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審決分類 審判 訂正 発明同一 訂正する C09D
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する C09D
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する C09D
審判 訂正 特36条4項詳細な説明の記載不備 訂正する C09D
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する C09D
審判 訂正 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正する C09D
審判 訂正 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 訂正する C09D
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C09D
管理番号 1096958
審判番号 訂正2003-39034  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-07-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-02-19 
確定日 2004-03-31 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3073775号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3073775号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求は、平成15年2月19日になされたものであり、その内容は、特許第3073775号[平成10年7月21日を国際出願日とする出願(優先権主張1997年7月24日、日本国)、平成12年6月2日設定登録]の願書に添付した明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを請求するというものである。
これに対して、平成15年6月2日付けで「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされ、その後、平成16年2月4日に、東京高等裁判所において前記審決を取り消すとの判決言渡(平成15年(行ケ)第330号)がなされた。

II.請求の要旨
本件審判の請求は、下記の訂正事項(1)〜(10)に係る訂正を求めるものである。
訂正事項(1)
特許請求の範囲の請求項1の「少なくとも1個のポリオキシアルキレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物であり、前記ポリオキシアルキレン基の繰り返し単位の炭素数が1〜4、前記アルコキシル基の炭素数が1〜4であることを特徴とする水性塗料用低汚染化剤。」を、「少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であり、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数が1〜4であることを特徴とする使用時に混合する水分散性の水性塗料用低汚染化剤(水溶化されたものを除く)。」と訂正する。
訂正事項(2)
特許請求の範囲の請求項2の「前記ポリオキシアルキル基の繰り返し単位の炭素数が2のポリオキシエチレン基であり、前記アルコキシル基の炭素数が2のエトキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料用低汚染化剤。」を、「前記アルコキシル基は、炭素数が2のエトキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料用低汚染化剤。」と訂正する。
訂正事項(3)
特許請求の範囲の請求項3の「合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対して、少なくとも1個のポリオキシアルキレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物であって、前記ポリオキシアルキレン基の繰り返し単位の炭素数は1〜4、前記アルコキシル基の炭素数は1〜4である水性塗料用低汚染化剤(B)がSiO2換算にて1.0〜40.0重量部添加されたものであることを特徴とする低汚染型水性塗料組成物。」を、「合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対して、少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であって、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数は1〜4である水分散性の水性塗料用低汚染化剤(B)(水溶化されたものを除く)がSi02換算にて1.0〜40.0重量部からなり、流通段階では、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)の少なくとも2成分からなり、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)とが使用時に添加されたものであることを特徴とする低汚染型水性塗料組成物。」と訂正する。
訂正事項(4)
特許請求の範囲の請求項4の「前記水性塗料用低汚染化剤(B)は、前記ポリオキシアルキレン基の繰り返し単位の炭素数が2のポリオキシエチレン基であり、前記アルコキシル基の炭素数が2のエトキシ基であることを特徴とする請求項3に記載の低汚染型水性塗料組成物。」を、「前記水性塗料用低汚染化剤(B)は、前記アルコキシル基が炭素数2のエトキシ基であることを特徴とする請求項3に記載の低汚染型水性塗料組成物。」と訂正する。
訂正事項(5)
特許請求の範囲の請求項10の「合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対して、少なくとも1個のポリオキシアルキレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物であって、前記ポリオキシアルキレン基の繰り返し単位の炭素数は1〜4、前記アルコキシル基の炭素数は1〜4である水性塗料用低汚染化剤(B)をSiO2換算にて1.0〜40.0重量部を添加して混合し、塗装することを特徴とする低汚染型水性塗料組成物の使用方法。」を、「合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対して、少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であって、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数は1〜4である水分散性の水性塗料用低汚染化剤(B)(水溶化されたものを除く)をSiO2換算にて1.0〜40.0重量部混合、塗装するものであり、流通段階では、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)の少なくとも2成分からなり、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)とを使用時に添加して混合し、塗装することを特徴とする低汚染型水性塗料組成物の使用方法。」と訂正する。
訂正事項(6)
発明の詳細な説明の欄の特許公報第4欄48行〜第5欄22行に対応する部分の記載を、
