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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) F04B
管理番号 1093888
審判番号 無効2000-35636  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-02-20 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-11-22 
確定日 2003-12-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2600317号発明「可変容量圧縮機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2600317号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第2600317号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)についての出願は、昭和63年8月11日に出願され、平成9年1月29日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。
(2)その後、株式会社ゼクセルより特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年7月27日付けで訂正請求書が提出され、平成10年9月18日にその訂正を認めて、特許維持の決定がなされ、平成10年11月17日に確定したものである。
(3)これに対して、株式会社ゼクセルヴァレオクライメートコントロールより特許無効審判が請求され、、特許無効審判請求書の副本が被請求人に送達され、期間を指定して答弁書を提出する機会が与えられた。
(4)被請求人は、その指定期間内である平成13年3月8日に訂正請求書を提出した。

2.訂正内容及び訂正の可否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
「該感圧手段に可変荷重を加えて」とある特許請求の範囲の請求項1の記載を、「該感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて」と訂正する。
イ.訂正事項b
明細書の[課題を解決するための手段]の欄の記載について、「可変荷重入力手段を介して」とあるを、「可変荷重入力手段を介して外部からの信号による可変荷重を加え」に訂正する。
ウ.訂正事項c
明細書の[作用]の欄の記載について、「弁手段の感圧手段に可変荷重入力手段により荷重を加えて」とあるを、「弁手段の感圧手段に可変荷重入力手段により外部からの信号による可変荷重を加えて」に訂正する。
エ.訂正事項d
明細書の[発明の効果]の欄の記載について、「可変荷重入力手段を介して」とあるを、「可変荷重入力手段を介して外部からの信号による可変荷重を加え」に訂正する。
(2)訂正の可否についての判断
ア.これらの訂正事項について検討すると、上記訂正事項aは、発明の構成に欠くことができない事項である可変荷重を加える点をこれに含まれる事項である外部からの信号による可変荷重を加える点に変更するものであり、外部からの信号による可変荷重を加える点については、願書に添付された明細書の[実施例](実施例1)の欄(特許公報の第3頁第6欄第46-47行)、[実施例](実施例2)の欄(特許公報の第4頁第7欄第44-45行及び第4頁第8欄第14-23行)、並びに第1図及び第2図に記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。また、上記訂正事項bないしdは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
イ.したがって、平成13年3月8日付けの訂正請求による訂正は、特許法第134条第2項の規定、及び第134条第5項の規定によって準用する特許法126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.請求人の主張、及び提出した証拠方法
(1)請求人の特許無効の主張
これに対して、請求人は、本件特許発明の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、i)本件特許発明は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明と同一であるから、その特許は無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証を提出し、さらに、ii)仮にそうでないとしても、本件特許発明は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出している。
