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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1092084
審判番号 不服2002-18586  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-12-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-25 
確定日 2004-02-09 
事件の表示 平成 5年特許願第129698号「カラー画像処理装置及びその方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年12月13日出願公開、特開平 6-340112]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成5年5月31日の出願であって、拒絶の査定がされたため、これを不服として平成14年9月25日付け本件審判請求をするとともに、同年10月25日付けで明細書についての手続補正がされた。
当審においてこれを審理した結果、平成15年6月30日付けで、本願の請求項1〜3に係る発明は、特開平4-352567号公報(以下「引用例1」という。)、特開平5-14682号公報(以下「引用例2」という。)、特開平2-284189号公報(以下「引用例3」という。)及び特開平1-316783号公報(以下「引用例4」という。)記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、旨拒絶の理由を通知したところ、平成15年8月29日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成15年8月29日付けの手続補正は当審において却下され、この補正の却下の決定は確定した。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年10月25日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】に記載のとおりの次のものと認める。
「入力した画像情報に所定の情報を付加して出力する画像処理装置であって、
前記画像情報に対して前記所定の情報を人間の目に識別しにくいように付加する付加手段と、
前記画像情報により表わされる画像が全て文字か、或いは単色の画像か、又は前記画像信号に含まれる所定色の出現度合が所定値以下、のいずれかの場合に前記付加手段により前記所定の情報を付加せず、それ以外の場合には前記付加手段により前記所定の情報を付加するように制御する制御手段と、
を有することを特徴とするカラー画像処理装置。」

第2 当審の判断
1.引用例1の記載事項
引用例1には、以下のア〜コの記載が図示とともにある。
ア.「装置自身の規定情報及び特定の画像パターンを予め記憶する記憶手段と、原稿を読み取って得た画像データと前記記憶した画像パターンとを照合する照合手段と、前記照合手段の照合結果に従って前記記憶した規定情報のドツト配列を制御する制御手段と、前記制御手段でドツト配列を制御した前記画像データを出力する出力手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。」(【請求項4】)
イ.「【産業上の利用分野】本発明は画像処理装置に関し、例えば画像中の所定の部分に暗号を付加する機能を有する画像処理装置に関するものである。」(段落【0001】)
ウ.「【発明が解決しようとしている課題】・・・従来例では、特別な判定回路を必要としたり、判定手段が誤判定をすることがあつた。こういつた場合、複写禁止対象物でないのにもかかわらず複写できなかつたり、複製禁止対象物であるのに複写できたりする欠点があつた。」(段落【0004】)
エ.「複写動作に入った制御部312は、・・・比較的人間の目で判断しにくいイエローの記録時のみにスクリーン角の切り変えによつて暗号付加を行う。従つて、マゼンタ,シアン,ブラツクでの記録時には、制御部312は信号CLRをLにしたままで記録を行い暗号付加は行わない。」(段落【0049】)
オ.「制御部312は、・・・スクリーン角制御信号を変更し記録スクリーン角を変える。この際に、図5に示したスクリーン角を図6のようにコード化し、・・・制御部312内にあるROMの持つ機材番号を付加する。」(段落【0051】)
カ.「第4の実施例では、予め登録した複写禁止パターンと入力画像データとを比較し、その結果に従ってスクリーン角の変更を行う方法を使用する。」(段落【0066】)
キ.「複写動作に入る前にプリスキャンを行い、原稿画像の情報を得る。この際に、原稿の画像データをパターン化処理回路308に送出し、2値化処理が行われ、RAM309に記憶される。RAM309に記憶されたパターン化データは、比較回路310に出力され、ROM311に記憶されている基準データと比較される。」(段落【0073】)
ク.「L>Lth(Lth:閾値)の場合、比較回路310は、パターン化原稿データには、基準パターンと同様のパターンがあると判定し、比較結果信号をアクテイブにすると同時に、そのパターンのある画素ナンバi,j及び基準パターン化データの画素数n,mを制御部312に送信する。」(段落【0075】)
ケ.段落【0075】の【数1】には、Lの算出式が記載されており、この式によれば、Lは基準パターン化データとパターン化原稿データの相関値である。
コ.「基準パターン有りの情報を受け取った制御部312は、複写動作に入り、画像を所定のスクリーン角にて記録を開始する。・・・一方、比較値Lが、L≧Lth(審決注.「L≦Lth」の誤記と認める。)の場合には、パターン化原稿データには基準パターンと同様のパターンがないと比較回路310は判定し、アクテイブな比較結果信号が制御部に送られてこないので、制御部は通常の複写動作を行う。」(段落【0076】)

