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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 D03D |
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管理番号 | 1098143 |
異議申立番号 | 異議2001-73570 |
総通号数 | 55 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-11-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-12-28 |
確定日 | 2004-04-28 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第3207156号「ジャガード織多重ガーゼ織物」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3207156号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
第1 手続の経緯 (1)特許出願: 平成10年5月14日 (2)設定登録: 平成13年7月6日(請求項の数4) (3)特許異議の申立: 丸孝織布株式会社 外2名(全請求項に対して) (4)特許異議の申立: 日本綿スフ織物工業組合連合会(全請求項に対して) (5)取消理由通知1: 平成14年7月31日付け (6)特許異議意見書1: 平成14年10月8日付け (7)訂正請求1: 平成14年10月8日付け (8)審尋(権利者に対して): 平成15年3月18日付け (9)回答書(権利者): 平成15年6月2日付け (10)訂正請求1に対する訂正拒絶理由通知を兼ねた取消理由通知2: 平成15年9月2日付け (11)特許異議意見書2: 平成15年11月11日付け (12)訂正請求1について訂正請求取下: 平成15年11月11日 (13)訂正請求2: 平成15年11月11日付け (14)訂正請求2に対する訂正拒絶理由通知1: 平成15年12月12日付け (15)訂正意見書1: 平成16年2月23日付け 第2 訂正の適否 1.訂正拒絶理由通知1の概要 訂正請求2による明細書及び図面の訂正に対する訂正拒絶理由通知1の概要は以下のとおりである。 (1-1)訂正の内容 訂正請求2は、以下の訂正事項a、b、d〜h、kを含むものである。 (1)訂正事項a: 特許請求の範囲の請求項1について、 「第1平面と該第1平面と略平行な第2平面を含む複数の平面が延長する空間内における複数の緯糸と複数の縦糸が交錯するジャガード織多重ガーゼ織物において、前記複数の緯糸は複数組の色糸を含み前記複数の平面間を任意に出没するようにして互いに略平行に配列され、前記複数の縦糸は複数組の色糸を含み、各縦糸は前記複数の平面のうちの一つの平面内で前記複数の緯糸と交錯した後に他の平面内で前記複数の緯糸を交錯することを特徴とするジャガード織多重ガーゼ織物。」とあるを、 「複数色の甘よりの綿糸を用いて縦緯の密度を甘く織った多重ガーゼ織物において、 第1平面上に位置する第1色のガーゼ面と、この第1平面と略平行な第2平面上に位置する第2色のガーゼ面とを含む複数の平面上に位置する複数色のガーゼ面から構成され、前記複数のガーゼ面は甘よりの綿糸からなる複数本の緯糸と複数本の縦糸とで縦緯の密度が甘く織られた平織りであり、ジャガード織によって上下に平面上の位置が入れ替わって多色の柄を形成することを特徴とするジャガード織多重ガーゼ織物。」と訂正する。 (2)訂正事項b: 特許請求の範囲の請求項3について、 「前記複数の縦糸は各々同じ色の複数の緯糸と交錯することを特徴とする請求項2に記載のジャガード織多重ガーゼ織物。」とあるを、 「前記ガーゼ面を織り成す複数本の緯糸と複数本の縦糸とは同じ色であることを特徴とする請求項1に記載のジャガード織多重ガーゼ織物。」と訂正する。 (3)訂正事項d: 段落0004について、 「上述したように、本発明の目的とするところは三重ガーゼでジャガード織を行って製造した多色感のあるジャガード織多色ガーゼ織物を提供することにある。」とあるを、 「上述したように、本発明の目的とするところはジャガード織でガーゼ織物に柄を表現し、多色感のあるジャガード織多重ガーゼ織物を提供することにある。ここで、ガーゼとは縦糸、緯糸とも甘よりの綿糸を用いて甘く織った薄手の平織物であり、このガーゼを多重に織り上げた物を多重ガーゼ織物、多重ガーゼ織物の各ガーゼの一重組織をガーゼ面と呼ぶ事とする。」と訂正する。 (4)訂正事項e: 段落0005について、 「【課題を解決するための手段】 上述の目的を達成するために本発明のジャガード織多重ガーゼ織物は、その手段として、第1平面と該第1平面と略平行な第2平面を含む複数の平面が延長する空間内における複数の緯糸と複数の縦糸が交錯するジャガード織多重ガーゼ織物において、前記複数の緯糸は複数組の色糸を含み前記複数の平面間を任意に出没するように互いに略平行に配列され、前記複数の縦糸は複数組の色糸を含み、各縦糸は前記複数の平面のうちの一つの平面内で前記複数の緯糸と交錯した後に他の平面内で前記複数の緯糸と交錯することを要旨としている。」とあるを、 「【課題を解決するための手段】 上述の目的を達成するために本発明のガーゼ織物は、その手段として、複数色の甘よりの綿糸を用いて縦緯の密度を甘く織った多重ガーゼ織物において、第1平面上に位置する第1色のガーゼ面と、この第1平面と略平行な第2平面上に位置する第2色のガーゼ面とを含む複数の平面上に位置する複数色のガーゼ面から構成され、前記複数のガーゼ面は甘よりの綿糸からなる複数本の緯糸と複数本の縦糸とで縦緯の密度が甘く織られた平織りであり、ジャガード織によって上下に平面上の位置が入れ替わって多色の柄を形成することを要旨としている。」と訂正する。 (5)訂正事項f: 段落0016について、 「例えば、図3において、縦糸1Aと緯糸1(イ)の関係においては1Aと1(イ)の座標において黒丸が記されているが、これは縦糸1Aが緯糸1(イ)の上に位置することを示している。同様に同じ縦糸1Aの緯糸2(イ)に対する関係はその座標に白丸が記されているが、これは縦糸1Aが緯糸2(イ)の上に位置することを示している。同様に縦糸1 Aの緯糸3(イ)に対する関係ではその座標において、白丸が記されているがこれは縦糸1Aが緯糸3(イ)の上に位置することを示すものである。」とあるを、 「例えば、図3において、縦糸1Aと緯糸1(イ)の関係においては1Aと1(イ)の座標において黒丸が記されているが、これは縦糸1Aが緯糸1(イ)の上に交錯して接して位置することを示している。同様に同じ縦糸1Aの緯糸2(イ)に対する関係はその座標に白丸が記されているが、これは縦糸1Aが接せずに緯糸2(イ)の上に位置することを示している。同様に縦糸1Aの緯糸3(イ)に対する関係ではその座標において、白丸が記されているがこれは縦糸1Aが接せずに緯糸3(イ)の上に位置することを示すものである。」と訂正する。 (6)訂正事項g: 段落0017について、 「また、縦糸2Aの緯糸1(イ)に対する関係においては、その座標は空白である。これは縦糸2Aは緯糸1(イ)の下に位置することを示している。これに対して、縦糸2Aの緯糸2(イ)に対する関係においては、その座標は黒丸で記されている。これは、縦糸2Aは緯糸2(イ)の上に位置することを示している。また、縦糸2Aの緯糸3(イ)に対する関係においては、両者の座標は白丸で記されているが、これは縦糸2Aは緯糸3(イ)の上に位置することを示している。」とあるを、 「また、縦糸2Aの緯糸1(イ)に対する関係においては、その座標は空白である。これは縦糸2Aは接せずに緯糸1(イ)の下に位置することを示している。これに対して、縦糸2Aの緯糸2(イ)に対する関係においては、その座標は黒丸で記されている。これは、縦糸2Aは緯糸2(イ)の上に交錯して接して位置することを示している。また、縦糸2Aの緯糸3(イ)に対する関係においては、両者の座標は白丸で記されているが、これは縦糸2Aは接せずに緯糸3(イ)の上に位置することを示している。」