さらに、平成13年5月30日付けの審判事件弁駁書において、甲第1号証に記載された調整ねじ及び調整スプリングが可変荷重入力手段であると主張し、証拠方法として甲第9号証を提出し、調整ねじ及び調整スプリングという可変手段は外部信号による可変制御を内包しており、外部信号による可変制御技術を周知慣用的に伴うと主張し、甲第10号証ないし甲第16号証を提出し、仮にそうでないとしても、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証ないし甲第8号証に記載された周知技術を転用することは当業者において容易に想到しうるものであると主張し、証拠方法として甲第17号証ないし甲第19号証を提出している。
(2)請求人の提出した証拠方法
請求人は上記主張を立証するために、以下の証拠を提出している。
・甲第1号証;特開昭62-282182号公報
・甲第2号証;特開昭61-283774号公報
・甲第3号証;特開昭62-218669号公報
・甲第4号証;特開昭63-9682号公報
・甲第5号証;特開昭63-16177号公報
・甲第6号証;特開昭63-93614号公報
・甲第7号証;実開昭63-26783号公報
・甲第8号証;実開昭63-51174号公報
・甲第9号証;特開昭62-131981号公報
・甲第10号証;特開昭63-162996号公報
・甲第11号証;特開昭57-27317号公報
・甲第12号証;特開昭57-84926号公報
・甲第13号証;特開昭59-117970号公報
・甲第14号証;特開昭57-90717号公報
・甲第15号証;特開昭58-217879号公報
・甲第16号証;特開昭60-4683号公報
・甲第17号証;特開昭62-247186号公報
・甲第18号証;特開昭62-223475号公報
・甲第19号証;実願昭60-17615号(実開昭61-134580号)のマイクロフィルム

4.被請求人の主張
一方、被請求人は、
i)特許法第29条第1項違反への反論として、甲第1号証に記載された発明では、調整ばねや調整スプリング等がべローズ等の設定荷重を変更できるのは、圧縮機の生産工場、修理工場においてのみであり、本件特許発明と甲第1号証に記載された発明とでは、前者が感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加える可変荷重入力手段を備えているのに対し、後者は、調整ねじ及び調整スプリングが単なる固定荷重入力手段に過ぎず、本件特許発明のような可変荷重入力手段を備えていない点で相違し、
ii)特許法第29状第2項違反への反論として、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証ないし甲第8号証に記載された発明とを組み合せることが容易か否かを検討するに当たっては、車両等の空調に求められている効果を達成できるようになったかどうかを基準にすべきであり、先ず、弁制御手段を設ける位置が吐出室とクランク室とを連通する吸気通路である第1の制御形態と、吸入室とクランク室を連通する逃がし通路である第2の制御形態に分け、
第1に、甲第1号証に記載された発明は、第1の制御形態に属し、例えば車両の走行中等の圧縮機の作動中において、圧力制御点を可変することは不可能であり、他方、甲第2号証ないし甲第8号証に記載された発明は、第2の制御形態に属し、低容量圧縮運転に導くまでに比較的長い時間を要し車両の加速を支援するまでに至らず、本件特許発明の可変容量圧縮機では、外部からの信号としての加速信号により、吸入圧力が-定の状態であっても、圧力制御点が変位し、開閉弁を開き、高圧の吐出圧力の吐出ガスがクランク室に一気に導入され、クランク室圧力を瞬時に上昇させて低容量圧縮運転に導き、車両の加速を支援でき、
第2に、本件特許発明の可変容量圧縮機では、弁制御手段の開閉弁が閉じられた状態においても、ブローバイガスがクランク室から逃し通路を経て吸入室へ流動し、どんな状況においても、冷媒ガスの循環がなされて潤滑性に問題を生じないが、甲第2号証ないし甲第8号証に記載された発明の可変容量圧縮機では、弁制御手段の開閉弁が閉じられた状態のときには、クランク室へ導かれたブローバイガス等は吸入室への流動が阻止され、潤滑性が損なわれることになるのであり、
本件特許発明の可変容量圧縮機は、車両等の空調に求められる効果を検討し、第1の制御形態において、感圧手段に外部からの信号を可変荷重を加えて感圧手段の圧力制御点を可変とする可変荷重入力手段を組み込んだので、第1の制御形態に対し、甲第2号証ないし甲第8号証に記載された発明を単に組み合わせたものではない、
旨主張している。

5.本件特許発明
本件特許発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(1.(4)アの訂正事項a参照)。
「【請求項1】吸入室、吐出室およびクランク室を備え、該吐出室と該クランク室とを連通する給気通路に設けられた弁制御手段を介して、吸入圧力の変化に応じて揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした可変容量圧縮機において、前記弁制御手段は、前記給気通路を開閉する開閉弁と、該開閉弁に結合し、前記吸入圧力の低下を検出して該開閉弁を開くように制御する感圧手段と、該感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて該感圧手段の圧力制御点を可変とする可変荷重入力手段とから構成されていることを特徴とする可変容量圧縮機。」

