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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A01C
管理番号 1100931
審判番号 無効2003-35145  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-06-03 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-04-14 
確定日 2003-11-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第1829768号発明「移植機の苗選別供給装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1829768号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第1829768号発明は、昭和59年10月19日に出願された特願平59-220872号の一部を分割して新たな発明として出願したものであり、平成6年3月15日に設定登録がなされ、その後、株式会社サークル鉄工より特許無効審判の申立てがなされ、答弁書が提出されたものである。
2.無効理由の概要
無効理由1
本件明細書には記載不備があるので、特許法第36条4、5項に違反して特許されたものである。
無効理由2
本件特許発明は、当業者が容易に発明し得るものであるので、特許法第29条第1項または第2項の規定に違反して特許されたものであるとして、下記の甲第1〜6号証を提出すると共に、証人尋問を申請している。
甲第1号証・・ホクシン農機具祭りの開催案内に使用されたはがきの写し
甲第2号証・・ダイサンがホクシン農機具祭りで頒布したチラシの写し
甲第3号証・・ダイサンがホクシン農機具祭りの後で頒布したチラシの写し
甲第4号証・・株式会社新農林社発行の昭和59年9月25日付け「農機新聞」第2028号の写し
甲第5号証・・請求人会社専務取締役三川勲,常務取締役遠藤雅博,研究開発担当取締役部長梶昌幸および研究開発担当次長岸田佳剛の宣誓書
甲第6号証・・「農建機販」こと農建機販株式会社牧野修取締役の陳述書
3.本件発明
本件発明の要旨は、その特許請求の範囲第1項に記載された下記のとおりのものと認められる。(分説して記載する。)
A.苗Pを載せて移送する苗供給コンベア18の搬送終端より下方に一対の対向した苗送りベルト26,27を張設し、
B.一対の苗送りベルト26,27の間に苗Pを挟持して下方に移送し、
C.苗送りベルト26,27の搬送終端下方にベルト36,37を苗供給コンベア18の搬送方向と反対に苗Pを転送せしめるよう配設し、
D.ベルト37に連結して検出ベルト38を張設し、
E.検出ベルト38の上方に苗Pを検出する検出器60を配設し、
F.検出器60の検出により苗供給コンベア18から検出ベルト38まで
の速度を増減させるようにしたことを特徴とする
G.移植機の苗選別供給装置。
4.無効理由2について
(1)各甲号証について
・甲第1号証
請求人の主張によれば、ホクシン農機が、上記ホクシン農機具祭りの開催について斜里郡清里町の農家に案内するのに使用したはがきの写しである。
その表面の下欄左端に「昭和五十九年八月」、裏面の上部に「とき8月30日31日」「ところ佐藤農機あと」、同中央部に「新型ビート移植機 選捨機付」と記載され、同下部の「協賛メーカー」の欄には「(株)ダイサン」「農建機販」等の名称も記載されている。
・甲第2号証
請求人の主張によれば、ホクシン農機具祭りにおいて、ダイサンが頒布したチラシの写しである。
その一面(表または裏)には、上段に「NEW」「新型」「ダイサンビート移植機」「トラクター直装式」、《センサー付》、「遂に登場、一人作業もOK。(2畦型)」「コンパクトな2畦型と4畦型そろって新発売」と記載され、中段に「DBT-20S(2畦型)」の写真および「DBT-40S(4畦型)」の写真が掲載され、その両写真の間に「ビート植えなら大作さん」と記載され、さらにその下側に「センサー付で従来の苗選別が不要」「苗の流れを折り返しさせたコンパクトな配置」「ゴムタイヤ付鎮圧輪」と記載され、下段には「ビート移植機DBT-20S,DBT-40S仕様」の欄を設けて、それらの全長,全高,全幅および重量の値が記載されている。
