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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03H |
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管理番号 | 1099559 |
審判番号 | 不服2000-14721 |
総通号数 | 56 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-09-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-09-14 |
確定日 | 2004-07-08 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第 50605号「ホログラフィック立体ハ-ドコピ-の作成方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 9月22日出願公開、特開平 6-266274〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年3月11日の特許法第30条第1項の規定の適用申請を伴う出願であって、平成12年8月10日付で拒絶査定がなされ、平成12年9月14日付で審判請求がなされたものである。 本願の請求項1に係る発明は、平成12年10月13日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「基材表面にドット状の複数の要素ホログラムを形成してなるホログラフィック立体ハードコピーの作成方法において、ホログラム乾板上の集光部の座標位置に対応する原画を作成するステップと、前記ホログラム乾板上の集光部の座標位置に対応する前記原画を液晶パネルに表示するステップと、光学系を用いて、前記液晶パネルに表示された原画を透過した光を集光させた物体光と、他方から入射させた参照光とを前記ホログラム乾板の表裏からドット状の集光部にて干渉させ、前記原画に対応したドット状の要素ホログラムをリップマンホログラムとして形成するステップと、前記ホログラム乾板上の集光部の座標位置を順次移動して前記表示するステップおよび要素ホログラムを形成するステップを繰り返してドット状の複数の要素ホログラムを前記ホログラム乾板に形成するステップとから成り、前記ホログラム乾板に集光される物体光に対して、疑似ランダム拡散板により位相変調を加えながら前記要素ホログラムを形成するようにしたことを特徴とするホログラフィック立体ハードコピーの作成方法。」 2.引用刊行物の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願日前である平成元年12月(日付は不明)に頒布された「1989年第20回画像工学コンファレンス論文集、P.323〜P.326、リップマン・ホログラフィック・ステレオグラムを用いたホログラフィック3-Dプリンタ」(以下「引用刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「本手法は、ホログラム面にドット状の要素ホログラムを順次記録してゆくもので、従来のドットプリンタと似たような方式で記録することができる。従って、3次元データのハードコピー機としての、3-Dプリンタを実現するには、この手法が最適なものと思われる。」(323頁右欄第13行〜第18行) (2)「合成する光学系をFig.2(A)に示す。計算機で作成した画像パターンを、液晶パネルに表示し、その透過光をホログラム面に集光して反対方向からの参照光との干渉縞パターンを記録する。そしてホログラムフィルムを縦、横方向にわずかずつ移動させて順次露光を行ない、ホログラム全面を露光する。」(324頁左欄第14行〜第20行) (3)「Input Image」を透過した「Object Beam」を「Lens」により集束して、下方向および右方向への矢印が付されている「Hologram Plate」に照射するとともに、「Hologram Plate」の反対側より「Reference Beam」を「Mask」を通して照射することを表した図面、及び説明文「(A)1ステップ・リップマンHSの光学系。ホログラム乾板を上下左右にわずかずつ移動させ、ホログラム全面を露光する。」(324頁Fig.2(A)および同図下の説明文) (4)「グラフィック・プロセッサによって、オリジナルの3次元データからホログラムの各点に露光する原画パターンを計算し、これが液晶パネルに表示される。レーザー光は、原画パターンにより変調され、ホログラム面に集光されて一つの要素ホログラムを露光する。ホログラムフィルムはフィルム移動コントローラにより順次移動され、ホログラム面一面を塗りつぶすように露光する。」