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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない A41G
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない A41G
管理番号 1099263
審判番号 訂正2003-39259  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-02 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-12-05 
確定日 2004-06-28 
事件の表示 特許第3264886号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
平成10年 7月17日 特許出願(特願平10-203038号)
同 13年12月28日 特許権の設定の登録
同 14年 9月 8日 申立人井手由記子による特許異議の申立
同 年 9月11日 申立人榎光子による特許異議の申立
(異議2002-72215号)
同 15年 1月31日 訂正の請求
同 年 5月13日 手続補正(訂正請求書について)
同 年 8月27日 特許異議の決定(特許第3264886号の
請求項1、2、4に係る特許を取り消す。
同請求項5に係る特許を維持する。)
同 年10月16日 出訴(平成15年(行ケ)第457号)
同 年12月 5日 本件訂正の審判の請求
同 16年 1月 5日 訂正拒絶の理由の通知
同 年 3月 9日 意見書の提出

第2 請求の要旨
本件訂正の審判の請求の要旨は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、設定登録時の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)を上記平成15年12月5日付審判請求書に添付した全文訂正明細書のとおり、すなわち、次のとおり訂正することを求めるものである。
1 訂正事項1
本件特許明細書の特許請求の範囲
「【請求項1】 おしゃれ用として自毛に変わり色の人工毛を混在させて用いるため又は増毛用として薄くなった自毛に自毛と同色の人工毛を混在させて用いるためのおしゃれ増毛装具であって、複数の止め具と、該止め具を備えた保持部材と、該保持部材に一端を保持され該保持部材に所定の間隔で並設された複数の弾性線状部材と、少なくとも前記弾性線状部材に植設された人工毛と、を有することを特徴とするおしゃれ増毛装具。」を
「【請求項1】 おしゃれ用として自毛に変わり色の人工毛を混在させて用いるため又は増毛用として薄くなった自毛に自毛と同色の人工毛を混在させて用いるためのおしゃれ増毛装具であって、細かい網目を有する植毛部材がやや腰のあるテープ部材に巻き付けられ細長い略直方形の板状に形成されて成る保持部材と、該保持部材に設けられた複数の止め具と、前記保持部材に一端を保持され該保持部材に所定の間隔で並設された複数の弾性線状部材と、少なくとも前記弾性線状部材に植設された人工毛と、を有することを特徴とするおしゃれ増毛装具。」と訂正する。(以下「訂正発明1」という。)
2 訂正事項2
本件特許明細書の特許請求の範囲
「【請求項2】 おしゃれ用として自毛に変わり色の人工毛を混在させて用いるため又は増毛用として薄くなった自毛に自毛と同色の人工毛を混在させて用いるためのおしゃれ増毛装具であって、複数の止め具と、該止め具を備えた複数の保持部材と、該複数の保持部材に両端部を保持され該複数の保持部材に所定の間隔で並設された複数の弾性線状部材と、少なくとも前記弾性線状部材に植設された人工毛と、を有することを特徴とするおしゃれ増毛装具。」を
「【請求項2】 おしゃれ用として自毛に変わり色の人工毛を混在させて用いるため又は増毛用として薄くなった自毛に自毛と同色の人工毛を混在させて用いるためのおしゃれ増毛装具であって、細かい網目を有する植毛部材がやや腰のあるテープ部材に巻き付けられ細長い略直方形の板状に形成されて成る複数の保持部材と、該複数の保持部材に設けられた複数の止め具と、前記複数の保持部材に両端部を保持され該複数の保持部材に所定の間隔で並設された複数の弾性線状部材と、少なくとも前記弾性線状部材に植設された人工毛と、を有することを特徴とするおしゃれ増毛装具。」と訂正する。
