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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1095754
審判番号 不服2002-8911  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-17 
確定日 2004-04-23 
事件の表示 平成 9年特許願第 34379号「インクジェット式記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月18日出願公開、特開平10-217444〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成9年2月3日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成13年11月12日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「駆動信号に基づいてインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該インクジェット式記録ヘッドを紙幅方向に一定速度で往復移動させるキャリッジと、前記インクジェット式記録ヘッドとの間隙を一定に保持するように記録媒体を支持する部材と、外部からの印刷データに基づいて駆動信号を前記記録ヘッドに出力する駆動手段とを備えたインクジェット式記録装置において、
少なくとも印刷方向前方の前記記録媒体の表面と前記インクジェット式記録ヘッドとの相対距離を測定する距離測定手段と、
前記距離測定手段により検出された前記相対距離を少なくとも1行分格納する記憶手段と、
前記相対距離を所定印刷行数毎に更新しつつ格納し、印刷期間中前記記憶手段に格納されている前記相対距離に基づいて記録ヘッドからのインク滴が前記記録媒体に着弾するまでの時間を、印刷タイミングに対して相対的に変化させる駆動信号発生手段と、
を備えてなるインクジェット式記録装置。」
第2 当審の判断
本審決では、「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いる。
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-137398号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア〜セの記載が図示とともにある。
ア.「インク液滴を吐出するためのノズルを設けたインクジェットヘッドを備え、前記インクジェットヘッドと被印刷物とを相対移動させつつ、インク液滴を前記ノズルから前記被印刷物上の印刷位置に向けて吐出、飛翔させて印刷を行うインクジェット印刷装置において、前記ノズルと前記印刷位置との間の距離および前記印刷位置における前記被印刷物の厚みの少なくとも一方を表すパラメータ値を測定するための測定手段と、前記測定手段により測定されたパラメータ値に応じて、前記インクジェットヘッドと前記被印刷物との相対位置および相対移動速度ならびに前記インク液滴の飛翔速度の少なくとも一つを制御するための制御手段とを設けたことを特徴とするインクジェット印刷装置。」(【請求項2】)
イ.「この発明は、被印刷物の印刷面に凹凸がある場合にも、良好な印刷品質で印刷を行えるインクジェット印刷方法及びその装置に関する。」(段落【0001】)
ウ.「凹凸のある被印刷物への印刷が行われる場合がある。この場合、インクジェットヘッドのノズルと被印刷物との間の距離は、凹の部位と凸の部位とでは異なることになる。このため、インクジェット印刷装置、例えば、インク液滴の偏向制御を行わないタイプの印刷装置において、ヘッドと被印刷物との相対移動速度ならびにインク液滴の飛翔速度が一定に保たれている場合にも、被印刷物へのインク液滴付着位置すなわち印刷位置は、凹の部位と凸の部位とでは異なり、従って、被印刷物の凹凸によって印刷歪が生じることになる。」(段落【0007】)
エ.「印刷装置は、キャリッジ31を布帛Bの幅方向へ移動させて主走査を行うためのキャリッジ移動機構40と、布帛Bをその長手方向へ搬送して副走査を行うための被印刷物送り機構50とを更に備えている。」(段落【0014】)