「請求項1に記載の発明は、少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であり、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数が1〜4であることを特徴とする使用時に混合する水分散性の水性塗料用低汚染化剤(水溶化されたものを除く)に関するものである。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水性塗料用低汚染化剤であって、アルコキシル基は炭素数が2のエトキシ基であることを特徴とするものである。請求項3に記載の発明は、合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対して、少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であって、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数は1〜4である水分散性の水性塗料用低汚染化剤(B)(水溶化されたものを除く)をSiO2換算にて1.0〜40.0重量部からなり、流通段階では、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)の少なくとも2成分からなり、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)とが使用時に添加されたものであることを特徴とする低汚染型水性塗料組成物に関するものである。上述の低汚染型水性塗料組成物においては、水性塗料用低汚染化剤(B)が、アルコキシル基は炭素数2のエトキシ基であることが好ましい。」と訂正する。
訂正事項(7)
発明の詳細な説明の欄の特許公報第5欄30〜38行に対応する部分の記載を、「請求項10に記載の発明は、合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対して、少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であって、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数は1〜4である水分散性の水性塗料用低汚染化剤(B)(水溶化されたものを除く)をSiO2換算にて1.0〜40.0重量部混合、塗装するものであり、流通段階では、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)の少なくとも2成分からなり、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)とを使用時に添加して混合し、塗装することを特徴とする低汚染型水性塗料組成物の使用方法に関するものである。」と訂正する。
訂正事項(8)
発明の詳細な説明の欄の特許公報第5欄48行〜第6欄4行に対応する部分の記載を、「(1)水性塗料用低汚染化剤について 本発明の水性塗料用低汚染化剤は、少なくとも1個のポリオキシアルキレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物であり、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数が1〜4で水分散性であることを特徴とするものである。」と訂正する。
訂正事項(9)
発明の詳細な説明の欄の特許公報第6欄9〜10行に対応する部分の「低汚染化剤の具体的な製造方法としは、」を、「低汚染化剤の具体的な製造方法としては、」と訂正する。
訂正事項(10)
発明の詳細な説明の欄の特許公報10〜12頁の記載に対応する表2〜表4の「増膜助剤」を、「造膜助剤」と訂正する。

III.当審の判断
III-1.目的・記載範囲・拡張・変更
訂正事項(1)について:
訂正事項(1)は、イ:「水を含有せず」および「使用時に混合する水分散性の」を付加する訂正、ロ:「ポリオキシアルキレン基」を「繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量150〜2000のポリオキシエチレン基」と訂正し、「前記ポリオキシアルキレン基の繰り返し単位の炭素数が1〜4」を削除する、ハ:「アルコキシシランの変性縮合物」を「アルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)」と訂正し、「水性塗料用低汚染化剤」を「水性塗料用低汚染化剤(水溶化されたものを除く)」と訂正、を内容とするものであるところ、
イは、訂正前の明細書(特許公報3頁5欄39〜44行、7頁13欄32行〜14欄13行、8頁16欄45〜46行参照)の記載に基づき、特許請求の範囲を減縮したものであり、
ロは、訂正前の明細書(請求項2、特許公報3頁5欄5〜8行、同頁5欄19〜22行、4頁7欄28〜33行、7頁13欄32行〜同頁14欄13行参照)の記載に基づき、特許請求の範囲を減縮したものであり、
ハは、特許請求の範囲に記載されていた「アルコキシシランの変性縮合物」および「水性塗料用低汚染化剤」を限定するものであり、「アルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)」は、訂正前の明細書(特許公報3頁6欄9行〜4頁7欄4行、7頁13欄32〜50行参照)に記載されており、「水性塗料用低汚染化剤(水溶化されたものを除く)」は、訂正前の明細書(特許公報3頁6欄9行〜4頁7欄37行、8頁16欄45〜48行参照)に記載されていることが明かである(判決参照)から、ともに、訂正前の明細書に記載された内容に基づき特許請求の範囲を減縮したものである。
そして、イ〜ハの訂正は、ともに、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものでない。
したがって、訂正事項(1)に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き、同条第2項および同条第3項の規定を満足するものである。

訂正事項(2)〜(8)について:
訂正事項(2)〜(8)に係る訂正は、訂正事項(3)における「流通段階では、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)の少なくとも2成分からなり、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)とが使用時に」を付加する訂正、および、訂正事項(5)における「混合、塗装するものであり、流通段階では、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)の少なくとも2成分からなり、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)とを使用時に」を付加する訂正が、ともに、訂正前の明細書(特許公報3頁5欄39〜44行参照)の記載に基づき特許請求の範囲を減縮したものであることを除き、いずれも、訂正事項(1)に係る訂正と整合させ、明りょうな記載とするための訂正であり、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項(2)〜(8)に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き、同条第2項および同条第3項の規定を満足するものである。

訂正事項(9)、(10)について:
単なる誤記の訂正であり、訂正前の明細書に記載された範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでない。
したがって、訂正事項(9)、(10)に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き、同条第2項および同条第3項の規定を満足するものである。

III-2.独立特許要件
(イ)本件の前記訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜10に記載されている事項により特定される発明(以下、「訂正発明1〜10」という。)は、いずれも、「ポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物である水性塗料用低汚染化剤(水溶化されたものを除く)」という特定事項(以下、「特定事項A」という。)を有するものである。