6.甲第1号証及び甲第5号証
そして、甲第1号証(特開昭62-282182号公報)には、「本発明は容量可変コンプレッサにおける容量制御機構に関するものである。」(第1頁下左欄第14-15行)、「駆動軸5には公知の如くに角度可変ウォブル板8が設けられ、」(第2頁上右欄第9-10行)、「容量調整弁Bにおいて、本体14の一側に圧力応動部Mが設けられる。圧力応動部Mは、本体14に固着された下蓋15に対してダイヤフラム16を挟持した状態で上蓋17を設けると共に該上蓋17にばね箱18を固着し、ばね箱18内に螺着した調整ねじ19とダイヤフラム16の上当金20に当接するばね受け21との間に調整スプリング22を設けて構成する。 ダイヤフラム16の他側には連動杆23の当金24が当接している。連動杆23は本体14の摺動孔14aを貫通して延長しており、該連動杆23の一部と当金24は受圧室R1に位置しており、該受圧室R1には吸入圧力Psを導入する通路sに連通する吸入圧力導入口14bが形成されている。 摺動孔14aを通って延長する連動杆23は弁室R2に達し、その先端に固着されたボール弁体25が弁座Vを開閉する。そしてボール弁体25に当接するばね受け26と本体14に螺着された調整ねじ27との間には前記調整スプリング22に対抗する調整スプリング28が設けられている。なお、29はシールリングである。 弁室R2の一次側には吐出圧力供給通路dと連通する吐出圧力導入口14cが設けられ、二次側にはクランクケース1に対する吐出圧力供給通路d'と連通する吐出圧力供給口14dが形成される。」(第2頁下左欄第10行-同頁下右欄第16行)、「上記構成において、吸入圧力Psは通路sを介して吸入圧力導入口14bから受圧室R1に導入され、ダイヤフラム16を介して調整スプリング22と対抗している。そして、吸入圧力Psが低くなるとダイヤフラム16が連動杆23を第1図において押し下げるように作動し、弁体25が弁座Vを開いて吐出圧力Pdをクランクケース1内に導入し、クランクケース内の圧力Pcを高くしてウオブル板を立てることによりピストン4のストロークを小さくする。 吸入圧力Psが上昇すると、逆に動作してクランクケース1内への吐出圧力の供給を遮断する。」(第3頁上左欄第2-13行)、及び「〔発明の効果〕 本発明は上記した如くに、ピストンシリンダの吐出側からクランクケース内に連通する吐出圧力供給通路に介設した弁体を該ピストンシリンダの吸入圧力により制御し、該クランクケース内から固定オリフィリスを介して該ピストンシリンダの吸入側に至る圧力逃し通路を設けたものであるから、吸入圧力の変動時におけるクランクケース内外の差圧の変化を緩やかにしてコンプレッサの運転の円滑性を確保することができ、また圧縮機の構造を簡略化することが可能となる。」(第3頁上右欄第1-11行)との記載からみて、
吸入室、吐出室およびクランク室を備え、該吐出室と該クランク室とを連通する吐出圧力給気通路d、d'に設けられた弁制御手段を介して、吸入圧力Psの変化に応じて角度可変ウォブル板8の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした容量可変コンプレッサにおいて、前記弁制御手段は、前記吐出圧力給気通路d、d'を開閉するボール弁体25と、該ボール弁体25に結合し、前記吸入圧力Psの低下を検出して該ボール弁体25を開くように制御するダイヤフラム16と、調整ねじ19及び調整スプリング22とから構成されている容量可変コンプレッサ。
が記載されている。
甲第5号証(特開昭63-16177号公報)には、「クランク室と、該クランク室内に延在し、回転可能に支持された主軸と、該主軸に固着されたロータと、該ロータに該主軸に対する傾斜角が変化するようにヒンジ機構を介して支持された斜板と、該斜板の傾斜面に沿って回転を抑止されるように配設され、前記主軸の回転に応じて揺動する揺動板と、該揺動板に連結され、該揺動板の揺動によりそれぞれのシリンダ内で往復動する複数のピストンと、前記シリンダ内に流体を供給する吸入室と、前記シリンダ内で圧縮された流体が吐出される吐出室と、前記クランク室と前記吸入室との間の連通路に設けられた弁手段とを含み、前記弁手段により前記クランク室内の圧力を調節し、前記斜板の傾斜角を変えることにより前記流体のシリンダへの取り込み容積を可変する容量可変型圧縮機において、前記弁手段が前記クランク室と前記吸入室との間の通路の開度を調節する調整弁と、該調整弁に結合し、吸入圧力を検出して該調整弁を制御する第1の感圧手段と、該第1の感圧手段に結合し、外部入力により該第1の感圧手段に可変荷重を与えて該第1の感圧手段の圧力制御点を可変する外部制御手段とから成ることを特徴とする容量可変型圧縮機。」(第1頁下左欄第5行-同頁下右欄第9行)、及び「本発明によれば、調整弁の開閉を駆動する感圧手段の圧力設定値を別に付加された外部制御手段により任意に制御することが可能となり、これによって吸入圧力とクランク室圧力との差を広範囲に設定し、結果的にピストンのストローク、すなわち圧縮容量を好ましい値に調整できるから、媒体に低い蒸発温度を維持させたり、低容量の運転により負荷の低減を可能にするなど、得られる効果は大きい。」(第4頁下右欄第19行-第5頁上左欄第7行)との記載からみて、
