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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議200371208 審決 特許

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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23F
審判 全部申し立て 発明同一  A23F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23F
管理番号 1091488
異議申立番号 異議2003-70843  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-05-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-31 
確定日 2003-11-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3329799号「容器詰飲料」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3329799号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3329799号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成12年11月17日に特許出願され、平成14年7月19日にその特許の設定登録がなされ、その後、株式会社 伊藤園より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年9月12日に訂正請求がされたものである。

2.訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
(a)特許請求の範囲の請求項1において、特許請求の範囲の減縮を目的として「(イ)(A)+(B)=460〜2500mg」を、「(イ)(A)+(B)=500〜2500mg」と訂正する。
(b)特許明細書段落【0004】において、明りょうでない記載の釈明を目的として 「(イ)(A)+(B)=460〜2500mg」を、「(イ)(A)+(B)=500〜2500mg」と訂正する。
(c)特許明細書段落【0012】において、明りょうでない記載の釈明を目的として「容器詰めされた飲料500mL当り合計量460〜2500mg含有する」を、「容器詰めされた飲料500mL当り合計量500〜2500mg含有する」と訂正する。
(d)特許明細書段落【0012】の「460mg以上では飲用時に効果感をもった味となり好ましい。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として削除する。
(e)特許明細書段落【0015】の「(A)/(B)=0.54〜9.0であるが、好ましくは0.67〜5.67」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「(A)/(B)=0.67〜5.67」と訂正する。

イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記(a)の訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「(イ)(A)+(B)=460〜2500mg」を「(イ)(A)+(B)=500〜2500mg」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当する。
上記(b)ないし(d)の訂正は、上記(a)の訂正と整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記(e)の訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「(A)/(B)=0.67〜5.67」と対応するように発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
そして、上記(a)ないし(e)の訂正事項は、いずれも新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ.むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する特許法第126条第2項及び3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立
ア.本件発明
訂正後の請求項1ないし3に係る発明(以下「本件発明1ないし3」という。)は、同日付の訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】 次の非重合体成分(A)及び(B):
(A)非エピ体カテキン類
(B)エピ体カテキン類のカテキン類を溶解して含有し、それらの含有重量が容器詰めされた飲料500mL当り、
(イ)(A)+(B)=500〜2500mg
(ロ)(A)=160〜2250mg
(ハ)(A)/(B)=0.67〜5.67であり、pHが3〜7である容器詰飲料。
【請求項2】 カテキン類の含有重量のうち30〜98重量%が、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキン及びガロカテキンである請求項1記載の容器詰飲料。
【請求項3】 茶の抽出液に茶抽出物の濃縮物を添加したものである請求項1又は2記載の容器詰飲料。」

イ.異議申し立ての理由の概要
異議申立人は、下記の甲第1号証ないし甲第14号証を提出して、
(1)本件発明1は、甲第1号証あるいは甲第6号証に記載された発明であり、また、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない、
(2)本件発明1ないし2は、甲第1号証に記載の発明と甲第2ないし5号証に記載の発明に基づいて、あるいは甲第6号証に記載の発明と甲第2、3、8号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであり、また、本件発明1は、甲第6号証、甲第9号証又は甲第13号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであり、また、本件発明3は、甲第1号証及び甲第12号証記載の発明に基づいて、あるいは甲第6号証及び甲第12号証記載の発明に基づいて、あるいは甲第1号証及び甲第13号証記載の発明に基づいて、あるいは甲第6号証及び甲第13号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるから、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない、
(3)本件発明1ないし2は、先願明細書(甲第10号証)に記載された発明と実質的に同一であると認められるから、同法第29条の2の規定により、特許を受けることができない、
(4)本件の請求項1の記載には不備があり、また、本件明細書には当業者が容易に実施できる程度に記載されておらず、同法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない、
旨主張している。

甲第1号証:「第37回財団法人東洋食品研究所顧問会 研究報告要旨」 23〜30頁
甲第2号証:「第36回財団法人東洋食品研究所顧問会議事録」11
〜23頁
甲第3号証:特開平4ー311348号公報
甲第4号証:社団法人静岡県茶業会議所編「新茶業全書」昭和41年10 月1日発行、476〜481頁
甲第5号証:Biosci.Biotech.Biochem.,57( 6),1993、907〜910頁
甲第6号証:特開平8ー298930号公報
甲第7号証:特開平10ー36260号公報
甲第8号証:「日本食品工業学会誌」第39巻第2号44〜48頁
甲第9号証:特開平3ー164136号公報
甲第10号証:特開2002ー68992号公報
甲第11号証:試験報告書
甲第12号証:特開平6ー311875号公報
甲第13号証:特開2000ー256345号公報
甲第14号証:EPーA 0 201 000