(325頁右欄第3行〜第10行) 上記(1)〜(4)の記載事項によると、引用刊行物には、「ホログラム面にドット状の複数の要素ホログラムを形成してなる3次元データのハードコピーの作成方法において、ホログラムフィルム上の各点を露光するための原画パターンを作成するステップと、各点を露光するための前記原画パターンを液晶パネルに表示するステップと、光学系を用いて、前記液晶パネルに表示された原画パターンを透過させて集光させた透過光と、反対側からの参照光とを前記ホログラムフィルムの表裏から集光部にて干渉させ、前記原画パターンに対応したドット状の要素ホログラムをリップマンホログラムとして形成するステップと、前記ホログラムフィルムの露光点を上下左右方向に順次移動して、各露光点に対応した原画パターンを液晶パネルに表示するステップ、原画パターンに対応した要素ホログラムをリップマンホログラムとして形成するステップ、を繰り返すことにより、ドット状の複数の要素ホログラムを前記ホログラムフィルムに形成するホログラフィック立体ハードコピーの作成方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 3.周知技術 原査定の拒絶の理由に周知例1として提示された特開昭52-67341号公報(以下、当審においても「周知例1」という。)には、「ホログラフィ方法により情報を感光材料に記録する場合、フーリエ変換方式が情報記録密度を最も高くとれるなどの理由から広く用いられている。しかしながら通常の原情報パターンは多くの直流成分を含むので、この方法ではホログラムの中心付近に大きなピークをもったフーリエスペクトルが生じる。そのためフーリエスペクトルの高周波成分までを忠実に記録しようとすると、フーリエスペクトルの中心付近で感光材料を飽和させ、それが雑音源となり、高回折効率、高品質のホログラム再生像を得ることが困難であった。従来、この問題点に関して原情報パターンに2次元の位相分布をもつ位相板を重ね合わせて、フーリエスペクトルを均一にする方法が提案されている。一般に位相板はマトリックス状に配列されている単位セルに位相をランダムに割り当てるものと、位相を一義的に与える決定論的(デターミニスティク)なものに分類される。前者のランダム位相板は、(0,π)の2値もしくは(0,π/2、π、3π/2)の4値の位相差を単位セルにランダムに割り当てたものが通常使用され、その効果も大きい。」(1頁右下欄第20行〜2頁左上欄第20行)と記載されている。 同周知例2として提示された特開昭52-11937号公報(以下、当審においても、「周知例2」という。)には、「現在、二次元の情報をフーリェ変換型のホログラムとして記録する際、現在拡散板として透過光に部分的に0とπの位相の変位を与える位相レベルをマトリクス状にランダムに配列したランダム拡散板、あるいは透過光に0、π/2、πさらに3π/2の位相の変位を与える位相レベルをマトリクスの各領域に与えられる位相レベルがその領域の前後および上下の領域に与えられる位相レベルとの位相差がπ/2になるようにしてランダムに配列した4レベル擬似ランダム拡散板がある。」(2頁左上欄第20行〜右上欄第9行)と記載されている。 さらに、「立体効果を有する像を作る方法」の発明が記載された特公昭47-44655号公報(昭和47年11月11日公告)には、以下の点が記載されている(以下「周知例3」という。)。 (1)「本発明の基本的な方式は、第1図ないし第4図に示す通りであって、以下にその作成手続、及び原理を図によって説明する。第1図1に示すのは、通常の写真撮影用カメラであって、撮影レンズ3を有し、フィルム2が装備されている。このようなカメラを用いて写真撮影を行う時は、フィルム上にレンズの入射瞳P1を投影中心とする中心投影画像が得られるのはよく知られている。そしてカメラ全体を間隔dずつ移動させ、レンズの主点をP2〜PNに位置せしめて、各々について写真撮影を行い、さらにカメラを垂直方向に逐次dずつ移動して同じ操作をM回行えば、フィルム上にはN×M枚の視点を異にした画像が得られる。第2図は、かくして得られたインコヒーレント光による画像をホログラフィに合成する配置図であって、2’は図1によって得られたフィルム、3’は撮影に使用したレンズと等して焦点距離をもつレンズを示す。レーザー光9はコンデンサー5、拡散板4を通ってフィルム2’上の画像で強度変調を受け、レンズ3’及びその後方に配置された絞り6を通って乾板7上の感光材料層8に入射するとともに、レーザー光9は分割されて鏡10により偏光せしめられ、角度θの平行光束となって感光材料層に入射し、画像2’を通過した光と干渉して絞り6に区限られた部分にホログラムを形成する。」(2頁右欄第24行〜3頁左欄第5行、原文のまま) (2)「第2図において入射せしめる参照光をホログラム感光材料の反対側より入射せしめ、いわゆるリップマン型ホログラフィとして、これを多色化することによって、いわゆる三次元型ホログラムとして白色光によるカラー再生を行うことも可能であるのはいうまでもない。」(4頁左欄第12行〜第17行) (3)「第3図に示すごとき配置にて多数の画像を記録する場合は、両眼にて完全な立体視が行い得るのみならず、視点を上下又は左右へ動かした時、パララックスは正しく変化し、その臨場観は完璧である。」(4頁左欄第28行〜第32行) 4.