全にパックする、三段階の炭化珪素形成法について述べる。この系を、二酸化珪素コアーの周囲で炭化珪素殻が生成する温度にまで加熱し、次いで更に加熱して炭化珪素殻の内側から二酸化珪素を気化させる。最後に、この系を更に加熱し、炭化珪素殻の内側で更に炭化珪素が成長し続けるのを促進する。
米国特許第4,147,572号において、ヴォダドコフ(Vodadkof)は、固体炭化珪素材料源と種晶とを互いに平行に近接した位置関係で配置する幾何学的配向昇華技術について述べる。
米国特許第4,556,436号において、アダマイアーノ(Addamiano)は、2300℃〜2700℃の間の昇華温度から1800℃未満の他の温度への急冷によって特徴付けられる、アルファ炭化珪素上にベータ炭化珪素の薄膜を形成するためのレリー型炉装置について述べる。アダマイアーノは、立方体状(ベータ)炭化珪素の大きな単結晶は単純には得られず、また珪素又はダイアモンドのような他の材料上に炭化珪素を成長させることはむしろ難しいことに言及する。
米国特許第4,664,944号において、スー(Hsu)は、非炭化珪素反応体を使用する点で化学蒸着技術に類似するが、流体化床中に炭化珪素粒子を含み、これにより幾分か昇華技術に類似した、炭化珪素結晶形成のための流体化床技術について述べる。
しかし、炭化珪素昇華技術におけるより重要な業績のうちの幾つかは、米国特許以外の文献に記載されている。例えば、シーメンス(Siemens)社の独国(連邦共和国)特許第3,230,727号で議論されている炭化珪素昇華技術では、炭化珪素種晶と炭化珪素材料源との間の熱勾配を最小化することを中心に議論されている。この特許では、反応容器内の源と種との間の距離が1cm離れるごとに20℃以下へと熱勾配を制限することが提案されている。またこの特許では、この昇華装置内の全気圧を1〜5ミリバール、好ましくは1.5〜2.5ミリバールの間の範囲内に保持すべきことが提案される。
しかし、この西独国特許は、ソビエト連邦において、特にワイ・エム・タイロフ(Tairov)によって包括的に研究された技術を改良したものと考えることができる。例えば、「種々の炭化珪素ポリタイプの大型単結晶を成長させる一般的原則(General Principles of Growing Large-Size Single Crystals of Various Silicon Carbide Polytypes)」(ジャーナル オブ クリスタル グロース,52 1981年,第146〜150頁)及び「ポリタイプ構造の結晶成長及び特徴付け(Crystal Growth and Characterization of Polytype Structures)」から「ポリタイプ結晶の成長制御における進歩(Progress in Controlling the Growth of Polytypic Crystals)」(ピー・クリシュナ編集、パーガンモン プレス,ロンドン 1983年、第111頁)参照。タイロフは、レリーの方法の欠点、特に、結晶成長に高温が必要とされる点(2600℃〜2700℃)及び得られた結晶ポリタイプを制御できない点を指摘する。特許文献中で幾人かの他の研究者を参照して議論しながら、タイロフはレリーの方法の改善方法として種の使用を提案する。特に、タイロフは、所望ポリタイプの種晶を選択するか、又は六角形格子の0001面へとある角度で作用する炭化珪素面上で再濃縮結晶を成長させることによって、炭化珪素結晶のポリタイプ成長を制御することを提案する。タイロフは、成長のための軸方向の温度勾配を、1センチメートル当たり約30℃と40℃との間とすることを提案する。
