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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
審判 全部申し立て 出願日、優先日、請求日  G01N
管理番号 1093215
異議申立番号 異議1999-74642  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-01-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-09 
確定日 2004-03-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第2913281号「検定分析装置」の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2913281号の請求項1ないし9に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許2,913,281号の発明についての出願は、昭和58年3月9日(パリ条約による優先権の主張、1982年3月9日米国、1983年2月23日米国)に出願された特願昭58-38884号特許出願(以下、「親出願」という)の一部を分割したものとして、平成5年6月24日に出願された特願平5-177306号特許出願(以下、「子出願」という)の一部をさらに分割したものとして、平成9年3月3日に出願されたものであり(この出願を以下、「孫出願」という)、平成11年4月16日に設定の登録がされた。
本件特許について、その後、申立人戸高美昭より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、特許権者から特許異議意見書が提出された。

2.本件特許発明
本件特許明細書の特許請求の範囲は、次のとおりである。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析成分を含有すると疑われている試験溶液中の分析成分の存在を決定するための装置であって;
液流のための流路を規定する液体浸透性固体媒体であって、該流路に沿って、 (i)試験溶液の適用をするための部位、
(ii)分析成分、又は分析成分と化学成分との反応生成物のいずれかに特異的である標識抗体であって拡散的に結合した標識抗体、及び
(iii)流路に沿って適用部位から隔離して配置された単一の反応帯
が存在し、該反応帯は、予め決められた量の、分析成分又は反応生成物のいずれかに特異的である反応体をその反応帯に非拡散的に結合して持っている液体浸透性固体媒体からなる装置であり;
該装置は、試験溶液が一回の通過で毛細管流により流路に沿って通過でき、分析成分、又は分析成分と化学成分との反応生成物が、標識抗体及び、固体媒体に結合した反応体の両方に結合し;それにより、標識抗体及び、固体媒体に結合した反応体は一緒になって、分析成分、又は分析成分と化学成分との反応生成物と共にサンドイッチを形成するように、単一の試験溶液を適用部位に接触させることにより使用されることができる、装置。
【請求項2】
装置に適用される溶液が単一の試験溶液からなる請求項1記載の装置。
【請求項3】
拡散的に結合した抗体が分析成分に特異的である請求項1記載の装置。
【請求項4】
非拡散的に結合した反応体が分析成分に特異的である請求項1記載の装置。
【請求項5】
装置に適用される溶液が単一の試験溶液からなりそして拡散的に結合した抗体と非拡散的に結合した反応体が両方分析成分に特異的である請求項1記載の装置。
【請求項6】
適用部位に試験溶液を適用した結果、上記装置が毛細管流により流路に沿って通過した該試験溶液を更に含み、そして分析成分又は反応生成物が、反応帯で標識体を生成して該試験溶液中の分析成分の存在を示すように、標識化した抗体と非拡散的に結合した反応体の両者により、その両者の間で結合される請求項1記載の装置。
【請求項7】
装置が、必要とされるは試験溶液の適用のみであるように、分析成分の存在を検出するのに必要とされる全ての材料を含有する、請求項1記載の装置。
【請求項8】
標識抗体が酵素で標識されそして該酵素のための基質の添加により検出される請求項1記載の装置。
【請求項9】
流路に沿って拡散的に結合した化学成分を更に含み、その化学成分が反応生成物を形成するために上記分析成分と反応することができる請求項1記載の装置。」

3.取消理由通知の概要
取消理由通知の概要は、次のとおりである。
「(1) 出願日
本件特許発明(特許請求の範囲第1〜9項に記載された発明)は、親出願の出願当初の明細書(特開昭58-179357号公報参照)に記載されていない。そして、子出願の出願当初の明細書(特開平6-258323号公報参照)にも記載されていない。
そうすると、本件の出願の分割は適法ということはできないので、本件特許発明の出願日は、親出願の出願日にも、子出願の出願日にも、遡及しない。
(2)引用刊行物
刊行物1:特開昭61-145459号公報
刊行物2:特開昭64- 63865号公報
刊行物3:特表平 1-503174号公報
(3)特許法29条違反
本件特許発明は、本件の出願の出願日(平成9年3月3日)前に頒布された、上記刊行物1、刊行物2、または、刊行物3に記載された発明と同一である。あるいは、これらの刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許発明に係る特許は、特許法29条の規定に違反してされたものである。」