2.引用例1記載の発明の認定
記載オの「ROMの持つ機材番号」は、記載アの「装置自身の規定情報」の具体例である。
記載エの「スクリーン角の切り変えによつて暗号付加」は、記載アの「ドツト配列を制御」の具体的内容であり、この暗号は、「装置自身の規定情報」をコード化して付加したものである。
記載エ〜コによれば、記載アの「照合手段の照合結果に従って前記記憶した規定情報のドツト配列を制御」とは、原稿画像を2値化したパターンと基準パターンとの比較を行い、パターン化原稿データに基準パターンと同様のパターンがあると判定した場合は「スクリーン角の切り変えによつて暗号付加」を行うが、パターン化原稿データに基準パターンと同様のパターンがないと判定した場合は暗号付加を行わないことである。
したがって、記載ア〜コを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次の発明が記載されているものと認定できる。
「装置自身の規定情報及び特定の画像パターンを予め記憶する記憶手段と、
原稿を読み取って得た画像データと前記記憶した画像パターンとを照合する照合手段と、
前記照合手段の照合結果、原稿を読み取って得た画像データに前記記憶した画像パターンと同様のパターンがあると判定した場合はイエローの記録時のみにスクリーン角の切り変えによつて前記規定情報の暗号付加を行い、マゼンタ,シアン,ブラツクでの記録時には暗号付加は行わないようにするとともに、原稿を読み取って得た画像データに前記記憶した画像パターンと同様のパターンがないと判定した場合は一切の暗号付加を行わないように制御する制御手段
とを備える画像処理装置。」(以下「引用例発明1」という。)

3.本願発明と引用例発明1との一致点及び相違点の認定
引用例発明1は、イエロー,マゼンタ,シアン,ブラツクでの記録を前提とするものであるから「カラー画像処理装置」といえる。
引用例発明1の「画像データ」は原稿を読み取って得たものであるところ、読み取ることは入力の一形態であるから、この「画像データ」は本願発明の「入力した画像情報」に相当する。
引用例発明1の「装置自身の規定情報」は本願発明の「所定の情報」に相当し、記載エによれば、「イエローの記録時のみにスクリーン角の切り変えによつて前記規定情報の暗号付加を行」うことは、比較的人間の目で判断しにくいのであるから、本願発明において「前記画像情報に対して前記所定の情報を人間の目に識別しにくいように付加する」と異ならず、引用例発明1が本願発明の「付加手段」を有することは明らかである。
引用例発明1において、「原稿を読み取って得た画像データと前記記憶した画像パターンとを照合」しその照合結果に基づいて暗号付加を行ったり行わなかったりすることと、本願発明において、「前記画像情報により表わされる画像が全て文字か、或いは単色の画像か、又は前記画像信号に含まれる所定色の出現度合が所定値以下、のいずれかの場合」であるかそれ以外の場合であるかによって、所定の情報を付加しなかったり付加したりすることとは、「画像情報」がどのようなものかを判断したで、その判断結果に基づいて所定の情報を付加しなかったり付加したりする点で一致する。当然、引用例発明1は、判断結果に基づいて所定の情報を付加しなかったり付加したりするように制御する制御手段を有するといえる。
したがって、本願発明と引用例発明1とは、
「入力した画像情報に所定の情報を付加して出力する画像処理装置であって、
前記画像情報に対して前記所定の情報を人間の目に識別しにくいように付加する付加手段と、
前記画像情報がどのようなものかを判断し、その判断結果に基づいて前記所定の情報を付加しなかったり付加したりするように制御する制御手段を有するカラー画像処理装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点〉「前記画像情報がどのようなものかを判断し、その判断結果に基づいて前記所定の情報を付加しなかったり付加したりするように制御する」に当たり、本願発明では、「前記画像情報により表わされる画像が全て文字か、或いは単色の画像か、又は前記画像信号に含まれる所定色の出現度合が所定値以下、のいずれかの場合に前記付加手段により前記所定の情報を付加せず、それ以外の場合には前記付加手段により前記所定の情報を付加するように制御する」のに対し、引用例発明1では、「特定の画像パターンを予め記憶」しておき、「原稿を読み取って得た画像データと前記記憶した画像パターンとを照合」し、原稿を読み取って得た画像データに前記記憶した画像パターンと同様のパターンがあると判定した場合は所定の情報を付加し、原稿を読み取って得た画像データに前記記憶した画像パターンと同様のパターンがないと判定した場合は所定の情報を付加しないように制御する点。