他の研究では、タイロフは種々のパラメーターを調整した場合の結果的な炭化珪素の成長への影響を研究し、他方特別な結論を抽き出すことが難しい旨述べている。タイロフは工程温度を研究し、ニッペンバーグのような研究者によって考えられていたよりも成長工程温度の重要性が比較的小さいと結論した。タイロフは、特定のポリタイプ結晶の生成に対する成長速度の効果についても同様に結論を抽き出すことができず、結晶成長速度の増加が無秩序な構造の結晶のパーセンテージの増加に統計的に対応するという結論のみを得た。タイロフは同様に気相化学量論と結晶成長との間にいかなる結論も抽き出すことができなかったが、特定の不純物が特定の炭化珪素ポリタイプ結晶の成長に有利であることを指摘した。例えば、窒素濃度が高いと立方状ポリタイプ炭化珪素結晶に有利であり、アルミニウムや幾つかの他の材料は六角形4Hポリタイプの成長に有利であり、酸素は2Hポリタイプに貢献する。タイロフは、機構が理解できないことからこれらの効果が未だ説明されないと結論した。
タイロフの実験において、タイロフはまた、気相材料源として特定ポリタイプの炭化珪素単結晶を使用することを試み、気相源としてこうした特定のポリタイプの単結晶を使用すると特定ポリタイプの結晶成長を生じ得ると述べた。無論、単結晶を材料源として使用することは理論的興味があるけれども、特に商業的見地から見て一層実際的な目標は、単結晶以外のより普通の炭化珪素源から単結晶を製造することであると理解される。
最後に、タイロフは、昇華成長が向けられる基板表面を処理することは、得られる結晶の成長に影響しうると結論した。それにも係わらず、広範な種類のデータ結果から、更に同定されていない因子がタイロフの観察した炭素珪素結晶の成長に影響しており、これらの未知の因子のためタイロフは結晶成長機構の基本的理解へは到達できなかったとタイロフは結論した。
従って、炭化珪素の特性が長く認識されてきたにも係わらず、また炭化珪素が革命的ではないとしても注目すべき半導体材料及びその結果としてのデバイスを与えうるという認識にも係わらず、またここに記載したものを含む多くの研究者により行われた徹底した実験にも係わらず、本発明の前には、所望の選択的ポリタイプの炭化珪素の大型単結晶を繰り返し一貫して成長させるための好適な技術が存在しなかった。
従って、本発明の目的は、所望ポリタイプの炭化珪素の大型単結晶を制御しつつ繰り返し可能に成長させるための方法を提供することである。
本発明の他の目的は、材料源のポリタイプを制御することによって炭化珪素の大型単結晶を成長させる方法を提供することである。
この発明の他の目的は、炭化珪素単結晶以外の材料源を用いてこうした炭化珪素単結晶を成長させる方法を提供することである。
この発明の他の目的は、特定の表面積を有する材料源を選択することによってこうした炭化珪素結晶を成長させる方法を提供することである。
この発明の他の目的は、所定の粒径分布を有する材料源を選択することによって大型の炭化珪素単結晶を成長させる方法を提供することである。
この発明の他の目的は、昇華技術を用いてこうした炭化珪素単結晶を成長させる方法であって、以前に達成されてきたよりも一層長い時間に亘って一層大型の結晶へと炭化珪素結晶を連続的に成長させるために可能な限り最も好ましい条件を維持するように、材料源と種との間の熱勾配を連続的に調整する方法を提供することである。
本発明の前記した目的及び他の目的、利点及び特徴、及びこれらを達成する方法は、好適な実施例を説明する添付図面と関連して本発明の次記の詳細な説明を考慮することによって一層容易に明白なものとなるであろう。ここで:
(図面の説明)
第1図は本発明の方法に従って使用した昇華るつぼの断面図、
第2図は第1図のるつぼの種晶ホルダーの拡大図、
第3図は本発明の方法に従って使用した昇華炉の断面図、
第4図は炭化珪素粉末源を系内へと連続的に導入するためのスクリュー型機構を示す昇華系の図、
第5図は昇華系内へと炭化珪素前駆体材料を導入するためのガス供給機構を示す昇華系の図、及び