吸入室、吐出室およびクランク室を備え、吸入圧力の変化に応じて揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした容量可変型圧縮機において、調整弁に結合し調整弁を制御する感圧手段に、外部からの信号による可変荷重を加えて該感圧手段の圧力制御点を可変とする可変荷重入力手段
が記載されている。

7.対比判断
そこで、本件特許発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された「吐出圧力供給通路d,d'」、「角度可変ウォブル板8」、「容量可変コンプレッサ」、「ボール弁体25」、「ダイヤフラム16」は、それぞれ、本件特許発明の「給気通路」、「揺動板」、「可変容量圧縮機」、「開閉弁」、「感圧手段」に相当するから、両者は、
吸入室、吐出室およびクランク室を備え、該吐出室と該クランク室とを連通する給気通路に設けられた弁制御手段を介して、吸入圧力の変化に応じて揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした可変容量圧縮機において、前記弁制御手段は、前記給気通路を開閉する開閉弁と、該開閉弁に結合し、前記吸入圧力の低下を検出して該開閉弁を開くように制御する感圧手段とから構成されている可変容量圧縮機。
の点で一致し、
(イ)本件特許発明では、該感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて該感圧手段の圧力制御点を可変とする可変荷重入力手段とから構成されるのに対して、甲第1号証に記載された発明では、調整ねじ及び調整スプリングとから構成される
点で相違する。
上記相違点(イ)について検討する。
甲第5号証に記載された「容量可変型圧縮機」、「調整弁」は、それぞれ、本件特許発明の「可変容量圧縮機」、「開閉弁」に相当するので、
吸入室、吐出室およびクランク室を備え、吸入圧力の変化に応じて揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした可変容量圧縮機において、開閉弁に結合し開閉弁を制御する感圧手段に、外部からの信号による可変荷重を加えて該感圧手段の圧力制御点を可変とする可変荷重入力手段
が、甲第5号証に記載されており、甲第1号証記載の発明と甲第5号証記載の発明とは、吸入室、吐出室およびクランク室を備え、吸入圧力の変化に応じて揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした可変容量圧縮機において、開閉弁に結合し開閉弁を制御する感圧手段という同一技術分野に属するものであるから、両発明を組み合わせることに格別の困難性はなく、したがって、甲第1号証記載の発明に、甲第5号証記載の可変荷重入力手段に関する発明を適用することにより、もって本件特許発明のように構成することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件特許発明の構成によってもたらされる効果も、甲第1号証及び甲第5号証に記載された発明から当業者であれば予測できる程度のものである。
被請求人は、組み合わせの容易性の主張は、応答性と潤滑性の点において、妥当性を欠く旨主張している(「4.被請求人の主張」の箇所参照)。主張されている応答性と潤滑性とは、吐出室とクランク室とを連通する給気通路に弁制御手段を設ける給気通路制御形態(第1の制御形態)を車両等の空調に適用した場合に持つ当然の効果であり(必要なら、応答性につき、甲第19号証の実願昭60-17615号(実開昭61-134580号)のマイクロフィルム(第14頁第6-18行)、潤滑性につき、特開昭61-215469号公報(第3頁上左欄第17-20行)等参照。)、組み合わせの一方である甲第1号証の発明においても、給気通路制御形態を採用しているものであり、組み合わせの阻害事由となるものではない。また、その応答性と潤滑性について前提としている車両等の空調は、特許請求の範囲に記載がなく、特許請求の範囲の記載に基づく主張でもない。
なお、請求人は、特許法第29条第1項違反について主張しているので、検討する。
甲第1号証には、調整のために駆動する部材及び調整の程度を決定する部材が記載されていないので、調整ばね及び調整スプリングが記載されていることをもって、可変荷重入力手段が記載されているとは言えない。
