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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する E03B
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する E03B
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する E03B
管理番号 1096953
審判番号 訂正2004-39012  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-03-16 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-01-19 
確定日 2004-03-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3215666号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3215666号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3215666号発明(平成10年6月22日特許出願(優先日:平成9年6月30日)、平成13年7月27日設定登録)の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち、下記(a)ないし(x)のとおりに訂正することを求めるものである。
(a)発明の名称を「水道管の迂回配管装置」と訂正する。
(b)特許請求の範囲の請求項2を請求項1とし、次のとおり訂正する。
「【請求項1】
道路の敷設経路上に存在する既設の下水マンホールに対してその両側にそれぞれ端部を臨ませて、上記道路に掘削された敷設構内に敷設される水道管と、
少なくとも、両端に嵌合端部を有するラセン管と、上記嵌合端部の外周部に嵌合されて溶接されるとともに外周部に上記ラセン管の最外側凸部に当接されるまで嵌合されて溶接されるフランジ板に上記ラセン管の外周部に嵌合されて上記ラセン管の両端部を保護する保護リングが溶接されることにより上記ラセン管の両端にそれぞれ一体に連結される接続管と、上記ラセン管の外周部にその全長に亘って巻回されるブレードとからなり、上記下水マンホールを迂回して上記水道管の端部と接続されるに足る長さを有するラセン管部材とから構成され、
上記ラセン管部材には、上記接続管の外周部に溶接により一体に第1の結合用凸部が設けられるとともに、上記水道管には、上記第1の結合用凸部に対応する第2の結合用凸部が形成されるとともに上記接続管が嵌合される大径部に係止されることによって上記ラセン管部材との接続方向に対して抜け止めされた状態で結合リング部材が装着され、
上記ラセン管部材と上記水道管とは、上記第1の結合用凸部と上記第2の結合用凸部とにそれぞれ設けられて互いに連通された結合孔に結合用ねじが挿通されナットがねじ込まれた状態で結合され、
上記ラセン管部材は、上記ラセン管が上記敷設溝に連続して上記下水マンホールを迂回してその周辺領域に所定の幅で掘削された迂回敷設溝内に導かれて湾曲されるとともに、上記接続管が相対する上記水道管の端部とそれぞれ接続されることにより上記下水マンホールを迂回配管して埋設されることを特徴とする水道管の迂回配管装置。」
(c)段落番号【0001】(特許公報3欄33行)の段落番号自体を削除する。
(d)段落番号【0001】(同3欄34行〜38行)の記載を次のとおり訂正する。
「【0001】【発明の属する技術分野】
本発明は、敷設経路上に既設の下水マンホールが存在し、この下水マンホールを迂回して水道管を敷設する場合に用いられる水道管の迂回配管装置に関する。」
(e)段落番号【0002】(同3欄39行〜4欄1行)の記載を次のとおり訂正する。
「【0002】
【従来の技術】
道路には、水道管が埋設されるとともに、例えば清掃用や保守用のために適当な間隔でそれぞれの下水マンホールが設置されている。したがって、水道管の配管工事においては、しばしば既設の下水マンホールを迂回して水道管を敷設する工事が行われる。」
(f)段落番号【0003】(同4欄2行〜12行)の記載を次のとおり訂正する。
「【0003】
ところで、道路に埋設される地下施設は、原則として地表面から1.2メートル以上の深さに埋設しなければならないとする規則に基づいて敷設工事が行われる。地下施設は、掘削量が深くなることによって工事費や工事期間も増大することから、一般に上述した基準値を最低限クリヤする深さの敷設溝が掘削され、この敷設構内に埋設されている。このため、地下施設は、互いに輻輳した状態で地中に敷設されることになる。また、敷設溝については、工事費を低減するとともに規則によってその掘削幅も制限されており、限られた条件で水道管の埋設を行わなければならない。」
(g)段落番号【0005】(同4欄22行〜37行)の記載を次のとおり訂正する。
「【0005】
従来の水道管の敷設工事においては、図8に示すように水道管100の敷設経路に沿って所定の幅で道路に敷設溝101を掘削しなければならないために、その経路上にたびたび下水マンホール102が存在する事態が生じる。敷設溝101は、この場合においても下水マンホール102の周囲の限られた周辺領域103の範囲においてのみ掘削が許可される。水道管100は、敷設溝101内に敷設されるとともに、下水マンホール102の周辺領域103内において迂回配管が行われる。従来の水道管100の敷設工事においては、下水マンホール102の迂回配管を行うために、図9及び図10に示すように複数本の接続管104a乃至104c(以下、総称する場合には接続管104という。)や複数個のエルボーやベンド等の接続部材105a乃至105d(以下、総称する場合には接続部材105という。)が用いられていた。」
(h)段落番号【0006】(同4欄38行〜46行)の記載を次のとおり訂正する。
「【0006】
下水マンホール102は、図9及び図10に示すように有底筒状を呈して形成され、開ロ部106が道路面とほぼ同一面を構成するようにして埋設されている。開ロ部106は、通常マンホール蓋107によって閉塞されている。下水マンホール102には、その底面の近傍に位置する周面の両側から、道路に深く埋設された下水管108a,108bがそれぞれ内部空間109に臨ませられて接続されている。」
(i)段落番号【0014】(同6欄34行〜45行)の記載を削除する。
(j)段落番号【0015】(同6欄46行〜7欄1行)の記載を削除する。
(k)段落番号【0016】(同7欄2行〜6行)の記載を次のとおり訂正する。
「【0016】
したがって、本発明は、上述した従来の問題点を解決して、敷設経路上に存在する下水マンホールに対して水道管を効率的に迂回配管する水道管の迂回配管装置を提供することを目的に提案されたものである。」
