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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1100395
審判番号 不服2001-6760  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-05-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-26 
確定日 2004-07-22 
事件の表示 平成 9年特許願第311613号「薬液注入による砂地盤の固化改良工法」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 5月18日出願公開、特開平11-131467]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年10月29日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年1月30日付けの全文補正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】 シリカ系の水溶液型薬液を砂地盤に注入することにより砂地盤中に固結体を形成させる砂地盤の固化改良工法において、砂地盤の深さ方向及び水平方向において球状乃至団子状に且つ一部が相互にオーバーラップして連接固化するように、更に砂地盤の改良率が約70%迄に留まるように薬液を注入することを特徴とする、薬液注入による砂地盤の固化改良工法。」

なお、本願については、平成13年4月26日付けで手続補正がなされたが、本審決と同日付けの補正の却下の決定により却下された。

2.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特公昭48-25767号公報(以下、「刊行物」という。)には、
(ア)「長尺の注入管に所定間隔を置いて設定した各穿孔位置において該注入管の周壁に複数個の小孔を穿設すると共に……ストレーナーパイプを準備し、このストレーナーパイプを地中に貫入残置したのち、ストレーナーパイプ中に基部より薬液を圧入し、長尺に渉りストレーナーパイプの周囲の土壌中に同時にかつ均等に薬液を浸透させ、長尺の円柱状の固結土を造成することを特徴とする薬液注入工法。」(特許請求の範囲1)、
(イ)「上記特許請求の範囲1に記載のストレーナーパイプを、多数適当間隔を置いて並列して地中に貫入残置したのち、各ストレーナーパイプの基部より同時にあるいは順次的に薬液を圧入し、長尺に渉りストレーナーパイプの周囲の土壌中に同時にかつ均等に薬液を浸透させ、多数の長尺の円柱状の固結土がラップして一体に連続した固結土の壁体を造成することを特徴とする薬液注入工法。」(同2)
と記載されており、これらの記載及び第6、8図の記載からみて、刊行物には、「薬液の注入により地盤の水平方向において長尺の円柱状の固結土がラップして一体に連続した固結土の壁体を造成する薬液注入工法。」の発明が記載されていると認められる。
また、刊行物には、
(ウ)「地中に薬液を注入して土を固結させる工法は薬液注入工法として従来より周知であるが、従来の薬液注入工法によっては、……すなわち、注入管先端より薬液を圧出させる注入工法を採用する場合、……またこの注入管1を0.5〜1m毎に抜き上げて薬液注入を行う手段を用いる場合、地中に造成される固結土の形状は、不定形の団子状固結土塊2が串ざし状となったものしか得られず」(1頁2欄3ないし16行)
と記載されており、第9図(a)の記載も参酌すると、刊行物には、従来例として「薬液の注入により地盤の深さ方向において団子状に且つ一部が相互にオーバーラップして連接固化するように薬液を注入すること」が記載されていると認められる。

3.対比・判断
本願発明と刊行物に記載の発明とを比較すると、刊行物に記載の発明の「一体に連続した固結土の壁体」が、本願発明の「固結体」に相当するから、両者は、薬液を地盤に注入することにより地盤中に固結体を形成させる工法において、地盤の水平方向において一部が相互にオーバーラップして連接固化するように薬液を注入する点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本願発明では、薬液がシリカ系の水溶液型薬液であるのに対し、刊行物に記載の発明では、薬液の成分が不明な点

相違点2
本願発明は、薬液を砂地盤に注入することにより砂地盤中に固結体を形成させる砂地盤の固化改良工法であるのに対し、刊行物に記載の発明では、地盤が砂地盤であるか不明であり、また、薬液注入工法である点

相違点3
本願発明では、砂地盤の深さ方向及び水平方向において球状乃至団子状に且つ一部が相互にオーバーラップして連接固化するように薬液を注入するのに対し、刊行物に記載の発明では、地盤の水平方向において長尺の円柱状に一部が相互にオーバーラップして連接固化するように薬液を注入する点

相違点4
本願発明では、砂地盤の改良率が約70%迄に留まるように薬液を注入するのに対し、刊行物に記載の発明では、そのような構成を有するか否か不明な点

そこで、相違点1について検討すると、シリカ系の水溶液型薬液は、例えば、特公平5-16495号公報に記載のように周知技術にすぎず、刊行物に記載の発明において、薬液としてシリカ系の水溶液型薬液を用いることは当業者が適宜なし得ることである。
次に、相違点2について検討すると、薬液注入工法として、薬液を砂地盤に注入することにより砂地盤中に固結体を形成させる砂地盤の固化改良工法は、例えば、同じく特公平5-16495号公報に記載のように周知技術にすぎず、刊行物1記載の薬液注入工法により砂地盤の固化改良を行うことは当業者が適宜なし得ることである。
次に、相違点3について検討すると、地盤の深さ方向において球状乃至団子状に且つ一部が相互にオーバーラップして連接固化するように薬液を注入することは、例えば、刊行物の従来例として、及び特開昭53-96212号公報に記載のように周知技術にすぎず、刊行物に記載の発明において、長尺の円柱状にかえて、地盤の深さ方向において各々球状乃至団子状に且つ一部が相互にオーバーラップして連接固化するように薬液を注入すれば、当然、水平方向においても球状乃至団子状に且つ一部が相互にオーバーラップして地盤が連接固化されるから、刊行物に記載の発明に周知技術を適用して相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
次に、相違点4について検討すると、本願発明の「砂地盤の改良率が約70%迄に留まるように薬液を注入する」の意味するところは必ずしも明確ではないが、本願明細書に記載された数式「V1=(V)x(n)x(a)x(λ) V1:薬液の注入量、 V:改良すべき砂地盤の体積、 n:砂地盤の間隙率であって、0.4-0.5、 a:薬液の充填率であって、0.7-0.9、 λ:砂地盤の改良率」(段落【0004】)を参酌すると、「砂地盤の改良率が約70%迄に留まるように薬液を注入する」とは、上記数式において、λを約0.7以下として算出した量の薬液を地盤に注入することを意味すると解される。しかしながら、薬液の注入量は、必要とされる地盤強度、対象地盤の土質、注入方式等に応じて適宜決定されるものであり、刊行物に記載の発明において改良率が約70%迄に留まるように薬液を注入することは当業者が適宜なし得ることである。
そして、全体として本願発明によってもたらされる効果も、刊行物に記載の発明及び周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、刊行物に記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-12-27 
結審通知日 2001-12-28 
審決日 2002-01-10 
出願番号 特願平9-311613
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深田 高義池谷 香次郎  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 鈴木 憲子
中田 誠
発明の名称 薬液注入による砂地盤の固化改良工法  
代理人 佐々木 功  
代理人 川村 恭子  
代理人 川村 恭子  
代理人 佐々木 功  

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