第6図は本発明の方法に従って使用した独自の加熱部材を示す昇華系の図である。
(詳細な説明)
第1図は本発明の方法に従って使用する昇華るつぼの断面図を示す。このるつぼは広く10で示し、典型的には黒鉛からなる。るつぼ10は一般に筒状であり、多孔質黒鉛ライナー11、リッド12、及び第2図に拡大図を示す種ホルダー13を有する。このるつぼの残部は壁14と床15とによって区切られる。第1図に更に示すように、多孔質黒鉛ライナー11の下部、るつぼ壁14及びるつぼリッド12の間に環状チャンバ16を設けるように、多孔質黒鉛ライナー11を形成する。中央昇華チャンバを20で示す。
ここで記載したすべての機器において、記載したるつぼは好ましくは黒鉛から形成され、最も好ましくは炭化珪素とほぼ同じ熱膨張係数を有する黒鉛からなる。こうした材料は商業的に入手できる。熱膨張係数が相対的に近似していることは、ここで記載した極度の高温へと加熱され、これらのプロセスが起る材料にはとりわけ必要である。これにより、昇華工程の間にるつぼのクラッキングを防止でき、このるつぼの寿命が一般に延びる。
更に、炭化珪素結晶を成長させる試みに精通した者であれば認識しているように、系中に黒鉛が存在すると、昇華プロセスが起るにつれて炭素原子の平衡源を提供し、フラックスの中の変化を消すことによって炭化珪素の成長が促進される。
更に、黒鉛は、これらのプロセスの高温に耐えることができ、かつ気体流中への不所望の不純物の導入を避けることができる、数少ない経済的に成熟した材料のうちの一つである。
第2図に種ホルダー13を更に詳細に示す。種晶17は、チャンバ20内へと延びる種ホルダー13の上側部分上に支持される。黒鉛ウォッシャー21は、種ホルダー13の下側部とるつぼ15の床との間に位置する。また第2図は、本発明の好適例において、種の温度を光学的高温計によってモニターできるように種へと光学的アクセスを与える光学的開口22を示す。
第1図に示すような昇華るつぼは典型的には第3図に23で広く示す昇華炉と共に使用され、ここでるつぼは再び10で示す。炉23は一般には筒状であり、筒状加熱部材24を有し、この反対側を図面中に示す。炉23はまた炭素繊維絶縁体25によって取り囲まれ、光学ポート26,27及び28を有し、これらを通して炉の内側部分の温度を光学的高温計で測定することができる。電力貫通端子は一般的に30で示し、炉の外側ハウジングは31で示す。
本発明の第一の態様においては、所望のポリタイプを有する単一の炭化珪素種晶と、炭化珪素粉末源とを、第1図〜第3図に示した昇華るつぼ及び炉のような系中へと導入する。このるつぼが第1図に示した型のものであるとき、炭化珪素粉末源は環状チャンバ16内に配置する。本発明のこの第一の態様においては、実質的にすべてが一定のポリタイプ組成を有する炭化珪素粉末源を使用することにより、種晶上での所望の結晶成長の製造が大きく向上することを見出した。
本出願人は、いかなる特定の法則によっても拘束されることを望むものではないが、異なるポリタイプの炭化珪素は異なる蒸発活性化エネルギーを有することが知られている。特に、立方体状(3C)炭化珪素に対しては、蒸発活性化エネルギーは1モル当り108キロカロリー(Kcal)であり、六角形4H炭化珪素に対しては144Kcal/mole及び六角形6H炭化珪素に対しては119Kcal/moleである。炭化珪素が昇華するときには、三つの基本的な気体物質:Si,Si2C及びSiC2を形成するため、これらの相違は重要である。粉末源のポリタイプに従い、発生する各化学種の量又はフラックスは異なるであろう。同様の挙動により、全気体流中の各化学種の量は、これらの化学種が再濃縮されるときに成長するポリタイプの型に影響する傾向があるであろう。
