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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1091497
異議申立番号 異議2003-70284  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-01-29 
確定日 2004-01-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第3309276号「蛍光電子内視鏡システム」の請求項1、2に係る発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3309276号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3309276号の請求項1,2に係る発明についての出願は、平成11年3月17日に特許出願され、平成14年5月24日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、申立人、小林敏樹より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年7月10日に意見書が提出されたものである。
2.特許異議の申立ての概要
申立人は、請求項1に係る発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて、また、請求項2に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1,2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきものであると主張している。
3.請求項1,2に係る発明
特許第3309276号の請求項1,2に係る発明(以下、「本件発明1」「本件発明2」という。)は、それぞれ、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項によって特定されるもので、構成要件に分けて記載すれば次のとおりである。(A〜Fの記号は、便宜上付与したものである。)
【請求項1】
A.蛍光内視鏡検査において、励起光(例えば、青)とそれ以外の光(例えば、緑と赤)を交互に組織に照射し、
B.組織から反射してきた光を感受する白黒CCDの前に励起光は通過させないがそれ以外の光をすべて通す濾過フィルターをおいて、
C.励起光(例えば、青)が組織に当たって蛍光(例えば、黄色)を発生させたタイミングで濾過フィルターを通過できた蛍光をCCDの3つあるチャンネル(赤、緑、青)の内1つのチャンネル(例えば、青)で受光し励起光から蛍光を取り出して、
D.励起光以外の光(例えば、緑と赤)の時はCCDの残りの2つのチャンネル(例えば、緑と赤)にて背景の映像を拾い、
E.送信後3つのチャンネルの信号を再構成しモニター上に蛍光の映像と背景の映像を融合させ、同時にかつ同じ画面で見るところを特徴とする光診断装置。
【請求項2】
請求項1の光診断装置において、
F.背景の映像の明るさを弱めるために、光源と組織の間に励起光(例えば、青)の透過率をピークに、それ以外の光(例えば、緑と赤)を傾斜的に押さえていく色温度変換フィルターを含む傾斜型フィルター、又は励起光(例えば、青)の透過率をピークにそれ以外の光(例えば、緑と赤)を一段と低く押さえるバンドパス型フィルタを調整フィルターとして設置してあるところを特徴とする光診断装置。
なお、特許明細書において、【請求項2】の「請求光1の光診断装置において、〜」という記載は、「請求項1の光診断装置において〜」の明らかな誤記と認められるので、請求項2に係る発明を上記のように認定した。
4.刊行物に記載された発明
取消理由に引用した刊行物は次のものである。
刊行物1:特開平3-97441号公報(申立人の提出した甲第1号証)
刊行物2:特開平9-70384号公報(申立人の提出した甲第2号証)
刊行物3:特表平10-500588号公報(申立人の提出した甲第3号証)
刊行物4:特開昭63-122421号公報(申立人の提出した甲第4号証)
刊行物5:特開平3-97442号公報(申立人の提出した甲第5号証)
刊行物6:特開平6-125911号公報(申立人の提出した甲第6号証)
4-1.
刊行物1には、蛍光観察用内視鏡に関する発明が記載されており、特に以下のような記載がある。
a.
「[産業上の利用分野]
本発明は、通常観察画像と共に蛍光を検知可能な蛍光観察用内視鏡に関する。」
(第1頁、左下欄14-16行)
b.
「しかしながら、蛍光剤が発する蛍光は極微弱な光であり、また、発光時間も励起光をあてている間のみ、または極短時間だけ残存蛍光がある程度である。従って、蛍光が微弱なため、患部を内視鏡により肉眼で観察しながら蛍光を見るということは難しく、通常観察画像と蛍光を発している部位との位置関係が分らず、蛍光を発している部位を正確に把握することができないという問題点がある。」
(第1頁、右下欄16行-第2頁、左上欄4行)
c.
「前記ランプ21の前方には、モータ23によって回転駆動される回転フィルタ30が配設されている。この回転フィルタ30には、赤(R)、緑(G)、青(B)の各波長領域の光を通過するフィルタが、周方向に沿って配列されている。この回転フィルタ30の各フィルタの透過特性を第3図に示す。
また、前記モータ23は、モータドライバ25によって回転が制御されて駆動されるようになっている。
前記回転フィルタ30を透過し、R、G、Bの各波長領域の光に時系列的に分離された光は、前記ライトガイド14の入射端に入射され、このライトガイド14を介して先端部9に導かれ、この先端部9から出射されて、観察部位を照明するようになっている。」
(第3頁、左上欄13行-右上欄8行)
d.