オ.「被印刷物送り機構50は、布帛Bを搬送するための回転ドラム51・・・を備え」(段落【0015】)
カ.「印刷装置は、距離計測手段としてのレーザ変位計60を更に備えている。このレーザ変位計60は、布帛搬送(副走査)方向で見てインクジェットヘッド30による印刷位置の上流側近傍において、布帛Bの印刷面に近接して配されている。・・・レーザ変位計60と布帛Bの印刷面との間の距離ひいてはノズル2と印刷面間距離を表す出力を、コントローラ6の補正回路26へ送出するようになっている。」(段落【0017】)
キ.「補正回路26は、駆動回路7と協働して、ノズル・印刷用紙間距離データに応じてインク液滴飛翔速度を制御するための制御手段として機能するもので、サンプリング・ホールド部、データ変換部、バッファメモリおよび補正演算部(いずれも図示略)を有している。・・・印刷パターンの一走査ラインを構成するドットの各々の印刷位置に対応する、ノズル2と布帛Bの印刷面との間の距離を表す距離データを順次サンプリングし、サンプリングした距離データを一時保持するようになっている。」(段落【0018】)
ク.「データ変換部は、サンプリング・ホールド部からの距離データを印刷情報補正データに変換するもので、例えば、所定距離に対する距離データ(実際のノズル・布帛印刷面間距離)の比に等しい値を印刷情報補正データとして設定するようになっている。この補正データは、バッファメモリに格納される。」(段落【0019】)
ケ.「補正演算部は、印刷パターンの一走査ラインの各構成ドットに対応する印刷情報を印刷パターン発生回路10から読み出す度にこれに対応する補正データをバッファメモリから読み出し、更に、印刷情報に補正データを乗じて得た補正済み印刷情報を駆動回路7に送出するようになっている。」(段落【0020】)
コ.「印刷開始指令が送出されると、・・・キャリッジ31の移動が開始される。・・・キャリッジ移動動作の開始に応じて、補正回路26のサンプリング・ホールド部は、レーザ変位計60出力のサンプリングを開始する。キャリッジ31の移動中、印刷パターンの最初の走査ラインの構成ドットの夫々に対応するノズル・印刷用紙間距離を表す距離データ(レーザ変位計出力)が順次サンプリングされ、次いで、補正回路26のデータ変換部において距離データが補正データに順次変換され、補正データはバッファメモリに順次格納される。」(段落【0021】)
サ.「補正回路26の補正演算部により、印刷パターンの最初の走査ラインの構成ドットのそれぞれに対応する印刷情報が印刷パターン発生回路10から順次読み出されると共に、バッファメモリからこれに対応する補正データが順次読み出され、補正データによって補正された印刷情報が駆動回路7に順次送出される。」(段落【0022】)
シ.「駆動回路7は、複数の圧電素子3のうち印刷情報に対応するものに、補正済み印刷情報に対応する駆動電圧を印加する。この結果・・・補正済み印刷情報に対応する速度で飛翔する。」(段落【0023】)
ス.「最初の走査ライン分の印刷が終了すると、被印刷物搬送機構50が作動して布帛送りが行われ、最初の走査ラインの場合と同様に、第2番目の走査ラインの印刷が行われる。その後、第3番目以降の走査ラインについての印刷が順次行われ」(段落【0029】)
セ.「実施例では布帛Bを被印刷物として用いたが、本発明は、印刷用紙、フィルムなどの種々の被印刷物に対する印刷に適用できる。」(段落【0034】)

2.引用例記載の発明の認定
記載カ,キによれば、レーザ変位計60は「印刷パターンの一走査ラインを構成するドットの各々の印刷位置に対応する、ノズル2と布帛Bの印刷面との間の距離を表す距離データ」を得るためのものであるから、インクジェットヘッド30とともにキャリッジ31に搭載されていることは自明である。
したがって、記載ア〜セを含む引用例の全記載及び図示によれば、引用例には次の発明が記載されているものと認めることができる。
「インク液滴を吐出するためのノズルを設けたインクジェットヘッド及びレーザ変位計を搭載したキャリッジ、前記キャリッジを被印刷物の幅方向へ移動させて主走査を行うためのキャリッジ移動機構、被印刷物をその長手方向へ搬送して副走査を行うための被印刷物送り機構、駆動回路及び補正回路備えたインクジェット印刷装置であって、
前記レーザ変位計は、前記インクジェットヘッドによる印刷位置の上流側近傍に設けられており、
前記被印刷物送り機構は、前記被印刷物を搬送するための回転ドラムを備えており、