ウ.各甲号証記載の発明
甲第1号証には、「加熱緑茶飲料の抗菌物質の検索」との表題の下に、「今回、緑茶加熱生成抗菌物質を同定するために、緑茶と紅茶、ウーロン茶の抗菌活性とカテキン類を比較し、加熱緑茶飲料からの分離精製を試みたので報告する。」(23頁10〜11行)、及び「緑茶、紅茶の各飲料の高速液体クロマトグラムを図3に示す。同様の方法で分析した没食子酸とカテキン類の組成を表1に示す。・・・未加熱緑茶ではEGCgとEGCで大半を占め、ECgとECは少なく、加熱処理により緑茶カテキン類はエピマー化した。・・・総カテキンに対するカテキンの割合を見ると、緑茶は未加熱も加熱した試料もどちらもカテキン類が総カテキンの90%を占めた。」(24頁14〜20行)と記載され、表1(29頁)には、各種茶飲料のカテキン類組成が示され、この表1中の120℃加熱の緑茶飲料のカテキン量が97.1mg/100mlであることが示されている。
甲第2号証には、緑茶飲料の抗菌効果に及ぼす加熱の影響について記載され、「緑茶飲料を加熱殺菌するとエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートの緑茶カテキン類が減少することが報告されている。異性化では、加熱でエピカテキンがエピマーであるカテキンになることが報告されている。」(11頁下から6〜4行)、「緑茶カテキン類の加熱に伴う変化を図7に示した。4種類の緑茶カテキン類エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピカテキンが加熱により減少し、それに伴いこれらのエピマーが増加した。」(15頁6〜8行、22頁図7)、及び「緑茶飲料を100℃以上の温度で加熱することにより、緑茶飲料の抗菌活性が増加することが少なくとも明らかになった。この抗菌活性を示す成分は未同定であるが、カテキン除去でカテキン類と同様の挙動を示すことから、カテキン類の異性化物、重合物、分解物が関係していると考えられる。」(16頁8〜11行)と記載され、また、市販日本茶系飲料の総カテキンと可溶性固形分の関係が図示されている(20頁図3参照)。
甲第3号証には、「本発明は、緑茶を・・・抽出した後、・・・その抽出液のpHを約4.0〜5.0の酸性域に調整し、次いでこれを室温以下・・・に急冷することによって、濁りやオリの形成を促進させ、濁りやオリ中に各種の高分子化合物を取り込んで粒子を形成させた後、・・・その後、・・・その後抽出液のpHを約5.5〜7.0の中性域に調整してから、瓶・・・容器等の好ましくは透明容器に詰め、常法によって殺菌処理を行い、経時的に濁りやオリの発生の生じない緑茶飲料とする製造方法」(段落【0008】)が記載されている。
甲第4号証には、茶の味と味成分について、「緑茶中には、苦味、渋味のあるタンニン」(477頁2行)、「タンニンは、茶の味成分の中で最も多く含まれている。・・・茶葉では、その大部分が茶に特有ともいえるカテキン類で、主なものは、エピカテキン、・・・の4種である。」(477頁6〜10行)、及び「カテキンの味の特徴は、遊離型カテキンは渋味が弱く、温和な苦味があり、ガレートのタイプのものは強い苦渋味があるが、・・・比較的さらりとしていることである。」(477頁14〜16行)と記載されている。
甲第5号証には、緑茶浸出液におけるカテキン類の反応速度に及ぼすpH及び温度の効果について記載され、「熱処理中の茶カテキン類の安定性について試験を行った。茶カテキン類の変質の反応速度に及ぼすpH及び温度の効果について調査した。-ECの反応はpH6.0超では加速され、5.0未満では阻害された。弱酸性媒質中の-ECの主要な反応は異性化であった。」(抄訳1頁要旨)、「実験1 溶液のpHに関する-ECの反応・・-ECはそのエピマーである-Cに変化したと思われる。・・・本結果は、反応生成物がpH5.5以下では-ECの減少とともに比例的に増加し、pH6.0以上では著しく減少し、溶液の褐色化が加速されることを示した。」(同2頁12〜27行)、及び「要約すると、熱処理における-ECの主要な変化である異性化反応はpH6.0以上では加速され、pH5.0以下では阻害された。」(同3頁8、9行)と記載され、また、121℃で4.4分間熱処理されたクエン酸及びアスコルビン酸塩溶液における-ECの反応へのpHの影響及び430nmでの吸光度の変化が図示されている。(980頁、Fig.1参照)
甲第6号証には、
「【請求項1】 渋みを低減した茶抽出物または茶飲料。
【請求項2】 ポリフェノール類を配糖化することにより渋みを低減した茶抽出物または茶飲料。
【請求項3】 茶抽出物または茶飲料が、不発酵茶,半発酵茶,発酵茶,後発酵茶などの茶葉を原料としたものである請求項1記載の渋みを低減した茶抽出物または茶飲料。
【請求項4】 茶抽出物または茶飲料をデキストリン,サイクロデキストリンおよび澱粉のうちの少なくとも1種と混ぜ、これにサイクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させることを特徴とする渋みを低減した茶抽出物または茶飲料の製造方法。
【請求項5】 サイクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼがバチルス・ステアロサーモフィラス由来のものである請求項4記載の茶抽出物または茶飲料の製造方法。
【請求項6】 請求項1記載の渋みを低減した茶抽出物または茶飲料を含有する飲食物。」(請求項1〜6)、「本発明の目的は、茶に含まれる生理活性成分を含んだままで、渋みを低減した茶抽出物または茶飲料を提供することである。さらに、渋みを低減した茶抽出物または茶飲料を飲食物をはじめとして、化粧品,医薬品などの広い分野で十分に活用できるようにすることである。」(段落【0004】)、「本発明者らは茶抽出物または茶飲料の渋みの低減に関して、・・・茶抽出物または茶飲料をデキストリン,サイクロデキストリン,澱粉もしくはこれらの混合物と混ぜ、これにサイクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させることによって、渋みを低減した茶抽出物または茶飲料が得られることを見いだした。」(段落【0005】)、「本発明は、渋みを低減した茶抽出物または茶飲料、より具体的にはポリフェノール類を配糖化することにより渋みを低減した茶抽出物または茶飲料に関し、さらに茶抽出物または茶飲料をデキストリン,サイクロデキストリンおよび澱粉のうちの少なくとも1種と混ぜ、これにサイクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させることを特徴とする渋みを低減した茶抽出物または茶飲料の製造方法に関する。」(段落【0006】)、「上記の実施例および対照例で得た各粉末ならびに原料の緑茶抽出物(商品名:ポリフェノン60、三井農林株式会社製)を該緑茶抽出物の濃度で2000ppm相当となるように溶解した。」(段落【0022】)、及び「本発明の渋みを低減した茶抽出物および茶飲料は、生理活性成分であるポリフェノール類を含んだままで、従来の茶飲料や茶抽出物が持つ強い渋みが効果的に改善されている。そのため、このものは飲食物のみならず、嗜好品,化粧品,医薬部外品,医薬品などの広い分野に応用可能である。」(段落【0036】)と記載されている。
甲第7号証には「ポリフェノン60(三井農林株式会社製、組成:(-)エピガロカテキン 21.0%,(-)エピカテキン 7.3%,(-)エピガロカテキンガレート 29.2%,(-)エピカテキンガレート 7.9%)等がある。」(段落【0009】)と記載されている。
甲第8号証には、「緑茶缶詰の加熱殺菌により-ECが減少し、逆に+Cの増加することが分かった。そこで、この+Cの増加の原因を探るため標品の・・・121℃で6分間殺菌し加熱前後の変化を調べ、・・・従って、緑茶缶詰の加熱における+Cの増加については・・・-ECが多くこれが加熱により+Cに異性化するためと考えられる。」(181頁左欄2〜15行)、「緑茶抽出液にクエン酸を添加しpHを調整した後・・・121℃で6分間加熱殺菌し・・・その結果を図5にまとめた。・・・カテキン類は著しく影響を受けpHが低い程+C以外のカテキン類の残存率が高く、+Cの生成量も少なくなることを認めた。」(181頁右欄1行〜182頁左欄2行)、及び「カテキン類は・・・熱に不安定であった。・・・+Cの増加は-ECの異性化に由来すると推定した。・・・カテキン類の安定化が計れた。」(182頁左欄19〜24行)と記載されている。
甲第9号証には、「(a)水少なくとも80重量%:(b)カテキン・・・群より選択されるフラバノール類少なくとも0.05重量%:及び(c)フルーツフレーバー、・・・群より選択されるフレーバー物質少なくとも0.2重量%:を含むことを特徴とする飲料。」(特許請求の範囲の請求項1)、及び「飲料中におけるカテキン類又はフラバノール類の量は様々である。しかしながら、少なくとも約0.02%が用いられ、約0.05〜約1.0%が好ましい。」(4頁左下欄下から3行〜右下欄1行)と記載されている。
甲第12号証には、「飲料にポリフェノール類成分を添加し、沸点未満の加熱温度で高圧加圧して殺菌処理を行うことを特徴とする飲料の処理方法。」(特許請求の範囲請求項1)、「飲料にポリフェノール類成分を添加し、沸点未満の加熱温度で高圧加圧して殺菌処理を行うことにより、上記細胞胞子(芽胞)までも充分に殺菌することができる」(段落【0007】)、「本発明において処理対象とする飲料としては、バチルス属及びクロストリジウム属芽胞が発芽乃至生育してはならない中性飲料、または芽胞形成菌以外の細菌、酵母、或いはカビが生育してはならない中性の飲料である。例えば、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶、コーヒーなどが挙げられる。」(段落【0009】)、及び「本発明においてポリフェノール類成分としては、発酵茶から抽出して得られるポリフェノール類・・・などを使用することができるが、特にテアフラビンが有効である。」(段落【0010】)と記載されている。
甲第13号証には、新規なポリフェノール類の製造方法に関し、「ポリフェノール類のその他の機能として、飲食品の香味改善効果、虫歯予防効果などの機能性をも有するので、各種の飲料、冷菓類、菓子類、乳製品、魚肉製品、畜肉製品、各種麺類、加工食品などの広範囲な飲食品に適用することができる。それらは例えば、コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、清涼飲料、栄養飲料等の嗜好性欽料・ドリンク剤・・・等の飲食品に添加してその商品価値を高めることができる。」(段落【0026】)と記載されている。
甲第14号証には、「ブラックティーの葉を温水で抽出し、ブラックティーの葉の温水抽出物を濃縮、冷却して、実質的にすべてのティークリームを沈殿させることからなる、冷水に可溶なインスタントティーの製造プロセスにおいて、ブラックティーの葉の濃縮、冷却抽出物を、ティークリームを10℃-30℃の冷水に可溶できる適切な量のカテキンまたはカテキン混合物で処理することを特徴とするプロセス。」(訳文7頁13〜17行)、「カテキンが、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキンまたはこれら成分の混合物であることを特徴とする請求項1のプロセス。」(同7頁21〜23行)、及び「グリーンティーの葉からカテキンを抽出することを特徴とする請求項1のプロセス。」(同7頁26行)と記載されている。