と訂正する。 (7)訂正事項h: 段落0018について、 「また、縦糸3Aの緯糸1(イ)に対する関係においては、その座標は空白である。これは、縦糸3Aは緯糸1(イ)の下に位置することを示している。また前記縦糸3Aの緯糸2(イ)に対する関係でも、その座標は同様に空白であり、縦糸3Aは緯糸2(イ)の下に位置することを示している。これに対して、縦糸3Aは緯糸3(イ)との座標は黒丸で記されているので縦糸3Aは緯糸3(イ)の上に位置することを示している。」とあるを、 「また、縦糸3Aの緯糸1(イ)に対する関係においては、その座標は空白である。これは、縦糸3Aは接せずに緯糸1(イ)の下に位置することを示している。また前記縦糸3Aの緯糸2(イ)に対する関係でも、その座標は同様に空白であり、縦糸3Aは接せずに緯糸2(イ)の下に位置することを示している。これに対して、縦糸3Aは緯糸3(イ)との座標は黒丸で記されているので縦糸3Aは緯糸3(イ)の上に交錯して接して位置することを示している。」と訂正する。 (8)訂正事項k: 段落0024について、 「また、3つの平面内で縦糸と緯糸を交錯させたので3色による柄の織物が現出することとなり多色感が得られる効果がある。また同じ色の縦糸と緯糸を交錯させたので色が鮮明に織り出させる効果がある。また、各縦糸に対して2本の緯糸が上下から交錯するので織り込みが強固になり、ハンカチとしての使い勝手が改善される効果がある。」とあるを、 「また、3つの平面内で縦糸と緯糸を交錯させたので3色による柄の織物が現出されることとなり多色感が得られる効果がある。また同じ色の縦糸と緯糸を交錯させたので色が鮮明に織り出させる効果がある。さらに多重織なので、複数のガーゼ面間に空間を含んでおり、これによって、吸水性、保水性、柔軟性に優れた織物となるが、各緯糸に対して2本の縦糸が上下から交錯するので織り込みは強固であり、ハンカチとしての使い勝手が改善される効果がある。」と訂正する。 (1-2)当審の判断 (1)訂正事項aについて 訂正事項aにより訂正後の請求項1に係る発明は、以下の理由(1-1)〜(1-3)により、明確でない。 (1-1)「複数色の甘よりの綿糸を用いて縦緯の密度を甘く織った多重ガーゼ織物」が意味不明である。 特に、「(甘よりの綿糸を用いて)縦緯の密度を甘く織った」の意味内容が不明である。 この点、例えば、服装文化協会編「増補版 服装大百科事典(上)」(文化出版局、昭和56年4月10日増補版第三刷発行)第137ページに、「ガーゼ gauze 経緯糸ともに甘撚の糸を用いて粗く織ったきわめて薄手の平織物。本来は綿または絹の薄い紗織の織物である。経緯糸ともに、綿30〜42番手単糸で、密度12〜16本/cm、織物幅30〜100cm、織物長1反36〜39mのものが普通である。」と記載されているように、「ガーゼ」を規定するために「粗く織った」という概念が用いられることはあるものの、「甘く織った」という特定がいかなる状態を意味するのかは、当業者に自明のものではないから、結局、「複数色の甘よりの綿糸を用いて縦緯の密度を甘く織った多重ガーゼ織物」が何を特定しようとしているのか不明である。 (1-2)同様に、「(前記複数のガーゼ面は)甘よりの綿糸からなる複数本の緯糸と複数本の縦糸とで縦緯の密度が甘く織られた平織り」も意味不明である。 (1-3)「前記複数のガーゼ面は…、ジャガード織によって上下に平面上の位置が入れ替わって多色の柄を形成する」が意味不明である。 すなわち、「前記複数のガーゼ面」は「第1色のガーゼ面」及び「第2色のガーゼ面」を含むものと認められるが、「第1色のガーゼ面」と「第2色のガーゼ面」、すなわち、面と面とが入れ替わるという記載の意味が明りょうでない。 