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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1098008
異議申立番号 異議2003-72015  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-06 
確定日 2004-04-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3376194号「画像処理装置及び方法」の請求項1ないし3、7ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3376194号の請求項1ないし3、7ないし9に係る特許を維持する。 
理由 1.訂正の適否
1-1訂正の内容
別紙「訂正の内容」参照。
1-2(訂正の適否)
請求項1ついての訂正事項a、請求項3についての訂正事項b、及び請求項9についての訂正事項cは、単色モードが白黒モードであること、そして色空間圧縮処理をスルーにする制御手段が色空間圧縮処理による濃度低下を防止するための手段であることを限定するものであり、訂正事項a,b,及びcは特許明細書に記載されていたことである。
以上のとおりであるから、訂正事項a,b,及びcは、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するものである。
また、その他の訂正事項d乃至fについても、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するものであるので上記訂正を認める。

2.異議の申立てについての判断
2-1本件発明
上記のとおり、訂正は認められるから、本件特許の発明(請求項1ないし3,7ないし9)は、訂正された特許明細書に記載された次のとおりのものである。
請求項1;対象画像を示す画像データを入力する入力手段と、
前記入力画像データに対して色空間圧縮処理を行う色空間圧縮手段と、
前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは白黒モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定手段と、
前記判定手段の結果、前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定手段の結果、白黒モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理による濃度低下を防止するために前記色空間圧縮処理をスルーにする制御手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
(以下、本件発明1という。))
請求項2;更に、色再現処理を行う色再現処理手段を有し、
前記画像処理には前記色空間圧縮処理と前記色再現処理があることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
(以下、本件発明2という。)
請求項3;前記色再現処理は、
前記複数色モードの時は画像形成手段の特性に基づいた色再現処理を行い、前記複数の記録材の各々に対応した画像データを生成し、
前記白黒モードの時は比視感度に相当する濃度データを生成することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
(以下、本件発明3という。)
請求項7;前記色再現処理は、画像形成手段の特性に基づき記録材の総量規制を行うことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
(以下、本件発明4という。))
請求項8;前記色再現処理は下色処理を含むことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
(以下、本件発明5という。)
請求項9;対象画像を示す画像データを入力する入力工程と、
前記入力画像データに対して色空間圧縮処理を行う色空間圧縮工程と、
前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは白黒モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定工程と、
前記判定工程において前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定工程において前記白黒モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理による濃度低下を防止するために前記色空間圧縮処理をスルーにする制御工程とを有することを特徴とする画像処理方法。
(以下、本件発明6という。)

2-2取消理由通知で引用された刊行物に記載された発明
(2-2-1)
当審が通知した取消理由に引用した特開平7-273998号公報(甲第1号証)(以下、「刊行物1」という。)には、色空間圧縮、下地レベル補正、及びダークレベル補正をユーザが操作部から手動によりそのON/OFFを独立に設定することが可能な画像処理方法及び装置が記載されている。
(2-2-2)
当審が通知した取消理由に引用した特開平1-213072号公報(甲第2号証)(以下、「刊行物2」という。)には、単一色で複写画像を形成する場合、3原色信号を1次変換回路を通すことにより又は他の手段により比視感度特性と同様な特性を有する輝度信号に変換し、該輝度信号を濃度信号に変換し、その後切替回路を切り替えてマスキング処理を行わずにプリンタ部に該濃度信号を供給するようにした複写装置が記載されている。