4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)総論
相違点を要約すると、所定の情報を付加するのかしないのかの判断基準の相違であるといえる。
引用例発明1の判断基準は、原稿を読み取って得た画像データと予め記憶した画像パターンとの照合であるが、より具体的には、原稿を読み取って得た画像データと予め記憶した画像パターンとの相関値Lと閾値Lthの大小比較である。この場合、原稿が複製禁止対象物でない場合、すなわち、読み取って得た画像データに記憶した画像パターンと同一のパターンがない場合であっても、偶然L>Lthとなることは十分あり得ることであり、引用例発明1の判定基準が「同一のパターン」ではなく「同様のパターン」の有無としていることもこの趣旨である。また、引用例1の記載ウには、従来例の欠点として特別な判定回路を必要とすること、及び複製禁止対象物でないのに複写できないことがあげられていることを考慮すれば、引用例発明1の判断基準とは、複製禁止対象物(記憶した画像パターンを有する原稿)であると判断した場合に所定の情報を付加するというよりは、複製禁止対象物でないと判断した場合に所定の情報を付加せず、同判断がされない場合に所定の情報を付加するとの判断基準であると解すべきである。換言すれば、複製禁止対象物でないと確実に判断できる場合を除いて、すべて所定の情報を付加するものである。
ところで、所定の情報を付加しても、その情報は人間の目に識別しにくいとしても、所定の情報を付加する必要がない場合にまで付加すれば、印刷品質が劣化することは明らかであり、引用例発明1において、所定の情報を付加しない場合があることもその所以である。
さらに、複製禁止対象物でないと確実に判断できる条件として、引用例発明1の判断基準よりも簡便な判断基準があれば、その判断基準が判断精度において引用例発明1の判断基準より劣るとしても、引用例発明1の判断基準に代えてより簡便な判断基準を採用することに困難性はない。逆に、引用例発明1の判断基準よりも判断精度において優る判断基準があれば、その判断基準が簡便性において引用例発明1の判断基準より劣るとしても、引用例発明1の判断基準に代えてより高精度な判断基準を採用することに困難性はない。要するに、判断精度と簡便性のどちらを重視するかは当業者の自由であり、いずれか一方において、引用例発明1の判断基準よりも優れているならば、引用例発明1の判断基準に代えることは容易である。
また、複製禁止対象物でないと確実に判断できる判断基準が複数存するならば、そのいずれかの判断基準に該当する場合には、所定の情報を付加しない方が、印刷品質を保つ点で有利であることはいうまでもないから、複数の判断基準を併用し、複数の判断基準のいずれにも該当しない場合のみ、所定の情報を付加するように制御することが好ましいことは明らかである。判断基準の併用については、引用例4の「それらのような処理を併用して行うようにすることもできる。」(5頁右下欄10〜12行)との記載も参照されたい。
以上の観点のもとで、相違点に係る本願発明の判断基準を採用することの容易性について以下検討する。本願明細書には「本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、画像情報により表わされる画像が、例えば有価証券などの特定の画像でない場合に、その画像に所定の情報を付加しないようにするカラー画像処理装置及びその処理方法を提供することを目的とする。」(段落【0020】)との記載があり、「有価証券など」は引用例1記載の「複製禁止対象物」と異ならないから、本願発明の判断基準とは、複製禁止対象物でないと判断できる判断基準として、「前記画像情報により表わされる画像が全て文字」であること(以下「判断基準1」という。)、「単色の画像」であること(以下「判断基準2」という。)、及び「前記画像信号に含まれる所定色の出現度合が所定値以下」であること(以下「判断基準3」という。)を併用したものである。
そこで、判断基準1〜判断基準3を採用することの容易想到性について、まず個別に検討する。