3 訂正事項3
本件特許明細書の特許請求の範囲
「【請求項3】 前記複数の弾性線状部材は、一端を1つの保持部材に支持され他端を複数の保持部材により分割されて保持されることを特徴とする請求項2記載のおしゃれ増毛装具。」を
「【請求項3】 前記複数の弾性線状部材は、一端を1つの保持部材に支持され他端を複数の保持部材により分割されて保持されることを特徴とする請求項2記載のおしゃれ増毛装具。」と訂正する。
4 訂正事項4
本件特許明細書の特許請求の範囲
「【請求項4】 前記複数の弾性線状部材は、前記保持部材に保持される端部の先端が前記保持部材よりも外側に突出して配置されることを特徴とする請求項1、2又は3記載のおしゃれ増毛装具。」を
「【請求項4】 前記複数の弾性線状部材は、前記保持部材に保持される端部の先端が前記保持部材よりも外側に突出して配置されることを特徴とする請求項1、2又は3記載のおしゃれ増毛装具。」と訂正する。
5 訂正事項5
本件特許明細書の特許請求の範囲
「【請求項5】 前記複数の弾性線状部材は、人の頭部の曲面に対応する曲形を有し且つ頭部の曲面に沿って横にうねる形状を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のおしゃれ増毛装具。」を
「【請求項5】 前記複数の弾性線状部材は、人の頭部の曲面に対応する曲形を有し且つ頭部の曲面に沿って横にうねる形状を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のおしゃれ増毛装具。」と訂正する。
6 訂正事項6
本件特許明細書の段落【0014】
「 【0014】
先ず、請求項1記載のおしゃれ増毛装具は、おしゃれ用として自毛に変わり色の人工毛を混在させて用いるため又は増毛用として薄くなった自毛に自毛と同色の人工毛を混在させて用いるためのおしゃれ増毛装具であって、複数の止め具と、該止め具を備えた保持部材と、該保持部材に一端を保持され該保持部材に所定の間隔で並設された複数の弾性線状部材と、少なくとも上記弾性線状部材に植設された人工毛と、を有して構成される。」を
「 【0014】
先ず、請求項1記載のおしゃれ増毛装具は、おしゃれ用として自毛に変わり色の人工毛を混在させて用いるため又は増毛用として薄くなった自毛に自毛と同色の人工毛を混在させて用いるためのおしゃれ増毛装具であって、細かい網目を有する植毛部材がやや腰のあるテープ部材に巻き付けられ細長い略直方形の板状に形成されて成る保持部材と、該保持部材に設けられた複数の止め具と、上記保持部材に一端を保持され該保持部材に所定の間隔で並設された複数の弾性線状部材と、少なくとも上記弾性線状部材に植設された人工毛と、を有して構成される。」と訂正する。
7 訂正事項7
本件特許明細書の段落【0015】
「 【0015】
次に、請求項2記載のおしゃれ増毛装具は、おしゃれ用として自毛に変わり色の人工毛を混在させて用いるため又は増毛用として薄くなった自毛に自毛と同色の人工毛を混在させて用いるためのおしゃれ増毛装具であって、複数の止め具と、該止め具を備えた複数の保持部材と、該複数の保持部材に両端部を保持され該複数の保持部材に所定の間隔で並設された複数の弾性線状部材と、少なくとも上記弾性線状部材に植設された人工毛と、を有して構成される。そして、上記複数の弾性線状部材は、例えば請求項3記載のように、一端を1つの保持部材に支持され他端を複数の保持部材により分割されて保持されて構成される。」を
「 【0015】
次に、請求項2記載のおしゃれ増毛装具は、おしゃれ用として自毛に変わり色の人工毛を混在させて用いるため又は増毛用として薄くなった自毛に自毛と同色の人工毛を混在させて用いるためのおしゃれ増毛装具であって、細かい網目を有する植毛部材がやや腰のあるテープ部材に巻き付けられ細長い略直方形の板状に形成されて成る複数の保持部材と、該複数の保持部材に設けられた複数の止め具と、上記複数の保持部材に両端部を保持され該複数の保持部材に所定の間隔で並設された複数の弾性線状部材と、少なくとも上記弾性線状部材に植設された人工毛と、を有して構成される。そして、上記複数の弾性線状部材は、例えば請求項3記載のように、一端を1つの保持部材に支持され他端を複数の保持部材により分割されて保持されて構成される。」と訂正する。