4.出願日の遡及についての検討
孫出願の発明が、親出願あるいは子出願の願書に添付した明細書または図面(以下、「当初明細書」という。)に記載されているものであるか否かについて検討する。
(1)孫出願発明に必須の構成要素
孫出願発明は、次の構成要素を組み合わせることを必須の構成としている。
(a) 「分析成分(あるいはその反応生成物)に特異的である標識抗体」であって、「拡散的に結合した標識抗体」が流路に沿って存在する液体浸透性固体媒体。
(b) 「単一の反応帯(反応体を非拡散的に結合している)」が流路に沿って存在する液体浸透性固体媒体。
(c) 「試験溶液の一回の通過で・・・、分析成分(又はその反応生成物)、標識抗体及び固体媒体に結合した反応体は一緒になって、・・・サンドイッチを形成する」ように使用できる装置。

(2)親出願の明細書
親出願の当初明細書の特許請求の範囲には、前記構成要素(a)〜(c)のすべての構成要素を組み合わせた検定分析装置は記載されていない。
前記の各構成要素(a)〜(c)が、親出願の当初明細書に記載されているかどうか、そして、各構成要素をその他の構成要素とを組み合わせることが記載されているかどうか、について以下検討する。

(3) 構成要素(a)について
親出願の当初明細書には、分析成分-反応体の組み合わせとして、一方が「抗体」である組み合わせが好ましいとして開示されていて(親出願公開公報9頁左下欄参照)、検出剤として、酵素を使用した標識が好ましいことも開示されている(親出願公開公報9頁右下欄10頁右上欄参照)。そして、実施例4では、「分析成分(あるいはその反応生成物)に特異的である標識抗体」である「グルコース酸化酵素標識抗体」が記載されている。
しかしながら、前記実施例4は、試験サンプル注入後に、液状の「標識抗体」を流すものであるから、「標識抗体」が「液体浸透性固体媒体」に「拡散的に結合」されたものでない。
なお、親出願の当初明細書には「好ましい態様においては、一種の液状物質を1回だけ装置に通過させるだけでよい。分析成分は分析成分誘導体、発色成分または他の物質と混合し、装置に流して適する試験結果を得ることができる。さらに好ましい態様においては、本発明の装置は反応体および分析成分の定量分析に必要もしくは好ましい他の化学成分全てを含むことにより化学的に完成し、このようにすれば、分析に要する操作は液体担体中の分析成分を装置に流すことだけとなる。」(親出願公開公報13頁左下欄〜右下欄参照)という大まかな「他の化学成分」という表現を使用した記載はあるものの、そのような態様の具体的な例示として説明されている実施例8には、「試薬」である、「パーオキシダーゼ-ポリアクリルアミド-ジアミン-ペニシリン」および「グルコース」を、「下端濾紙片」に含ませて乾燥することが記載されていて、競合法における試薬である「標識抗原」を「拡散的に結合」することを開示しているといえる。親出願の発明において、被検体は、抗原でも抗体でもよいことを勘案すると、被検体が抗体である競合法において、試薬である「標識抗体」を「拡散的に結合」することを、親出願の明細書は開示しているということができるかもしれない。しかしながら、その「拡散的に結合した標識抗体」は、「分析成分(あるいはその反応生成物)に特異的である標識抗体」ということができない。
そして、親出願の当初明細書には、「分析成分(あるいはその反応生成物)に特異的である標識抗体」を「固体媒体」に「拡散的に結合」することは記載されていない。
そして、実施例4は、多数の反応帯16.1を有する図1の検定分析装置を使用するものであり、「単一の反応帯」の検定分析装置ではなく、そして、「サンドイッチ」が「試験溶液が一回の通過」で形成されるものでない。
実施例8は、3つの反応帯の検定分析装置を使用するものであり、「単一の反応帯」の検定分析装置ではないし、実施例8の装置は「サンドイッチ」法に使用するものでもない。