2-3対比・判断
(2-3-1)一致点・相違点の認定
本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は「色空間圧縮処理手段のON/OFFを設定することが可能である」という点において一致するが、先ず次の点で両者は相違する。
相違点:刊行物1に記載された発明は、本件発明1の「複数色モード、もしくは白黒モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定手段により、白黒モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理による濃度低下を防止するために前記色空間圧縮処理をスルーにする制御手段」という構成を有しない点。
(2-3-2)相違点の判断
相違点について検討するに、刊行物2には、「単一色で複写しようとする場合には、3原色信号を1次変換回路を通すことにより又は他の手段により比視感度特性と同様な特性を有する輝度信号に変換し、該輝度信号を濃度信号に変換し、その後切替回路を切り替えてマスキング処理を行わずにプリンタ部に供給すること」は記載されているものの当該マスキング処理切替手段が色空間圧縮処理をスルーにする制御手段である点については記載されておらず、刊行物2の記載から白黒モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理による濃度低下を防止するために色空間圧縮処理手段をスルーにする制御手段は自明の事項でもない。
したがって、本件発明と刊行物1に記載された発明との他の相違点についての検討、判断を示すまでもなく、本件発明1は、前記の刊行物1ないし2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
本件発明2は、本件発明1を引用し、本件発明3ないし5は、本件発明2を引用するものであるから、本件発明2ないし5についても、少なくとも本件発明1について上述した認定・判断が該当することは明かである。
本件発明6は、装置発明である本件発明1のカテゴリーを変え、方法発明とするものであるから、本件発明6に対する一致点・相違点の認定および相違点の判断は、やはり本件発明1について述べたとおりである。

3.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし3,7ないし9に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1ないし3,7ないし9に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 別紙「訂正の内容」

a.特許明細書の【請求項1】中の
「前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは単色モー ドのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定手段と、前記判定手段の結果、前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定手段の結果、単色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理をスルーにする制御手段」

「前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは白黒モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定手段と、前記判定手段の結果、前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定手段の結果、白黒モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理による濃度低下を防止するために前記色空間圧縮処理をスルーにする制御手段」
と訂正する。
b.特許明細書の【請求項3】中の
「前記単色モードの時は比視感度に相当する濃度データを生成することを特徴とする」

「前記白黒モードの時は比視感度に相当する濃度データを生成することを特徴とする」
と訂正する。
c.特許明細書の【請求項9】中の
「前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは単色モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定工程と、前記判定工程において前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定工程において前記単色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理をスルーにする制御工程」

「前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは白黒モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定工程と、前記判定工程において前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定工程において前記白黒モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理による濃度低下を防止するために前記色空間圧縮処理をスルーにする制御工程」
と訂正する。
d.特許明細書の段落【0006】中の
「前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは単色モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定手段と、前記判定手段の結果、前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定手段の結果、単色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理をスルーにする制御手段」

「前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは白黒モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定手段と、前記判定手段の結果、前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定手段の結果、白黒モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理による濃度低下を防止するために前記色空間圧縮処理をスルーにする制御手段」
と訂正する。
e.特許明細書の段落【0007】中の
「前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは単色モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定工程と、前記判定工程において前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定工程において前記単色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理をスルーにする制御工程」

「前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは白黒モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定工程と、前記判定工程において前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定工程において前記白黒モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理による濃度低下を防止するために前記色空間圧縮処理をスルーにする制御工程」
と訂正する。
f.特許明細書の段落【0057】中の
「単色モード時には色空間圧縮処理を行なった場合生じる濃度低下をすることが可能となる。」