「この照明光によって照明された観察部位からの光は、対物レンズ系15によって、CCD16上に結像され、光電変換されるようになっている。・・・・・・このCCD16から読み出された映像信号は、・・・・・・プリアンプ32に入力されるようになっている。このプリアンプ32で増幅された映像信号は、プロセス回路33に入力され、・・・・・・デジタル信号に変換されるようになっている。このデジタルの映像信号は、セレクト回路35によって、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応するメモリ(1)36a、メモリ(2)36b、メモリ(3)36cに選択的に記憶されるようになっている。前記メモリ(1)36a、メモリ(2)36b、メモリ(3)36cは、同時に読み出され、D/Aコンバータ37によって、アナログ信号に変換され、R、G、B色信号として出力されると共に、エンコーダ38に入力され、このエンコーダ38からNTSCコンポジット信号として出力されるようになっている。
そして、前記R、G、B色信号または、NTSCコンポジット信号が、カラーモニタ7に入力され、このカラーモニタ7によって、観察部位がカラー表示されるようになっている。」
(第3頁、右上欄9行-左下欄18行)
e.
「第5図に示すように、前記フルオレッセインは、略Bの波長領域の光を吸収して励起し、略Gの波長領域の蛍光を発する。
このように蛍光剤を含有する被検部位を、電子内視鏡1によって観察して蛍光を検出する場合は、ランプ21を、回転フィルタ30の各フィルタが照明光路中に介装されるタイミングでパルス点灯させると共に、第4図に示すように、Bのタイミングのときだけ、G及びRのタイミングのときに比べて光量を増大させる。従って、被検部位には、回転フィルタ30を透過したR、G、Bの各光が時系列的に照射されるが、Bの光量はG及びRの光量に比べて大きい。そして、このような照明光で照明された被検部位からの光がCCD16で受光され、被検部位のカラー画像が得られる。
前述のように、前記フルオレッセインは、Bの波長領域の光を吸収してBのタイミングのときに蛍光を発するので、その蛍光の波長に関係なく、蛍光はB画像の変化として処理が行われる。すなわち、蛍光を発する部位は、蛍光によってカラー画像中のB成分が増加する。」
(第3頁、右下欄11行-第4頁、左上欄11行)
f.
「内視鏡による観察部位である生体では、一般にB成分は少なく、また、第6図に示すようにCCD16の感度がB側で低いので、Bの光量を大きくしても、生体のB成分の戻り光は余り大きくはならない。これに対し、蛍光は、実際にはBの波長領域の光ではなく、それより長波長側の光であるので、CCD16の感度特性から、生体のB成分の戻り光よりも大きく検出される。このように、照明系や観察系にシャープカットフィルタを挿入することなく、照明光の特性から、励起光をより大きく照射する効果が得られ、CCD16の特性から、生体での反射光(B)を少なくし、蛍光(G)を多くするフィルタと同様の効果が得られる。しかも、内視鏡画像の場合、B照明光を増加しても色調は余り変らない。従って、可視光域の通常のカラー画像中において、蛍光を発する部位のみの色調が変化する。」
(第4頁、左上欄14行-右上欄11行)
g.
「このように本実施例によれば、簡単な構成で、通常画像と共に微弱な蛍光をより明確に検知することができ、通常画像中にて蛍光を発している部位を正確に把握することが可能となる。」
(第4頁、右上欄12-15行)
h.
「尚、B照明光を増大した場合、その分、信号処理でB信号のレベルを下げると、より通常観察画像の色調に近い画像が得られる。この場合、第7図に示すように、D/Aコンバータ37からのB信号に対して非線形増幅回路39によって非線形の変換処理を施すことにより、生体のB成分に基づくB信号レベルを小さくし、蛍光に基づくB信号レベルを大きくすることが可能である。」
(第4頁、右上欄16行-左下欄3行)
4-2.