(l)段落番号【0017】(同7欄7行〜15行)の記載を次のとおり訂正する。
「【0017】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成する本発明にかかる水道管の迂回配管装置は、道路の敷設経路上に存在する既設の下水マンホールに対してその両側にそれぞれ端部を臨ませて、上記道路に掘削された敷設構内に敷設される水道管と、少なくとも、両端に嵌合端部を有するラセン管と、上記嵌合端部の外周部に嵌合されて溶接されるとともに外周部に上記ラセン管の最外側凸部に当接されるまで嵌合されて溶接されるフランジ板に上記ラセン管の外周部に嵌合されて上記ラセン管の両端部を保護する保護リングが溶接されることにより上記ラセン管の両端にそれぞれ一体に連結される接続管と、上記ラセン管の外周部にその全長に亘って巻回されるブレードとからなり、上記下水マンホールを迂回して上記水道管の端部と接続されるに足る長さを有するラセン管部材とから構成される。上記ラセン管部材には、上記接続管の外周部に溶接により一体に第1の結合用凸部が設けられるとともに、上記水道管には、上記第1の結合用凸部に対応する第2の結合用凸部が一体的に形成されるとともに上記接続管が嵌合される大径部に係止されることによって上記ラセン管部材との接続方向に対して抜け止めされた状態で結合リング部材が装着される。上記ラセン管部材と上記水道管とは、上記第1の結合用凸部と上記第2の結合用凸部とにそれぞれ設けられて互いに連通された結合孔に結合用ねじが挿通されナットがねじ込まれた状態で結合される。上記ラセン管部材は、上記ラセン管が上記敷設溝に連続して上記下水マンホールを迂回してその周辺領域に所定の幅で掘削された迂回敷設溝内に導かれて湾曲されるとともに、上記接続管が相対する上記水道管の端部とそれぞれ接続されることにより上記下水マンホールを迂回配管して埋設される。」
(m)段落番号【0018】(同7欄16行〜28行)の記載を削除する。
(n)段落番号【0019】(同7欄29行〜37行)の記載を次のとおり訂正する。
「【0019】
本発明によれば、下水マンホールを迂回するラセン管部材が水道管の両端と接続されることによって迂回配管が行われることから、接続箇所や接続部品が削減されかつ限られた領域内においても自由な引き回しが可能とされて作業効率の大幅な向上が図られる。また、水道管の迂回配管装置によれば、接続箇所が2箇所と最小限でありかつ大きな引張り力等が作用された場合にもラセン管部材のラセン管の伸縮特性によってこれを吸収することから接続部からの水道水の漏れの発生が防止される。」
(o)段落番号【0020】(同7欄38行〜8欄3行)の記載を次のとおり訂正する。
「【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図面に示した水道管の迂回配管装置の実施の形態は、図1に示すように上述した従来例と同様に、既設の下水マンホール2に対して水道管1を迂回配管して敷設する場合に適用したものである。」
(p)段落番号【0033】(同10欄42行〜11欄2行)の記載を次のとおり訂正する。
「【0033】
ラセン管部材10は、ラセン管11と接続管12に対して上述した各部材が組み合わされて構成されるが、かかる構成及び材質に限定されるものではないことは勿論である。ラセン管部材10は、敷設箇所の条件、水道管1の仕様等によって細部の構造が種々変更され、水道管1の内径により調整リング19を不要とするとともに例えば防サビテープ14が組み合わされないで構成されることもある。」
(q)段落番号【0037】(同11欄31行〜41行)の記載を次のとおり訂正する。
「【0037】
水道管1の敷設工事は、上述したようにラセン管部材10を用いることによって従来の敷設工事のように複数個の接続部材や接続管を用いることなく迂回配管が行われることから、部品点数或いは接続工数の低減が図られる。」
(r)段落番号【0040】(同12欄10行〜25行)の記載を削除する。
(s) 段落番号【0041】(同12欄26行〜32行)の記載を削除する。
(t)段落番号【0044】(同12欄48行〜13欄5行)の記載を次のとおり訂正する。
「【0044】
ラセン管部材10には、接続管12の外周部に2個の第1の結合凸部32a、32b(以下、第1の結合凸部32と総称する。)が設けられている。第1の結合凸部32は、例えばステンレス材等によって形成された板状部材を接続管12に対して中心対称の位置に溶接によって一体に設けられる。第1の結合凸部32には、それぞれ接続管12と平行なねじ孔33a、33b(以下、ねじ孔33と総称する。)が形成されている。」
(u)段落番号【0054】(同14欄44行〜15欄1行)の記載を削除する。
(v)段落番号【0055】(同15欄2行〜14行)の記載を次のとおり訂正する。
「【0055】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明にかかる水道管の迂回配管装置によれば、水道管の敷設経路である道路に存在する下水マンホールに対応する部位にラセン管部材が用いられて水道管の迂回配管を行うことで、接続箇所や接続部品が削減されかつ限られた領域内においても自由な角度で導管の引き回しを行うことが可能とされ、作業効率の大幅な向上が図られるとともに工事費の大幅な低減が図られるようになる。また、本発明にかかる水道管の迂回配管装置によれば、水道管に対して大きな負荷が作用された場合にもラセン管部材のラセン管の伸縮作用によりこれを吸収することから接続部や水道管の破損が抑制されるようになる。」
(w)段落番号【0056】(同15欄15行〜21行)の記載を削除する。
(x)符号の説明(同16欄16行〜25行)の記載を次のとおり訂正する。
「【符号の説明】
1水道管、 la,lb水道管の端部、2下水マンホール、4下水管、10ラセン管部材、11ラセン管、12接続管、13ブレード、14防さびテープ、15保護テープ、16フランジ板、17保護リング、18止めリング、19調整リング、30接続機構、31太径部、32第1の結合用凸部、33ねじ孔、34結合用リング部材、35第2の結合用凸部、36ねじ孔、37結合ねじ、40結合用リング部材」。

2.当審の判断
(2-1)訂正の目的、新規事項の有無及び拡張・変更について
上記訂正事項(b)は、請求項1,3,4に係る無効審判(無効2002-35071)によって無効が確定した請求項1の従属形式の請求項2を独立請求項の形式に変更し、請求項1に繰り上げ、更に、請求項2に記載された事項を減縮するものである。すなわち、訂正事項(b)は、「導管」を「水道管」に減縮し、「埋設障害物」を「下水マンホール」に減縮し、更に、「ラセン管」が両端に「嵌合端部」を有し、「ラセン管」と「接続管」との接続構造を具体的に特定し、「接続管の外周部に溶接により一体に第1の結合用凸部が設けられる」ことを特定し、「結合用部材」を「結合ねじ」に減縮し、「第1の結合用凸部と第2の結合用凸部とにそれぞれ設けられて互いに連通された結合孔に結合用ねじが挿通され」たことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項(a)、(c)ないし(x)は、上記訂正事項(b)の訂正に伴い、特許請求の範囲と、発明の名称及び発明な詳細な説明とを整合させる、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項(a)ないし(x)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2-2)独立特許要件について