そうすると、親出願の当初明細書には、構成要素(a)、すなわち、「分析成分(あるいはその反応生成物)に特異的である標識抗体」を「固体媒体」に「拡散的に結合」することは、記載されていないし、「分析成分(あるいはその反応生成物)に特異的である標識抗体」を、構成要素(b)および構成要素(c)と組み合わせることも記載されていない。

(4)構成要素(b)「単一の反応帯」について
親出願の当初明細書の特許請求の範囲第24項〜第25項に記載された方法は、
「(24) 標識分析成分との競合下に反応成分と反応して予定生成物を生成しうる反応体を不溶化して有する流体流れ通路を規定する液体浸透性固体媒体を用意し、
未知量の分析成分と既知量の標識分析成分を含有する流体を前記流れ通路に流し、そして
前記流れ通路に沿って、標識分析成分または予定生成物の存在を検出し、
それらが検出された流れ流路の長さを流体中の分析成分の量の指標とする、
工程より成ることを特徴とする分析成分の定量分析法。
(25) 抗ペニシリンおよび標識ペニシリン抗体を有し、標識ペニシリンと競合的に反応して予定生成物を生成しうる反応体を不溶化して有する流体流れ通路を規定する液体浸透性固体担体を用意し、
未知量のペニシリンと既知量の標識ペニシリンを含有する流体を前記流れ通路に流し、そして
前記流れ通路に沿って、標識ペニシリンまたは予定生成物の存在を検出し、
それらが検出された流れ流路の長さを流体中のペニシリンの量の指標とする、
工程より成ることを特徴とする流体中のペニシリンの定量分析法。」というもので、「検出された流れ流路の長さを流体中の分析成分の量の指標とする」ものであるから、「単一の反応帯」が存在する流体浸透性固体媒体を使用するものである。
しかしながら、これらの方法は、その記載から明らかなように、いずれも競合法によるものであり、サンドイッチ法によるものではない。同第24項〜第25項には「拡散結合した標識抗体」について記載されていない。これらの方法について、これ以外のさらなる記載は、親出願の当初明細書にまったくない。
また、親出願の当初明細書の特許請求の範囲第1項および第12項の「連続隔置された所定数の反応帯」が「単一の反応帯」でないことは明らかである。
親出願の図面には、実施例1〜実施例5の、多数の反応帯(図1の16.1、図2の20.1等)を有する検定分析装置が示されており、「単一の反応帯」の検定分析装置は図示されていない。
親出願の当初明細書の実施例6には、4つの「反応帯」を有する検定分析装置が、実施例7〜8には、3つの「反応帯」を有する検定分析装置が示されており、「単一の反応帯」の検定分析装置は記載されていない。実施例9は実施例3と同様の分析カラムを使用するものであり、「単一の反応帯」の検定分析装置は記載されていない。
したがって、親出願の当初明細書には、構成要素(b)について記載されているが、この構成要素(b)を、構成要素(a)および構成要素(c)と組み合わせることは、記載されていない。

(5) 請求人の主張について
なお、請求人は、「単一の反応帯」の意味は、「分析物を検出するための必要且つ充分な単一の反応帯」の意味であると主張している。
しかしながら、本件明細書の特許請求の範囲の記載における「単一の反応帯」は、「単一の分析成分または分析成分反応生成物に特異的な反応体が非拡散的に結合している、液体浸透性固体媒体の領域」を意味するものというのが相当であり、このような請求人の主張は妥当でない。