「単色モード時には色空間圧縮処理を行なった場合生じる濃度低下を防止することが可能となる。」
と訂正する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像処理装置及び方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 対象画像を示す画像データを入力する入力手段と、
前記入力画像データに対して色空間圧縮処理を行う色空間圧縮手段と、
前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは白黒モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定手段と、
前記判定手段の結果、前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定手段の結果、白黒モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理による濃度低下を防止するために前記色空間圧縮処理をスルーにする制御手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】 更に、色再現処理を行う色再現処理手段を有し、
前記画像処理には前記色空間圧縮処理と前記色再現処理があることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】 前記色再現処理は、
前記複数色モードの時は画像形成手段の特性に基づいた色再現処理を行い、前記複数の記録材の各々に対応した画像データを生成し、
前記白黒モードの時は比視感度に相当する濃度データを生成することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】 更に、前記色空間圧縮手段は、前記対象画像の色分布を検出し、該色分布と画像形成手段の色再現範囲に基づいて色空間圧縮パラメータを生成する生成手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】 前記生成手段は前記対象画像のダークポイント及びハイライトポイントを検出することを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】 前記生成手段は前記対象画像のR、G、B、C、M、Yの各成分の最外色を検出することを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
【請求項7】 前記色再現処理は、画像形成手段の特性に基づき記録材の総量規制を行うことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項8】 前記色再現処理は下色処理を含むことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項9】 対象画像を示す画像データを入力する入力工程と、
前記入力画像データに対して色空間圧縮処理を行う色空間圧縮工程と、
前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは白黒モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定工程と、
前記判定工程において前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定工程において前記白黒モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理による濃度低下を防止するために前記色空間圧縮処理をスルーにする制御工程とを有することを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は色空間圧縮処理を行う画像処理装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、出力デバイスの色再現範囲外の画像データを含む入力画像データを出力デバイスの色再現範囲内で最適な画像データに変換する色空間圧縮技術が考えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来は設定されるモードにかかわらず色空間圧縮処理を行うため、各モードに適した処理ができない時があるという問題があった。
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、設定されたモードに応じて色空間圧縮処理を制御することにより、高画質の画像を得ることができる画像処理を行うことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の目的を達成するために、以下の構成を有する。
【0006】
本願第1の発明は、対象画像を示す画像データを入力する入力手段と、前記入力画像データに対して色空間圧縮処理を行う色空間圧縮手段と、前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは白黒モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定手段と、前記判定手段の結果、前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定手段の結果、白黒モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理による濃度低下を防止するために前記色空間圧縮処理をスルーにする制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】
本願第2の発明は、対象画像を示す画像データを入力する入力工程と、前記入力画像データに対して色空間圧縮処理を行う色空間圧縮工程と、前記入力画像データに対して複数の記録材を用いて記録媒体上に画像形成を行うべく画像処理を行う複数色モード、もしくは白黒モードのいずれのモードで画像処理を行うかを判定する判定工程と、前記判定工程において前記複数色モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理を行い、前記判定工程において前記白黒モードで画像処理を行うと判定された場合、前記色空間圧縮処理による濃度低下を防止するために前記色空間圧縮処理をスルーにする制御工程とを有することを特徴とする。
【0008】
【本発明の実施の形態】
(実施形態1)
図1に本実施形態に係る画像処理装置の構成を示す。
【0009】
スキャナー部10は原稿を走査して原稿を示すR、G、B成分で構成される色画像データを生成する。この色画像データはスキャナー部が有するCCDの分光特性に依存しているので、入力マスキング部20は色画像データを所定のRGB色空間(例えばNTSCRGB色空間)上の色画像データに変換する。色空間圧縮部30は入力マスキング処理が施された色画像データに、以下のマトリクス式に基づく色空間圧縮処理を行う。
【0010】
【外1】