先願明細書(甲第10号証参照。)には、「プロトンポンプインヒビターと併用することを特徴とし、かつ茶ポリフェノールを有効成分とするヘリコバクター・ピロリ菌除去剤、飲食物乃至食品添加物。」(特許請求の範囲請求項1)、「本発明における「プロトンポンプインヒビター(PPI)」は、ピリジン環を基本構造とするもの、スルフィニル基を基本構造とするもの、ベンズイミダゾール環を基本構造とするもの、のいずれであってもよく、例えば、オメプラゾール又はランソプラゾールを有効成分とするものを挙げることができる。」(段落【0016】)、「一方、「ヘリコバクター・ピロリ菌除去剤、飲食品乃至食品添加物」は、茶ポリフェノール、或いは茶ポリフェノールを高濃度で含有する茶抽出物を有効成分とする医薬品、医薬部外品、飲食物、及び食品添加物のいずれであってもよい。」(段落【0019】)、「茶ポリフェノールは、フラバン-3-オールの基本構造を有する次の茶カテキン、すなわち (-)-エピカテキン(EC)、(-)-エピガロカテキン(EGC)、(-)-エピカテキンガレート(ECG)、(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)、さらにその異性体である(±)-カテキン(C)、(-)-ガロカテキン(GC)、(-)-カテキンガレート(CG)、(-)-ガロカテキンガレート(GCG)、及び、遊離型テアフラビン、テアフラビンモノガレートA、テアフラビンモノガレートB、テアフラビンジガレートのいずれか、或いはこれらの2種類以上が組み合わさって混合してなるものを包含する意である。」(段落【0020】)、「「茶ポリフェノールを高濃度で含有する茶抽出物」としては、上記の茶を、水、温水または熱水、好ましくは40℃〜100℃の温熱水、中でも90〜100℃の熱水にて抽出して得られた抽出物、・・・茶抽出エキスを挙げることができる。・・・、緑茶を熱水抽出処理し、この抽出物を茶カテキン以外の成分を排除するためにカラム法により処理し乾燥させて、茶カテキン濃度を約85%とした緑茶エキス(伊藤園社製商品名:テアフラン90S)などを例示することができる。」(段落【0022】)、及び「上記茶ポリフェノール又は茶抽出物は、・・・乾燥粉末として提供することも、また液剤、錠剤、散剤、顆粒、糖衣錠、カプセル、トローチ剤、シロップ剤などとして、・・・医薬部外品として調製し、これを缶ドリンク飲料、瓶ドリンク飲料などの飲料形態、或いはタブレット、カプセル、トローチ(飴)、顆粒などの形態として、・・・例えば飲食物として提供する場合、例えば本発明における有効成分と、食品素材(果実やゼリーなども含む)、乳成分、炭酸、賦形剤(造粒剤含む)、希釈剤、或いは更に甘味剤、フレーバー、小麦粉、でんぷん、糖、油脂類等の各種タンパク質、糖質原料やビタミン、ミネラルなどから選ばれた一種或いは二種以上とを混合し、缶飲料、ボトル飲料、固形食物などに調製し、・・・」(段落【0023】)と記載され、その実施例2には、以下の処方が記載されている。
「(実施例2 ヘリコバクター・ピロリ菌除菌飲料の処方)
カテキン(茶ポリフェノール90%) 100〜500mg
サイクロデキストリン 0.5〜10%
グリセリン脂肪酸エステル 0〜10%
果糖ブドウ糖 0〜10%
ビタミンC 0〜1000mg
香料 0〜10mg
精製水 190〜500mg」
(段落【0037】)

エ.対比・判断
(1)29条1項3号違反について
(一)甲第1号証には、上記したように、緑茶の未加熱と120℃のカテキン類の組成が示され、これを本件発明1にならって、飲料500mL当たりの各カテキン量として計算すると、
未加熱 120℃加熱
(A) 非エピ体カテキン 21.65 234.9
(B) エピ体カテキン 443.0 250.6
となり、120℃加熱緑茶の場合、(A)+(B)=485.5、(A)=234.9、(A)/(B)=0.937と換算される。
これら数値を捉えて、異議申立人は、甲第1号証の表1に記載の120℃加熱処理後の緑茶飲料は、本件発明1の(イ)、(ロ)、(ハ)の条件を全て満たし、かつ、緑茶飲料においては、pH3〜7は通常のpH域である(甲第3号証)から、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であると主張している。
しかしながら、(i)甲第1号証は、緑茶飲料を100℃以上に加熱処理することで緑茶の抗菌活性が増加したという知見に基づいて、緑茶を加熱することで生成する抗菌活性物質を同定するために、緑茶等の抗菌活性とカテキン類を比較分析し、その実験結果を示したものであるが、該抗菌活性物質の検索、同定においては、カテキン類を高濃度で含む緑茶をサンプルとして用いた方が検索、同定し易いと考えられること、(ii)甲第1号証の「1.茶飲料の調製法 茶飲料の調製には一度煮沸脱気した純水を用いた。緑茶は60℃・・・の純水に茶葉を加え撹拌後、250メッシュ ナイロン濾布で濾した。」という記載からは、甲第1号証に記載の緑茶飲料が、従来公知の「流通させる緑茶飲料(容器詰緑茶飲料)」と同一の浸出条件で製造されたものか否か不明である(甲第1号証の上記箇所には、純水と茶葉の使用量、浸出時間等の数値が具体的に記載されていない。)こと、(iii)甲第1号証の表1に記載の120℃加熱緑茶飲料が、「流通させる緑茶飲料(容器詰緑茶飲料)」としての適性がある旨の記載は甲第1号証の何処にもないこと、及び(iv)本件特許の出願時、60mg/100ml程度のカテキン量を含む市販緑茶飲料が公知であったことは確認できる(甲第2号証及び甲第8号証参照。)が、異議申立人が提出した証拠からは、甲第1号証に記載されているような高濃度のカテキンを含む緑茶飲料が「流通させる緑茶飲料(容器詰緑茶飲料)」として公知あるいは周知であったという事実を見出せないこと、以上の事実を踏まえると、甲第1号証の緑茶飲料は、従来公知の「流通させる緑茶飲料」のカテキン等の組成と同じになることを想定して調製した緑茶サンプル、すなわち製品化を念頭においた緑茶サンプルであると解することはできない。
甲第1号証の表1に記載の緑茶飲料は、抗菌活性物質を同定する実験に供した単なるサンプルであって、「流通させる緑茶飲料(容器詰緑茶飲料)」として開示されたものではないというべきである。
加えて、本件発明1においては、上記訂正請求により、総カテキン類量を「(A)+(B)=500〜2500mg」に限定することにより、甲第1号証に記載の「485.5」を含まない構成になっており、この点でも両者の構成は相違する。
してみると、茶抽出液のpHを約5.5〜7.0の中性域に調整することが甲第3号証に記載されていることを参酌するも、本件発明1は、甲第1号証に記載の発明であるということはできない。
また、本件発明2は、請求項1を引用する発明であるから、本件発明1と同様の理由で、甲第1号証に記載の発明であるということはできない。