これに対して、本件の出願日前の出願に係る特願平8-29658号の願書に最初に添付された明細書(以下、先願明細書という。)には、以下の(あ)〜(お)の記載があり、水性塗料用低汚染化剤として、ポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有する水溶化せしめられたアルコキシシランの変性縮合物を用いる発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。
そして、訂正発明1〜10と先願発明の水性塗料用低汚染化剤を比較すると、前者は、水性塗料用低汚染化剤として、「水溶化されたものを除く」化合物を用いるのに対し、後者は、「水溶化せしめられた」化合物を用いる点で相違する。
そこで、前記相違点について検討するに、先願明細書には、水性塗料用低汚染化剤として、水溶化せしめられた化合物を用いると明記され、水溶化されない、すなわち、「水溶化されたものを除く」化合物を水性塗料用低汚染化剤として用いる、または、用いうるとの記載はない。
また、「水溶化せしめられた」化合物は、通常、「水溶化されたものを除く」化合物と明確に異なるものとして把握されるものであり、「水溶化されたものを除く」化合物をも含むものとして把握されることは一般的でないから、先願明細書に、水性塗料用低汚染化剤として「水溶化されたものを除く」化合物を使用することが自明な内容として示されているとすることもできない。
したがって、前記特定事項Aを含む訂正発明1〜10が、前記先願明細書に記載された発明と同一であるとすることはできない。

(あ)「エマルジョンとして存在する合成樹脂(A)100重量部(固形分)および一般式(1):(R1O)4-a-Si-R2a(1)(式中、R1は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R2は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基または炭素数1〜10のハロアルキル基、aは0〜2の整数、複数個含まれるR1、複数個含まれるばあいのR2はそれぞれ異なっていてもよい)で表わされるシリコン化合物および(または)その部分加水分解縮合物を主成分とする水溶化せしめられてなる化合物(B)1〜100重量部からなる水性塗料用樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)、
(い)「(B)成分が、一般式(1)で表わされるシリコン化合物および(または)その加水分解縮合物を、・・・(2)(注:マル2を読み替えたもの。以下同じ。)該シリコン化合物および(または)その加水分解縮合物とポリアルキレンオキシド基を有する化合物とを反応させて水溶化する・・・のいずれかの方法により水溶化せしめられた化合物である請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。」(同請求項12参照)、
(う)「各種水性塗料または水性樹脂組成物にテトラアルコキシシランおよび(または)その部分加水分解縮合物を水溶化してなる化合物を特定の割合で混合し、必要に応じて硬化触媒を特定の割合で混合することにより、従来の水性塗料では達成しえなかった耐汚染性を有し、また耐候性、耐水性にも優れた塗膜を形成することができる水性塗料用樹脂組成物がえられることを見出し」(段落番号0006、公報3頁3欄末行〜4欄7行参照)、
(え)「(2)のシリコン化合物等(b)とポリアルキレンオキシド基を有する化合物とを反応させて水溶化する方法としては、たとえば該シリコン化合物等(b)とポリアルキレンオキシド基を有し、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基などの基を有する化合物とを反応させて水溶化する方法などがあげられる。前記ポリアルキレンオキシド基を有する化合物としては、ポリアルキレンオキシド基(たとえばポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、・・・さらにオキシブチレン基がブロックまたはランダム結合で含まれている基など)を有し、シリコン化合物との反応を活性化するおよび(または)シリコン化合物と反応する基として作用するアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基などの基を有する化合物であるかぎりとくに限定はないが、反応活性、反応物の安定性の点から、ポリアルキレンオキシドアミン化合物が好ましい。」(段落番号0130〜0131、公報19頁36欄末行〜20頁38欄8行参照)、
(お)「本発明においては、エマルジョンとして存在する合成樹脂(A)に、一般式(1)で表わされるシリコン化合物および(または)その部分加水分解縮合物を主成分とする水溶化せしめられてなる化合物(B)を配合した水性塗料用樹脂組成物が被処理物に塗布するされるため、(B)成分が架橋反応の際に、塗膜表面に局在し、塗膜の表面硬度が高くなり、傷がつきにくくなり、汚染を防止しうる。また、塗膜が親水性であるため、雨などの洗浄効果が発現して、より一層優れた耐汚染性を有する塗膜が形成される。」(段落番号0157、公報22頁41欄35〜44行)。

(ロ)また、本件明細書における「水溶化されたものを除く」の内容について検討すると、訂正発明1〜10における「水溶化されたものを除く」なる内容は、前記判決でも示されるように、「水溶性化合物を除く」の意味であることが明かであるから、本件明細書の記載が、「水溶化されたものを除く」との表現に係り、不明確であり不備であるとすることはできない。

(ハ)してみると、前記(イ)および(ロ)の観点から、訂正発明1〜10が特許を受けることができないものであるとすることはできない。
また、他に、訂正発明1〜10が、特許を受けることができないとする理由を発見しない。

(ニ)よって、訂正後の訂正発明1〜10が、出願の際に独立して特許を受けることができないものであるとすることはできない。

IV.むすび
以上のとおりであるから、前記訂正は、特許法第126条第1項ただし書きの規定、および、同条第2〜4項の規定に適合するものであり、当該訂正を認める。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
水性塗料用低汚染化剤、低汚染型水性塗料組成物及びその使用方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であり、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数が1〜4であることを特徴とする使用時に混合する水分散性の水性塗料用低汚染化剤(水溶化されたものを除く)。
【請求項2】 前記アルコキシル基は、炭素数が2のエトキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料用低汚染化剤。
【請求項3】 合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対して、少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であって、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数は1〜4である水分散性の水性塗料用低汚染化剤(B)(水溶化されたものを除く)がSiO2換算にて1.0〜40.0重量部からなり、流通段階では、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)の少なくとも2成分からなり、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)とが使用時に添加されたものであることを特徴とする低汚染型水性塗料組成物。
【請求項4】 前記水性塗料用低汚染化剤(B)は、前記アルコキシル基が炭素数2のエトキシ基であることを特徴とする請求項3に記載の低汚染型水性塗料組成物。
