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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200411960 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 無効としない A47G
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない A47G
審判 全部無効 1項1号公知 無効としない A47G
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A47G
管理番号 1098864
審判番号 無効2003-35250  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-06-19 
確定日 2004-06-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第3095750号発明「ポスト用異物収集装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 〔1〕本件特許及び本件無効審判事件の手続の経緯
本件特許は、平成9年2月28日に特許法第30条第2項の適用を受けようとする特許出願として出願された特願平9-46655号(以下「原出願」という。)の一部を、平成12年4月19日に新たな特許出願としたものであって、本件特許第3095750号(以下「本件特許」という。)及び本件審判事件に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
1)本件特許の出願日:平成9年2月28日(原出願の出願日)
2)特許権の設定登録:平成12年8月4日
3)本件無効審判の請求:平成15年6月19日
4)審判事件答弁書の提出:平成15年8月19日
5)上申書(審判請求人)の提出:平成15年11月5日
6)審判事件弁駁書の提出:平成15年11月10日

〔2〕当事者の主張
1.審判請求人の主張
本件審判事件は、審判請求人が「第3095750号特許はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」(請求の趣旨)ものであって、審判請求人は、下記の証拠及び理由から、請求項1ないし4に係る発明及び請求項6に係る発明の本件特許は特許法123条第1項第2号または第4号により無効にすべきものであると主張する。
(理由1)本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証または甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第1号又は第3号の規定に違反して特許されたものである。
(1-1)請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証の4及び甲第1号証の5に記載された発明と同一であり、被請求人が、甲第1号証の2ないし9を、平成8年6月11日に社団法人郵政ニューオフィス研究会へ送付したことにより刊行物公知となった。
(1-2)請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証の4及び甲第1号証の5に記載された発明と同一であり、社団法人郵政ニューオフィス研究会が、甲第1号証及び甲第2号証を、平成8年8月24日に郵政省郵務局輸送企画課企画調整係松川次席へ送付したことにより刊行物公知となった。
(1-3)請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証の4及び甲第1号証の5に記載された発明と同一であると同じく、甲第3号証の3及び甲第3号証の4に記載された発明と同一であり、社団法人郵政ニューオフィス研究会が、甲第3号証の1〜52を、平成8年8月26日に株式会社ジイケイ設計の後藤浩介へ送付したことによって刊行物公知、または、後藤浩介が甲第3号証の1〜52記載の発明を知ったことによって公知となった。
(理由2)本件特許の請求項6に係る発明は、甲第1号証または甲第3号証または甲第9号証に記載された発明並びに甲第16号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
(理由3)本件特許の請求項1ないし4に係る発明及び請求項6に係る発明は、その「差入口から投函された郵便物のみを選択して前記郵袋に導く選択手段」が発明の詳細な説明に記載されていないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである。