上記訂正事項(b)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、独立特許要件について検討する。請求人の提出した引用文献は以下のとおりである。
引用文献1…特開平8-42751号公報
引用文献2…実願平5-23071号(実開平6-80971号公報)のCD-ROM
引用文献3…特開平2-120594号公報
引用文献4…実願昭53-26251号(実開昭54-129814号)のマイクロフィルム
引用文献5…実公平2-27275号公報
引用文献6…特開昭61-286690号公報
引用文献7…実願昭53-14733号(実開昭54-117919号公報)のマイクロフィルム

引用文献1において、段落【0008】〜【0012】、【図4】及び【図5】には、ベローズ14の端部を接続金具20に外装し、接続金具20の外周に設けられた凹溝24に、ベローズ14の上側から固定リング26を取り付け、固定リング26の突周部28を凹溝24に嵌合させ、更に、凹溝24内の接着剤で固定し、これによって、固定リング26によるかしめ力により機械的接合を確保し、更に、凹溝24と突周部28との雌雄の嵌合により両者の接合力を確実なものとし、加えて、接着剤によりほぼ完全な機械的接合力を保持することが記載されている。また、段落【0018】に、接続金具20と直管36との接続構造が記載されている。具体的に、接続金具20内の切り欠き28に直管36を突入させ溶接40で接続することが記載されている。更に、段落【0019】及び【図6】には、フレキシブル管12の外表面にブレード16を外装させたものを押えリング42の内径内に嵌挿させ、他方側から波形管または直管を衝合させ、その状態で溶接40を行った接続態様が記載されている。
引用文献2において、段落【0009】に「前記障害体2を迂回する曲げ自在の蛇腹管3を有し、この蛇腹管3で前記管1を連結するとともに、前記蛇腹管3と前記管1との間において両者に外嵌する接続体4を有している。」と記載され、更に、段落【0013】〜【0015】には、接続体4は、シーラント剤を用いて管1と蛇腹管3とを一体化することが記載されている。
引用文献3において、2頁左下欄6行〜右下欄3行には、「延伸端部11bに銅または真鍮製の継手管13の一端部を嵌挿し、両者の嵌合部を高周波加熱装置により加熱すると共に両者の間隙に溶融ろうをさし込んでろう付けし、その後において同図のハのようにチューブ本体1の外側に外層ブレード12を被嵌し、かつチューブ本体1の延伸端部11bと外層ブレード12との間に断面凹状字形をなす金属製のベースリング14をチューブ本体の伸びを防ぐべくその波山端に当接する状態に挿入する一方、外層ブレード12の端部上にはベースリング14の凹所に重なるように止めリング15を嵌め合わせ、次いで、二つ割り治具を備えたプレス機により同図二のように止めリング15をベースリング14に向かってかしめ付け、外周ブレード12の端部を両リングで掴持すると同時にチューブ本体11の延伸端部11b上に固定する。」と記載されている。
引用文献4には、継手本体(1)と接続管(4)との接続に巻締金具(5)、(11)を用いることが記載され、巻締金具(5)、(11)は、2つの湾曲板(6)で構成されることが記載されている。
引用文献5には、差込み接続された二つの管A,A’のうち、挿入側の管Aに管A外周面との間の摩擦力により抜止めされる状態に外嵌可能な抜止め環状体1と、受口側の管A’に管A’の段部aへの係合により抜止めされる状態に外嵌可能な抜止め環状体2と、これら環状体1,2を相互連結する部材3とから構成され、かつ、抜止め環状体1,2のそれぞれを、周方向で二つ割り可能な一対の円弧状部材1A,1A’,2A,2A’の組み合わせにより二分割可能に構成してある接続管の抜留め具が記載されている。
引用文献6には、管と管とが可撓性をもってかつ伸縮自在に接続された継ぎ手部分における管の外周面上に緊締される複数個に分割された2種類の管離脱防止金具が記載され、管離脱防止装置15は、金具16,17からなり、金具16,17は、二つ割りで形成されることが記載されている。
引用文献7には、重合して環状体を形成すべき一対の半環部にはボルトの係止孔をそれぞれ形成し、一方の端部はヒンジ部として相互に螺着し、他方の端部にはボルト孔を設けたフランジ部をそれぞれ形成し、一対のフランジ部のいづれか一方のフランジ部のボルト孔周囲にナット止めを設けた管接続部の抜防止具が記載されている。

(対比・判断)
訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されている発明(以下、本件発明という。)と上記引用文献1記載の発明とを対比すると、少なくとも、本件発明が、(ア)「ラセン管の嵌合端部の外周部に嵌合されて溶接されるとともに外周部に上記ラセン管の最外側凸部に当接されるまで嵌合されて溶接されるフランジ板に上記ラセン管の外周部に嵌合されて上記ラセン管の両端部を保護する保護リングが溶接されることにより上記ラセン管の両端にそれぞれ一体に連結される接続管」、及び、(イ)「ラセン管部材には、接続管の外周部に溶接により一体に設けられた第1の結合用凸部」を有するのに対し、引用文献1記載の発明はこのような構成を有していない。
上記相違点(ア)を検討すると、引用文献3には、ラセン管(チューブ本体1)の外側にブレード(外層ブレード12)を被嵌し、かつラセン管の嵌合端部(延伸端部11b)とブレードとの間に断面凹状字形をなす金属製のベースリング14をその嵌合端部に当接する状態に挿入する一方、ブレードの端部上にはベースリング14の凹所に重なるように止めリング15を嵌め合わせ、次いで、二つ割り治具を備えたプレス機により同図二のように止めリング15をベースリング14に向かってかしめ付け、ブレードの端部を両リングで掴持すると同時にラセン管の嵌合端部上に固定することが記載されているが、本件発明の上記(ア)のように、ラセン管の嵌合端部の外周部に嵌合されて溶接されるとともに外周部に上記ラセン管の最外側凸部に当接されるまで嵌合されて溶接されるフランジ板に上記ラセン管の外周部に嵌合されて上記ラセン管の両端部を保護する保護リングが溶接されることにより上記ラセン管の両端にそれぞれ一体に連結される接続管からなるものではなく、又、引用文献2、4〜7にも本件発明の上記(ア)の構成は認められない。
