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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1094226
審判番号 不服2000-6873  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-09 
確定日 2004-04-07 
事件の表示 平成9年特許願第49529号「身体クローズドサイクルヒートサーキット装置」拒絶査定に対する審判事件[平成10年7月28日出願公開、特開平10-192326]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理 由
1.本願は、平成9年1月14日の出願であって、平成12年5月9日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。
「請求項1
熱ポンプ6 により熱吸収部5、径路7、熱ポンプ6、径路8、加熱部4、人体1、再び熱吸収部5 の順に流れる熱流の熱的連結回路、すなわち熱が循環する閉回路を形成せしめ、人体1 において足部の温度をT1、ひざ部9 の温度をT2、腰部10の温度をT3、胸部11の温度をT4、頭部3 の温度をT5とし、足部とひざ部分の熱抵抗をR1、ひざ部と腰部間の熱抵抗をR2、腰部と胸部間の熱抵抗をR3、胸部と頭部間の熱抵抗をR4とし、熱流量をBcとすると、T1> T2> T3> T4> T5, Bc= T1-T5 / R1+ R2 +R3 +R4、の2つ式を満足せしめる事を特徴とする熱伝導性低下の少ない熱流の熱的連結回路装置。」
上記請求項1に記載された発明は、請求項の末尾は「・・・装置」とされているが、実質的には、該装置を使用して、「熱が循環する閉回路を形成せしめ、人体1において足部の温度をT1、ひざ部9の温度をT2、腰部10の温度をT3、胸部11の温度をT4、頭部3の温度をT5とし、足部とひざ部分の熱抵抗をR1、ひざ部と腰部間の熱抵抗をR2、腰部と胸部間の熱抵抗をR3、胸部と頭部間の熱抵抗をR4とし、熱流量をBcとすると、T1>T2>T3>T4>T5, Bc=T1-T5/R1+R2+R3+R4、の2つ式を満足せしめる」ようにした「方法に係る発明」というべきである。
そして、本願明細書の「発明の属する技術分野」の項に記載されているように、本願発明は、「疾病や体不調を治癒する」ための方法であるから、「人間を治療する方法」に該当し、特許法第29条第1項柱書に規定されている「産業上利用することができる発明」に当たらないというべきである。(特許・実用新案審査基準第II部第1章・産業上利用することができる発明「2.1『産業上利用することができる発明』に該当しないものの類型」参照、特許庁ホームページhttp://www.jpo.go.jp/indexj.htm「審査情報」中にもあり)
なお、請求人は、平成13年6月22日提出の意見書において、「本発明は方法を加味した装置の発明であ(る)」旨主張するが、発明の本質的部分は、「T1>T2>T3>T4>T5, Bc=T1-T5/R1+R2+R3+R4、の2つ式を満足せしめる」ように熱流を人体に流す方法にあるものと認められる。

2.また、上記請求項1に記載された発明は、理論的には「熱が循環する閉回路を形成せしめ、人体1において足部の温度をT1、ひざ部9の温度をT2、腰部10の温度をT3、胸部11の温度をT4、頭部3の温度をT5とし、足部とひざ部分の熱抵抗を R1、ひざ部と腰部間の熱抵抗をR2、腰部と胸部間の熱抵抗をR3、胸部と頭部間の熱抵抗をR4とし、熱流量をBcとすると、T1>T2>T3>T4>T5, Bc= T1-T5 / R1+R2+R3+R4、の2つ式を満足せしめる」ことが可能であるとしても、明細書の記載からみて、その実施は実際上考えられないものであり、「実際上、明らかに実施できない発明」であって、この点においても「産業上利用することができる発明」に当たらないというべきである。(特許・実用新案審査基準第II部第1章・産業上利用することができる発明「1.1 『発明』に該当しないものの類型(6)」参照、URL同上)