(二)次に、本件発明1が甲第6号証に記載された発明であるか否かについて検討する。
甲第6号証には、ポリフェノン60(三井農林株式会社製)を緑茶抽出物の濃度で2000ppmとなるように溶解したと記載され、甲第7号証には、ポリフェノン60(三井農林株式会社製)の組成が「(-)エピガロカテキン 21.0%,(-)エピカテキン 7.3%,(-)エピガロカテキンガレート 29.2%,(-)エピカテキンガレート 7.9%」であることが記載されている。
かかる記載を捉えて、異議申立人は、ポリフェノン60(三井農林株式会社製)を緑茶抽出物の濃度で2000ppmとなるように溶解した溶液を飲料として製品化すれば、本件発明1の飲料となるのであるから、本件発明1は実質的に甲第6号証に記載の発明と同一であると主張する。
上記主張について検討すると、甲第6号証に記載の発明は、茶抽出物または茶飲料をデキストリン、サイクロデキストリン、澱粉もしくはこれらの混合物と混ぜ、これにサイクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させることによって、渋味を低減した茶抽出物または茶飲料を製造したものである。
異議申立人が指摘する「上記の実施例および対照例で得た各粉末ならびに原料の緑茶抽出物(商品名:ポリフェノン60、三井農林株式会社製)を該緑茶抽出物の濃度で2000ppm相当となるように溶解した。」との箇所は、それに続く「これら3種類のサンプルについて3点比較法で試験を行い、渋味が少ないものを選択させ評価した。なお、官能検査は20人のパネラーに対して行った。」との記載から明らかなように、上記サイクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させることによる渋味低減効果を確認する目的でなされた比較実験について説明した箇所であり、しかも、「原料の緑茶抽出物(商品名:ポリフェノン60、三井農林株式会社製)を該緑茶抽出物の濃度で2000ppm相当となるように溶解した。」という記載でもって示される緑茶サンプルは、渋味等の呈味性に問題がある比較例として扱われている。
上記比較実験においては、カテキン類を高濃度で含む緑茶飲料を対照サンプルとして選択した方が、サイクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ作用による渋味低減効果をより強調できると考えられること、加えて、甲第6号証には、従来公知の茶飲料に比べて高濃度のカテキンを含有する茶飲料を提供するという技術的課題について言及する記載は何もないこと、また、異議申立人が提出した各甲号証を精査するも、本件特許の出願時、甲第6号証において比較例として扱われているような高濃度のカテキンを含む緑茶飲料が「流通させる緑茶飲料(容器詰緑茶飲料)」として公知あるいは周知であったという事実は見出せないことを併せ考慮すると、甲第6号証において比較例(対照例)として示される緑茶飲料は、従来公知の「流通させる緑茶飲料(容器詰緑茶飲料)」のカテキン等の組成と同じになることを想定して調製した茶サンプル、すなわち製品化を念頭においた茶サンプルであると解することはできず、甲第6号証に係る発明における上記酵素作用の効果を確認する比較実験に供した単なる緑茶サンプルであるというべきである。
さらに付け加えると、本件発明1は、エピ体カテキン類と非エピ体カテキン類の混合比を「(A)/(B)=0.67〜5.67」に限定するものであるが、甲第7号証に記載されているポリフェノン60(三井農林株式会社製)の成分組成を参酌すると、甲第6号証において比較例として調製された緑茶飲料は、そこに含まれるカテキン類はそのほとんどがエピ体であると推認できる。
そして、先に記載したとおり、上記比較例の緑茶飲料は製品化を念頭においたものではない以上、該緑茶飲料に対して加熱殺菌を行うことが甲第6号証に実質的に記載されているということはできず、したがって、上記比較例の茶飲料(カテキン類はエピ体のままである。)は、本件発明1で特定する「(A)/(B)=0.67〜5.67」の要件を満足するものとはいえない。
してみると、甲第7号証の記載を参酌するも、本件発明1は、甲第6号証に記載された発明であるということはできない。