調整ねじ及び調整スプリングに関連して周知慣用の技術であると主張され、示唆されているとされる調整とは、調整ねじを回して、設定圧力を実現するものである(平成13年5月30日付け審判事件弁駁書第3頁第24行-第4頁第4行及び第4頁第14-16行参照)。甲第11号証ないし甲第16号証(調整ねじ及び調整スプリングには外部信号による可変制御技術を周知慣用的に伴うことが自明であることを証するとして挙示されているのであるが)もこれに反することを示しているものではない。なお、甲第10号証のものは、調整ネジ33の回転角を与えるものとして、パルスモータ、人力、モータ、ソレノイド等の電気的力などが、別部材又は別手段として、記載されており、調整ねじ及び調整スプリングのみが記載されているわけではなく、しかも、周知慣用の技術として記載されているものでもない(発明として提示されている。)。この甲第10号証の技術を周知慣用の技術を示すものとする主張は、甲第10号証が新たな証拠の追加に相当するので、請求の理由の要旨の変更となる。従って、前記周知慣用の技術においては、設定圧力を実現する技術を示し、設定圧力を可変にする技術を示すものではない。そして、本件特許発明は、設定圧力である制御点を可変とすることにより、明細書記載の「開閉弁の弁制御を任意とすることができ、これにより吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入量及び導入時期を任意に制御することができる。」(平成13年3月8日付け訂正明細書段落[発明の効果]参照。)という作用効果を奏するものと認められる。
してみると、本件特許発明は、周知慣用の技術を考慮しても、甲第1号証に記載された発明ではない。

8.むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定に該当する。
また、審判に関する費用については、特許法169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
可変容量圧縮機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入室、吐出室およびクランク室を備え、該吐出室と該クランク室とを連通する給気通路に設けられた弁制御手段を介して、吸入圧力の変化に応じて揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした可変容量圧縮機において、
前記弁制御手段は、前記給気通路を開閉する開閉弁と、該開閉弁に結合し、前記吸入圧力の低下を検出して該開閉弁を開くように制御する感圧手段と、該感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて該感圧手段の圧力制御点を可変とする可変荷重入力手段とから構成されていることを特徴とする可変容量圧縮機。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は車両空調用等に使用される可変容量圧縮機に係わり、特に、吸入室とクランク室とを備え、吸入圧力とクランク室圧力との差圧に応じてピストンストロークが変化して、圧縮容量を制御するようにした揺動板型の可変容量圧縮機に関するものである。
[従来の技術]
一般に揺動板型可変容量圧縮機にあっては複数個のシリンダー室が周方向に沿って並列させて設けられ、各シリンダー室内に嵌挿されるピストンを揺動板の揺動を介して連続的に進退させることによって圧縮作用を得るように設けられる。そして揺動板は車室内の冷房負荷の変化と対応させてその揺動傾斜角を変化させることができるように設けられる。すなわち、車室内の冷房負荷が大きい状態においては揺動板の揺動傾斜角を大きくすることによって大きな圧縮容量が得られ、また、車室内の冷房負荷が小さい状態においては揺動板の揺動傾斜角を小さくすることによって小さな圧縮容量が得られるように設けられる。そして従来この様な揺動傾斜角を変化させる方法の一つとして、密封されたクランク室を有し、冷房負荷が大きい状態においてはクランク室圧力が設定圧力(吸入圧力)に保持されて揺動板が大きな傾斜角を存して揺動する状態が得られるようにするとともに、冷房負荷が減少した場合には同クランク室内に吐出ガスを導くことによりクランク室圧力を上昇させ、揺動板が小さな傾斜角を存して揺動する状態が得られるようにする方法が提案されている。
第3図はその具体的構造を表わす図面であって、吐出室aとクランク室b間に連通されて吐出圧力の給気通路c、dが形成されると共に同給気通路c、d間に介在させて開閉弁eが設けられる。そして同開閉弁eには上記給気通路c、dと連通する吐出圧力室fと、吸入室gと連通mする吸入圧力室hとが対峙させて設けられ、吸入圧力室hには大気と連通する圧力室(大気圧力室)iを存してベローズjが伸縮自在に内蔵される一方、吐出圧力室fには上記給気通路c、dの開閉弁kがベローズjの伸縮と連動させて開閉自在に設けられる。そして車室内の冷房負荷が大きい状態においては、吸入圧力室hにおいて吸入圧力が大気圧力室iにおける設定圧力(大気圧+ばねlの付勢圧)を上回る状態が得られることによりベローズjは収縮して給気通路c、dを閉じる状態、すなわち、クランク室b内が吸入圧力状態にあって、揺動板を大きな傾斜角を存して揺動する状態が得られ、ピストンストロークを大きくすることで最大容量の圧縮作用が得られる。一方、車室内の冷房負荷が減少した状態においては吸入圧力室hにおいて吸入圧力が大気圧力室iにおける設定圧力(大気圧+ばねlの付勢圧)を下回る状態が得られることによりベローズjの伸長作用を介して給気通路c、dを開放し、吐出圧力をクランク室b内に送り込むことにより同クランク室b内の圧力を急激に上昇させて揺動板を小さな傾斜角を存して揺動する状態へ変化させ、ピストンストロークを小さくすることで圧縮容量をダウンする作用が得られるように設けられる。また、クランク室bと吸入室g間に連通させて逃し通路nが形成され、各シリンダー室0とピストンp間に形成される隙間よりクランク室b内に流入する吐出ガス(ブローバイガス)を吸入室gに逃すことができるように設けられる。すなわち、ブローバイガスを吸入室gに逃すことにより、クラング室b内におけるブローバイガスによる圧力上昇を防止し、同クランク室b内を設定圧力に保持することができるように設けられる。