第3 訂正拒絶の理由の概要
平成16年1月5日付で通知した訂正拒絶の理由のうち訂正発明1に関する部分の概要は、次のとおりである。
「訂正発明1は、本件の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された実願昭59-244号(実開昭60-113321号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)に記載された発明、特開平10-77514号公報(以下「刊行物2」という。)に記載された事項及びドイツ国特許出願公開明細書第1935209号(以下「刊行物3」という。)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであって、本件訂正の審判の請求は、特許法第126条第4項の規定に適合しない。」

第4 刊行物記載の発明(事項)
1 刊行物1
刊行物1には、次のとおり記載されている。
ア 明細書第1頁第16行〜第2頁第5行
「(1)のくしに(2)の人毛(その他合成毛)を取り付けたものを直接自分の髪に挿し、自髪とこのかつらをうまくとかして髪を増やそうとするものである。かつらの毛の色及び毛の質は自分の髪の毛に合わせ、又、自髪の薄い箇所の大きさにより、このかつらのくしの縦横の長さ及び取り付けた毛の量及び毛の長さを調整することにより、より自然に見せることが出来る。」
イ 明細書第2頁第7行〜第10行
「更により強く固定するため、くしの中程の一本を長くし先を(3)のピン状にし、このピンを自髪にとめる。又、くしの歯の途中にバネを作り、そのバネの中に自髪をはさむこともできる。」
ウ 明細書第2頁第11行〜第17行
「このかつらの取付使用法は (a)バックの場合 自分の髪を1cm前後前に残し、普通のくしと同じ要領でバックに挿し込み、その挿し込んだ土台を押さえて固定し、前に残してあった自髪と一諸にブラシでうまく解かして全部自分の髪のように見せる。」
上記記載事項及び第1〜3図の記載からみて、刊行物1には次の発明が記載されていると認める。
増毛用として薄くなった自髪に自髪と同色の合成毛(2)を混在させて用いるためのかつらであって、土台と、くしの歯(1)に設けられたピン(3)又はバネと、土台に一端を保持され、土台に所定の間隔で並設された複数のくしの歯(1)と、少なくともくしの歯(1)に植設された合成毛(2)と、を有するかつら。(以下「刊行物1記載の発明」という。)
2 刊行物2
刊行物2には、次のとおり記載されている。
ア 公報第2頁第2欄第49行〜第3頁第3欄第6行
「図1は、本発明を適用したかつら(部分かつら)を裏返した状態で示す説明図である。・・ネット状の台11には、それを頭部に止めるための櫛状の留め具13が取り付けられている。」
イ 図1
図1には、多数の毛髪12が延びている多数の線状体110を支持する縁部分111に、4つの留め具13を取り付けたかつら10が記載されているものと認められる。
3 刊行物3
刊行物3には、次のとおり記載されている。
ア 明細書第2頁第11行〜第15行(和訳文第3頁第1行〜第4行参照)
「本発明によれば、毛髪は、被覆され、細長く弾性のあるベンド1乃至4に固定されており、そのむき出しの端部5乃至12が、二つのW形の平坦で且つ外側が毛髪により覆われた保持部13乃至16の、放射状に耳部から出ている袋部内に差し込まれている。」

第5 訂正発明1についての対比・判断
訂正発明1と、刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「自髪」が前者の「自毛」に相当することは明らかであり、以下同様に、「合成毛」は「人工毛」に、「かつら」は「おしゃれ増毛装具」に、「ピン又はバネ」は「止め具」に、それぞれ相当する。
そして、後者の「くしの歯」は、その技術的意義からみて、人工毛が植設されている複数の「線状部材」である限りにおいて、前者の「弾性線状部材」と共通し、後者の「土台」は、上記複数の「線状部材」の一端を保持する「保持部材」である限りにおいて、前者の「保持部材」に相当する。
してみると、両者は、以下の一致点及び相違点を有している。
[一致点]
増毛用として薄くなった自毛に自毛と同色の人工毛を混在させて用いるためのおしゃれ増毛装具であって、保持部材と、止め具と、保持部材に一端を保持され該保持部材に所定の間隔で並設された複数の線状部材と、少なくとも前記線状部材に植設された人工毛と、を有するおしゃれ増毛装具。
[相違点1]
前者では、「保持部材」が、「細かい網目を有する植毛部材がやや腰のあるテープ部材に巻き付けられ細長い略直方形の板状に形成されて成る」のに対し、後者では、「保持部材」である土台について特定していない点。
[相違点2]
前者では、「止め具」が、「保持部材」に備えられ、複数設けられているのに対し、後者では、「止め具」であるピン又はバネが、「線状部材」であるくしの歯に設けられている点。
[相違点3]
前者では、「線状部材」が、弾性を有するのに対し、後者では、「線状部材」であるくしの歯について、その弾性を特定していない点。