(2)判断基準1の容易想到性
判断基準1における「画像が全て文字」との意味であるが、本願明細書には「画像情報が、すべてキャラクタコードか線画コードである場合には、画像データは紙幣ではないと判断」(段落【0061】)等の記載があり、他方「キャラクタコード」以外の文字を判断基準にする旨の記載はない。したがって、「画像が全て文字」とは「画像が全てキャラクタコード」の意味に解するのが妥当である。仮にこの解釈が誤りであるのなら、「キャラクタコード」以外の文字を判断基準にするに当たり、当業者が容易に実施できる程度の開示がないため、重大な記載不備があるばかりか、平成14年10月25日付け手続補正及び同年8月6日付け手続補正は明細書の要旨を変更するものとして却下されなければならず、本願の請求項1に係る発明は平成11年11月28日付け手続補正書の【請求項1】に記載された発明として認定されるところ、同発明と引用例発明1には何の相違もないことが明らかであるから、本願は何の問題もなく拒絶されることとなる。
引用例発明1の「画像データ」は原稿を読み取って得たデータであるから、キャラクタコードではあり得ない。しかし、本願出願当時には、原稿を読み取って得た画像データに基づいて画像形成を行う装置を、ホストコンピュータと接続し、ホストコンピュータから送信されるデータを、それが画像であれキャラクタコード信号であれ印刷する装置は周知である(必要なら、引用例2【図12】参照。)から、引用例発明1をかかる周知の装置の画像処理に用いることは設計事項程度である。そして、引用例発明1では、原稿を読み取って得た画像データであって、画像が全てキャラクタコードではあり得ないからこそ、複製禁止対象物の可能性があり、記憶した画像パターンと同様のパターンがあるかどうかの判断をする必要があるのだが、画像が全てキャラクタコードの場合に複製禁止対象物である可能性がないことは自明である。そして、画像が全てキャラクタコードであるかどうかの判断をすること自体に、多大の創意工夫を要すると認めるべき理由はない。
したがって、複製禁止対象物でないとの判断基準の1つとして、判断基準1を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)判断基準2の想到容易性
引用例2には、以下のサ〜ソの記載がある。
サ.「入力手段で入力した画像データに所定のパターンを合成する合成手段と、前記合成手段で得た画像データを出力する出力手段と、前記合成手段の実行/非実行を前記画像データ又は前記出力手段の出力モードに応じて制御する制御手段とを備える」(段落【0006】)
シ.「偽造防止として、紙幣、有価証券、秘密文書等の特定原稿を対象とする。」(段落【0008】)
ス.「読み取られた画像信号を電気的に処理し、マゼンタ(M),シアン(C),イエロー(Y),ブラツク(Bk)の各成分に分解し、プリンタ部202に送る。」(段落【0011】)
セ.「417は無彩色有彩色判定回路であり、無彩色(白黒)コピーと判定した場合には、パターン付加回路410でパターンの付加を禁止させる機能を有する。」(段落【0020】)
ソ.「第1の実施例及び第2の実施例では、いずれも白黒コピーのときに限って、パターンを付加しなかったが、原稿に対して単色コピーモードあるいは2色コピーモードが指定された場合にも特定パターンを付加しな(審決注.「い」が脱落しているものと認める。)ように制御しても良い。」(段落【0042】)