また、他面(裏または表)には、上段に「ビートのポット苗が能率良く植えられます。」「ダイサンビート移植機」「DBT-20S DBT-40S」「トラクター直装式」と記載され、その下側の「特長」の欄に、
「1.センサー付で従来の苗選別が不要」とし、そこに「分離した苗を健苗の葉をはさみ、欠株苗は落下させる欠株除去機構と、欠株になった分を早送りする装置と欠株を検知するセンサーとの組み合わせによる苗そろえ機構による完全無人の自動苗選別装置がつきました。ですから作業者はコンベアに苗を並べるだけの作業となります。」、
「2.苗の流れを折り返しさせたコンパクトな配置」とし、そこに「2畦型では左右対称配置とし、各々のコンベアが左右に別れて流れるので、一人作業ができます。4畦型でも畦間毎に同一植付部が付き幅が従来機に比べてぐ一んと狭くなりました。」
と記載されている。
・甲第3号証
請求人の主張によれば、ダイサンがホクシン農機具祭りの後で頒布したチラシの写しである。
イ.左側頁には、上段左側に「ダイサン」、「新型」、「ビート移植機」、「トラクター直装式」、「DBT-20S」、「DBT-40S」、「自動苗選別装置付」、「遂に登場、一人作業もOK(2畦型)」、「コンパクトな2畦型と4畦型をそろって」、「新発売」と記載され、
ロ.同上段右側に「DAISAN」、「特許出願中(特開昭58-98008号 他)」と記載されるとともに、「DBT-40S」の写真を掲載し、
ハ.同下段左側に「DBT-20S」の写真を掲載するとともに、その右上に「ビート植えなら大作さん」と記載され、同右下の「うれしい3つのポイント」の欄に「1センサー付で苗選別が不要」「よりコンパクトな配置2」「3ゴムタイヤ付鎮圧輪」と記載されている。
ニ.右側頁には、上段に「ビートのポット苗が能率良く植えられます。」「ダイサン」「ビート移植機」「DBT-20S DBT-40S(特許出願中)」「トラクター直装式」と記載され、その下方右側に「DBT-20S」の写真を「2畦型では左右対称配置とし、各々のコンベアが左右に別れて流れるので、一人作業ができます。」との付記とともに、また、その下側に「DBT-40S」の写真を「4畦型でも畦間毎に同一植付部が付き、幅が従来機に比べてぐ〜んと狭くなりました。」との付記とともにそれぞれ掲載し、
ホ.さらに、同上段下方左側にセンサー部付近の拡大写真を「完全無人の自動苗選別装置(センサー)が付きましたので、作業者は苗を並べるだけ。」との付記とともに、また、その下側に鎮圧輪部分の拡大写真を「ゴムタイヤ付鎮圧輪で泥の付着やスリップの心配がありません。」との付記とともにそれぞれ掲載し、
へ.同下段に「ビート移植機DBT-20S・DBT-40S仕様表」を掲げ、
DBT-20Sは、全長1870mm,全高1150mm,全幅2060mm,重量500kg,および畦間54〜66cm、
DBT-40Sは、全長1970mm,全高1510mm,全幅3260mm,重量650kg,および畦間54〜66cm、
と記載されている。
ト.また、右の最下段には製造元として、株式会社ダイサンと記載されている。
・甲第4号証
(株式会社新農林社発行の昭和59年9月25日付け「農機新聞」第2028号の写し)第13頁、見出しが「ダイサン ビート移植機「大作さん」センサー付で発売 従来の苗選別が不要」の記事には、
チ.(株)ダイサン・・は、このほどビート移植機の新製品を発表、次期シーズンに向け準備を開始した。ビートのポット苗が能率良く植えられるダイサンビート移植機「大作さん」の名で、評判を得て来たが、新製品はトラクター連装式、馬力センサー付で従来の苗選別が不要。一人作業ができる(二畦)この二畦型と四畦共に同時発表となっている。
リ.センサー付という点では、分離した苗を健苗の葉をはさみ、欠株苗は落下させる欠株除去機構と、欠株になった分を早送りする装置と欠株を検知するセンサーとの組合せによる苗そろえ機構による完全無人の自動苗選別装置で、作業者はコンベアに苗を並べるだけの作業という。