ここで使用したように、「フラックス(束)」という語は、与えられた時間の間に与えられた面積の所定平面を通過する物質又はエネルギーの量に関するものである。従って、気化した化学種の流れを記述するのに使用するときには、一秒当り一平方センチメートル当りのグラム数(g/cm2/sec)のような物質、面積及び時間のユニットとしてフラックスを測定、指示できる。
ここで使用したように、「一定のポリタイプ組成」という語は、一定比率の特定のポリタイプからなる粉末源に関するものであり、単一のポリタイプからなるものを含む。例えば、50%がアルファポリタイプ、50%がベータポリタイプである粉末源が一定のポリタイプ組成を示すように、実質的に完全に6Hアルファ炭素珪素からなる粉末源も一定のポリタイプ組成を示す。言い換えると、この組成は、ポリタイプに関して同質であろうと異種成分からなっていようと、昇華プロセスを通じて同じ組成を保つように制御しなければならない。
更に直截に述べるならば粉末源が一定のポリタイプ組成を実質的に有するように選択し、制御すると、発生するSi,Si2C及びSiC2の相対量又は比率が一定に保たれ、このプロセスの他のパラメータを適切に制御でき、種晶上に所望の単結晶成長を生じさせる。また、もし粉末源が種々の比率の炭化珪素ポリタイプの可変混合物であるときには、発生するSi,Si2C及びSiC2の相対量(比率)は連続的に変化し、これに応じて種晶上に他のポリタイプを同時に成長させるのを促進し続ける。これは異なるポリタイプを有する多数の結晶を種晶の上に成長させるという望ましくない結果をもたらす。
一度炭化珪素粉末源と種晶とを導入すると、この炭化珪素粉末源の温度を炭化珪素がこの粉末源から昇華するのに充分な温度、典型的には2300℃のオーダーの温度にまで上げる。この粉末源の温度を上げている間は、同様にこの種晶の成長面の温度を、粉末源の温度に近づいているが粉末源の温度よりは低く、かつ炭化珪素が昇華する温度よりも低い温度まで上げる。典型的には、種晶の成長面は約2200℃まで加熱する。炭化珪素粉末源と炭化珪素種晶の成長面とをこの無関係な温度に充分な時間保持することにより、所望のポリタイプを有する単結晶炭化珪素の巨視的成長が種晶上に形成される。
相変態に精通した者であれば理解できるように、昇華と濃縮とは平衡プロセスであり、絶対及び相対温度だけでなく系の蒸気圧によって影響される。従って、更に理解できることに、ここで記載したプロセス及び系においては、これらのプロセスを促進し、ここで記載した温度及び熱勾配の考慮に基づいて制御し、調整できるような方法で、蒸気圧を適切に制御する。
本発明につき、更に、昇華法によって適当な単結晶を形成するためには、一定のポリタイプ組成を維持することに加え、一定した粒径分布の炭化珪素粉末源を選択することが同様に本技術を高めることを見出した。先に記載した方法と類似の方法により、一定した方法で粒径を制御すると炭化珪素粉末源から発生する化学種のフラックスの輪郭が一定となり、これに対応して種晶の上での炭化珪素の昇華成長が一定する。一態様においては、所定のタイラー(Tyler)メッシュ スクリーンを通過する試料の重量パーセントによって規定される次記の粒径分布を有する粉末が本プロセスを高める。

更に、与えられた粉末形態に対して、粉末源の露出表面積は粒径に比例する。露出表面積が一定すると順に上記フラックス全体の一定性も高まり、従ってこの方法で粒径分布を制御することでフラックスの輪郭の一定性も高まる。
他の態様で議論するように、炭化珪素粉末源と種晶の成長面とは共にそれぞれ異なる温度へと加熱され、この粉末源から昇華した化学種が種晶の上へと濃縮されるのを促進するために種晶の成長面を粉末源よりも幾分か冷たくする。
本発明の他の態様においては、種晶の成長面と粉末源との間の熱勾配を制御することで所望のポリタイプを有する大型の単結晶が適切に制御され、成長することを見出した。この点で、熱勾配は多数の方法で制御できる。例えば、ある条件下では熱勾配は種晶の成長面の間で一定に保たれるように制御するが、一方他の条件下では、粉末源と種晶の成長面との間の熱勾配は制御しつつ変化させることが好ましい。