(証拠)
甲第1号証の1:1996年8月24日付けの社団法人郵政ニューオフィス研究会金井から郵政省郵務局輸送企画課企画調整係松川次席宛書面
甲第1号証の2:図面Y-( )-8061
甲第1号証の3:図面Y-( )-8067
甲第1号証の4:図面Y-( )-8080
甲第1号証の5:図面Y-( )-8081
甲第1号証の6:図面Y-( )-8082
甲第1号証の7:図面Y-( )-8083
甲第1号証の8:図面Y-( )-8085
甲第1号証の9:図面Y-( )-8086
甲第2号証の1:仕様書-郵便差出箱(十号)
甲第2号証の2:仕様書-郵便差出箱(十一号)
甲第2号証の3:仕様書-方面別差込口(十二号)
甲第2号証の4:仕様書-形状別差込口(十二号)
甲第2号証の5:仕様書-形状別差込口(十三号)
甲第2号証の6:仕様書-方面別差込口(十三号)
甲第2号証の7:仕様書-郵便差出箱(十四号)
甲第2号証の8:仕様書-郵便差出箱(十四号S)
甲第3号証の1:図面Y-( )-8061
甲第3号証の2:図面Y-( )-8067
甲第3号証の3:図面Y-8080
甲第3号証の4:図面Y-8081
甲第3号証の5:図面Y-8082
甲第3号証の6:図面Y-8083
甲第3号証の7:図面Y-8085
甲第3号証の8:図面Y-8086
甲第3号証の9:図面Y-8016
甲第3号証の10:図面Y-8017
甲第3号証の11:図面Y-8018
甲第3号証の12:図面Y-8019
甲第3号証の13:図面Y-8020
甲第3号証の14:図面Y-8021
甲第3号証の15:図面Y-8022
甲第3号証の16:図面Y-8023
甲第3号証の17:図面Y-8024
甲第3号証の18:図面Y-8025
甲第3号証の19:図面Y-8026
甲第3号証の20:図面Y-8027
甲第3号証の21:図面Y-8028
甲第3号証の22:図面Y-8029
甲第3号証の23:図面Y-8030
甲第3号証の24:図面Y-8031
甲第3号証の25:図面Y-8032
甲第3号証の26:図面Y-8033
甲第3号証の27:図面Y-8034
甲第3号証の28:図面Y-8035
甲第3号証の29:図面Y-8036
甲第3号証の30:図面Y-8037
甲第3号証の31:図面Y-8038
甲第3号証の32:図面Y-8039
甲第3号証の33:図面Y-8040
甲第3号証の34:図面Y-8041
甲第3号証の35:図面Y-8042
甲第3号証の36:図面Y-8043
甲第3号証の37:図面Y-8044
甲第3号証の38:図面Y-8060
甲第3号証の39:図面Y-8061
甲第3号証の40:図面Y-8061
甲第3号証の41:図面Y-8062
甲第3号証の42:図面Y-8063
甲第3号証の43:図面Y-8064
甲第3号証の44:図面Y-8066
甲第3号証の45:図面Y-8067
甲第3号証の46:図面Y-8067
甲第3号証の47:図面Y-8068
甲第3号証の48:図面Y-8069
甲第3号証の49:図面Y-8070
甲第3号証の50:図面Y-8056
甲第3号証の51:図面Y-8057
甲第3号証の52:図面Y-8058
甲第3号証の53:図面Y-8059
甲第4号証:後藤浩介の陳述書
甲第5号証:官報(平成8年4月5日発行、号外政府調達第60号第9面)
甲第6号証:官報(平成8年5月21日発行、号外政府調達第88号第18〜19面)
甲第7号証:平成8年5月22日付けの社団法人郵政ニューオフィス研究会金井から東海理研稲田宛のFAX送信通知書
甲第8号証:官報(平成8年10月7日発行、号外政府調達第185号第11面)
甲第9号証:郵便差出箱(十号)についての指名競争入札通知及び仕様書
甲第10号証:郵便差出箱(十三号)についての請求人宛の指名競争入札通知
甲第11号証:郵便差出箱(十号)についての指名競争入札に関する仕様書
甲第12号証:官報(平成9年1月21日発行、号外政府調達第8号第49面、第54面)
甲第13号証の1:承認願図面添付
甲第13号証の2:火気防止装置部詳細図
甲第13号証の3:火気防止装置本体、他
甲第13号証の4:火気防止装置ガイド板、支持板
甲第13号証の5:火気防止装置シャッター板、他
甲第14号証:名古屋簡易裁判所宛の平成9年2月28日付け調停申立書
甲第15号証:被請求人が原出願について提出し、本件特許に係る特許出願において援用した新規性喪失の例外証明書
甲第16号証:特開平9-47354号公報

2.一方、被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め」(答弁の趣旨)、下記の証拠を提出するとともに、次のように主張する。
(1)請求人の主張する理由(1)について
甲第1号証または甲第3号証は、いずれも特許法第29条第1項第3号に規定する刊行物ではなく、また、これらの書証は被請求人が作成し、技術検討を目的として、社団法人郵政ニューオフィス研究会や郵政省に送付したものであり、公衆に対して頒布により公開を目的としたものではなく、社団法人郵政ニューオフィス研究会、郵政省、株式会社ジイケイ設計の後藤浩介らは、それぞれ守秘義務を負う者であるから、これらの者がその書証の内容を知ったことは、特許法第29条第1項第1号に規定する「公然知られた」に該当しない。
(2)請求人の主張する理由(2)について
甲第1号証または甲第3号証については、上記(1)のとおりであり、また、甲第9号証については、新規性喪失の例外の適用を受けて特許法第29条第1項各号に相当しないとの審決が確定しているから、いずれも同法第29条第2項に規定される進歩性の判断の対象とならない。
(3)請求人の主張する理由(3)について
本件特許の請求項1に係る発明における「差入口から投函された郵便物のみを選択して前記郵袋に導く選択手段」の点は、特許明細書の発明の詳細な説明中に記載されているから、本件特許の請求項1ないし4に係る発明及び請求項6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
(証拠)
乙第1号証:東京高等裁判所・平成14年(行ケ)第77号事件において本件の被請求人より提出された発明者山田由博の「陳述書」の写し
乙第2号証:総務省ホームページ「公益法人データベース」による検索結果を示す画面を印刷した書面の写し