【請求項5】 合成樹脂エマルション(A)が、アクリル樹脂系エマルションであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の低汚染型水性塗料組成物。
【請求項6】 合成樹脂エマルション(A)が、アクリルシリコン樹脂系エマルションであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の低汚染型水性塗料組成物。
【請求項7】 合成樹脂エマルション(A)が、フッ素樹脂系エマルションであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の低汚染型水性塗料組成物。
【請求項8】 合成樹脂エマルション(A)が、ウレタン樹脂系エマルションであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の低汚染型水性塗料組成物。
【請求項9】 合成樹脂エマルション(A)が、架橋反応型エマルションであることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の低汚染型水性塗料組成物。
【請求項10】 合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対して、少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であって、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数は1〜4である水分散性の水性塗料用低汚染化剤(B)(水溶化されたものを除く)をSiO2換算にて1.0〜40.0重量部混合、塗装するものであり、流通段階では、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)の少なくとも2成分からなり、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)とを使用時に添加して混合し、塗装することを特徴とする低汚染型水性塗料組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
技術分野
本発明は、特に屋外において使用される金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出成形板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用される水性塗料用の低汚染化剤に関するものであり、さらにはその低汚染化剤を添加した低汚染型水性塗料組成物に関するものである。本発明の水性塗料用低汚染化剤を用いた水性塗料組成物は、特に建築物、橋梁等の構造物の表面塗装に使用される塗料であって、直接基材に塗装する塗料であってもよく、また各種の仕上げ塗料、パターン塗料、石材調塗料、模様塗料等の最終仕上げ塗料としても使用可能である。
背景技術
近年、建築・土木構造物に使用する塗料分野においては有機溶剤を溶媒とする溶剤型塗料から、水を溶媒とする水性塗料への転換が図られつつある。これは、塗装作業者や居住者の健康被害を低減するためや、大気環境汚染を低減する目的で行われているものであり、年々水性化が進んできている。
公知の水性塗料の中には、耐候性、耐水性などに関しては溶剤型塗料と同等レベルの性能を有するものもある。しかし、特に汚染性に着目すると、低汚染型と唱われる水性塗料でさえ、溶剤型の低汚染型塗料のレベルには遠く及ばないのが現状である。
また、水性塗料による塗膜は一般的に溶剤型の塗料による塗膜に比べて、塗膜硬度が低く、汚染物質が付着した時の染み込み性が高い傾向がある。従って、一度汚染物質が付着すると、塗膜表面からその汚れを除去することは困難な場合が多い。
このような問題を解決した低汚染型塗料としては、塗料中に特定のオルガノシリケート及び/又はその縮合物を配合する技術がWO94/06870に開示されている。より具体的には、WO94/06870に開示される技術は、特定のオルガノシリケート及び/又はその縮合物を配合し、塗膜形成後にその塗膜を酸処理することによって、塗膜表面を親水性にし、油性の汚染物質を付着しにくくし、また付着した汚染物質を降雨等の水滴とともに洗い流してしまうことを特徴とする。
しかしながら、WO94/06870に開示された技術は、有機溶剤系の塗料に単にオルガノシリケート及び/又はその縮合物を添加するものである。これを水性塗料に適用して、水性塗料にオルガノシリケート及び/又はその縮合物を添加して得られた塗料は、水性塗料とオルガノシリケート及び/又はその縮合物との相溶性が悪く、以下に記載されるような問題を有しており、実用化にはこれらの問題を解決する必要がある。
1)混合物には添加後短時間(1時間以内)に沈殿物が生じることが多い。
2)顔料を含まない水性クリヤー塗料においては形成された塗膜に白濁を生じる。
3)一般にグロスペイントと呼ばれる高光沢の水性塗料においては、表面光沢が極端に低下する。
これらは、前述の通り水性塗料とオルガノシリケート及び/又はその縮合物との相溶性が悪いためと考えられる。
本発明が解決しようとする課題は、以下の通りである。
a.水性塗料に添加した場合に耐汚染性及び汚染物質の染み込み防止性を飛躍的に向上できる低汚染化剤を提供すること。
b.水性塗料に添加した場合に、耐候性、耐水性に影響を与えず、光沢にも影響を与えない低汚染化剤を提供すること。
c.水性塗料との相溶性に優れた汚染化剤を提供すること。
また本発明は、前記低汚染化剤を添加した低汚染型水性塗料組成物を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明者等は、これらの課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、各種水性塗料に少なくとも1個のポリアルキレンオキサイド基を持つようなアルコキシシランの変性縮合物を添加することにより、良好な耐汚染性及び汚染物質の染み込み抵抗性を有し、さらには耐候性、耐水性に優れる塗膜を形成できることを見いだし本発明を完成した。
本発明は以下の水性塗料用低汚染化剤及びそれを用いた水性塗料組成物に関するものである。
請求項1に記載の発明は、少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量が150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を持つアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であって、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数が1〜4であることを特徴とする使用時に混合する水分散性の水性塗料用低汚染化剤(水溶化されたものを除く)に関するものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水性塗料用低汚染化剤であって、アルコキシル基は炭素数2のエトキシ基であることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対して、少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量が150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であって、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数は1〜4である水分散性の水性塗料用低汚染化剤(B)(水溶化されたものを除く)がSiO2換算にて1.0〜40.0重量部からなり、流通段階では、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)の少なくとも2成分からなり、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)とが使用時に添加されたものであることを特徴とする低汚染型水性塗料組成物に関するものである。