種々の昇華技術に精通した者であれば知っているように、粉末源を種晶から物理的に分離する一方、これらをそれぞれ異なる温度に保持することにより、熱勾配をしばしば導入する。従って、こうして得た熱勾配は、粉末源と種晶の成長面との間の幾何学的距離の関数、例えば、1センチメートル当たり20℃等である。ここで、もし粉末源を最初に例えば2300℃の温度に維持し、種晶の成長面を例えば2200℃の温度に維持し、かつ粉末源と種晶との間の距離を最初に10センチメートルにすると、100℃を10センチメートルで割った、即ち、1センチメートル当り10℃の熱勾配が設定される。
熱勾配を制御する一つの態様においては、本発明は所望のポリタイプの炭化珪素種単結晶と炭化珪素粉末源とを昇華系中へと導入することからなる。炭化珪素粉末源の温度を炭化珪素が昇華するのに充分な温度にまで上げ、粉末源の温度に近づいているがしかしこの粉末源の温度よりは低く、かつ系の蒸気圧条件下で、炭化珪素が昇華する温度よりも低い温度へと、種晶の温度を上昇させることによって、種晶の成長面と粉末源との間に熱勾配を導入する。結晶が成長し、一般にるつぼの頂部に最も近い粉末源を使い終えると、種晶の成長面と粉末源との間の熱勾配が上昇し、これにより一定の熱勾配を維持することによって得られるべきものを越えて更に結晶成長を促進し続ける。
昇華成長プロセスの間、るつぼのより熱い頂部の近くで炭化珪素を含有する気体種が発生し、るつぼのより冷たい下部にあってそれぞれの対応する温度の低い方の種へと熱勾配を通って輸送される。しかし、この材料源もまた熱勾配の中にあり、この材料源の昇華は材料源の下部よりも上部で遙かに速い速度で起こる傾向がある。結果としてもし温度勾配が一定に保たれると、材料源上部が使い果たされるのにつれ、時間と共にフラックスの急速な減少が起こる。同様にして、結晶が成長するのにつれ、熱勾配に対するその位置変化の結果としてその成長面が温度中に増加する。これは時間の関数としての粘着係数の減少を引き起こし、同様に成長速度を減少させる。
しかし、本発明に従い、もし粉末源が消費されるのにつれ、また種晶が成長するのにつれて熱勾配が連続的に増加するならば、この源と種との間の絶対温度差を、結晶成長に最も好ましくあり続ける値に維持できることを見出した。
本発明の一態様においては、熱勾配の制御は、種晶の成長面と粉末源との間の熱勾配を増加させる工程からなり、また粉末源の温度を増加させる一方、種晶の成長面の温度を粉末源よりも低い最初の温度に保持することによって同様のことを達成できる。
他の態様においては、本発明は、結晶が成長するのにつれ、また粉末源が消費されるのにつれて種晶の成長面と粉末源との間で測定される熱勾配を一定に維持することを含む。この成長面は、その面の上で所望の結晶が連続的に成長するのに熱力学的条件が有利か又は不利かのいずれかであるので、この成長面の温度は結晶に対して最も致命的な温度であると理解される。
従って、本発明の他の態様においては、種晶の成長面と粉末源との間の固定された熱勾配を維持する工程は、種晶が成長するのにつれて種晶の成長面と粉末源との間に相対運動を与える一方、この粉末源と種晶の成長面とをそれぞれ異なる、しかし一定の温度に保持することからなる。
他の態様においては、種晶の成長面と粉末源との間で固定された熱勾配を保持する工程は、結晶が成長するにつれて種晶の成長面と粉末源との間で固定された幾何学的距離を保持する工程からなる。
更に他の態様においては、種晶の成長面と粉末源との間の熱勾配を一定に保持する方法は、粉末源の温度と種晶の温度とを別個にモニターし、粉末源の温度と種晶の温度とを別個に調整して所望の熱勾配を保持することによって、粉末源と種晶との温度を独立に制御することからなる。