〔3〕本件特許に係る発明
本件特許の請求項1乃至請求項4及び請求項6に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至請求項4及び請求項6に記載されたとおりの次のものである。
(請求項1)
「ポスト本体の差入口の内側下方で、かつ、ポスト本体内の郵袋の上方に位置し、前記差入口から投函された郵便物のみを選択して前記郵袋に導く選択手段と、前記選択手段で選択された前記差入口から投函された郵便物を除く異物を収容する異物収容手段と、少なくとも、揺動自在に配設し、前記差入口から投函された運動エネルギーを低減させる差入口より広い幅を有し、略く字状に折曲した規制板を有し、前記差入口から投函された郵便物を郵袋に導く投函物案内手段とを具備し、
前記選択手段は、前記異物収容手段を構成する収容箱の上面及び前記収容箱の前記規制板側の前面から前記収容箱の底部まで異物を導くポスト用異物収集装置において、
前記選択手段は、前記異物収容手段を構成する収容箱の上面に、前記差入口に近い位置を高く、前記差入口から離れるに従って低く形成し、前記差入口の方向に対して直角に所定の間隔で複数の線材を配設し、前記規制板との間に間隙を形成し、収容箱の立上前面との間にも間隙を形成して収容箱の底部まで異物を導くとともに、
前記選択手段と前記規制板との間にある間隙を、前記収容箱の立上前面に配設したスペーサによって設けたことを特徴とするポスト用異物収集装置。」
(請求項2)
「前記異物収容手段は、前記ポスト本体の構成部材に一端から摺動させて挿着する係合部を具備することを特徴とする請求項1に記載のポスト用異物収集装置。」
(請求項3)
「前記投函物案内手段は、前記ポスト本体の差入口の上部から前記差入口の反対側に彎曲させて配設した弾性に富むガイド板と、前記ガイド板に対して揺動自在に配設し、前記差入口から投函されたものに衝突し、運動エネルギーを低減させる差入口より広い幅を有し、略く字状に折曲した規制板を具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポスト用異物収集装置。」
(請求項4)
「前記投函物案内手段の規制板は、両端部に案内板を配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載のポスト用異物収集装置。」
(請求項6)
「前記投函物案内手段のガイド板と揺動自在に配設した規制板との接続部は、その差入口側にカバー体を配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載のポスト用異物収集装置。」

〔4〕当審の判断
1.無効の理由1(公知となった事実の有無)について
(1)第三者(外部の者)が知り得る状況の有無について
旧郵政省における入札に向けての準備作業を業務として委託された社団法人郵政ニューオフィス研究会、並びに当該業務と関連する業務を遂行していた郵政省郵務局及び株式会社ジイケイ設計内における図面の取り扱い事務または図面の作成業務は、組織内における業務遂行上の一般的な慣行(組織内での業務は、当該業務が責任をもって確実に進められることを期待して担当者を定めるということが一般的に行われている)からみて、専ら、これらの事務ないし業務を任された特定の者のみが関与する態様で遂行されていたと解するのが自然であるから、当該図面の内容を知り得る状態にあったのは、これらの事務ないし業務を任された特定の者のみであったと解するのが相当である。
ところで、上記事務ないし業務を任された特定の者以外の者、いいかえれば、不特定多数の者が上記図面の内容を知り得る状態へと合理的に至る状況につき検討すると、例えば、社団法人郵政ニューオフィス研究会、郵政省郵務局または株式会社ジイケイ設計において、第三者が参加した会議等の場を通じて当該図面の内容を提示したとか、あるいは、当該図面の内容を、第三者が自由に閲覧ないし複写できるような機会を設けた、もしくは、そのようなことが可能な状態下に当該図面を置いたことがあったという事情等(以下、「特別な事情」という。)を想定することができる。
しかしながら、このような特別な事情があった事実を示す証拠はない、いいかえれば、他に、上記図面の内容が社団法人郵政ニューオフィス研究会、郵政省郵務局または株式会社ジイケイ設計を通じて公知になっていたことを裏付ける証拠はない。