上述の低汚染型水性塗料組成物においては、水性塗料用低汚染化剤(B)が、アルコキシル基は炭素数2のエトキシ基であることが好ましい。
本発明の低汚染型水性塗料組成物において使用する合成樹脂エマルション(A)は、アクリル樹脂系エマルション、アクリルシリコン樹脂系エマルション、フッ素樹脂系エマルション、ウレタン樹脂系エマルションから選択されるものであることが好ましく、これらの合成樹脂エマルションは、架橋反応型エマルションであることが特に好適である。
請求項10に記載の発明は、合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対して、少なくとも1個の繰り返し単位の炭素数が2、平均分子量が150〜2000のポリオキシエチレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物(Si-C結合を有するものを除く)であって、水を含有せず、前記アルコキシル基の炭素数は1〜4である水分散性の水性塗料用低汚染化剤(B)(水溶化されたものを除く)をSiO2換算にて1.0〜40.0重量部混合、塗装するものであり、流通段階では、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)の少なくとも2成分からなり、前記合成樹脂エマルション(A)含有成分と、前記水性塗料用低汚染化剤(B)とを使用時に添加して混合し、塗装することを特徴とする低汚染型水性塗料組成物の使用方法に関するものである。
低汚染化剤は、水と反応するものであり、余り長期にわたって水を含む合成樹脂エマルションと接触させておくことは避けるべきであり、上記の構成により、流通段階では2成分以上の多成分タイプの塗料として扱い、使用時に混合することによって、本発明の低汚染型水性塗料組成物に本来の特徴を十分発揮させることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
(1)水性塗料用低汚染化剤について
本発明の水性塗料用低汚染化剤は、少なくとも1個のポリオキシアルキレン基及びアルコキシル基を有するアルコキシシランの変性縮合物であり、水を含有せず、前記ポリオキシアルキレン基の繰り返し単位の炭素数が1〜4、前記アルコキシル基の炭素数が1〜4で水分散性であることを特徴とするものである。
本発明の低汚染化剤の製造方法としては、結果的に、繰り返し単位の炭素数が1〜4のポリオキシアルキレン基を少なくとも1個有し、炭素数が1〜4のアルコキシル基を持つアルコキシシランの変性縮合物が得られる方法は特に限定なく使用可能である。低汚染化剤の具体的な製造方法としては、たとえばアルコキシシランの縮合物の1種又は2種以上の混合物を、ポリオキシアルキレン基含有化合物の1種又は2種以上でエステル交換反応させる方法、カップリング剤を用いて付加反応させる方法等が例示される。
i)エステル交換反応
一般式が、
(R1O)4-aSi(R2)a
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2は炭素数1〜4のアルコキシル基を示し、aは0〜2の整数を示す)にて表されるアルコキシシランの縮合物(以下「a成分」という。また、その縮合前の原料を「a成分のモノマー」という。)を、一般式
R3-(OCnH2n)m-R4
(式中、R3は水素原子またはアルキル基、エポキシ基、アシル基を示し、R4は水酸基、アルキル基、アルコキシル基、エポキシ基、アシル基、カルボキシル基を示し、nは1〜4の整数、mは1〜20の整数を示す)にて表されるポリオキシアルキレン鎖含有化合物(以下「b成分」という。)によってエステル交換することにより、本発明の低汚染化剤が製造される。特に、エステル交換反応においては、末端に少なくとも1個の水酸基を有するb成分を使用する必要がある(尚、後述するカップリング剤による付加反応の場合はこの限りではない。)
具体的には、a成分のモノマーとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシランなどが挙げられる。これらの化合物は単独で、もしくは複数の種類を混合して使用することができる。
a成分のアルコキシシリル基の炭素数は1〜4であることが好ましい。炭素数が5を超えるとa成分のモノマーとb成分とのエステル交換反応において高温での加温が必要となる。ところがa成分の熱安定性が劣るため、エステル交換反応時に使用不可能なゲルを生じる傾向がある。
また、a成分の平均縮合度は1〜20が好ましい。平均縮合度が20を超えると、取り扱いが不便になるので好ましくない。
b成分の具体例として、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-プロピレングリコール、ポリオキシエチレン-テトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシエチレンジグリコール酸、ポリオキシエチレングリコールビニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールアリルエーテル、ポリオキシエチレングリコールジアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。これらの化合物は、1種もしくは2種以上の組み合わせから選択することができる。
b成分の平均分子量は150〜2000が好ましい。平均分子量が150未満の場合は、a成分とのエステル交換反応によって得られた低汚染化剤を塗料に混合した際の安定性が劣ってくる傾向にあり、優れた光沢が得られなくなってくる。逆に、b成分の平均分子量が2000を超えると、硬化塗膜の耐水性や硬度が低下する傾向にある。
以上において、a成分のモノマーを縮合させた後にエステル交換反応を行う例を記載したが、a成分のモノマーを予めb成分でエステル交換した後に、縮合させる製造方法も使用可能である。
エステル交換反応を行う際には、エステル交換触媒(以下「c成分」という)を添加することができる。
c成分としては、以下の化合物を例示することができる。
ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレートなどの有機錫化合物
リン酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノオクチルホスフェートなどのリン酸またはリン酸エステル類
プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、グリシジルメタクリレート、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、エピコート828などのエポキシ化合物とリン酸及び/又は酸性モノリン酸エステルとの付加物
有機チタネート化合物
有機アルミニウム化合物
有機ジルコニウム化合物
マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、これらの酸無水物、パラトルエンスルフォン酸などの酸性化合物
ヘキシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミンなどのアミン類
水酸化ナトリウムなどのアルカリ性化合物
このようなc成分は、単独であるいは2種類以上を併用して使用することができる。c成分の使用量は、a成分100重量部に対して、0.0001〜5重量部が好ましい。c成分の使用量が0.0001重量部以下では、エステル交換反応への寄与が小さく、逆に5重量部以上ではa成分自体の縮合反応が早くなり低汚染化剤の安定性が低下するので好ましくない。
ii)カップリング剤による付加反応
本発明における低汚染化剤は、b成分をエステル交換によりa成分に導入する製造方法以外に、一分子中にa成分とb成分とを結合する反応性官能基と、1個以上のアルコキシシリル基を有するカップリング剤(以下「d成分」という)を使用して付加反応により製造することもできる。
