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審決分類 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1098883
審判番号 不服2002-2229  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-09-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-12 
確定日 2004-06-16 
事件の表示 平成 2年特許願第 6989号「画像処理装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 2年 9月11日出願公開、特開平 2-228783]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯等
本願は、平成2年1月16日(パリ条約による優先権主張1989年1月13日、米国)の出願であって、平成10年3月16日付けの拒絶理由通知書に対して、平成10年10月7日付けで意見書と手続補正書が提出され、平成13年3月16日付けの拒絶理由通知書に対して、平成13年9月27日付けで意見書と手続補正書が提出され、平成13年11月5日付けで拒絶査定がなされ、平成14年2月12日に審判請求書が提出され、平成14年3月14日付で手続補正書が提出された。
本願は各手続補正書により補正された明細書、並びに、図面の記載からみて、「画像処理装置」に関するものと認める。

2.原査定の拒絶理由
一方、原査定の平成13年3月16日付け拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
『1.この出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない。

本願請求項に係る発明の構成が不明瞭である。
(本願発明の要旨は、四角形描画専用回路において、図形の頂点データを入力する際に、四角形描画専用回路内の各頂点を記憶する4つのレジスタの一部レジスタに、同じ値を重複して入力することで、四角形以外の、点や、直線、三角形を描画可能とすると思われるが、請求項の記載、および、発明の詳細な説明共に不明瞭であるため、発明の把握ができない。)
例えば、以下の点において不明瞭である。
・本願請求項1,2に記載された「インデックスレジスタ」および「ローディング制御手段」が、どのような技術的意味を有するものか不明瞭である。
(現行の請求項の記載では、格納手段内の座標値を、インデックスレジスタによって表される対象物座標レジスタに格納するものであるが、インデックスレジスタを用いることに、どのような意味があるのか不明瞭である。)
また、これに関連して「0,1,2および3をサイクルするインデックスレジスタの値に基づいて、対象物座標レジスタのうち所定の1つが対象物座標を受けとるようにする」とは、どのような技術的意味を有するものであるのか不明瞭である。(また、これに対応する明細書発明の詳細な説明の箇所はどこか?)
・本願請求項1の「格納手段」と、他の構成要素との関連が不明瞭である。
(「格納手段」には、どのから座標を受け取るのか?)
・本願請求項1の「インデックスレジスタ」と、発明の詳細な説明に記載された事項との対応関係が不明瞭である。
・本願請求項2の「ローディング手段」は、クリッピング処理に、どのように関係するものであるのか不明瞭である。
(「ローディング手段」は、クリッピング処理において、どのように用いられるのか、発明の詳細な説明での記載も不明瞭である。)
また、描画される図形と、クリッピングウインドウ、試験ウインドウが、ローディング手段、あるいは、ローディング制御手段と、どのように関連するのか不明瞭である。
2.この出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていない。

本願明細書の記載の技術内容が不明瞭である。
例えば、以下の点で不明瞭である。
・本願明細書の記載では、本願発明の課題、および、効果が不明瞭である。
(特に、第7頁7行から第11頁9行などの記載は、日本語として不明瞭であり、内容の把握が困難である。)
・本願明細書に記載の「ローディング制御状態機械」および「指標論理」は、どのような構成であるのか不明瞭である。
(特に、第30頁10行から第47頁7行など)
・本願明細書第14頁,第69頁等に参照されている出願番号が未記入であり、参照している技術がどのようなものであるのか不明瞭である。』

3.原査定
そして、この拒絶の理由に応じてなされた平成13年9月27日付けの手続補正書による補正に対して、原査定では、
『この出願については、平成13年3月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものである。
なお、意見書並びに手続補正書の内容を検討したが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。
備考
平成13年3月16日付けの拒絶理由通知に記載した点において明細書の記載が依然不明瞭である。
例えば以下の点で不明瞭である。
・本願請求項1,2に記載された「インデックスレジスタ」および「ローディング制御手段」「ローディング手段」が、どのような技術的意味を有するものか不明瞭である。
(インデックスレジスタは、循環的にその値を変化するものであると思われるが、循環的に変化するこの「値の制御のもとで、対象物座標を対象物レジスタに格納する」ことと、「表示されるべき対象物が最小の数の座標によって定義されて、対象物を一義的に定義すること」と、どのように関連するのか不明瞭である。)
また、それに関連し、本願明細書に記載の「ローディング制御状態機械」および「指標論理」等に関する記載箇所(特に、第30頁10行から第47頁7行など)は、依然不明瞭である。
・対象物座標をどのように与えるのか不明瞭である。
(例えば直線の場合、同じ始点座標2つ、終点座標2つの計4点与えるのか、それとも、始点と終点の2点のみ与え、ローディング制御手段の何らかの作用によって内部的にコピーを行なうのか?)』等としている。