また、請求人は、実施例3Aに「反応帯の一つは、試験溶液が9ナノグラムの分析物を含む場合にのみ色の変化を生じ得る」と記載されているとし、これを根拠として、第一反応帯は常に着色するので分析物の存在を示さないものと当業者が認識するから「第一反応帯」は呈色の必要がないとし、そして、この記載の「反応帯の一つ」がすなわち「第二反応帯」であるとして、「本例において、サンプルが予め決定されたしきい値を越えるペニシリン量を含むかどうかを決定するためには単一の反応帯で充分であることが明確に示されている。」と主張している。
しかしながら、請求人が根拠とする実施例3の記載は、正確には、「 前記各装置について記載したとおり、本実施例の装置は試験操作の結果、反応帯のいくつが呈色したかを決めることにより定量する。例えば、ある反応帯では試験溶液(例えばミルク)が少なくとも分析成分(例えばペニシリンG)を1ml当り9ngより多く含有しなければ、色の変化を生じない。」(親出願公開公報12頁右下欄15行〜13頁左上欄1行参照)であり、実施例3Aにおいては、図2に示されように、反応帯20.1は多数存在しているものであるから、「単一の反応帯」しか有しない装置が実施例3Aに明確に示されているということはできない。
しかも、実施例3Aの装置は、競合法によるもので、サンドイッチ法によるものではない。
したがって、この請求人の主張は、妥当でない。

(6) 構成要素(c)「試験溶液の一回の通過で・・・、分析成分(又はその反応生成物)、標識抗体及び固体媒体に結合した反応体は一緒になって、・・・サンドイッチを形成する」について
親出願の当初明細書の特許請求の範囲第20項には、「分析成分を含有する単一流体のみの流れが通路に流される特許請求の範囲第12項に記載の方法」が記載されており、「試験溶液の一回の通過」で、分析成分を定量分析する方法は記載されてはいるが、同第20項の方法において、「サンドイッチ形成」反応をすることは、同項と引用形式記載で関連する同第12項〜同第23項には記載されていない。さらに、同第12項〜同第23項には「拡散的に結合した標識抗体」を使用することも記載されていない。
そして、同第12項の方法は、複数の「反応帯」を使用するものであるから、同第20項の方法は、「単一の反応帯」を使用するものでもない。

また、親出願の当初明細書には、「サンドイッチ」形成反応という用語自体は記載されていないが、免疫検定において、「サンドイッチ」形成反応を利用することは周知であり、前記実施例4は、分析成分、標識抗体及び固体媒体に結合した反応体は一緒になって「サンドイッチ」形成反応するものであるから、「サンドイッチ」形成反応を利用することは、実質的には、親出願の当初明細書に記載されていると認められる。
しかしながら、「試験溶液の一回の通過」で「分析成分(又はその反応生成物)、標識抗体及び固体媒体に結合した反応体」が「サンドイッチを形成」することは記載されていない。前記実施例4の「サンドイッチ」法は、試験サンプル注入後に、液状の「酵素標識抗体」を流すものであり、試験溶液が一回の通過で、サンドイッチ形成するものではない。そして、実施例4のサンドイッチ法は、「拡散的に結合した標識抗体」を使用するものでもない。
また、親出願の当初明細書には、前記(3)でも指摘した如く、「好ましい態様においては、一種の液状物質を1回だけ装置に通過させるだけでよい。分析成分は分析成分誘導体、発色成分または他の物質と混合し、装置に流して適する試験結果を得ることができる。さらに好ましい態様においては、本発明の装置は反応体および分析成分の定量分析に必要もしくは好ましい他の化学成分全てを含むことにより化学的に完成し、このようにすれば、分析に要する操作は液体担体中の分析成分を装置に流すことだけとなる。」(親出願公開公報13頁左下欄〜右下欄参照)という大まかな「他の化学成分」という表現を使用した記載はあるものの、そのような態様の具体的な例示として説明されている実施例8は、競合法によるもので、「サンドイッチ」形成反応を利用するサンドイッチ法によるものではない。
請求人は、実施例3Aではサンドイッチ形成が起こることが記載されている、と主張しているが(意見書10頁)、実施例3Aは、競合法によるもので、サンドイッチ法によるものでないから、この主張は妥当でない。