本件発明は、上記相違点(ア)に係る構成により、「接続管には、先端部の外周部にフランジ板が嵌合され、このフランジ板がラセン管の最外側凸部に当接するまで接続管の先端部に嵌合されて溶接される。更に、保護リングが、ラセン管の両端部の近傍に位置してその外周部にそれぞれ嵌合される。保護リングは、フランジ板に溶接されることによって一体化される。換言すると、ラセン管と接続管の接続構造において、溶接箇所は、(マル1)ラセン管の嵌合端部と接続管との溶接箇所、(マル2)フランジ板と接続管との溶接箇所、(マル3)フランジ板と保護リングとの溶接箇所の合計3箇所であり、これによって、接続管とラセン管との接続強度を高め、ラセン管と接続管の一体化を図っている。」(審判請求書22頁3〜11行)との格別の作用効果を奏する。
上記相違点(イ)を検討すると、引用文献4〜7記載の結合凸部は、いずれも、半割構造の巻締金具に設けられたものであり、本件発明の上記(イ)のように、ラセン管部材に、接続管の外周部に溶接により一体に設けられたものではなく、又、引用文献2、3にも本件発明の上記(イ)の構成は認められない。
本件発明は、上記相違点(イ)に係る構成により、「第1の結合用凸部が溶接により一体に形成されていることから、接続管に半割構造の巻締金具を取り付ける必要が無くなり、接続管に対する締め付けがなくなり、接続管に対して歪みが発生し、機械的強度の低下を招き、漏水が発生することを防止することができる。」(同書23頁7〜10行)との格別の作用効果を奏する。
したがって、本件発明は、引用文献1ないし7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができるものではない。
又、その他に、本件発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見当たらない。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書きに掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項ないし第4項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
水道管の迂回配管装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 道路の敷設経路上に存在する既設の下水マンホールに対してその両側にそれぞれ端部を臨ませて、上記道路に掘削された敷設溝内に敷設される水道管と、
少なくとも、両端に嵌合端部を有するラセン管と、上記嵌合端部の外周部に嵌合されて溶接されるとともに外周部に上記ラセン管の最外側凸部に当接されるまで嵌合されて溶接されるフランジ板に上記ラセン管の外周部に嵌合されて上記ラセン管の両端部を保護する保護リングが溶接されることにより上記ラセン管の両端にそれぞれ一体に連結される接続管と、上記ラセン管の外周部にその全長に亘って巻回されるブレードとからなり、上記下水マンホールを迂回して上記水道管の端部と接続されるに足る長さを有するラセン管部材とから構成され、
上記ラセン管部材には、上記接続管の外周部に溶接により一体に第1の結合用凸部が設けられるとともに、上記水道管には、上記第1の結合用凸部に対応する第2の結合用凸部が形成されるとともに上記接続管が嵌合される大径部に係止されることによって上記ラセン管部材との接続方向に対して抜け止めされた状態で結合リング部材が装着され、
上記ラセン管部材と上記水道管とは、上記第1の結合用凸部と上記第2の結合用凸部とにそれぞれ設けられて互いに連通された結合孔に結合用ねじが挿通されナットがねじ込まれた状態で結合され、
上記ラセン管部材は、上記ラセン管が上記敷設溝に連続して上記下水マンホールを迂回してその周辺領域に所定の幅で掘削された迂回敷設溝内に導かれて湾曲されるとともに、上記接続管が相対する上記水道管の端部とそれぞれ接続されることにより上記下水マンホールを迂回配管して埋設されることを特徴とする水道管の迂回配管装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、敷設経路上に既設の下水マンホールが存在し、この下水マンホールを迂回して水道管を敷設する場合に用いられる水道管の迂回配管装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
道路には、水道管が埋設されるとともに、例えば清掃用や保守用のために適当な間隔でそれぞれの下水マンホールが設置されている。したがって、水道管の配管工事においては、しばしば既設の下水マンホールを迂回して水道管を敷設する工事が行われる。
【0003】
ところで、道路に埋設される地下施設は、原則として地表面から1.2メートル以上の深さに埋設しなければならないとする規則に基づいて敷設工事が行われる。地下施設は、掘削量が深くなることによって工事費や工事期間も増大することから、一般に上述した基準値を最低限クリヤする深さの敷設溝が掘削され、この敷設溝内に埋設されている。このため、地下施設は、互いに輻輳した状態で地中に敷設されることになる。また、敷設溝については、工事費を低減するとともに規則によってその掘削幅も制限されており、限られた条件で水道管の埋設を行わなければならない。
【0004】
一般に、下水管は、万一漏水があった場合にもその混入の危険性を回避し或いは処理場等までの流れ勾配を確保する等の理由から、例えば水道管に対してより深い位置に埋設されている。そして、下水管には、管内清掃等を行うために、例えば30メートル毎に下水マンホールが設置されている。したがって、水道管の敷設工事に際しては、その経路上に存在する他の既設の地下埋設物ばかりでなく大きなマンホールを迂回配管する工事が頻繁に行われる。
【0005】
従来の水道管の敷設工事においては、図8に示すように水道管100の敷設経路に沿って所定の幅で道路に敷設溝101を掘削しなければならないために、その経路上にたびたび下水マンホール102が存在する事態が生じる。敷設溝101は、この場合においても下水マンホール102の周囲の限られた周辺領域103の範囲においてのみ掘削が許可される。水道管100は、敷設溝101内に敷設されるとともに、下水マンホール102の周辺領域103内において迂回配管が行われる。従来の水道管100の敷設工事においては、下水マンホール102の迂回配管を行うために、図9及び図10に示すように複数本の接続管104a乃至104c(以下、総称する場合には接続管104という。)や複数個のエルボーやベンド等の接続部材105a乃至105d(以下、総称する場合には接続部材105という。)が用いられていた。
【0006】
下水マンホール102は、図9及び図10に示すように有底筒状を呈して形成され、開口部106が道路面とほぼ同一面を構成するようにして埋設されている。開口部106は、通常マンホール蓋107によって閉塞されている。下水マンホール102には、その底面の近傍に位置する周面の両側から、道路に深く埋設された下水管108a,108bがそれぞれ内部空間109に臨ませられて接続されている。