ここでXはmin(R、G、B)である。
【0011】
これに対し、操作部100で白黒モード及び単色の記録材を用いて画像を形成するモードが設定された場合は、色空間圧縮処理をスルーにするとともに出力マスキング部のマトリクス係数を比視感度に基づく濃度データを生成するマトリクス係数に設定し、LOG変換された色画像データから濃度データを生成する。
【0012】
色空間圧縮が施された色画像データは、LOG変換部40でY、M、C成分で構成される色画像データに変換され、出力マスキング処理部50及びフィルター60で出力マスキング処理及びフィルター処理を行いプリンター70に出力され、Y、M、C、Kの記録材によって記録媒体上に画像が形成される。
【0013】
判定部71は入力マスキングが施された色画像データに対してエッジ検出及び彩度判定を行い、該画像データによって表される画素が文字部かイメージ部かを判定する。
【0014】
出力マスキング処理部50及びフィルター60の処理は判定部71の判定結果に基づき各画素の種別に応じた処理を行う。
【0015】
即ち、対象画素が黒文字である場合は、下色除去(UCR)量及び墨入れ(GCR)量を増加する出力マスキング処理を行うとともに、黒エッジ部のK成分のレベルを増加するエッジ強調を行うフィルター処理を行う。これらの処理によって黒文字を黒トナーを中心に記録でき色のにじみを抑制することができる。また、エッジ強調を行うので文字のエッジ部を鮮明にすることができる。
【0016】
これに対して、対象画素がイメージである場合は、階調性や色再現性が高くなるようなマスキング処理を行うとともに、印刷などの網点で形成される画像に対してはスムージング処理を含むフィルターを用いることによりモアレを抑制し高品質の画像再現を行うことができる。
【0017】
上述の各処理部はバス110を介して接続されているCPU70によって制御される。色空間圧縮係数、出力マスキング係数及びフィルター係数は操作部100の設定や原稿の画像信号分布及び色分布等に基づきCPU70が設定する。
【0018】
CPU70はROM80に格納されているプログラムに基づきRAM90をワークメモリとして用いて各処理部の制御及び各係数の演算設定を行う。
【0019】
まず、色空間圧縮処理について説明する。プリンター70はC、M、Y、Kの記録材の特性等に基づき再現することができる色範囲である色再現範囲が決まっている。プリンター70の色再現範囲は実在する全ての色を包含していないので、図3に示すように原稿に存在する色がプリンターの色再現範囲外に存在することがある。色空間圧縮処理は、この色再現範囲外の色を該色の色味に最も近い色再現範囲内の色に変換することにより、再現画像の色味が原稿の色味に近づくようにする。
【0020】
本実施形態における色空間圧縮は図3に示されるように原稿の色再現範囲外に存在するR(赤)、G(緑)、B(青)(二次色)及びC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)(一次色)及びK(ダーク)、W(ハイライト)の各成分に対応する最外色(高彩度部)を検出し、該8色成分がプリンター70の色再現範囲を示す8色成分に変換されるように圧縮する。
【0021】
式(1)における色空間圧縮係数設定方法を説明する。これは図2の本実施形態のシーケンスのS1〜S5に相当する。
【0022】
まず、原稿をプリスキャン(S1)し、得られた色画像データに基づき、CPUにより画像信号の大きさによりヒストグラム生成をする(S2)。ここで、まず下地レベル(ハイライト部W)を検出し、それぞれRW、GW、BW=(RGB)Wとして記憶される。次に色分布検出を行い、カラー出力部の色再現範囲を逸脱する色信号のうち最も彩度の高い色信号(最外色)を基本原色(R、G、B、C、M、Y)について検出する。そして検出された色分布は、それぞれの基本原色に対し、
(RGB)R、(RGB)G、(RGB)B、(RGB)C、(RGB)M、(RGB)Y=(RGB)LL=1〜6
の形で記憶される。さらに、ダークレベル検出を行う。例えば
R<RPDかつG<GPDかつB<EPD
のようにRGBいずれもがある一定値RPD、GPD、BPD以下を満たす信号のうち最小の信号をダークレベル(RGB)D(原稿のBk)として記憶する。ここでRPD、GPD、BPDは、本装置で色再現されるうち最も黒い色のRGB信号を表す(S3)。
【0023】
次にS4でマトリクス演算係数を求める。つまり、マトリクス演算(1)の式において、フロー405で検出した下地レベル(RGB)W、色分布(RGB)L、ダークレベル(RGB)Dのそれぞれ24個の値を変換前の値R、G、Bとする。また、これらの各値に対してプリンターで再現可能な最大レベルを予めターゲットとして記憶しておき、マトリクス演算(1)の変換後の値R′、G′、B′とすると、それぞれ24個の連立1次方程式ができる。こうしてこれらの式を解くことによりマトリクス係数を算出できる。
【0024】
色分布検出(S3)により検出された8種類、8*3=24個のRGB信号はいずれもこのまま出力すると、色再現範囲を逸脱していたり、下地がかぶっている画像信号である。このため、第3の実施例においてこれらの信号に所望のターゲットとなる色を対応付ける。
【0025】
例えば以下の説明は、一例として原稿の下地レベルが、R=240、G=240、B=235であった場合を例に説明する。なお、本来、白レベルはR′=255、G′=255、B′=255が理想値である。
【0026】
また、例えば赤の最外色がR=200、G=15、B=0という信号であったとする。しかし、通常ハードコピーの色再現範囲内で最も彩度の高い赤色はR′=160、G′=20、B′=10であるとする。
【0027】
上記のマトリクス変換の目的は、検出された最外色をハードコピーの色再現範囲にマッピングすることであるので、マトリクス変換によって上記RGB信号をR′、G′、B′にマトリクス変換すればよい。
【0028】
このような対応関係を、白レベル(1色)、色空間分布(YMCRGBの6色)、黒レベル(1色)、系8色全てについて設定すると24個の連立1次方程式ができる。未知数として、マトリクス係数aijがやはり24個あるので、一義的に解くことができてマトリクス係数が決定される。対応関係の一例を以下に示す。
【0029】
【外2】