そうすると、構成要素(c)は、親出願の当初明細書に記載されているものということができない。そして、親出願の当初明細書には、この構成要素(c)を構成要素(a)および構成要素(b)と組み合わせることも、記載されているということができない。

(7) 親出願の明細書
以上の検討によれば、親出願の当初明細書に、孫出願発明の必須の構成である、前記構成要素(a)〜(c)のすべてを組み合わせた構成、すなわち、「拡散的に結合した標識抗体」および「単一の反応帯」が流路に沿って存在する液体浸透性媒体からなる装置で、「試験溶液の一回の通過で・・・分析成分(又はその反応生成物)、標識抗体及び固体媒体に結合した反応体がサンドイッチ形成」するように使用される装置、が記載されているということができない。
したがって、孫出願発明は、親出願の当初明細書に記載されているものと認めることはできない。

(8) 出願日
そうすると、孫出願は、親出願の当初明細書に記載された発明の一部を新たな特許出願したものということができない。
また、子出願の明細書は親出願の当初明細書と同様であるから、孫出願は、子出願の当初明細書に記載された発明の一部を新たな特許出願したものということもできない。
したがって、本件特許の出願は、特許法第44条第1項の規定による出願ということができず、同条第2項の規定の適用はないので、平成9年3月3日に特許出願されたものである。そして、パリ条約による優先権の利益を享受することもできない。

5.刊行物1
刊行物1は、本件特許の出願の出願日(平成9年3月3日)より以前に頒布された刊行物である。
刊行物1には、以下の事項が記載されている。
(1a)シート状分析デバイス(特許請求の範囲第1項)
「1) 生物学的親和性結合特性を有する被分析物として液体中の成分の検出又は同定をするための分析デバイスであって、相前後して配設されかつそれらの末端を介して相互に吸着的接触状態にある数個のシート状ゾーンよりなり、デバイスの一端に移動相適用ゾーン(MPAZ)、そしてもう一方の末端に吸着ゾーン(AZ)、ならびにその間に存在する他の吸着ゾーン(そこでは被分析物と生物学的親和性を有する相互作用をなしうる反応成分が、相互に空間的に分離されて存在するように配置されている)を含有しており、その際
a) 反応成分が、共有結合または吸着によるか、またはMPAZおよびAZ間およびAZと接触して存在するゾーン中の生物学的親和性を有する相互作用を介して固相ゾーン(SPZ)に固定されるか、またはデバイスにおいて生じる反応において共有結合または吸着によるか、または生物学的親和性を有する相互作用を介してSPZに固定された他の反応体に結合されており、
b) 更なる標識反応成分(接合体)がMPAZとSPZとの間に未結合状態で位置し、そして
c) 被分析物適用ゾーンがMPAZであるかまたはMPAZとAZの間のゾーンである
ようにしてなる、分析デバイス。」

(1b)被分析物を含有する液体の1回の通過での測定方法(特許請求の範囲第9項)
「9)被分析物含有液体試料がMPAZに供給された後、または試料を試料適用ゾーンに供給されそしてMPAZに移動相が供給された後、その液体が毛細管力の制御下にAZの端部に達し、そしてデバイス中に含まれる反応成分と被分析物との反応がそれによって生起しはじめ、そして固相に結合していない標識がクロマトグラフイにより除去された後に、試料中の被分析物濃度の尺度である固相ゾーン中の標識量を測定する特許請求の範囲第8項記載の方法。」
(1c) 酵素標識(5頁右下欄12行〜15行)
「 標識には様々な可能性が知られているがなかでも酵素標識が好ましい。それは、色素原基質系または蛍光または化学発光を生じる基質系を必要とする。」