4.請求人の主張
これに対して、請求人は、平成14年3月14日付けの手続補正書で特許請求の範囲を訂正すると共に、請求の理由(審判請求書の平成14年3月14日付の手続補正書の1頁19行〜10頁25行)を述べている。

5.明細書の記載事項
明細書には次の記載がある。
(1)【特許請求の範囲】(平成14年3月14日付手続補正書により補正された)
「【請求項1】 図形サブシステムによって表示される対象物の座標を4対の対象物座標レジスタにロードすることによって様々な対象物を定義する画像処理装置において、
対象物は、複数の座標によって定義され、かつ描出されるべき四辺形又は移動されるべきブロック画像のいずれか一方であり、
前記画像処理装置は、
a)指標レジスタに接続され、この指標レジスタが格納する値を図形サブシステムによって表示される対象物の種類に応じて0,1,2,および3からサイクルさせるとともに、その指標レジスタ内の値に基づいて1またはそれ以上の対象物座標レジスタをイネーブルする1組の制御信号を発生するローディング制御手段と、
b)ローディング制御手段と対象物座標レジスタとに接続され、前記装置外部の供給源から表示される対象物の座標を受け取るとともに、受け取った座標を、前記指標レジスタの値に応じて前記ローディング制御手段によりイネーブルされた1またはそれ以上の対象物座標レジスタに格納することによって、その受け取った最小の数の座標が対象物座標レジスタ内に格納され、前記対象物を一義的に定義する入力手段と
を備えたローディング手段を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】 図形サブシステムによって表示される対象物の座標を4対の対象物座標レジスタにロードすることによって様々な対象物を定義する画像処理装置において、
前記対象物は、複数の座標によって定義され、かつ描出されるべき四辺形又は移動されるべきブロック画像のいずれか一方であり、
前記画像処理装置は、
上クリップ座標、下クリップ座標、右クリップ座標および左クリップ座標がロードされて、現在アクティブなクリップウィンドウを定義する複数のクリップ座標レジスタと、
前記上クリップ座標および下クリップ座標からと前記右クリップ座標および左クリップ座標からのXオフセットとYオフセットがロードされ、現在アクティブなクリップウィンドウを取り囲む試験ウィンドウを定義する複数のオフセットレジスタとを有し、かつ、
a)指標レジスタに接続され、この指標レジスタが格納する値を図形サブシステムによって表示される対象物の種類に応じて0,1,2,および3から選択的にサイクルさせるとともに、その指標レジスタ内の値に基づいて、1またはそれ以上の対象物座標レジスタをイネーブルする1組の制御信号を発生するローディング制御手段と、
b)このローディング制御手段に接続され、前記装置外部の供給源から表示される対象物の対象物座標を受け取るとともに、受け取った対象物座標を、前記指標レジスタの値に応じて前記ローディング制御手段によりイネーブルされた1またはそれ以上の対象物座標レジスタに格納することによって、その受け取った最小の数の座標が対象物座標レジスタ内に格納され、前記対象物を一義的に定義する入力手段と
を備えたローディング手段を有し、
対象物座標、クリップ座標およびオフセットは、対象物の表示に先立つ対象物のクリッピングを実行する計算において用いられ、クリップウィンドウまたは試験ウィンドウの外側にある対象物座標は無視されることを特徴とする画像処理装置。」

(2)「本願発明は、退化四辺形対象物、すなわち、点、線及び三角形をも含み、図形表示サブシステムにより表示されるべき四辺形目的物の4つの頂点の座標を記憶するレジスタを、0,1,2,3と循環動作する指標レジスタを使用してロードする装置に関する。このようにすれば、ソフトウエア指令は対象物を規定するために最小限の数のX、Y座標対、すなわち、点の場合は1対の座標、線の場合は2対の座標、三角形の場合は3対の座標、そして矩形の場合は(対向する角を規定することにより)2対の座標を規定するだけで良くなる。」(出願当初の明細書2頁下から2行〜3頁9行)