(2)29条2項違反について
(請求項1に係る発明について)
(一)当該技術分野において、カテキン類は、コレスロール上昇抑制作用等の生理作用を有することが知られ、多量のカテキン類を容易に摂取できる形態の飲料が望まれていたが、カテキン類の増量を茶葉からの抽出により行った場合、容器詰飲料の外観が濁りやすく、また長期間にわたって保存すると時間の経過と共に薄緑色から見苦しい茶色へと色調が大きく変化してしまうという問題があったところ、本件発明1は、飲料中の非エピ体カテキン類の含有量を「160〜2250mg」の範囲にすると共に、非エピ体カテキン類(A)とエピ体カテキン類(B)の含有比率を「(A)/(B)=0.67〜5.67」の範囲とすることにより、上記技術的課題を解決して、高濃度にカテキン類を含有するにもかかわらず、長期間保存しても安定した色調、外観の透明性を呈する容器詰飲料を提供できるようにしたものである。
これに対して、甲第1号証には、本件発明1の容器詰飲料のカテキン組成と一見類似する緑茶飲料が記載されているが、該緑茶飲料は、先に記載したとおり、抗菌活性物質を同定する実験に供した単なるサンプルであるというべきであって、製品化を念頭においた緑茶飲料ではない。
甲第1号証は、「加熱緑茶飲料の抗菌物質の検索」との表題から明らかなとおり、緑茶飲料中の抗菌物質を実験により同定しようとしたものであって、甲第1号証には、カテキン類を高濃度で含む緑茶飲料が抱える上記技術的課題について言及する記載は何もなく、まして、飲料中の非エピ体カテキン類の含有量を「160〜2250mg」の範囲にすると共に、非エピ体カテキン類(A)とエピ体カテキン類(B)の含有比率を「(A)/(B)=0.67〜5.67」の範囲とすること、及びかかる構成に基づいて、高濃度にカテキン類を含有するにもかかわらず、長期間保存しても安定した色調、外観の透明性を呈する容器詰飲料が得られるという本件発明1の効果を教示する記載は何もない。
また、甲第2号証には、緑茶飲料を加熱処理することにより非エピ体カテキンの割合が高まることが、甲第3号証には、茶抽出液のpHを約5.5〜7.0の中性域に調整してから、瓶等の透明容器に詰め、常法によって殺菌処理を行って緑茶飲料を製造することが、甲第4号証には、茶飲料の苦味や渋味にカテキンが関与していることが、甲第5号証には、pH3〜7において-EC(エピカテキンの意)を121℃、4.4分間加熱したときにpHが高くなれば430nmの吸光度が上昇すること、及びpH6.0以上では溶液の褐色化が加速されることが、それぞれ記載されているが、これらの記載からは、緑茶飲料を加熱処理することでエピマー化反応により非エピ体カテキンの割合が高まることが本件特許の出願時公知であったこと、及び茶飲料においてpHを3〜7の範囲内に調整することは極く普通のことであるという事実が把握できるのみである。
そうすると、甲第1号証記載の発明と甲第2ないし5号証記載の発明を組み合わせたとしても、容器詰飲料の製造において、飲料中の非エピ体カテキン類の含有量を「160〜2250mg」の範囲にすると共に、非エピ体カテキン類(A)とエピ体カテキン類(B)の含有比率を「(A)/(B)=0.67〜5.67」の範囲とすることは、当業者において容易に想到し得ることではない。
そして、本件発明1は、上記構成を採用することにより、高濃度にカテキン類を含有するにもかかわらず、長期間保存しても安定した色調、外観の透明性を呈する容器詰飲料が得られるという甲第1ないし6号証記載の発明からは予測できない効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載の発明と甲第2ないし5号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(二)次に、本件発明1が甲第6号証に記載の発明と甲第2、3、8号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるか否かについて検討する。
甲第6号証には、上記したように、ポリフェノン60(三井農林株式会社製)を緑茶抽出物の濃度で2000ppmとなるように溶解した緑茶飲料が比較例として記載されているが、該緑茶飲料は、製品化を念頭においた緑茶飲料ではなく、甲第6号証に係る発明の効果を確認する実験に供した単なる茶サンプルである。
甲第6号証には、カテキン類を高濃度で含む緑茶飲料における上記技術的課題に言及する記載は何もなく、まして、飲料中の非エピ体カテキン類の含有量を「160〜2250mg」の範囲にすると共に、非エピ体カテキン類(A)とエピ体カテキン類(B)の含有比率を「(A)/(B)=0.67〜5.67」の範囲とすること、及びかかる構成に基づいて、高濃度にカテキン類を含有するにもかかわらず、長期間保存しても安定した色調、外観の透明性を呈する容器詰飲料が得られるという本件発明1の効果を教示する記載は何もない。
また、上記したとおり、甲第2号証及び甲第3号証の記載からは、緑茶飲料を加熱処理することでエピマー化反応により非エピ体カテキンの割合が高まることが本件特許の出願時公知であったこと、及び茶飲料においてpHを3〜7の範囲内に調整することは極く普通のことであるという事実が把握できるのみである。
また、甲第8号証には、緑茶缶詰を加熱殺菌すると、エピ体カテキンが減少し、非エピ体カテキンが増加することが記載されているのみである。
そうすると、甲第6号証記載の発明と甲第2、3及び8号証記載の発明を組み合わせたとしても、容器詰飲料の製造において、飲料中の非エピ体カテキン類の含有量を「160〜2250mg」の範囲にすると共に、非エピ体カテキン類(A)とエピ体カテキン類(B)の含有比率を「(A)/(B)=0.67〜5.67」の範囲とすることは、当業者において容易に想到し得ることではない。
そして、本件発明1は、上記構成を採用することにより、上記したとおりの効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲第6号証に記載の発明と甲第2、3及び8号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(三)さらに、甲第9、12、13号証の記載を検討しても、以下のとおり本件発明1の進歩性を否定することはできない。
甲第9号証には、カテキンを約0.02%〜約1.0%含有させた飲料が、甲第12号証には、飲料に発酵茶から抽出して得られるポリフェノール類を添加して飲料を製造することが、甲第13号証には、ポリフェノール類は飲食品の香味改善効果、虫歯予防効果などの機能を有し、該ポリフェノール類を紅茶、緑茶、ウーロン茶等に添加してその商品価値を高めることができることが、それぞれ記載されているのみである。
そうすると、甲第1号証又は甲第6号証と甲第9、12、13号証記載の発明を組み合わせたたとしても、本件発明1は、これら刊行物に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。

(請求項2、3に係る発明について)
本件発明2は、請求項1を引用する発明であるから、本件発明1と同様の理由で、甲第1号証に記載の発明と甲第2ないし5号証に記載の発明に基づいて、あるいは甲第6号証に記載の発明と甲第2、3、8号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
また、本件発明3は、請求項1を引用する発明であるから、本件発明1と同様の理由で、甲第1号証及び甲第12号証記載の発明に基づいて、あるいは甲第6号証及び甲第12号証記載の発明に基づいて、あるいは甲第1号証及び甲第13号証記載の発明に基づいて、あるいは甲第6号証及び甲第13号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(3)29条の2違反について
先願明細書(甲第10号証参照)には、ヘリコバクター・ピロリ菌を有効に除菌する目的で、プロトンポンプインヒビターと併用して用いられる「茶ポリフェノールを有効成分とするヘリコバクター・ピロリ菌除去剤、飲食物乃至食品添加物」が記載され、その実施例2には、以下の処方が記載されている。
「(実施例2 ヘリコバクター・ピロリ菌除菌飲料の処方)
カテキン(茶ポリフェノール90%) 100〜500mg
サイクロデキストリン 0.5〜10%
グリセリン脂肪酸エステル 0〜10%
果糖ブドウ糖 0〜10%
ビタミンC 0〜1000mg
香料 0〜10mg
精製水 190〜500mg」

