• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) E02B
管理番号 1098856
審判番号 無効2002-35331  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-04-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-08-06 
確定日 2004-06-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第2840061号発明「生態系保護用自然石金網」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2840061号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 【1】手続の経緯
(1)本件特許第2840061号は、平成5年9月17日に特許出願された特願平5-231591号(以下、「原々出願」という。)を、平成8年5月22日に実用新案登録出願(実願平8-4437号)に出願変更し、さらに、同年7月24日に特許出願に出願変更したものであって、平成10年10月16日に特許の設定登録がなされた。

(2)請求人は、平成14年8月6日付けで本件無効審判の請求をし、次の無効理由1〜4により本件特許を無効とすべきものである旨の主張をし、証拠として甲第1〜15号証を提出した。
<無効理由1>
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、甲第2号証記載の発明、及び、甲第3〜7号証に記載されたような公知又は周知の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
<無効理由2>
本件特許は、その審査段階でなされた明細書の補正が、本件出願の当初明細書又は図面(甲第12号証)に記載されていない新規事項を含むものであるから、出願日の遡及が認められないものであり、本件の出願変更の日が本件特許の現実の出願日である。したがって、本件発明は、その現実の出願日前に頒布された甲第14号証(原々出願の公開公報である特開平7-82720号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
<無効理由3>
本件特許は、その審査段階でなされた明細書の補正が、本件出願の当初明細書又は図面(甲第12号証)に記載されていない新規事項を含むものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、特許法第123条第1項第1号の規定により無効とすべきものである。
<無効理由4>
本件特許は、明細書の記載が特許法第36条第4〜6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。

(3)被請求人は、平成14年10月28日付けで答弁書を提出し、上記無効理由1〜4にはいずれも理由がない旨の主張をし、証拠として、乙1〜13号証を提出した。

(4)請求人は、平成15年1月8日付けで弁駁書を提出し、補充の証拠として、甲第16号証を提出した。

(5)請求人は、同年2月5日付けで上申書を提出し、本件特許に基づき、被請求人が東京地方裁判所に提起した訴訟事件である、平成13年(ワ)第26513号「特許権侵害差止等請求事件」の判決(平成15年1月30日判決言渡)の写しを提出した。

(6)被請求人は、同年2月24日付けで上申書を提出し、補充の証拠として、乙第14,15号証を提出した。

【2】無効理由1についての検討
(1)本件発明
本件発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「吸い出し防止用シートの上面に重合した金網又はメッシュ上に複数の自然石を敷き並べるとともに、同各自然石の下部に接着材を層着し、同接着材を介して前記自然石と金網又はメッシュと吸い出し防止用シートを一体成形してなることを特徴とする生態系保護用自然石金網。」