刊行物2には、蛍光診断用電子内視鏡装置に関する発明が記載されており、特に、以下のような記載がある。
【0002】
【従来の技術】生体組織に対して波長400nmないし480nmの光(励起光)を照射すると、正常な組織は略480nmないし600nmの範囲の蛍光を発し、癌細胞は蛍光を発しないので、通常の内視鏡観察ではよく分からないような早期癌を発見し得ることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし励起光の照射によって生体が発する蛍光は非常に弱いものなので、上述のような従来の蛍光診断用電子内視鏡装置の構成では、充分な明るさの蛍光画像を得ることができず、的確な診断を下すことができない場合が多かった。
【0005】そこで本発明は、生体から発せられる蛍光により充分に明るい蛍光像を得ることができる蛍光診断用電子内視鏡装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の蛍光診断用電子内視鏡装置は、挿入部の先端に設けられた対物光学系による被写体の結像位置に超高感度固体撮像素子を配置して、その超高感度固体撮像素子の前方に、生体組織から蛍光を励起させる励起光の波長より長波長側に透過領域を有し且つ上記励起光は透過しない特性を有する蛍光透過用フィルタを配置したことを特徴とする。
【0012】第1の対物光学系4と超高感度固体撮像素子2との間には、520nmないし600nmの波長の光だけを透過する蛍光透過用フィルタ6が配置されている。固体撮像素子3の前方にはそのようなフィルタは配置されていない。
【0017】ビデオプロセッサ20には、照明用ライトガイドファイババンドル8に照明光を供給するための例えばキセノンランプからなる光源ランプ21が配置され、その光源ランプ21と照明用ライトガイドファイババンドル8の入射端との間の照明光路中に、RGB回転フィルタ22が配置されている。
【0018】RGB回転フィルタ22には、図5にも示されるように、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタが各々の間に遮光部を挟んで各々扇状に形成されており、モータ23によって等速度で回転される。
【0020】その結果、コネクタ13から照明用ライトガイドファイババンドル8を経由して、挿入部1の先端の前方にある被写体が、赤、緑、青の3色の照明光によって順に繰り返し照明される。
【0023】そして、超高感度固体撮像素子2の駆動と固体撮像素子3の駆動及びRGB回転フィルタ22を回転させるモータ23の回転とが、タイミング回路25からの出力信号によって同期をとって制御される。
【0024】その結果、固体撮像素子3においては、いわゆるRGB面順次方式による撮像が行われて、通常画像用ビデオ回路24において、被写体の通常のカラー映像信号が得られる。
【0025】一方、超高感度固体撮像素子2で撮像されて超高感度撮像素子コントロール回路26に伝達された映像信号は、そこで、青色の照明光(波長400nmないし500nm)で被写体が照明されたときの映像信号だけが抽出される。
【0026】そこで得られる画像は、蛍光透過用フィルタ6を透過することができる波長の光による像だけであるから、青色の照明光に含まれる波長400nmないし500nmの励起光によって被写体から励起された蛍光画像信号が、超高感度撮像素子コントロール回路26で抽出される。
【0027】ビデオプロセッサ20内の画面合成回路28には、超高感度撮像素子コントロール回路26から出力される蛍光画像信号と通常画像用ビデオ回路24から出力されるカラー画像信号とが入力され、表示画面切り換えスイッチ29によって、蛍光画像と通常画像の一方又は両方をモニタテレビ40に任意に表示することができる。50は、それらを磁気記録するための記録装置である。
4-3.