(2)特許法第29条第1項第1号にいう「公然知られた」に関する秘密を保つべき関係の有無について
さらに、請求人は、社団法人郵政ニューオフィス研究会及び株式会社ジイケイ設計において、上記図面の内容につき、その職員または社員に対して厳格な守秘義務を課していたとは想定しがたいと主張しているので、この点につき、検討する。
特許法第29条第1項第1号にいう「公然知られた」に関する秘密を保つべき関係については、「発明の内容が、発明者のために秘密を保つべき関係にある者に知られたとしても、特許法29条1項1号にいう「公然知られた」には当たらないが、この発明者のために秘密を保つべき関係は、法律上又は契約上秘密保持の義務を課せられることによって生ずるほか、」「社会通念上又は商慣習上、発明者側の特段の明示的な指示や要求がなくとも、秘密扱いとすることが暗黙のうちに求められ、かつ、期待される場合においても生ずるものであ」る(参考判例:H12.12.25 東京高裁 平成11(行ケ)368号事件)とするのが相当である。
ところで、上記〔4〕1.(1)のとおり、当該社団法人郵政ニューオフィス研究会、郵政省郵務局及び株式会社ジイケイ設計内において上記図面の内容を知り得る状態にあったのは、これらの事務ないし業務を任された特定の者のみであったものと認められる。
そして、甲第7号証(平成8年5月22日付けの社団法人郵政ニューオフィス研究会金井から東海理研稲田宛のFAX送信通知書)及び平成15年8月19日付け答弁書に添付された乙第1号証(東京高等裁判所・平成14年(行ケ)第77号事件において本件の被請求人より提出された発明者山田由博の「陳述書」の写し)によれば、被請求人である東海理研株式会社と社団法人郵政ニューオフィス研究会、郵政省郵務局及び株式会社ジイケイ設計とは、火気防止装置を備える「新型郵便ポスト」の構築に向けて相互に協力し合う関係にあったことが窺えるから、被請求人が作成し、新規に開発された技術を含む図面の内容につき、社団法人郵政ニューオフィス研究会、郵政省郵務局及び株式会社ジイケイ設計は、被請求人に対して、特段の明示的な指示や要求がなくとも、秘密扱いとすることが暗黙のうちに求められ、かつ、期待される場合の関係にあったものと推定できる。
すなわち、社団法人郵政ニューオフィス研究会、郵政省郵務局及び株式会社ジイケイ設計は、被請求人に対して、被請求人により作成され、新規に開発された技術を含む図面の内容につき、その事務ないし業務を遂行する際に、当事者間において格別の秘密保持に関する合意又は明示的な指示や要求がなくとも、当該図面の内容を第三者に開示しないことが暗黙のうちに求められ、被請求人もそうすることを期待し信頼して当該図面を提示するという関係にあったということができる。
そして、このような関係に無かったことを裏付ける他の証拠もない。
してみると、上述した特定の者であるところの、社団法人郵政ニューオフィス研究会、郵政省郵務局及び株式会社ジイケイ設計における事務ないし業務の担当者も、上記任された事務ないし業務を遂行する際に、当該図面の内容につき被請求人に対して秘密を保つべき関係にあった者ということができるから、甲第1号証または甲第3号証または甲第9号証の図面の内容が上記特定の者に知られたことをもって、特許法第29条第1項第1号にいう「公然知られた」に該当するということができない。

(3)まとめ
以上検討したことから、請求人が主張する事実及び証拠(甲第1号証または甲第3号証)によって、本件発明1〜4が本願出願前に公然知られた発明となったという請求人の主張を合理性があるものとして採用することができない。
また、甲第1号証または甲第3号証または甲第9号証の図面が複写されたものであるとしても、上述したとおり、社団法人郵政ニューオフィス研究会、郵政省郵務局または株式会社ジイケイ設計内において、当該複写された図面は第三者が知り得る態様で頒布されたとはいえないのであるから、特許法第29条第1項第3号に規定する「刊行物」といえないことも明らかである。
したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証または甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第1号又は第3号の規定に違反して特許されたものであるということはできない。

2.無効の理由2(請求項6に係る発明は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものか否か)について
審判請求人は、本件特許の請求項6に係る発明は、甲第1号証または甲第3号証または甲第9号証に記載された発明並びに甲第16号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであると主張する。
しかしながら、上記「1.無効の理由1」において説示したとおり、当該主張の前提となるところの甲第1号証または甲第3号証または甲第9号証が公知となった事実を認めることができないから、上記請求人の主張は、その前提を欠くものであって、採用することができない。
したがって、本件特許の請求項6に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるということはできない。