ヌ.二畦型は「DBT-二〇S」四畦型は「DBT-四〇S」共に、苗の流れを折り返しさせたコンパクトな配置、ゴムタイヤ付鎮圧輪であることが大きな特徴としてあげられる。
ル.二畦型では、左右対称配置とし、各々のコンベアが左右に別れて流れるので、一人作業ができること、四畦でも、畦間毎に同一植付部が付き幅が従来機に比べてかなり広くなったものである。
ヲ.植付方法は、従来から好評を得ているゴム円盤方式にタテベルトと鎮圧輪、オープナーを用いており、確実な植付けができる。
ワ.なお、同機の重量は「DBT-二〇S」が五〇〇キロ「DBT-四〇S」が六五〇キロ。
と記載されており、DBT-20SとDBT-40Sの写真が上下2段に掲載されている。
・甲第5号証
請求人会社専務取締役三川勲、常務取締役遠藤雅博、研究開発担当取締役部長梶昌幸および研究開発担当次長岸田佳剛の宣誓書であり、
1)同書添付の資料1〜6等を請求人会社において保管していたこと、
2)同資料5の工事写真帳の写真は、梶昌幸および岸田佳剛が、昭和59年10月23日に幕別町豊岡の山口重平氏圃場で開催されたダイサンの新製品実演会で撮影した「新型ビート移植機2畦型」のものであること、
3)昭和59年8月30,31日に「ホクシン農機具祭り」に出品され、また、昭和59年9月25日付け「農機新聞」第2028号に掲載されたビート移植機DBT-20Sが搭載していたと推量される苗選別供給装置の構成等が記載されている。
・甲第6号証
甲第1号証に協賛メーカーとして名を連ね、ホクシン農機具祭りに各種農機具の部品類を展示販売していた「農建機販」こと件外農建機販株式会社(北見市三輪734番地の2所在)の牧野修取締役の陳述書で、ダイサンが、ホクシン農機具祭りに2種のビート移植機すなわち2畦型と4畦型を展示していたことを陳述している。
(2)公知発明の認定、及び本件発明の各構成要件との対比
その公知であることに争いがない甲第4号証の農機新聞の記事と、甲第3号証のチラシの記載を比較してみると、両者は、
・ビート移植機「大作さん」の新製品に関するものであり、二畦型は「DBT-二〇S」四畦型は「DBT-四〇S」と型式でも一致している。
・重量それぞれの型式の重量も、「DBT-二〇S」が五〇〇キロ「DBT-四〇S」が六五〇キロと一致している。
・センサー付きの自動苗選別装置である等の特徴点も一致している。
・外観上同じように見える。
・全体的に双方の記載は整合しており、何ら矛盾する点がない。
等からみて、両者は同じ製品に関するものであるとみることが自然である。そして、上記甲第4号証の農機新聞が本件特許出願前の昭和59年9月25日に発行されている以上、上記型式の自動苗選別装置は本件出願前に公知になっているものとみることができるので、甲第4号証の農機新聞の記事に甲第3号証のチラシに記載された事項も加えて上記型式「DBT-20S」のビート移植機(以下、「公知発明」という。)を認定し、本件発明の各構成要件との対比・判断を行う。
また、甲第5号証の資料5の工事写真帳の写真は、梶昌幸および岸田佳剛が、昭和59年10月23日に幕別町豊岡の山口重平氏圃場で開催されたダイサンの新製品実演会で撮影した「新型ビート移植機2畦型」のものであるとしたもの(各写真に「FUJICOLORHR 84」との記載有り、84は1984年を指すものと認められる。)であり、本件の出願以後に撮影された写真であると認められるが、その写真に写されているものと、甲第3、4号証記載のものとを較べてみると、
・甲第3号証の左頁の下段左側の「DBT-20S」の写真と、甲第5号証の資料5の工事写真帳(全4頁)の第4頁目上、中段の写真のチェーンケース(以下、本件特許明細書で使用されている用語を使う)の軸の配置、シートと背アテ、苗載台、下方に向かっている苗送りベルトは同様な構成である。
・甲第3号証の右頁の上段下方左側のセンサー部付近の拡大写真と甲第5号証の資料5の3頁目中、下段の写真とで、各構成部品の配置に矛盾がない。
・全体的に両者に矛盾する構成は認められない。
等からみて、甲第5号証の資料5の写真は、公知発明「DBT-20S」を写しているものと認められるので、その認定の参考にする。