刊行物3には、積分された内部蛍光を使用して病気の組織の画像を映すための装置に関する発明が記載されており、特に以下のような記載がある。
「図2の装置は、組織を励起光および照明光の両方で同時に照明する。装置は、内部蛍光するように組織を励起させるために、好ましくは青色光である第1の予め選択された波長(400乃至450nm)の励起光を生成するために光源30を含んでいる。励起された組織は、図1a乃至1dに示されているように主に緑色の内部蛍光光を生成する。光源30はまた、組織を照明するために異なる波長の非励起光も生成する。非励起光は、700nm以上の波長を含む長い赤色から赤外光(λR)であることが好ましく、組織の再放射光の画像を生成するために使用される。」
(第13頁、2-10行)
「さらに、随意的なフィルタ手段50が、青色の励起光がCCDカメラによって受取られることを防ぐために光路に含まれることができる。」
(第16頁、14-15行)
「図2の装置は励起光および照明光の両方で組織を同時に照明するが、組織を励起光および照明光に順次露出させることも可能である。図3は、タイミングサイクルを通じて組織を順次照明する本発明の第2の実施形態に従った画像装置を概略的に示している。光源30は、内視鏡32を通して励起光で組織42をタイミングサイクルの第1の部分の期間中照明する。内部蛍光は、積分された内部蛍光画像を撮るために内視鏡32およびフィルタ60を介して単一のCCDカメラ62に与えられる。フィルタ60は、励起光をフィルタ処理し、広帯域の内部蛍光を通過させるためにカメラ62の前に配置することができる。撮られた内部蛍光画像は、画像処理手段に転送され、その後、コンピュータ63中に配置された画像記憶手段に転送される。その後、光源30は、再放射光の画像を発生するために照明光によって組織を照明する。」
(第16頁、16-26行)
「第3の実施形態の装置の付加的な変更として、組織のある箇所において増加した血液の存在が、表示された画像上で正常な組織と病気の組織とを混同しない認識可能な色として見えるようにするために使用できることがあげられる。この変更された装置において、青色の励起光および赤色の照明光が使用され、青色の再放射光の画像、赤色の再放射光の画像、および緑色の積分された内部蛍光画像が集められる。赤色および青色の再放射画像は、カメラ34によって撮られる。カメラ34は、その赤色チャンネルを介して赤色の再放射画像を、およびその青色チャンネルを介して青色の再放射画像を表示装置40に送る。緑色の積分された内部蛍光画像は、カメラ36によって撮られ、表示装置の緑色チャンネルに送られる。表示装置において、正常な組織は白で表示され、炎症を起こした組織は赤味を帯びた色調を有し、異常な組織は紫を帯びた色調を有する。」
(第18頁、4-14行)
「フィルタモジュール16は、青色帯域の励起光をフィルタ処理して除去するように選択され、それによって、緑色の長波長(例えば、480nm以上)の蛍光だけがCCDセンサによって集められる。」
(第20頁、8-11行)
「第4の実施形態の変形において、病気の箇所の高分解能の蛍光でない画像と低分解能の蛍光の画像とが順次得られ、モニタ18上で表示されるために組み合わされる。この変形において、内視鏡装置は、光源8がタイミングサイクルを通じて2以上の波長の光で病気の箇所を順次照明するように変更されている以外は、第4の実施形態と同一である。一つの波長は、タイミングサイクルの大部分の期間において利用される蛍光の励起光であり、他の波長は、タイミングサイクル中の短い期間において利用される非励起光である。」
(第20頁、23行-第21頁、1行)
4-4.
刊行物4には、内視鏡装置に関する発明が記載されており、特に以下のような記載がある。
「この発明は上記事情に基づいてなされたもので、可視光画像と蛍光画像とを同一表示手段上に同時に表示することができて、簡便で確実に患部の侵襲部位の同定等を行なうことができる内視鏡装置を提供することを目的とする。」
(第2頁、右上欄16-20行)
「光源としては可視光を発光する白色光光源7および蛍光物質に対する励起光を発光するためのレーザ8が設置されている。」
(第3頁、左上欄13-15行)
「蛍光像の光路16には、蛍光像の撮影時に励起光をカットするためのシャープカットフィルタ17および蛍光像増幅用のイメージインテンシファイヤ本体18が配設されている。」
(第3頁、右上欄9-13行)
「図示のように上記の各蛍光物質の吸収スペクトルのピークは、何れも500nmよりも短波長側にあり、また発光スペクトルのピークは何れも500nmよりも長波長側にある。このため励起光カット用のシャープカットフィルタ17としては、500nm以下の波長の光をカットするものが用いられている。」
(第3頁、左下欄2-8行)
「上記一連の撮影動作に引続いて、制御手段26からの制御信号が切替り、上記と逆に光ガイドファイバ2の入射端面がレーザ8側に切替えられ、可視光像の光路15が閉じられて蛍光像の光路16が開かれる。また第2のフレームメモリ28がインターフェイス25に接続される。
そして、レーザ8からの励起光が照射窓4から被検査対象に照射される。」
(第4頁、右上欄8-15行)
「次いで第1、第2のフレームメモリ27、28にそれぞれ記憶された可視光画像および蛍光画像が、制御手段26の制御により同時に読出され、当該可視光画像および蛍光画像が、インターフェイス30を介して表示手段31に同時に表示される。表示手段31上への両画像の同時表示は、並列状態または重ね合わせ状態で適宜に行なわれる。
(第4頁、左下欄12-18行)
4-5.