以下上記相違点1〜3について検討する。
[相違点1について]
かつらにおいて、「細かい網目を有する植毛部材がやや腰のあるテープ部材に巻き付けられ」たベース部材を用いることは従来周知である(必要であれば、実公昭48-6954号公報、実願平3-3281号(実開平4-100219号)のマイクロフィルム、実願平2-74204号(実開平4-33621号)のマイクロフィルム、実願昭60-118914号(実開昭62-28827号)のマイクロフィルムを参照)。
そして、上記相違点1に係る構成が有する技術的意義、特に「保持部材」が「細長い略直方形の板状」に形成されて成ることについても格別なものが認められない以上、「保持部材」をどのような形状とするかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項といえる。
してみると、刊行物1記載の発明において、複数の線状部材の一端を保持する部材として、従来周知の「細かい網目を有する植毛部材がやや腰のあるテープ部材に巻き付けられ」たものを用い、適宜の形状を採用して上記訂正発明1における相違点1に係る構成となすことは、当業者であれば容易になし得たことである。
[相違点2について]
刊行物2には、毛髪が延びている線状体を支持する縁部分に留め具を複数設けることが記載されている(上記摘記事項「2 刊行物2 ア、イ」参照)。
そして、刊行物1記載の発明のピン又はバネも、土台においてかつらをより強く固定するために設けられたものであり、刊行物1記載の発明であるかつらをより強く固定するよう刊行物2記載の事項を適用し、「保持部材」である土台に「止め具」であるピン又はバネを複数設け、訂正発明1における相違点2に係る構成のごとくなすことが、当業者にとって格別困難なものと認めることができない。
[相違点3について]
毛髪が固定される細長いベンド1乃至4を弾性のあるもので構成し、そのベンドを屈曲可能なものとすることにより、頭部の曲面に沿った形とすることが刊行物3に記載されている(上記摘記事項「3 刊行物3 ア」参照)。
そして、刊行物1記載の発明であるくしが、かつらとして頭部に装着して使用するものであり、また、固定部材としてくしの歯とは別に止め具であるピン又はバネを設けていることを考慮すると、そのかつらのくしの歯の部分を頭部の曲面に沿った形となるようにするという課題は、当然内在されているものと認められる。
してみると、刊行物1の発明におけるくしの歯に、刊行物3記載のようなある程度変形可能な弾性のある部材を有するものを用い、訂正発明1における相違点3に係る構成となすことは、当業者であれば容易に想到し得たことと認められる。

また、訂正発明1の効果も、上記刊行物1に記載された発明、刊行物2〜3に記載された事項及び周知の事項から、当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものとはいえない。
したがって、訂正発明1は、上記刊行物1に記載された発明、刊行物2〜3に記載された事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、訂正発明1は、刊行物1記載の発明、刊行物2〜3記載の事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、請求項1に係る発明を訂正発明1とする訂正事項1を含む本件訂正は、他の訂正事項について検討するまでもなく、特許法第126条第4項の規定に適合していない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-04-30 
結審通知日 2004-05-07 
審決日 2004-05-18 
出願番号 特願平10-203038
審決分類 P 1 41・ 121- Z (A41G)
P 1 41・ 856- Z (A41G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨岡 和人  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 菅澤 洋二
神崎 孝之
登録日 2001-12-28 
登録番号 特許第3264886号(P3264886)
発明の名称 おしゃれ増毛装具  
代理人 大菅 義之  

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