本発明の他の態様においては、本発明の方法を使用し、ミラー指数面のうちの一つに対して少し軸から外れた昇華面を与える炭化珪素種晶を備えることによって、炭化珪素単結晶の成長を、高めることができることを見出した。実際、軸の外れた炭化珪素結晶は、三次元結晶学的情報を昇華の間濃縮しつつある原子へと転移する傾向がある。従って、こうした軸の外れた成長面は、所望の特定の炭化珪素ポリタイプが繰り返し可能に成長するのを促進するために使用しうる。昇華成長の間に炭化珪素結晶に不純物をドープする場合には、この技術が特に重要である。炭化珪素の性質に精通した者であれば知っているように、特定の不純物は特定ポリタイプの炭化珪素の成長を促進する傾向がある。例えば、アルミニウムをドーピングすると4H炭化珪素の成長に有利であることが知られているが、軸の外れた種を使用すると、本発明に従ってアルミニウムをドーピングすることで炭化珪素の6H結晶を成長させることができる。
本発明の方法において無線周波(RF)誘導加熱よりも、むしろ抵抗加熱を使用することで、熱勾配制御と温度制御、保持の実際のところ全工程を高めうることを、本発明に従って更に見出した。
抵抗加熱は、昇華プロセスの全体に亘って多くの利益を与える。最初に抵抗加熱は、誘導加熱を使用してハンドリングできるよりもより大きい結晶径にまでプロセスを大規模化することを可能とする。誘導加熱技術は幾つかの制限を有し、誘導技術を使用して開発されたいかなる炭化珪素昇華プロセスをも同様にして商業的に有用な規模にまで大規模化することができない。例えば、誘導加熱においては、誘導コイルを昇華が起る真空容器の外側に配置し、この容器内に存在する気体(例えばアルゴン)のイオン化を防止しなければならない。第二に、もし昇華るつぼの径が大きくなると、誘導加熱に使用するコイルはるつぼの外側層のみを加熱する傾向があり、不所望で許容できない径方向の熱勾配を生じさせる。最後に、誘導加熱では、RF出力を変換するガラス製真空容器を使用する必要がある。結果として、このガラス製容器のオーバーヒートを防止するため、熱絶縁プレゼントの厚さを増加させるか、又はこのガラスを典型的には水で冷却しなければならない。熱絶縁体の量を多くすると、結晶が成長できる実際のサイズが減少し、容器を水で冷却すると、全系の熱効率が劇的に減少する。
また、抵抗加熱は誘導加熱にくらべて顕著にエネルギー効率が高く、抵抗加熱部材は真空容器内に位置させることができ、外殻加熱又は径方向の熱勾配の効果はほとんど完全に除去でき、抵抗加熱は、温度安定性の改善、プロセスの反復性及び全熱勾配の制御を実現する。
第4図、第5図及び第6図は、本発明の方法を遂行するために使用できる幾つかの機器を示す。第4図は、成長中の結晶33がエピタキシャル付着した炭化珪素種晶32を示す。結晶32及び33はそれぞれ黒鉛種ホルダー34上に保持され、これは順にシャフト35上に配置される。このるつぼの残部は、黒鉛壁部36と多孔質黒鉛バリア37とによって区切られる。炭化珪素粉末源40はベッド41中に保持される。炭化珪素粉末を所望位置へと確実に一定して供給するために、スクリューリフティング機構43を荷なう回転シャフト42を高密度黒鉛シリンダー44内に配置する。第4図に示すように、シャフト42が回転すると、スクリュー機構43が炭化珪素粉末源40をスクリュー機構の頂部へ、多孔質黒鉛バリアー37と隣接する位置へと上昇させる。先に記載したように、特定の態様では、高密度黒鉛シリンダー44の頂部の炭化珪素粉末源を約2300℃の温度に保持する一方、成長する結晶33の成長面の温度を幾分か低い温度、典型的には2200℃に保持する。
炭化珪素粉末源を連続的に昇華領域へと供給させることで、幾つかの利益が得られる。特に、ここで開示した他の技術について記載したように、この連続的供給により、更に昇華粉末源が一定のフラックス密度を発生するのを確保できる。実際に、新しい粉末源が昇華領域内へと連続的に移動し、昇華が進行するのにつれて一定のフラックスを与える。