なお、被請求人は上記点に関して、上記各甲号証それぞれに対して公知性があるか否かを主張している(特に甲第3号証について・・いつどこで頒布されたものか不明、甲第5号証の資料5について・・公知でない)が、甲第3号証は、請求人の主張によれば、ダイサンがホクシン農機具祭り(甲第1号証。昭和59年8月30日31日)の後で頒布したチラシの写し(甲第2号証(ダイサンがホクシン農機具祭りで頒布したと請求人が主張するチラシの写し)とほぼ同内容のもの)であって、農機新聞に掲載された型式「DBT-20S」のビート移植機と明らかに同一のものを記載していると認められる以上、そのチラシである甲第3号証の記載内容は公知である型式「DBT-20S」のビート移植機の技術内容が記載されているとみることができる。即ち、甲第3号証のチラシが公知でないとしても、甲第4号証の記載から公知と認められる型式「DBT-20S」のビート移植機(公知発明)の具体的構成を知る手掛かりになるものである。また、このことは甲第5号証の資料5に関しても同じことがいえる。
・本件発明の構成要件A、B
上記記載リ.の「作業者はコンベアに苗を並べるだけ」の記載、及び記載ニ.ホ.に関する掲載図を参照すれば苗を載せて移送するコンベアが記載されており、また、記載ホ.のセンサー部の拡大写真において、その左側に上下のローラーに渡って突起を有する黒いベルトが縦に架かっている(記載ハ.にも記載有り)。そして、記載ロ.の特許出願中と書かれている特開昭58-98008号には、その特許請求の範囲の「列状の苗を搬送する供給コンベアの搬送終端にゴム状物質からなる無数の突起を有するベルトコンベアを設け、供給コンベアの搬送終端下部より下方に設けたベルトコンベアとにより紙筒苗を挟持させ、この一対のベルトコンベア・・・」の記載、及びその第3〜5図によれば、供給コンベアの搬送終端下部より下方に設けた一対の搬送コンベアが記載されており、前記記載ホ.のセンサー部の拡大写真におけるベルトの架かっているローラー等の配置からみれば、上記一対の搬送コンベアは本件発明の「一対の苗送りベルト26,27」に相当するものが記載されているとみることができる。
又、この点に関して、甲第5号証の資料5の第2頁目上、下図、第3頁目上、中、下図を参照すれば、これを裏づけるものとなっている
したがって、公知発明は、本件発明の構成要件A、Bに相当するものを備えていると認められる。
・本件発明の構成要件C
甲3記載ホ.のセンサー部の拡大写真において、センサー部の下方部分に複数のベルトとみられる部分が上部のコンベアと同じ方向に向かって存在している点は、上記甲4記載ヌ.の「・・・苗の流れを折り返しさせた・・・」の記載を裏づけていると認められる。そうすると、苗は一対の搬送コンベアを下り、苗の流れが折り返しされるようにセンサー部の下方部分の複数のベルトにより搬送されているとみることができ、公知発明は、本件発明の構成要件Cに相当するものを備えていると認められる。
・本件発明の構成要件D、E
甲3記載ホ.のセンサー部の拡大写真において、センサー部の下方部分に複数のベルトとみられる部分が上部のコンベアと同じ長手方向に向かって存在しているのは認められるものの、センサー部の下方部分に、本件発明における検出ベルト38に相当する構成を備えているか否か不明である。なお、本件発明における検出ベルトがどのようなものか特許請求の範囲の記載だけでは明りょうではないが、本件明細書の第4図、及び発明の詳細な説明の第4図に関わる記載(「ベルト37に連結して、紐状の検出ベルト38を軸43,44に軸支されたプーリ40間に張設し・・・検出ベルト38の搬送終端上方には検出器60を配設し、検出器60の苗Pの検出時に電磁クラッチを切断し、被検出時に接続するようにし、・・・」特許公報第3頁第5欄第14〜41行)によれば、欠株苗PBを落下させた後、健苗PCを検出器まで搬送するベルトと認められる。
・本件発明の構成要件F
記載リ.によれば、公知発明は、欠株を検知するセンサー、欠株苗は落下させる欠株除去機構及び欠株になった分を早送りする装置が備えられているものであり、欠株除去機構即ち欠株を生じる部分より前は欠株を生じた場合苗の搬送を早くしなければならないものであるので、本件発明の構成要件Fに相当するものを備えていると認められる。