前記補正回路はサンプリング・ホールド部、データ変換部、バッファメモリ及び補正演算部からなり、最初の走査ラインの構成ドットの夫々に対応するノズル・印刷用紙間距離を表す距離データを順次サンプリングし、前記距離データを所定距離に対する距離データの比に等しい値である補正データに順次変換し前記バッファメモリに格納し、前記補正演算部がバッファメモリから前記補正データを順次読み出し印刷情報を補正し、補正済み印刷情報を駆動回路に送出するものであり、
最初の走査ライン分の印刷に際して、前記駆動回路は、前記補正済み印刷情報に対応する駆動電圧を印加することによりインク液滴の飛翔速度を制御するものであり、
第2番目以降の走査ラインの印刷は最初の走査ラインの場合と同様に行われるようなインクジェット印刷装置。」(以下「引用例発明」という。)

3.本願発明と引用例発明との一致点及び相違点の認定
引用例発明において、キャリッジ並びにこれに搭載されたインクジェットヘッド及びレーザ変位計が、紙幅方向に一定速度で移動することは自明である。ただし、引用例発明では、往復ともに一定速度で移動することまでは限定されておらず、これは相違点となる。
本願の【請求項1】には「駆動信号」という用語が3度使用されているが、前2度の「駆動信号」は前提とする「インクジェット式記録装置」を説明するための用語であるから、相対距離に基づいて変化された信号ではない。したがって、これに相当する引用例発明の構成は「印刷情報」(補正済みではない)である。他方、3度目の「駆動信号」(「駆動信号発生手段」というまとまった用語の一部として用いられている。)は相対距離に基づいて変化された信号であるから、引用例発明の「補正済み印刷情報」がこれに相当する。仮に、前2度の「駆動信号」を相対距離に基づいて変化された信号と解するとしても、引用例発明の「補正済み印刷情報」がこれに相当するから、一致点の認定には影響しない。
引用例発明の「インクジェットヘッド」、「被印刷物」、「ノズル・印刷用紙間距離」、「レーザ変位計」、「回転ドラム」、「走査ライン」、「駆動回路」及び「インクジェット印刷装置」は、本願発明の「インクジェット式記録ヘッド」、「記録媒体」、「前記記録媒体の表面と前記インクジェット式記録ヘッドとの相対距離」、「距離測定手段」、「インクジェット式記録ヘッドとの間隙を一定に保持するように記録媒体を支持する部材」、「印刷行」、「駆動手段」及び「インクジェット式記録装置」にそれぞれ相当する。
引用例発明の「バッファメモリ」は最初の走査ラインの補正データを格納しているから、本願発明の「少なくとも1行分格納する記憶手段」と異ならない。そして引用例発明の「補正データ」とは、所定距離に対する「ノズル・印刷用紙間距離を表す距離データ」の比であるから、「ノズル・印刷用紙間距離を表す距離データ」そのものと実質的に異ならず、本願発明でいう「前記距離測定手段により検出された前記相対距離」とも実質的に異ならない。
本願発明の「印刷期間中前記記憶手段に格納されている前記相対距離に基づいて記録ヘッドからのインク滴が前記記録媒体に着弾するまでの時間を、印刷タイミングに対して相対的に変化させる駆動信号発生手段」については、【請求項1】を引用する【請求項2】が「前記駆動信号発生手段が、前記記録ヘッドに印加する駆動信号のレベルを調整する」と限定していること、及び本願明細書に「駆動信号発生手段5は、ホストから出力された印刷データに基づいて駆動信号を生成するとともに、距離測定手段6からの距離Lに対応して駆動信号のレベルを調整してノズル開口18からのインク滴Dの吐出速度を調整する。」(段落【0013】)と記載のあることからみて、引用例発明の「補正演算部」がこれに相当する。
したがって、本願発明と引用例発明とは、
「駆動信号に基づいてインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該インクジェット式記録ヘッドを紙幅方向に一定速度で移動させるキャリッジと、前記インクジェット式記録ヘッドとの間隙を一定に保持するように記録媒体を支持する部材と、駆動信号を前記記録ヘッドに出力する駆動手段とを備えたインクジェット式記録装置において、
前記記録媒体の表面と前記インクジェット式記録ヘッドとの相対距離を測定する距離測定手段と、
前記距離測定手段により検出された前記相対距離を少なくとも1行分格納する記憶手段と、