3.無効の理由3(特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているか否か)について
本件特許明細書における発明の詳細な説明には、その段落【0025】〜【0027】及び【0048】に、次の記載事項がある。(下線は当審が付記した。)
(記載事項1)
「【0025】
また、収容箱11の開口には、差入口3から投函された郵便物のみを選択して前記郵袋5に導く選択手段20として、複数本の丸棒を略V字状に折曲してなる線材21(図2,3参照)がその上端及び下端をスポット溶接により接合されている。この線材21は所定の間隔、例えば、はがきの短辺に対して2〜3本程度配置される間隔に設定される。また、線材21の太さは直径数mm程度のものが好適である。この線材21は、異物を収容する収容箱11の上面に、差入口3に近い位置を高く、差入口3から離れるに従って低く形成されている。詳しくは、異物を収容する収容箱11の上面に、差入口3に近い位置を水平部分とし、高く設定されている。また、差入口3から離れるに従って40度から60度の範囲で下向するように傾斜部分が形成されている。即ち、線材21は水平方向でみると1対3の比率で、水平部分と傾斜部分が形成されている。
【0026】
ここで、異物を収容する収容箱11の上面に所定の間隔を形成して配設した複数本の線材21は、本実施の形態の差入口3から投函された郵便物のみを選択して前記郵袋5に導く選択手段20を構成する。
【0027】
なお、本実施の形態の選択手段20は、水平部分と傾斜部分とで形成されるものであるが、本発明を実施する場合には、円弧或いは二次曲線を形成するようにしてもよい。何れにせよ、最も軽量な郵便物であるはがきが自由落下できる程度の傾きを持つ必要がある。」
(記載事項2)
「【0048】
上記実施の形態の選択手段20の線材21の間隔は、郵便物投函の際、最悪の条件が重なったことを想定し、安全性を維持できるように設定すばよい。また、上記実施の形態では、選択手段20はステンレス製の線材21で、その形状は、水平部分、傾斜部分により形成されるが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではない。例えば、傾斜部分は直線でなく、外向きにアールを付けたものでもよい。または、波状の線材を一本おきに周期を合わせ、隣同士は周期が異なるようにしてもよい。選択手段20は材料及び形状との選別により任意に決定できる。」
そして、上記記載事項1、2において「異物を収容する収容箱11の上面に所定の間隔を形成して配設した複数本の線材21は、本実施の形態の差入口3から投函された郵便物のみを選択して前記郵袋5に導く選択手段20を構成する」(記載事項1の段落【0026】参照)と説明された「選択手段20」が、本件特許の請求項1に係る発明における「差入口から投函された郵便物のみを選択して前記郵袋に導く選択手段」に文字どおり相当するものであることは明らかである。
したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る発明及び請求項6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
なお、審判請求人は、上記発明の詳細な説明に記載された選択手段の構成では、「郵便物以外の物であって所定サイズを越える物が差入口から投函された場合、非郵便物であるにも拘わらず選択して郵袋に導いてしまうものであるから、本件特許の請求項1に係る発明における「差入口から投函された郵便物のみを選択して前記郵袋に導く選択手段」(ただし、請求人の主張によれば、非郵便物以外を理想的なレベルで完全に排除し、真の郵便物のみを選択できる選択手段を意味していると解される)に相当するものが、発明の詳細な説明に開示されていない旨、主張する。
ところで、請求人が証拠として提出した甲第16号証(特開平9-47354号公報)は、本件特許の出願日前に公知となっているものであるから、本件特許の従来技術に相当するものを開示した公報であるといえるが、当該公報の第3頁第3欄の段落【0008】をみると、本件特許の請求項1に係る発明における「差入口から投函された郵便物のみを選択して前記郵袋に導く選択手段」と同じ「差入口から投函された郵便物のみを選択して前記郵袋に導く選択手段」が開示されている。
そうとすると、本件特許の請求項1に係る発明における「差入口から投函された郵便物のみを選択して前記郵袋に導く選択手段」は、新規な技術手段を規定したものではなく、本件特許の出願日前に当業者により既に知られていた技術手段であるところの「選択手段」を単に規定したものということができる。請求人の主張は、新規な技術手段を初めて提示した場合を想定していると解されるが、妥当なものとして採用することができない。
したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る発明及び請求項6に係る発明は、その「差入口から投函された郵便物のみを選択して前記郵袋に導く選択手段」が発明の詳細な説明に記載されていないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものであるということはできない。

〔5〕むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件請求項1ないし4に係る発明及び請求項6に係る発明の特許を無効とすることはできない。
また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-04-16 
結審通知日 2004-04-19 
審決日 2004-05-07 
出願番号 特願2000-117700(P2000-117700)
審決分類 P 1 112・ 111- Y (A47G)
P 1 112・ 113- Y (A47G)
P 1 112・ 537- Y (A47G)
P 1 112・ 121- Y (A47G)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 西村 泰英
岡田 孝博
登録日 2000-08-04 
登録番号 特許第3095750号(P3095750)
発明の名称 ポスト用異物収集装置  
代理人 富澤 孝  
代理人 岡戸 昭佳  
代理人 山中 郁生  
代理人 高良 尚志  
代理人 野村 茂樹  
代理人 田中 裕人  
代理人 奥田 誠  
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