d成分における反応性官能基としては、たとえば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基などが挙げられる。また、該官能基は、アルコキシシリル基との間にウレタン結合、尿素結合、シロキサン結合、アミド結合などを介して結合されたものであってもよい。
d成分としては、具体的には、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどが例示される。
(2)水性塗料用低汚染化剤の使用方法
本発明の水性塗料用低汚染化剤は、一般的な水性塗料へ添加して使用する。添加方法としては、直接的に水性塗料へ添加することも可能であるし、低汚染化剤を混合可能な溶剤、もしくは架橋剤等に混合した後に水性塗料へ添加することも可能である。添加量としては、水性塗料の合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、SiO2換算で1.0〜40.0重量部の添加が望ましい。
ここで、SiO2換算とは、アルコキシシランやシリケートなどのSi-O結合をもつ化合物が完全に加水分解した後に、900℃で焼成した際にシリカ(SiO2)となって残る重量分にて表したものである。
一般に、アルコキシシランやシリケートは、水と反応して加水分解反応を起こしてシラノールとなり、さらにシラノール同士やシラノールとアルコキシル基が縮合反応を起こす性質を持っている。この反応を究極まで行うと、シリカ(SiO2)となる。これらの反応は、
RO(Si(OR)2O)n-R+(n+1)H2O→nSiO2+(2n+2)R-OH
という反応式で表されるが、この反応式をもとに残るシリカ成分の量を換算したものである。
実際の計算は、次式により行った。
シリカ残量比率(SiO2換算値)=m×w/100
m:実際のアルコキシシラン変性縮合物又はアルコキシシラン化合物の添加量
w:アルコキシシラン変性縮合物又はアルコキシシラン化合物のシリカ残量比率(wt%)
本発明の低汚染化剤を、塗料の合成樹脂エマルションの固形分100 重量部に対して、1.0重量部未満加えても、低汚染化の効果が得られない。更に、40.0重量部以上加えると、塗料との相溶性が低下してしまう傾向にあり、光沢の低下が起こるので好ましくない。
本発明の低汚染化剤は、単独で用いてもかまわないが、先にa成分として示したようなアルコキシシラン化合物を本発明の効果を阻害しない範囲で添加することもできる。
(3)添加する水性塗料について
本発明の水性塗料用低汚染化剤を添加する水性塗料としては、合成樹脂エマルションを結合材とし、その他塗料用の各種添加剤を含有するものである。
合成樹脂エマルションとしては、たとえば、アクリル樹脂系エマルション、アクリルシリコン樹脂系エマルション、フッ素樹脂系エマルション、ウレタン樹脂系エマルションなどが挙げられる。
〔アクリル樹脂系エマルション〕
アクリル樹脂系エマルションとしては、アクリル系単量体、およびアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用できる。
アクリル系単量体は、特に限定されないが、以下の単量体を例示することができる。
メチル(メタ)アクリレート(メチルアクリレート又はメチルメタアクリレートのいずれかであることを示す。以下において同じ。)、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル系単量体
(メタ)アクリル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリル系単量体
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド含有(メタ)アクリル系単量体
アクリロニトリルなどのニトリル基含有(メタ)アクリル系単量体
グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体
これらのアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸などのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有ビニル単量体、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレンなどの塩素含有単量体、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどの水酸基含有アルキルビニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテルなどのアルキレングリコールモノアリルエーテル類、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのα-オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテルなどのアリルエーテル等を例示できる。
合成樹脂エマルション(A)として、アクリル樹脂系エマルションを用いた場合は、耐久性、光沢の高さ、コスト面、樹脂設計の自由度の高さなどが有利である。
〔アクリルシリコン樹脂系エマルション〕
アクリルシリコン樹脂系エマルションとしては、珪素含有アクリル系単量体、および珪素含有アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用できる。
珪素含有アクリル系単量体としては、特に限定されないが、たとえば、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの加水分解性シリル基含有ビニル系単量体等を例示できる。
珪素含有アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、たとえば、前述のアクリル樹脂系エマルションで使用されるアクリル系単量体やアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体等を、特に限定されず使用できる。
合成樹脂エマルション(A)として、アクリルシリコン樹脂系エマルションを用いた場合は、耐候性、耐黄変性、耐久性、耐薬品性、耐汚染性などが有利である。
〔フッ素樹脂系エマルション〕
フッ素樹脂系エマルションとしては、フッ素含有単量体、およびフッ素含有単量体と共重合可能な他の単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用できる。
フッ素含有単量体としては、たとえば、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどのフルオロオレフィン;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリレート等が例示される。
フッ素含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、たとえば、前述のアクリル樹脂系エマルションで使用されるアクリル系単量体やアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体等を、特に限定されず使用できる。
合成樹脂エマルション(A)として、フッ素樹脂系エマルションを用いた場合は、耐候性、耐黄変性、耐久性、耐薬品性、耐汚染性などが有利である。
〔ウレタン樹脂系エマルション〕
ウレタン樹脂系エマルションとは、塗膜形成後の塗膜中にウレタン結合を持つようになるエマルションを総称する。即ち、塗膜形成前からウレタン結合を有するものでもよいし、塗膜形成後の反応によりウレタン架橋を形成するものでもよい。エマルションの形態としては、1液型でもよいし2液型であってもよい。
1液型としては、ウレタン結合を有する重合性単量体を他の共重合可能な単量体と共重合する方法、ウレタン結合を有する水性樹脂の存在下に重合性不飽和単量体を重合する方法、反応基を有する水性ウレタン樹脂と、該反応基と反応することのできる基を含むエマルションとを混合する方法等が挙げられる。