(3)「ローディング制御状態機械33と指標論理43 ローディング制御状態機械33は制御信号MUX Enable,Index及びRegister Enableを発生する。MUX Enableは一連の制御信号であり、その1つは、ラスターオフセットレジスタ41、X/Y座標レジスタ37及びクリップ座標レジスタ39に含まれる様々なマルチプレクサにそれぞれ対応するX入力又はY入力を選択させ、また、他の制御信号は、マルチプレクサ35に、ラスターオフセットレジスタ41からの入力、X/Y座標レジスタ37からの入力又はクリップ座標レジスタ39からの入力のいずれかを選択させる。Indexは、指標論理43に含まれる指標レジスタを、0、1及び2の値に対してはそれぞれ1だけ増分させ、値が3である場合には0にリセットさせる(モジューロ4)単一の制御信号である。Register Enableは、ラスターオフセットレジスタ41、X/Y座標レジスタ37及びクリップ座標レジスタ39に含まれるレジスタのそれぞれについて1つずつの一連の制御信号であって、各レジスタに、加算器31からの出力線にある16ビット値をロードさせることができる。
次に、本発明の構成の詳細を明白に示しているものと思われる1例を挙げて、ローディング制御状態機械33及び指標論理43の動作を説明する。
前述したように、描出されるべき画像は、4つ頂点(X0,Y0)〜(X3,Y3)を持つ1またはそれ以上の対象物(オブジェクト)から構成されるものとして規定される。対象物は、点、線、三角形、矩形または四辺形である。点の場合、4対の頂点は皆同じとなる。線の場合は、互いに異なる頂点が2組のみ存在する。四辺形は4つの異なる頂点を有する。矩形は、2つの異なるX座標と2つの異なるY座標のみが存在する、四辺形の特殊なケースである(矩形は対角線上で互いに対向する1対の頂点によって規定することができる)。三角形の場合は、互いに異なる頂点が3組のみ存在する。
指標値は、規定されている対象物の種類(タイプ)に基づいて、どのレジスタをイネーブルするかを指定する。適正に動作させるために、Y値はX値に先行する。矩形の場合を除き、指標レジスタは、X値が適当なレジスタにロードされた後に増分される。矩形の場合は、指標レジスタは、X値の後とY値の後の双方で増分される。これに関係して、次の表は、対象物のそれぞれの種類について、各指標値(0,1,2,3)に対してイネーブルされるXレジスタを示している。表示はされていないが、イネーブルされるYレジスタはイネーブルされるXレジスタに対応する。」(本願明細書30頁10行〜32頁末行、平成14年3月14日付で一部補正)

(4)「第1表に見られる重要な点は、指標レジスタによって指示された座標は常に書き込まれることである。書き込みの種類(点、線、三角形など)は、同様に書き込まれる後続のレジスタの数(モジューロ4)を表す。例えば、線X書き込み(種類が「線」のX座標の書き込み)を受信したときの指標が2である場合、3つのレジスタ、すなわちX2と、X(2+1)モジューロ4およびX(2+2)モジューロ4、つまり、X2、X3およびX0が書き込まれる。Yへの「四辺形」書き込みならば(種類が「四辺形」のY座標の書き込みであれば)、Y座標レジスタへの書き込みはY2のみに影響する。」(本願明細書33頁下から11行〜下から2行、平成14年3月14日付で補正)

6.当審の判断
請求項1の「指標レジスタに接続され、この指標レジスタが格納する値を図形サブシステムによって表示される対象物の種類に応じて0,1,2,および3からサイクルさせるとともに、その指標レジスタ内の値に基づいて1またはそれ以上の対象物座標レジスタをイネーブルする1組の制御信号を発生するローディング制御手段」の記載は、依然として不明瞭であり、発明の詳細な説明には記載されていない。
(1)「指標レジスタが格納する値を図形サブシステムによって表示される対象物の種類に応じて0,1,2,および3からサイクルさせる」の記載は発明の詳細な説明には記載されていない。
0,1,2,および3からサイクルさせることに関しては、明細書には「Indexは、指標論理43に含まれる指標レジスタを、0、1及び2の値に対してはそれぞれ1だけ増分させ、値が3である場合には0にリセットさせる(モジューロ4)単一の制御信号である。」と、「指標値は、規定されている対象物の種類(タイプ)に基づいて、どのレジスタをイネーブルするかを指定する。適正に動作させるために、Y値はX値に先行する。矩形の場合を除き、指標レジスタは、X値が適当なレジスタにロードされた後に増分される。矩形の場合は、指標レジスタは、X値の後とY値の後の双方で増分される。これに関係して、次の表は、対象物のそれぞれの種類について、各指標値(0,1,2,3)に対してイネーブルされるXレジスタを示している。」と記載されている。
このように、矩形の場合を除き、指標レジスタは、X値が適当なレジスタにロードされた後に増分され、矩形の場合は、指標レジスタは、X値の後とY値の後の双方で増分されることが記載されているが、特許請求の範囲に記載されているように、「対象物の種類に応じて0,1,2,および3からサイクル」させてはいない。
(2)「指標レジスタが格納する値」、及び「指標レジスタ内の値」は、指標レジスタのどのような値を指しているのか不明である。

また、同様にして、請求項2の「この指標レジスタが格納する値を図形サブシステムによって表示される対象物の種類に応じて0,1,2,および3から選択的にサイクルさせる」の記載も、依然として不明瞭であり、発明の詳細な説明には記載されていない。

7.むすび
以上のとおりであるので、この出願は、明細書及び図面の記載が、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-01-14 
結審通知日 2004-01-20 
審決日 2004-02-04 
出願番号 特願平2-6989
審決分類 P 1 8・ 534- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤井 浩脇岡 剛  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 井上 信一
関川 正志
発明の名称 画像処理装置  
代理人 山川 茂樹  
代理人 黒川 弘朗  
代理人 山川 政樹  
代理人 西山 修  
代理人 紺野 正幸  

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