【0007】
水道管100は、図10に示すように下水管108a,108bよりも浅く道路に敷設されて高さ位置を異にすることから、これらが経路上に位置している場合であっても特に支障を生じることなく敷設溝101内に敷設される。しかしながら、水道管100は、下水管108a,108bの位置から道路面までの領域を占める下水マンホール102がその経路上に存在する場合には、周辺領域103内において上述したようにこの下水マンホール102を迂回して敷設しなければならない。
【0008】
水道管100は、下水マンホール102が設けられた位置において、端部100a,100bをこの下水マンホール102の外周面に近接させるようにして敷設溝101内を導かれる。水道管100は、これら端部100a,100bの外周面にねじ切りを施した後、接続部材105a,105bがそれぞれその一端側をねじ込まれて取り付けられる。接続部材105は、90°に折曲されたL字形をなし、水道管100の外径よりもやや太径とされるとともに両端の内周壁に内周ねじがそれぞれ形成されている。接続部材105a,105bには、その他端側にそれぞれ接続管104a,104bが接続される。これら接続管104a,104bは、例えば鋼管が用いられ、この材料管を下水マンホール102を迂回するに足る長さに切断するとともに両端部の外周面にそれぞれねじ切りが施されて構成される。
【0009】
接続管104a,104bには、その他端側に接続部材105c,105dがそれぞれその一端側をねじ込まれて取り付けられる。これら接続部材105c,105dには、接続管104cがその両端をねじ込まれて取り付けられる。接続管104cは、材料管を接続部材105c,105dの対向間隔、換言すれば下水マンホール102の長さに対応して切断するとともに両端部の外周面にそれぞれねじ切りが施されて構成される。したがって、水道管100は、図8に示すように下水マンホール102を略U字状に迂回して配管された後、敷設溝101及び周辺領域103に埋土が施されて敷設される。
【0010】
なお、水道管100や接続管104或いは接続部材105については、上述した鋼管の他に、鋳造管や塩化ビニール等の合成樹脂管も用いられる。これら鋳造管や塩化ビニール管においては、ねじ込み接続も行われるが一般にはめ合わせ接続が行われる。接続部材105については、折曲角度が90°のものばかりでなく、現場の状況によって折曲角度が45°、22.5°或いは11.25°のものが適宜選択して用いられる。また、水道管100、接続管104及び接続部材105については、例えば端部に複数のねじ孔を有するフランジがそれぞれ一体に形成されたものが用いられ、相対するフランジを接合することによって接続する等種々の接続方法も採用されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来の水道管100の敷設工事においては、上述したように敷設経路上に存在する下水マンホール102を迂回配管するために、多数個の接続管104や接続部材105を用いなければならなかった。そして、この迂回配管の作業は、接続管104の切断やねじ切り等を必要とすることから多くの時間を必要とするとともに極めて面倒であった。さらに、この迂回配管の作業は、極めて狭い下水マンホール102の周辺領域103内において実施しなければならないため、効率が悪いといった問題点があった。そして、周辺領域103には、その他の既設の埋設物が存在することが多く、より多くの接続管104や接続部材105が用いられるために迂回配管の作業性を一層悪くしている。
【0012】
また、水道管100の敷設工事においては、敷設後、敷設溝101内に埋土を投入して埋め戻しが行われるが、この埋土が時間経過とともに締まるために地盤沈下の現象が発生する。水道管100には、この地盤沈下によって大きな引張り力が作用され、接続部材105による接続箇所や機械的強度が小さい接続管104等の破損によって漏水が発生するといった問題点があった。また、水道管100は、特に接続部分において漏水が発生しやすく、多数個の接続部材105が用いられる従来の敷設工事ではそれぞれの接続作業に充分な注意が必要とされるばかりでなく、漏水の発生も多くなるといった問題があった。
【0013】
ところで、接続部材105には、上述したようにその曲げ角度が90°のものの他、45°,22.5°及び11.25°等の規格部品が用いられている。迂回配管の作業には、現場の状況に応じてこれらの接続部材105が適宜選択されて用いられるために、多数種の接続部材105を常時、大量にストックしていなければならない。しかも、迂回配管の作業においては、既設の埋設物が輻輳して存在したり、敷設領域が充分確保できない場合等において上述した規格の接続部材105によっては迂回配管が極めて困難となるといった問題があった。
【0014】
【0015】
【0016】
したがって、本発明は、上述した従来の問題点を解決して、敷設経路上に存在する下水マンホールに対して水道管を効率的に迂回配管する水道管の迂回配管装置を提供することを目的に提案されたものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成する本発明にかかる水道管の迂回配管装置は、道路の敷設経路上に存在する既設の下水マンホールに対してその両側にそれぞれ端部を臨ませて、上記道路に掘削された敷設溝内に敷設される水道管と、少なくとも、両端に嵌合端部を有するラセン管と、上記嵌合端部の外周部に嵌合されて溶接されるとともに外周部に上記ラセン管の最外側凸部に当接されるまで嵌合されて溶接されるフランジ板に上記ラセン管の外周部に嵌合されて上記ラセン管の両端部を保護する保護リングが溶接されることにより上記ラセン管の両端にそれぞれ一体に連結される接続管と、上記ラセン管の外周部にその全長に亘って巻回されるブレードとからなり、上記下水マンホールを迂回して上記水道管の端部と接続されるに足る長さを有するラセン管部材とから構成される。上記ラセン管部材には、上記接続管の外周部に溶接により一体に第1の結合用凸部が設けられるとともに、上記水道管には、上記第1の結合用凸部に対応する第2の結合用凸部が一体的に形成されるとともに上記接続管が嵌合される大径部に係止されることによって上記ラセン管部材との接続方向に対して抜け止めされた状態で結合リング部材が装着される。上記ラセン管部材と上記水道管とは、上記第1の結合用凸部と上記第2の結合用凸部とにそれぞれ設けられて互いに連通された結合孔に結合用ねじが挿通されナットがねじ込まれた状態で結合される。上記ラセン管部材は、上記ラセン管が上記敷設溝に連続して上記下水マンホールを迂回してその周辺領域に所定の幅で掘削された迂回敷設溝内に導かれて湾曲されるとともに、上記接続管が相対する上記水道管の端部とそれぞれ接続されることにより上記下水マンホールを迂回配管して埋設される。
【0018】
【0019】