・本件発明の構成要件G
記載チ.リ.ヲ.によれば、公知発明は自動苗選別装置であると共に苗の植え付け装置(移植機)であることが記載されているので、公知発明のものも本件発明でいう「移植機の苗選別供給装置」に相当すると認められる。
以上の認定・対比から、公知発明を本件発明の構成要件の表現に則して記載すると、下記のとおりのものと認められる。
苗を載せて移送する苗供給コンベアの搬送終端より下方に一対の対向した苗送りベルトを張設し、一対の苗送りベルトの間に苗を挟持して下方に移送し、苗送りベルトの搬送終端下方にベルトを苗供給コンベアの搬送方向と反対に苗を転送せしめるよう配設し、苗を検出する検出器を配設し、検出器の検出により苗送りの速度を増減させるようにしたことを特徴とする移植機の苗選別供給装置。
そして、本件発明とは、次の点で相違するものと認められる。
本件発明が、ベルト37に連結して検出ベルト38を張設し、検出ベルト38の上方に苗Pを検出する検出器60を配設し、検出器60の検出により苗供給コンベア18から検出ベルト38までの速度を増減させるようにしているのに対し、本件発明のものは、ベルトの上方に欠株を検知するセンサーがあるのは認められるが、本件発明におけるベルトとそれに連結された検出ベルトがあるのか否か不明であり、また、検出器の検出による速度の増減を検出ベルトまでさせるようにしている点。
(3)判断
本件発明における検出ベルトとは上記のとおり、欠株苗PBを落下させた後、健苗PCを検出器まで搬送するベルトと認められる。そうすると、上記公知発明のものも欠株除去機構の次に欠株を検知するセンサー(検出器)がなければならず、しかも、その検出器のある所まで欠株苗を落とした後も健苗を搬送しなければならないことは自明であることを考慮すれば、健苗を検出器まで搬送するものを、ベルトとすることに当業者が格別の困難性を要するものとはいえない。また、苗供給コンベアの搬送方向と反対に苗を転送せしめるよう配設するベルトと連結しなければならないことも、少なくとも苗の受け渡しに不連続なところがあってはいけない点からみて当業者の設計的事項程度のことというべきである。この点に関して、移植機の苗選別装置における技術分野での周知慣用の技術手段、技術常識として被請求人の提出した乙1、2号証を参照すれば、苗の選別機構の前後でベルトを用いることが記載されている。そして、検出器が欠株を検知した場合その搬送行程の上流側の苗を早送りしなければならないのであるから、検出器の検出による速度の増減を検出器のあるところまでのベルト、即ち検出ベルトまでさせるようにすることも当業者が容易に想到し得る程度のことである。
また、本件発明のように構成することによって、格別な効果を奏するようになったものということはできない。
したがって、本件発明は、上記公知発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
なお、請求人は証人尋問を請求しているが、上記のとおり判断できるのでその必要を認めない。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-09-19 
結審通知日 2003-09-25 
審決日 2003-10-07 
出願番号 特願平2-213065
審決分類 P 1 112・ 121- Z (A01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 滝本 静雄川向 和実  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 藤井 俊二
渡部 葉子
登録日 1994-03-15 
登録番号 特許第1829768号(P1829768)
発明の名称 移植機の苗選別供給装置  
代理人 原田 信市  
代理人 原田 敬志  
代理人 河野 哲  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 中村 誠  
代理人 勝田 裕子  
代理人 鈴江 武彦  

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