[発明が解決しようとする課題]
ところが上記の様な従来の可変容量圧縮機においては、開閉弁における弁の開度がベローズ等の感圧手段の伸縮により調整されるようになっており、これによりクランク室内の圧力を変化させ、揺動板の傾斜角(ピストンのストローク)を制御している。この場合、感圧手段の圧力制御点は決められた値に設定されているので、結果的に吸入圧力は固定の一定値に制御されることになる。
したがって加速時等に低容量圧縮運転したいといった要望があっても感圧手段の圧力設定値を変えることができないので、これに対応することができなかった。
本発明は、クランク室内を制御する弁制御手段を改変することにより、クランク室内圧力、ひいては圧縮容量を任意に制御可能とすることを解決すべき技術課題とする。
[課題を解決するための手段]
本発明は上記課題解決のため、クランク室と吐出室とを連通する給気通路に設けられる弁制御手段において、可変荷重入力手段を介して外部からの信号による可変荷重を加え、吸入圧力の低下を検出して開閉弁を開くように制御する感圧手段の圧力制御点を可変にするという技術手段を講じている。
すなわち、本発明の可変容量圧縮機は、クランク室圧力を積極的に変位させるためにクランク室と吐出室とを連通する給気通路に弁制御手段を設け、この弁制御手段における開閉弁を任意に制御可能として、吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入時期及び導入量を任意に制御可能としたものである。
[作用]
本発明の可変容量圧縮機は、吸入圧力がそれほど小さくないとき等に、クランク室内の圧力を高くして圧縮容量を小さくしたい場合、弁手段の感圧手段に可変荷重入力手段により外部からの信号による可変荷重を加えて該感圧手段の圧力制御点を大きくすることにより、開閉弁の開動作を可能とすることができる。
[実施例]
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
(実施例1)
本実施例は車両用空調装置に使用される揺動板型の可変容量圧縮機に具体化したものであって、第1図に示すようにシリンダブロック1の右側面には弁板2を介してリヤハウジング3が適宣締付手段にて接合固定されている。そのリヤハウジング3内の外周部には環状の吸入室4が、また、前記リヤハウジング3内の中央部には吐出室5がそれぞれ区画形成され、吸入口及び吐出口(図示せず)を介して外部冷房回路に接続されている。前記シリンダブロツク1の左端面にはフロントハウジング6が接合固定され、その内部にはクランク室7が形成されている。シリンダブロック1とフロントハウジング6には駆動軸8が一対の軸受9及びシャフトシール機構19を回転可能に支持されている。
前記シリンダブロック1には、その両端間を貫通して5個のシリンダ室10が駆動軸8と平行に形成されている。各シリンダ室10内にはピストン11が往復摺動可能に装着され、その左端面にはピストンロッド12が連接されている。前記弁板2には、吸入室4から前記各シリン室10の圧縮室内に冷媒ガスを導入するための吸入弁13がそれぞれ形成されている。同じく弁板2には各シリンダ室10の圧縮室内で圧縮された冷媒ガスを吐出室5に導出するための吐出弁14が設けられている。
前記駆動軸8には回転体15が嵌合固定され、該回転体15には連結ピン16により揺動板17が傾斜可能に連結され、定位置に横架された案内ロッド18により回転が規制されている。また、揺動板17には前記各ピストンロッド12の左端部がそれぞれ連接され、駆動軸8の回転により回転体15が回転されて、揺動板17が傾動されたとき、ピストンロッド12を介してピストン11が往復動されるようになっている。そして、吸入室4の吸入圧力の変化に応じてピストンストロークが変わって前記揺動板17の傾斜角が変化し、圧縮容量が制御されるようになっている。
以上述べた構成は従来の可変容量圧縮機と同様の構成である。
次に、本発明の要部について述べると、前記吐出室5と吸入室4とを区画形成するリヤハウジング3には第1弁手段30が設けられ、同第1弁手段30を開閉させることによって、クランク室7の圧力制御を行なうように設けられている。即ち、同第1弁手段30には吸入圧力室31と吐出圧力室32が対峙させて設けられ、吸入圧力室31は連通路4aを介して吸入室4と、また、吐出圧力室32は給気通路5a(吐出圧力の供給通路)を介して吐出室5とそれぞれ連通するように設けられている。そして吸入圧力室31には後述する第2弁手段50と連通する感圧室33が対面させて設けられると共に両室31、33間に介在させてダイヤフラム34が設けられている。また、同感圧室33にはバネ35が介挿され、常時は同ダイヤフラム34が吐出圧力室32方向に付勢された状態にあるように設けられている。