本発明によれば、下水マンホールを迂回するラセン管部材が水道管の両端と接続されることによって迂回配管が行われることから、接続箇所や接続部品が削減されかつ限られた領域内においても自由な引き回しが可能とされて作業効率の大幅な向上が図られる。また、水道管の迂回配管装置によれば、接続箇所が2箇所と最小限でありかつ大きな引張り力等が作用された場合にもラセン管部材のラセン管の伸縮特性によってこれを吸収することから接続部からの水道水の漏れの発生が防止される。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図面に示した水道管の迂回配管装置の実施の形態は、図1に示すように上述した従来例と同様に、既設の下水マンホール2に対して水道管1を迂回配管して敷設する場合に適用したものである。
【0021】
水道管1は、敷設経路に沿って道路に所定幅と所定の深さを以って掘削した敷設溝内に敷設される。敷設溝は、敷設経路上に下水マンホール2が存在する場合において、その周囲を所定幅の範囲で拡げて掘削することが許可される。換言すれば、水道管1は、下水マンホール2の周囲に拡張された敷設溝の範囲内で後述する迂回配管の工事を行わなければないない。
【0022】
なお、下水マンホール2については、種々の形状仕様があるが、実施の形態においては円筒形のいわゆる丸型マンホールを示している。この下水マンホール2には、開口部にマンホール蓋3が装着され、底面の近傍に位置する周面の両側に下水管4a,4bがそれぞれ内部空間5に臨ませられて接続されている。下水管4a,4bは、水道管1の敷設位置に対してより深い位置に埋設されている。したがって、水道管1は、下水管4a,4bが埋設された部分では埋設溝内において支障なく敷設することが可能であるが、道路面まで達する下水マンホール2に対してこれを迂回した配管工事を行わなければならない。
【0023】
すなわち、水道管1は、この下水マンホールの周辺の掘削領域内において、詳細を後述するラセン管部材10を用いて下水マンホール2を迂回する迂回配管の工事が行われる。水道管1は、下水マンホール2が設けられた位置において、その端部1a,1bをこの下水マンホール2の外周面に近接させるようにして敷設溝内に導かれる。
【0024】
水道管1は、一般に鋼管、鋳鉄管或いは塩化ビニール等の合成樹脂管等が用いられるが、実施の形態においては図1及び図2に示すようにその両端部1a,1bが後述するラセン管部材10の先端部を嵌合して接続するためにやや太径に膨出形成されたものが用いられている。勿論、水道管1は、両端部1a,1bの外周面にねじ切りを施したものであってもよく、また従来用いられている種々の仕様の水道管をそのまま用いることができる。例えば鋳鉄管からなる水道管1においては、図示しないが、両端部1a,1bに複数個のねじ孔が形成された接合用のフランジ部が周回りに一体に形成されたものも提供されている。
【0025】
図3及び図4に示したラセン管部材10は、水道管1が鋼管よりもやや太径の仕様とされた鋳鉄管である場合において用いられるラセン管部材である。ラセン管部材10は、ラセン管11と、このラセン管11の両端部にそれぞれ一体に接合された一対の接続管12と、ラセン管11の外周部にそれぞれ巻回して設けられたブレード13と、サビ止めテープ14及び保護テープ15と、ラセン管11の両端部に嵌合されたフランジ板16と、ラセン管11の両端部の外周に嵌合された保護リング17及び止めリング18と、接続管12の外周部にそれぞれ嵌合された調整リング19等から構成される。
【0026】
ラセン管11は、機械的特性と防サビ性に優れたステンレス材を素材とし、周知のように滑らかな波形断面が軸方向に連続して形成された管体からなり、その形状と材料特性とによって可撓性及び伸縮性を有するとともに密閉性を有してなる。ラセン管11は、下水マンホール2の周囲を迂回するに充分な長さを有するとともに、図4に示すようにその両端部11aがそれぞれ水道管1の両端部1a,1bの内径よりもやや小径の筒部として軸方向に突出され、接続管12が嵌合される嵌合端部を構成している。
【0027】
ラセン管11については、ステンレス材に限定されるものではなく、例えば銅、チタン、アルミニウム合金等のその他の適宜の金属、或いは合成樹脂によって形成されたものも使用されることは勿論である。また、ラセン管11には、単山ラセン型として構成されるいわゆるベローズや連続山ラセン型として構成されるいわゆるスパイラル管のいずれもが使用可能であることは勿論であるとともに、ラセン山の形状が円弧形や平型ばかりでなく略円形とされたいわゆるアニュラー型ラセン管も使用可能である。ラセン管11は、要は可撓性及び伸縮性を有するとともに密閉性を有する管材であればよい。
【0028】
接続管12は、ステンレス材によってラセン管11の嵌合端部11aとほぼ等しい内径を有する筒体として構成されてなり、水道管1との接合部を構成する。接続管12は、図4に示すようにその先端部12aがラセン管11の嵌合端部11aの外周部に嵌合されるとともに適宜の箇所が溶接される(例えば、同図において黒塗の部分20b)ことによってラセン管11と一体化される。接続管12は、後述するように他端部12bが水道管1の端部1a又は端部1bにそれぞれ嵌合されることによって接合部を構成する。
【0029】
接続管12には、その外周部にそれぞれ調整リング19が嵌合されている。調整リング19は、上述したように水道管1が鋼管よりもやや太径の鋳鉄管であるために、接続管12に嵌合することによりラセン管部材10の接合端部11aの外径寸法を鋳鉄管の内径寸法に適合調整させる。調整リング19は、ステンレス材によって形成され、図4に示すように外周部に溶接される(同図において黒塗の部分20c、20f)ことによって接続管12に対して一体化されてなる。なお、調整リング19には、図示しないが後述する水道管1との接合を行うに際してその外周部に断面が略楔状を呈する楔状リング部材と、この楔状リング部材を抜け止めする取付リング部材とが嵌合される。取付リング部材には、水道管1の接合フランジ部に形成したねじ孔に対応して複数のねじ孔が形成されている。
【0030】
ブレード13は、ラセン管11の外周部に、その軸方向の全長に亘って巻回される。ブレード13は、例えば帯状の金属薄板を網目状に織ってなるリボンブレード或いは金属線を網目状に織ってなるワイヤブレード等によって構成される。また、ブレード13は、ラセン管11の外周部に一層で巻回されるばかりでなく施工条件等によって多層で巻回してもよい。また、ラセン管11には、ブレード13の外層部を構成して防サビテープ14が巻回されるとともに、その外層部にさらに保護テープ15が巻回されている。防サビテープ14は、ラセン管部材10が長期間に亘って地中に埋設されることにより、粘着力が低下した保護テープ15から水が浸透した場合でも、ラセン管11に達しないようにしてその腐蝕を防止する。なお、ブレード13及び防サビテープ14は、上述したラセン管11の可撓性及び伸縮性等の特性を損なわせることは無い。
【0031】