刊行物5には、蛍光観察用内視鏡装置に関する発明が記載されており、特に、ランプ12と被写体20の間に、可視光透過フィルタ9a、9cと蛍光領域透過フィルタ9bと励起光透過フィルタ9dとから構成される回転フィルタ9を設けることが記載されている。
4-6.
刊行物6には、内視鏡装置に関する発明が記載されており、特に、光源56と被検査対象51との間に、ほぼ全波長帯域の照明光を透過する第1フィルター58aと、励起光のみを透過する第2フィルター58bとを少なくとも1対有し、これらのフィルター58a,58bが周方向に交互に配置されている回転フィルター58を設けることが記載されている。
5.判断
5-1.本件発明1について
本件発明1の構成A〜Eと刊行物1に記載された蛍光観察用内視鏡に関する発明(以下、「引用発明」という。)の構成とを比較する。
構成Aについて、
刊行物1の記載c,e等からみて、引用発明は、蛍光内視鏡検査において、励起光(青(B))とそれ以外の光(緑(G)と赤(R))を交互に被検部位に照射するものである。そして、刊行物1の被検部位と本件発明1の組織との間に格別の相違があるものとはいえない。したがって、引用発明は、本件発明1の構成Aを有する。
構成Bについて、
引用発明も、被検部位(本件発明1の組織に相当)から反射してきた光を感受するCCDを有する。引用発明のCCDが白黒CCDであることについて刊行物1には明記がないが、CCD16から読み出された映像信号が、セレクト回路35によって赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応するメモリ36a〜36cに選択的に記憶される構成(記載d参照)となっていること等から白黒CCDを想定していることは当業者に明らかである。もっとも引用発明は、白黒CCDの前に励起光は通過させないがそれ以外の光をすべて通す濾過フィルターをおくものではない。
構成Cについて、
刊行物1の記載d、e等から、引用発明は、励起光(青(B))が組織に当たって蛍光を発生させたタイミングで蛍光をCCDの3つあるチャンネル(赤(R、緑(G)、青(B))のうちの1つのチャンネル(青(B))で受光するものである、ということができる。もっとも、引用発明は、濾過フィルターを通過できた蛍光を受光し励起光から蛍光を取り出す、ようにしたものではない。
構成Dについて、
刊行物1の記載d,e等から、引用発明は、励起光以外の光(緑(G)と赤(R))の時はCCDの残りの2つのチャンネル(緑(G)と赤(R))にて背景の映像を拾うものであるから、本件発明1の構成Dを有する。
構成Eについて
刊行物1の記載d,g等から、引用発明は、送信後3つのチャンネルの信号を再構成しモニター上に蛍光の映像と背景の映像を融合させ、同時にかつ同じ画面で見るものである。また、刊行物1の「ところで、最近、蛍光を利用して内視鏡で腫瘍部を発見する診断技術が提案されている。・・・・・・この蛍光を検知することにより、腫瘍を発見する。」(第1頁、右下欄5-13行)等の記載からみて、引用発明が光診断装置であることは明らかである。したがって、引用発明は、本件発明1の構成Eを有する。
以上のことから、本件発明1と引用発明とは、
蛍光内視鏡検査において、励起光(例えば、青)とそれ以外の光(例えば、緑と赤)を交互に組織に照射し、
組織から反射してきた光を感受する白黒CCDを用いて、
励起光(例えば、青)が組織に当たって蛍光(例えば、黄色)を発生させたタイミングで組織からきた光をCCDの3つあるチャンネル(赤、緑、青)の内1つのチャンネル(例えば、青)で受光し、
励起光以外の光(例えば、緑と赤)の時はCCDの残りの2つのチャンネル(例えば、緑と赤)にて背景の映像を拾い、
送信後3つのチャンネルの信号を再構成しモニター上に蛍光の映像と背景の映像を融合させ、同時にかつ同じ画面で見るところを特徴とする光診断装置、
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点 本件発明1は、組織から反射してきた光を感受する白黒CCDの前に、励起光は通過させないがそれ以外の光をすべて通す濾過フィルターをおいて、励起光(例えば、青)が組織に当たって蛍光(例えば、黄色)を発生させたタイミングで濾過フィルターを通過できた蛍光をCCDの3つあるチャンネル(赤、緑、青)の内1つのチャンネル(例えば、青)で受光し励起光から蛍光を取り出す構成を有するものであるのに対して、引用発明は、そのような構成を有しない点
相違点について検討する。
励起光は通過させず励起光以外の光を通過させるフィルタを検出器の前におくことは、刊行物2-4に記載されているように、蛍光内視鏡において、一般的に採用されている周知技術である。したがって、引用発明において、このような周知技術を採用して相違点に係る構成を有するものとすることは当業者にとって格別困難なことではないようにも考えられる。しかしながら、引用発明は、記載a,g等から明らかなように、通常観察画像と共に蛍光を検知するものである。そして、通常観察画像を得るためには、R、G、Bの各成分がすべて必要であり、1成分でも欠ければ通常観察画像が得られないことは明らかである。もし、引用発明において上記周知技術を採用し、励起光(B成分)は通過させず励起光以外の光(R、G成分)を通過させるフィルタを検出器の前におけば、検出器から得られる成分は、R、G成分だけでB成分を欠くことになり通常観察画像を得ることができなくなる。したがって、引用発明において上記周知技術を採用することが当業者にとって容易なことであるとはいえず、本件発明1が刊行物1に記載された発明に、刊行物2-4に記載された上記周知技術を適用して当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