光学サイトホール45も図示しており、光学高温計を使用して成長中の結晶33の温度をモニターするか、又は高密度黒鉛シリンダー44の頂部にある炭化珪素粉末源40に対する結晶の正確な位置を決定するのに使用できる。
本発明の特定の態様においては、成長中の結晶33の成長面が炭化珪素粉末源40から離れて、又は所望ならばこれへと向かって動くように、シャフトを引くことができる。
本発明の更に他の例によれば、成長面を横断する温度プロフィルが確実に一定となるように、シャフトを回転させることができる。こうした方法より、フラックス変化の効果が消えるので結晶の対称的な成長を促進することができ、成長中の結晶が黒鉛のかこいへと付着するのを防止できる。
第6図は第4図と同じ特徴を多く示しているが、しかし、別個で独立の加熱部材をも示す。第6図において、別個で独立に制御される抵抗加熱部材を46及び47で示す。ここで先に記載したように、上側部材46は種晶32と成長中の結晶33との温度を制御するのに使用でき、一方下側加熱部材47は、高密度黒鉛シリンダー44の頂部にある炭化珪素粉末源40の温度を制御するのに使用できる。
加熱部材46及び47によって発生した温度をそれぞれモニターするため、光学サイトホール50及び51を設け、光学高温計での発生温度のモニターを可能とできる。
第5図は、本発明の更に他の態様を実施するために使用する機器を示す。この態様では、昇華して次いで成長中の結晶として再濃縮される炭化珪素を粉末としては供給せず、その代わり、シラン(SiH4)とエチレン(C2H4)との各ガスの系中への供給をこれらが直ちに反応して炭化珪素上記を生成するであろう温度で行うことによって系中へと導入し、次いで、粉末源から発生した蒸気が多孔質黒鉛バリアーを通って成長中の結晶上へと移動するその仕方で炭化珪素蒸気を移動させる。
前記した態様におけるように、この系は種晶32、成長結晶33、黒鉛種ホルダー34、シャフト35、黒鉛壁36,10、多孔質黒鉛バリアー37、及び光学サイトホール45を有する。しかし、炭化珪素粉末源のベッドの代わりに、この系はシランガス供給部52及びエチレンガス供給部53を有する。これらの分子が系の高温の下で解離するのを防止するため、これらが昇華系内のあるポイントに達するまでこれらを水冷モリブデンジャケット中で絶縁し、このポイントでは温度が約2400℃に保たれ、これらの材料が解離され、直ちに反応して炭化珪素を形成する。
一度シランとエチレンとがジャケット54を離れ、反応して炭化珪素含有化学種を形成すると、これらは粉末源から昇華した炭化珪素含有種と同様に振舞う。これらは多孔質黒鉛バリアー37を通過し、成長中の結晶33の成長面上に宿る。
昇華目的のためにこうしたガス供給系を使用することで幾つかの利益が得られ、その第一のものはSiC蒸気の一定したフラックスを成長中の結晶表面へと運搬できることである。他の利益は、シランとエチレンとが商業的規模で高純度で得られ、従ってこの技術から純粋な結晶が得られることである。
実施例1
6Hアルファポリタイプ炭化珪素から種を準備した。この種晶を粗研磨して平坦性を確保し、次いで順次細粒化されたダイヤモンドペーストで研摩し、最後に0.1マイクロメートルのペーストで研摩した。この種を熱硫酸(H2SO4)で5分間洗浄し、水酸化アンモニウム(NH4OH)と過酸化水素(H2O2)との1:1混合物で5分間洗浄し、フッ化水素酸(HF)で1分間洗浄し、次いで最後に脱イオン化水で洗浄した。こ種を乾燥酸素中1200℃で90分間酸化し、残留した研摩ダメージを除去した。こ酸化物をHFでのエッチングにより除去した。
次いで種と粉末源とをるつぼ中に装備した。この粉末源は、次の粒径分布を有する6H炭化珪素粒子からなる。