以上の手順によって下地レベル、色空間圧縮、ダークレベルの全てに対し所望の変換が得られる。
【0030】
以上説明した様に本実施形態によれば、下地レベル(ハイライト部)補正、ダークレベル補正を含む色空間圧縮処理がマトリクス変換により一括して実現でき、各補正がそれぞれの補正に障害を与えることなく、良好な画像を出力することが可能となる。
【0031】
また、マトリクス演算を用いて色空間圧縮処理を行っているので、色再現範囲外の階調及び色の連続性を失うことなく、色再現範囲内に変換することができる。
【0032】
なお、上述の方法によって設定された色空間圧縮係数を用いて本スキャン(S5)されて得られた色画像データに対して色空間圧縮処理等を行い画像形成する(S6)。
【0033】
LOG変換部40は色空間圧縮部から出力された輝度信号であるR、G、B成分で構成される色画像データを濃度信号であるY、M、C成分で構成される色画像データに以下の式を用いて変換する。
【0034】
C=255/Dmax×Log10(R/255)
M=255/Dmax×Log10(G/255)
Y=255/Dmax×Log10(B/255)(2)
この式(2)で示されるLOG変換処理では原稿濃度を忠実に再現すべくDmaxに相当する色画像データを255(8ビットの最大値)に変換する。
【0035】
よって、色空間圧縮処理を行わない色画像データは、Dmax以下の濃度を有する原稿中の色(即ち、色再現範囲内の色)を忠実に再現する色画像データに変換することができる。しかしながら、図4(a)に示すようにDmax以上の濃度を有する原稿中の色は階調がつぶれてしまう。
【0036】
これに対して、色空間圧縮を行った場合は、図4(B)に示す様に原稿の最大濃度を示す色画像データはDmaxを示す色画像データに変換されるので高濃度部の階調を保持して再現することができる。
【0037】
出力マスキング処理部50は、プリンター部70で用いるY、M、C、Kの記録材の特性等に基づき、Y、M、C成分で構成される色画像データをY、M、C、K成分で構成される色画像データに変換する。
【0038】
一般に、プリンター部70は記録媒体の性質やプロセス条件から良好に画像形成を行うことができる記録材の総量の限界がある。したがって、プリンターを正常に動作させ、形成画像の品質を保持するために記録材の総量規制を行う必要がある。
【0039】
そこで、本実施例では、出力マスキング部50におけるマスキング係数とUCR量及びGCR量に係る係数によって記録材の総量規制を行っている。
【0040】
この様に、出力マスキング部50におけるマスキング係数とUCR量及びGCR量に係る係数は、記録材の特性等に依存する色再現と記録材の総量規制とに基づき設定される。
【0041】
したがって、出力マスキング部50における処理結果は図5に示されるように、入力濃度と出力濃度を示す図においてK成分の値、およびY、M、C成分の値がゆるやかな曲線で示される。
【0042】
図5に示す関係より該マスキング処理の結果、複数色モード時は色空間圧縮後の濃度値より濃度が高くなる傾向にある。
【0043】
これに対して、単色モード時は上述した様に出力マスキング処理部50において濃度信号であるCMYデータから比視感度に相当する濃度データを生成すべくマトリクス演算を行うにすぎないので、マスキング処理及びUCR・GCR処理は行われません。よって単色モード時は入力色画像データが有する濃度が忠実にコピーされる出力濃度に反映される。
【0044】
したがって、本実施形態では複数の記録材を用いて画像形成を行う複数色モード時は、原稿の色分布に基づき設定された色空間圧縮係数を用いて色空間圧縮を行うことにより、図4(B)に示されるように高濃度部の階調が良好に再現されるように色空間圧縮処理を行う。
【0045】
一方、単色モード時は色空間圧縮処理による濃度低下を防止するために、色空間圧縮処理をスルーにする。
【0046】
なお、該色空間圧縮の処理はCPU70によって制御されます。CPU70は操作部100によって白黒モード及び単色モードが設定されたか否かに基づき、色空間圧縮処理を行うか否かを自動的に制御する。
【0047】
なお、色空間圧縮処理は色の連続性を保つために原稿全体に対して同一の色空間圧縮係数を用いて行う。
【0048】
これに対して、判定部71は画素ごとに種別を判定し、出力マスキング及びフィルターを設定する。
【0049】