これら記載によると、引用例2には、紙幣、有価証券、秘密文書等の特定原稿(引用例1記載の「複製禁止対象物」と異ならない)の偽造防止を目的として、所定のパターンの付加をするかしないかの判断に当たり、画像データが無彩色であるか有彩色であるかを判断し、無彩色である場合には、所定のパターンの付加をしないよう制御することが記載されている。この判断基準は、単色(本願発明)と無彩色(引用例2記載の発明)の相違を除けば、判断基準2そのものである。しかも、引用例2の記載ソには無彩色を含む単色についての記載もあるから、引用例2に接した当業者であれば、引用例2の記載から、直ちに判断基準2を把握することができる。
したがって、複製禁止対象物でないとの判断基準の1つとして、判断基準2を採用することは当業者にとって想到容易である。

(4)判断基準3の想到容易性
引用例3には、「紙幣、有価証券類等の特定画像に対してのみ再生画像を禁止する画像形成装置を提供することを目的とする。」(2頁左上欄1〜4行)及び「デイジタル色信号R,G,Bは特徴抽出回路103に入力され入力画像の特徴が抽出される。この特徴抽出回路103では・・・入力画像の特定のパターンや特定の色の存在、色分布等に注目して特徴抽出処理が行われる。」(3頁右上欄4〜10行)との記載がある。ここで、「特定の色の存在」を、特定の色が1画素であるかどうかの意味に解すると、「紙幣、有価証券類等」でないにもかかわらず、偶発的に該特定の色の画素が存在する可能性が十分あるから、所定数以上の画素の有無を意味すると解するのが妥当である。
引用例4には、「紙幣・証券類特徴抽出回路52が行うマッチング判定の処理としては、入力された信号r,g,bにつき、原稿のカラースペクトル分布をROM等に予め登録してあるデータと比較することによって判定を行ったり」(5頁右下欄4〜8行)と記載があり、「カラースペクトル分布」も、判断基準3の「所定色の出現度合」と格別異なるものではない。
そして、引用例3記載の「紙幣、有価証券類等」及び引用例4記載の「紙幣・証券類」は、引用例1記載の「複製禁止対象物」と異ならないから、引用例3又は引用例4に接した当業者であれば、複製禁止対象物でないとの判断基準の1つとして、判断基準3を採用することは想到容易である。

(5)進歩性の判断の結論
以上述べたとおり、判断基準1〜判断基準3を採用することはすべて当業者にとって想到容易であり、判断基準1〜判断基準3を引用例発明1の判断基準と比較すれば、簡便性において優れていることは明らかである。そして、複数の判断基準を併用することが好ましいことは(1)で述べたとおりであるから、引用例発明1の判断基準に代えて、判断基準1〜判断基準3を併せ採用することにより、相違点に係る本願発明の構成をなすことも、当業者にとって想到容易というべきである。
また、相違点に係る本願発明の構成をなすことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用例発明1、引用例2〜引用例4記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
以上によれば、本願発明が特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-12-12 
結審通知日 2003-12-15 
審決日 2003-12-26 
出願番号 特願平5-129698
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾崎 俊彦  
特許庁審判長 小沢 和英
特許庁審判官 藤井 靖子
津田 俊明
発明の名称 カラー画像処理装置及びその方法  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康徳  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康弘  

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