しかし、先願明細書には、少なくとも、飲料中の非エピ体カテキン類の含有量を「160〜2250mg」の範囲にすると共に、非エピ体カテキン類(A)とエピ体カテキン類(B)の含有比率を「(A)/(B)=0.67〜5.67」の範囲とすること、及びかかる構成に基づいて、長期間保存しても安定した色調、外観の透明性を呈する容器詰飲料が得られることについて何も記載されていない。
異議申立人は、甲第11号証(試験報告書)を提出し、上記実施例2を追試し、先願明細書の実施例2に記載の飲料を製品化すれば、本件発明1の(イ)、(ロ)、(ハ)の条件を満たす旨主張する。
上記主張について検討する。
(i)先願明細書に記載の発明(以下、「先願発明」という。)は、プロトンポンプインヒビター(抗消化性潰瘍薬、以下「PPI」ともいう。)と茶ポリフェノールとを併用することにより、臨床的にも有効にヘリコバクター・ピロリ菌を除菌することができるという事実を見出し、かかる知見に基づいてなされたものである。
先願発明においては、PPIと併用して所定量の茶ポリフェノールを摂取すれば所期の効果が奏されるのであり、茶ポリフェノールの摂取にあたって、それを含む飲食品の種類、形態は何ら限定されるものではない。
すなわち、先願発明においては、錠剤、カプセル、トローチ(飴)、顆粒等の形態で、或いは固形食品、各種飲料、ゼリー状食品、食品添加物等の種々の飲食物の形態で茶ポリフェノールを摂食することができる。
そうだとすると、先願明細書の実施例2は、茶ポリフェノールの摂食にあたって、利用可能な飲食品が多数ある中で、単に1つの例として飲料を例示したものであるということができる。
(i)一方、実施例2の処方をみると、「カテキン(茶ポリフェノール90%)」を「100〜500mg」の範囲で使用すること、及び「精製水」を「190〜500mg」の範囲で使用することが記載され、かかる数値範囲内において、両者の数値の組み合わせによっては、上記実施例2の飲料は、本件発明1で特定するカテキン含有量よりはるかに低いカテキン量を含むものから、本件発明1で特定するカテキン含有量の範囲に含まれる高濃度のカテキン類を含むものまで、広範囲のカテキン濃度を有する飲料を包含するものである。
上記(i)及び(ii)の事実を踏まえると、先願明細書の実施例2の処方において、カテキン類と水の使用割合についての漠然とした記載をもって、本件発明1において限定する特定のカテキン類濃度を有する飲料、すなわち本件発明1の上記構成(イ)を備えた容器詰飲料が、先願明細書の実施例2に具体的に記載されているということはできない。
してみると、甲第11号証の追試結果を参酌したとしても、あるいは飲料の製品化において加熱殺菌することが当業者における慣用手段であることを考慮したとしても、上記実施例2に記載の処方をもって、本件発明1の上記(イ)、(ロ)、(ハ)の構成を備えた容器詰飲料が、先願明細書に具体的に記載されているとまではいえない。
したがって、本件発明1は、先願明細書(甲第10号証)に記載された発明と同一であるとすることはできない。
また、本件発明2は、請求項1を引用する発明であるから、本件発明1と同様の理由で、先願明細書(甲第10号証)に記載された発明と同一であるとすることはできない。

(4)36条4項及び6項2号違反について
(特許請求の範囲の記載不備について)
異議申立人は、請求項1の記載は、発明を特定するための事項どうしの関係が整合していない結果、発明が技術的に正確に定義されず不明確となっていると主張する。
しかし、特許権者が提出した参考資料1の図からも明らかなとおり、本件発明1において、容器詰飲料に含有させる非エピ体カテキン類とエピ体カテキン類の量は、請求項1の(イ)、(ロ)、(ハ)の三式で規定される範囲、つまり三式を同時に満足する範囲の量であることは明確であり、本件請求項1には異議申立人が主張するような記載不備は存在しない。
また、異議申立人は、本件請求項1で特定する(イ)(ロ)(ハ)の各上限値及び下限値は根拠のない数値であり、不当に広い範囲が特定され、技術的に正確に定義されたものとはいえない旨縷々主張する。
しかし、上記(イ)(ロ)(ハ)の数値限定の技術的意義については、本件明細書の段落【0012】、【0013】及び【0015】に記載されており、かつ本件明細書の表2ないし4に記載の実施例1ないし9及び比較例1ないし3の数値から、非エピ体カテキン類とエピ体カテキン類の量が請求項1の(イ)、(ロ)、(ハ)の条件を満足すれば、本件発明1が明細書に記載の効果を奏することが容易に予測できるので、本件請求項1には異議申立人が主張するような記載不備は存在しない。