一方、吐出圧力室32には吸入圧力室31寄りの一端に弁座36が設けられるとともに同弁座36を介してポート39が区画形成されている。そして同ポート39より吐出圧力の給気通路7aが延設され、その先端部はクランク室7に臨むように設けられている。また、前述のダイヤフラム34には弁杆40の一端が連結されるとともに同弁杆40は吐出圧力室32方向に向けて延設され、その先端部はポート39及び弁座36を貫通して吐出圧力室32内に臨むように設けられている。そして同弁杆40の先端部には上記弁座36と対応させて円錐状の開閉弁37が進退自在に嵌合されている。すなわち、同開閉弁37はダイヤフラム34の進退作用を介して開閉させることが可能なように設けられている。そしてまた、吐出圧力室32にはその一端を開閉弁37に係合させてバネ41が介挿され、同開閉弁37を弁座36方向(閉じ方向)に付勢するように設けられている。
また、リヤハウジング3にはクランク室7と吸入室4とを連通させるブローバイガスの逃し通路20aが穿設されている。そして同逃し通路20aの途中には絞り弁等(図示せず)が設けられている。
上記感圧室33からは連通路50aが設けられ、この連通路50aは第2弁手段50を介して、大気圧に通じている連通路50b及び吐出室5へ延設されている連通路50cとそれぞれ連通している。第2弁手段50としては、感圧室33からの連通路50aと、大気圧に通じている連通路50b又は吐出室5からの連通路50cとを選択的に連通させるためのもので、一般の方向制御弁、電磁三方弁等を使用することができる。
次に、前記のように構成された可変容量圧縮機について作用を説明する。
圧縮機が運転を停止した状態においては、第2弁手段50は連通路50aと50bとを開放しており、感圧室33は大気圧と連通している。第1弁手段30において、ダイヤフラム34はその圧力差(吸入圧力室31の圧力>大気圧+バネ35の付勢力、以下「大気圧+バネ35の付勢力」を「設定圧力」という)により感圧室33方向に後退した状態(弁座36は開閉弁37によって塞がれて吐出圧力室32とクランク室7間を繋ぐ給気通路7aは閉じられた状態)にある。すなわち、クランク室7は吸入室4と連通状態(吸入圧力状態に保持された状態)にあり、揺動板17において大きな揺動傾斜角が得られた状態にある。
この状態でエンジン等の動力により駆動軸8が回転されると、車室内の冷房負荷が大きい場合には揺動板17が揺動傾斜角の大きい状態で揺動し、ピストン11が大きなストロークにて往復動されて大容量圧縮運転が行なわれる。
このような大容量運転が一定時間に亘って行なわれることにより、車室内が冷されてその冷房負荷(エバポレータ熱負荷)が減少すると、エバポレータより吸入室4に送り込まれる冷媒ガスの吸入圧力が低下することとなる。そして、第1弁手段30において、この吸入圧力が「設定圧力」を下回った時、その圧力差によりダイヤフラム34が吸入圧力室31方向に押し出されて開閉弁37を開く状態が得られる。そしてこのように開閉弁37が開かれることにより、吐出圧力室31とクランク室7間をつなぐ給気通路7aが開かれた状態となって吐出室5内の吐出ガスがクランク室7内に送り込まれる。そしてこのようにクランク室7内に吐出ガスが送り込まれ、同クランク室7内の圧力が上昇することにより、各ピストン11においてそのストロークを小さくする作用、すなわち、揺動板17の揺動傾斜角を小さくして圧縮容量を徐々に減らす作用が得られるのである。
以上説明した作用は、従来の可変容量圧縮機と同様の作用である。
次に、本実施例の圧縮機特有の作用について説明する。第2弁手段50は、上述したように通常の圧縮運転においては、連通路50aと連通路50bとを開放し、第1弁手段30における感圧室33は大気圧と通じている。ここで、加速時等の圧縮容量を任意に減少させたい場合、外部からアンプを介して電圧信号を第2弁手段50に与えて、連通路50aと連通路50bとの解放を閉じると同時に連通路50aと連通路50cとを開放する。これにより、第1弁手段30の感圧室33と吐出室5とが連通し、吐出ガスが感圧室33に導入されることとなり、前記「設定圧力」が変位する。すなわち、吸入圧力(吸入圧力室31内の圧力)が一定の状態であっても、上記のように吐出ガスの導入に伴う感圧室33内の圧力上昇によって、ダイヤフラム34の圧力制御点が変位し、ダイヤフラム34を吸入圧力室31方向に押して開閉弁37を開くことができる。
したがって、本実施例の可変容量圧縮機は、吐出室5からクランク室7へ導入される吐出ガスの導入時期及び導入量の制御が任意となり、これにより、必要に応じて、クランク室7内の圧力を上昇せて低容量圧縮運転を行なうことができる。
(実施例2)
前記実施例1にあっては、吸入圧力室31と感圧室33とはダイヤフラム34によって隔てられ、かつ通常の圧縮運転時に感圧室33は大気圧と連通している。このため、圧縮機の長期使用によりダイヤフラム34にガタつきが生じた場合、若しくは吐出室と大気圧との切替えが繰り返されてダイヤフラム34に高圧ガス圧力と大気圧とが繰り返し付加される場合には、そこから吸入圧力室31内の吸入ガスが感圧室33に徐々に漏れ出し、結果的に吸入ガスが大気中に漏れるといった不都合が生じる可能性もある。