3.本願の明細書の「発明の詳細な説明」中の「実施例」の項の記載も、「・・・人体1においては、足部2の温度をT1、ひざ部9の温度をT2、腰部10の温度をT3 、胸部11の温度をT4 、頭部3の温度をT5 とし、足部とひざ部間の熱抵抗をR1、ひざ部と腰部間の熱抵抗をR2、腰部と胸部間の熱抵抗をR3、胸部と頭部間の熱抵抗をR4とすると、T1>T2>T3>T4>T5であり、熱流量をBcとすると、Bc =T1-T5/R1+R2+R3+R4となる。」(段落【0007】)、「人体1が接する加熱部4と熱吸収部5の温度は、人体の疾病などの種類と程度、年令、体質などに関係があり、一律に定められるものではないが、加熱部4では、ほぼ快適と感じる温度から低温やけどを生じない範囲であり、熱吸収部5では、ほぼ快適と感じる温度から痛みやしびれを生じない冷たさの温度の範囲であり、加熱部4は長靴状であれば十分な加熱ができるが、容易に着脱できず、平板状であれば足部をのせるだけで使用上便利であるが足部への熱伝達が低下し易く、又、足部をのせる板面からの熱損失が生じ易い。しかし、加熱部の温度は表面熱損失が著しくなるほど高温ではないので使用上便利のため平板状とする場合が多い。又、熱吸収部は、十分な熱吸収のためには帽子状がよいが、やはり使用上不便であるから、頭をのせる凹部を有する枕状のものが頭が安定してのせられ、しかも頭の動きが割合自由であり、熱効率の低下、すなわち熱伝導性低下も少いものである。加熱部および熱吸収部の温度の調節は、サーモスタットによる熱ポンプの送熱量の制御、加熱部および熱吸収部における熱流バイパス量の調節などにより行う。」(段落【0008】)、「熱ポンプ6は、熱電素子のペルチエ効果による熱移動を利用することができ、この場合、径路7あるいは8は直接に熱電素子の冷極あるいは熱極に接するようにするか、熱を伝達するヒートパイプのごときものとなる。または流体の気化熱、凝縮熱を利用して熱移動を行うコンプレッサを使用する冷凍機系のものでもよい。このときは径路7,8は流体のパイプとなる。」(段落【0009】)、「図2における人体1は、椅子に坐り治療を受ける状態であるが、状況によっては横に寝た状態でもよい。」(段落【0010】)、「人体は不健康なときは、頭に血が上るとか頭が熱いとか云われて頭熱足寒の状態となる。本発明は本例のごとく足部より頭部への熱流により古来から云われている健康体の状況である頭熱足寒の状態とするものである。ただ、単に頭熱足寒の状態とするには頭にのせる冷湿布を取替えたり、足をふとんの中のこたつのところに入れたりして面倒である。本発明はこれを頭を熱吸収部に接し、足を加熱部に接するという動作のみで恒常的に且つ自動的に頭熱足寒の状態とすることができる。」(段落【0011】)、「なお、本発明は足部より頭部への熱流のみならず、必要に応じて人体の複数部位に熱的連結回路を容易に形成することができる。上記実施例の他の、本発明にもとづく種々の変形はすべて本発明に属するものである。(段落【0012】)」というものであって、抽象的な説明に終始していて、発明をどのように実施するかを具体的には示されておらず、「実施例」というに値しない。また、「発明の詳細な説明」及び「図面」の全体を参酌しても、当業者が本願発明の実施をすることができる程度にその方法が明確かつ十分に記載されているものとは認められない。
また、発明の効果も、「本発明により冷え症、肩凝り、更年期障害、旅行の時差ぼけ、悪酔、風邪、蓄膿症の鼻つまり、睡眠不足、女性の肌荒れ、インポテンツ、難聴、乗物酔、歩くときの足が重いなどを治癒することができる。これらは、慈恵会医科大学、セントマリアンヌ校、シカゴ医科大学において実験を行い、効果を得ることができた。又、本発明装置は1200台以上の実験機により1万人以上の実験者が上記効果を確認しているところである。」(段落【0013】)とするが、具体的な実施条件もそれに対応する具体的な効果も明らかにされていない。
なお、請求人は、平成13年6月22日提出の意見書において、「・・・この項の「熱が循環して閉回路を形成させることの出来る理由」に関しては、本願発明の特許出願人著作図書、「ゴロ寝してスーパーマンになる法(下)実践編」の第32頁乃至第330頁を含む前記図書1冊を手続補足書により提出致しましたのでこれをご覧下さい。上記第32頁乃至第330頁に本発明の「セレブレックス」に関する説明の欄にこの根拠を示す実験データがあります。・・・この項に関しては、明細書の「実施例」の項の記載で当業者は実施出来ると思料しておりますが、どこが実施出来ないのかご指摘頂きたく存じます。・・・本発明の効果としては「冷え性、肩凝り、更年期障害、旅行の時差ボケ、悪酔、風邪、蓄膿症の鼻つまり、睡眠不足、女性の肌荒れ、インポテンツ、難聴、乗物酔、歩くときの足が重いなどの治癒」と記載されておりどこが不明かご指摘頂きたく存じます。なお、拒絶理由通知における引用文献に関し、いずれの引用文献にも「身体と椅子を一体とした連結回路を形成する」思想も構造も記載がありません。」と主張する。