(2)甲第2号証記載の発明
原々出願の出願日前に頒布された甲第2号証(実公昭51-9135号公報)には、次の(A)〜(M)の記載がある。(なお、現在通常、小文字で表記される文字については、小文字に置き換えた。)
(A)「本考案は地表の侵食を防止又は制御、特に水流による海岸の堤防、河川及び排水路等の床、斜面又は堤防等の侵食を防止し或いは鉄道、道路、造成地等における法面を保護する覆工マット材に関するものである。」(2欄5〜9行)
(B)「従来種々の機械的……方法により地表の侵食を防止する試みが多数行なわれている。これらの……方法の中には……剛性又は可撓性コンクリート擁壁を使用すること、捨石を使用すること、荒石を使用すること等がある。」(2欄10〜19行)
(C)「これらの方法の何れも満足なものではない。……。荒目麻布等の代りにナイロンシートを使用した場合も同様に下側に水が流れるが水流がさほどでもない場合には捨石を載せることだけでも相当な効果が得られる。然しこの場合にもナイロンシートの下側に水が相当流れることは避けられず、またナイロンシートが石の鋭い端部に耐え得るだけの強度を持たず裂け易い。
普通粒度別に分けたフィルタ構造の割栗石および荒石は簡単に何処でも入手できない欠点があり固定し難く、維持費が高く、必ずしも地表を保護するものではない。」(2欄20〜35行)
(D)「本考案は液体透過性で土壌粒子を通さない程度のメッシュをもち地表表面形状に一致するような可撓性支持シートと、上下方向に少なくとも一つの貫通孔をもつた多数のブロックとを具備し、前記支持シート上に前記ブロックを互に近接して略々衝合するよう隣り合せてシートの少なくとも2辺の縁沿い部分に若干の余白を残して並列配置し、之等のブロックの各々を前記支持シートに接着剤により固定し、之により液体が前記支持シート及びブロックを通って通過できるようにし、前記支持シートはその両端又は片端を把持して吊下したとき支持するブロックの重量により破断されない程度の十分な強度を有し、各ブロックはその側面部の何れの部分に於ても隣接するブロックの如何なる部分とも掛合せず各ブロックが支持シートのわん曲によって隣接するブロックに対し相対的に多少変位し得るように構成した地表侵食防止用覆工マット材を提供しようとするものである。」(4欄4〜21行)
(E)「第1図および第2図に示す本考案の1実施例においては、10は支持シートを示し、この例では網を示す。この支持シート10上に隣り合って略々衝合せ配置に多数のブロックBを重ねる」(4欄25〜28行)
(F)「各覆工マット材の各ブロックは接着剤でその支持シートに固定する。第3図は接着剤による固定方法の例を示す。ブロックBの底面と支持シート10間に介挿した接着剤33によりブロックBを支持シート10に固定する。接着剤33は第3図に示す如く離間位置に、または図示しないが各ブロックBの底部に一面に介挿する。」(6欄1〜7行)
(G)「これまで支持シート10を網として記してきたが、支持シートは……液体透過性の任意の他のシートの如き任意所要の物質で製造できる。例えば、支持シートは金属スクリーン、金属網、膨張金属網目、プラスチックスの網又はスクリーン、或いは天然繊維又は合成繊維から織成し又は網状としたシート又は任意の同様種類のシートから製造できる。シートは液体透過性である限り、織成せずに単にフェルト化した繊維のシートでも良い。ナイロン……等の合成繊維のネット又はスクリーンは強度、取扱容易性および耐劣化性のため特に望ましい物質である。
支持シートはブロックを支持するだけでなく、フィルタとしての機能をも兼ね備えるものである例えば第1〜3図に示す例において、支持シート10の水透過性網目は液体の通過を許すが土壌粒子の通過を殆んど防止する寸法とすることができ本考案でフィルタ又はフィルタシートと称するは液体を通すが土壌粒子を殆んど通さない部材を意味する。従って支持シート10が、かかるシートをフィルタシートとして構成する網目を有する場合、地表から覆工マット材を通って上方に流れる水は土壌粒子を同伴しない。明らかにこのことは覆工マット材下方の地域に下側流水の原因である土壌欠如が生じないように防止する。」(7欄8〜34行)
(H)「ブロックは例えば型枠成形した又は流し込み成形したコンクリート、煉瓦の如き任意所要の物質から製造でき……堤防、水路および運河の擁壁および流れの床の如く表面水が激しい運動をする所では、ブロックを例えばコンクリートの如き高密度物質で製造し、覆工マット材の流れの運動に対抗して保持するようなブロック重量とすることが好ましい。」(7欄42行〜8欄11行)
(I)「既に説明した如くブロックの周縁部は、ブロックが互に近接して略々衝合してもなお隣接ブロック間に縦方向溝孔が設けられ、ブロックのマットを通し液体を通過するようになっている。
縦方向溝孔の大きさと数は覆工マット材が処理すべき水の容量に応じ決定すべきこと勿論でありまた多くの場所では中央貫通孔12を設けることは絶対必要であるが、その他の側面溝孔14、隅角溝孔16をブロック体の周縁部に設けることは必ずしも必要でない。」(10欄24〜33行)
(J)「これまでの実施例では支持シートを一枚のシートとして示した。しかし支持シートは多数のシートを用いることができ、第7図に示すように2枚のシート44および46を重ね合わせてもよく……。シート44および46の何れか一方……の網目は……フィルターシートとして働くような寸法とすることができる。……。これらのシートの任意の一者……の強度をブロックを機械的に支持するのに十分なものとすれば足り、同時にその何れかのシートの網目をフィルタシートとして作用するに十分な程小さくすればよい。」(11欄27〜42行)
(K)「第7図および第8図に示す構造の優れた一利点は、フィルタシートが例えばフェルトの如く比較的弱い場合にはブロックと強いシートとの間に配置し得る点である。」(11欄43行〜12欄2行)
(L)「本考案マット材によれば、所要に応じ植物を繁茂させて環境緑化に役立たせることができる」(14欄38〜40行)
(M)「液体透過性で土壌粒子を通さない程度のメッシュを持ち地表表面形状に一致するような可撓性支持シートと、上下方向に少なくとも一つの貫通孔をもった多数のブロックとを具備し、前記支持シート上に前記ブロックを互に近接して略々衝合するよう隣り合せてシートの少なくとも2辺の縁沿い部分に若干の余白を残して並列配置し、之等のブロックの各各を前記シートに接着剤により固定し、之により液体が前記シート及びブロックを通って通過できるようにし、前記支持シートはその両端又は片端を把持して吊下したとき支持するブロックの重量により破断されない程度の十分な強度を有し、各ブロックはその側面部の何れの部分に於ても隣接するブロックの如何なる部分とも掛合せず、各ブロックが支持シートのわん曲によって隣接したブロックに対し相対的に多少変位し得るように構成した地表侵食防止用覆工マット材。」(14欄42行〜16欄5行)