本実施例2は、この点を考慮したもので、第2図に示すように、感圧室33からの連通路50aは、第2弁手段50’を介して、吸入室4に延設されている連通路50b’及び吐出室5に延設されている連通路50cとそれぞれ連通している。また、ダイヤフラム34に結合されているバネ35は吸入圧力室31側に介挿され、ダイヤフラム34は常時感圧室33方向に付勢されている。なお、他の具体的な構造は、前記実施例1と同様である。
以下、本実施例2の特有の作用について説明する。
本実施例2では、運転停止状態において第2弁手段50’は、連通路50aと連通路50b’及び連通路50cとの連通を閉じている。すなわち、感圧室33は密閉状態にあり、このときダイヤフラム34は圧力差(吸入圧力室31の圧力+バネ35の付勢力>感圧室33の圧力)により感圧室33方向に後退した状態(弁座36は開閉弁37によって塞がれた状態)にある。そして、エンジン始動後大容量運転が一定時間に亘って行なわれ、冷房負荷が減少して吸入圧力が低下すると、その圧力差(吸入圧力室31の圧力+バネ35の付勢力<感圧室33の圧力)によりダイヤフラム34は吸入圧力室31方向に押し出されて開閉弁37が開いた状態となり、小容量運転へと変わる。
次に、加速時等の圧縮容量を任意に減少させたい場合、前記実施例1と同様に第2弁手段50’に電圧信号を与えて連通路50aと連通路50cとを開放することにより、吐出室5内の高圧ガスを感圧室33内に送り込みダイヤフラム34を吸入圧力室31方向に押して開閉弁37を開く。そして、この状態から通常圧縮運転に戻る際、本実施例2では、第2弁手段50’により一旦、連通路50aと連通路50b’とを導通し、吸入室4と感圧室33とを一定期間連通させてから、連通路50aと連通路50b’及び連通路50cとの連通を閉じて感圧室33を密閉状態にする。したがって、通常圧縮運転時においては、感圧室33内の圧力は感圧室33が密閉状態となる寸前の吸入圧力に保たれている。
このように本実施例2では、感圧室33は密閉状態、吸入室4と連通した状態、又は吐出室5と連通した状態のうちのいずれかの状態にあり、感圧室33が前記実施例1のように大気圧と通じることはない。したがって、吸入ガスが大気中に漏れることなく、実施例1と同様に任意な圧縮容量制御が可能となる。
なお、前記実施例1及び2にあっては、外部信号により第2弁手段50(50’)を任意に制御可能とし、ダイヤフラム34の背面に高圧ガス圧力を付加して同ダイヤフラムの圧力制御点を変位させているが、ダイヤフラムの背面に荷重を加えて同ダイヤフラムの圧力制御点を変位させる手段としては、上記実施例のものに限られず、電磁ソレノイドの電磁吸引力、又はサーボモータの駆動力を利用して直接ダイヤフラムの背面に可変荷重を加える構成とし、この電磁ソレノイド又はサーボモータを電圧信号等の外部入力により制御可能とすることもできる。
[発明の効果]
以上詳述したように、本発明の可変容量圧縮機は、吐出室とクランク室とを連通する給気通路に設けられた弁制御手段において、可変荷重入力手段を介して外部からの信号による可変荷重を加え、開閉弁を制御する感圧手段の圧力制御点を変位可能とすることによって、開閉弁の弁制御を任意とすることができ、これにより吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入量及び導入時期を任意に制御することができる。したがって本発明の可変容量圧縮機によれば、加速時等に圧縮容量を減少させるといった任意な圧縮容量制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る実施例の可変容量圧縮機の全体を表わす断面図である。第2図は、本発明に係る他の実施例の可容容量圧縮機の要部を表わす断面図である。第3図は従来の可変容量圧縮機の全体を表わす断面図である。
4……吸入室、5……吐出室
7……クランク室、11……ピストン
17……揺動板、30……第1弁手段
31……吸入圧力室、32……吐出圧力室
33……感圧室、34……ダイヤフラム
35……バネ、36……弁座
37……開閉弁、40……弁杆
41……バネ、50……第2弁手段
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2001-07-13 
結審通知日 2001-07-18 
審決日 2001-08-02 
出願番号 特願昭63-200392
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (F04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石橋 和夫  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 清田 栄章
亀井 孝志
登録日 1997-01-29 
登録番号 特許第2600317号(P2600317)
発明の名称 可変容量圧縮機  
代理人 中村 敬  
代理人 森田 政明  
代理人 中村 敬  
代理人 森 正澄  

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