(発明の詳細な説明の記載不備について)
異議申立人は、容器詰飲料をどのように調製したのか不明である旨主張する。
しかし、本件発明1ないし3の容器詰飲料の調製方法については、本件明細書の段落【0007】、【0009】、【0011】、【0017】等、及び実施例1ないし2に具体的に記載されており、これらの記載に基づいて当業者ならば本件発明1ないし3の容器詰飲料を容易に調製できるものと認める。
異議申立人が指摘する本件明細書の段落【0029】の「所定の処理」については、本件明細書の段落【0030】の表1におけるpH及び後処理の箇所に明確に記載されており、異議申立人が主張するような記載不備は存在しない。
また、異議申立人は、実施例1の茶抽出濃縮物b及びdは、どのように入手したのか或いは製造したのか不明である旨主張しているが、加熱処理とpH調整を組み合わせてエピ体カテキン類と非エピ体カテキン類の比率を調整できることが本件明細書の段落【0011】等に記載されていることからすれば、実施例1の茶抽出濃縮物b及びdを調製することは、茶抽出濃縮物a及びcから当業者において容易になし得る程度のことである。
さらに、異議申立人は、本件明細書の実施例1の茶抽出物濃縮物dの非エピ体/エピ体比率と、飲料段階におけるカテキンの同比率を比較した場合、非エピ体/エピ体比率が逆転しているのはおかしい旨主張しているが、前記主張は具体的試験データに基づくものではないので、異議申立人の上記主張は採用しない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び提出した証拠によっては、本件請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
容器詰飲料
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の非重合体成分(A)及び(B):
(A)非エピ体カテキン類
(B)エピ体カテキン類のカテキン類を溶解して含有し、それらの含有重量が容器詰めされた飲料500mL当り、
(イ)(A)+(B)=500〜2500mg
(ロ)(A)=160〜2250mg
(ハ)(A)/(B)=0.67〜5.67であり、pHが3〜7である容器詰飲料。
【請求項2】 カテキン類の含有重量のうち30〜98重量%が、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキン及びガロカテキンである請求項1記載の容器詰飲料。
【請求項3】 茶の抽出液に茶抽出物の濃縮物を添加したものである請求項1又は2記載の容器詰飲料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はカテキン類を高濃度に含有する容器詰飲料に関する。
【0002】
【従来の技術】緑茶、紅茶、ウーロン茶などの茶飲料は、カテキン類の効果としてはコレステロール上昇抑制剤(特開昭60-156614号公報)やαアミラーゼ活性阻害剤(特開平3-133928号公報)などにおいて、その生理的な有益性が報告されている。またこれらの飲料を上市する際には、それぞれの飲料のもつ風味、色調や、保存時の変化に対応すべくあらゆる方法が講じられてきた。例えば天然型カテキン類を良好に保存させ、風味と色調を整える目的で抽出時にpHを制御する方法(特開平5-168407号公報)や、加圧し且つ低温域での殺菌を実施することにより風味などの品質を長期保存できるようにする方法(特開平5-49401号公報)などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】カテキン類の生理作用を、より効果的に発現させるためには、カテキン類の摂取量を増やすことが必要である。カテキン類を摂取する上で、多量のカテキン類を容易にとりやすい飲料形態が、嗜好性・市場性から望ましい。ところが有効成分であるカテキン類の増量を茶葉からの抽出により行うと、容器詰飲料の外観が濁りやすく、また容器詰飲料を長時間にわたって保存すると色調の変化が大きく、商品としては不適切なものとなる。飲料は徐々に着色が進み、時間が経つにつれて、所望の薄緑色から見苦しい茶色に変化する。濁りについても同様で、時間が経つにつれて混濁が生じ、更に進んで目に見える粒子が生じる。着色の原因としては一般にカテキン類の酸化によって形成された酸化ポリフェノールが原因だと言われている。また濁りについては、カテキン類やカテキン類の酸化によって生成した酸化ポリフェノールが飲料成分と相互作用することにより生じ、特に酸性飲料や中性飲料で起こる現象であると言われている。これらの飲料の変色及び濁りは視覚的に魅力あるものではなく、商品を上市する上で大きな課題となる。本発明はカテキン類の含有量が多い飲料においても、長時間保存しても安定した色調、外観の透明性を呈する容器詰飲料を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、高濃度でカテキン類を含有する容器詰飲料のカテキン類の非エピ体及びエピ体の特定含有比率のものが、長時間にわたって保存しても色調、外観の透明性が安定であることを見出した。本発明は、次の非重合体成分(A)及び(B):
(A)非エピ体カテキン類
(B)エピ体カテキン類のカテキン類を溶解して含有し、それらの含有重量が容器詰めされた飲料500mL当り、
(イ)(A)+(B)=500〜2500mg
(ロ)(A)=160〜2250mg
(ハ)(A)/(B)=0.67〜5.67であり、pHが3〜7である容器詰飲料を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明でカテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレートなどの非エピ体カテキン類及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどのエピ体カテキン類をあわせての総称である。
【0006】本発明に使用するカテキン類は、Camellia属、例えばC.sinensis及びC.assaimica、やぶきた種又はそれらの雑種から得られる茶葉から製茶された、煎茶、玉露、てん茶などの緑茶類や、総称して鳥龍茶と呼ばれる鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の半発酵茶、紅茶と呼ばれるダージリン、アッサム、スリランカなどの発酵茶の茶葉から水や熱水により抽出して得られる。茶を抽出する方法については、攪拌抽出など従来の方法により行う。また抽出時の水にあらかじめアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。また煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつついわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法も併用してもよい。
【0007】カテキン高含有飲料を調製する方法としては、茶抽出物の濃縮物を水に溶解して用いたり、一般的に飲まれる茶飲料と茶抽出物の濃縮物とを併用することが好ましい。茶抽出物の濃縮物を溶解する媒体は、水、炭酸水、市販されているレベルのカテキン類を含有する茶類の抽出液等が挙げられる。また、ここでいう茶抽出物の濃縮物とは、茶葉から熱水もしくは水溶性有機溶媒により抽出された抽出物を濃縮したものであって、特開昭59-219384号公報、特開平4-20589号公報、特開平5-260907号公報、特開平5-306279号公報などに詳細に例示されている方法で調製したものをいう。市販の三井農林(株)「ポリフェノン」、伊藤園(株)「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」、サントリー(株)「サンウーロン」等が挙げられる。そのほか、カテキンは他の原料起源のもの、カラム精製品及び化学合成品でも使用できる。ここでいう茶抽出物の濃縮物の形態としては、固体、水溶液、スラリー状など種々のものが挙げられる。
【0008】これらのカテキン類は、茶の抽出液中では、非重合体であり、かつ溶解しているものと、茶の微細粉末に吸着、包含された固体状のものとがある。本発明において使用するカテキン類は、茶の抽出物などをろ過し、乾燥などして得られる抽出物の濃縮物を溶解したものである。
【0009】ポリフェノールは抽出前の茶葉の発酵状態が進むにつれて増加するので、水又は茶の抽出液に各種茶抽出物の濃縮物を添加する場合は、特に緑茶抽出物の濃縮物が好ましい。
【0010】茶葉中においては、カテキンは大部分がエピ体として存在しているが、熱や酸やアルカリなどの処理により立体異性体である非エピ体に変化する。エピ体と非エピ体との性質の違いについては、同一分子式でもエピ体に比べ非エピ体は融点の大幅な降下などが認められ、成分によってはエピ体と非エピ体との混合比により、更に融点降下する場合などがある。しかしながら、非エピ体とエピ体との機能性の違いについて検討はほとんどされていない。
【0011】非エピ体カテキン類は、緑茶類、半発酵茶類又は発酵茶類からの抽出物や茶抽出物の濃縮物を水溶液にして、例えば40〜140℃、0.1分〜120時間加熱処理して得ることができる。非エピ体カテキン類の生成のしやすさから、溶液のpHは4.5以上が好ましい。また非エピ体カテキン類含有量の高い茶抽出物の濃縮物を使用してもよい。それらは単独又は併用してもよい。
【0012】本発明の容器詰飲料は、非重合体であって水に溶解状態にある成分(A)非エピ体カテキン類と同じく非重合体であって水に溶解状態にある成分(B)エピ体カテキン類を、容器詰めされた飲料500mL当り合計量500〜2500mg含有するが、好ましくは500〜1300mg、更に好ましくは600〜1300mg、特に640〜800mg含有するのが好ましい。この量であるとカテキン類の多量の摂取が容易でありながら、強烈な苦味、渋味、強い収斂性も生じなく好ましい。
【0013】また成分(A)は、容器詰めされた飲料500mL当り160〜2250mg含有するが、特に160〜1880mg含有するのが好ましい。この量であると、長時間保存しても色調が安定し、外観の透明性も維持され、風味が損なわれず好ましい。
【0014】特に、添加する茶抽出物の濃縮物、特に、好ましい緑茶抽出物の濃縮物の味との関係から、カテキン濃度を上げても、半発酵茶である鳥龍茶や、発酵茶である紅茶との組み合せば、カテキン類の渋味が緩和され、嗜好性が優れていて好ましい。容器詰飲料中で総ポリフェノール中のカテキン類の含有率としては、製造直後でカテキン量が10重量%以上で、好ましくは20重量%以上である。
【0015】更に成分(A)と成分(B)の含有重量比は(A)/(B)=0.67〜5.67であるが、特に0.80〜5.67が好ましい。この範囲であると長時間保存しても色調が安定し、外観の透明性も維持され、風味が損なわれず好ましい。
【0016】また、カテキン類の含有量の30〜98重量%、好ましくは40〜90重量%が、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキン、ガロカテキンから選ばれたものであると、飲料としての呈味が更に優れ、後を引くような収斂性もなく好ましい。ここでエピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキン、ガロカテキンは1種以上含有するが、通常は全て含有される。
【0017】カテキン類の合計含有量のうち茶抽出物の濃縮物由来のカテキン類含有量の占める比率が、5〜100重量%であり、更に好ましくは10〜100重量%、特に20〜100重量%含有することが好ましい。茶抽出液の抽出条件の振れや茶葉の品種、産地によるロットブレがあるため、茶抽出液だけではカテキン類含有量の制御が難しい。また、茶葉から本発明のカテキン類含有量を抽出するためには、過酷な抽出条件となるため、強烈な苦味、渋味、強い収斂性を生じやすい。それに対して、茶抽出液と茶抽出物の濃縮物とを併用すると、簡便にカテキン量の調節が可能になるだけでなく、特にこの範囲であると、強烈な苦味、渋味、強い収斂性も生じないし、長時間保存しても色調が安定し、外観の透明性も維持され、風味が損なわれず好ましい。
【0018】容器詰飲料のpHは、25℃で3〜7、好ましくは4〜7、特に5〜7とするのが、味及びカテキン類の化学的安定性の点で好ましい。
【0019】容器詰飲料の濁度は、ヘイズ値22以下、好ましくは14以下、特に12以下にすると視覚的魅力、喉ごし、更にカテキン類の安定保持性、色差変化が小さくなる点で好ましい。ここでヘイズ値とは、光路長10mmのガラスセルを透過した透過光と散乱光をあわせた状態で測定される値で、0〜100の値をもち、値が小さい程透明性が高い。
【0020】また、これらカテキン類は、果汁などの他の飲料成分と組み合わせることで、幅広い範囲の茶含有容器詰飲料を提供することが可能である。例えばソフトドリンクである炭酸飲料、果実エキス入り飲料、野菜エキス入りジュースや、ニアウオーター、スポーツ飲料、ダイエット飲料などに適宜添加することもできる。また本発明は、長時間保存時に安定した色調と外観の透明性を呈する容器詰飲料に、消費者の嗜好にあわせて茶葉の微粉末のような不溶性化合物をあえて懸濁させた形態の容器詰飲料も可能である。
【0021】本発明の容器詰飲料には、茶由来の成分にあわせて、処方上添加して良い成分として、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合しても良い。例えば甘味料としては、砂糖、ぶどう糖、果糖、異性化液糖、グリチルリチン、ステビア、アスパラテーム、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、その他のオリゴ糖としてシクロデキストリンが挙げられる。シクロデキストリンとしては、α-、β-、γ-シクロデキストリン及び、分岐α-、β-、γ-シクロデキストリンが使用できる。また、人工甘味剤も使用できる。酸味料としては、天然成分から抽出した果汁類のほか、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、リン酸が挙げられる。無機酸類、無機酸塩類としてはリン酸、リン酸二ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムなどが、有機酸類、有機酸塩類としてはクエン酸、コハク酸、イタコン酸、リンゴ酸、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0022】容器詰飲料に使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などの通常の形態で提供することができる。ここでいう容器詰飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0023】また本発明の容器詰飲料は、例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造される。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。更に、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。本発明の容器詰飲料は高濃度のカテキン類を含有させ、かつ非エピ体含有量を多くしたことにより、容器詰飲料を長時間保存時の色調、外観の透明性の安定性を高めるものである。
【0024】
【実施例】カテキン類の測定
フィルター(0.8μm)でろ過した飲料を、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL-10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラムL-カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により行った。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有の蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有のアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0025】濁度の測定
株式会社 村上色彩技術研究所製のヘイズ・透過率計(型式HR-100)を用い、ガラスセル(光路長10mm 横35mm 縦40mm)に容器詰飲料を入れてヘイズ値(H)を25℃で測定した。
評価 ヘイズ値(H)
1 H≦14
2 14<H≦22
3 22<H
【0026】色調の測定
ミノルタ株式会社製 色差計(型式CT-310)を用い、光路長20mmのガラスセルを使用する。C光源でイオン交換水を入れて校正をしたのち、容器詰飲料のL*、a*、b*値を25℃で測定する。サンプルは、容器詰飲料を50℃の熱風循環式乾燥機に40時間静置したものを使用した。L*、a*、b*表色系による色差(ΔE)は株式会社総合技術センター発行の色彩技術ハンドブック(村田幸男著)119頁のIV、3式に記載の計算式に従い算出する。色差は、50℃の熱風循環式乾燥機に入れる前を基準とし、サンプルとの差分をΔEとした。
(数式)
評価 ΔE
1 ΔE<10
2 10≦ΔE<20
3 20≦ΔE<30
4 30≦ΔE
【0027】保存時の透明性(外観の目視判定)
容器詰飲料を50℃の熱風循環式乾燥器に40時間静置する促進試験を行った後、保存前の容器詰飲料を基準として目視による透明性の変化を判定した。
評価
1 ほとんど変化が認められない
2 やや変化が認められる
3 変化が認められる
【0028】
安定性
色差の変化、目視による透明性の変化を考慮して判定した。
評価
1 色差の変化が1以下で目視判定が1のもの
2 色差の変化が2又は目視判定が2のもの
3 色差の変化が3又は目視判定が3のもの
【0029】実施例1
表1に示す成分を混合して、所定の処理を行って後、表1の容器に詰めて容器詰飲料を製造した。
【0030】
【表1】