そして、第2図等にはブロックの周縁部にも溝孔26,28が形成され、各ブロックの貫通孔12と、これら溝孔26,28により形成される貫通孔とによって、海水・河川水等がシート及びブロックを通って通過可能であり、植物を繁茂可能にしていることが当業者に明らかな事項であるから、甲第2号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「中央部及び隣接縁部に貫通孔12,26,28を有する、コンクリート等を予め成形して成るブロックBと、
両端又は片端を把持して吊下したとき支持するブロックBの重量により破断されない程度の十分な強度を有する金属の網44と、
液体透過性で土壌粒子を通さない程度のメッシュを持ち地表表面形状に一致するような可撓性支持シート46とを、
上側から、ブロックB,金属の網44,可撓性支持シート46の順で、接着剤により一体化してなる、
植物繁茂による環境緑化が可能な、地表侵食防止用覆工マット材。」

(3)対比・判断
本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「液体透過性で土壌粒子を通さない程度のメッシュを持つ可撓性支持シート46」、「吊下したとき支持するブロックの重量により破断されない程度の十分な強度を有する金属の網44」、「接着剤」、「接着剤により一体化」、及び「植物繁茂による環境緑化が可能な、地表侵食防止用覆工マット材」は、本件発明の「吸い出し防止用シート」、「金網」、「接着材」、「接着材を介して一体成形」、及び「生態系保護用金網」にそれぞれ相当する。そして、引用発明の「ブロック」も本件発明の「自然石」も共に、表面の侵食を防止するための「塊状表面部材」といえるから、両者は、
「吸い出し防止用シートの上面に重合した金網上に複数の塊状表面部材を敷き並べるとともに、同各塊状表面部材の下部に接着材を層着し、同接着材を介して前記各塊状表面部材と金網と吸い出し防止用シートを一体成形してなる、塊状表面部材を具備した生態系保護用金網。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:「塊状表面部材」が、本件発明では「自然石」であるのに対し、引用発明では「コンクリート等を予め成形して成るブロック」である点