フランジ板16は、ステンレス材を素材として、接続管12の外径とほぼ等しい内径の嵌合穴を有するとともにラセン管11の凸部の外径とほぼ等しい外径を有するリング状に形成されてなる。フランジ板16は、接続管12の先端部12aの外周部にそれぞれ嵌合されている。フランジ板16は、図4に示すように、ラセン管11の最外側凸部11bに当接するまで接続管12の先端部12aに嵌合され、この先端部12a及び保護リング17の先端部とに適宜溶接される(同図において黒塗の部分20a、20d、20e)ことによりラセン管11にしっかりと接合固定される。なお、フランジ板16についても、ステンレス材に限定されるものでは無く、その他の金属や合成樹脂によって形成されたものを用いてもよい。
【0032】
保護リング17は、ステンレス材によってラセン管11の外径とほぼ等しい内径を有するやや幅広のリング状に形成されてなり、ラセン管11の両端部の近傍に位置してその外周部にそれぞれ嵌合される。保護リング17は、フランジ板16に溶接されることによって一体化されて、ラセン管11の両端部を保護する。保護リング17には、その外周部に保護テープ15の両端部を挟み込んで止めリング18が嵌合されている。なお、保護リング17についても、ステンレス材に限定されるものでは無く、その他の金属や合成樹脂によって形成されたものを用いてもよい。
【0033】
ラセン管部材10は、ラセン管11と接続管12に対して上述した各部材が組み合わされて構成されるが、かかる構成及び材質に限定されるものではないことは勿論である。ラセン管部材10は、敷設箇所の条件、水道管1の仕様等によって細部の構造が種々変更され、水道管1の内径により調整リング19を不要とするとともに例えば防サビテープ14が組み合わされないで構成されることもある。
【0034】
ラセン管部材10は、下水マンホール2の外周部を迂回するようにして適宜湾曲されその両端部が水道管1の両端部1a,1bに嵌合される。ラセン管部材10は、下水マンホール2の周囲に構成された狭い周辺掘削領域内で湾曲加工が施されるが、ラセン管11の可撓特性により簡単にかつ自由な形状に湾曲される。ラセン管部材10は、接続管12の先端部12bがやや太径とされた水道管1の一端部1aからその内孔に嵌合される。勿論、ラセン管部材10は、接続管12を水道管1に嵌合した状態で湾曲させるようにしてもよい。
【0035】
ラセン管部材10には、上述したように調整リング19の外周部に図示しない楔リング部材が嵌合されており、この調整リング19に水道管1の一端部1aが嵌合される。ラセン管部材10は、水道管1の内壁に調整リング19を介して楔リング部材が弾性変形しながら喰い込むことによってしっかりと接合される。ラセン管部材10は、水道管1の先端部1a,1bの周回りに形成された図示しない接合フランジ部と取付リング部材との間を複数個の締付ねじによって締め付け固定することによって楔リング部材の抜け止めが図られるとともにシーリングが行われて水道管1との連結が行われる。水道管1は、図2に示すようにラセン管部材10を介して下水マンホール2の周囲を迂回して配管される。
【0036】
なお、水道管1とラセン管部材10には、設置条件によって特に防サビ性や機械的保護を確保する必要がある場合には、上述した接続部分の外周部に防サビテープ14や保護テープ15を巻回する仕上げを施してもよい。
【0037】
水道管1の敷設工事は、上述したようにラセン管部材10を用いることによって従来の敷設工事のように複数個の接続部材や接続管を用いることなく迂回配管が行われることから、部品点数或いは接続工数の低減が図られる。
【0038】
水道管1の敷設工事は、上述した方法によって下水マンホール2の迂回配管を行った後に、掘削した敷設溝に埋土を投入して埋め戻しが行われる。水道管1の敷設工事においては、ローラ等によって敷設溝に投入した埋土の固め処理を行った後、必要に応じて舗装工事が行われて完了する。
【0039】
上述したラセン管部材10は、ステンレス材を基材として形成されることから機械的強度を有するとともに、その可撓特性及び伸縮特性を有している。水道管1の敷設工事においては、敷設溝に投入した埋土が時間経過に伴って次第にしまることによって地盤沈下の現象を生じる。水道管1には、この地盤沈下等による過大な負荷が加えられると機械的強度が弱い各接合部分の破断等が発生し易い。水道管1は、上述したように迂回配管を行うためにラセン管部材10が接続されているために、その伸縮特性によって過大な負荷を吸収して各部の損傷の発生を抑制することから強度の大幅な向上が図られる。
【0040】
【0041】
【0042】
水道管1とラセン管部材10とは、例えば図5及び図6に示した接続機構30を用いることによって、簡易な施工にもかかわらず互いに強固に接続される。接続機構30は、ラセン管部材10に設けられた第1の結合凸部32と、水道管1に嵌合される結合リング部材34と、結合ねじ37及びナット38等の部材から構成される。なお、水道管1とラセン管部材10とは、接続機構30の構成部位を除く他の構成を上述した実施の形態と同等とすることからその詳細な説明を省略する。
【0043】
水道管1は、例えば塩化ビニール等の合成樹脂によって成形され、端部近傍に位置して太径部31が形成されてなる。この太径部31は、ラセン管部材10との嵌合部を構成するとともに後述する結合リング部材34の抜け止め作用を奏する。
【0044】
ラセン管部材10には、接続管12の外周部に2個の第1の結合凸部32a、32b(以下、第1の結合凸部32と総称する。)が設けられている。第1の結合凸部32は、例えばステンレス材等によって形成された板状部材を接続管12に対して中心対称の位置に溶接によって一体に設けられる。第1の結合凸部32には、それぞれ接続管12と平行なねじ孔33a、33b(以下、ねじ孔33と総称する。)が形成されている。
【0045】
なお、第1の結合凸部32は、接続管12に対して少なくとも2個以上設けられるが、後述するように水道管1とラセン管部材10とが円周方向に対して均一な結合力で接続されるように、それぞれが円周方向に対して互いに等間隔で設けることが好ましい。また、第1の結合凸部32は、ねじ孔33を貫通孔によって構成してもよい。さらに、第1の結合凸部32は、接続管12が例えば合成樹脂によって成形される場合、これと一体に形成してもよい。
【0046】
結合リング部材34は、ステンレス材等の適宜の金属や塩化ビニール樹脂等の合成樹脂によって形成され、その内径が水道管1の外径とほぼ等しくかつ太径部31の外径よりもやや小径とされている。結合リング部材34には、その外周部の中心対称の位置に2個の第2の結合凸部35a、35b(以下、第2の結合凸部35と総称する。)が設けられている。第2の結合凸部35には、水道管1と平行なねじ孔36a、36b(以下、ねじ孔36と総称する。)がそれぞれ形成されている。
【0047】