【0031】
*1 鳥龍茶葉33gを85℃に加熱保持したイオン交換水1kgに加えて、8分間抽出し、次いで熱交換器で冷却しながらネルろ布でろ過したもの。
*2 茶抽出物の濃縮物
a カテキン類含有量33%、非エピ体含有量4%(三井農林(株)製)
b カテキン類含有量33%、非エピ体含有量14%
c カテキン類含有量30%、非エピ体含有量3%(三井農林(株)製)
d カテキン類含有量30%、非エピ体含有量14%
*3 本発明1、2、比較1及び2は、クエン酸/リン酸二ナトリウム、本発明3及び比較3は、クエン酸、本発明4は、炭酸水素ナトリウムで調製した。
*4 10秒(殺菌工程前に脱気ラインを通る)
【0032】本発明1〜4及び比較1〜3の各容器詰飲料500mL中のカテキン類の分析結果及び性状測定結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】本発明1〜4は、いずれも比較1〜3に比べて経時の透明性の変化もみられず、色調も安定しており優れたものであった。
【0035】実施例2
クリーンベンチ内で、表3に記載の茶葉100gを温度80℃の蒸留水1000gで10分間抽出し、ろ過した茶抽出液を調製した。次に、下記組成の飲料を混合し、脱気後、139℃で10秒間加熱処理後、500mLペットボトルに充填して容器詰飲料を製造した。25℃の容器詰飲料を手でよく振ってから開缶し、パネラー5名が飲用したときの、喉ごしを評価した結果を表3に示す。
【0036】
【表3】

【0037】本発明5及び6は、保存時の色調の安定性や透明性の変化がほとんどない容器詰飲料であった。飲んだときの喉ごしも良く、嗜好性の高い飲料であった。
【0038】実施例3
表4の容器詰飲料を製造した。
【0039】
【表4】

【0040】本発明7〜9は、いずれも保存時の色調の安定性や透明性の変化がほとんどない容器詰飲料であった。飲んだときの喉ごしも良く、嗜好性の高い飲料であった。
【0041】
【発明の効果】
本発明の容器詰飲料は、長時間にわたって保存しても色調と外観の透明性の安定性が優れ、風味の嗜好性もよい。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-10-23 
出願番号 特願2000-350712(P2000-350712)
審決分類 P 1 651・ 113- YA (A23F)
P 1 651・ 537- YA (A23F)
P 1 651・ 121- YA (A23F)
P 1 651・ 536- YA (A23F)
P 1 651・ 161- YA (A23F)
最終処分 維持  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 種村 慈樹
柿沢 恵子
登録日 2002-07-19 
登録番号 特許第3329799号(P3329799)
権利者 花王株式会社
発明の名称 容器詰飲料  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 花田 吉秋  
代理人 竹内 三郎  
代理人 市澤 道夫  
代理人 花田 吉秋  
代理人 市澤 道夫  

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