なお、本件明細書において、上下に「入れ替わ」ることに関しては、訂正後の段落0011に「例えば表面に配列されている4本からなる一組の緯糸…が途中から中間面あるいは裏面へという具合に複数の平面の間を任意に他の緯糸の組と入れ替わって出没する」と、同じく段落0020に「前記複数の緯糸…はそれぞれ異なった色の複数組(ここでは3組)の色糸であり、表面、中間面、裏面の各平面間を相互に入れ替わるように任意に出没して移動する」と、また同じく段落0021に「本発明においては表面、中間面、裏面という具合に3つの平面内で縦糸と緯糸を交錯させているが、この数に限定されることなく複数の平面にわたり複数組の緯糸が出没するのであればよい。」と記載されており、これらはいずれも、糸が、「平面の間」又は「各平面間」を入れ替わるものであり、「ガーゼ面」と「ガーゼ面」が入れ替わることがいかなる技術的内容を意味するのかは不明である。 したがって、訂正事項aによる訂正後の請求項1に係る発明は、明確でないから、訂正事項aは、請求項1に係る発明を、それ自体明確でないものに訂正しようとするものであり、特許法第120条の4第2項各号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。 (2)訂正事項bについて 訂正事項bによる訂正後の請求項3は、請求項1を引用するものであるが、訂正前の請求項3は、請求項1を引用する請求項2を更に引用するものである。 引用する請求項を変更する訂正事項bは、特許法第120条の4第2項各号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。 (3)訂正事項dについて 訂正事項dは、ガーゼの定義を加入しようとするものであり、「ガーゼとは縦糸、緯糸とも甘よりの綿糸を用いて甘く織った薄手の平織物」であるとするが、「甘く織った」の意味内容は明確でないから、ガーゼの定義が不明である。 したがって、訂正事項dは、それ自体明確でない定義を追加しようとするものであるから、特許法第120条の4第2項各号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。 (4)訂正事項eについて 訂正事項eは、請求項1の訂正に伴い、訂正後の請求項1と同様に、複数のガーゼ面が「上下に平面上の位置が入れ替わ」るという事項を加入しようとするものであるが、意味が不明である。 したがって、訂正事項eは、それ自体明確でない事項を追加しようとするものであるから、特許法第120条の4第2項各号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。 (5)訂正事項fについて 訂正事項fは、図3について、黒丸(●)が、縦糸が緯糸の上に交錯して「接して」位置することを示すものであり、白丸(○)が、縦糸が「接せずに」緯糸の上に位置することを示すものであるという糸の位置関係の態様に関する事項を加入しようとするものである。 しかしながら、黒丸と白丸が「接して」又は「接せずに」という特定の態様を意味するものであることは、訂正前の明細書又は図面に記載がなく、またその記載から自明のものと認めることもできないから、これらを加入しようとする訂正事項fは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第120条の4第3項の規定により準用する同法第126条第2項の規定に違反するものである。 (なお、訂正拒絶理由通知1に記載した、「特許法第120条の4第2項の規定により準用する」は、後掲「(1-3)むすび」にも記載のとおりの「特許法第120条の4第3項の規定により準用する」の明らかな誤記であるから、この概要においては訂正した。) (6)訂正事項gについて 訂正事項gは、訂正事項fと同様に、図3について、黒丸、白丸が意味する態様に加えて、空白が、縦糸が「接せずに」緯糸1の下に位置することを示すものであるという糸の位置関係の態様に関する事項を加入しようとするものであるから、(5)で述べたと同様の理由により、訂正事項gは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第120条の4第3項の規定により準用する同法第126条第2項の規定に違反するものである。 (なお、訂正拒絶理由通知1に記載した、「特許法第120条の4第2項の規定により準用する」は、(5)について述べたように「特許法第120条の4第3項の規定により準用する」の明らかな誤記である。) (7)訂正事項hについて 訂正事項hは、訂正事項f、gと同様に、図3について、黒丸及び空白が意味する糸の位置関係の態様に関する事項を加入しようとするものであるから、(5)(6)で述べたと同様の理由により、訂正事項hは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第120条の4第3項の規定により準用する同法第126条第2項の規定に違反するものである。 (なお、訂正拒絶理由通知1に記載した、「特許法第120条の4第2項の規定により準用する」は、(5)について述べたように「特許法第120条の4第3項の規定により準用する」の明らかな誤記である。) (8)訂正事項kについて 訂正事項kは、発明の効果について、「さらに多重織なので、複数のガーゼ面間に空間を含んでおり、これによって、吸水性、保水性、柔軟性に優れた織物となる」という効果を加入しようとするものであるが、この効果は、訂正前の明細書又は図面に記載がなく、またその記載から当業者に自明のものでもないから、訂正事項kは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第120条の4第3項の規定により準用する同法第126条第2項の規定に違反するものである。 (なお、訂正拒絶理由通知1に記載した、「特許法第120条の4第2項の規定により準用する」は、(5)について述べたように「特許法第120条の4第3項の規定により準用する」の明らかな誤記である。) (1-3)むすび 訂正請求2は、特許法第120条の4第2項ただし書きの規定及び同条第3項の規定により準用する同法第126条第2項の規定を充足するものではないから、訂正請求2は、認めない。 2.訂正意見書1における特許権者の主張についての検討 特許権者は、訂正意見書1において、訂正拒絶理由通知1で指摘した事項について実質的な反論を行っていない。 したがって、訂正意見書1をみても、先の訂正拒絶理由通知1を撤回すべき理由を発見しない。 3.訂正請求2についてのまとめ 先に通知した訂正拒絶理由は妥当なものであるから、訂正請求2は認めない。 第3 取消理由通知2についての検討 1.本件発明 第2で述べたとおり、訂正請求2は認められないものであるから、本件特許第3207156号の請求項1〜4に係る発明は、それぞれ特許権の設定の登録時の特許請求の範囲請求項1〜4に記載された以下の事項を発明を特定するための事項として有するものであると認める。 【請求項1】 第1平面と該第1平面と略平行な第2平面を含む複数の平面が延長する空間内における複数の緯糸と複数の縦糸が交錯するジャガード織多重ガーゼ織物において、前記複数の緯糸は複数組の色糸を含み前記複数の平面間を任意に出没するようにして互いに略平行に配列され、前記複数の縦糸は複数組の色糸を含み、各縦糸は前記複数の平面のうちの一つの平面内で前記複数の緯糸と交錯した後に他の平面内で前記複数の緯糸を交錯することを特徴とするジャガード織多重ガーゼ織物。 【請求項2】 前記複数の平面はさらに第3平面を含むことを特徴とする請求項1に記載のジャガード織多重ガーゼ織物。 【請求項3】 前記複数の縦糸は各々同じ色の複数の緯糸と交錯することを特徴とする請求項2に記載のジャガード織多重ガーゼ織物。 【請求項4】 各縦糸に対して2本の縦糸が上下から交錯することを特徴とする請求項1に記載のジャガード織多重ガーゼ織物。 2.取消理由通知2の概要 (2-1)特許法第36条6項2号違反について (2-1-1)請求項1に係る発明について 以下の理由により、請求項1の記載では、特許を受けようとする発明が明確でない。 (ア)「ガーゼ織物」が何かが不明である。 この点、JIS L0206(繊維用語(織物部門))では、「ガーゼ(gauze)」を「甘よりの糸で平織に織り、さらした後、無のり仕上げをしたもの(衛生材料又ははだ着など)」と定義するが、請求項1に係る発明における「ガーゼ織物」につき、該JISで定義されるガーゼとの異同を含め、明細書又は図面の記載における根拠を明示しつつ釈明を求める。 (イ)「複数の平面が延長する空間内における複数の緯糸と複数の縦糸が交錯」が意味不明である。 特に「複数の平面が延長する空間」は、いかなる「空間」を意味するのか文言としても不明である。 また、「複数の緯糸と複数の縦糸が交錯」が、縦糸と緯糸のいかなる存在態様を指しているのか、技術的意味内容が不明りょうである。 (ウ)「(複数の緯糸は)複数組の色糸を含み」が意味不明である。特に、「組」とは何を指しているものなのか? (エ)「複数の平面間を任意に出没」が意味不明である。 「複数の緯糸」が具体的にいかなる態様で、「複数の平面間」を「出没」するのか? (オ)「互いに略平行に配列」が意味不明である。 主語である「複数の緯糸」がいかなる意味で「略平行」なのか? (カ)「(複数の縦糸は)複数組の色糸を含み」が意味不明である。特に、「組」とは何を指しているものなのか? (キ)「(一つの)平面内で前記複数の緯糸と交錯」が意味不明である。 (ク)「(一つの平面内で)前記複数の緯糸と交錯した後に他の平面内で前記複数の緯糸を交錯する」が意味不明である。この記載部分に、「前記複数の緯糸」が重複して現れるが、両者の異同などの関係はどうか? (2-1-2)請求項2、3に係る発明について (ケ)請求項2、3は直接又は間接に請求項1を引用しているから、(2-1-1)に述べたと同様の理由で、特許を受けようとする発明が明確でない。 (2-1-3)請求項4に係る発明について (コ)請求項4は請求項1を引用しているから、(2-1-1)に述べたと同様の理由で、特許を受けようとする発明が明確でない。 (サ)「各縦糸に対して2本の縦糸が上下から交錯」が意味不明である。特に、「上下から交錯」がいかなる態様を意味するのかが明りょうでない。 (2-2)特許法第36条第6項第1号違反について (シ)請求項4に係る発明について 発明の詳細な説明には、請求項4に記載された事項である「各縦糸に対して2本の縦糸が上下から交錯」した織物についての記載がない。 したがって、「各縦糸に対して2本の縦糸が上下から交錯」することを発明を特定するための事項として備える請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 (2-3)まとめ 本件特許第3207156号の請求項1〜4に係る特許は、特許法第113条第4項の規定に該当するから、これを取り消すべきものである。 3.特許異議意見書2における特許権者の主張についての検討 特許権者は、特許異議意見書2において、取消理由通知2で指摘した取消理由(ア)〜(シ)について、実質的な反論を行っていない。 したがって、特許異議意見書2をみても、先の取消理由通知2を撤回すべき理由を発見しない。 4.まとめ 先の取消理由通知2で指摘した取消理由(ア)〜(シ)はいずれも妥当なものと認められるから、本件特許第3207156号は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対して、特許がされたものである。 第4 むすび 本件特許第3207156号の請求項1〜4に係る特許は、特許法第113条第4号の規定に該当するものであるから、取り消されるべきものである。 |
異議決定日 | 2004-03-11 |
出願番号 | 特願平10-131774 |
審決分類 |
P
1
651・
537-
ZB
(D03D)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 菊地 則義 |
特許庁審判長 |
鈴木 由紀夫 |
特許庁審判官 |
石井 克彦 野村 康秀 |
登録日 | 2001-07-06 |
登録番号 | 特許第3207156号(P3207156) |
権利者 | 有限会社上脇タオル工芸社 株式会社新藤 |
発明の名称 | ジャガード織多重ガーゼ織物 |
代理人 | 尾崎 隆弘 |
代理人 | 尾崎 隆弘 |
代理人 | 橘 哲男 |
代理人 | 橘 哲男 |
代理人 | 尾崎 隆弘 |
代理人 | 羽生 義雄 |