2液型としては、水分散性イソシアネートと水酸基含有エマルションとの組み合わせ等が挙げられる。
合成樹脂エマルション(A)として、ウレタン樹脂系エマルションを用いた場合は、耐久性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性などが有利である。
〔架橋反応型エマルション〕
合成樹脂エマルションの中で、前記の水酸基とイソシアネート化合物による架橋反応以外に、カルボニル基とヒドラジド基、カルボン酸と金属イオン、エポキシ基とアミン、エポキシ基とカルボキシル基、カルボン酸とアジリジン、カルボン酸とカルボジイミド、カルボン酸とオキサゾリン、アセトアセテートとケチミンなどを利用した架橋反応を形成するエマルションを使用することも可能である。架橋反応型エマルションは、1液タイプであっても、2成分以上の多成分タイプであってもよい。
合成樹脂エマルション(A)として、架橋反応型エマルションを用いた場合は、耐久性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性などが有利である。
合成樹脂エマルション(A)の製造方法はとくに限定されないが、たとえば乳化重合法として、バッチ重合、モノマー滴下重合、乳化モノマー滴下重合などの方法により製造することができる。
重合に用いる乳化剤は一般に使用されるものであれば特に限定はされず、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性、ノニオン-カチオン性、ノニオン-アニオン性のものを単独あるいは併用して使用することができる。また、耐水性の向上を目的として反応性基をもった乳化剤も使用することができる。
重合開始剤としては、合成エマルションの製造において使用される公知のラジカル開始剤を限定なく使用することができ、過硫酸アンモニウム塩などの過硫酸塩、過酸化水素と亜硫酸水素ナトリウムなどとの組み合わせからなるレドックス開始剤、さらに第一鉄塩、硝酸銀などの無機系開始剤を混合させた系、または、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタール酸パーオキシドなどの二塩基酸過酸化物、アゾビスブチロニトリルなどの有機系開始剤などが挙げられる。
重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対して0.01〜5重量部程度が使用できる。その他、乳化物のpH調整のため炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの無機塩およびトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機塩基類を添加することができる。
本発明の低汚染化剤を添加する水性塗料には、硬化触媒を添加するのが好ましい。硬化触媒の添加量は、水性塗料100重量部に対して、硬化触媒0.1〜10重量部が好適である。添加量が0.1重量部以下では、反応速度が遅くなるので、結果として硬化塗膜の低汚染性の効果が低下する傾向にある。また、10重量部以上では塗膜の外観と耐久性が低下する傾向にある。
このような硬化触媒としては、たとえば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレートなどの有機錫化合物;リン酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホフェート、モノオクチルホスフェートなどのリン酸またはリン酸エステル類;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、グリシジルメタクリレート、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、エピコート828などのエポキシ化合物とリン酸および/または酸性モノリン酸エステルとの付加物;有機チタネート化合物;有機アルミニウム化合物;有機ジルコニウム化合物;マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、これらの酸無水物、パラトルエンスルフォン酸などの酸性化合物;ヘキシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミンなどのアミン類;水酸化ナトリウムなどのアルカリ性化合物などが例示できる。これらの硬化触媒は、単独あるいは2種類以上併用して使用することができる。
これらの硬化触媒は、界面活性剤を用いて乳化分散後添加することもできる。使用する界面活性剤は特に限定されないが、ノニオン性、アニオン性、ノニオン-アニオン性のものが好適に使用できる。
本発明の低汚染化剤を添加する水性塗料には、必要に応じて通常塗料に用いられる造膜助剤、無機系着色顔料、有機系着色顔料、体質顔料などが配合可能である。また、本発明に影響しない程度の可塑剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を単独あるいは併用して配合することができる。
(4)水性塗料組成物の使用について
本発明の低汚染化剤を添加した水性塗料組成物は、金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出成形板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用することができ、主に建築物、土木構築物等の躯体の保護に使用するものである。この際、本発明の低汚染化剤を添加した水性塗料組成物は、最終の仕上面に施されているものであり、基材に直接塗装することもできるし、何らかの表面処理(下地処理等)を施した上に塗装することも可能であるが、特に限定されるものではない。塗装方法としては、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装、ロールコーター、フローコーター等種々の方法により塗装することができる。さらには、建材表面に工場等においてプレコートすることも可能である。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
(1)低汚染化剤の製造
(合成例1)アルコキシシラン変性縮合物E合成例
テトラエトキシシランの縮合物である平均分子量750のエチルシリケート縮合物P(平均分子量750、シリカ残量比率40重量%)100.0重量部と平均分子量200のポリオキシエチレングリコール(PEG)#200(和光純薬株式会社製)106.7重量部を混合し、さらに触媒としてジブチル錫ジラウレート0.02重量部を添加後、75℃で8時間脱エタノール反応を行い、アルコキシシラン変性縮合物Eを合成した。
このアルコキシシラン変性縮合物Eの900℃にて焼成して得られたシリカ残量比率は20.9wt%であった。
(合成例2)アルコキシシラン変性縮合物F合成例
エチルシリケート縮合物Pを100重量部、平均分子量400のポリオキシエチレングリコールモノセチルエーテル(東京化成株式会社製)81.7重量部を混合し、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.02重量部を添加して、合成例1と同様にしてアルコキシシラン変性縮合物Fを合成した。
このアルコキシシラン変性縮合物Fのシリカ残量比率は22.2重量%であった。
(合成例3)アルコキシシラン変性縮合物G合成例
平均分子量900のエチルシリケート縮合物Q(平均分子量900、シリカ残量比率45重量%)100重量部と、平均分子量1000のポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製)385.4重量部を混合し、更に触媒としてジブチル錫ジラウレート0.02重量部を添加して、合成例1と同様にしてアルコキシシラン変性縮合物Gを合成した。
このアルコキシシラン変性縮合物Gのシリカ残量比率は11.7重量%であった。
以上の結果を表1にまとめて示した。
(2)低汚染化剤の合成樹脂エマルションへの添加