刊行物2-4に記載された発明は、いずれも、モニター上に蛍光の映像と背景の映像を融合させ、同時にかつ同じ画面で見るもので、検出器の前に励起光を除去するフィルターをおく点で本件発明1と共通するものの、本件発明1のように白黒CCDの3つあるチャンネルのうちの1つのチャンネルで蛍光を受光し、残りの2つのチャンネルで背景の映像を拾うものではなく、本件発明1が刊行物2-4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
したがって、本件発明1は、刊行物1-4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5-2.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成A〜Eに加えて、さらに構成Fを有するものであるが、5-1で判断したように、本件発明1の構成A〜Eは、刊行物1-4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しうるものとはいえず、刊行物5,6に記載された発明も本件発明1の構成A〜Eを示唆するものではない。
したがって、本件発明2は、刊行物1-6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5-3.異議申立人の主張について
申立人は、刊行物1(甲第1号証)には、本件発明1の構成A,C,D,Eが開示されており、また、刊行物1の記載f等からみて、構成Bが示唆されている。また、刊行物2-4には、構成Bが明示されているから、本件発明1は刊行物1に記載された発明に刊行物2-4に記載された構成Bの濾過フィルタを配置することにより当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張している。しかしながら、上記5-1で検討したように刊行物1に記載された発明は、通常画像と共に蛍光画像を表示するものであるから、R、G、Bの3成分が必要であり、励起光(B成分)を通過させないフィルタをおくことを想定しているものとはいえない。刊行物1の記載fは、シャープカットフィルタを挿入することなく、生体での反射光(B)を少なくし、蛍光を多くするフィルタと同様の効果が得られる、ことを意味するもので生体での反射光が全くないものを示唆するものとはいえない。
申立人は、また、刊行物1には、本件発明1の構成A,C,D,Eが明確に開示され、構成Bが示唆されており、さらに、刊行物2には、構成A,B,Cが開示され、構成Dが示唆されており、刊行物3には、構成A,B,C,Eが開示され、構成Dが示唆されており、刊行物4には、構成A,B,Eが開示されていることから、本件発明1は刊行物1-4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、と主張している。しかしながら、5-1で判断したように、刊行物1に記載された発明に刊行物2-4に記載された構成Bの濾過フィルタを配置することが当業者に容易になしえることとはいえない。また、刊行物2-4に記載された発明は、いずれも、本件発明1のように白黒CCDの3つあるチャンネルのうちの1つのチャンネルで蛍光を受光し、残りの2つのチャンネルで背景の映像を拾うものではないから、当業者が刊行物2-4に記載されたいずれかの発明から出発し、刊行物1-4に記載された発明の構成を組み合わせても本件発明1に想到することが容易になしうるとはいいがたい。
したがって、申立人の主張はいずれも採用できない。
6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1,2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1,2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-12-22 
出願番号 特願平11-114022
審決分類 P 1 652・ 121- Y (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安田 明央  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 橋場 健治
河原 正
登録日 2002-05-24 
登録番号 特許第3309276号(P3309276)
権利者 エーカポット・パンナチェート
発明の名称 蛍光電子内視鏡システム  
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