上記相違点について検討する。
地表や水中において、その表面の侵食を防止する等のために塊状表面部材として自然石を敷き並べることは、古来から広く一般に行なわれてきた周知技術にすぎず、また、甲第5〜7号証(特開平4-166507号公報、特開平3-194011号公報、特開平3-144009号公報)にも、河床や護岸の侵食を防止する部材の一部に自然石を用いることが記載されており、引用発明のブロックに換えて自然石を採用して本件発明を当業者がなす点には、何等の困難性も認められず、奏する効果も予期し得る程度のものであって格別のものではない。
したがって、本件発明は、引用発明(甲第2号証記載の発明)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)被請求人の主張に対して
(4-1)被請求人は、上記【2】(2)(C)に摘記した甲第2号証の記載等に基づいて、『甲第2号証発明においては、「自然界に存在する石を用いる」ということはむしろ欠点として積極的に除外されている。』(答弁書9頁17〜18行)と主張する。そして、上記摘記部分の記載によれば、引用発明が自然石(「捨石」「割栗石」「荒石」が相当する。)を除外した理由のうち、技術的な理由は、石の鋭い端部によってナイロンシートが裂け易いことと、固定し難いことの2点である。
しかし、一般的に、ナイロンシートの代りに金網を用いれば「裂け易い」という欠点が解消されることが当業者に明らかな事項であり、また、引用発明の優先権主張日(1967年12月22日)当時においては、接着面が平滑でないものを、水中や海中等で長期間接着し得る適当な接着材が存在しなかったこと等により「固定し難い」と認識されていたとみるのが相当であって、それらの技術的欠点は「自然石」自体に起因するものではないから、上記主張には、理由がない。

(4-2)また、被請求人は、上記【2】(2)(K)に摘記した甲第2号証の記載等に基づいて、『甲第2号証発明においては、上から「ブロック-フェルト等のフィルタシート(吸い出し防止用シート)-強いシート(金網)」の順に配置するのが好ましいとされ、本件発明の「自然石-金網-吸い出し防止用シート」という配置を示唆するものではなく、本件発明は、このような配置を採用したことにより、「自然石」「金網」「吸い出し防止用シート」の三者を同じ接着材によって互いに一体化させることができるという、独特の作用効果を奏するものである。』(答弁書10頁17行〜11頁8行等)旨の主張する。
しかし、【2】(2)(J)に摘記した甲第2号証の記載によれば、上記摘記部分の記載はあくまで甲第2号証における一実施例にすぎず、甲第2号証が、上記【2】(2)の末尾で認定した発明、すなわち、上から「ブロック-金網-吸い出し防止用シート」の順に配置したものを含むものであることは、当業者に明らかな事項である。そして、このように金網を中間に介在させた場合には、接着材が金網の目を通してその上下のブロックと吸い出し防止用シートとを(金網も含めて)接着一体化させる機能を有することも当業者に明らかな事項であるから、上記主張には、理由がない。

(4-3)さらに、被請求人は、平成15年2月24日付け提出の上申書に乙第14号証として実験報告書を添付し、本件発明と甲第2号証記載の発明とは接着態様が異なり、より具体的には甲第2号証記載の発明には本件発明が具備する「吸い出し防止用シート」がなく、その相違により、上記実験報告書にみられるとおり、本件発明のものは甲第2号証記載の発明と比較して極めて大きな接着強度が得られるものである旨の主張をする。
しかし、甲第2号証記載の発明は、上記(4-2)に記載したとおりの、上から「ブロック-金網-吸い出し防止用シート」の順に配置したものであって、上記主張には、理由がない。

【3】まとめ
以上のとおりであるから、本件の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当するから、他の無効理由2〜4について検討するまでもなく、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-02-07 
結審通知日 2003-02-13 
審決日 2003-03-25 
出願番号 特願平8-194511
審決分類 P 1 112・ 121- Z (E02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小野 忠悦  
特許庁審判長 山田 忠夫
特許庁審判官 新井夕起子
山口 由木
登録日 1998-10-16 
登録番号 特許第2840061号(P2840061)
発明の名称 生態系保護用自然石金網  
代理人 西川 繁明  
代理人 水谷 直樹  
代理人 村田 実  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