(i)塗料の調製
(実施例1〜5)
表2に示すような原料を使用して塗料を調製した。塗料の配合は、表3に示した。
即ち、実施例1では、具体的にはフルオロオレフィン-ビニルエーテル共重合体エマルション200重量部、アルコキシシラン変性縮合物Eを13.9重量部(SiO2換算にて樹脂固形分に対して約5.0重量部となるように配合)、造膜助剤として2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名:テキサノール)17.8重量部を添加し、十分に撹拌した後、ジブチル錫ジラウレート1.0重量部を添加して更に攪拌を行いクリヤー塗料が作製された。
実施例2〜5についても、実施例1と同様な手順でクリヤー塗料が作成された。
(比較例1〜3)
比較例1〜3の塗料の配合は表4に示されている。比較例1〜3のクリヤー塗料は実施例1と同じ方法により作製された。
(実施例6〜10)
表2に示すような原料を使用して、表3の配合に従い塗料を作製し下記のような評価を行った。即ち、実施例6においては、フルオロオレフィン-ビニルエーテル共重合体エマルション200重量部、酸化チタン(ルチル型)75重量部、アルコキシシラン変性縮合物Aを13.9重量部(SiO2換算にて樹脂固形分に対して約5.0重量部となるように配合)、テキサノールを17.8重量部混合し、十分に撹拌した後、ジブチル錫ジラウレート1.0重量部を添加し十分に攪拌して、塗料組成物が作製され、以下の評価に供された。
実施例7〜10についても、実施例6と同様に作製された。
(比較例4〜6)
比較例4〜6の塗料の配合は表4に示されている。比較例4〜6の塗料は実施例6と同じ方法により作製された。
(ii)評価とその結果
上記の記載にしたがって作製された塗料は、実施例1〜5、比較例1〜3についてはクリヤー塗料の状態で相溶性の評価を行った。実施例6〜10、比較例4〜6の塗料は、白色塗料であり、塗膜の光沢、塗料の安定性、雨筋汚染性、汚れの染み込み抵抗性の評価を行った。
1.相溶性評価
実施例1〜5、比較例1〜3の塗料はクリヤー塗料であり、このクリヤー塗料は、150×120×3mmの透明なガラス板に乾燥膜厚が40μmとなるようにスプレー塗装され、気温20℃、湿度65%(以下、「標準状態」という)で24時間乾燥養生された後、フィルムの透明性が目視にて評価された。
評価は、以下のように表示し、結果は、表5に示した。
○:完全に透明な状態
×:白濁して不透明な状態
<結果>
表5の結果から、実施例1〜5については、いずれも透明な塗膜が得られ、アルコキシシラン変性縮合物Eと樹脂の相溶性が優れていることが明らかとなった。
一方、比較例については、ポリオキシアルキレン化合物による変性を行っていない市販のアルコキシシランを配合したクリヤー塗料については、樹脂との不相溶に起因する塗膜の白濁の発生が認められた。
2.60度鏡面光沢度測定
実施例6〜10、比較例4〜6の塗料組成物を150×120×3mmの透明なガラス板にWET膜厚が125μmとなるようにアプリケーターにてアプライした。標準状態で7日間乾燥養生した後、JIS K5400(1990)7.6鏡面光沢度に準じ、60度の角度での光沢値を測定した。また、比較用ブランクとして実施例6の配合からアルコキシシラン変性縮合物Eを除いた配合にて塗料組成物を作成し、同様の試験を行った。結果は表6に示した。
3.塗料安定性
実施例6〜10、比較例4〜6について、作製した塗料組成物を100g秤量し、標準状態で1時間放置後の沈降物の有無を確認した。評価は以下のように表示し、結果を表6に示した。
○:沈降物なし
×:沈降物あり
4.雨筋汚染性評価
実施例6〜10、比較例4〜6の塗料組成物を300×150×3.0mmのアルミニウム板を上方から3分の1の長さのところで、内角度が135度になるように折り曲げたもの(以下、「曝露用板」という)に、SK#1000プライマー(エポキシ樹脂系プライマー;エスケー化研株式会社製)を、乾燥膜厚が約30μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥させた。(暴露用板は凸面を表面とする)
次に、作製した塗料組成物を、前述のプライマーを塗装した暴露用板に乾燥膜厚が約40μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で7日間乾燥し試験体とした。
作製した試験体を、大阪府茨木市において、南面に向けて面積が広い面を垂直にし、さらに面積の狭い面が上部になるように設置して、屋外暴露を実施し、6ヶ月後の雨筋汚れの有無を目視にて評価した。
評価は以下のように表示し、結果を表6に示した。
○:垂直面に雨筋汚染なし
×:垂直面に雨筋汚染が見られる
5.汚れの染み込み抵抗性
実施例6〜10、比較例4〜6の塗料組成物を150×75×0.8mmのアルミ板に、SK#1000プライマーを乾燥膜厚30μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥を行った。
次に、作製した塗料組成物を乾燥膜厚が40μmとなるようにスプレー塗装し試験体を作製した。作製した試験体を、標準状態で7日間乾燥養生した後、JIS K5400(1990)8.10耐汚染性試験に準じ、塗膜面に15重量%カーボンブラック水分散ペースト液を、直径20mm、高さ5mmとなるように滴下し、50℃の恒温室中に2時間放置した。その後流水中にて洗浄し、塗膜表面の汚染の程度を目視により評価した。
評価は以下の通り。なお、結果は表6に示す。
○:痕跡なし
×:痕跡有り
<結果>
表6に記載の通り、実施例6〜10の塗料組成物については高い光沢値が得られ、また塗料放置による沈降物の発生も認められず、安定性も良好であった。また、雨筋汚染性試験と汚れの染み込み抵抗性試験から、汚染物質の付着あるいは塗膜内への染み込みもまったく認められず、優れた耐汚染性を有している。
これに対して、市販のアルコキシシランを使用した比較例5では、著しく光沢値が低下してており、さらに塗料放置後、下部に沈降物が生じていた。樹脂とアルコキシシランの相溶性が悪く、分離による結果であることが分かる。比較例4は通常の水系フッ素樹脂塗料の配合、比較例6はウレタン樹脂塗料の配合であるが、雨筋汚染が発生し、汚れの染み込みも著しく生じていた。
以上の結果から、通常のアルコキシシランは水中では安定性が悪く、合成樹脂エマルションとの相溶性も劣るため、クリヤー塗膜での白濁、光沢の低下が生じることがわかった。一方、本発明の低汚染化剤は、樹脂との相溶性が良好となり、高い光沢値が得られる。さらに、水中での分散性が向上するため表面への配向性に優れ、親水性の塗膜表面が形成され、優れた非汚染性を有することがわかった。






 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-06-02 
結審通知日 2003-06-05 
審決日 2003-06-17 
出願番号 特願平11-509664
審決分類 P 1 41・ 832- Y (C09D)
P 1 41・ 854- Y (C09D)
P 1 41・ 855- Y (C09D)
P 1 41・ 161- Y (C09D)
P 1 41・ 856- Y (C09D)
P 1 41・ 841- Y (C09D)
P 1 41・ 537- Y (C09D)
P 1 41・ 536- Y (C09D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 雨宮 弘治
特許庁審判官 佐藤 修
西川 和子
登録日 2000-06-02 
登録番号 特許第3073775号(P3073775)
発明の名称 水性塗料用低汚染化剤、低汚染型水性塗料組成物及びその使用方法  
代理人 鈴木 崇生  
代理人 村田 美由紀  
代理人 光吉 利之  
代理人 尾崎 雄三  
代理人 光吉 利之  
代理人 梶崎 弘一  
代理人 尾崎 雄三  
代理人 村田 美由紀  
代理人 梶崎 弘一  
代理人 鈴木 崇生  

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