次いで、この装備後のるつぼを昇華炉中に配置する一方、少し過圧のアルゴンを炉中に保持して水による汚染を防止し、こうして炉のポンプ脱気時間を短縮する。この炉を5×10-6トール未満の基本圧力にまで排気する。この炉を真空(5×10-4トール)中で1200℃に約10分間加熱する。低圧系に精通した者であれば理解できるように、絶対真空は達成できない。従って、ここで使用する「真空」という語は、大気圧よりも圧力の低い種々の系についてのものであり、適当な場合には、特定の条件を最も良く記述するため特定の圧力を採用する。次いで、この炉をアルゴンで400トールの圧力まで再び満たす。
次いで、るつぼの頂部が約2260℃となり、種の温度が約2160℃となるまで系の温度を上昇させ、ここでこの特定の系内で1センチメートル(cm)当り31℃の熱勾配に使用温度を対応させる。ついで、この系を85分間の間に亘って400トールの圧力から約10トールの圧力へと緩徐に排気する。この系をされらの条件下に6時間保持し、この後に系をアルゴンで760トールまで再び満たし、この温度を90分間の間に亘って200℃まで下げる。
この炉の装備を外すと、上のプロセスにより、12ミリメートル(mm)の径と6mmの厚さとを有する透明な6Hアルファ炭化珪素結晶を得た。
実施例2
6HアルファーSiC種を、この(0001)平面を3°[1120]方向へと向かってカットすることによって準備した。次いで実施例1で記載したように、この種を包んで平坦性を確保し、順次細かくなるダイヤモンドペーストで研摩し、洗浄し、酸化し、エッチングした。
この材料源に0.2重量パーセントの量のアルミニウムをドープした。種と粉末源とをるつぼ内へと装備し、ここでこの粉末源は実施例1で記載したものと同じ粒径分布を有する。実施例1で記載したように、るつぼに装備をし、容器を排気し、初期加熱し、アルゴンを再び満たす。
次いで、32℃/cmの熱勾配に対応するよう、るつぼの頂部が2240℃、種が2135℃となるまで温度を上昇させる。
実施例1で記載したように炉を400トールから10トールまで排気し、この昇華条件を4時間の間保持した。次いで、この炉をアルゴンで大気圧(760トール)になるまで再び満たし、この温度を90分間の間に亘って200℃まで下げる。
この炉から装備を外したとき、上のプロセスから径12mm、厚さ6mmの暗青色6HアルファーSiC結晶を得た。こうして得た結晶はp型であり、1立方センチメートル当り約108キャリア原子のキャリア濃度を有していた。
上の記載において、本発明の好ましい例示的な態様につき記載してきたが、これらは例示のために記載したもので制限のためにではなく、本発明の範囲は次記の請求の範囲に記載する。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-10-30 
出願番号 特願昭63-509385
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C30B)
P 1 651・ 531- YA (C30B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 紀子  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 米田 健志
山田 充
登録日 2001-03-02 
登録番号 特許第3165685号(P3165685)
権利者 ノース カロライナ ステート ユニバーシティ
発明の名称 炭化珪素単結晶の昇華成長  
代理人 杉村 興作  
代理人 杉村 純子  
代理人 杉村 興作  
代理人 杉村 純子  

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