印刷期間中前記記憶手段に格納されている前記相対距離に基づいて記録ヘッドからのインク滴が前記記録媒体に着弾するまでの時間を、印刷タイミングに対して相対的に変化させる駆動信号発生手段と、
を備えてなるインクジェット式記録装置。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明では「インクジェット式記録ヘッドを紙幅方向に一定速度で往復移動させるキャリッジ」を備える旨の限定があるのに対し、引用例発明では「一定速度で往復移動」とまでは限定されていない点。
〈相違点2〉本願発明が「外部からの印刷データに基づいて駆動信号を前記記録ヘッドに出力する駆動手段とを備えた」と限定しているのに対し、引用例発明の「印刷情報」が「外部からの印刷データに基づい」たものかどうか明らかでない点。
〈相違点3〉距離測定手段につき、本願発明では「少なくとも印刷方向前方の前記記録媒体の表面と前記インクジェット式記録ヘッドとの相対距離を測定する」と限定しているが、引用例発明では「インクジェットヘッドによる印刷位置の上流側近傍に設けられて」いる点。
〈相違点4〉本願発明が「前記相対距離を所定印刷行数毎に更新しつつ格納」すると限定しているのに対し、引用例発明の「バッファメモリ」が更新されるのかどうか確定的ではない点。

4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
引用例には記載がないけれども、「インクジェット式記録ヘッドを紙幅方向に一定速度で移動させるキャリッジ」を備えた「インクジェット式記録装置」においては、キャリッジは往復動せざるを得ず、往動時だけでなく復動時にも記録するために、一定速度でキャリッジを往復移動させることは周知である(例をあげるまでもないが、必要ならば原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-155009号公報を参照。)。そして、引用例発明にこの周知技術を採用することを妨げる理由はなにもない。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成をなすことは設計事項にすぎない。

(2)相違点2について
本願出願当時、「インクジェット式記録装置」だけでなく、およそ記録装置はホストコンピュータ(本願発明でいう「外部」)からの印刷データに基づいて駆動信号を記録ヘッドに出力することが通常である。
相違点2に係る本願発明の構成とは、この通常の技術を限定したにすぎないから、実質的相違といえないか、又は設計事項である。

(3)相違点3について
引用例発明における「上流側」とは被印刷物送り方向の「上流側」の意味であり(引用例【図2】参照)、他方本願発明の「印刷方向前方」とは1行の印刷におけるキャリッジ移動方向前方の意味であることは明らかである。仮に、本願発明の「印刷方向」が記録媒体送り方向前方の意味であるとすれば、そもそも相違点3は存在しないことになる。
しかし、「前記距離測定手段により検出された前記相対距離を少なくとも1行分格納する記憶手段」を備え、「前記記憶手段に格納されている前記相対距離に基づいて記録ヘッドからのインク滴が前記記録媒体に着弾するまでの時間を、印刷タイミングに対して相対的に変化させる」のであれば、記憶手段に格納する段階では印刷を行わない(そのことは、本願明細書の「距離測定時には距離測定手段6からの距離データを、記録ヘッド3の位置に対応させて格納し、また印刷時には記録ヘッド3の位置に対応した距離データを出力するように構成されている。」(段落【0018】)等の記載から明らかである。)のであるから、印刷方向前方の相対距離を測定することの技術的意義は存在しない。印刷方向前方の相対距離を測定することの技術的意義は、現在印刷中の印刷行における相対距離の測定と印刷を続けてリアルタイムに行う場合(本願明細書の「キャリッジ1の移動方向の前方となる側に配置されている距離検出器4、4’からの信号に基づいてこれから印刷しようとする領域の記録媒体Pまでの距離Lを算出するものである。」(段落【0011】)との記載はそのような場合であるし、前掲特開平5-155009号公報に記載の発明もそうである。)には必要となるが、1行の相対距離測定とその行の印刷を同時に行わない場合には、印刷方向前方の相対距離であろうと後方の相対距離であろうと構わない。