ところで、特許制度は、新しい技術を開発しそれを公開した者に対し、一定期間、一定条件下に独占権を付与することにより発明の保護を図り、他方、第三者に対しては、この公開により発明の技術内容を知らしめて、その発明を利用する機会を与えるものであって、発明についてのこのような保護・利用は、発明の技術的内容を公開するための技術文献、特許の技術的範囲を正確に明示する権利書としての使命をもつ明細書を介してなされることになる。そのため、仮に有用なる発明がされたとしても、願書に添付された明細書にその発明が、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載されていない限り、その発明についての特許出願に対して特許をうけることができないという制度設計になっている。そして、法令は、明細書の「発明の詳細な説明」は、経済産業省令で定めるところにより、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に」記載しなければならず(特許法第36条第4項)、「特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければなら(ず)」(特許法施行規則第24条の2)、また、「発明の詳細な説明」は、「特許を受けようとする発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができるように、発明をどのように実施するかを示す発明の実施の形態を記載し、必要があるときは、これを具体的に示した実施例を記載する。その発明の実施の形態は、特許出願人が最良と思うものを少なくとも一つ挙げて記載する。」としている(特許法施行規則第24条様式29備考15ハ)。
仮に、本願発明が出願人著作の図書に詳細に記載されているとしても、本願の願書に添付された明細書に記載されていない以上、法令の定める特許を受けることのできる要件を満たしたことにはならない。
本願の願書に最初に添付された明細書の記載は、以下のとおりである。
「【発明の名称】身体クローズドサイクルヒートサーキット装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】人体の複数部位に電流、熱等のエネルギ差を与え、全体として人体に熱的連結回路を形成せしめる事を特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の属する技術分野1
本発明は、人体において熱的連結回路の熱流により、疾病や体不調を治癒する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、人体を加熱する湯浴、湯灸、冷水浴、あるいは温浴と冷却浴を交互に行うものなどがあるが、これらは本発明の人体に熱的連結回路を形成するものとは異るものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の医学では治癒不可能、又は困難とされた人体のいろいろな疾病などをも治癒する装置を得ること。
【0004】
【課題を解決するための手段】
人体は多くの水分と、筋肉などから成っており電気抵抗と同様な熱抵抗を有する。図1に示すように、Rを電気抵抗、電圧をEとする回路では電流Iが流れる。同様に人体の熱抵抗をR、温度差をEとすればIは人体を流れる熱流となる。この熱流が、本発明においては熱的連結回路E流れる。
【0005】
【発明の実施の形態】
人体の例えば足部と頭部にそれぞれ加熱部と熱吸収部を設け、熱吸収部から熱ポンプ、加熱部、足部、人体、頭部、再び熱吸収部の順に流れる熱的連結回路による熱流を生じさせること。
【0006】
【実施例】
図2は本発明実施例を示し、人体1の複数部位、例えば足部2と頭部3にそれぞれ加熱部4と熱吸収部5を接して設ける。6は熱ポンプであり、これにより熱吸収部5、径路7、熱ポンプ6、径路8、加熱部4、人体1、再び熱吸収部5の順に流れる熱流の熱的連結回路、すなわち熱が循環する閉回路を形成せしめる。 【0007】
人体1においては、足部2の温度をT1、ひざ部9の温度をT2、腰部10の温度をT3、胸部11の温度をT4、頭部3の温度をT5とし、足部とひざ部間の熱抵抗をR1、ひざ部と腰部間の熱抵抗をR2、腰部と胸部間の熱抵抗をR3、胸部と頭部間の熱抵抗をR4とすると、T1>T2>T3>T4>T5であり、熱流量をBCとすると、BC=T1?T5/R1+R2+R3+R4となる。
【0008】