したがって、高濃度部及び黒文字部を有する原稿に対して色空間圧縮処理、出力マスキング処理及びフィルター処理を行う場合、色空間圧縮処理は全体に施されるので黒文字部の濃度を低下させてしまうが、出力マスキング処理及びフィルター処理が黒文字部用の処理が設定されるため、黒文字部の濃度は保存され、エッジは強調される。よって高濃度の階調は色空間圧縮処理によって良好に再現されるとともに、マスキング処理及びフィルター処理によって黒文字部も鮮明でエッジが強調され良好に再現される。
【0050】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、色空間圧縮方法として図3に示す方法を用いたが、例えば(a)入力画像データの色相を保存して彩度、明度を変化させることにより色再現範囲内に入力画像データを色空間圧縮する色空間圧縮方法でも構わない。
【0051】
また、上述の実施形態では一頁全体に対して色空間圧縮するか否かを制御していたが、例えば一頁の画像の中に、イメージ領域、CG領域、文字領域等の特性が異なる領域が含まれる場合は各領域ごとに色空間圧縮を行うか否かを設定できるようにしても構わない。
【0052】
また、上述の実施形態1では複数色モードでは色空間圧縮を行い、単色モードでは色空間圧縮をスルーにするように制御していたが、例えば、複数色モードでは実施形態1と同様に色空間圧縮を行い、単色モードではダークポイントのターゲットに対してリミッタをかけないように制御しても構わない。
【0053】
また、上述の実施形態1では、色空間圧縮処理係数を原稿の色分布に基づき自動的に設定していたが、例えば、ユーザがマニュアルで微調整できるようにしても構わない。即ち、各色ごとに色空間圧縮の度合いをユーザが微調整し、該微調整結果に基づきターゲットを変換させることにより色空間圧縮係数にユーザの調整結果が反映させるようにしても構わない。
【0054】
また、上述の実施形態1では色再現処理としてマスキング処理を用いたが、例えばテーブルを用いてダイレクトマッピング処理はどの他の色再現処理でも構わない。
【0055】
本発明は複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェイス機器、プリンタ、リーダなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。
【0056】
また、本発明を達成するソフトウェアのプログラムを記録した記録媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置が記録媒体に格納されたプログラムを読出し実行することによって、本発明が達成される場合にも適用できることは言うまでもない。プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1、9の発明によれば、複数色モード時には色空間圧縮処理を行い高画質の画像を得ることが可能となり、単色モード時には色空間圧縮処理を行った場合生じる濃度低下を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施形態にかかる画像処理装置の構成を示すブロック図。
【図2】
色空間圧縮処理の流れの1例を示すフローチャート。
【図3】
色再現範囲を説明する図。
【図4】
色空間圧縮処理の結果を示す図。
【図5】
下色処理(UCR及びGCR)の結果を示す図。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-03-23 
出願番号 特願平7-327206
審決分類 P 1 652・ 121- YA (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松永 稔  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 江頭 信彦
関川 正志
登録日 2002-11-29 
登録番号 特許第3376194号(P3376194)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 画像処理装置及び方法  
代理人 内尾 裕一  
代理人 森島 なるみ  
代理人 西山 恵三  
代理人 内尾 裕一  
代理人 西山 恵三  

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