対比 本願発明と引用発明を比較すると、引用発明における「ホログラム面」、「3次元データのハードコピー」、「ホログラムフィルム」、「各点を露光するための前記原画パターンを液晶パネルに表示するステップ」、「原画パターン」、「透過光」、「反対側」はそれぞれ、本願発明における「基材表面」、「ホログラフィック立体ハードコピー」、「ホログラム乾板」、「集光部の座標位置に対応する前記原画を液晶パネルに表示するステップ」、「原画」、「物体光」、「他方」にそれぞれ対応するので、両者は、「基材表面にドット状の複数の要素ホログラムを形成してなるホログラフィック立体ハードコピーの作成方法において、ホログラム乾板上の集光部の座標位置に対応する原画を作成するステップと、前記ホログラム乾板上の集光部の座標位置に対応する前記原画を液晶パネルに表示するステップと、光学系を用いて、前記液晶パネルに表示された原画を透過した光を集光させた物体光と、他方から入射させた参照光とを前記ホログラム乾板の表裏からドット状の集光部にて干渉させ、前記原画に対応したドット状の要素ホログラムをリップマンホログラムとして形成するステップと、前記ホログラム乾板上の集光部の座標位置を順次移動して前記表示するステップおよび要素ホログラムを形成するステップを繰り返してドット状の複数の要素ホログラムを前記ホログラム乾板に形成するステップから成るホログラフィック立体ハードコピーの作成方法。」で一致し、本願発明が「ホログラム乾板に集光される物体光に対して、疑似ランダム拡散板により位相変調を加えながら要素ホログラムを形成する」という構成を有するのに対して、引用発明にはその構成がない点で相違する。 5.当審の判断 上記相違点について検討すると、 (1)ホログラフィ方法により情報を感光材料に記録する場合、ホログラムの中心付近に大きなピークをもったフーリエスペクトルが生じ、中心付近で感光材料を飽和させ、高回折効率、高品質のホログラム再生像を得ることが困難であるとの問題点に対し、マトリックス状に配列された単位セルの位相をランダムに割り当てた位相板を使用すること、(0,π/2、π、3π/2)の4値の位相差を単位セルにランダムに割り当てたものが通常使用され、その効果も大きいことが周知例1により知られている。 (2)二次元の情報をフーリェ変換型のホログラムとして記録する際、拡散板として透過光に0、π/2、πさらに3π/2の位相の変位を与える位相レベルをマトリクスの各領域に与えられる位相レベルがその領域のの前後および上下の領域に与えられる位相レベルとの位相差がπ/2になるようにしてランダムに配列した4レベル擬似ランダム拡散板が使用されることが周知例2により知られている。 このことから、高品質のホログラム再生像を得るために、ホログラム記録時において、物体光が記録媒体に達するまでの光路中に拡散板を配置してランダムな位相変調を行うこと、さらには拡散板として疑似ランダム拡散板を使用することは、本願の出願時において、ホログラム記録の際には慣用されていた周知の技術であると認める。 また、当審において新たに提示した周知例3には、視点の異なるN×M枚の画像から作成される各々のホログラムを感光材料層に二次元的にN×M個並べることで立体効果を有する像を作る方法において、いわゆる物体光の光路中に拡散板4を配することが記載されている。 以上のことより、ドット状の要素ホログラムを形成してなるホログラフィック立体ハードコピーの作成方法において、物体光に位相変調を加えるために拡散板を使用すること、及びホログラム記録の際に使用する拡散板を疑似ランダム拡散板とすることは本願発明の属する技術分野において周知慣用されている技術であることから、上記相違点は当業者が容易に付加できる構成であると認める。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知の技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 6.むすび したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-05-06 |
結審通知日 | 2004-05-11 |
審決日 | 2004-05-24 |
出願番号 | 特願平5-50605 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 里村 利光 |
特許庁審判長 |
上野 信 |
特許庁審判官 |
鹿股 俊雄 瀬川 勝久 |
発明の名称 | ホログラフィック立体ハ-ドコピ-の作成方法および装置 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 坪井 淳 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 坪井 淳 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 坪井 淳 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 坪井 淳 |