このように、相違点3に係る本願発明の構成に技術的意義を認めることはできず、前方であろうと後方であろうと構わないのであるから、偶々前方を採用することは設計事項というよりない。

(4)相違点4について
引用例発明では、第2の走査ライン(2行目)以降の印刷を行うに当たり、バッファメモリに格納されている補正データが最初の走査ラインのものであるのか、それとも走査ラインが進むにつれてバッファメモリの記憶内容を更新するのか確定的なことはわからない。
しかし、最初の走査ラインの補正データをそのまま第2の走査ライン以降にも使用するとすれば、幅方向(キャリッジ移動方向)の凹凸は補正するが、それと直交する方向の凹凸は補正しないことになる。そして、引用例発明が対象とする被印刷物が、幅方向には凹凸を有するが、それと直交する方向には凹凸を有さないものに限られると理解することは著しく不自然かつ不合理である。引用例発明は、被印刷物の印刷面に凹凸がある場合にも、良好な印刷品質で印刷を行うことを目的としてなされた発明である(引用例の記載イ)が、上記事情を考慮すれば、バッファメモリの記憶内容を更新しないのでは、その目的が十分達成できないことは明らかである。
加えて、引用例発明のレーザ変位計は「インクジェットヘッドによる印刷位置の上流側近傍に設けられて」いる(相違点3に係る引用例発明の構成)のであるが、この配置構成であれば、ある行を印刷している時に、次の行の距離データを取得することができることは当業者であれば直ちに看取できることである。そのことは、記録媒体の送り方向であるか、キャリッジの送り方向であるかの相違はあるにせよ、前掲特開平5-155009号公報に記載の発明において、次に印刷する点の距離データを取得していることからも明らかである。引用例発明とこの発明との相違は、行単位で測定するか、ドット単位で測定するかの相違でしかなく、事前に距離データを取得することが、取得した距離データを印刷に反映させる点で有効であることには変わりはない。そうであれば、引用例発明においてレーザ変位計が「インクジェットヘッドによる印刷位置の上流側近傍に設けられて」いることの技術的意義は、常に最新の測定データに基づいて「補正済み印刷情報」を作成することにあり、そのためにはバッファメモリの記憶内容を走査ライン毎に更新する、すなわち「最初の走査ラインの場合と同様に」(引用例の記載ス)とは、距離データの取得・補正データの格納と1走査ラインの印刷をワンセットのものとして「同様に」と表現したと理解するのが自然であるし、少なくともバッファメモリの記憶内容を走査ライン毎に更新することは当業者が容易に想到できることである。
この点請求人は、「引用例1に記載された発明は、・・・予め採取した1ライン分の距離データにより全印刷領域の印刷を実行するものである。」(平成14年5月30日付け手続補正書(方式)3頁25行〜4頁10行)などと主張しているが、引用例発明の目的及びレーザ変位計の配置位置についての技術的意義を無視した主張であるから、到底採用することができない。
そして、本願発明の「所定印刷行数毎」とは、1行印刷毎を包含することは明らかであるから、引用例発明においてバッファメモリの記憶内容を走査ライン毎に更新することと異ならない。
したがって、相違点4に係る本願発明の構成は、実質的相違といえないか、仮に実質的相違としても当業者が容易に想到できた構成にすぎない。

(5)本願発明の進歩性の判断
相違点1〜相違点4に係る本願発明の構成は、実質的相違といえないか、設計事項であるか、又は当業者にとって想到容易であり、これら相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許法29条2項の規定により特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2004-02-24 
結審通知日 2004-02-25 
審決日 2004-03-09 
出願番号 特願平9-34379
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大元 修二  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 中村 圭伸
津田 俊明
発明の名称 インクジェット式記録装置  
代理人 木村 勝彦  
代理人 西川 慶治  
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