なお、第2の結合凸部35は、例えば結合リング部材34がステンレス材によって形成される場合には、ステンレス材等によって形成された板状部材を溶接等によって一体化して形成される。また、第2の結合凸部35は、例えば結合リング部材34が合成樹脂や鋳造で形成される場合には、これと一体に形成してもよい。さらに、第2の結合凸部35は、結合リング部材34の一端側に円周方向の全域に亘って一体に突設されたフランジ部によって構成してもよい。また、第2の結合凸部35は、ねじ孔36を貫通孔によって構成してもよい。
【0048】
結合ねじ37a、37b(以下、結合ねじ37と総称する。)は、機械的強度を有するとともに防サビ性を有する例えばステンレス材やその他の金属によって形成される。結合ねじ37は、後述するように水道管1とラセン管部材10とが接続された状態において、第1の結合凸部32と第2の結合凸部35との対向間隔よりもやや長軸とされている。結合ねじ37は、ステンレス材ばかりでなく他の適宜の金属或いは合成樹脂によって形成されてもよい。
【0049】
水道管1には、その一方側から結合リング部材34が外周部に嵌合される。結合リング部材34は、上述した太径部31によって水道管1の接合部側に対して抜け止めされる。水道管1には、ラセン管部材10が接続管12を嵌合されることによって接続される。
【0050】
接続機構30は、水道管1とラセン管部材10とが接続された状態において、結合リング部材34がその第2の結合凸部35を第1の結合凸部32と対応位置するように水道管1の外周部を調整回転される。接続機構30は、この操作によって第1の結合凸部32のねじ孔33と第2の結合凸部35のねじ孔36との軸線が一致される。接続機構30は、図6に示すように第1の結合凸部32のねじ孔33から結合ねじ37がねじ込まれる。結合ねじ37は、ねじ孔33を貫通して第2の結合凸部35のねじ孔36にねじ込まれる。接続機構30は、このようにして結合ねじ37がねじ込み操作されるにしたがって結合リング部材34が水道管1の外周部に沿ってラセン管部材10側へと引っ張られるとともに太径部31によって係止されることから、図5に示すように水道管1とラセン管部材10との接続状態を保持する。
【0051】
結合ねじ37には、図5に示すように第2の結合凸部35のねじ孔36から突出した端部にそれぞれナット38a、38b(以下、ナット38と総称する。)がねじ込まれる。なお、ナット38は、もっぱら結合ねじ37の脱落を防止する作用を奏する部材であることから、同図に示すように第2の結合凸部35までねじ込まれない場合もある。したがって、接続機構30は、例えば敷設後に水道管1やラセン管部材10に大きな負荷が加わった際にも第2の結合凸部35とナット38との間に構成される間隙分でその負荷が吸収されるようになる。
【0052】
上述した結合リング部材34は、リング状に形成されたが、かかる構成に限定されるものではない。図7に示した結合リング部材40は、半円状の第1のリング半体41aと第2のリング半体41bとに分割されて構成されるとともに、接合部位にそれぞれ連結部42a、42bが一体に形成されてなる。結合リング部材40は、連結部42a、42bを連結ボルト43とナット44とによって結合することによって第1のリング半体41aと第2のリング半体41bとを一体化する。したがって、結合リング部材40は、長軸の水道管1であってもその取り付けがラセン管部材10との接続部位において簡単に行うことが可能となる。
【0053】
接続機構30は、上述したように結合リング部材40が半割構成の第1のリング半体41aと第2のリング半体41bとを完全に分離する構造ばかりでなく、例えばヒンジ機構等を介して連結した構造の結合リング部材を用いるようにしてもよい。
【0054】
【0055】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明にかかる水道管の迂回配管装置によれば、水道管の敷設経路である道路に存在する下水マンホールに対応する部位にラセン管部材が用いられて水道管の迂回配管を行うことで、接続箇所や接続部品が削減されかつ限られた領域内においても自由な角度で導管の引き回しを行うことが可能とされ、作業効率の大幅な向上が図られるとともに工事費の大幅な低減が図られるようになる。また、本発明にかかる水道管の迂回配管装置によれば、水道管に対して大きな負荷が作用された場合にもラセン管部材のラセン管の伸縮作用によりこれを吸収することから接続部や水道管の破損が抑制されるようになる。
【0056】
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施の形態として示すラセン管部材を用いて下水マンホールを迂回して水道管を敷設した状態を模式的に示した斜視図である。
【図2】
同水道管の敷設状態を示す平面図である。
【図3】
同迂回配管に用いられるラセン管部材を示した一部切り欠き側面図である。
【図4】
同ラセン管部材の要部縦断面図である。
【図5】
同水道管とラセン管部材とを接続する具体的な接合機構を示す要部斜視図である。
【図6】
同接合機構の要部分解斜視図である。
【図7】
同接合機構に備えられる他の結合リング部材を示す縦断面図である。
【図8】
下水マンホールに対して迂回配管される水道管の敷設状態の説明図である。
【図9】
従来の下水マンホールを迂回配管する水道管の敷設方法を説明する平面図である。
【図10】
同迂回配管されて敷設された水道管の状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 水道管、1a,1b 水道管の端部、2 下水マンホール、4 下水管、10 ラセン管部材、11 ラセン管、12 接続管、13 ブレード、14 防さびテープ、15 保護テープ、16 フランジ板、17 保護リング、18 止めリング、19 調整リング、30 接続機構、31 太径部、32 第1の結合用凸部、33 ねじ孔、34 結合用リング部材、35 第2の結合用凸部、36 ねじ孔、37 結合ねじ、40 結合用リング部材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2004-03-12 
出願番号 特願平10-175110
審決分類 P 1 41・ 851- Y (E03B)
P 1 41・ 853- Y (E03B)
P 1 41・ 856- Y (E03B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 憲子
木原 裕
長島 和子
山田 忠夫
登録日 2001-07-27 
登録番号 特許第3215666号(P3215666)
発明の名称 水道管の迂回配管装置  
代理人 田村 榮一  
代理人 小池 晃  
代理人 田村 榮一  
代理人 小池 晃  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 野口 信博  
代理人 野口 信博  
代理人 藤井 稔也  
代理人 藤井 稔也  
代理人 伊賀 誠司  

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