(1d) サンドイッチ法の態様(7頁右下欄〜8頁左上欄)
(1d-1)態様その1
「 特異性の異なる2つの結合点が被分析物中に存在する場合には、サンドイッチ式免疫検定の原理に基づく、診断剤のいくつかの態様が考えられる。これらのうち2例について以下に説明する。
固相結合パートナーを固相作用領域の支持体材料に共有結合によりまたは吸着により結合する場合、被結合と標識結合パートナーとで形成される二成分複合体は溶媒と共に固相作用領域中に移行しそしてそこで固相結合パートナーと反応して固相に結合した三成分複合体と形成するが、これは最初の結合パートナーの標識を通じて検出することができる。過剰の標識結合パートナーは溶媒により、次の作用領域中に除去される。」
(1d-2)態様その2
「 固相結合パートナーが診断剤中で未結合の形で存在していて溶媒により移動性となる場合には、生物学的親和性を有する分析物の2反応成分は、被分析物が同時にあるいは順次に両反応成分と反応しそして生成三成分複合体が次に固相作用領域(そこでは前述の如く、それは被分析物のそれから独立した生物学的親和性を有する第2の系を介して固相に結合されるようになる)に移行するように作用領域に収納される。」

(1e) 様々な態様(8頁左上欄〜右上欄)
「 前述の態様、および免疫測定(immunometric)試験原理、間接的抗体検出の原理または免疫検定のELA(酵素標識抗原)原理に基づく別な態様を説明するために総括表IおよびIIは、作用領域中の剤の成分の分布、および反応完了後の固相複合体の組成(その量は試料中の被分析物の濃度の尺度である)を例示的に説明している。」

(1f) 総括表I、総括表II(8〜9頁)
「総括表I:移動相の形の試料または予め希釈した試料を用いる試験アセンブリ」と題する総括表Iにおいて、「試験アセンブリ」のゾーンIは、「被分析物適用ゾーン」で、ゾーンVが「検出ゾーン」、「SPZ固相ゾーン」で、ゾーンVIが「吸収ゾーン」、「AZ吸着ゾーン」で、あることが図示されている。
サンドイッチ法を試験原理とするアセンブリが、総括表Iの7行目に、例示されている。その例示のアセンブリでは、被分析物(小丸で示されている)が、ゾーンIに適用されること、ゾーンIIには標識抗体1が未結合状態で位置していること、ゾーンIIIには、被分析物に特異的に反応する抗体2が未結合状態で位置していること、ゾーンVには、被分析物に特異的に反応する抗体3が固相ゾーン(SPZ)に固定されていること、ゾーンVで検出される複合体は、標識抗体1及び固相抗体3は、被分析物と抗体2との反応生成物とともにサンドイッチ形成することが、図示されている。そして、試料以外に別個の移動相を用いる試験アセンブリを示す総括表IIと対比すれば、総括表I例示のサンドイッチ法の試験アセンブリでは、被分析物含有液体試料をゾーンI(MPAZでもある)に接触させ、液体試料だけを一回の通過で毛細管流により流路に沿って通過できることが図示されている。

6.本件請求項1ないし9に係る発明と刊行物1発明との対比・検討
(1) 本件請求項1に係る発明
刊行物1の「試料」は、「試験溶液」に該当する。
刊行物1の「分析デバイス」は、「分析成分を含有すると疑われている試験溶液中の分析成分の存在を決定するための装置」に該当し、「液体浸透性固体媒体からなる装置」に該当する。
刊行物1の「分析デバイス」の「ゾーンI」は、「試験溶液の適用をするための部位」に該当し、同「ゾーンII」には、標識抗体1、すなわち、「分析成分に特異的である標識抗体であって拡散的に結合した標識抗体」が存在しているといえる。
刊行物1の「分析デバイス」の検出ゾーン(ゾーンV)は、「ゾーン1」(適用部位)から隔離されて配置された、「単一の反応帯」に該当する。刊行物1の「分析デバイス」の検出ゾーン(ゾーンV)には、抗体3、すなわち「分析成分と化学成分(抗体2)との反応生成物に特異的に反応する反応体」が、非拡散的に結合している。
刊行物1の「分析デバイス」では、試料が一回の通過で毛細管流により流路に沿って通過でき、その検出ゾーン(ゾーンV)で、標識抗体1及び固相抗体3は、被分析物と抗体2との反応生成物とともにサンドイッチ形成し、そして、単一の試料をゾーン1に接触させることにより使用される。
したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物1に記載されている発明である。