人体1が接する加熱部4と熱吸収部5の温度は、人体の疾病などの種類と程度、年令、体質などに関係があり、一律に定められるものではないが、加熱部4では、ほぼ快適と感じる温度から低温やけどを生じない範囲であり、熱吸収部5では、ほぼ快適と感じる温度から痛みやしびれを生じない冷たさの温度の範囲であり、加熱部4は長靴状であれば十分な加熱ができるが、容易に着脱できず、平板状であれば足部をのせるだけで使用上便利であるが足部への熱伝達が低下し易く、又、足部をのせる板面からの熱損失が生じ易い。しかし、加熱部の温度は表面熱損失が著しくなるほど高温ではないので使用上便利のため平板状とする場合が多い。又、熱吸収部は、十分な熱吸収のためには帽子状がよいが、やはり使用上不便であるから、頭をのせる凹部を有する枕状のものが頭が安定してのせられ、しかも頭の動きが割合自由であり、熱効率の低下、すなわち熱伝導性低下も少いものである。
加熱部および熱吸収部の温度の調節は、サーモスタットによる熱ポンプの送熱量の制御、加熱部および熱吸収部における熱流バイパス量の調節などにより行う。
【0009】
熱ポンプ6は、熱電素子のペルチエ効果による熱移動を利用することができ、この場合、径路7あるいは8は直接に熱電素子の冷極あるいは熱極に接するようにするか、熱を伝達するヒートパイプのごときものとなる。または流体の気化熱、凝縮熱を利用して熱移動を行うコンプレッサを使用する冷凍機系のものでもよい。このときは径路7,8は流体のパイプとなる。
【0010】
図2における人体1は、椅子に坐り治療を受ける状態であるが、状況によっては横に寝た状態でもよい。
【0011】
人体は不健康なときは、頭に血が上るとか頭が熱いとか云われて頭熱足寒の状態となる。本発明は本例のごとく足部より頭部への熱流により古来から云われている健康体の状況である頭熱足寒の状態とするものである。
ただ、単に頭熱足寒の状態とするには頭にのせる冷湿布を取替えたり、足をふとんの中のこたつのところに入れたりして面倒である。本発明はこれを頭を熱吸収部に接し、足を加熱部に接するという動作のみで恒常的に且つ自動的に頭熱足寒の状態とすることができる。
【0012】
なお、本発明は足部より頭部への熱流のみならず、必要に応じて人体の複数部位に熱的連結回路を容易に形成することができる。
上記実施例の他の、本発明にもとづく種々の変形はすべて本発明に属するものである。
【0013】
発明の効果
本発明により冷え症、肩凝り、更年期障害、旅行の時差ぼけ、悪酔、風邪、蓄膿症の鼻つまり、睡眠不足、女性の肌荒れ、インポテンツ、難聴、乗物酔、歩くときの足が重いなどを治癒することができる。
これらは、慈恵会医科大学、セントマリアンヌ校、シカゴ医科大学において実験を行い、効果を得ることができた。
又、本発明装置は1200台以上の実験機により1万人以上の実験者が上記効果を確認しているところである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明説明用の回路図
【図2】
本発明実施例を示す側面図
【符号の説明】
1 人体
2,3 複数部位
5,7,6,8,4,1 熱的連結回路」
これに、第1〜2図が添付され、平成11年1月14日及び平成11年5月9日提出の手続補正書により、特許請求の範囲の記載が補正されているが、本願明細書及び図面には、出願人著作の図書「ゴロ寝してスーパーマンになる法(下)実践編」第32頁乃至第330頁に記載されるような発明の具体的な説明はされていない。

4.以上によれば、本願は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反し、また、同法第36条第4項の規定に違反するものであり、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
平成13年7月7日
審判長 特許庁審判官 青 山 紘 一
特許庁審判官 和 泉 等
特許庁審判官 松 下 聡
 
審理終結日 2001-07-09 
結審通知日 2001-07-17 
審決日 2001-07-30 
出願番号 特願平9-49529
審決分類 P 1 8・ 14- Z (A61F)
P 1 8・ 536- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤井 彰大橋 賢一安井 寿儀  
特許庁審判長 青山 紘一
特許庁審判官 松下 聡
和泉 等
発明の名称 身体クローズドサイクルヒートサーキット装置  

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