(2)本件請求項2に係る発明
「装置に適用される溶液」が「単一の試験溶液」からなるものであることは、刊行物1の特許請求の範囲および総括表Iに記載されている。
したがって、本件請求項2に係る発明は、刊行物1に記載されている発明である。

(3)本件請求項3に係る発明
刊行物1の「分析デバイス」の「ゾーンII」に拡散的に結合した「標識抗体1」は、「分析成分に特異的である標識抗体」に該当する。
したがって、本件請求項3に係る発明は、刊行物1に記載されている発明である。

(4)本件請求項4に係る発明
刊行物1のサンドイッチ法の態様の1つでは、「固相結合パートナー」は、「分析成分に特異的」である(前記(1d-1)参照)。
したがって、本件請求項4に係る発明は、刊行物1に記載されている発明である。

(5)本件請求項5に係る発明
「装置に適用される溶液」が「単一の試験溶液」からなるものであることは、刊行物1の特許請求の範囲および総括表Iに記載されている。
刊行物1のサンドイッチ法の態様の1つでは、「固相結合パートナー」は、「分析成分に特異的」である(前記(1d-1)参照)。
したがって、本件請求項5に係る発明は、刊行物1に記載されている発明である。

(6)本件請求項6に係る発明
「適用部位に試験溶液を適用した結果、上記装置が毛細管流により流路に沿って通過した該試験溶液を含」むことは、刊行物1の特許請求の範囲および総括表Iに記載されている(前記(1b)、(1f)参照)。また、「反応生成物」が、「反応帯で標識体を生成して該試験溶液中の分析成分の存在を示すように、標識化した抗体と非拡散的に結合した反応体の両者により、その両者の間で結合される」ことは、総括表Iに図示されている(前記(1f)参照)。そして、「分析成分」が、「反応帯で標識体を生成して該試験溶液中の分析成分の存在を示すように、標識化した抗体と非拡散的に結合した反応体の両者により、その両者の間で結合される」ことも、サンドイッチ法の態様の1つとして記載されている(前記(1d-1)参照)。
したがって、本件請求項6に係る発明は、刊行物1に記載されている発明である。

(7)本件請求項7に係る発明
刊行物1の特許請求の範囲および総括表Iには、「装置が、必要とされるは試験溶液の適用のみであるように、分析成分の存在を検出するのに必要とされる全ての材料を含有する」ことが、記載されている(前記(1b)、(1f)参照)。
したがって、本件請求項7に係る発明は、刊行物1に記載されている発明である。

(8)本件請求項8に係る発明
刊行物1には、「標識抗体が酵素で標識されそして該酵素のための基質の添加により検出される」ことは記載されている。
したがって、本件請求項8に係る発明は、刊行物1に記載されている発明である。

(9)本件請求項9に係る発明
刊行物1の総括表Iのサンドイッチ法のアセンブリにおいて、「抗体2」は、「流路に沿って拡散的に結合した化学成分」であり、「抗体2」が「分析成分と反応できる」ことも図示されている(前記(1f)参照)。
したがって、本件請求項9に係る発明は、刊行物1に記載されている発明である。
7.むすび
以上のとおり、本件請求項1ないし9に係る発明は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件請求項1ないし9に係る発明の特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-01-12 
出願番号 特願平9-63818
審決分類 P 1 651・ 113- Z (G01N)
P 1 651・ 03- Z (G01N)
最終処分 取消  
前審関与審査官 亀田 宏之  
特許庁審判長 後藤 千恵子
特許庁審判官 伊坪 公一
植野 浩志
登録日 1999-04-16 
登録番号 特許第2913281号(P2913281)
権利者 サーモディックス,インコーポレイティド
発明の名称 検定分析装置  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 加藤 勉  
代理人 萼 経夫  
代理人 中村 壽夫  

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